9つの道はいつか重なって   作:まーけたー

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~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツバサ「アギトの世界よ」

ツカサ「オレは、今の居場所にいる意味を必ず見つけたいんだ」

マナ「…今の居場所にいる意味?」

ユキホ「私も…大切な人を守りたいんです」

雪穂「G3としてじゃなく…高坂ユキホとして戦って?」

バッファローL「人は力を得れば間違った道を選ぶ…」

ツカサ「お前に道案内してもらう必要はない!」

ホノカ「人の運命があなた達の手の中にあるのだとしたら…私達が奪い返してみせる!」

ディケイド「オレとホノカの力だ」

ホノカ「ありがとう…ツカサくん」


~希×響鬼の世界~
第16話『響かぬ鬼』


(春の陽が射す森の中を歩いていると…向こうの方から小さな風が吹いてきた)

 

(落ちていた花びらが渦を巻くように舞った瞬間、ほんの一瞬だけ見えたような気がした…小さな龍)

 

?「!」

 

(風の向こうに見えたその姿は、あまりにもかすかで儚かった)

 

(目を凝らした時にはもう…その姿は見えなくなっていた)

 

?「…春、やんなぁ」フフッ

 

(幼稚園に入る前ぐらいの頃から…ウチには他の皆には見えないものが見えた)

 

(夜の空を飛ぶ長い鼻のお天狗さん、神社のおっきな木に住んでる小さな白いユラユラさん)

 

(遠いお山の鳥居の向こうで鳴いてる真神さん、お社の陰にいる白い狼さん、家の裏の塀の上にいる小さいコボシさん…)

 

(こんなにいっぱいいるのに、姿が見えたり声が聞こえたりするのはウチだけやった)

 

(最初は家族や先生に言ったりしたけど、皆は子供の戯言やと思ったみたいで…笑い飛ばされてしまった)

 

(それからウチは…他の皆には見えない不思議なもののことはあまり言わないようになった)

 

(皆が見えないものは、無い事にして黙っておいた方が良い)

 

(小さい頃から転校ばっかりで、ちゃんとした友達が出来なかったウチは…いつしかそんな処世術を身につけていた)

 

(そんな風に思いながら成長していくと…段々とその不思議な生き物を見る事が少なくなっていって)

 

(今では風が吹いたり花が舞ったり、嵐の兆しが見えたりした時なんかにちらりとその存在のかすかな気配を感じ取るくらい)

 

(一度無い事にしてしまったら…きっと本当に無い事になってしまうんかな?)

 

(でもな…ウチ、思うんよ)

 

(今はもうかすかにしか見えなくても、感じる事は確かにあって…)

 

(これを何かに活かしたいなって思ってるん)

 

パサッ

 

?「ん?」

 

(ウチのポケットから一枚のタロットカードが落ちてきた)

 

?「…正位置の『戦車』」

 

(示されているのは前進、新しい世界、克服と成功、別の世界への出発…)

 

(何だかウチのこれからの未来を暗示しているようなしていないような…)

 

(でも、どんな事があったとしても…きっと大丈夫やってウチは思う)

 

(だってウチは…身も心も、鍛えてますから)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(オレがほんの少し凹んでいると、写真館の背景が違うものに変化した)

 

雪穂「これは…森の中に太鼓?」

 

亜里沙「タイコって何…?」

 

雪穂「バチっていう棒で叩いて、音を鳴らす楽器のことだよ」

 

亜里沙「叩く…ドラムと似てる!」

 

雪穂「うーん、ちょっと違うけど…同じ打楽器だから似てると言えば似てるのかもね」

 

ツカサ「そうか…ここは響鬼の世界だな」

 

雪穂「響鬼?…その名前も確か、私達の世界で聞いたことがあるような気がするんだけど」

 

亜里沙「う~ん…あっ、希さんだ!」

 

雪穂「そうだ!あの時、海未さんのブレイドと一緒に希さんが響鬼になって私達を助けてくれたんだ…」

 

ツカサ「じゃあ、この世界には響鬼として魔化魍と戦っている希がいるってことか…」

 

亜里沙「マカモウ?」

 

雪穂「この世界の敵のこと?」

 

ツカサ「ああ…簡単に言えば妖怪の類だな」

 

ツカサ「奴らは普段、山や森に住み着いていてな…自分達の餌にする為に出会った人を襲うんだ」

 

亜里沙「エサにするって…人を食べちゃうの?」

 

ツカサ「ああ…場合によっては人里にまで下りてきて、街中に堂々と現れる事もあるらしい」

 

亜里沙「そうなんだ…」

 

ツカサ「だからこそ…そこで起こる被害を未然に防いだり、最小限に食い止めたりするのが響鬼を始めとした鬼の役目って訳だ」

 

雪穂「鬼が化け物を倒すって…何だか想像つかないね」

 

ツカサ「『倒す』…ちょっと違うな」

 

雪穂「え?」

 

ツカサ「実際には『清める』んだ」

 

雪穂「…清める?」

 

ツカサ「そうだ…基本的に魔化魍はアンデッドと同じように不死身でな、通常の物理攻撃は効かない」

 

亜里沙「じゃあ、どうやって…?」

 

ツカサ「鬼はそれぞれが得意とする楽器を模した専用の武器を使っていてな」

 

雪穂「楽器のような武器…ってことは、そこから音を出して魔化魍を清めるの?」

 

ツカサ「その通りだ、清めれば魔化魍の邪悪な魂は消え…魔化魍の身体はただの土塊に戻る」

 

雪穂「へぇ…ん?」

 

ツカサ「どうした?」

 

雪穂「いや、魔化魍って清めないといけないんだよね…それなら、ツカサの場合はどうなるの?」

 

亜里沙「あっ…」

 

ツカサ「…オレか?」

 

雪穂「そうだよ、だって…そんな武器持ってないんでしょ?」

 

ツカサ「…まあ、何とかなるだろ」ガタッ

 

ツカサ(オレは椅子から立ち上がった)

 

雪穂「いや…何とかなるって、相手は不死身なんでしょ?」

 

雪穂「ブレイドの世界の時みたいにカードで封印できるわけでもないし…そうだ!」

 

雪穂「ツバサさんなら、何か知ってるんじゃ…」

 

ツバサ「…ごちそうさま」ガタッ

 

雪穂「えっ!?」

 

スタスタ…バタン

 

ツカサ(何か思い詰めた表情をしていたツバサは突然、席から立ち上がり…足早にスタジオのある部屋から出て行った)

 

雪穂「えぇ…?」

 

ツカサ「放っといてやれ、どうせ…いつもの気紛れだ」

 

雪穂「いや、でも…」

 

ツカサ「それに心配する必要は無い、何故なら…オレは破壊者らしいからな」

 

雪穂「…それ、理由になってないんだけど」

 

亜里沙「それにしてもツバサさん…何かあったのかな?」

 

ツカサ「さあな、ところで…それはもう食べないのか?」

 

亜里沙「…あっ!」

 

ツカサ(亜里沙達は再びバーニャカウダを食べ始めた)

 

ツカサ「…」

 

 

 

ツバサ(スタジオを出た私に…キバーラが声をかけてきた)

 

キバーラ「ツ~バサッ!」パタパタ

 

ツバサ「キバーラ…」

 

キバーラ「どうしたのよ、そんな顔しちゃって…?」

 

ツバサ「…気配を感じるの」

 

キバーラ「気配?」

 

ツバサ「ええ…とても近くに、ね」

 

キバーラ「!…まさか」

 

ツバサ「そう、そのまさかよ…」

 

 

 

ナルタキ(私は光写真館を少し離れた場所から見つめていた)

 

ナルタキ「厄介者の彼女には…少し痛い目に遭ってもらわないとね」

 

ナルタキ「何度も私の計画を邪魔した罰だ…」フフッ

 

ナルタキ(私は現れたオーロラを通過し、その場から姿を消した…)

 

 

 

鋭鬼「やっぱり盗まれとったみたいじゃな…お主、探したぞ!」

 

?「…」

 

裁鬼「あなた、何者なの…?」

 

?「…」ダッ!

 

鋭鬼「!?…サカエ、危ない!」バッ

 

?「!」ズバッ!

 

鋭鬼「かはっ…うわぁぁぁっ!」

 

裁鬼「エイラちゃん!?そんな、エイラちゃんが滝壺の中に…!」

 

?「…」スッ

 

裁鬼「!」

 

?「…!」ザシュッ!

