雪穂「ディケイド…!」
亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」
ツカサ「…ファイズの世界か」
マキ「私はオルフェノクなのよ?」
雪穂「…それでも私は、マキさんを信じたい」
亜里沙「だってマキさんは…マキさんだから!」
モモセ「もうファイズはいない…今まで我々を排除し、追放してきた人間達にオルフェノクの力を思い知らせる」
マキ「私には夢がない…でも、夢を守ることくらいならできる!」
マキ「だから、私は人の夢を奪うオルフェノクと戦う…人間として!ファイズとして!!」
ツカサ「ちっぽけだから、守らなくちゃいけないんだろ!」
ディケイド「オレとマキの力だ」
マキ「ツカサ…ありがとう」
第12話『もう一人の自分』
(小学生の頃、私はバレエ大会に参加する為…応援しに日本にやってきた妹と一緒に、シブヤにある会場に向かっていた)
(でも、その途中で私達は…目の前が真っ暗になってしまうほどの衝撃を受けた)
(後に近くで隕石が落ちてきた事が分かったけれど…当時の私には何が起こったのか、考える余裕も無かった)
(一時的に意識を失っていた私が激しく咳き込みながら、目を覚ますと…自分が瓦礫の下敷きになっていると分かった)
(幸い、大きな怪我はしていなかったけれど…瓦礫の重みで私はその場から出る事が出来なかった)
(このままだと私は助からないかもしれない…そう諦めかけた時、妹の『助けて』という声が聞こえた)
(僅かに空いていた瓦礫の隙間から私は…同じように瓦礫の下敷きになった妹を見つけた)
(私は妹に声をかけ、瓦礫の間からお互いに手を伸ばしたけれど…妹の手にはなかなか届かなかった)
(妹だけでも絶対に助けたい…そう思った私は、近くで埋もれていた金属製のベルトを見つけた)
(次の瞬間…私はそのベルトを手に取って、自分の腰に装着した)
(すると、私の中で何かが沸き上がり…瓦礫の中から脱出した)
(すぐに妹の手を取った私は…意識を失いかけていた妹を安心させる為にこう言った)
?「大丈夫よ…私がそばがいる」
(それから七年の月日が経って…私は買い出しの帰りに神社へと立ち寄った)
(暮れ始めた春の明るい夕日の中…そこには肩で息をしながら、神社に向かう階段を走って上り下りをしている二人の少女がいた)
(少女のうちの一人は…もうすぐ高校生になる私の妹だった)
(その後、妹ともう一人の少女は何が何だかよく分からない歌を…ほとんどやけっぱちに怒鳴るみたいに空に向かって放ってる)
(顎を上げて…懸命に、この空の向こうのどこまでも届きそうなくらいの情熱で)
(その後、妹はもう一人の少女から教えてもらいながら…境内でダンスの練習を始めていた)
(途中で転んだり、危なっかしく見えたけれど…教える少女も教えてもらっていた妹も本気である事は私にもよく伝わっていた)
(…やっぱり、これで良かったんだと思う)
(私には…あんな風に無心に走る事も踊る事も、やけっぱちに叫んで歌う事も出来ない)
(だから、私は私なりに…天の道を往こうって決めたの)
(いつまでも続くようにっていう未来は…私には到底、見えそうには無いけれど)
(素敵で羨ましいような未来を…そんな道の先を脇目もふらずに真っ直ぐ見据えて走っていく少女達を)
(この先…一体、誰が守ってあげられるといのの?)
(そう、おばあさまは言っていた…)
(かしこいかわいいエリーチカ…それが出来るのは、あなただけしかいないって)
オネエチャーン!
エリ「…ふふっ」フリフリ
~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~
ツカサ(オレの作った料理を雪穂達が食べていると…写真館の背景が違うものへと変化した)
亜里沙「これが次の世界…?」
ツカサ「…そうか、そういう事か」
ツカサ(背景には…東京タワーと太陽を差す指が描かれていた)
雪穂「いや、どういうことなの…?」
ツカサ「ここはカブトの世界だ」
雪穂「だから、そうじゃなくて…私の話聞いてる?」
ツカサ(オレが雪穂の話をスルーして背景を見つめていると、ツバサが口を開いた)
ツバサ「この世界では…隕石に取り付いて宇宙から地球にやって来たワームという生命体がいるの」
雪穂「ワームっていうことは…虫みたいな姿をしてたりするんですか?」
ツバサ「ええ、基本的にワームは…サナギ体と地球の昆虫や節足動物によく似た外見や能力を持つ成虫体の二種類がいるの」
ツバサ「そしてワームには大きな二つの特徴があるわ…まず一つは人間に擬態する能力」
雪穂「擬態かぁ…そういえばファンガイアやオルフェノクにも人間の姿がありますけど、ワームの擬態は何が違うんですか?」
ツバサ「襲おうとする人間と瓜二つになると同時に…記憶や人格、嗜好までもをコピーするの」
雪穂「襲おうとする人間とそっくりに?…あっ!」
アラクネアワーム『あなたが消えれば、私は私になれる…』
雪穂「まさかあの時、私に化けてたのって…?」
ツバサ「心当たりがあるなら話が早いわね…そう、ワームはコピー元の人間を襲って入れ替わる事で人間社会に紛れ込むの」
ツカサ「まるで何事も無かったかのように…な」
雪穂「そんな…」
ツバサ「そしてもう一つ…成虫体のワームはクロックアップという能力が使えるの」
雪穂「クロックアップ?」
ツバサ「簡単に言うと、音や光のように高速で動く事が出来るの…まるで周りが止まっているかのように見えるくらいにね」
雪穂「それが…クロックアップ」
ツバサ「そんなワームに対抗する為に作られたのが…ZECTという組織が製作したマスクドライダーシステムよ」
ツバサ「カブトを始めとしたマスクドライダーシステムも…成虫体のワームと同じように、クロックアップが使えるの」
雪穂「…それで、私達は明日からこの世界で何を?」
ツカサ「明日から?」
雪穂「いや、だって…どうせ今動いても何にもならないんでしょ?」
ツカサ「へぇ…よく分かってるじゃないか」
雪穂「今でもあんまり納得してないけどね…」
ツバサ「そうね…今回はあなた達三人で自由に行動してみると良いわ」
ツバサ「ひょっとしたら良い出会いがあるかも…ね?」ガタッ
亜里沙「…?」
ツカサ(亜里沙を見ながらそう言ったツバサは立ち上がると…)
ツバサ「ごちそうさま」スタスタ
ツカサ(足早に自分の部屋へと戻っていった)
ガチャ…バタン
雪穂「自由に行動する…か」
亜里沙「…あっ、思い出した!」ガタッ
ツカサ(何かを思い出した亜里沙は…突然、立ち上がった)
ツカサ「どうした?」
亜里沙「私たちの世界でカブトになったのは…私のお姉ちゃんだ!」
雪穂「あっ…そういえば、確かに私のお姉ちゃんが絵里さんのことをカブトって呼んでた!」
