天草洸輔は勇者である   作:こうが

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 お久しぶりです、作者のこうがでございます。今回は五日前がハロウィンという事で、遅くなりましたが投稿させていただきました。R17って感じの内容ですが、あこゆ見慣れた皆様なら大丈夫でしょう。楽しんでいただければ幸いです。


 後書きにお知らせがあるのでそっちも見てね。


ハロウィン回 吸血鬼若葉さん

 10月31日、ハロウィンの日。球子がこういうイベント事を見逃すわけがなく爆速で計画を立てた彼女の計らいにより、学校の教室を借りてハロウィンパーティーを行う事になっていた。

 

 集合時間より早くきてしまったが、そこには既に先客がいた。

 

「ひなた?随分早いね」

「あら、洸輔くんでしたか。早いですね、集合時間までは後30分以上あるのに」

「そっちもね、来るのだいぶ早かったみたいだけど…何かしてたの?」

「ふふん♪良くぞ聞いてくれましたね、まずはあちらをご覧ください!」

 

 彼女が向けた視線の先を見る。そこには吸血鬼の衣装に身を包んだ若葉がいた。

 

「…これは」

「どうですか、この美しさと可愛さとクールさを兼ね備えたドラキュラの衣装は!この日の為に、私が丹精込めて作った渾身の一作!これこそ、若葉ちゃんにしか着こなせないものであると(以下略」

 

 かかってしまっているかもしれません、一息つけると良いのですが。とは言ったものの、確かにクオリティは高い。マントもよく出来ているし…コレ作ったとかすごいな、と素直に感心する。

 

「や、やぁ…洸輔」

「こんにちは、吸血鬼さん。ひなたがカメラを持っている所を見るに……撮影会でもしてた?」

「まぁ…そうだな。早く来て欲しいと言われて、来てみればこれが用意されていた」

 

 クルッと一回転しつつ、衣装を見せてくれる若葉。表情を見るに気に入ってるご様子だった。

 

「気に入ってるんだね。若葉、楽しそう」

「少し恥ずかしい気もするが…正直、かなり気に入っている。とても着心地が良いんだ。それに……ひなたが一生懸命作ってくれた衣装だからな、これは」

 

 ふふっ、と嬉しそうに笑う若葉。衣装に反した表情を浮かべる彼女を直視できず、視線を逸らそうとするとそこに追い討ちをかけられる。

 

「所で…洸輔」

「ん?」

「その、似合っているだろうか?私の、仮装は」

 

 先程とは打って変わり、自身なさげな表情を浮かべながらこちらを見つめる若葉。

 

「…破壊力すごいなぁ」

「破壊力?なんのだ?」

「こっちの話。それはそれとして、その衣装…とっても似合ってると思うよ」

 

 そ、そうか…と何故か安堵した様子の吸血鬼さん。今日は彼女の色々な表情が見れて、少し…いや、かなり嬉しい。

 

「若葉ちゃん。次にやるべき事はわかっていますね?」

「あぁ、勿論だ。ハロウィンと言ったら、と言うやつだな」

「む、もしや」

「はい、そのもしや…です。では若葉ちゃん、どうぞ!」

「えっ?私だけ言うのか!?ひなたも一緒に言うんじゃ」

「さぁさぁ、若葉ちゃん!」

 

 ひなたが目を爛々に輝かせながら若葉を促す。躊躇っている様子だったが、やがて決心したかのように僕の目を見て吸血鬼若葉さんは言った。

 

「トリック…オア、トリート」

 

 慣れてない様子の若葉。しかし、逆にそのギャップがより今の若葉の魅力を掻き立てていた。これはひなたでなくても、クルものがある。

 

「あぁぁ!かわいい!とても、とても良いですよ!若葉ちゃん!」

「や、やめてくれ!撮るんじゃない、ひなたぁぁぁ!!」

「それは、ハァ…聞けない…ハァハァ、注文です…ハァ」

「っ〜!……さ、さぁ、洸輔!お菓子かいたずら!どちらを選ぶ!?」

 

 半ばヤケクソ気味になる若葉。その様子を見て…少し、こちらもからかって見たくなった。

 

(今日は若葉の色んな表情が見れそうだし、折角なら)

 

「……あぁしまったぁ〜お菓子が足りないやぁ。と、いうわけでどうぞイタズラをしちゃって下さい」

「そうかそうか、お菓子が足りないからイタズラ…って、えぇぇぇ!?」

 