 

裁鬼「うっ!…かはっ」

 

?「…」スタスタ

 

裁鬼「待っ、て…」ドサッ

 

 

 

ツカサ(翌朝、オレと雪穂と亜里沙の三人は写真館を出た)

 

雪穂「あれ?ツバサさんがいない…」

 

ツカサ「アイツもお宝探しとやらで色々と忙しいんだろう…放っとけ」

 

亜里沙「ん~…ここ、気持ち良いね!」

 

雪穂「そうだね…小さな川が目の前にあったり周りに木々があるってことは、ここは山の中かな?」

 

ツカサ「おそらくそうだろうな」

 

雪穂「そっか…それで、こんなに空気が美味しいんだ」

 

亜里沙「えっ…雪穂、空気は食べられないよ?」

 

雪穂「いやいや、違うから!ものの例えだから!」

 

ツカサ「お前、さっき朝食を食べたばかりだろう…どんだけ食い意地張ってるんだ?」

 

雪穂「だから違うってば、もう!」

 

ツカサ「どうどう」

 

雪穂「馬じゃな…もういい、早くノゾミさんを探しに行くよ!」スタスタ

 

亜里沙「あっ、待ってよ雪穂ー!」ダッ

 

ツカサ「…」フゥ

 

ツカサ(オレ達はノゾミを探すため、森の中に入っていった)

 

 

 

ツカサ(霧がかかる森の中にオレ達が入ってからしばらく歩いていると…雪穂がオレに話し掛けてきた)

 

雪穂「そういえばツカサの服、また変わってるよね?」

 

ツカサ(オレは襟に小さく『日高ツカサ』と書かれた薄紅色の装束を着ていた)

 

ツカサ「全く自分でも嫌になる…どんな服でも完璧に着こなしてしまうんだからな」

 

雪穂「また言ってるよ…」

 

ツカサ「何か言ったか?」

 

雪穂「何でもないでーす」

 

亜里沙「ねぇ、ツカサ…」

 

ツカサ「どうした亜里沙?」

 

雪穂「もしかして、歩き疲れちゃった?」

 

亜里沙「ううん…そうじゃないんだけど、さっきから何か出てきそうな感じがして」

 

雪穂「怖くなっちゃったの?」

 

亜里沙「うん、ちょっとだけ…」

 

ツカサ「なるほどな…確かにもう、既にそこに出てきているからな」

 

雪穂「…え?」

 

ツカサ(オレ達の目の前には一組の男女がいた)

 

男「…人間」

 

女「人間…」

 

ツカサ(男は女の声で、女は男の声でそれぞれ喋っている)

 

雪穂「な、何なの?」

 

ツカサ「こいつらは童子と姫だ」

 

亜里沙「ドウジとヒメ?」

 

ツカサ「魔化魍とは少し違うが…魔化魍が出現するような場所には大抵、こいつらがいるんだ」

 

ツカサ「簡単に言えば魔化魍の味方だな」

 

ツカサ(すると…童子と姫は、それぞれ姿を変えた)

 

怪童子「…餌」

 

妖姫「餌…」

 

亜里沙「もしかして…私達、狙われてる?」

 

雪穂「みたい、だね…」

 

ツカサ「…とりあえずお前らは離れてろ」

 

雪穂「う、うん!」

 

亜里沙「分かった!」

 

ツカサ(雪穂達が離れたのを確認し、オレはバックルを装着した)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ツカサ(オレは取り出した一枚のカードをディケイドライバーに入れ、ディケイドに変身した)

 

ディケイド「…よし」

 

怪童子「…ディケイド?」

 

妖姫「ディケイド…!」

 

ディケイド「まとめてかかってこい…相手してやる」

 

怪童子「!」ダッ

 

妖姫「…!」ダッ

 

ディケイド(オレの挑発に乗り、怪童子と妖姫は走ってこちらに向かってきた)

 

ディケイド(その間にオレは…二枚のカードをライドブッカーから取り出した)

 

ディケイド「ホノカ…借りるぞ」

 

『カメンライド…アギト!』

 

ディケイド(一枚目のカードをバックルに入れたオレはアギトグランドフォームにカメンライドした)

 

DCDアギト「はっ!やあっ!」ガッ!ゴッ!

 

DCDアギト(オレは二体を次々に殴りつけ、ダメージを与える)

 

怪童子「!?」

 

妖姫「!」

 

DCDアギト「本当の戦いってヤツを見せてやるよ」

 

『フォームライド…アギト!トリニティ!』

 

DCDアギト(二枚目のカードをベルトに装填し、オレはスピードとパワーを併せ持つトリニティフォームにフォームライドした)

 

DCDアギト「やっ!はっ!」ザシュッ

 

DCDアギト(オレは目の前に現れたストームハルバートとフレイムセイバーを手にして、怪童子と妖姫を斬りつけていく)

 

怪童子「…!」

 

DCDアギト「これで終わりだ…はっ!」ブンッ

 

DCDアギト(オレは二つの武器を空中へ放り投げた)

 

妖姫「!?」

 

DCDアギト(その行動に怪童子と妖姫が気を取られている隙に、オレは一枚のカードを取り出しベルトに入れた)

 

『ファイナルアタックライド…ア・ア・ア・アギト!』

 

DCDアギト「はあっ…!」シャキン

 

DCDアギト(頭のクロスホーンが開き、集中力を高めるオレの足元にアギトの紋章が浮かび上がる)

 

DCDアギト「はっ!」バッ

 

DCDアギト(その紋章をエネルギーに変えて両足に集めたオレは跳び上がり、妖姫に向かってライダーシュートを放った)

 

DCDアギト「やぁーっ!」

 

妖姫「!!」

 

怪童子「…ッ」

 

DCDアギト(技を受けてすぐに爆発した妖姫を見て、怪童子は逃げようとする)

 

DCDアギト「逃がすか!」パシッ

 

DCDアギト(直後にオレは落ちてきた二つの武器をもう一度手にし、ファイヤーストームアタックで怪童子を切り裂いた)

 

DCDアギト「はあーっ!」ザシュッ!

 

怪童子「!!」

 

DCDアギト(攻撃を受けた怪童子も爆発し、オレはカメンライドを解いた)

 

ディケイド「…」フゥ

 

亜里沙「ツカサ、後ろ!」

 

ディケイド「?」クルッ

 

ディケイド(オレが振り返ると、後ろには魔化魍であるカッパがいた)

 

カッパ「…」

 

ディケイド「!?」

 

ディケイド(オレはひとまず距離を置こうとしたが…それよりも早く、カッパはオレの足元に白い粘液を吐き出した)

 

ディケイド「うわっ!」ベチャッ

 

雪穂「ツカサ!」

 

ディケイド「ぐっ…硬質化する粘液か」

 

ディケイド(固まった粘液からはガスも出てきている)

 

亜里沙「大丈夫!?」

 

ディケイド「ああ、動けないが何とか大丈夫だ」

 

雪穂「…ぷっ」

 

ディケイド「おい…何笑ってんだ?」

 

雪穂「だってツカサ、声が高くなって…」フフッ

 

ディケイド(ガスの影響か、オレの声は一時的に高くなっていた)

 

亜里沙「雪穂、笑っちゃダメだよ?」

 

雪穂「ごめんごめん…」

 

ディケイド「それにしても参ったな…これじゃ身動きが出来ない」 

 

カッパ「…」ダッ

 

ディケイド(それを狙ってか、カッパがオレを攻撃しようとしてきた)

 

ディケイド「!」

 

亜里沙「危ない!」

 

チリーン…

 

ディケイド(その時…どこかから、鈴の音が聞こえてきた)

 

カッパ「!?」

 

雪穂「な、何…?」

 

ディケイド「…?」

 

ディケイド(その直後、蛇のように伸びてきた五色の布がカッパの身体を包み込んだ)

 

カッパ「!」

 

?「はっ!」

 

チリチリチリチリ…

 

カッパ「…!!」

 

ディケイド(辺り一面に美しい鈴の音色が響き渡り…その音でカッパの身体は四散した)

 

ディケイド「今のは…清めの音か」

 

ディケイド(カッパが土塊になり、オレの足を固めていた物は溶けてなくなった)

 

?「あなた…見たところ、鬼じゃなさそうね?」

 

ディケイド「!」クルッ

 

ディケイド(オレが振り向くと、可憐で凜とした気品を漂わせる一人の鬼がいた)

 

ディケイド(身体は鉄のように光り、顔は目も鼻も口もない代わりに少し薄い桜色の隈取りのような紋様が浮かび上がっていた)

 

ディケイド「…アンタは?」

 

ディケイド(いつもの声の高さに戻ったオレは…鬼に向かってそう聞いた)

 

?「人の名前を聞こうと思うなら、まずはあなたから名乗るべきじゃないの?」

 

ディケイド「…」ハァ

 

?「答えて、あなた…鬼じゃないわね?」サッ

 

ディケイド(鬼はオレに鈴を向ける)

 

ディケイド「…」

 

亜里沙「ま、待ってください!」ダッ

 

ディケイド(雪穂と亜里沙がオレと鬼の間に割って入る)

 

?「あなた達…危険よ、離れて」

 

雪穂「私達、彼の仲間なんです!」

 

?「仲間?」

 

雪穂「はい…私達は彼と一緒に旅をしています」

 

?「!…そう、何か訳があるみたいね」

 

ディケイド(鬼は顔だけ変身を解き、素顔を見せた)

 

