9つの道はいつか重なって   作:まーけたー

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~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここはカブトの世界だ」

ツカサ「天道…それがこの世界でのオレの名字か」

エリ「おばあさまは言っていた…」

アリサ「アリサがもう一人…」

亜里沙「私と同じだ…」

ヒヨリ「ZECTが無料で配布してるワームの感知器らしい」

DCDファイズ「付き合ってやる…十秒間だけな」

エリ「アレは人間を…ワームに変えてしまう危険な物よ」

セミW「どうやら我々のもう一つの計画は知らなかったみたいですね…それは、クロックダウン計画」

シシーラW「い…いやぁぁぁ!!」


第13話『絵に描く道』

エリ「ぐすっ…ひっく」

 

エリ(小さい頃、私はバレエのオーディションで思うような結果が出せず…泣きじゃくっていた事があった)

 

エリの祖母「またダメだったの?」

 

エリ「ごめんなさい…!」

 

エリの祖母「大丈夫、オーディションなんて気にしなくていいわ…あなたはかしこいかわいいエリーチカなのだから」ナデナデ

 

エリ「おばあさま…」

 

エリの祖母「よく聞きなさいエリーチカ…あなたが望みさえすれば、運命は絶えずあなたに味方する」

 

エリ「…?」

 

エリ(まだ幼かった私は…その時に言われたおばあさまの言葉の意味がよく分かっていなかった)

 

エリ「絢瀬エリです、よろしく」ガタッ

 

エリ(高校生になった私は…誰とも馴れ合おうとはしなかった)

 

エリ(友達?そんなもの…私にはいらない)

 

エリ(私はそう思っていた)

 

エリ(そんな時、校舎の階段で一人の生徒が声をかけてきた)

 

?「ねぇ、君…絢瀬さんで合ってるよね?」

 

エリ「…あなたは?」

 

?「僕は…カガミヒヨリ!」

 

エリ(それから彼女は…しつこく私に話しかけてきた)

 

エリ(始めは迷惑がっていた私だったけれど…彼女と会話をするのが段々、楽しくなってきていた)

 

エリ(次第に私は彼女の事をアリサとはまた別の…妹のように思っていた)

 

エリ(彼女のおかげで、いつしか私は…他の生徒とも接する事が出来るようになっていた)

 

エリ(それから二年後、私は担任の先生に説得されて…学校の生徒会長を任される事になった)

 

エリ(私の補佐をする副会長は…ヒヨリだった)

 

ヒヨリ「よろしくね、絢瀬さん!」

 

エリ「…ええ」

 

エリ(その時、学校が廃校になる事は既に決まりかけていた)

 

エリ(だからこそ…やると決めたからには絶対にこの生徒会で総てを終わらせようと、私は決心していた)

 

エリ(廃校に向けて、学校と街を愛してくれた人を後悔させないような…そんな美しい終わり方でこの学校に締めくくりたい)

 

エリ(その為に私は…生徒会長として学校行事や部活を盛り上げたり、タイムカプセルや植樹などの定番イベントを計画していた)

 

エリ(それを本格的に始動させるはず、だったんだけど…)

 

エリ「スクールアイドル…?」

 

ヒヨリ「あれ…知らない?今、人気の部活として注目されてるんだよ!」

 

エリ「そんな事は私も知ってるわ…それで、何が言いたいの?」

 

ヒヨリ「もし僕がこの学校のスクールアイドルになれば…入学希望者も増えて、学校も存続できるんじゃないかと思ってさ!」

 

エリ「却下」

 

ヒヨリ「決めるの早っ!?」

 

エリ「私は認めない…そんな甘い考えで学校の名前を背負ってやってほしくないの、話はそれだけ」スタスタ

 

ヒヨリ「待って!」

 

エリ「…」ピタッ

 

ヒヨリ「じゃあ…もしそれが上手く行って人を惹きつけられるようになったら、僕を認めてくれる?」

 

エリ「無理よ」

 

ヒヨリ「どうして…?」

 

エリ「小さい頃にバレエをやってきた私にとっては…スクールアイドル全部が素人にしか見えないの」

 

エリ「一番上手いと言われているスクールアイドルだって…素人にしか見えない」

 

ヒヨリ「…そんな」

 

絵里「話は終わり」

 

ヒヨリ「待ってよ!僕達にも友情ってものがあると思うんだよ、だからさ…」

 

エリ「おばあさまは言っていた…友情とは友の心が青くさいと書く」

 

ヒヨリ「えっ…それ、どういう意味?」ポカン

 

エリ「…」スタスタ

 

ヒヨリ「僕、諦めないから…絶対に廃校を阻止してみせるから!」

 

エリ(それ以降、私は何度も彼女の考えを却下したけれど…ヒヨリは諦めなかった)

 

エリ(彼女は独断で理事長から許可を取ると、一人でスクールアイドルとしての活動を始めていた)

 

エリ(しかし、講堂で初ライブの時…観客は私だけしかいなかった)

 

エリ「どうするつもり?」

 

ヒヨリ「…続けるつもりだよ」

 

エリ「何故?これ以上続けても、意味があるとは思えないけど」

 

ヒヨリ「やりたいからだよ!」

 

ヒヨリ「だって…今日は絢瀬さんが来てくれたから!」

 

エリ「…!」

 

ヒヨリ「だから、僕はやりたいんだ…絶対に!」

 

エリ(それからヒヨリは…私にトレーニングのやり方を教えてほしいと頼み込んできた)

 

エリ「全然ダメじゃない…よくこれでここまで来られたわね!」

 

ヒヨリ「ごめん…昨日はバッチリだったんだけど」

 

エリ「基礎が出来てないからムラが出るのよ…足開いて」

 

ヒヨリ「こう?」

 

エリ「ふっ!」グッ

 

ヒヨリ「痛い痛い!」ギギギ…

 

エリ「これで?少なくとも足を開いた状態でお腹が床につくようにならないと」

 

ヒヨリ「えぇ!?」

 

エリ「柔軟性を上げる事は全てに繋がるわ…まずはこれを出来るようにして」

 

ヒヨリ「は、はい…」

 

エリ「それじゃ、今日はここまで」

 

ヒヨリ「えっ…もう!?」

 

エリ「私は冷静に判断しただけよ、自分の実力が少しは分かったでしょ?」

 

エリ「今度のオープンキャンパスには、学校の存続がかかっているの…」

 