 予想外の返答にあわあわと困惑しだす若葉。彼女には申し訳ないが、コレも仕方ない…だって、今日の若葉自然とからかいたくなっちゃうんだもの。

 

 ついでに言うとしっかりお菓子は持ってきてはいるし、しっかり皆の分用意もしてある。

 

「あ、あるじゃないか!そこにあるのはお菓子だろう!?」

「いやーごめんピンポイントで若葉のだけわすれてしまってー(棒)」

「それはしかたありませんねー(棒)」

「味方が一人もいない……だ、だが、イタズラと言っても…何をすれば」

「別になんでもしていいよ。さぁ、どんとこーい!」

 

 僕のそんな軽率な一言に反応したのは、若葉ではなくひなただった。

 

「ほぅ…洸輔くん、いま、『なんでも』と言いましたね?」

「え、うん。まぁ言ったけど…」

「ふむ…若葉ちゃん、吸血鬼といえば何を思い浮かべますか?」

「唐突だな……ううむ、やはり吸血鬼といえば血を吸う事だろうか」

「なるほど〜では折角、吸血鬼の仮装をしている事ですし〜それに因んで、彼の首筋に噛み付くというイタズラをしてはいかがでしょうか?」

「「え?」」

 

 若葉と声が重なる。その言葉の意味を理解するまでお互いに一瞬の間が生まれる。

 

「い、いやいや!そ、それは…なんというか、違くないか!?」

「あらあら〜?衣装を着る時に、もしもイタズラする事があればこの衣装に因んだ事をしたいと言ったのはどこの、誰、でしたっけ〜?」

「わ、わわ若葉さん!?!?」

「いや、それ、はその…」

 

 言い返す事が出来ずに完璧に項垂れた若葉を見る。ていうかめちゃくちゃ楽しんでるじゃん!ハロウィン!いや、良い事なんだけども!

 

「と、いうわけで私は皆さんのお迎え(軽い足止め)に行ってきますので。あとは二人でごゆるりと〜」

「ちょ、ちょっとま」

 

 止まる間もなく、ひなたが教室から出て行く。その場にはなんとも言えない静寂だけが残った。

 

「すまない…天草。ひなたの悪ノリに付き合わせてしまった」

「ま、まぁ別に大丈夫だよ。それで…どうしようか?」

「……どうしようか、とは?」

「いや、ほらひなたが言ってたいたずらのこと。やるなら…その、も少し噛みやすいように首、出すけど」

「……意外と、ノリノリだな」

「僕がいたずらして良いよ…って言ったのが始まりだからね。その責任は取らなくっちゃ」

 

 彼女に背を向け、首元が見えやすいようにする。チラリと後ろにいる若葉に視線を向けると、目を瞑って深呼吸している姿が映った。

 

「言ったな?そこまで言われたからには…私も引き下がる気はないぞ」

 

 多少荒れた息遣いが聞こえてくる。それは若葉のもの、何故かそれを聞いて、少し体が強張る。

 

 ハロウィンにおける遊びの一種。そんな程度に考えていた僕は甘かったのかもしれない…と、思った。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 そうだ、これはハロウィンを楽しむ為の余興だ。

 

(そう、何も変じゃない。首筋を噛むのだって)

 

 私は吸血鬼の仮装をしている。だから、そういう仮装にあったイタズラを行うだけ。そう、ただそれだけの話だ。

 

(何も…何も、変じゃない。そう、ただの余興だ…そう、ただの)

 

 意を決し正面を見ると、彼の綺麗な首筋が視界に映る。

 

 それを見て、ドクン…と心臓が高鳴る音がした。ゾワゾワとした感覚が背筋に走る。

 

(……あ、れ?)

 

 急激に体が熱くなるのを感じる。顔が火照ってきて、頭もぼーっとしてくる。

 

(私は、何を、しているんだ?)