?「私はアダチサキ…この近くにあるたちばな高等学校の生徒よ」

 

サキ「音撃鈴を使う『佐鬼』として…魔化魍と戦っているわ」

 

ディケイド(サキの顔を見て、オレは変身を解いた)

 

ツカサ「『佐鬼』…か」

 

 

 

ツカサ(雪穂達が自己紹介し、サキに説明をした後…)

 

サキ「お待たせ」

 

ツカサ(生い茂る草木から変身を全て解いた制服姿のサキが出てきた)

 

雪穂「あの…どうしてわざわざ隠れて変身を解いたんですか?」

 

サキ「ああ、それはね…」

 

ツカサ(サキが話そうとする前に…オレは雪穂達に説明した)

 

ツカサ「一度鬼に変身すると、それまで着ていた服は全て消えてなくなるんだ…燃えたり裂かれたりしてな」

 

亜里沙「えっ!?」

 

雪穂「そうなの!?」

 

ツカサ「ああ、だから服を着る為に草木の中に入ってたんだ」

 

サキ「…あなた、よく知ってるわね?」

 

ツカサ「何で知ってるのかは分からないがな…」

 

サキ「どういう事?」

 

雪穂「ツカサは…記憶喪失なんです」

 

サキ「そう…それにしてもあなた達、さっき別の世界から来たとか言ってたわね?」

 

ツカサ「ああ」

 

サキ「会ったばかりだし、あなた達の話はあまり信じられないけど…」

 

雪穂「ですよね…」

 

サキ「でも、鬼じゃないあなたが童子と姫を倒したのは事実だし…あら?」

 

ツカサ(サキはオレが着ている薄紅色の装束を見つめた)

 

ツカサ「何だ?」

 

サキ「あなたの着ているそれ…伝説の音撃道の大師匠が着ていたのと同じものじゃない?」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

サキ「そうよ…きっとそうに違いないわ!」

 

雪穂「あ、あの…」

 

サキ「ちょっとついて来て!」ダダッ

 

ツカサ(サキは全速力で走っていく)

 

雪穂「え…ええっ!?」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…とりあえず行くぞ」ダッ

 

亜里沙「うん!」ダッ

 

雪穂「い、いや…ちょっと待ってよ!」ダッ

 

ツカサ(オレは雪穂達と共にサキの後を追いながら、一つ引っ掛かっている事があった)

 

ツカサ(さっきは佐鬼の登場に気を取られて気付かなかったが…確か、夏の魔化魍であるカッパは太鼓の音撃にしか効果が無いはずだ)

 

ツカサ(佐鬼の音撃鈴では倒せない…にも関わらず、どうしてカッパを倒せたんだ?)

 

ツカサ「まさか?…いや、今は別にいいか」

 

 

 

ツカサ(サキに何とか追いついたオレ達の目の前には学校があった)

 

亜里沙「つ、着いた…」ハァハァ

 

雪穂「も、もうダメ…」ゼェゼェ

 

ツカサ「…ここがアンタが通ってる学校か?」

 

サキ「そう…ここがたちばな高等学校よ」

 

?「サキ!」

 

ツカサ(オレがサキと話していると、丸坊主で熊のような図体をした…まるで破戒僧のような男が校舎から飛び出してきた)

 

サキ「あっ…」

 

丸坊主の男「全く、勝手に学校を飛び出して何処に行っていたのだ!?」

 

サキ「何処って…決まってるじゃない、この近くの森に魔化魍が出たって聞いたから倒しに行ってたのよ」

 

丸坊主の男「また勝手な事を…魔化魍はワシらが退治するからよせと言っただろう!」

 

サキ「またそうやって腫れ物扱いするの!?」

 

丸坊主の男「そうではない!ワシは父親として未熟なお前を…」

 

サキ「!…私はね、もう娘として扱ってほしいんじゃないの」

 

サキ「一人の鬼として、扱ってほしいの!」

 

丸坊主の男「…『佐鬼』という名前が付いているとはいえ、お前はまだこの学校の生徒としてまだ修行中の身だ」

 

丸坊主の男「そんなお前を…ワシは一人前の鬼として認める訳にはいかん!」

 

サキ「…そう、もういい」ダッ

 

ツカサ(そう言ってサキはさっきまで来た道を引き返すように走って行った)

 

丸坊主の男「こら待て、サキ!」

 

ツカサ(男はサキを追おうとするが、早々にサキの姿は見えなくなってしまった)

 

亜里沙「行っちゃった…」

 

ツカサ「ここまで連れてきたかと思えば、今度はオレ達を置いて行って…全く忙しいヤツだな」ハァ

 

丸坊主の男「はぁ…む、誰だお前達は?」

 

ツカサ(男はようやくオレ達の存在に気が付いた)

 

雪穂「あ、私達は…」

 

丸坊主の男「誰だか知らんがここは部外者の立ち入りは禁じている…去るが良い」

 

ツカサ(オレは男の話をスルーして質問した)

 

ツカサ「…アンタ、この学校の先生か?」

 

丸坊主の男「いかにもそうだが…む?」

 

ツカサ(男はオレが着ていた薄紅色の装束を見つめた)

 

丸坊主の男「ま、まさか…伝説の音撃道の大師匠か!?」

 

ツカサ「またそれか…一体何の事だ?」

 

丸坊主の男「とにかくついて来い!」ガシッ

 

ツカサ(男はオレの右腕を掴み、無理やり校舎まで引っ張っていく)

 

ツカサ「お、おいやめろ!」ズルズル…

 

雪穂「あーあ、引っ張られてる…どうしようか?」

 

亜里沙「うーん…とにかく着いて行ってみようよ!」

 

雪穂「…だよね」

 

 

 

ツカサ(オレ達は男に連れられ、校長室に入って座らされていた)

 

ツカサ(校長室にはオレ達と先ほどの破戒僧のような風貌の男、そして長髪で中性的な顔立ちをした男がいた)

 

丸坊主の男「先ほどはすまぬ…ワシの名前はキドウ、このたちばな高等学校で猛士科の教師をしておる」

 

雪穂「えっ…猛士科?」

 

亜里沙「聞いたことないね…ツカサ、猛士って何?」

 

ツカサ「猛士というのは…音撃で魔化魍と戦う鬼やそれを補佐する人達の事だ」

 

雪穂「なるほど…あっ、私は高坂雪穂っていいます」ペコッ

 

亜里沙「絢瀬亜里沙です!」ペコッ

 

ツカサ「それにしてもあんな馬鹿力でオレの腕を引っ張るとはな…おかげでまだ少し痛いんだが」

 

雪穂「ちょっと、ツカサ!」

 

ツカサ(オレを叱る雪穂を長髪の男がなだめる)

 

長髪の男「気にしなくて良い…彼の言う通り、キドウが悪い」

 

キドウ「む…」ポリポリ

 

ツカサ(長髪の男に言われて、キドウはバツが悪そうに頬を掻いた)

 

長髪の男「私はこのたちばな高等学校の校長をしているキリュウと申す」

 

ツカサ(キリュウはオレ達の目の前にある机に緑茶が入った湯呑みを置いた)

 

キリュウ「口に合うかは分からないが…」

 

雪穂「あっ…ありがとうございます!」

 

亜里沙「いただきます!」ズズッ

 

ツカサ「…それで、何でオレをここに連れて来たんだ?」

 

キリュウ「うむ…実は我が校は廃校の危機に直面していてな」

 

雪穂「…廃校、ですか?」

 

キリュウ「ああ、我が校には『猛士科』と『忍者科』という他の学校には無いカリキュラムがあるのだが…」

 

亜里沙「忍者科って…?」ボソッ

 

雪穂「たぶん、この学校は鬼以外にも忍者を育てているってことなんだと思う」ボソッ

 

亜里沙「忍者?すごい!」

 

キドウ「…」ゴホン

 

亜里沙「あっ…ごめんなさい」

 

キリュウ「…という訳なのだが、最近は入学する生徒数が年々減少していてな」

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

雪穂「え?」

 

ツカサ「という事は、伝説の音撃道の大師匠であるこのオレに講師を頼みたい…そういう訳だな?」

 

雪穂「いや、それはいくらなんでも…」

 

キリュウ「その通りだ」

 

雪穂「そうなんですか!?」

 

キリュウ「うむ…実は私は怪我をしていてな、鬼になれる身体ではないのだ」

 

キリュウ「だからこそ、大師匠である君の存在が必要なのだ…音撃を極めた事で音撃を使わずとも魔化魍を倒せるという君にな」

 

雪穂「…あの」

 

キリュウ「どうした?」

 

雪穂「実は私達…」

 

ツカサ(雪穂はキリュウとキドウにある程度の事実を伏せながら、オレ達の事情を説明した)

 

キリュウ「そうか、君達は旅をしているのか…」

 

雪穂「はい…」

 

キリュウ「そういう事ならもちろん無理にとは言わない、しかしこの学校に一体何が足りないのか…」

 

