またより良い作品に仕上げるためにも、批判をお待ちしております。
どうかお手柔らかにお願い致します!
碧色の月、紅い夜空、それは常ならばありえないもの。
夜空は暗く蒼く、月は白い、それが正常。
しかし、今この時はそうではなく、碧色と深紅が世界を染めていた。
のどかだったと思われる街を染めて、街は静寂に包まれ、だが見える影1つ。
それは無地の白いパジャマを纏った15歳程の少女であった。
少女は黒い短髪に黒い瞳を持ち、その身は細く、だが少し平均的女子より高い。
そんな少女は、肩で息をしながら走っていた。
それは必死の形相、恐ろしいものから命からがら逃げているようにも見え、小さくなった瞳孔が物語る。
誰一人いないアスファルトの道を走り続け、疲れてしまったのか足が止まる。
両膝に手を付き、ゼーゼーと息を吐く。
恐れているものが追ってきていないか、彼女は後ろをゆっくりと振り向いていく。
しかし彼女が逃げていたものは追ってきていたようだ。
それは巨大で粘膜を持ち軟体性、気色の悪く黒い、ナメクジのようなものだった。
ゾルゾルと身を引きずる音とともに、触覚とも言えそうなものから目玉が見え、それが少女をじっと見つめていた。
巨体と移動法に似合わぬ速度、スポーツカーのような速さで少女を追ってくる。
逃げ切れるわけがない、それでも少女は走る、走ることを再開する。
どこまでも続いているとも錯覚しそうなほど長いアスファルトの道を走り続ける。
息を荒くし、腕を大きく振り上げ、足を駆り立てる。
項を覆うほどしかない髪が乱れ、玉のような汗が次々と流し落とされる。
走走走走走走、それでも少女ではたかがしれている。
あっという間にナメクジのようなものは少女に追いつき、身体から何らかの触手のようなものを伸ばし、彼女の足を絡めとってしまった。
顔面から地面に叩きつけられる少女、再度立ち上がるまもなく引きずられ、顔を上げて後ろを振り向き、自身を転倒させたものの正体を知ることしか出来なかった。
そして、それがわかった瞬間、少女はあまりの恐怖に悲鳴をあげることすらできなかった。
ナメクジのようなものの眼前に連れてこられる、それはやがて口のようなものを大きく開く。
中は真っ暗で、だが紅いヒダのようなものが何重にもあり、よく見ると奥の方に歯と思える白い物体も見えた。
そんなものを見た少女の心の内は1つ。
食われる、それだけだった。
必死で足に絡まった触手を外そうと、触手を蹴ったり殴ったり、引っ掻いたりして入るが一向に離れない。
そもそも離したところで逃げられないというのに、少女の虚しい抵抗は意味をなさず、彼女は彼女にもたれ掛かるように食らいついた………
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
全身から汗が吹き出し、パジャマが肌に張り付き下着が透けて見えている。
髪も皮膚に張り付いて、気持ち悪さを助長する。
肩で息をし、目の前の光景をよく見始めた。
視界に広がるのは己の部屋、今どきの女子には珍しいだろうと言えるほどの殺風景。
勉強机と部屋中央のコタツ机、そしてレモン色の無地壁紙が施された壁面に、北側に大きなカーテン、南側に出口と思われる付近に見える若草色の襖が2つ。
5畳弱の部屋の華は、勉強机の端に置かれた、可愛らしくデフォルメされた白い狼のぬいぐるみのみ。
それらを見て、ゆっくりと息が落ち着いていく少女。
情報を整理し始める少女、彼女は誰も聞くものがいないにもかかわらず、1人呟き始めた。
「…私の名前は【
頭を振り、夢なんだと言い聞かせる。
頬をさらに叩き、寝ぼせた頭を完全に覚醒させる。
そうしていれば落ち着き、呼吸も整う。
そこで自身の身体にようやく気づく。
気持ちの悪い感覚を生み出すパジャマへと指を伸ばし、一気に脱ぎだす。
下着の方もやはり汗で塗れており、それも脱ぎ、パジャマとまとめてベットの端にたたんで置く。
「一人暮らしなんだ…初めての……不安からあんな夢見たんだ…シャワーでも浴びて忘れよう、うん、それがいい」
そう言って、彼女はバスタオルを片手に部屋を出る。
部屋の外には短い廊下、先に鉄の扉とひとつのみの靴。
また曲がり道が2つあり、奥にキッチン、手前にシャワー室があった。
無論、現在全裸の彼女はシャワー室へと向かい、酷い寝汗を流す。
所謂ユニットバス、洋式トイレのそばに風呂がある。
それをみて彼女の表情は若干歪むが、慣れていくさと自身に言い聞かせ、浴槽へと足を運ぶ。
そうしてカーテンで雫が飛び散らぬようにして、シャワーノズルを回し、湯水を浴びる。
暖かなものが、彼女の滑らかな肌を伝って落ちる。
彼女の体は柔らかな程よい大きさの双丘とハリのあるお尻、シミひとつない白い肌。
そこに溢れた汗を、湯水は洗い流し、汚れを払っていく。
そうして、汗が流れたことを確認してから、彼女はシャワーを止めて、バスタオルで四肢を拭く。
柔らかな素材でできたそれは、彼女の体を優しく包み、水滴を吸収していく。
やがてはすべて吸い付くし、濡れたそれを彼女は丁寧にたたみ、部屋へと持って帰る。
そして部屋に付けば、入ってすぐの襖を開く。
さすれば中にあるのは2つのタンス、右側は私服、左は学校と上部に記載され、他にもトップスボトムス下着制服など一目で何が入ってるか分かるように、種類分けされたシールが貼られていた。
その中から下着の欄を取り出し、彼女はそれを履き、付けていく。
所謂水玉シリーズと言ったところか、紺をベースに白い水玉がいくつも見える。
地味ながらも可愛さを忘れない見た目、誰かに見せるという訳でもないのに、彼女はそれにした。
その後に私服のトップス欄から白いTシャツを取り出し、それを纏う。
そうして着装した後にバスタオルと先程ベットの端に置いたパジャマと下着1式を持って、北側のカーテンを開ける。
そこにはガラス窓、いや正確にはガラス扉が設けられており、向こうからベランダが見えた。
さらにはそのベランダの端には、少し古ぼけた洗濯機と蓋付きの籠が置いてあり、彼女はその洗濯機へと手に持った2つを投げ入れた。
そして、蓋付き籠を開く。
中には洗剤や柔軟剤などがそろっており、その内から洗剤を取り出した。
洗剤を適量汲み取り洗濯機へ、洗濯機の蓋を占めてスタートボタンを押して起動させれば、水が注ぎ込まれて洗濯がスタート。
ゴウンゴウンとなる洗濯機をあとにして、彼女は部屋へと戻る。
「さてと……4月4日、いよいよ明日だね」
1人呟き、タンスへと歩み寄る。
制服の欄を開き、そこから取り出すのは紺を主体とした、白いラインが走る学生服。
所謂ブラウスと言ったところか、しばらく感慨深く眺めて、それをぎゅっと胸に抱く。
「始業式前日に、あんな夢を見るとか最悪だけど…切り替えていこう!」
そう言って制服をハンガーに吊るし、すぐに着れるように壁に吊るす。
狼誇は改めてそれを眺めて、制服を着た自身を想像し嬉しそうに、鼻歌交じり小躍りした。
春風爽やかに流れる4月3日のこと………
この悪夢が現実になるとは、神久狼誇はまだ知らない。