9つの道はいつか重なって   作:まーけたー

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~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは…電王の世界だ」

電王ソード「私、参じょ…うっ!?」

ツカサ「オレがモモ達と憑依して戦ってしまった、そのせいで…モモ達がいなくなる時間が早まったらしい」

コトリ「ツカサくんのせいじゃないよ、モモちゃん達はずっと私と一緒に戦ってくれた友達だった…なのに!」

ツカサ「コトリの中でもう一度、モモ達をイメージすればいい…それが消えたモモ達を助ける唯一の方法だ」

コトリ「何もしないことの…言い訳にはならない」

コトリ「だから…私は戦うよ、みんなと一緒に!」

ツカサ「例え力が弱くても、絶対にどんな事も乗り越えようとする…羽ばたこうとしている!」

ツカサ「それが…コトリの『強さ』だ!」

ディケイド「オレとコトリの力だ」

コトリ「ツカサくん…ありがとう」


~A-RISE×仮面ライダーの世界~
第20話『First Wars』


(白い制服を身に纏った私は…秋葉原駅からすぐ近くにあるビルの大型スクリーンを見つめていた)

 

?「ここが…UTX高校ね」

 

(秋葉原駅前再開発計画の目玉の一つとして建てられたビルの中に入っているのが…私が編入する秋葉原UTX高校)

 

(ビルの前に立って見上げるだけで…その大きさと威圧感は私にも十分、伝わっていた)

 

(だけど…それ以上に私はワクワクしていた)

 

?「ふふっ…」スタスタ

 

(ビルのエントランスに入った私は…ICチップが埋め込まれた学生証を改札機に通して、学校の中へと入っていった)

 

(二階に上がると…そこにはUTX劇場の関係者用入口があった)

 

(関係者用入口から劇場の通路を歩いていた私は…レッスンスタジオに通じる扉の前に立った)

 

?「ここね…!」

 

(私がスタジオに入ろうとした時…中からそれぞれジャンルの違う二つの音楽が聞こえてきた)

 

?「…やっぱり」フフッ

 

ガチャ

 

(私が扉を開けると…そこにはそれぞれ違うジャンルのダンスの練習をしている二人の少女がいた)

 

~♪

 

(黒いロングヘアーの少女はパントマイムやロボットの動きを取り入れた、指の先まで繊細なアニメーションダンス…)

 

~♪

 

(ゆるいパーマがかかったセミロングヘアーの少女は、彼女自身のスタイルの魅力を活かしたベリーダンスの練習をしていた)

 

?「久しぶりね…英玲奈、あんじゅ」

 

英玲奈「む…?」クルッ

 

あんじゅ「…えっ?」クルッ

 

?「…」

 

英玲奈「ツバサ?…ツバサなのか!?」ダッ

 

あんじゅ「ツバサちゃん…いつの間にこっちに帰ってきたの!?」ダッ

 

(長い黒髪の統堂英玲奈とセミロングの優木あんじゅ…二人は同時に私のもとへ駆け寄ってきた)

 

?「二人がこの学校にいるって話を聞いてね…だから、帰ってきたの」パチッ

 

(私は…二人にウィンクをしながら、そう返した)

 

(そう…私の名前は綺羅ツバサ)

 

(私は今まで、世界中の国を転々とし…多くのジャンルの歌やダンスを学んできた)

 

(やがて高校に入ってすぐ…私は開校したばかりのUTX高校芸能科に二人の『天才』が入学したという噂を耳にした)

 

(それを聞いて、ある事を思いついた私は日本に帰国し…彼女達がいるこの学校の芸能科に編入してきたのだった)

 

英玲奈「そうか…しかし、それならそうと連絡の一つくらいしてくれても良かったんじゃないのか?」

 

あんじゅ「本当よねぇ…あんじゅ達を驚かせちゃおうなんて、ツバサちゃんも人が悪いわよぉ?」

 