キリュウ「せめてそれを音撃道の大師匠である君から教えてほしい」

 

ツカサ「そういう事なら…良いだろう」

 

ツカサ「この学校に今、何が求められているのか…オレが絶対に見つけてやる」

 

キリュウ「よろしく頼む」フフッ

 

亜里沙「…」

 

雪穂「…どうしたの亜里沙?」

 

ツカサ(亜里沙は天井の隅を見つめていた)

 

亜里沙「何か、あそこだけ他のと色が少し違うような…?」

 

キリュウ「ほう…よくぞ見破ったな」

 

雪穂「えっ?」

 

キリュウ「もう降りて良いぞ、ハンゾウ」

 

ツカサ(キリュウに言われ、天井から忍者の装束を着た男が降ってきた)

 

雪穂「ええっ!?」

 

?「驚かせてすまなかった…私の名はハンゾウ、忍者科の先生をしている」

 

亜里沙「本物の忍者だ…ハラショー!」キラキラ

 

ハンゾウ「しかし伝説の音撃道の大師匠が…まさかここでお目にかかれるとは」

 

ツカサ「…」

 

キドウ「ハンゾウ…まさかお前、彼女達を驚かすために隠れていたのではあるまいな?」

 

ハンゾウ「まさか…そんな訳ないだろ?」ポン

 

ツカサ(ハンゾウはキドウの肩を叩いた)

 

ハンゾウ「私はキドウに用があって校長室に来たのだ」

 

キドウ「何、ワシにか?」

 

ハンゾウ「うむ…先程、山の麓でアキラ殿とヒトミ殿が喧嘩していたのを見てな」

 

キドウ「何!?…全く、またか」ハァ

 

ツカサ「どうした?」

 

キドウ「ワシの科にいる二人の生徒が入学した当初からずっと揉めているのだが…これがなかなか厄介でな」

 

ツカサ「ふむ…とりあえずその現場に行ってみるか、何か分かる事もあるかもしれないしな」ガタッ

 

キリュウ「すまない…では、よろしく頼む」

 

ツカサ「…ああ」

 

ツカサ(オレ達はキドウと一緒に学校を出て、山の麓に向かった)

 

 

 

ツカサ(山の麓に着いたオレ達の前には、二人の鬼が戦っていた)

 

キドウ「またやっとる…」ハァ

 

ツカサ(胸飾りの無い黒い身体で覆われた一人の鬼は一本の角に顔が青く縁取りされ…)

 

ツカサ(緑に近い色の身体で挑むもう一人の鬼は一本の角で顔や腕が銀で縁取られていた)

 

亜里沙「ねぇツカサ、アレってどっちも鬼なの…?」

 

ツカサ「ああ…専用の武器を持っていないようだから、まだ鬼というよりかは修行中の変身体って所だけどな」

 

ツカサ「例えば、あっちにいる青い方があきら変身体で…」

 

あきら変身体「ふっ!」サッ

 

ツカサ「もう一人の銀色の方が戸田山変身体ってとこだ」

 

戸田山変身体「はっ!」ブンッ

 

ツカサ(あきら変身体と戸田山変身体はお互いを攻撃し合っていた…掛け声からして、どちらも変身しているのは女性のようだ)

 

ツカサ「鬼合戦の始まりか…」

 

雪穂「でも、どうして鬼同士で戦って…?」

 

ツカサ「さぁな…聞いてみないと分からないだろうな」

 

キドウ「こら、止めぬかお前達!」

 

あきら変身体「止めないでください、キドウ先生!」ガガッ

 

戸田山変身体「そうッス…これは私とアキラさんの問題ッス!」ブンッ!

 

キドウ「何!?」

 

あきら変身体「ヒトミさん、あなた…確かにバケネコを倒したって言ったわね?」

 

戸田山変身体「そうッス、間違いないッス!」

 

あきら変身体「残念だけど、それは間違いよ…何故ならバケネコを倒したのは私なのだから!」

 

戸田山変身体「そんなの…プライドの高いエリート風情の言いがかりッス!」

 

あきら変身体「言ったわね…成り上がりの素人のくせに!」ブンッ!

 

ツカサ(あきら変身体と戸田山変身体は再び戦い始めた)

 

ツカサ「…どうやら、どっちが魔化魍を倒したかで揉めているみたいだな」

 

キドウ「あの馬鹿者どもが…しかも魔化魍を勝手に倒すなど」ハァ

 

ツカサ(キドウはこめかみを押さえながら呆れていた)

 

ツカサ「…とりあえず、オレが止めに行ってみるか」

 

キドウ「…何?」

 

ツカサ「オレは音撃道の大師匠だからな…ひとまず、これで止めてみせるさ」スッ

 

ツカサ(オレはバックルを取り出し、腹部に装着しようとする)

 

ツカサ「まあ…とにかく見てろ」

 

ツカサ(だが、その瞬間…誰かがオレの横を通って行くと同時に耳元でこう囁かれた)

 

?「ウチに任しとき」

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(オレの横を通り過ぎた人物は…よく見覚えのある人物だった)

 

雪穂「えっ…今のって」

 

亜里沙「まさか!」

 

ワシッ

 

あきら変身体「ひゃあ!?」

 

ツカサ(その人物は突然、あきら変身体の胸を鷲掴みにし…驚いたあきら変身体は戸田山変身体の隣まで逃げた)

 

戸田山変身体「ノ、ノゾミ先輩…!?」

 

ツカサ(ノゾミの姿を見たあきら変身体と戸田山変身体は…何故か身震いしていた)

 

ノゾミ「アキラちゃん、ヒトミちゃん…こんな所で何やってるん?」

 

あきら変身体「あのですね、ノゾミ先輩…これには深い事情がありまして!」

 

ノゾミ「深い事情って何なん?」

 

あきら変身体「そ、それは…」

 

ノゾミ「ウソつくとワシワシするよ~?」

 

あきら変身体「ひ…ひいっ!」

 

ノゾミ「もしかして…また二人で喧嘩してキドウ先生を困らせてたん?」

 

戸田山変身体「それはその…そうだ、実はアキラさんが魔化魍の噂を聞いて学校を飛び出したから私はそれを止めに!」

 

あきら変身体「なっ…ヒトミさん、何を言っているの!?あなたの方が先に飛び出したんじゃない!」

 

戸田山変身体「でもアキラさん、私との差を見せつけてやるとか言って張り切ってたじゃないッスか!?」

 

あきら変身体「ヒトミさんだって、私には負けないって言ってたじゃない!」

 

ノゾミ「…ふ~ん?」

 

戸田山変身体「…あっ」

 

あきら変身体「あっ…」

 

ノゾミ「まあどっちでもいいやん、どうせ二人一緒にお仕置きやから…!」

 

戸田山変身体「し、しまったッス…」

 

ツカサ(そう言ってノゾミは、二人に向かって両手を構えた)

 

ノゾミ「わしわしMAXの型!」ダッ

 

雪穂「ツカサ、キドウ先生…少しの間で良いんで耳を塞いで後ろ向いててくれませんか?」

 

ツカサ「…分かった」クルッ

 

ツカサ(オレは素直に雪穂の言葉を聞き入れ、後ろを向いて耳を塞いだ)

 

キドウ「何故だ?」

 

雪穂「いいから先生…後ろ、向いててくれませんか?」ゴゴゴ

 

キドウ「っ!?…わ、分かった」クルッ

 

ツカサ(雪穂に凄まれたキドウも後ろを向き、耳を塞いだ)

 

ツカサ(それからオレは何も見ていないし…何も聞こえていない)

 

ツカサ(後に亜里沙が『二人ともお尻丸出しで倒れててかわいそうだった』と呟いていたが…オレには何の事か知る由も無かった)

 

 

 

亜里沙「ツカサ、先生…もう大丈夫だよ!」

 

キドウ「う…うむ」クルッ

 

ツカサ「…」クルッ

 

アキラ「うぅ…」グッタリ

 

ヒトミ「あぁ…」ピクピク

 

ノゾミ「ふぅ、これでもう大丈夫やね?」

 

ツカサ(鬼の変身が解かれ、倒れたアキラとヒトミは…ノゾミによって既に服を着させられていた)

 

ノゾミ「ご無沙汰してます、キドウ先生」

 

キドウ「…東條」

 

ノゾミ「ぶいっ!」シュッ

 

ツカサ(ノゾミは人差し指と中指を使って、敬礼のような挨拶をした)

 

雪穂「えっ、知り合いなんですか?」

 

キドウ「東條は猛士科の生徒だ…訳あって今は休学中の身だがな」

 

ツカサ「そういう事か…」

 

キドウ「…お前、一体こんな所で何を?」

 

ノゾミ「ウチ、この辺で食べられそうな雑草を探してて…そうしたら先生の姿が見えたから何してるんかなって」

 

キドウ「…そうか」

 

ノゾミ「それじゃ、ウチはこの辺で…」スタスタ

 

ツカサ(ノゾミはその場を立ち去ろうとする)

 

キドウ「待て」

 

ノゾミ「!」ピタッ

 

キドウ「学校に戻るつもりはまだないのか?」

 

ノゾミ「…はい」

 

ノゾミ「ウチはまだしばらく、鬼になるつもりはないので」

 

キドウ「…分かった、キリュウにもそう伝えておくとしよう」

 

ノゾミ「じゃあ…」

 

ツカサ「待て」

 

ノゾミ「…?」クルッ

 

ツカサ(オレの声を聞いて、ノゾミは振り向いた)

 

ノゾミ「ウチに何か用なん?…少年くん」

 

ツカサ「少年?」

 

キドウ「東條、彼はこう見えて伝説の音撃道の大師匠だ」

 

ノゾミ「そうなんですか…?少年くん、若いのにスゴいなぁ」

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(何なんだ、このくすぐったさは…?)

