〜鷲尾須美視点〜
「さて、どうしたもんかな」
「……」
突然目の前に現れた鎧は、困ったように呟く。鎧の姿からは想像出来ないほどに、穏やかな声が聞こえてくる。
「まずは、奴をどうにかしなくちゃ!」
「あ、ちょ、ちょっと待ってくださ……っ!!」
私が声を掛ける前に、鎧はバーテックスに向かって飛び立っていった。その直後に、銀とそのっちがこちらに駆け寄ってきた。
「須美!大丈夫か!?」
「わっしー!無事でよかったよ〜」
「二人とも……」
「よかった、無事で……てゆーか、あの鎧はなんだろ?」
「わっしーのことを、守ってくれてたから……敵ではないんじゃないかなぁ〜?わっしーは何か知ってる〜?」
「え、えと……私にも、よくわからないけど勇者だって」
「へっ?どういうこと?」
「勇者って言ってたの、私達と同じって……」
バーテックスに対して、突っ込んでいった鎧の方へ視線を向けながら、二人に対してそう言った。
「ま、考えてもしゃあない!守ってくれたってことは、敵ってことはないだろ!」
「そうだねぇ~あ、ミノさん!あの鎧さん、押されてる!助けないと!」
「ほんとだ!須美!ここから、いつも通りに援護頼む!」
「え、ええ!」
わからないことは多いけど、今はお役目を果たさなくては!それが、お役目を任された勇者の使命!
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「くっそ!やっぱり、なんか重い!!」
バーテックスに対し、強引に攻撃を繰り出すと回転で弾かれてしまう。しかも、鎧の重さでいつもより体がうまく動かない。
「なんでだ?シグルドさんとジークさんの時は、すぐ体に馴染んだのに……」
どうしてか、今回のこの姿は全然馴染まない。寧ろ、動きにくい。みも……じゃなかった、須美ちゃんにあんなこと言っていて結構押されてる。
「でも、ずっと押されてるわけにはいかないよね!はぁぁぁぁぁ!!」
叫び声と共に、僕の周りに赤い雷鳴がほとばしり始めた。その雷が剣に集まっていくのがわかる。
「これでも、くらえぇぇぇぇぇ!!!」
雷鳴を伴った剣を振るうと、バーテックスに直撃する。
「よしっ!このまま、撃破……っ!?!?!?」
剣に全エネルギーを集め、バーテックスに叩きつけようとすると突然頭痛に襲われ、態勢が崩れる。
敵が回転して、こちらに鈍器を振るってくる。一瞬の、隙を突かれて対応に若干遅れる。剣で、なんとか直撃は防ぐ。
「ぐぅぅう!!や、やっぱり、ち、力が入りきらな……あっ」
足で踏ん張ろうとするも、力が入りきらずに吹き飛ばされる。体が飛ばされて、木に激突しそうになる。
「危ない!!」
「っ!?」
そんな時、背後から声がすると、急に体が誰かに支えられる。同時に勢いはなくなり、木にぶつからずに済んだ。
「よし、間に合った!!」
「ミノさん、ナイスキャッチ〜!鎧さん、大丈夫〜?」
「う、うん、ありがとう助かったよ……」
「わっ!?しゃ、喋った〜!?」
「いやいや、さっき須美言ってたろ!?ま、まぁいいか……鎧さん、あいつ倒すために力を貸してくれない?色々聞きたいことあるけど、今はあいつをどうにかしなきゃだからさ!」
「……了解!」
少女の言葉に力強く頷く。なんだろうか、彼女の言葉はすごく熱い。恐らくだけど、この子が三ノ輪銀……。
「ぴっかーんと閃いた!ミノさん、鎧さん、台風に目ってあるよね?この回転も、周囲に強かったとしても、頭の上は弱いのかもしれない!」
「なるほど、上から飛び込めばいいってことか!」
「じゃあ、僕が先陣をきろう。奴の懐に入って動きを止める!」
「鎧さん、いいの!?」
「君達よりも、僕の方が鎧を着てて頑丈だからね。任せてよ!」
「じゃあ、私はわっしーにそのことを伝えてくるんよぉ〜」
各々が、それぞれの役割の為に動き出す。三ノ輪さんと僕は跳躍し、バーテックスの真上の方へと向かう。
「鎧さん!頼んだ!」
「任せて!」
剣を肩に担いで、竜巻の中へと身を投じていく。とんでもない風圧が体を襲う。
「とまれぇぇぇぇ!!」
自分の胸を拳で強く殴って渇を入れる。すぐに、身を捻って回転する天秤の頭上に向かって剣を振るう。
しかし、それだけで止まるわけもなく、風の刃に襲われる。
「この、デカブツがぁ!止まれって!言ってんだろうがぁ!!」
剣を両手で持ち、刃を下に向け頭上へ突き刺す。大きな斬撃音が、響き渡ると天秤の動きが止まった。
「止まった!!!」
「鎧さん、ナイス!!」
掛け声と共に、三ノ輪さんと園子が敵の中へと飛び込んでいく。須美ちゃんも少し遅れて、敵の間合いへと踏み込んだ。
「ミノさん、わっしー、鎧さん!いくよ~!」
「一斉攻撃だぁぁぁ!!」
「ええ!この距離なら……」
「覚悟しろ、バーテックス!!」
そこからは一方的な戦いになった。剣と斧による終わることのない斬撃、ゼロ距離から放たれる矢、中距離から巻き起こる槍の連撃。相手にまとわりついて、回転を許すことなく、僕達はラッシュを続けた。
「よーし!あともう少しで、こいつを撤退させられる!」
「……撤退?」
「そうだよ~鎧さん!私達の役目は、こいつらを追い返すことだからね~!」
それを聞いて疑問がよぎる。撃破はせず、撤退が目的?この時代では、それが目的だったのか?