亜里沙「だから、こっちの世界のカブトも…きっと私のお姉ちゃんだよ!」
ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」
亜里沙「こうしちゃいられない…早くお姉ちゃんを探さなきゃ!」ガタッ
ツカサ「待て…そう焦るな、もう夜中だぞ?」
亜里沙「でも…」
ツカサ「今日はゆっくり休め」
ツカサ「明日になったら…オレが一緒に探してやるから、な?」
亜里沙「…分かった」シュン
ツカサ「よし…じゃあ、まずは腹ごしらえだ」
亜里沙「うん…」
ツカサ(椅子に座った亜里沙は…食事を再開した)
雪穂「ねえ…前から思ってたんだけどさ、何か亜里沙にだけ優しくない?」
ツカサ「はぁ?…気のせいだろ」
雪穂「そうかなぁ…?」モグモグ
ツカサ(ゆっくり休んだ次の日の朝…オレ達は写真館を出た)
ツカサ「…何だこれ」
ツカサ(オレの服装は作務衣に変わっていた)
ツカサ(作務衣の裏地をよく見ると…そこには『天道ツカサ』という刺繍が入っていた)
ツカサ「天道…それがこの世界でのオレの名字か」
ツバサ「二人とも…はい、これ」サッ
ツカサ(ツバサは雪穂と亜里沙にある道具を渡した)
雪穂「これは?」
ツバサ「それはゼクトマイザー…スイッチを押すと小さなカブト虫型の爆弾が敵に向けて発射されるようになっているの」
ツバサ「もし彼が近くにいない時に、ワームに会ったら…この道具を使って逃げなさい」
雪穂「これでワームを…分かりました」
亜里沙「ありがとう、ツバサさん!」
ツバサ「どういたしまして…それじゃ、私は用事があるから」スタスタ
ツカサ「あっ…おい待て!」
ツカサ(しかし、ツバサは…振り向く事も無くその場から去ってしまった)
亜里沙「行っちゃったね…」
ツカサ「エリがどこにいるか聞こうと思ったんだが…全く、仕方ないな」ハァ
雪穂「きっと自分で探せってことじゃない?」
亜里沙「じゃあ…とりあえず行ってみよっか!」ダダッ
ツカサ「…亜里沙、やけに元気だな」
雪穂「たぶん…エリさんに会えるからだと思う」
ツカサ「会えるって…別の世界の人間なのにか?」
雪穂「確かにそうだけど…それでも、亜里沙にとって大切なお姉さんであることには変わりないんじゃないかな?」
ツカサ「…そういうもんなのか?」
雪穂「そういうものなんじゃないかな…私にもお姉ちゃんがいるから、そう思っちゃうだけなのかもしれないけど」
ツカサ「…」
亜里沙「早く来ないと置いてっちゃうよー!」
雪穂「はーい!」ダッ
ツカサ「…」フゥ
ツカサ(ひとまずオレ達は…写真館の近くにある小さな坂を登って行く事にした)
?(私はおばあさまのお店から近い場所にある聖堂にやってきた)
?「こんにちは」
シスター「あら…エリちゃんじゃない、こんにちは」
エリ(近づいて見上げる大きな鐘楼の緑青色のドーム型の屋根の天辺には独特な形の十字架が光っていた)
エリ(小さい頃から私は…この聖堂によく通っていた)
エリ「…」
エリ(聖堂に入ってすぐに私は…祈りを捧げていた)
エリ(神様、あなたのアナスタシヤであるエリーチカの心からのお願いです)
エリ(これからもこの世界でずっとずっと…平和な時間が続いていきますように)
エリ(この世界のあちこちで輝いてる思い出の全てが)
エリ(たくさんの美しい記憶が…どうかこれからも、皆の中で積もり続けますように)
エリ(いつかこの世界の全ての幸せを、今度は私が守る番になれるよう…)
エリ(皆の為に役立てる本当の愛と勇気の力を…どうか私に与えてください)
~♪
エリ(お祈りを終えて聖堂の外に出ると…私の携帯に電話がかかってきた)
ピッ
エリ「…はい」
エリ「ええ、元気にやっていますわ…おばあさま」
エリ「もちろん、おばあさまの愛した街ですもの…私が必ず守ってみせます」
エリ「ありがとう、それじゃ…また」ピッ
エリ(私が電話を切ると、一人の少女が私のもとにやってきた)
?「お姉ちゃん!」
エリ「アリサじゃない…どうしたの?」
アリサ「それが…おばあさまのお店が!」
エリ「…!」
エリ(私は妹のアリサと一緒に、急いでおばあさまのお店へと向かった)
ツカサ(オレ達が坂を登っていると、途中で亜里沙がこんな事を言った)
亜里沙「そういえばこの坂、どこかで見たことあるような…」
雪穂「どこかって…私達の世界で?」
亜里沙「うん、おばあさまのお店に行く時に登る坂から見える景色がよく似てて…!」ピタッ
ツカサ(次の瞬間、亜里沙が一軒の店を見て立ち止まった)
雪穂「…どうしたの亜里沙?」
亜里沙「もしかしたら、このお店かも…」
ツカサ(木製のドアとその横の小さな窓、そして屋根の上には『ビストロ・サル』と書かれた大きな看板が掲げられていた)
ツカサ「店の名前は同じなのか?」
亜里沙「ううん、おばあさまのお店は違う名前だよ…『赤いサラファン』っていうロシア料理のお店なの」
ツカサ「ロシア料理店か…とりあえず、入ってみるか?」
亜里沙「うん!」
カランカラン…
ツカサ(オレがドアを開けると、軽くドアベルの音が鳴った)
雪穂「こんにちは~…って、あれ?」
ツカサ(店内は荒れており…椅子やテーブルがあちこちでひっくり返っており、割れた皿の破片も床に散らばっている状態だった)
ツカサ「これは…酷い有り様だな」
ツカサ(オレがそう言うと、カウンター奥の厨房から店員と思われる一人の少女が顔を出した)
少女「…あっ、さっきの食い逃げ!」
ツカサ(その少女は…オレの顔を指差して、確かにそう言っていた)
ツカサ「はぁ?」
亜里沙「食い逃げって…?」
雪穂「お金を払わずにお店の物を食べて逃げることだよ…って、何してるのツカサ!?」
ツカサ「いや、オレは何も…」
?「へぇ…わざわざ戻ってくるなんて、よほど良い度胸をしているのね?」
ツカサ「?」クルッ
ツカサ(オレ達が振り返ると、そこにはポニーテールにした二人の金髪の少女がいた)
エリ「…」
亜里沙「お姉ちゃん!」
雪穂「と…亜里沙!?」
アリサ「…へっ?」
ツカサ(亜里沙達はもう一人の亜里沙と亜里沙の姉である絵里によく似た人物に出会い、驚いていた様子だった)
ツカサ(だが…オレにとって、今の問題はそこじゃない)
ツカサ「いや、だから何の事かオレは…」
エリ「あなたのような悪人の話に耳を傾ける気は無いわ…アリサ!」
アリサ「あっ…うん!」サッ
ツカサ(アリサが紐を取り出すと、それをエリに渡した)
ツカサ(エリは素早くオレの背後に回り込むと…両手首を掴んだ)
エリ「…」ググッ
ツカサ「痛っ!?…おい、何すんだ!」
エリ「決まってるでしょ?」ギュッ
ツカサ(エリは紐でオレの両手首を縛ると、人差し指で天を指しながらこう言った)
エリ「おばあさまは言っていた…不味い飯屋と悪の栄えた試しは無い」ポンッ
ツカサ「うわっ!?…っ!」バタッ!