 

雪穂「…あの、実は私達」

 

亜里沙「ノゾミさんを探しにここにやってきて…」

 

ノゾミ「えっ…ウチに?」

 

キドウ「む、そうだったのか?」

 

ツカサ「ああ…」

 

キドウ「そういう事ならば、彼女とゆっくり話せば良い…ひとまずワシはこの二人を学校に連れて帰る」ヒョイ

 

ツカサ(キドウはアキラとヒトミを両腕で軽く持ち上げた)

 

ツカサ「頼む」

 

ノゾミ「少年くん達…ウチに用があるってことは何か深い訳があるみたいやね?」

 

ツカサ「そんなとこだ」

 

ノゾミ「そっか、じゃあ…とりあえずウチが住んでるお家まで行こっか?」

 

雪穂「良いんですか…?」

 

ノゾミ「うん!じゃあ、ウチについてきて」スタスタ

 

ツカサ(オレ達はノゾミについて行く事にした)

 

 

 

ツカサ(ノゾミについて行くオレ達はやがて、森の中にポツンと立つ小屋に辿り着いた)

 

亜里沙「ここが…」

 

雪穂「ノゾミさんの住んでるお家…?」

 

ツカサ「…そういえばノゾミは?」キョロキョロ

 

ツカサ(ノゾミはいつの間にか…オレ達の前からいなくなっていた)

 

亜里沙「え…あれっ?」

 

雪穂「一体、どこに行っちゃったんだろう…」

 

キャァァァァァ!!

 

ツカサ「!?」バッ

 

ツカサ(近くで誰かの悲鳴が聞こえたオレ達は…思わず振り向いた)

 

?「うぅ…///」

 

ノゾミ「久しぶりやね、あだっち?」ワシワシ

 

雪穂「サキさん!?」

 

ツカサ(そこにはノゾミに『わしわし』されているサキがいた)

 

サキ「だから…いつもそうやって会う度にそれするのやめなさいよ!」ササッ

 

ノゾミ「大丈夫、大きくなる可能性はある!」

 

サキ「何の話よ!?」

 

亜里沙「…アレをしてもらったら、私の胸もお姉ちゃんみたいに大きくなるかな?」

 

雪穂「いや…別に大きくはならないと思うよ?」

 

ツカサ「…」ハァ

 

ツカサ(頭が痛くなったような気がしたオレはこめかみをグッと押さえていた)

 

ノゾミ「とりあえず皆、入ろっか…もちろんあだっちも」ガチャ

 

ツカサ(ノゾミは小屋の扉の前まで行き、鍵を開けた)

 

サキ「…その変な呼び方もやめて」

 

ノゾミ「またまた…良いやん、別に」

 

サキ「良くないわよ…」

 

ノゾミ「さあ、入って入って!」

 

亜里沙「お邪魔します!」

 

雪穂「失礼します…」

 

ツカサ「…」チラッ

 

サキ「…」

 

 

 

ツカサ(オレ達はノゾミに事情を全て説明していた)

 

ツカサ(雪穂はキリュウやキドウと話した時と同じように説明したかったみたいだが…オレがそうさせなかった)

 

ノゾミ「ふんふん…それでどうしたん?」

 

亜里沙「それで私達は…」

 

雪穂「ちょっと、何でいつも全部話そうとしちゃうのさ…?」ボソッ

 

ツカサ「ノゾミはこの世界の『μ's』メンバーだ…変に隠しても意味無いだろ?」

 

ツカサ「それに、彼女には…全てを見破られているような気がするからな」

 

雪穂「…どうして?」

 

ツカサ「さぁな、何となくだ」

 

雪穂「何となくって…あてにならないんだけど」

 

ツカサ(亜里沙から話を聞いたノゾミは納得したようだった)

 

ノゾミ「そっか…それは大変やったね?」

 

亜里沙「はい…」

 

ノゾミ「…でも、ごめんな」

 

ノゾミ「さっきも言ったけど、ウチはしばらく…鬼になるつもりはないんよ」

 

サキ「…」

 

雪穂「そういえばさっき、キドウ先生から休学されてるって聞きましたけど…何かあったんですか?」

 

ノゾミ「それが…ちょっとケガしちゃってな?」

 

雪穂「ケガ…?」

 

ノゾミ「うん、だからケガが完治するまで…しばらく鬼にはならないつもりなんよ」

 

雪穂「そうだったんですか…」

 

ノゾミ「その代わり、ウチに何か出来る事は無いかなって思って…今は猛士をサポートするような式神様を一人で作ってるん」

 

亜里沙「式神様?」

 

ノゾミ「うん、自然の力を注入する事で動物の形になって…猛士の皆を助けてくれるものなんよ」

 

ノゾミ「簡単に言うと…一種のスピリチュアルやね」

 

亜里沙「スピリチュアル…スゴい!」キラキラ

 

サキ「いい加減にしてよ」ガタッ

 

ツカサ(それまで黙っていたサキが突然、そう言って立ち上がった)

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂「…?」

 

ノゾミ「…あだっち」

 

サキ「ノゾミ…本当はもう怪我なんて治ってるんでしょ?」

 

亜里沙「えっ、そうなんですか?」

 

ノゾミ「…バレちゃったら仕方ないかなぁ」

 

雪穂「えっ…?」

 

ノゾミ「まあ…これでも鍛えてますから、身体は丈夫なんよ?」

 

サキ「…」

 

ノゾミ「ぶいっ」シュッ

 

ツカサ(平気そうに笑うノゾミを見て、サキは苛立っているようだった)

 

サキ「…あなた、いつの間にそんなつまらない嘘をつくような人間になったの?」

 

ノゾミ「…」

 

雪穂「ちょっ、ちょっとサキさん…」

 

サキ「あなたは黙ってて」

 

雪穂「…っ」

 

サキ「ノゾミ…あなた、本当に鬼になるよりも式神なんか作ってる方が大事だと思っているの?」

 

サキ「そんな事の為に、まだ休学するって言うの?…ふざけないでよ」

 

サキ「私はね…あなたと勝負してちゃんと勝ちたかったの」

 

サキ「それなのにあなたは、私を裏切って…!」

 

ノゾミ「…」

 

ツカサ(ノゾミはずっとサキの目を優しく見つめていた)

 

ツカサ「…?」

 

サキ「何よ、その目は…」

 

ノゾミ「…」

 

サキ「っ!…私はあなたを許さない、絶対にね」ダッ

 

亜里沙「あ…サキさん!」

 

サキ「…ノゾミの嘘つき」ボソッ

 

ノゾミ「!」

 

ガチャ…バタン

 

ツカサ「…サキを追うぞ」

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂「ノゾミさんにあんな失礼なこと言ったのに、何でまた…」

 

ツカサ「嘘をついているからだ」

 

雪穂「嘘って誰が…?」

 

ツカサ「…」チラッ

 

ツカサ(オレはノゾミを見た)

 

雪穂「え?」

 

亜里沙「ノゾミさんが…?」

 

ノゾミ「…」

 

ツカサ「アンタ、他に何か鬼にならない理由があるんじゃないのか?」

 

ノゾミ「さあ…どうやろうね?」フフッ

 

ツカサ「…」

 

ノゾミ「ん?」

 

ツカサ(するとノゾミは…オレが首から提げているカメラを見つめていた)

 

ノゾミ「それって…」ジーッ

 

ツカサ「何だ?」

 

ノゾミ「あっ…ううん、何でもないよ?」

 

ツカサ「?…行くぞ」スタスタ

 

亜里沙「あっ、待ってツカサ!」ダッ

 

雪穂「お邪魔しました!」ガタッ

 

ノゾミ「…うん」

 

ツカサ(オレ達はサキの後を追う為…小屋を出た)

 

ガチャ…バタン

 

ノゾミ「あのカメラって確か…ううん、それは後にしよっか」

 

ノゾミ「…さて、そろそろあの子達に行ってもらおうかな?」スッ

 

キィィィン…

 

ノゾミ「ノゾミパワー、注入!」

 

ノゾミ「はーい、プシュッ!」

 

 

 