ヒヨリ「あっ…そういう事か」

 

エリ「もし出来ないっていうなら早めに言って、時間が勿体無いから」スタスタ

 

ヒヨリ「待って!」

 

エリ「…?」クルッ

 

ヒヨリ「ありがとう」

 

エリ「…え?」

 

ヒヨリ「明日もよろしくね!」ニコッ

 

エリ(次の日も彼女は…トレーニングに来ていた)

 

ヒヨリ「まずは柔軟だよね?」

 

エリ「…辛くないの?」

 

ヒヨリ「え?」

 

エリ「昨日あんなにやって…今日また同じ事をするのよ?第一、上手くなるのかどうかもわからないのに」

 

ヒヨリ「それは…絢瀬さんが教えてくれてるからだよ」

 

エリ「…!」

 

ヒヨリ「確かに練習はスゴくキツイし、身体中痛いよ?」

 

ヒヨリ「でも、僕は…廃校を阻止したいと決めたから」

 

ヒヨリ「だから今日も…よろしくね?」

 

エリ「…厳しく行くわよ?」

 

ヒヨリ「うん」フフッ

 

エリ(それから少し経って…彼女はこんな事を言ってきた)

 

ヒヨリ「僕ね…絢瀬さんと一緒にやってきてずっと思ってた事があるんだ」

 

エリ「…?」

 

ヒヨリ「絢瀬さんって本当は何がしたいんだろうって」

 

エリ「!」

 

ヒヨリ「一緒に居るとさ、分かってくるんだ…絢瀬さんが頑張るのはいつも誰かのためばっかりで」

 

ヒヨリ「いつも何かを我慢してるようで…自分のことは全然、考えてなくて」

 

エリ「…」

 

ヒヨリ「ねぇ、学校を綺麗に終わらせようっていうのも…生徒会長としての義務感なんでしょ?」

 

ヒヨリ「だからさ、教えてほしいんだ…絢瀬さんが本当にやりたい事は何なのか」

 

エリ「…分からないわよ」ボソッ

 

ヒヨリ「えっ?」

 

エリ「そんなもの、分かる訳ないんだからしょうがないじゃない!!」

 

エリ「私だって…好きな事だけやって、それだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよ!」

 

ヒヨリ「…絢瀬さん」

 

エリ「自分が不器用なのは分かってる、でも…私は!」

 

エリ「…!」ダッ

 

ヒヨリ「絢瀬さん!」

 

エリ(私は…誰もいないクラス教室の中で一人、自分の席に座って考え込んでいた)

 

エリ「私の、やりたいこと…」

 

エリ「そんなもの…」

 

スッ

 

エリ「…?」

 

エリ(私に手を差し伸べたのはヒヨリだった)

 

ヒヨリ「…」

 

エリ「あなた…」

 

ヒヨリ「絢瀬さん…いや、エリ」

 

ヒヨリ「お願いがあるんだ」

 

エリ「練習?なら、昨日言った課題をまず全部こなして…」

 

ヒヨリ「スクールアイドル、一緒にやらない?」

 

エリ「!…何言ってるの、私がそんな事するわけないでしょ?」

 

エリ「それに別にやりたいなんて…大体、私がアイドルなんておかしいでしょ!」

 

ヒヨリ「僕は思わないよ…だって、エリは可愛いから!」

 

エリ「そんなこと…」

 

ヒヨリ「…だから、大丈夫」

 

ヒヨリ「僕がそばにいる」ニコッ

 

エリ「!」

 

エリ(…私は、とても嬉しかった)

 

エリ(だけど、それでも私は…彼女のその気持ちに応える事は出来なかった)

 

エリ(私は心のどこかで未だに引っ掛かっていた…本当にそうする事が彼女にとっても私にとっても、正しいのかと)

 

エリ「ごめんなさい…やっぱり今の私には、あなたの気持ちに応えられない」

 

ヒヨリ「…そっか、分かった」

 

エリ「でも…一度しか言わないから、よく聞いて」

 

ヒヨリ「…何?」

 

エリ「同じ道を往くのはただの仲間に過ぎない、別々の道を共に立って往けるのは…」

 

ヒヨリ「『友達』だ?」

 

エリ「ええ」

 

ヒヨリ「それも…おばあさまの言葉?」

 

エリ「いえ、私の言葉よ…ヒヨリ」フフッ

 

ヒヨリ「ふふっ…素敵な言葉だね」

 

エリ(私はヒヨリと一緒に笑い合っていた)

 

エリ「じゃあ…今日も厳しく行くわよ!」

 

ヒヨリ「うん!」

 

エリ(それから、私は生徒会長として…スクールアイドルであるヒヨリのサポートに全力で取り組んだ)

 

エリ(そしてオープンキャンパスでの彼女のライブは成功、結果的に入学希望者は増加し…廃校は免れる事となった)

 

エリ(生徒会室で…私達は抱き合った)

 

ヒヨリ「やった…エリ!」ダッ

 

エリ「ヒヨリ!」ギュッ

 

ヒヨリ「ありがとう…」

 

エリ「いいえ、私の方こそ…学校を守ってくれて、ありがとう」

 

ヒヨリ「…うん」グスッ

 

エリ(それから私は、彼女が守ろうとしたものを守ろうと思った…)

 

エリ(学校を卒業してから間もなく…おばあさまの店で住み込みで働く事になったヒヨリは買い出しに行っていた)

 

ヒヨリ「~♪」スタスタ

 

ネイティブワーム「…」

 

エリ「待ちなさい」

 

ネイティブW「!?」

 

エリ(私は太陽を背に立っていた)

 

エリ(私は七年ぶりにライダーベルトを腰に巻き、飛んできたカブトゼクターを掴んだ)

 

エリ(私はワームを倒すカブトの資格者になる為に、小さい頃からずっとトレーニングをしてきた)

 

エリ「私はこの時を待っていた…いや、この一瞬の為に生きてきた」

 

エリ「変身!」

 

『Henshin』

 

エリ(カブトゼクターをベルトにセットした私は…カブトマスクドフォームに変身した)

 

エリ(こうして私は、カブトとしてワームと戦う事になった…)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ディケイド「うわっ!」ゴロゴロ

 

ディケイド(地獄兄弟の技を受け、オレの変身は強制的に解除されてしまった)

 

キックホッパー「お前、オレの弟を…!」

 