 

 気づいた時には、もう、遅くて。

 

(ただの、余興…のはずだ)

 

 自分の体が、自分の物ではないようで。

 

(…まぁ、いいか)

 

 溶けていく己の感覚は、まともな思考を放棄させる。後は、ただ、流されていくだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に、いいんだな?」

「え、あ…うん。よろしく、お願いします」

 

 言葉が言い終わった直後、かつかつ、と足音がする。その音は真後ろで止まった。

 

「大丈夫だ…すぐに終わらせる」

 

 まるで頭の後ろに響くような甘くて優しい声。不思議と頬が紅潮していくのを感じた。

 

「…行くぞ」

 

 彼女の呼吸が近づく、指先が触れて、体は完璧に動かなくなった。

 

 ドクンッ、という心音が聞こえる。自分のものか、若葉のものなのか。そんな簡単な事すら分からなくなるほど、頭が回らなくなっていた。

 

「や、やっぱり…やめ」

 

 よくない…何か、よくない感情が湧き上がってくる。暴れ出す情動を必死に抑えつけ、言葉を発する。

 

 それに対して若葉は────。

 

「…いたずらされるのを望んだのは、洸輔の方だぞ…忘れたのか?」

 

 一言、そんな呟きが、耳元で聞こえる。

 

 首元に当てられる彼女の吐息は止まるどころかどんどん近づいていって────。

 

「…は、……ん」

 

 柔らかい、唇の感触が、首筋に伝わった。一瞬、ちくっとするがその後は寧ろ心地良さのようなものを感じていた。

 

「…若、葉?」

 

 すぐ、と彼女は言った。しかし、一向に彼女の唇が自身の首筋から離れる気配がない。

 

「その、もう、そろそろ…」

「……はぁ」

 

 唇が首筋から離される。なんとか首を動かし若葉を横目に見る。僕の目に飛び込んできたのは、恍惚とした表情で、僕の首筋を見つめている吸血鬼の姿だった。

 

 その姿を見てぞくり、と背筋が凍った。脳がこれ以上はいけない、と自分に訴えてくる。

 

「わ、若葉!これくらいでやめて」

「だめだ、もう一回…させてくれ」

 

 甘い声と言葉に脳が溶けそうになる。また、首筋に生々しい感触が伝わってくる。

 

 頭に思い浮かぶのは先程の若葉が浮かべていた恍惚な表情と、彼女の瑞々しくも肉感的な唇────。

 

「……ん……」

 

 艶かしい吐息、普段の彼女からは想像できない声が漏れている。危険…だ、このままいくと、こちらの理性が溶かされる。

 

(からかうべきじゃなかったかも)

 

 そう思った頃には、既に遅かった。いつのまにか、彼女の体が押し付けられている事に気づく。

 

「…こう、すけ…くれ、もっと…」

 

 若葉の柔らかい身体の感触が、こちらを狂わせようとしてくる。胸の内から湧き上がる情動を、唇を噛んで押さえ込む。

 

「……欲しい、欲しいんだ…」

 

 甘噛み、だけでは足りないのか。今度は吸い上げられていくかのような感覚がした。

 

 頭の中身が快感に埋め尽くされていく。徐々に、視界も、ぼやぼやと、してきた。

 

 ふとした時、自身の視線が時計へと向いている事に気づく。働かない思考をなんとか動かし、声を出す。

 

「若、葉…」

「…な、なん、だ?」

「時間…みんな、来ちゃうよ」

「…もう、すこし…もう、すこし、だけ」

「早く離さないと、皆に…見られちゃうよ?」

 

 ピクッ…と、肩に乗せられていた指が震えるのを感じた。少しの逡巡の後、名残惜しそうに彼女の唇が首筋から離された。

 

 頭が痛い、未だ首筋から伝わる感覚に力が奪われているように感じる。とりあえず一声掛けるべきと考え、彼女の方に視線を向けると────。

 

「……す、すまない、洸輔。その、どうか…していた」

 

 申し訳なさそうに視線を下げる若葉の姿が目に入った。

 

「う、ううん…良いんだよ。僕の方こそ、からかい過ぎた…ごめん」

「いや、そんな…事は」

 

 お互い、目を合わせる事ができず、視線を彷徨わせる。まだ頭が回りきっていないのか…彼女の唇にばかり視線が向く。

 

「……ねぇ、若葉」

「な、なんだ?」

 

 やめよう、それは聞かなくても良い事だ。

 

「質問、なんだけど」

 

 止まれ、止まるんだ、そんな事聞いてどうする。

 

「ここ…そんなに、美味しかった、かな?」

 

 馬鹿じゃないの?なんて事聞いてるんだよ、僕は。ほら見ろ、若葉固まっちゃってるじゃん、どうしてくれるんだ。

 

「いや!ごめん、変なこと聞いたよね!その…途中で、もっと…欲しいみたいな事言ってたから…気になったというか、あぁ、何言ってんだろ僕今のは忘」

「……そう、だな」

 