サキ「…」

 

ツカサ「よう」

 

サキ「!」クルッ

 

ツカサ(オレ達はサキに追いついた)

 

雪穂「つ、疲れた…」ゼェゼェ

 

亜里沙「もう無理…」ハァハァ

 

サキ「…けっこう遠くまで走ってきたのに、あなたは平気なのね?」

 

ツカサ「こう見えて、オレも鍛えてるからな…」

 

サキ「…そう」

 

ツカサ「…ノゾミが休学する前、アンタとの間に何があったんだ?」

 

サキ「え?」

 

ツカサ「『嘘つき』って言葉が、どうにも気になってな…良かったら教えてくれないか?」

 

サキ「…」

 

ツカサ(サキは少し考え込み…)

 

サキ「分かったわ」

 

ツカサ(ノゾミと何があったのか話してくれる事になった)

 

サキ「…あれは二週間ほど前の事よ」

 

 

 

ノゾミ(ウチは小屋の中で二週間ほど前の出来事を思い返していた)

 

ノゾミ(あだっちは学校の近くにある秘密の練習場で毎日、音撃鈴を手にして修行していた)

 

サキ「やあっ!」

 

ノゾミ(ウチはある話をするために…あだっちのいる練習場にやってきた)

 

ノゾミ「あだっち」

 

サキ「…だからノゾミ、その呼び方やめなさいってば」

 

ノゾミ「いつもここで修行してるん?」

 

サキ「…そうだけど、何?」

 

ノゾミ「いや…ええ場所やなぁって思ってな?」

 

ノゾミ「ウチもここで修行できたらなって…」

 

サキ「はぁ?ダメに決まってるじゃない…やりたいならよそでやって」

 

ノゾミ「…そっか」

 

サキ「…で、私に何か用?」

 

ノゾミ「うん…ウチ、ちょっとあだっちと話がしたいと思ってな」

 

サキ「話?」

 

ノゾミ「うん…スクールアイドルの話なんやけど」

 

サキ「!」

 

ノゾミ「なりたいんやろ?スクールアイドルに…」

 

サキ「あなた、どこでそれを…」

 

ノゾミ「さぁ…どこでやろうね?」

 

ノゾミ(ウチはあだっちが街でこっそりスクールアイドルのCDや雑誌を毎月買って…)

 

ノゾミ(練習場でそれらを聴いたり読んだりしては…音撃鈴を鳴らしながらダンスの練習をしている事も知っていた)

 

ノゾミ(あだっちは、スクールアイドルに対して憧れを持っている…ウチはそう確信していた)

 

ノゾミ(そしてウチは…あだっちの心の中にあるもう一つの『想い』を感じ取っていた)

 

サキ「しらを切るのね…で、どういうつもり?」

 

ノゾミ「別に?あだっちも面倒なタイプだなーって」

 

サキ「…何が言いたいのよ?」

 

ノゾミ「お父さんがいる学校を…たちばなを、あだっちなりに助けたいんやろ?」

 

ノゾミ「鬼としても、娘としても…だから清めの音を活かせるようなスクールアイドルをやってみたいと思った」

 

サキ「…はっ、何言ってるの?」

 

サキ「私は別にあの堅物なんかの為にやりたい訳じゃ…」

 

ノゾミ「本当はお父さんと仲良くしたいのに…なかなか素直になれない」

 

サキ「違う!私は鬼として認めてほしいだけで…」

 

ノゾミ「そうそう…そうやって素直になれないんよね」

 

サキ「だから違うわよ!?大体、私がスクールアイドルやりたいなんて言っても…きっと頭ごなしに反対するに決まってるわ!」

 

ノゾミ「そんなの…分からないよ?」

 

ノゾミ「言ってみればいいやん、特に理由なんて必要無い…やりたいからやってみる」

 

ノゾミ「本当にやりたいことって、そんな感じで始まるんやない?」

 

サキ「…どうして」ボソッ

 

ノゾミ「えっ?」

 

サキ「どうしていちいち私に絡むの!?」

 

サキ「放っておいてよ…あなたには関係ない!」

 

ノゾミ「うーん…確かに関係ないかもしれないけど、放っとけないんよ」

 

ノゾミ「よく知ってるから、あなたと似たタイプ…」

 

サキ「何よ、それ…?」

 

ノゾミ「…とにかく、大丈夫!」

 

ノゾミ「ウチもついてるから、キドウ先生と話してみよう?」

 

サキ「…イヤだと言ったら?」

 

ノゾミ「…」サッ

 

ノゾミ(ウチは『わしわし』をしようと構える)

 

サキ「ひっ…ちょっと、その手やめなさいよ!?」

 

ノゾミ「だから行こうって言ってるんやけど…」

 

サキ「もう…分かったわよ!」

 

サキ「もし私との勝負に勝ったら、あなたの望み通り行ってあげるわ!」

 

ノゾミ「…本当に?」

 

サキ「本当よ」

 

サキ「内容は…そうね、鬼ごっこなんかが良いんじゃないかしら」

 

ノゾミ「鬼ごっこ?」

 

サキ「ええ…五分間、鬼役の私から逃げ切ったらあなたの勝ちよ」

 

ノゾミ「へぇ…良いやん!」

 

サキ「決まりね…もし私が勝ったら、二度と私にその話をしないでちょうだい」

 

ノゾミ「…うん、じゃあ約束しよう?」

 

サキ「ええ…約束」

 

ノゾミ(ウチはあだっちと指切りをした)

 

サキ「じゃあ…行くわよ!」チリーン…

 

ノゾミ(あだっちは持っていた鈴を鳴らして額の前にかざした)

 

ノゾミ(すると…淡い桃色の炎があだっちの身体を包み、あだっちは佐鬼に変身した)

 

佐鬼「はっ!」

 

ノゾミ「相変わらず、あだっちが鬼になる瞬間は綺麗やねぇ」

 

佐鬼「そんな事を言っていられるのも…今のうちよ!」ダダッ

 

ノゾミ(佐鬼はウチに向かって走ってきた)

 

佐鬼「はっ!」バッ

 

ノゾミ「おっと!」ヒョイ

 

佐鬼「やっ!」ヒュッ

 

ノゾミ「っ!?」ヒョイ

 

ノゾミ(次々に繰り出される佐鬼のパンチやキックをウチは避けていく)

 

ノゾミ「ちょっ…これって鬼ごっこやなくて組み手やない?」

 

佐鬼「問答無用!」バッ

 

ノゾミ「!」サッ  

 

佐鬼「どうしたの?あなたも変身しなさいよ!」

 

ノゾミ「…」

 

ノゾミ(この状況でも…ウチは鬼に変身しようとは思わなかった)

 

ノゾミ(あだっちは…娘として、お父さんであるキドウ先生と向き合おうとしていない)

 

ノゾミ(それどころか、どうやったら避けられるか…そればかり考えてるみたいやった)

 

ノゾミ(そんなん…絶対に良くないよ、あだっち)

 

ノゾミ(だからこそ今のウチは鬼としてじゃなく…東條ノゾミとして、あだっちと向き合いたかった)

 

ノゾミ(でも…このままだとウチは捕まって負ける)

 

ノゾミ(どうすれば良いのか…ウチが考えているその時やった)

 

佐鬼「これで私の勝ちよ!」ブンッ!

 

ノゾミ(佐鬼が音撃鈴を思いきり振り回したその時…怒りが伝わった音撃鈴から激しい波動が放たれた)

 

ノゾミ(波動は周りにある木々を薙ぎ倒したり地面を削ったり…色んな物を巻き込んでいた)

 

ノゾミ(すると…あだっちがいる所に土砂が崩れてきた)

 

佐鬼「!?」

 

ノゾミ「あだっち、危ない!」ドンッ!

 

佐鬼「きゃっ…」

 

ズサァ…!