ツカサ(どうやらオレの技はパンチホッパーだけに命中したらしく…パンチホッパーは既に消失していた)

 

ツカサ「くっ…しかしここまで強いと、逆に笑えてくるな」

 

キックホッパー「お前…今、俺達を笑ったな?」

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(しまった、このワードは禁句だった…)

 

キックホッパー「もう一度だ…!」

 

ツカサ(キックホッパーがホッパーゼクターを操作しようとしたその時だった)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

キックホッパー「!」

 

ツカサ(次の瞬間、見覚えのある光線がキックホッパーに命中していくと…キックホッパーは消失した)

 

ディエンド「お待たせ」スタスタ

 

ツカサ(オレの横に立っていたのはディエンドだった)

 

ツカサ「いや…別に待っていないんだが」

 

ディエンド「あら、照れてるの?」

 

ツカサ「…馬鹿な事を言うな」ハァ

 

ナルタキ「やれやれ…また君か」

 

ディエンド「あら、言ったはずよ?」

 

ディエンド「私は…何度でもあなたの邪魔をするって」

 

ナルタキ「…フン」

 

ツカサ「お前…」

 

ディエンド「さて、早く元の世界に戻りましょう…キバーラ!」

 

キバーラ「はいは~い!じゃあ行っちゃうわね~♡」グルグル

 

ツカサ(ディエンドに呼ばれて飛んできたキバーラは…オレとディエンドの周りを飛び回った)

 

ツカサ(するとオレの意識は…次第に遠のいていった)

 

ナルタキ「小癪な真似を…だが、まあいい」

 

ナルタキ「彼がダメなら彼女達がいる…そろそろ私の力も完全に回復する頃だしな」ニヤリ

 

 

 

ヒヨリ「まさか、僕が…ワームだったなんて」ハァハァ

 

?「ヒヨリ」

 

ヒヨリ「…エリ?」

 

?「私と一緒に来なさい」

 

ヒヨリ「えっ?」

 

フィロキセラW「…」

 

ヒヨリ「…!」

 

擬態エリ「大丈夫…私はあなたの味方よ」

 

ヒヨリ「…どういう事?」

 

擬態エリ「私達は…ZECTの手によって、人工的に作られたワームなの」

 

擬態エリ「最も、あなたはマスクドライダーシステムの実験のショックで覚えていないでしょうけど…」

 

ヒヨリ「…そんなの、嘘だ」

 

擬態エリ「嘘なんかじゃないわ…だから、一緒に行きましょう?」

 

擬態エリ「おいで…ヒヨリ」

 

ヒヨリ「イヤだ…イヤだっ!」

 

擬態エリ「そう、それなら…」

 

フィロキセラW「力ずくで連れていくしかないわね」

 

ヒヨリ「…!」

 

 

 

雪穂(日が暮れ始め…ヒヨリさんを見つけられなかった私と亜里沙はアリサのいるビストロ・サルに戻っていた)

 

亜里沙「ヒヨリさん、見つからなかったね…」

 

雪穂「…うん」

 

亜里沙「お姉ちゃんも戻ってこないし…あれ?」

 

雪穂(近くのテーブル席でアリサは…絵を描いていた)

 

アリサ「~♪」

 

亜里沙「ねぇ…寂しくないの?」

 

アリサ「へっ?」

 

亜里沙「お姉ちゃんもヒヨリさんもいないのに…アリサは寂しくないのかなって」

 

アリサ「…おばあさまは言っていた」

 

亜里沙「?」

 

アリサ「そばに居ない時は、もっとそばに居てくれる」

 

亜里沙「…!」

 

アリサ「だから…アリサは平気だよ!」

 

アリサ「だって、お姉ちゃんもヒヨリさんも…アリサと心で繋がっているから!」

 

亜里沙「そばにいない時は、もっとそばに…そっか」フフッ

 

雪穂「…」

 

カランカラン…

 

ツカサ「絆とは決して断ち切る事の出来ない深いつながり…例え離れていても心と心が繋がっている」

 

亜里沙「ツカサ…!」

 

雪穂「大丈夫だったの!?」

 

ツカサ「一応な…ところで雪穂、ちょっとこっちに来い」

 

雪穂「?」

 

雪穂(私はツカサと外で、お互いに今の状況を説明した)

 

雪穂「カブトに変身したエリさんがZECTに倒されたって…本当にツバサさんがそう言ってたの?」

 

ツカサ「ああ、それにヒヨリが…エリの偽者に連れ去られたらしい」

 

雪穂「エリさんの偽者…そのワーム、私達も会った!」

 

ツカサ「お前達も会ったのか…」

 

雪穂「うん、それと…ヒヨリさんもワームになっちゃって」

 

ツカサ「ヒヨリが…ワームに?」

 

雪穂「うん…」

 

ツカサ「そうか、ワームだったヒヨリと人をワームにするネックレス…」

 

ツカサ「何か関係がありそうだな…」

 

雪穂「…ねぇ、ツカサ」

 

ツカサ「ん?」

 

雪穂「もしかして…二人を助けに行くの?」

 

ツカサ「…当たり前だ、俺は世界の中心のようなものだからな」

 

ツカサ「ならば、この世界は俺が救うべきだ…絶対にな」

 

雪穂「何それ…まあ、いっか」

 

雪穂「どうせ止めても聞かないんだろうし…」

 

ツカサ「へぇ…分かってるじゃないか?」

 

雪穂「あんまり分かりたくないけど…ね」フフッ

 

ツカサ「…」フフッ

 

雪穂(すると、亜里沙が店から出てきた)

 

亜里沙「ツカサ、雪穂!」

 

ツカサ「亜里沙…」

 

雪穂「何かあったの?」

 

亜里沙「今、ZECTが宇宙に通信衛星を打ち上げたって!」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「通信衛星?」

 

亜里沙「うん…テレビでそう言ってた」

 

ツカサ「なるほどな、だいたいわかってきたぜ…奴らのしようとしてる事が」

 

雪穂「…行くの?」

 

ツカサ「ああ…すぐにエリとヒヨリを連れて帰る」ダダッ

 

亜里沙「行ってらっしゃい!」

 

雪穂「…ところで、亜里沙はいつからさっきの話を聞いてたの?」

 

亜里沙「…実は、最初から」

 

雪穂「ふ~ん…そっか」

 

亜里沙「ごめんなさい…」

 

雪穂「いいよ…でも、亜里沙なら『私もお姉ちゃんを助けに行く!』って言い出すと思ってたから」

 