ツカサ(エリに背中を押されたオレはバランスを崩すと…そのまま床に倒れてしまった)
亜里沙「ハラショー…!」
エリ「ヒヨリ、後は煮るなり焼くなり…好きにしなさい」
ヒヨリ「助かったよ…ありがとね、エリ!」
ツカサ「ぐっ、何なんだこれは…!」
雪穂「派手にやられたね…大丈夫、ツカサ?」
ツカサ「こんな事されて大丈夫な訳が無いだろ…おいアンタ、ヒヨリとか言ったな?」
ヒヨリ「何?」
ツカサ「オレは食い逃げなんかしていない…さっさとこの紐を解いてくれ!」
ヒヨリ「…さて、早くお店の掃除しないと」スタスタ
ツカサ「おい…無視するな!」
ツカサ(一方、二人の亜里沙はお互いを見つめ合っていた)
アリサ「髪型の違うアリサがもう一人…!」ジー
亜里沙「髪型は違うけど、私と同じだ…!」ジー
エリ「…それで、あなた達は?」
雪穂「あっ、私達ですか?私達は…」
亜里沙「別の世界から来たの!」
エリ「…え?」
雪穂「あぁ~もう亜里沙ってば…ごめんなさい、ちゃんと一から説明しますね!」
ツカサ(雪穂はエリ達に事情を説明していた)
ツカサ「おい…オレを放置するな!」
エリ「別の世界があったなんて…にわかには信じられない話ね」
雪穂「やっぱり、そうですよね…」
エリ「…でも、実際にもう一人のアリサがいるわけだし」
エリ「あの子達が仲良くなってるなら…きっと、信じても大丈夫なんでしょうね」
雪穂「えっ?」
ツカサ(亜里沙はアリサのノートを見ていた)
亜里沙「この妖精さん、あなたが描いたんだ…すごく上手だね!」
アリサ「えへへ…ありがとう!」
亜里沙「それとこっちは…スクールアイドルの、衣装?」
アリサ「えっ、知ってるの?スクールアイドル…」
亜里沙「うん…私も雪穂とスクールアイドル目指してるんだ!」
アリサ「本当!?アリサたち、一緒だね!」
亜里沙「ホントだね!」
アリサ「実はアリサ、本当なら今ごろはロシアに帰ってたかもしれないの…地元の高校が廃校になりそうだったから」
亜里沙「えっ…?」
アリサ「でもね、ヒヨリさんがスクールアイドルになって学校を宣伝してくれて…廃校しないことになったんだ!」
亜里沙「本当に?…ヒヨリさん、すごいね!」
ヒヨリ「いや、そんな…まあ時代が僕に追いついたっていうか?」
エリ「ちょっと…ヒヨリ?」
ヒヨリ「はいはい…といってもバレエの経験があるエリから、ダンスにするのに基礎的なものを教えてもらってたからね」
ヒヨリ「それが形になるまで…エリには散々、鍛えさせられたけどね」アハハ
亜里沙「そっか、こっちのお姉ちゃんもダンスを教えてたんだ…すごいなぁ」キラキラ
エリ「…こっちの私、も?」
亜里沙「うん、私の世界にいるお姉ちゃんも仲間のみんなにダンスやトレーニングを教えたりしててね…」
アリサ「ホントに!?それでそれで?」
亜里沙「その仲間のみんなと一緒にスクールアイドルになったの…『ラブライブ!』にも優勝して!」
エリ「『ラブライブ!』…それは何?」
雪穂「あっ…『ラブライブ!』っていうのは、スクールアイドルの全国大会のことです」
エリ「そう…あなたの世界にいる私はスクールアイドルになったのね」フフッ
亜里沙「うん!」
アリサ「アリサも見たいなぁ、お姉ちゃんがスクールアイドルになる姿…」キラキラ
ヒヨリ「僕も僕も!スッゴく人気あるんだろうな…あの時だって、エリが一緒にやってくれたらきっと」
エリ「ヒヨリ…余計な事を言うのはやめて」
ヒヨリ「あはは、悪い悪い…」
ツカサ(エリに咎められ、ヒヨリは厨房に戻っていった)
雪穂「…あの、エリさん」
エリ「何?」
雪穂「エリさんは…『カブト』について何かご存知ですか?」
エリ「…残念だけど、聞いた事も無いわね」
亜里沙「えっ…そうなの?」
エリ「ごめんなさいね…」
亜里沙「そっか…でも私、この世界のお姉ちゃんやアリサに会えて良かった!」
エリ「私も嬉しいわ…まさか、別の世界から来た妹に会えるなんてね」フフッ
アリサ「アリサも…亜里沙と友達になれて嬉しいよ!」
亜里沙「えへへ…」
エリ「…!」ガタッ
ツカサ(亜里沙が照れていると突然、エリが何かを思い出したように立ち上がった)
アリサ「どうしたの、お姉ちゃん…?」
エリ「ごめんなさい…ちょっと大切な用事を思い出しちゃってね」
亜里沙「用事?」
エリ「ええ、でも…すぐに帰るから安心して?」
アリサ「…うん、分かった!」
エリ「それじゃ、ヒヨリ…店番を頼むわね?」スタスタ
ヒヨリ「ああ」
亜里沙「行ってらっしゃい、お姉ちゃん!」
エリ「それじゃ…ゆっくりしてってね?」ガチャ
雪穂「あっ…はい!」
バタン
ツカサ「…おい、雪穂」
雪穂「何?」
ツカサ「いつまでオレをほったらかしにするつもりだ!?」
ツカサ(オレは未だに両手首を縛られたままだったうえに…いつの間にか両足首まで縛られていた状態だった)
雪穂「いや…でも、したんでしょ?食い逃げ」
ツカサ「する訳が無いだろ…もともと、オレは最初からお前達と一緒にいただろ!?」
雪穂「え~…でも、食い逃げしそうな顔してるし」
ツカサ「どんな顔だ!?いいから早く外せ!」
