「……また、ここなの?」
目を覚ましてみるとそこはこれまで何度も見てきた、全てが白で染め上げられた虚無の空間にいた。
『たくっ、どんだけ待たせんだよ』
「え?」
声がした方に、視線を向けると右手に銀色の剣を握った鎧が、背中をこちらへ向けながら佇んでいる。
ガシャン……と、鉄が擦り合わさる様な金属音が鳴り響いた。
「……鎧……?」
呟いた言葉を最後に、離れていた筈の鎧が、目の前に居た。
その手に持っていた両刃の剣を振り上げて。
「……ッ!?」
剣が振り下ろされ脳天に直撃……する前に、急いで白い空間の地面を転がる。 初撃は何とか回避する。
体制を直そうと立ち上がるが、その時には既に目の前に地面を削りながら、同時に剣をこちらに振るってくる。それを、紙一重で避ける。
「何するんですか!?」
『質問するぞ』
「……はい?」
『
「どう、いう……」
言葉が言い終わる前に、赤い閃光がほとばしり鎧は背後に回りこんでくる。殺気の込められた一撃に対し、咄嗟に右手が反応する。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。 今の僕には、バルムンクも無ければ、グラムも無い。避けられない、逃げられない。 その瞬間、脳裏に過ぎる。
【死】という明確な絶望が迫る。
「あれ?これ……なんで、なんで……グラムが!?今、僕は、勇者になってないのに……ていうか、この力は……えっ?」
しかし、閃光を伴った剣を僕は止めていた。以前、消失した力の一端を使って。思考が更に?に埋めつくされる。そんな中、鎧はよく分からないことを呟いた。
『それが、わかってねぇってことは……てめぇ、苦しむことになるぞ』
「っ……」
同時に視界が歪む。体が崩れ落ちて、視界は暗闇に包まれていくと、うっすらと鎧の声が聞こえてきた。
『これだけしかいえねぇが、言わないよかマシだから言っとくぞ。いいか、自分をしっかりと見定めろ。そして、もひとつ同じ力を持ってても、お前と
その言葉を最後に、僕の意識は闇へと落ちた。
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「ん……ど、どぉいうこと……っ!?いっでぇ!?」
突然、頭に感じた衝撃にびびって起き上がる。近くには目覚まし時計が、転がっていた。
「いってて……何があったの?……って、あれ?」
先ほど、勇者達のお墓があった場所にいたにもかかわらず、いつの間にか場所が変わっている。僕はベッドに身を預けていたのだ。
「これは……また、若葉?いや、もうそんなことを起こすほどの力はないって本人も言ってたから、それはないか」
とりあえずと辺りを見回す、すると、さっきから感じていた安心感の正体に納得した。
「ここは、僕の部屋だ。つまり、西暦じゃない……ってことは、普通に倒れた僕を園子か美森が運んでくれた?」
ゆっくりと、起き上がる。同時に何か違和感を感じた。
「なんか……家具の配置がいつもと違う?」
机の位置、その他諸々。いつもの部屋と配置が違っていた。動かした記憶もないため、先ほど感じた違和感が更に強まる。
「近くで見た方が、わかるか」
ベッドから下り、立ち上がると今度は違う違和感に襲われる。
「なんか、いつもより……目線低くない?」
そんなことを呟いていると、机に置いてある鏡に自分の顔が映り込んだ。
「あれ……?ちょっと待ってよ……」
ただ、鏡に映っていた僕の顔は幼かった。それこそ、前に見た小6の頃の写真に映っていた自分の顔のまんまだった。それを見て、すぐにカレンダーへと視線を向ける。
「そういうことか。確かにここは僕の部屋だけど、
ここは、神世紀300年ではなく、ましてこの前までいた西暦の世界でもない。僕、そして勇者部の皆が勇者としての力に目覚める2年前の時代であり、美森、園子……そして、三ノ輪さんが先代勇者として戦っていた時代。
「慣れって怖いな。いつのまに、こんな状況になっても驚かなくなっちゃったんだろ。ていうか、今度はどういう経緯で……ん?」
ポケットから、急に電子音が鳴る。
「この端末は……なんで、春信さんに預けたはず」
それは、僕が調整のため預けたはずの勇者システムが入ってる端末だった。不思議に思っていると、突然メールの着信が入った。
「全くもう……何が起きてるんだ?」
恐る恐るメールを、開き内容を確認する。それを見て目を見開く。
『このメールが届いたということは、あちらの君を神世紀298年の君の意識へ送ることは成功したということだな。ならば、単刀直入に言おう。君にはこの時代で起きている異変を解決してほしい。その為に必要な勇者システムはこの端末へと移してある。君が、使っていた端末とは別物故、新たな力をこれには移してある。それを使い、異変を解決してくれ。なお、一つ忠告しておくことがある。この時代では、決して君自身が体験した出来事、そして、
「意味がわからない……しかも、差出人誰かわかんないし……「こんにちはー!!」どっひゃああぁぁぁ!?」
超絶長い意味不明なメールが、読み終わると同時に部屋の扉が開かれた。突然のことに、変な声が出た。(どっひゃああぁぁぁ!?ってなに?)