亜里沙「…私ね、アリサのおかげで気づいたんだ」

 

亜里沙「私もお姉ちゃんやツカサと心で繋がっているから…私も、信じて待ってる!」

 

雪穂「亜里沙…」

 

亜里沙「もちろん…私と雪穂の心も繋がってるよ!」

 

雪穂「…うん」フフッ

 

雪穂(私はそのまま亜里沙と一緒に…ビストロ・サルの中に入っていった)

 

 

 

シャドウ隊員「報告します、通信衛星の打ち上げに成功…電波の送信開始まで残り十分です」

 

擬態エリ「ありがとう」

 

ヒヨリ「…ん」パチリ

 

?「目が覚めましたか?」

 

ヒヨリ「お前は…」

 

ネギシ「ZECTの開発担当、ネギシと申します」

 

ネギシ「いやぁ~、しかしいよいよですね…電波の送信開始まであと十分ですよ?」

 

擬態エリ「愚かな人類の歴史は終わり、私達ワームが新たな歴史を刻む時が来る…これ以上の悦びは無いわ」

 

ヒヨリ「一体、僕を捕まえて何をするつもりなの…?」

 

ネギシ「私達はこれから特殊な電波を送信して…世界中にいる多くの人間をワームに変えようとしているんですよ」

 

ヒヨリ「何だって…!?」

 

ネギシ「その為にはどうしても…さっき打ち上げたZECTの通信衛星とあなたのワームとしての力が必要なんです」

 

ヒヨリ「僕の、ワームとしての力…?」

 

擬態エリ「…実験をしている時、あなたには特殊な力が秘められている事が分かったの」

 

擬態エリ「一つの力をより強力に増幅させる能力…それさえあれば、私達の仲間を増やすことなんて容易い事よ」

 

ネギシ「そして、その強力な電波は通信衛星を経由して…ネックレスを持った世界中の人々をワームに変えてしまうのです」

 

擬態エリ「今やネックレスは世界の半分以上の人間に配布された…後は作戦が成功すれば、この世界はワームのものになる」

 

ヒヨリ「そんな…そういえば、本物のエリはどこ?」

 

ネギシ「彼女なら、私が始末させていただきました…」

 

ヒヨリ「!?」

 

ネギシ「いやぁ~、心地良かったですよ…彼女が倒された時の呻き声を聞くのは」

 

ヒヨリ「そんな…!」

 

擬態エリ「…あなたはそこで見ていなさい」

 

擬態エリ「私達が…世界を変えるその時を」ニヤリ

 

 

 

?『助けて…助けて、エリ!』

 

エリ「…」パチリ

 

エリ(夢の中で誰かに呼ばれたような気がした私は…意識を取り戻した)

 

エリ(幸い、私に…大きな怪我は無かった)

 

エリ(でも…私の身体は落下してきた瓦礫によって、ほとんど覆われていた)

 

エリ(辛うじて空いていた隙間から…右手しか伸ばせないような状況だった)

 

エリ「…また、こうなってしまったのね」

 

エリ(さっきの戦いで体力を消耗していた私にはもう…瓦礫を持ち上げられる程の力は残っていなかった)

 

エリ「私もここまで、みたいね…」

 

エリ(さっきまで辺りを照らしていたお天道様の光は、段々と暗くなっていく…今度こそ私はもうダメかもしれない)

 

エリ(そうやって諦めかけていたその時…誰かが私のいる瓦礫のもとまで近付いてきた)

 

ザッザッ…

 

エリ「…?」

 

ツカサ「諦めるな、エリ…その手を伸ばせ」

 

エリ(私に声をかけ、手を伸ばしてきたのは…ツカサと呼ばれていたあの少年だった)

 

エリ「あなたは…」

 

ツカサ「ヒヨリがZECTに捕まった」

 

エリ「!…ヒヨリが?」

 

ツカサ「ああ、だから一緒に…助けに行くぞ」

 

エリ「…でも、ZECTの計画のせいでクロックアップシステムはもう使えないわ」

 

エリ「そんな状態の私が今更、助けに行ったって…」

 

ツカサ「…大丈夫だ」

 

エリ「えっ?」

 

ツカサ「オレがそばにいる」

 

エリ「…!」

 

ガタガタガタ…

 

エリ(再び瓦礫が私のもとへ落ちてこようとしている)

 

ツカサ「早くこの手を掴め!」

 

エリ(私はすぐにツカサの手を掴んだ)

 

ツカサ「はっ!」ガガガッ!

 

エリ(ツカサは銃のような武器で、私の周りにあった瓦礫を壊すと…私を引っ張り出した)

 

ツカサ「急ぐぞ!」

 

エリ「…ええ!」ダッ

 

エリ(私達は落ちてくる瓦礫を避けながら、ZECTのアジトに向かって走って行った…)

 

 

 

シャドウ隊員「送信開始まであと一分です!」

 

擬態エリ「ついに…ついに私達の勝利よ!」

 

ヒヨリ「…」

 

ネギシ「いやぁ~、嬉しいですね…いよいよ我々ワームが世界を支配する」

 

ジリリリリ!

 

『侵入者発見、侵入者発見』

 

ネギシ「!?」

 

?「おばあちゃんが言っていた…」

 

擬態エリ「誰ッ!?」

 

?「世の中で覚えておかなければならない名前はただ一つ」

 

ヒヨリ「…?」

 

ガシャン!

 

ツカサ「天の道を往き、総てを司る男…天道ツカサ」

 

ツカサ(オレはドアを蹴破り…人差し指で天を指しながら、ヒヨリ達のいる司令室に入った)

 

ネギシ「いやぁ~…あなたでしたか」

 

ツカサ(オレはネギシをスルーし、エリの偽者に話しかけた)

 

ツカサ「お前がエリの偽者か?」

 

擬態エリ「そうよ…あなたがディケイドね?」

 

擬態エリ「一人で来るなんて、無茶な事をするのね…」フフッ

 

ツカサ「はぁ…おいおい、誰が一人で来たなんて言った?」

 

擬態エリ「?…まさか!?」クルッ

 

ツカサ(別ルートから司令室に入ったエリは…ヒヨリを拘束していた紐を解いた)

 

ヒヨリ「エリ?何で…」

 

エリ「…」

 

ヒヨリ「僕、ワームだったんだよ!?」

 

ヒヨリ「なのに、何で助けに…!」

 

エリ「暴れないの」ギュッ

 

ツカサ(エリはヒヨリを後ろからそっと優しく抱き締めた)

 

ヒヨリ「…!」

 

エリ「ヒヨリ、あなたは私にとってもう一人の妹みたいな存在…そして?」

 

ヒヨリ「…友達」

 

エリ「そう、大切な真実は…いつだってそれだけよ」フフッ

 

エリ「だから、私は…あなたを守る」

 

ヒヨリ「…ありがとう、エリ」

 

エリ「ほら…早く逃げなさい」

 

ヒヨリ「ああ!」ダッ

 

ネギシ「あの子は私が追います」

 

擬態エリ「…頼んだわ」

 

ツカサ(ネギシはヒヨリを追った)

 

ツカサ「待て…!」

 

ガガッ!