 

ノゾミ(身を呈してあだっちを庇ったウチは…土砂に巻き込まれてしまった)

 

佐鬼「ノゾミ?…ノゾミ!」ダダッ

 

佐鬼「早くこの土をかき出さないと…ノゾミ、返事して!」

 

ノゾミ(ここは後で校長先生から聞いた話なんやけど…あだっちは時間をかけて、気を失っていたウチを助け出してくれた)

 

佐鬼「…やっと見つけた、ノゾミ!」

 

ノゾミ「…」

 

佐鬼「しっかりしなさいよ…ノゾミ!!」ユサユサ

 

ノゾミ「…」

 

 

 

サキ「…ノゾミは?」

 

キドウ「…大した怪我じゃない、医者の話では一週間程度で治るそうだ」

 

サキ「…そう」

 

キドウ「しかし…」

 

サキ「?」

 

キリュウ「彼女は自主的に休学を申し入れた」

 

サキ「…は?」

 

サキ「何でよ…悪いのは私なのよ!?」

 

キリュウ「確かに君から大まかな一連の流れは聞いた…だが」

 

ノゾミ『ウチが悪いんです』

 

ノゾミ『ウチがアダチさんをからかったから…こんな事になったんです』

 

ノゾミ『この音撃棒は…一旦預けます』スッ

 

ノゾミ『だから…アダチさんを許してあげてください』

 

ノゾミ『お願いします』ペコリ

 

サキ「何よ…それ?あの子は私の為に!」

 

キドウ「お前の為だと…?それはどういう事だ?」

 

サキ「…っ」

 

キドウ「話さんか、サキ!」

 

キリュウ「よせキドウ…アダチくんが話したくないのなら、無理に話をさせる必要はない」

 

キドウ「うっ…分かった」

 

キリュウ「本来であれば、アダチくんに何らかの処分を下すつもりだったが…東條くんの強い希望で今回は無かった事にする」

 

キリュウ「これからは…怒りに身を任せぬよう、気をつけなさい」

 

サキ「…」

 

 

 

ツカサ「…なるほどな」

 

サキ「…」

 

ツカサ「…だが、オレはそれだけじゃないような気がするな」

 

雪穂「えっ…どういうこと?」

 

ツカサ「さぁな」

 

雪穂「分からないの!?」

 

ツカサ「ただ…ああいうタイプは弱みを見せないために、あまり自分の本音を明かそうとしないからな」

 

ツカサ「ノゾミはまだ何かを隠している…オレはそんな気がするんだ」

 

ザッ…ザッ…

 

亜里沙「…?」

 

ツカサ(すると、近くから何かがこちらに近付いてくる足音が聞こえてきた)

 

?「…」

 

ツカサ(近づいてきたのは鷹のような仮面に、羽根で覆われた身体をした異形の鎧だった)

 

ツカサ「…何だ、あれは?」

 

サキ「アレは…まさか『鬼の鎧』?」

 

亜里沙「鬼の…鎧?」

 

サキ「山奥にある祠で封印されている禁断の力よ…でも、どうしてそれが?」

 

鬼の鎧「…」ブンッ!

 

ツカサ(鬼の鎧はオレ達に向かって剣を振り下ろしてきた)

 

ツカサ「うわっ!」サッ

 

雪穂「わぁっ!」サッ

 

鬼の鎧「…」

 

ツカサ(鬼の鎧はオレ達を襲おうとしている様子だった)

 

亜里沙「ツカサ、雪穂!」

 

サキ「大丈夫!?」

 

雪穂「あ、危なかった…」

 

ツカサ「全く物騒なもんを掘り起こしてくれたもんだな…」

 

サキ「それなら、私があの鎧と戦うわ!」チリーン…

 

ツカサ(サキはそう言って鈴を鳴らし…額にかざした)

 

ツカサ(直後、桃色の炎がサキの身体を包み込み…彼女は佐鬼に変身した)

 

佐鬼「はっ!」

 

雪穂「でも…勝手に鬼になって戦っちゃいけないんじゃ?」

 

佐鬼「行くわよ!」ダッ

 

雪穂「あっ…」

 

ツカサ「どうやら…今のアイツには、人の話を聞くような耳は持ち合わせちゃいないらしい」

 

亜里沙「サキさん…」

 

ツカサ「とにかく…お前達は学校に行って、この事を伝えてくれ」

 

雪穂「…うん、分かった!」ダダッ

 

亜里沙「気をつけてね!」ダダッ

 

ツカサ(雪穂達は学校に向かって走って行った)

 

ツカサ「…頼んだぞ」

 

ツカサ(オレは一枚のカードを取り出し、ディケイドライバーに装填する)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「…はっ!」ダッ

 

ツカサ(ディケイドに変身したオレは、鬼の鎧に挑んでいった…)

 

 

 

雪穂(私達は学校に向かって走っていた)

 

雪穂「このことを急いで先生達に伝えないと…!」

 

?「どうしたのかね?そんなに急いで…」

 

亜里沙「えっ…?」ピタッ

 

雪穂「!」

 

雪穂(誰かに声をかけられ…私達は思わず立ち止まってしまった)

 

?「やあ、久しぶりだね…高坂雪穂くん」

 

雪穂「…えっ?」

 

雪穂(そこには…欧米人のような顔立ちの男性がいた)

 

亜里沙「…雪穂、あのおじさんと知り合い?」

 

雪穂「いや、私には全く…」

 

?「ああ…そうだ、確か君は覚えていないんだったね?」

 

雪穂「…覚えていないって、どういうことですか?」

 

?「気にする必要はない…私はナルタキ、救世主さ」

 

亜里沙「救世主…?」

 

ナルタキ「そうだ…雪穂くんと絢瀬亜里沙くん、君達の世界のね」

 

亜里沙「私達の…?」

 

ナルタキ「そうだ、私は君達の世界を救う事が出来るんだ…今のディケイドさえ倒せば」

 

亜里沙「ディケイドって…ツカサのこと!?」

 

ナルタキ「その通り…突然だが、君達に一つ質問をしよう」

 

ナルタキ「君達は何故、彼と共に旅をする必要がある?」

 

亜里沙「それは…穂乃果さんに言われたから」

 

ナルタキ「…ふむ、なるほどな?」

 

ナルタキ「だが、それは残念ながら…彼女の勘違いだ」

 

亜里沙「えっ?」

 

ナルタキ「…君達に世界の結末を見せてあげよう」スッ

 

雪穂(そう言って男性が私達に手をかざすと…いつの間にか、私達は違う場所にいた)

 

亜里沙「!」

 

雪穂(そこには私達があの夢で見た時と同じ…壊されたオトノキの校庭で、お姉ちゃん達『μ's』が倒れている光景が広がっていた)  

 

亜里沙「ここって、私達が夢で見た…!」

 

ナルタキ「ここは君達の世界…だが今こうやって私が君達に見せているのは、あくまで分岐した先の一つだ」

 

亜里沙「分岐した先の一つ…?」

 

ナルタキ「そう、ここはディケイドを倒せなかった君達の世界…」

 

ナルタキ「君達が彼の旅を終わらせない限りは…いずれこうなる」

 

亜里沙「そんな…お姉ちゃん!」

 

ナルタキ「おっと、悪いが時間だ」スッ

 

雪穂(亜里沙が絵里さんのもとへ走ろうとした瞬間、男性は再び手をかざし…私達を森の中に連れ戻した)

 

亜里沙「…あれ?」

 

ナルタキ「どうかね、これで君達もよく分かってくれただろう?」

 

ナルタキ「彼は存在しているだけで災厄をもたらす…世界の破壊者に過ぎない」

 

亜里沙「ツカサが世界の…破壊者?」

 

ナルタキ「そうだ…彼は世界を破滅させる、最悪の存在だ」

 

亜里沙「最悪の存在…でも、ツカサはそんなのじゃ!」

 

ナルタキ「騙されているんだよ、君達が知らないだけで…彼はそういう人間だ」

 

亜里沙「そんな…」

 

ナルタキ「だからこそ、私は彼の旅を止めさせなければならない…そこで君達にも協力を要請したい」

 

亜里沙「…協力?」

 

ナルタキ「そう…君達には彼を倒してほしいんだ」

 

亜里沙「…!」

 

ナルタキ「彼さえ倒せば世界は救える…君達にとっても、悪い話じゃないはずだろう?」

 

亜里沙「でも、私たちにはそんなことできないよ…だってツカサは!」

 

雪穂(男性は亜里沙がそれ以上言おうとする前に…再び話し始めた)

 

ナルタキ「彼が君達に見せているのは…本当の彼の顔じゃない」

 

亜里沙「…」

 

ナルタキ「本当の彼は悪魔だ、救っているように見えて…世界の全てを破壊している」

 

ナルタキ「それがディケイドの企みだ」

 

雪穂「…」

 

ナルタキ「さぁ…私に協力するんだ」

 

亜里沙「…」

 

ナルタキ「共に世界を…『μ's』を救おうじゃないか?」

 

雪穂「…一つ、言わせてもらっても良いですか?」

 

ナルタキ「何かね?」

 

雪穂「私達はこれまで…ツカサと一緒に旅をしてきました」

 

雪穂「その途中でふと、気づいたことがあるんです」

 

ナルタキ「気づいた事…ふむ、彼が悪魔だということか?」

 

雪穂「確かに、私が抱いているツカサに対しての印象は…悪いイメージばっかりです」

 

亜里沙「!?」

 

雪穂「愛想は悪いし口も悪いし…おまけに性格も意地悪で!どうしようもなくヒドい!!」

 

ナルタキ「ならば話は早いな、私と一緒に彼を…」

 

雪穂「でもツカサは今までずっと…誰かのために、自分なりに戦おうとし続けてくれていた!」

 

ナルタキ「…?」

 

亜里沙「!…雪穂」

 

雪穂「私達の世界を守るだけじゃなくて…今まで出会った別の世界の『μ's』のメンバーの心も救おうとしていた!」

 

雪穂「私達はそれを…目の前で見てきた!だから、今は分かるんです!」

 

雪穂「私はそんなツカサが…ディケイドが、世界を破壊する悪魔だとは思えない!!」

 

亜里沙「雪穂…!」

 

ナルタキ「…ほう?」

 

雪穂「一体、あなたは何者なんですか…?」

 

亜里沙「そうだよ!あなたはツカサの…何を知っているの?」

 

ナルタキ「…」フゥ

 

雪穂「答えてください!」

 

ナルタキ「…やれやれ、人間は理解に苦しむ」ハァ

 

ナルタキ「倒れた彼女達を目の当たりにすれば見捨てるはずがないと思っていたのだが…全く、ハートが無い奴らだ」

 

雪穂(すると…男性の横に出現したオーロラから、赤い身体をした一人の鬼が現れた)

 

朱鬼「待っていたぞ、この時を…!」

 

ナルタキ「やれ」

 

朱鬼「!」ダッ

 

雪穂「…!」

 

雪穂(男性が命令して、鬼がハープ型の武器を持って私達に襲いかかろうとしたその時…)

 

ガガッ!