雪穂「はいはい…よっと」
ツカサ(しゃがんだ雪穂は紐を解こうとしたが…)
雪穂「あれ?なかなか外れない…」
ツカサ(紐は複雑な結び方をしているようで、雪穂があちこち引っ張っているうちに…より頑丈な結びになっていく)
ツカサ「…おい、ハサミを貸してもらえ」
雪穂「貸してもらえって…食い逃げ犯だと思われてるんだから、そんなの無理に決まってるでしょ」
ツカサ(縛られてからだいぶ時間が経過しているせいか…オレの手首は徐々に青く変色しつつあった)
ツカサ「全く…本当にがさつだな、お前は」
雪穂「!…あっそう、じゃあ自分でどうにかしたら!?」スタスタ
ツカサ(機嫌が悪くなった雪穂はオレから離れると…席に座って、メニュー表を開いた)
ツカサ「あっ…待て!」ジタバタ
ツカサ(それを見たオレが暴れていると…ヒヨリがやってきた)
ヒヨリ「なぁ…あんた、本当に反省してるのか?」
ツカサ「だから言ってるだろ…反省してるも何もオレはやってない!」
ヒヨリ「じゃあ、警察に通報するしかないな…」
ツカサ「はぁ…?何でそうなる!」
ヒヨリ「決まってるだろ…あんたが食い逃げしたからだよ」
ツカサ「ぐっ…分かった、それならオレがこの店を手伝う!」
ヒヨリ「え?」
ツカサ「掃除でも皿洗いでも料理でも接客でも何でもする…だから、これを解いてくれ!」
ヒヨリ「…本当だな?」
ツカサ「ああ、本当だ!」
チョキン!
ツカサ(するとヒヨリは…持っていたハサミで紐を切った)
ヒヨリ「じゃあ、しっかりやってもらうからな…?」
ツカサ「はぁ…何でオレだけこんな目に遭わなきゃいけないんだ」
ツカサ(オレは縛られた痕が残った手首をさすりながら、エリを恨んだ)
ツカサ「エリのヤツ…覚えとけよ」
ツカサ(しばらく店の手伝いをした後、オレはテーブル席のフロアの隅にある休憩室で休んでいた)
ツカサ「つ、疲れた…」グッタリ
ツカサ「それにしてもこの店、やけにそばとかラーメンの注文が多かったが…ロシア料理店じゃなかったのか?」
ツカサ「そのうえメニューの『兄貴塩ラ・メーン』や『弟味噌ラ・メーン』というネーミング…一体、誰が考えたんだ?」
コンコン…ガチャ
ツカサ(休憩室に入ってきたのは亜里沙、ではなく…アリサの方だった)
アリサ「あのっ…これ、アリサが作ったまかないなんで良かったら食べてください」
ツカサ「…まかない?」
ツカサ(アリサはオレのいる机に食器を置いた)
ツカサ「これは…おでんか」
アリサ「うん…おでんは嫌い?」
ツカサ「いや、そんな事はない…ありがとな」フフッ
アリサ「…うん!」ニコッ
ツカサ「いただきます…」パクッ
ツカサ(オレは三つの具を一口ずつ食べた)
ツカサ「…うん、美味い」
アリサ「ホントに?」
ツカサ「本当だ、人生観が変わるかと思うくらいに美味い」
アリサ「えっ…そんなに?」
ツカサ「ああ…このおでんに比べたら、今まで食べてきたものがまるで豚の餌みたいに感じるくらいだな」
アリサ「ふふっ、変なの…でも良かった」
アリサ「このおでんはね…アリサとお姉ちゃんとおばあさまが大好きなものだけを入れたの」
ツカサ「大根と玉子とがんもか…なるほど、具を最小限にすることで素材から生み出される最大限の味を出しているんだな」
アリサ「…ねえ、本当にやってないの?」
ツカサ「食い逃げの事か?」
アリサ「うん」
ツカサ「そうだ、何度でも言うが…オレは食い逃げなんてやっていない」
アリサ「そう…でもさっきアリサとヒヨリさんが見たのは、あなただったよ?」
ツカサ「オレが…一人だけで?」
アリサ「うん、でも一人で来た時のあなたは今のあなたと違って…すごく乱暴な人だったよ」
ツカサ「今のオレと違って…!」ハッ
ツカサ(アリサの話を聞いたオレは…ある事に気が付いた)
ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」
アリサ「?」
コンコン…ガチャ
ツカサ(扉を開けて顔を出してきたのは…ヒヨリだった)
ヒヨリ「なあ、ちょっと買い出しを手伝ってくれないか?足りない食材があるんだが…」
ツカサ「…よし、良いだろう」
ヒヨリ「あんた…食い逃げしたくせに何でそんなに偉そうなんだ?」
ツカサ「気にするな」
ヒヨリ「いや…それは本来、こっちが言うべき台詞のはずなんだが」
ツカサ「ごちそうさま…アリサ、ありがとうな」
アリサ「うん!」
ヒヨリ「あんた、人の話聞けよ…」
ツカサ(オレはヒヨリと共に食材の買い出しに出かけた)
ツカサ「…それで、何でお前達まで着いてくるんだ?」
雪穂「いいじゃん別に…ねえ、亜里沙?」
亜里沙「うん…私もお姉ちゃんたちの力になりたいし!」
ツカサ「全く、仕方ないな…」ハァ
ツカサ(オレが溜め息をついた後、雪穂はヒヨリにこんな事を聞いた)
雪穂「そういえばヒヨリさんってエリさんとは同級生だったって言ってましたけど…お店でも一緒なんですか?」
ヒヨリ「ああ…住み込みで働かせてもらっているんだ」
雪穂「えっ、住み込みで?」
ヒヨリ「何でもエリのおばあちゃんがフランスに豆腐買いに行ったきり、帰ってこないから人手が足りていないみたいでな…」