 

ツカサ(シャドウ部隊がマシンガンブレードを発砲し…オレとエリの動きを止めた)

 

エリ「そう…あなたが私の偽者ね?」

 

擬態エリ「フフフッ、ようやく会えたわね…それにしても良いの?」

 

エリ「…」

 

擬態エリ「あの子はワームなのよ?彼女を受け入れるような場所なんて、この世界のどこにもないというのに…」

 

ツカサ「違うな」

 

擬態エリ「…何ですって?」

 

ツカサ「この世に一ヵ所だけ、例え世界の全てを敵に回しても妹のような友を受け入れる場所がある」

 

ツカサ「そして…この世に一人だけ、例え世界の全てを敵に回しても大切な人達を守るために戦う少女がいる!」

 

エリ「!…あなた」

 

擬態エリ「…くだらないわね、身を寄せ合うのは弱い者同士がする事よ!」

 

ツカサ「身を寄せ合える場所があったからこそ…彼女は強くなろうとしたんだ!」

 

ツカサ「その為に彼女は一人でずっと…大事な人達や愛する世界を守ってきた」

 

ツカサ「だからこそ…今の彼女は誰よりも強い!」

 

エリ「ツカサ…」

 

ツカサ「同じ顔をしているが、人を欺くだけのお前は彼女の足元には遠く及ばない…虫けら以下だ」

 

擬態エリ「あなた…言わせておけば!」

 

エリ「確かにあなたは私に擬態したつもりでしょうけど…いくら顔をそっくりにしたからって、あなたは私にはなれない」

 

擬態エリ「!?」

 

エリ「何故なら私は…常に進化し続けているのだから」

 

擬態エリ「…あなた、何を言っているの?」

 

ツカサ(エリは人差し指を天に向けて言い放つ)

 

エリ「おばあさまは言っていた…」

 

ツカサ「…」フフッ

 

エリ「私の進化は光より速い、全宇宙の何者も…私の進化にはついてこられない」

 

擬態エリ「さっきから、意味の分からない事をゴチャゴチャと…あなたにはもうクロックアップは出来ないのよ!」

 

擬態エリ「この世界は…もう、私のものなのよ!?」

 

ツカサ「どうかな、オレはお前の野望を破壊する」

 

擬態エリ「あなた…さっきから一体、何者なの!?」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ツカサ(オレがそう言ってバックルを着けた瞬間、カブトゼクターが部屋の壁を突き破って飛んできた)

 

ツカサ(カブトゼクターはシャドウ部隊を牽制し、オレの隣に立っていたエリの手に収まった)

 

ツカサ「変身!」

 

エリ「…変身!」

 

ツカサ(オレは一枚のカードをベルトに入れ、エリはカブトゼクターをベルトに嵌めた)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

『Henshin』

 

ツカサ(オレとエリはディケイドとカブトマスクドフォームへの変身を完了させる)

 

カブト「キャストオフ!」

 

『Cast Off』

 

ディケイド(更にカブトがゼクターの角を引くと…マスクドアーマーが飛び散った)

 

『Change Beetle』

 

ディケイド(飛び散った装甲の破片でシャドウ部隊を薙ぎ払うと…カブトはライダーフォームになった)

 

擬態エリ「…ウワァァァ!!」

 

ディケイド(憤慨したエリの偽者は…ついにフィロキセラワームに変化した)

 

ディケイド「行けるか?」

 

カブト「当然よ」

 

ディケイド「よし!」ダッ

 

カブト「…!」ダッ

 

 

 

ヒヨリ「はぁはぁ…ここって、何かの装置?」

 

ネギシ「逃がしませんよ」

 

ヒヨリ「!」

 

セミW「フフフ…」

 

『カメンライド…サソード!』

 

セミW「!?」

 

サソード「…」

 

ディエンド「大丈夫?」

 

ヒヨリ「…あなた達、もしかして僕を守ってくれるの?」

 

ディエンド「そういう事」フフッ

 

サソード「じいやは言っていた…友情に勝る財産は無い、一生の宝にしろ」

 

ヒヨリ「う、うん…」

 

セミW「いやぁ~、困りましたね…招かれざる客という訳ですか」

 

ディエンド(セミのワームは私が召喚したサソードと戦闘を始めた)

 

ヒヨリ「…あなたは戦わないの?」

 

ディエンド「ええ…実はこの世界のちょっとしたお宝をあなたに譲ろうと思って」

 

ヒヨリ「お宝?」

 

ディエンド「…これよ」スッ

 

ディエンド(私は少女にライダーベルトを渡した)

 

ヒヨリ「これは…」

 

ディエンド「それはあなたがあなたでいる為に…あなたの道を往くために、必要なものよ」

 

ヒヨリ「僕が…僕の道を往くために?」

 

ディエンド「ええ、これを着けて…あなたが心から守りたいと思うものを守りなさい」

 

ヒヨリ「…うん、分かった!」

 

ディエンド(少女はライダーベルトを腰に巻いた)

 

ヒヨリ「来い!」

 

ディエンド(少女が手をかざすと、青いクワガタ虫型のメカ…ガタックゼクターが天井の壁を突き破って飛来してきた)

 

ディエンド(少女はガタックゼクターをかざした手で掴むと…)

 

ヒヨリ「…変身!」

 

『Henshin』

 

ディエンド(ベルトにガタックゼクターを嵌め、少女はガタックマスクドフォームに変身した)

 

ガタック「…はぁっ!」ガガッ!