(どういう事だ……?)
そんなことを考えている内、少女達の言った通り敵は僕らに追い立てられるように橋から撤退していった。
「よっしゃー!」
「今回もなんとかなったねぇ~鎧さんも、おつかれ~」
「う、うん、ありがと……それと、お疲れ様」
「あ、あの……」
「ん?」
背後からの弱々しい声に振り向くと、そこには須美ちゃんがいた。何か言いにくそうに、もじもじとしている。
「その……あの……」
「?」
「須美~恥ずかしがってちゃ伝わんないぞ~」
「そうだよ~わっし~」
「???」
三人のやり取りを、頭に?を浮かべながら見ている。
次の瞬間、謎の寒気に襲われる。この時代では、初めて感じる……けど、でも、この感じ、前にもどこかで。
「……なんだ?」
「鎧さん?」
「銀、そのっち、え、ええと……鎧さんも」
「須美?」
「
須美ちゃんが指差した先には、黒い仮面……いや、バイザーのようなものを着けている。黒い甲冑のようなものを身につけ、こちらを見据えている誰かがいた。
「なるほど……通りで鎮花の儀ってのが起きないわけだ」
「どういうこと?それに、奴は?」
「この前、私たちを襲ってきた奴だよ。詳しいことは分からないけど、気をつけて!」
「来る!!」
須美ちゃんが叫ぶんだとほぼ同時に、奴はこちらへと一直線に迫ってきた。しかし、瞬間、姿が消える。
「どこ行った!?」
「き、消えちゃった?」
「二人とも!後ろ!」
「今、お前たちに用はない、どけ」
消えたのではなく、こちらへと一瞬で移動していた。黒仮面は手から出した波動のようなものを使って、二人を弾き飛ばした。
すると、今度はどこからともなく剣を取り出し、こちらに振るってくる。寸前の所で、こちらも剣を使い防ぐ。
「銀!そのっち!」
「っ!?お前、よくもぉ!!」
「おっと……あぶねぇあぶねぇ。にしても、久しぶりだなぁ?」
「はっ?」
「やっぱ、俺らの関係はこうじゃねぇと」
「さっきから、ごちゃごちゃと何を言ってる!!」
よく分からない言葉に、苛立ち強引に黒仮面に向かって剣を振るう。しかし、それは難なく回避される。
「よっと……あくまで、今日は挨拶をしにきただけなんでね。これ以上は避けたいとこだ」
「逃すわけないだろ!!」
「鎧さんの、言う通り!」
「隙あり〜!」
「はぁ!」
先程、弾き飛ばされた三ノ輪さん達が、一斉に黒仮面に向かって動き出すのと同時にもう一度奴に斬りかかる。しかし、それは奴の体をすり抜ける。
「何!?」
「攻撃が通らない!?」
「言っただろ?今回は、あくまで挨拶だけだってな……そんじゃ、また会える日を楽しみにしてるぞ……作り物」
「作り物?」
黒い仮面はこちらを向きながら、呟く。言葉の意味を問い返そうとした頃には……既に奴はそこからいなくなっていた。
(あいつ……僕を見て言ったのか?それに……あの感じ……いや、まさか、そんなはずは……)
考えこんでいると、樹海に変化が起こり始める。場は静まりかえり静寂が空間を包みこむと……やがて、まばゆい光が樹海を包み込むと共に、桜の花びらが舞い出した。
「鎮花の儀……ということは」
「終わったぁーでも、また逃げられたー!」
「また、あのときと一緒……彼の目的は一体?」
「うーん、なんなんだろうねぇ~?鎧さん、わかる?」
「えっ!?そこで僕に聞くの!?」
「なんとなく流れでぇ~」
「そのっち、人を困らせるようなことはしない」
「えへへ~ごめんなさぁ~い」
園子はいつだって園子だね。この二人は、昔からこんな感じだったんだ……なんか、嬉しいな。てか、てへぺろ顔だと……謝られてる気がしない。
「あー……てっ、そうだ!!鎧さん、結局、あんたって何者なの!?」
「そういえば、続きだったぁ~鎧さんどうぞ~」
「……」
三ノ輪さんと園子はキラキラした目を向け、須美ちゃんはこちらを無言で見つめている。とりあえず、顔を見せようとすると、兜が半分に割れ、視界が鮮明になった……のはいいんだけど!!!