ヒヨリ「それで僕が働かせてもらっているんだ…高校にいた時、同級生だったエリには色々教えてもらった恩もあるしな」
ツカサ「待て、その前に一つ気になる事があるんだが…フランスに豆腐を買いに行ったって何だ?」
ヒヨリ「いや、それが僕にもよく分からないんだ…そもそもフランスに豆腐なんて売ってるのかどうかも分からないし」
ツカサ「話を聞けば聞くほど謎が深まるな…ん?」
ツカサ(オレ達は…近くにある公園で何かに群がっている人々を見かけた)
亜里沙「…あれは?」
ヒヨリ「ああ…あれはZECTがワームの感知器を無料で配布しているんだ」
雪穂「ワームの感知器って…そんな便利なものがあるんですか?」
ヒヨリ「そうなんだよ…あの感知器はネックレス型で、人間に擬態したワームが近くにいると緑色から赤色に光るらしい」
雪穂「へぇ~…それにしても、ずいぶん人が集まってますね」
ヒヨリ「あると便利だからな…」
亜里沙「良いなぁ…私も着けたい!」
ツカサ「ダメだ」
亜里沙「えっ…何で?」
ツカサ「タダより高いものはないからな…」
亜里沙「ケチ…」
ツカサ「まあ、そう言うな…亜里沙にはもっと似合うものをオレがプレゼントしてやる」
亜里沙「…えっ、ホント?」
ツカサ「本当だ」
亜里沙「やった…楽しみにしてるね!」
雪穂「ねえ…やっぱり、亜里沙に甘くない?」
ツカサ「気のせいだろ」
雪穂「そうかなぁ…」
ヒヨリ「…ふふっ」
ツカサ「どうした?」
ヒヨリ「…いや、僕もアリサもエリに同じ事を言われたなと思ってさ」
ヒヨリ「『タダより高いものはない…悪い事は言わないから、やめておきなさい』ってね」
ツカサ「…そうか」
雪穂「そういえばツカサ、ZECTの人がいるけど話しかけなくてもいいの?」
ツカサ「今は買い出しの方が先だ…食い逃げだと思われたまま、仕事を途中で投げ出す訳にはいかないからな」
ツカサ(オレがそう言った直後…何かが壊された音が聞こえてきた)
ガシャーン!
ツカサ「!」クルッ
亜里沙「何、今の!?」
ツカサ(オレ達がもう一度、公園の方を見るとネックレスを積んでいた車が横転していた)
隊員A「どうした!?」
隊員B「それが…突然、攻撃を受けまして」
隊員A「ネックレスは!?」
隊員C「ダメです、全て壊されてます!」
隊員A「チッ…またアイツか!」
ヒヨリ「…またやられたのか」
ツカサ「また…?」
雪穂「どういうことですか?」
ヒヨリ「最近、ああやって誰かにネックレスを壊される事件があちこちで起きているらしい」
ツカサ「あの感じだと、ZECTは犯人が誰だか特定してるようだが…どうやら対策の方までは出来ていないみたいだな」
亜里沙「そんな…ヒドい」
雪穂「もしかして、ワームの仕業とかかな…?」
ツカサ「どうだろうな…行くぞ」
雪穂「えっ…行っちゃうの?」
ツカサ「ああ…これ以上いる必要も無いだろ」スタスタ
ツカサ(オレ達は…公園を後にした)
ヒヨリ「もうすぐスーパーだ…こっちに近道がある」
ツカサ(オレ達は人があまり通らなさそうな路地に入った)
ツカサ(少し先まで歩くと…そこには一体のゼクトルーパーがいた)
ゼクトルーパー「…」
亜里沙「?」
雪穂「あれは…?」
ツカサ「お前、誰だ?」
ツカサ(ヘルメットを外したゼクトルーパーの素顔は…オレの顔と瓜二つのものだった)
擬態ツカサ「…」
雪穂「えっ!?」
亜里沙「ツカサが…もう一人!?」
ツカサ「という事は、お前…ワームだな?」
擬態ツカサ「…」ニヤッ
ツカサ「雪穂、亜里沙とヒヨリを連れて逃げろ」
雪穂「…分かった、行こう!」ダッ
亜里沙「うん!」ダッ
ヒヨリ「…」
ツカサ「どうした…早く逃げろ!」
ヒヨリ「…!」ダッ
ツカサ「…それにしてもお前、オレに擬態するとはなかなか良い趣味をしているようだな?」
擬態ツカサ「そうだろ?こうやって擬態すれば…お前はオレを殴れないだろうからな」
ツカサ「!」
擬態ツカサ「どうだ?悔しいだろ、アッハッハッハ…」
ドガッ!
ツカサ(オレは偽者の顔を思いきり殴った)
擬態ツカサ「ヘブッ!」ドサッ
ツカサ「お前、よくもオレの顔で食い逃げしてくれたな?今日のオレは無性に気分が悪いんだ…お前のせいでな!」ゴゴゴ
擬態ツカサ「ま、待て…」
ツカサ「断る…絶対に許さん」
ツカサ「オレになりすますのは十年早い事を…ここで今、証明してやる!」
ツカサ(オレはディケイドライバーを装着し、一枚のカードを取り出した)
ツカサ「変身!」
『カメンライド…ディケイド!』
ツカサ(カードをバックルに装填し、オレはディケイドへの変身を完了させる)
擬態ツカサ「グッ…」
ディケイド(顔をしかめたオレの偽者はワームとしての正体を現した)
ディケイド(その姿は長い触角を持った黒と白のストライプ状の成体だった)
ストライプワーム「これからはオレが…お前に代わって旅をしてやる」
ディケイド「それは御免だな…他の世界でも食い逃げなんてされたら、堪ったもんじゃないからな」
ディケイド(オレがそう言ってすぐ…それはほんの一瞬の出来事だった)
ガッ!