 こちらの言葉が遮られる。今度は、しっかり視線が合う。

 

「とても…美味しかったよ。その…もっと、したいと思うくらいには、な」

 

 彼女の目は酔っていた。もう一度、味を確かめるかのように舌舐めずりをしながら、こちらを見つめる若葉。

 

 その姿を見たせいか、心臓の鼓動がやけに早まっていくのを感じる。自然と足が動く。いつの間に移動したんだろう、僕は若葉の目の前まで移動していた。先程と同じように、僕は首筋を見せる。

 

(あれ、何やってんだろ…もうすぐ皆が)

 

 そんな事を考えている間に、若葉は歯を突き立てながら、僕の首筋に迫る。

 

「やぁやぁ!待たせたなぁ!二人とも!!!タマ達がきたぞぉ!!!」

『わぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 元気な声と共に、ドアが開かれたのとほぼ同時に僕と若葉は飛び上がる。ついでに、互いに距離を取った。

 

 さっきまで真っ白だった思考が再稼働する。

 

「おお!お前ら良い驚き方するなぁ〜タマも驚かそうとした甲斐があったぞ!」

「うん…超びっくりしたよ、いやマジで」

「あ、あぁ、私もほんとうにびっくりしたよ…」

 

 震えた声でそう言った若葉。まぁ、僕も似たようなもんだとは思うが。ゾロゾロと仮装した皆が教室に入ってくる、そこに僕らを見るなり目を輝かせながら寄ってくる人物が一人。

 

「おや…?おやおやおやおやおやおや?若葉ちゃん…?どうでしたか?洸輔くんの首筋は?」

『え?』

「ひなたぁ!?」

 

 若葉の悲鳴が聞こえる。僕は、もう…なんというかなんも言えないので天井を見て黙ってます。

 

「首筋…って、どういう意味よ、天草くん」

「もしかして二人でもう遊んでたとか?」

「ま、まぁ…」

「そんな、所…かな?だよね?若葉!」

「あぁ、そうだな!そう、二人で遊んでたんだ!な、洸」

 

 半ばヤケクソ気味な返答をしている最中、また若葉と目が合う。その瞬間、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

 

 同時に先程の若葉の言葉と、表情を思い出して…顔を直視できずに逸らしてしまう。

 

「どうやら…二人きりにした甲斐があったみたいですね(大体分かった)」

「へー、ふーん……そう(詳しい事は分からないけどイチャイチャしてた事は察した)」

「あ、えーと!ぐんちゃんと私の衣装どうかな!?若葉ちゃん!(ぐんちゃんが不機嫌になったのを察知、早めに話題を変えようとしてる)」

「なるほどぉ〜(だいたい分かった)」

「若葉のその衣装すごいな!かっこいいぞ!(分かってない)」

 

 その後、すぐにハロウィンパーティーが始まったわけだが……パーティー中、自身の心臓の高鳴りが一向に収まらないのをずっと感じていた。

 

(ずっと…収まらない)

 

 ドキドキして止まる気配のないこれは…何なのか。この時の僕は知るよしもないのだ。

 

(なんなの、これ…あー、もう、ワケワカンナイヨー!!!)

 

 ある意味、僕にとっては一生忘れられないハロウィンになったのは、間違いなかった。




 いかがでしたか?若葉ちゃんメイン回。ゆゆゆいのSSR一覧を見ていたら吸血鬼の格好した若葉ちゃんを見つけたのでこれは書かねば…思い、急遽執筆しましたが楽しかったぁ(切実)

 さて、まずは謝罪を…本編の更新が止まってしまい大変申し訳ありません。現在、書き溜めという形である程度完成したら一日ずつゆったり出していこうかなと考えております…続きを待ってくれてる皆様に深くお詫び申し上げます。ごめんなさい。出来上がるまでもう少しお待ち下さい。

 後、ここからは余談なのですが…とある物書き仲間と通話していた時に「わすゆに入ってから天草くんずっと可哀想だね」と言われまして…僕の中ではそんなつもりなかったんですが。読み返してみたら…うん、可愛そうでしたね(笑)まぁでもこっからまだ曇るのでそちらも楽しみに待っていてくださいね。

 という感じで…長くなりましたがここら辺で。天草洸輔は勇者である、略してあこゆをよろしくお願いいたします。それでは、皆様バイバイ。

 
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