 

ディエンド(彼女はガタックバルカンを使って、謎の装置を破壊する)

 

セミW「何…クロックダウン装置が!」

 

ディエンド「そのベルトのクワガタ虫の大顎を展開させて!」

 

ガタック「お、大顎って!?」

 

ディエンド「角のような部分よ!」

 

ガタック「角…あっ、これか!」

 

『Cast Off』

 

ディエンド(ガタックがゼクターの大顎部分を開放させると、マスクドアーマーが周囲に弾け飛んだ)

 

セミW「グッ…」

 

ディエンド(飛び散ったマスクドアーマーの破片がセミのワームに当たる中、ガタックはライダーフォームへの変身を完了させた)

 

『Change Stag Beetle』

 

セミW「おのれ…」

 

ディエンド(セミのワームはクロックアップしようとする)

 

サソード「クロックアップ!」

 

『Clock Up』

 

ディエンド「ベルトの横のスイッチを押して!」

 

ガタック「えっ…これか!」

 

『Clock Up』

 

セミW「ウオォォォ!!」ダダッ

 

サソード「一緒に行くぞ、カ・ガーミン」

 

ガタック「えっ、カ・ガーミンって…僕!?」

 

サソード「他に誰がいる…ライダースラッシュ!」

 

『Rider Slash』

 

ガタック「じゃあ僕はこの武器を使って…」

 

『Rider Cutting』

 

ガタック「ライダーカッティング!」

 

サソード「やぁっ!」ズバッ

 

セミW「グッ!?」

 

ガタック「おりゃぁっ!!」

 

セミW「グワァァァァァ!?」

 

『Clock Over』

 

ディエンド(クロックアップできない私が次に目にした光景は…ガタック達がセミのワームを倒した瞬間だった)

 

ディエンド(敵を倒した事を確認したサソードは姿を消した…)

 

ガタック「…やった」

 

ディエンド「このドレイクグリップも結局、使う事は無かったけれど…また別の機会に使えば良いわね」ボソッ

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ディエンド「じゃあ…さよなら」

 

ディエンド(私はその場から姿を消した)

 

ガタック「えっ、ちょっと待って!?…行っちゃった」

 

 

 

カブト(フィロキセラワームは超高速で活動し、両腕の刃で私達を攻撃してくる)

 

ザシュッ!

 

カブト「…!」

 

ズバッ!

 

ディケイド「くっ…!」

 

フィロキセラW「フフ…クロックアップを封じられたあなた達が私に勝てるの?」

 

ディケイド「残念だったな…」

 

フィロキセラW「何ですって?」

 

カブト(ディケイドは一枚のカードをベルトに入れた)

 

『アタックライド…イリュージョン!』

 

カブト(次の瞬間…ディケイドは三人に分かれた)

 

ディケイド「行くぞ!」

 

カブト「そういう事ね…分かったわ!」

 

カブト(それぞれの武器を持った三人のディケイドと私は、フィロキセラワームが高速化させないように連携攻撃を仕掛けていく)

 

ザシュッ!ガガッ!ズバッ!

 

フィロキセラW「アッ…!」フラッ

 

ディケイド「残念だったな…どんなに速く動いても、お前の攻撃パターンは既に見切った!」

 

フィロキセラW「グッ…」

 

カブト(私達がフィロキセラワームを怯ませると、誰かがこっちに向かって走ってきた)

 

?「ライダーキック!」

 

『Rider Kick』

 

カブト(勢いよく走る青いクワガタ虫の戦士は…フィロキセラワームに向かって蹴りを放った)

 

?「おりゃぁっ!!」バキッ!

 

フィロキセラW「ウッ…!」ゴロゴロ

 

カブト(技をまともに受けたフィロキセラワームは吹き飛び、地面に転がっていく)

 

?「大丈夫、エリ?」

 

カブト(クワガタのような青い戦士の声は…私にとって、聞き覚えがあった)

 

カブト「あなた…まさかヒヨリなの?」

 

ガタック「えへへ…うん」

 

フィロキセラW「あなた…私と同じワームなのに、何を!」

 

ガタック「確かに僕はワームだ…でも、それを受け入れて生きていくしかないんだ」

 

フィロキセラW「何…!?」

 

ガタック「僕だって…大切なものを、守りたいから!」

 

カブト「ヒヨリ…」

 

ガタック「それが僕なんだ…ガタックになった今の僕にしか出来ない事なんだ!」

 

フィロキセラW「…ふざけるな」ボソッ

 

ガタック「えっ?」

 

フィロキセラW「ふざけるなぁぁぁ!!」

 

カブト(私に擬態する事を捨て、本性を現したフィロキセラワームは羽を広げて飛行する)

 

ガタック「飛んだ!?」

 

フィロキセラW「まずは裏切り者の貴様からだ!」

 

カブト(フィロキセラワームはガタックに向かって突進しようとする)

 

カブト「…ヒヨリ!」

 

ゴッ!

 

カブト(私はガタックを庇い、フィロキセラワームの突進攻撃を受け止めた)

 

カブト「うっ…」

 

フィロキセラW「!?」

 

ディケイド「はっ!」ガッ

 

フィロキセラW「グハッ!」

 

カブト(私が受け止めた事でフィロキセラワームに隙が生まれ、ディケイドが蹴りを浴びせる)

 

フィロキセラW「…こうなったら、俺は生き延びる!」

 

カブト(フィロキセラワームはアジトの天井を突き破っていく)

 

ディケイド「逃げる気か!」

 

ガタック「そんな…!」

 

フィロキセラW「いつかワーム軍団を再構築し、人間を全滅させる…フハハハハ!」

 

カブト(冗談じゃないわ…そんな事、絶対にさせない)

 

カブト(おばあさまは言っていた…私が望みさえすれば、運命は絶えず私に味方する)

 

カブト(今ならその言葉の意味が分かる…そうよ、私は)

 

カブト「絶対に…諦めたりしない!」

 

 

 

ディケイド(カブトがそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードにカブトの力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「ちょうどいい…使ってみるか」

 

ディケイド(オレはその中から一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…カ・カ・カ・カブト!』

 

ディケイド(オレはカブトの後ろに回り込んだ)

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

カブト「えっ…何かしら?」

 

ディケイド(オレはカブトの背中を押した)

 

ディケイド(するとカブトは…ゼクターカブトに変形し、オレはそれを持ち上げた)

 

カブト「ええっ!?…これは?」

 

ディケイド「オレとエリの力だ」

 

カブト「…ハラショー」

 

ディケイド「一緒に追うぞ!」

 

カブト「ええ!」

 

ディケイド(飛んでいくゼクターカブトに続けてオレも高くジャンプし、アジトの屋上へと出た)

 

フィロキセラW「何だと!?」

 

ディケイド(ゼクターカブトはフィロキセラワームを攻撃し、ついでに屋上にあった電波送信アンテナも破壊していく)

 

フィロキセラW「カハッ…!」

 

ディケイド「エリの偽者である事すら捨てたお前はもう何者でもない…ただのワームだ」

 

ディケイド(次にオレはもう一枚のカードをベルトに装填した)

 

ディケイド「これで決める!」

 

『ファイナルアタックライド…カ・カ・カ・カブト!』

 

カブト「…!」ガッ!