ディケイド「うわっ!」
ディケイド(ワームはオレに防御させる隙がない程の速さで攻撃を仕掛けてきた)
ストライプW「クロックアップできないお前など…オレの敵じゃない」
ゴッ!
ディケイド「うっ…!」
ディケイド(このまま…やられてしまう訳にはいかない)
ディケイド(そう思ったオレは、三枚のカードを取り出した)
ディケイド「どうかな…そうとも限らないぞ?」
ストライプW「何?」
ディケイド「マキ…借りるぞ」
『カメンライド…ファイズ!』
ディケイド(オレはファイズにカメンライドした)
ストライプW「ふん…その姿になったところで!」
ドカッ!
DCDファイズ「ぐっ…」
DCDファイズ(ワームの攻撃を受けながらも、オレは二枚目のカードをベルトに装填する)
『アタックライド…オートバジン!』
ガガガッ!
ストライプW「ウワッ!」
DCDファイズ(現れたオートバジンが援護射撃し、ワームの動きを一時的に止めた)
オートバジン「…」スッ
DCDファイズ「これは…!」
DCDファイズ(オートバジンはファイズのミッションメモリーをオレに渡した)
DCDファイズ「助かった…ありがとな」ポチッ
DCDファイズ(オレはオートバジンをバイクに変形させ、ファイズエッジを取り出した)
『Ready』
DCDファイズ「お前がそこまで言うなら、付き合ってやる…十秒間だけな」
ストライプW「何だと…まさか!?」
DCDファイズ「ああ、そのまさかだ…」
DCDファイズ(オレは三枚目のカードをディケイドライバーに装填した)
『フォームライド…ファイズ!アクセル!』
DCDファイズ(アクセルフォームになったオレはファイズアクセルのスイッチを押した)
『Start Up』
DCDファイズ(スイッチを押したオレはワームの動きに追いつける程に速く活動できるようになった)
DCDファイズ「はっ!」ガッ!
DCDファイズ(オレはファイズエッジでワームを斬りつけ、怯ませる)
ストライプW「グッ…!」
DCDファイズ(その間にオレはライドブッカーから一枚のカードを取り出し、バックルに装填した)
『ファイナルアタックライド…ファ・ファ・ファ・ファイズ!』
DCDファイズ「はぁっ!」
DCDファイズ(オレがファイズエッジを下から振り上げると、ワームはファイズエッジの光波で拘束され宙に浮かんだ)
ストライプW「グワッ…!?」
DCDファイズ(オレはワームに近づき、横一閃に斬りつけた)
DCDファイズ「はっ…やぁーっ!」
ストライプW「グハァァァ…!」
DCDファイズ(最後に下から斬りつけると…ワームは爆発し、緑色の炎がメラメラと燃えた)
『3、2、1…Time Out』
『Reformation』
DCDファイズ(アクセルフォームの効果が切れると…オレは自動的に通常のファイズへと姿を戻した)
DCDファイズ「悪いな…オレの勝ちだ」
DCDファイズ(自分に擬態した食い逃げ犯を倒してスッキリしたオレだったが…同時に、気が緩んでしまっていた)
?「キャストオフ」
『Cast Off』
DCDファイズ「!?…うわっ!」
DCDファイズ(野太い声に気づいたオレが振り向くと、弾け飛ぶ装甲の破片がオレのもとにまでぶつかってきた)
『Change Wasp』
ザビー「…ディケイド、大人しく我々ZECTに同行してもらいますよ?」
DCDファイズ「何だ、お前は…?」
ザビー「いやぁ~、残念ですが…今のあなたに質問する権利はありません」
DCDファイズ「次から次へと…有名人は辛いな」ハァ
ザビー「大人しくしないのであれば、実力を行使するまでです…クロックアップ」
『Clock Up』
ガッ!ゴッ!
DCDファイズ(ベルトのスイッチを押してクロックアップしたザビーは…オレに連続で攻撃を仕掛けてくる)
DCDファイズ「しまった…ぐっ!」
ザビー「ライダースティング」
『Rider Sting』
ザビー「ハッ!」ドスッ!
DCDファイズ(ザビーは左手のザビーセクターの針で…オレを殴りつけた)
DCDファイズ「うわぁっ!」
ディケイド(ザビーの技をまともに受けたオレは…カメンライドどころか、変身まで強制解除され吹き飛んでしまった)
ツカサ「うっ…」ゴロゴロ
ザビー「…シャドウ部隊の皆さん、後はよろしくお願いします」
シャドウ隊員「はっ…貴様、早く立て!」
ツカサ「ううっ…」
ツカサ(シャドウゼクトルーパーに目隠しをされたオレは、無理やりどこかへ連れて行かれる事になった…)
雪穂「…ここまで来たら追ってこないかな」ハァハァ
亜里沙「そうだね…ヒヨリさんは大丈夫?」ハァハァ
ヒヨリ「な、何とか…」
?「あなた達…どうしたの?」
雪穂(そこにいたのはエリさんだった)
ヒヨリ「エリ…」
?「何かあったの?」
雪穂「それが…」
雪穂(私とヒヨリさんが近づこうとすると、亜里沙は大きな声で止めた)
亜里沙「ダメ!」
雪穂「えっ?」
?「何?急に大きな声を上げて…」
亜里沙「私、なんとなく分かっちゃった…この人はたぶん本物のお姉ちゃんじゃない」
?「…あなた、どうしてそんな事を言うの?」
ヒヨリ「そうだよ…亜里沙ちゃん、謝りなよ」
亜里沙「あなた、ワームなんでしょ…お姉ちゃんのフリをするのはやめて!」
雪穂「!…私は亜里沙を信じます」
ヒヨリ「雪穂ちゃんまで…」
雪穂「私にもお姉ちゃんがいます…だから私は、亜里沙の妹としての勘を信じます」
亜里沙「答えて…あなたは誰?」
?「…フフッ、アハハハハ!」
擬態エリ「まさか別の世界の妹に気付かれるなんてねぇ…」
雪穂(エリさんの偽者はそう言って、ワームに姿を変えた)
フィロキセラワーム「…」
亜里沙「雪穂!」
雪穂「うん…分かってる!」
雪穂(私達がゼクトマイザーのスイッチを押すと…小さなカブト虫型の爆弾が飛び出し、ワームに向かってぶつかって行った)
フィロキセラW「!?」
雪穂「今のうちに逃げよう!」
亜里沙「ヒヨリさんも一緒に!」ダッ
ヒヨリ「あ…ああ!」ダッ
雪穂(私達は…エリさんに化けていたワームから逃げ出した)
ツカサ「ん…」パチリ
ツカサ(目が覚めたオレは…椅子以外、何もない部屋にいた)
ツカサ(鮮やかに白色のタイル張りの床や壁が網膜を刺激する部屋の中で…オレは椅子の背に両腕を回された状態で縛られていた)
ツカサ「またこれか…ったく、何て日だ」ハァ
ツカサ「…ん?」キョロキョロ
ツカサ(辺りを見回すと…どうやら部屋にはオレ一人しかいないようだった)
ツカサ「何だ、ここには見張りもいないのか…?」
ツカサ「いくら縛っているからって…不用心な奴らだな」
ツカサ(オレがそうぼやいていると…大きな爆発音と共にサイレンが鳴り響いた)
ドカァァァン…ジリリリリ!