 

朱鬼「!?」

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂(私達の後ろから青いカバンを持ったツバサさんが銃で鬼を攻撃しながら現れた)

 

ツバサ「あなた達、大丈夫!?」

 

雪穂「ツバサさん!」

 

ツバサ「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

雪穂(ツバサさんは一枚のカードを銃に入れ、ディエンドに変身した)

 

ディエンド「…」

 

ナルタキ「また私の邪魔をするのか…!」

 

ディエンド「もちろんよ…私は、何度でもあなたの邪魔をする!」

 

『カメンライド…斬鬼!天鬼!』

 

雪穂(ディエンドがもう二枚のカードを銃に入れて引き金を引くと…二人の鬼が私達を守るように現れた)

 

斬鬼「…」

 

ナルタキ「何だと!?」

 

朱鬼「!…手を出すな、お前達」

 

斬鬼「…天鬼、よく見ておけよ?」

 

天鬼「はい!」

 

斬鬼「音撃弦・烈斬!」ブンッ

 

雪穂(銅色の身体をした鬼の方が…エレキギター型の武器を勢い良く振り回した)

 

斬鬼「音撃斬・雷電斬震!」ギュイィィィン!

 

雪穂(鬼は清めの音を奏でると…それを地面に突き刺した)

 

斬鬼「はぁっ!」グサッ

 

バチバチッ!

 

朱鬼「!?」

 

雪穂(男性と鬼に向かって地面に電撃が走り…男性達の動きが止まった)

 

ナルタキ「グッ…!」

 

斬鬼「今だ、行け!」

 

天鬼「逃げてください!」

 

雪穂「は、はい!」

 

亜里沙「うん!」

 

ディエンド「…頼んだわよ」ダッ

 

雪穂(私達は…急いでその場を去った)

 

朱鬼「逃がすか!」

 

斬鬼「先生…やめろー!」ダッ

 

天鬼「やめてください…内輪揉めをしていては、鬼に未来はありません!」ダッ

 

朱鬼「止めるな、彼女達は私が倒す!」

 

ナルタキ「人間共め…相変わらず猿から進化していないようだな?」ハァ

 

ナルタキ「ならば、やはり…少しお仕置きが必要か」

 

 

 

ディケイド(その頃…オレと佐鬼は逃走する鬼の鎧を追っていた)

 

鬼の鎧「…」ダッ

 

佐鬼「待ちなさい!」

 

ディケイド「…?」

 

ディケイド(鬼の鎧を追跡しながら…オレはある違和感を覚えていた)

 

ディケイド「?…おかしい」

 

佐鬼「何がよ?」

 

ディケイド「まるで『こっちに来い』とでも言っているかのような…」

 

佐鬼「…もしかして、罠だって言いたいの?」

 

ディケイド「おそらく…だがな」

 

佐鬼「じゃあ、ここで諦めて…あの鎧を逃がせっていうの?」

 

ディケイド「別にそこまでは言っていないが…」

 

佐鬼「だったら…止まってくれるまで追うしかないでしょ?」

 

ディケイド「…」

 

佐鬼「ほら、早くしないと置いて行くわよ!」ダダッ

 

ディケイド(佐鬼は更に走るスピードを上げていく)

 

ディケイド「あっ…おい!」

 

 

 

ディケイド(オレ達が追い続けていると…鬼の鎧は洞窟へと入っていった)

 

ディケイド「…どうする?」

 

佐鬼「当然、入るに決まってるでしょ?」

 

ディケイド(続けてオレ達も洞窟に入った)

 

ディケイド(洞窟の中にはいくつか横穴があったが…オレ達は奥に繋がる大きな穴から、気配がするのを感じ取った)

 

ディケイド「…間違いない」

 

佐鬼「ここね?」

 

ディケイド(だが、オレ達が歩いたその先は…行き止まりだった)

 

佐鬼「えっ…行き止まり?」

 

ディケイド(佐鬼が戸惑っていると…上から鬼の鎧が襲いかかってきた)

 

ディケイド「…危ない、避けろ!」

 

佐鬼「!?」サッ

 

ディケイド(佐鬼は何とか攻撃を回避した)

 

ディケイド「お前…誰だ?」

 

鬼の鎧「…」

 

佐鬼「答えなさい!」

 

鬼の鎧「…忍法、羽根手裏剣!」

 

ディケイド「!?」

 

ディケイド(鬼の鎧は佐鬼の足下に向かって無数の羽根を手裏剣の如く飛ばした)

 

佐鬼「ふん、どこを狙って…」

 

ディケイド「どけ!」ドン!

 

佐鬼「きゃっ!?」

 

ディケイド(状況を察知したオレは、佐鬼を押し出した)

 

ディケイド「うわぁぁぁっ!?」

 

ディケイド(地面が崩れ落ち…オレはサキを庇う代わりに、穴の中へと落下していった)

 

佐鬼「えっ…」

 

鬼の鎧「…!」

 

ディケイド(鬼の鎧は更に追い討ちをかけるように羽根の手裏剣を天井に向かって飛ばし、岩石を穴の中へと落としていく)

 

ディケイド「うっ…!」

 

佐鬼「ディケイド!」

 

ディケイド(落石のダメージを受け、オレの意識はそこで途切れてしまった…)

 

佐鬼「くっ…こうなったら私が!」ダッ

 

鬼の鎧「…忍法、影映し!」

 

佐鬼「なっ、分身!?」

 

鬼の鎧「…!」ブンッ

 

ザシュッ!ズバッ!

 

佐鬼「うっ…かはっ」

 

チリーン…バタッ

 

サキ「…」

 

鬼の鎧「…」

 

 

 

ノゾミ(ウチは式神さん達を使って、情報収集をしていた)

 

ノゾミ「セージくん、アサノちゃん…ありがとな」ヨシヨシ

 

ノゾミ(セイジガエルのセージくんとアサギワシのアサノちゃん…これがウチが開発したディスクアニマルっていう式神さん)

 

ノゾミ(他にもまだいるんやけど…それはまた別の時に紹介するとして)

 

ノゾミ(セージくんとアサノちゃんに洞窟の入り口まで連れてきてもらったウチは二匹を元のディスクに戻した)

 

ノゾミ「お疲れさん、またよろしくな?」パシッ

 

ザッ…ザッ…

 

ノゾミ「!」ササッ

 

ノゾミ(ウチは気付かれないように身を潜めた)

 

鬼の鎧「…」

 

サキ「…」

 

ノゾミ(洞窟からは…鬼の鎧と白い布で身体を包まれたあだっちが出てきた)

 

ノゾミ「…」

 

ノゾミ(あだっち…気を失っているみたいやけど、今は何も出来なくてごめんな?)

 

ノゾミ(絶対に、助け出してみせるから…!)

 

鬼の鎧「…」スタスタ

 

ノゾミ(鬼の鎧は意識の無いあだっちを抱えたまま、どこかへ去って行った)

 

ノゾミ「…うん、もう大丈夫かな?」

 

ノゾミ(周りに誰もいない事を確認したウチはポケットから音叉と四枚のディスクを取り出した)

 

ノゾミ「それじゃ…そろそろこの子らの出番かな?」

 

キィィィン…

 

ノゾミ(音叉を鳴らしたウチは…それを四枚のディスクに近づけた)

 

ノゾミ(するとディスクはそれぞれ動物に姿を変え、一匹は鬼の鎧を追って…もう三匹は洞窟の中へと入っていった)

 

ノゾミ「さてと、ウチも頑張っちゃおうかな?」

 

ノゾミ「…待っててな、少年くん」ダッ

 

ノゾミ(ウチは三匹のディスクアニマルを追って、そのまま洞窟の中へと進んだ…)




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「ようやく正体を現したわね」

「ワシはもう…鬼の力を制御できない!」

「ウチは…皆の望みを守る為に、鬼になります!」

「練習に行くわよ…よろしくね?」

十七之巻『明日なる希望(のぞみ)』
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