「うわぁ!?び、びっくりしたぁ~」
「それはこっちのせり……ん?」
友奈の姿を見て、更にこの世界が神世紀298年だということを痛感した。自分の姿と同じように、友奈も小6の時の姿になっている。
「おーい?もしかして、怒らせちゃった?」
「あ、ああ、えーと、そうだ!ノックくらいしなさい!」
「えへへ~ごめんなさーい♪」
なんで、怒られて嬉しそうなの?この子?状況はわけわかんないし、把握もまだできてないけど……友奈の笑顔を見ると、落ち着くな。
「よーし!それじゃ、遊ぼうか!」
すると、突然友奈の動きが止まった。
「……今、来るのか」
視界が、まばゆい光に包まれていく。状況は把握しきれてない、突然意味のわからないメールも飛んでくるし……でも、あの内容を信じるのならば。
「きっと、この時代で勇者として戦うことが、僕の目的……」
スマホをタップする。勇者システムを起動して、力を呼び寄せる。
「あれ?……ジークさんの力じゃない?ていうか、重っ!?よ、鎧なのか、これ?顔も隠れてる感じのやつ?」
そういえば、新たな力がみたいなこと書いてあったな……あのメールに。
前までの勇者服って感じが全くない……完璧に体に鎧を身に纏っている。今までの、シグルドさんとジークさんの力を借りていた時のような、勇者服さはない。まぁ、剣が銀色って部分は前の時と一緒だ。
「にしても、妙に体が重い……なんでだ?」
そんなことを呟いていると、遠くの方で爆発音が聞こえた。同時に、バーテックスも見えてきた。
「っ、四の五の言ってられないか!とりあえず、あいつを倒す!!」
一旦考えるのをやめ、遠巻きに見える化け物に向かって跳躍した。
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~鷲尾須美視点~
「来たわね、バーテックス……あのフォルムは、天秤かしら?」
「天秤が、空に浮いてるねぇ~」
ゆらゆらと揺れる巨大な敵は、ゆっくりと大橋を前進してくる。壁の外から来る敵から神樹様をお守りする。それこそ、私達勇者の役目だ。
「全く、どういう生き物なんだかな……あいつら。一回目の時も思ったけど、ウイルスの中で生まれただけであんな形なるもんなのかね」
「あ~ミノさん、戻ってきたぁ~」
「何か、あったの?銀」
「ううん、今んとこあのバーテックスがいるってこと以外は何もないよ。
「そう……」
つい最近、私とそのっち、銀の三人は一度勇者としての戦いは経験している。その時、ある異変が起きたのだ。本来、私達が聞いていた話では、相手するべき異形の存在はバーテックスのみだった。しかし、前の戦いで謎の人型の存在が二体も現れたのだ。
「結局、奴らは一体なんなのかしら?」
「不気味だったね〜一体はなんか、変な仮面つけてたし……」
「まぁ、なんにせよ!今は出てきてないことだし!とりあえず、こいつをサクッとやっつけちゃおう!」
「ミノさん、やる気いっぱいだねぇ〜」
「もちろん!この三ノ輪銀様の力とくと」
「銀、調子に乗らない!しっかり、訓練通りに行くわよ」
「そ、そうだった!つい、敵見ると突撃したくなっちゃって。須美、よろしく」
銀とそのっちがバーテックス目掛けて跳躍したと同時に、弓を射る。できることなら、私のこの弓のみで決着がつくのなら、それのほうがいい。
「向こう側に、戻りなさい!!」
何本もの矢を、敵目掛けて同時に放つ。矢は空を裂いて、化け物に向かって飛んでいく。この矢は神の力を得ているため、的確に目標へと飛んで行った。しかし、その矢は敵には通じなかった。
「そ、そんな!?」
「須美!ここは一旦、私たちに任せて!」
「ミノさん、あの敵、体と体が繋がっている部分が、細くてもろいかも!」
「接続部を狙って攻撃ね!了解!!」
敵の左右から、呼吸を合わせて銀とそのっちが攻撃を仕掛ける。すると、天秤は自身の体に付いている分銅を振り回すかのように、大回転を始めた。竜巻のような防護壁を作り出し、二人が吹き飛ばされる。
「このっ、ち、近づけない……!」
「あわわわぁ〜」
「っ……み、身動きが取れない」
すると、回転の遠心力を利用し、敵は先程私が放った矢を私の方に向け一斉に射出してきた。
「矢をそんな風に返すなんて!」
なんとか体をひねり回避する。しかし、回避したことによって矢は樹海の方へと飛び、樹木が爆発し傷ついてゆく。
「樹海が……私の矢で……!!」
「須美、前!!」
「えっ?………………あ」
銀からの声で、視線を前へと向けるともうすでに目の前に、何本もの矢が迫ってきていた。
「須美!!」
「わっしー!!」
二人の叫び声が聞こえる……避けないと、そうしないと……確実に。でも、この距離では。
(嘘……私、こんな……)
目を閉じる。敵によって放たれた矢によって私の体は貫かれ……ることはなかった。
「危ないっ!」
「っ!?」
私が目を開けると…目の前には鎧がいた。鎧は私を守るように前に立ち、銀色の剣に赤い閃光を走らせながら、矢を全て斬り伏せた。
「ふぅ、間一髪って感じかな」
「あなたは……一体?」
「僕?僕はね」
こちらを振り向かずに、背中だけを向けている。突然現れた謎の鎧……なのにも関わらず、何故か私はとても、安心していた。
すると、鎧はこちらを見ず、私への問いに対して簡単に言った。
「君たちと、同じ。奴らを倒すために選ばれた勇者さ」
はい〜1話になりました!どうでしょう!(どうでしょうってなんだ?)
ついに、わすゆ組と天草くんが接触!!これからの展開もお楽しみに!( ´ ▽ ` )
投稿ペースはかなり落ちていますが……やめるつもりは毛頭ありません!リアルが忙しすぎて……時間が前よりも作れないだけです。読者の皆様には、大変申し訳ないのですが、ご理解の程よろしくお願いいたしますm(._.)m