 

ディケイド(ゼクターカブトが体当たりし、フィロキセラワームを地面に叩きつける)

 

フィロキセラW「ウッ…」

 

ディケイド(そして、オレとゼクターカブトは超高速で動けるようになった)

 

ディケイド(ゼクターカブトはカブトに戻って、ゆっくりふらつくフィロキセラワームの後ろに背を向けて立ち…)

 

『One,Two,Three』

 

ディケイド(ベルトのスイッチを押し、ゼクターの角を操作した)

 

カブト「ライダー…キック」

 

『Rider Kick』

 

ディケイド「はっ!」

 

ディケイド(その間にオレは飛び上がり、フィロキセラワームに向かってカブトと挟むようにキックを放った)

 

ディケイド「やぁーっ!」

 

カブト「…!」

 

ディケイド(オレの飛び蹴りとカブトの回し蹴り…二人のライダーキックがフィロキセラワームに炸裂した)

 

ディケイド(これは『DCDM(ディケイドメテオ)』…オレとカブトの技だ)

 

フィロキセラW「グワァァァァァ!!」

 

ディケイド(キックをまともに受けたフィロキセラワームは…そのまま爆発した)

 

ディケイド(その直後に超高速の効果が切れ、電波送信アンテナも崩落した)

 

ディケイド「終わったな…」

 

カブト「…ええ」

 

ディケイド(オレ達は変身を解除した)

 

ヒヨリ「おーい!」ダダッ

 

エリ「ヒヨリ…」

 

ギュッ

 

ツカサ(ヒヨリはエリを抱き締めた)

 

エリ「ヒヨリ?」

 

ヒヨリ「怖かった…エリがいなくなるなんて、絶対にイヤだったから」

 

ヒヨリ「だから僕も、戦わなくちゃって…」グスッ

 

ツカサ(エリは泣いているヒヨリの頭をそっと撫でた)

 

エリ「…ありがと、一緒に戦ってくれて」ナデナデ

 

ツカサ「…」フフッ

 

 

 

カランカラン…

 

ツカサ(夜になって…オレ達はビストロ・サルに戻った)

 

アリサ「お姉ちゃん、ヒヨリさん!」ギュッ

 

ツカサ(アリサは帰ってきたエリとヒヨリをいきなり抱き締めた)

 

ヒヨリ「おっと…ただいま、アリサちゃん」

 

エリ「ただいまアリサ…心配かけたわね?」ナデナデ

 

アリサ「ううん、二人が戻ってきたから大丈夫だよ!」

 

ツカサ「…」カシャッ

 

ツカサ(オレが微笑むエリに向けてカメラのシャッターを押していると、亜里沙達が声をかけてきた)

 

亜里沙「おかえり、ツカサ!」

 

雪穂「…おかえり」

 

ツカサ「…ああ」

 

亜里沙「あのね…私、アリサと一緒におでん作ったんだよ!」

 

雪穂「具が三つしかないんだけどね…いっぱい作ったみたいだから、皆で食べよう?」

 

ツカサ「…そうだな、それが良い」フフッ

 

ツカサ(オレは皆で一緒におでんを食べた後…雪穂達と共に写真館へと帰った)

 

 

 

エリ(寝ようとする前に…私はアリサの部屋をノックした)

 

コンコン…

 

エリ「アリサ?入るわよ…」ガチャ

 

アリサ「~♪」

 

エリ(部屋にいたアリサは…絵を描いている様子だった)

 

エリ「アリサ」

 

アリサ「あっ…お姉ちゃん」

 

エリ「見せて」

 

アリサ「…うん!」

 

エリ(アリサが描いていたのは、私がスクールアイドルの衣装を着て踊っている絵だった)

 

エリ「!…これって」

 

アリサ「実はね…亜里沙から別の世界のお姉ちゃんはスクールアイドルをやってるって話を聞いて、描いてみたんだ」

 

アリサ「きっとスクールアイドルをやっているお姉ちゃんも一生懸命で…目一杯、楽しんでるんだろうなって」

 

エリ「…そうだといいわね」フフッ

 

アリサ「うん…そうだと思う!」ニコッ

 

エリ(これが、もう一つの私の道…)

 

エリ(私はアリサの描いた絵をじっくりと見ていた)

 

 

 

ツカサ(オレは写真館から少し離れた商店街にある豆腐屋で豆腐を買い、金属製のボウルに入れて持ち帰っていた)

 

ブロロロ…キキッ!

 

ツカサ(すると…オレの近くでカブト虫のような赤いバイクが停まった)

 

ツカサ「あのバイクは…カブトエクステンダー?」

 

ツカサ(カブトエクステンダーから降りて、ヘルメットを脱いでオレに声をかけたのは…)

 

エリ「ぷはっ…ツカサ!」

 

ツカサ「エリか…どうした?」

 

エリ「これ、お店の賄いの為に仕入れたんだけど…おまけにもう一匹貰っちゃってね」パカッ

 

ツカサ(エリは荷台に載せていたクーラーボックスを開け、オレに中身を見せてきた)

 

ツカサ「これは…鯖か!」

 

エリ「活きが良いでしょう?ぜひ亜里沙や雪穂ちゃんにも食べさせてあげてほしいなと思って…だから、あなたにあげるわ」

 

ツカサ「そうか…悪いな」

 

ツカサ(オレはエリからクーラーボックスを受け取った)

 

エリ「私の方こそ…食い逃げをしたのはあなたの偽者だったとヒヨリから聞いたわ」

 

エリ「それなのに、本物のあなたにあんな酷い事をしてしまって…ごめんなさい」

 

ツカサ「いや…分かってくれれば、問題ない」

 