『侵入者発見、侵入者発見』
ツカサ「…本当に不用心だな」
ガチャ
ツカサ(部屋の扉が開くと、そこには一体のブライトルーパーが入ってきた)
ブライトルーパー「…」
ツカサ「研修中のZECT隊員が何の用だ?侵入者ならオレは見てないが…というか、そもそも何でオレを捕まえた?」
ブライトルーパー「…」カポッ
ツカサ(ヘルメットを外したブライトルーパーの正体は…驚きの人物だった)
エリ「ふぅ…あなた、こんな所で何をやっているの?」
ツカサ「アンタは…!?」
エリ「まさかあなた…縛られるのが趣味なの?」
ツカサ「そんな訳あるか!アンタこそ、何でここに…」
エリ「食い逃げをしたあなたに…それを言う必要がある?」
ツカサ「ぐっ…もういい、それよりこれを外してくれないか?」
エリ「イヤよ」
ツカサ「アンタなぁ…いい加減にしろ!」ジタバタ
エリ「…」ハァ
ガシャン!
ツカサ(エリは装備していたマシンガンブレードを使って…オレの拘束を解いた)
ツカサ「やっと動ける…」フゥ
エリ「…」スタスタ
ツカサ「あっ…ちょっと待て!」ダッ
ツカサ(オレは部屋から出ていったエリの後を追った)
雪穂(エリさんの偽者から逃げた私達は…さっき通った公園まで戻ってきた)
雪穂「はぁはぁ…」ゼェゼェ
亜里沙「もう走れない…」ハァハァ
雪穂「ヒヨリさんは大丈夫?」
ヒヨリ「ああ、何とか…」フゥ
女性「…逃がさない」ボソッ
雪穂(疲れ切った私達の前に…一人の女性が現れた)
雪穂「えっ…!?」
雪穂(女性は全身が緑色のワームに変化した)
サナギワーム「…」
ヒヨリ「…!」
雪穂(それに続くように周囲から同じ姿のワームの集団が現れ…私達はついに取り囲まれてしまった)
雪穂「これ、さすがにマズいかも…」
亜里沙「雪穂…」
ヒヨリ「…うっ!?」
雪穂(すると、突然…ヒヨリさんが苦しみ始めた)
雪穂「ヒヨリさん?」
亜里沙「大丈夫?」
ヒヨリ「うう…うわぁぁぁぁぁ!!」
雪穂(ヒヨリさんが叫んだ瞬間、周りにいたワームは全て爆発した)
雪穂「うわっ!」
亜里沙「きゃっ…!?」
シシーラワーム「…」
雪穂(私達が目を開けると…そこにはワームに変化したヒヨリさんがいた)
亜里沙「ヒヨリさんが…ワーム?」
シシーラW「…えっ?」
雪穂(何が起こったのか分からない様子だったヒヨリさんは、ワームになった自分の手を見つめ…)
シシーラW「い…いやぁぁぁ!!」ダッ
雪穂「ヒヨリさん!?」
亜里沙「待って…!」
雪穂(私達はどこかへ走ろうとするヒヨリさんを追いかけた…でも、ヒヨリさんの姿は一瞬で見えなくなってしまった)
亜里沙「…いない?」
雪穂「もしかして、今のがクロックアップ…?」
ツカサ(ZECTのアジトを出たオレとエリは…近くの廃墟まで走っていた)
ツカサ「ここまでくれば大丈夫か…?」ハァハァ
エリ「そうね…あなたの後ろにいる彼さえ倒せば、の話みたいだけど」
ツカサ「…!」クルッ
ツカサ(オレが振り返ると…そこには不気味に笑みを浮かべる中年の男がいた)
男「いやぁ~、困りますね…逃げるだなんて」
ツカサ(オレはその野太い声に聞き覚えがあった)
ツカサ「!…もしかしてさっき、ザビーに変身していたのはお前か?」
男「いやぁ~、参ったな…まさかもうバレてしまうだなんて」ポリポリ
ツカサ(男が照れくさそうに頭を掻いていると、エリは男にある質問をぶつけた)
エリ「…あなたが、あのネックレスを製造した張本人ね?」
男「これはこれは絢瀬エリさん…ご挨拶が遅れました、私はZECTの開発担当、ネギシと申します」
ネギシ「いやぁ~、しかし残念だなぁ…あなたこそがワーム殲滅の先頭に立ってくれるライダーだと思っていたんですけど」
ネギシ「まさか我々の基地に潜入して、ネックレスの製造マシンを破壊してくるだなんて思いもしませんでしたよ」
ネギシ「ねぇ…カブト」
ツカサ(ネギシは魔を帯びた目つきでエリを見つめる)
エリ「…」キッ
ツカサ(エリはネギシに対して厳しく睨み付けながらこう言った)
エリ「私の目は誤魔化せないわ…あのネックレスは、ワーム感知器なんかじゃない」
ツカサ「胡散臭いとは思っていたが、やはりそうか…本当はどういう物なんだ?」
エリ「アレは人間を…ワームに変えてしまう危険な物よ」
ツカサ「!」
ネギシ「いやぁ~、困りますね…よくもまあそんな嘘を」
ネギシ「大体、あのネックレスはワームの感知器…ただそれだけの物ですよ?」
エリ「それはネックレスを世界中にばらまくための方便に過ぎないわ…」
エリ「地球上に存在しないあのネックレスの石は…何かしらの条件で、人間を強制的にワームに変化させる物質だった」
ツカサ「!…なるほど、やはりタダより高いものなんて無かったという事だな」
エリ「とにかく、これ以上は…ネックレスの製造を許す訳にはいかないわ」
ネギシ「いやぁ~…何もかもお見通し、という訳ですか」
ネギシ「仕方ありませんね…こうなったら私が直々に、あなた達を葬りましょう」
ツカサ(ネギシはザビーには変身せず、蝉によく似たワームに変化した)
セミワーム「…」
ツカサ「くっ、こうなったらオレが…なっ!?」
ツカサ(オレがカードとバックルを取り出すと、オーロラが突然現れた)
ツカサ「まさか、また…うわっ!?」