「わぁ〜!!男の子だぁ〜!?」
「男の子〜んなわけな……本当だ、男だ……」
「おかしい、男性は勇者になれないはず……いや、私達が知らされていないだけで……本当は男性が使えるものも?」
「嘘、嘘でしょ!?待ってよ、割れるなんて聞いてないよ!?」
待ってくれよ!今まで、こんなことなかったぞ!?兜が半分に割れて壊れるとか……過去や未来に飛ばされるとかよりもよっぽど恐ろしいんだけど!
どうしよう、これ、これ瞬間接着剤でくっ付く……?
「……えっと……取り敢えず自己紹介するね……僕の名前は天草洸輔……です。」
「お、おおう、テンションの下がり具合が……天草洸輔ね。OK、覚えた!私、三ノ輪銀!よろしく!」
「なるほど~じゃあ、こうくんだ~!あ、私は乃木園子だよ~よろしく~」
「鷲尾……須美です、よろしくお願いします……」
「うん……宜しくね」
全員が自己紹介が終わると、地鳴りが起き始め、花弁のような光が吹き荒れ出した。
「そろそろ、時間……かな?それじゃまた会おうね、皆」
「あ、あの!」
「?」
「あ、ありがとうございました。さっきは……助けていただいて」
「……いいよ、同じ勇者同士これからも頑張ろうね」
こちらに向かって律儀に頭を下げた須美ちゃんとその後ろで手を振ってる三ノ輪さんと園子を見届けると、視界が光に包まれた。
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ゆっくりと瞼が持ち上がってくる、見えてきたのは自分の部屋だった。
「ん、んん?あれ?ここ……「よかったぁ!!!」ごぼぉ!?」
瞬間、えぐい衝撃が腹を襲う。目線を下げると、涙目で僕のお腹に手を回している友奈がいた。
「急に何をしても、反応しなくなったからびっくりしたよ~!」
「あ、ああ……ご、ごめんね。ちょっとボーッとしてて」
「むー、まぁ、いいか!それじゃ!洸輔くん、あーそーぼー!」
「わかったわかったって。だからさ、とりあえずそろそろ、離してくれない?」
「………私を振りほどけゲーム!」
「なんだ、その無理やり過ぎるゲーム!?」
「いいからー!はーやーくー!」
「ああもう、わかったから!!落ち着きなさーい!」
まだまだこの状況に対する疑問や不安は拭えないけど、頑張ろうと友奈の楽しそうな笑顔を見て僕は思った。
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~鷲尾須美視点~
樹海から帰還したその帰り道、私達三人は先ほど出会った少年のことについての話題で持ちきりだった。
「良い奴だったなぁ~天草か」
「また、会えるかなぁ~」
「……」
「わっしー?」
「どしたー?須美、さっきから考えこんで」
「あ、ご、ごめんなさい、二人とも……なんでもないわ」
ただ一人で、私は思考の海に静んでいた。勇者であるならば……なぜ同じ勇者である私達は彼のことを知らなかったのだろうか?
「天草洸輔……彼は一体?」
彼の顔を思い浮かべながら、考えても答えは出ないと分かっていても、私は思考を巡らせ続けていた。
わすゆ編第2話!!!いかがでしたでしょうか!ヾ(๑╹◡╹)ノ"
いやぁ〜しれっとあいつも出現して……いや、なんでもないです!!
つ、次も頑張って書きますので応援よろしくです!あ、感想もらえたら嬉しいです\( 'ω')/