エリ「あと、その…ね」モジモジ

 

ツカサ「?」

 

エリ「一緒にヒヨリを助けてくれて、ありがとう…ね?///」

 

ツカサ「…ハラショー」

 

エリ「えっ?」

 

ツカサ「驚いたんだ…エリにもそういう素直な所があるんだな、と」

 

エリ「もっ…もう、からかわないでよ!///」

 

ツカサ「…」フフッ

 

エリ「あっ…そういえばこの間、あなたは私の事を強いって言ってくれたじゃない?」

 

ツカサ「ああ、確かに言ったな」

 

エリ「…私ね、すごくしっかりしてていつも冷静に見えるって言われるけど」

 

エリ「本当は全然そんな事ないの…」

 

ツカサ「…」

 

エリ「いつも迷って、困って、泣き出しそうで…」

 

エリ「ヒヨリに実際…恥ずかしい所を見られた事もあるのよ」

 

エリ「…でも、隠してる」

 

エリ「自分の弱い所を…」

 

ツカサ「…それで良いんじゃないのか?」

 

エリ「えっ?」

 

ツカサ「恥ずかしがる事なんかない…それは、本当の弱さじゃないからな」

 

エリ「!…そうね」フフッ

 

エリ「あの時の私は戦う事を諦めかけてた…でも、あなたはそんな私に『そばにいる』と言ってくれた」

 

エリ「だからもう一度言うわ…ツカサ、本当にありがとう」

 

ツカサ「ああ…!」

 

ツカサ(オレが自分の手を見ると、徐々に身体が透けている事に気付いた)

 

エリ「それは…どうしたの?」

 

ツカサ「どうやら…この世界でオレがやるべき事は終わったらしい」

 

エリ「そう、別の世界に行くのね?」

 

ツカサ「そうみたいだな」

 

エリ「…もしあなたが旅の途中で挫けそうになったら、今度は私があなたを助けに行くわ」

 

エリ「例え、どんなに離れていても…ね」

 

ツカサ「そうだな…もしその時が来れば、な」

 

エリ「ふふっ…最後にもう一つ、良いかしら?」

 

ツカサ「何だ?」

 

エリ「亜里沙の事…よろしく頼むわね?」

 

ツカサ「…任せろ」フフッ

 

ツカサ「じゃあな、エリ…」

 

ツカサ(オレの身体は消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

エリ「ダスビダーニャ、ツカサ」

 

エリ「…大丈夫、私もそばにいる」フフッ

 

 

 

ツカサ(オレは光写真館へ戻り、エリから貰った鯖でサバ味噌を作っていた)

 

ツカサ「出来たぞ」コトッ

 

ツカサ(亜里沙は食卓に置かれたサバ味噌をジッと見つめていた)

 

亜里沙「これが、サバミソ?」

 

ツカサ「そうだ…冷めるといけないから早く食べろ」

 

亜里沙「…うん、いただきます!」

 

雪穂「いただきます」

 

ツバサ「いただきます」

 

ツカサ「…」ハァ

 

ツカサ(どうしてオレは無意識にツバサの分まで作ってしまっているのだろうか…?)

 

亜里沙「ハラショー…美味しい!」

 

ツカサ「当たり前だ、今回は特別な包丁で鯖を捌いたからな…」

 

雪穂「えっ、ダジャレ?」

 

ツカサ「…そんなつもりはない」

 

亜里沙「あっ…そういえば、今回撮った写真はどんな感じだったの?」

 

ツカサ「これか?」ピラッ

 

ツカサ(オレは亜里沙達に一枚の写真を見せた)

 

ツカサ(写真には天に向かって人差し指を差すエリとアリサが描いたスクールアイドルの衣装を着たエリのイラストが写っていた)

 

亜里沙「…良かった、こっちの世界のお姉ちゃんも楽しそうで」フフッ

 

雪穂「ねぇ、亜里沙…大丈夫?」

 

亜里沙「何が?」

 

雪穂「寂しくないの…?」

 

亜里沙「…うん、私は平気だよ!」

 

雪穂「ふふっ…そっか」

 

ツカサ(雪穂と亜里沙が話していると、開いていた部屋の窓から二匹のキバーラが喧嘩をしながら入ってきた)

 

キバーラA「あんたがニセモノでしょ!」バサバサ

 

キバーラB「あんたこそ!」バサバサ

 

雪穂「えっ…もしかしてこれ、どっちかがワーム!?」

 

亜里沙「どっちが本物のキバーラなんだろう…?」

 

ツカサ「どっちでもいいんじゃないか?というより…別にどうでもいい」

 

キバーラA「ちょっと!?何よそれ!」ゴン!

 

キバーラB「ヒドいじゃない!」ガン!

 

ツカサ(怒った二匹のキバーラはオレに体当たりしてくる)

 

ツカサ「ちょっ…痛いからやめろ!」

 

ツバサ「…」ガタッ

 

雪穂「ツバサさん?」

 

ツカサ(急に立ち上がったツバサは、台所からフライパンを持ってくると…)

 

ツバサ「…伏せて」

 

ツカサ「えっ?」

 

ツバサ「はっ!」ブンッ!

 

ツカサ「おわっ!?」サッ

 

バコーン!

 

ツカサ(フライパンをテニスラケットのように扱い、片方のキバーラを吹き飛ばした)

 

キバーラA「フギャッ!」ヒュウゥゥゥ…パン!

 

ツカサ(叩かれた方のキバーラは、窓の外まで飛んでいくと…小さく爆発した)

 

ツカサ「お前…いきなり危ないだろ!?」

 

ツバサ「本物を知る者は…偽者には騙されないわ」フフッ

 

キバーラ「ツ…ツバサ~!」

 

ツカサ(本物のキバーラはツバサのもとへ飛んでいく)

 

ツバサ「ふふっ…よしよし」ナデナデ

 

亜里沙「さすがツバサさん!」

 

雪穂「でも…何でフライパンなの?」

 

ツカサ「そんな事、オレが知るか…というか人の話を聞け!」

 

ツカサ(すると…また突然、背景が違うものに変化した)

 

ツカサ「!」

 

ツバサ「…来たわね」

 

キバーラ「くすくす♡」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「宛て先は…アシカワマナ」

「ユ…ユキちゃん?」

「スクールアイドルって…何?」

「やめて…私を、呼ばないで!」

第14話『求めるもの』

目覚めろ、その魂!

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