ツカサ(オーロラはオレだけを通し、オレは別の世界へ飛ばされてしまった)
エリ「!」
セミW「一人いなくなりましたか…ですが、良いでしょう」
セミW「我々の正義の為に…あなたには消えてもらうとしましょう」
エリ「…馬鹿馬鹿しいわね」
セミW「?」
エリ「おばあさまは言っていた…正義とは私自身、私が正義よ!」
エリ「変身!」
『Henshin』
カブト「…キャストオフ!」
『Cast Off』
セミW「ウッ…」
『Change Beetle』
カブト「…はっ!」ダッ
ツカサ(オレは小さな神社の境内にいた)
ツカサ「ここも世界の狭間という事は…ナルタキ、またオレの邪魔をするつもりか?」
ツカサ(オレは背を向けているナルタキを見つけ、声をかけた)
ナルタキ「おや、私の仕業だと気付くとは…さすがの君も馬鹿ではないようだね?」
ツカサ「早くここから出せ」
ナルタキ「残念だが…それは無理だ」
ツカサ「それなら…力ずくで出してもらうまでだ!」
『カメンライド…ディケイド!』
ディケイド(オレはディケイドに変身し、ナルタキに向かっていく)
ディケイド「はぁっ!」ダッ
ゴッ!ガッ!
ディケイド「うっ!?」
ディケイド(だが…途中で何者かの攻撃を受けてしまう)
ナルタキ「君の旅は…ここで終わる」
『Clock Over』
ディケイド(ナルタキの前には…二人のライダーか立っていた)
パンチホッパー「兄貴…ここにもいたよ、ライダーが」
キックホッパー「ああ…行くぜ、兄弟」
ディケイド「地獄兄弟か…色んな意味で面倒なのが出てきたな」ハァ
『Rider Jump』
ディケイド(地獄兄弟はそれぞれのホッパーゼクターを操作し、跳び上がる)
ディケイド「こうなったら一か八か…!」
ディケイド(オレは一枚のカードをディケイドライバーに入れた)
『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』
キックホッパー「ライダーキック…!」
『Rider Kick』
パンチホッパー「ライダーパンチ…!」
『Rider Punch』
ディケイド「やぁーっ!」
ディケイド(オレは地獄兄弟と、お互いの技を激しくぶつけ合った…)
カブト(私はカブトクナイガンをクナイモードに変形させて、ワームと戦っていた)
カブト「…!」ザシュッ!
セミW「ウッ…」
カブト「これ以上…あなた達の好きにはさせない」
セミW「フフフ…それはどうですかね?」
カブト「何ですって?」
セミW「今に分かりますよ…」
カブト「…クロックアップ!」
カブト(私はクロックアップする為に、ベルトの側面にあるスイッチを押した)
カブト「!?」
カブト(でも…クロックアップは発動しなかった)
カブト「これは…どういう事!?」
セミW「いやぁ~、どうやら我々のもう一つの計画は知らなかったみたいですね?」
カブト「もう一つの計画?」
セミW「そうです、それはマスクドライダーシステムのクロックアップ能力を無効化する…クロックダウン計画」
カブト「クロックダウン…そんな!」
セミW「もうクロックアップが出来ないあなたなど…我々の敵ではありません」
ガッ!
カブト(ワームは私の胸元に飛び込むと、攻撃を仕掛けてきた)
カブト「…!」
カブト(私は何とかそれを防御し、ワームとの距離を取った…でも)
セミW「無駄ですよ」
バキッ!ゴッ!
カブト「…っ!」
カブト(ワームは超高速で私に接近し、連続で攻撃していく)
カブト「うっ…」ヨロッ
セミW「私は…残念に思っているんです」
カブト「…?」
セミW「我々、ワームと共存しようとしない愚かな人間を…哀れにすら思っているんですよ?」
カブト「なっ…勝手にこの星にやってきて、命を奪ってまで人になりすますあなた達が何を言っているの!?」
セミW「だから、我々は人類を全てワームにしようとしたんですよ…それこそが真の平和をもたらす一番の方法ですからねぇ」
カブト「あなた…!」ダッ
カブト(私はワームをカブトクナイガンで斬りつけようとした…でもそれは叶わなかった)
ガガガッ!
カブト「あっ…!」
カブト(ワームを援護しにやって来たシャドウ隊員達がマシンガンブレードで射撃し、私にダメージを与える)
セミW「終わりです…」
カブト「!?」
シャドウ隊員「撃て!」
カブト(その直後、シャドウ隊員の放ったバズーカが私に直撃した)
カブト「うっ…!」
カブト(吹き飛び、倒れた私の上に…コンクリートの塊が雪崩のように落ちてきた)
カブト(私の意識は…そこで途切れてしまった)
ネギシ「いやぁ~…シャドウ部隊の皆さん、お疲れ様でした」
シャドウ隊員「はっ!」
ネギシ「こうなってしまえば…さすがのカブトも生きてはいないでしょう」
ネギシ「さて、邪魔なカブトがいなくなった今…我々の計画は完成します」スタスタ
ネギシ「あとは彼女さえいれば…ね」ニヤリ
次回、仮面ライダー×ラブライブ!
「そばに居ない時は、もっとそばに居てくれる」
「おいで…ヒヨリ」
「おばあちゃんが言っていた…世の中で覚えておかなければならない名前はただ一つ」
「きっとスクールアイドルをやっているお姉ちゃんも…楽しんでるんだろうなって」
第13話『絵に描く道』
天の道を往き、総てを司る!