ツバサ「ごめんなさいね…こっちに来るまで引っ越しや編入の手続きで忙しかったものだから」

 

あんじゅ「それならしょうがないわねぇ…じゃあ、パフェ奢ってくれたら許してあ・げ・る♡」

 

英玲奈「こら、あんじゅ」フニッ

 

あんじゅ「きゃあっ!?ちょっと、英玲奈ちゃん…急にあんじゅのお腹をつまんで何のつもり?」

 

英玲奈「最近のあんじゅは糖分を摂り過ぎだ…今朝も菓子パンを三個も食べていただろう?」

 

あんじゅ「そ、そうかもしれないけど…疲れた時は甘い物が良いってよく言うでしょ?」

 

英玲奈「それは迷信だ、医学でも証明されている」

 

あんじゅ「うっ…そ、そうは言ってもあんじゅだってまだ成長期だしお腹は空くのよ!?」

 

ツバサ「へぇ…これが成長期のお腹ねぇ?」フニッ

 

あんじゅ「ツバサちゃんまで…もう、くすぐったいから触らないでよぉ~」

 

ツバサ「はいはい…それじゃ、あんじゅのウエストが今よりもう少し引き締まったらパフェでも何でも奢ってあげる」フフッ

 

あんじゅ「うふふっ…わりとすぐになるかもしれないわよ?」

 

英玲奈「リバウンドするのもすぐだろうがな」

 

あんじゅ「もう、茶化さないでよ英玲奈ちゃん…」

 

英玲奈「悪い悪い…そういえば、私達がこうして三人揃うのはツバサが転校した時以来か?」

 

ツバサ「ええ、そうよ」

 

あんじゅ「懐かしいわねぇ…今でもあのダンス大会を思い出すわぁ」

 

英玲奈「そうだな…あの時、ツバサが私達を誘ってくれなかったら今頃どうなっていた事か」

 

あんじゅ「本当にねぇ…あの時があったからこそ、こうしてあんじゅ達の今があるのよね?」

 

ツバサ「…そうだったわね」フフッ

 

(小学校低学年の頃…同級生から虐められていた私達は、ある出来事をきっかけに街が主催するダンス大会に出ようと考えた)

 

(エントリーした私達は…色々なジャンルの歌やダンスを覚えようとした)

 

(ネットや動画を見て調べた事だけじゃなく、ダンス教室やボイストレーニングにも通い…基礎から応用まで多くの事を学んだ)

 

(時間さえあれば、私達はいつも三人で集まって…歌って踊っていた)

 

(子供であっても私達は…自分自身を厳しく律し、妥協する事を決して許そうとはしなかった)

 

(それほど私達は…本気で努力し、熱中していた)

 

(そして大会に出た私達は…他の参加者を寄せつけないほどの圧倒的な歌唱力とパフォーマンスを見せつけて優勝した)

 

(地元のメディアには『天才現る』とまで評価され、話題になった私達は憧れの的として注目され…虐められる事は無くなった)

 

(そんな時、大会で私達のダンスを見た審査員が私に海外に行く事を勧めた)

 

(私はその話を二人に相談すると…二人は『行ってみた方が良い』と背中を押してくれた)

 

(私達は『またこの三人で集まったら、今よりもっと大きな事をしよう』と約束し…私は海外の小学校に転校した)

 

(その後、あんじゅはダンス部で名高い関西の中学校に進学し…英玲奈は関東で最も有名なダンススクールに通うようになった)

 

(そして海外であらゆるダンスの技術を学んだ私は…UTX高校で英玲奈、あんじゅと再会した)

 

英玲奈「それで、わざわざ私達がいるこの学校に編入してきたという事は…」

 

あんじゅ「ツバサちゃん、あんじゅ達と一緒にまた何かやるつもりなんでしょう?」

 

ツバサ「その通りよ…あの時の約束を果たしに来たの」フフッ

 

あんじゅ「じゃあ…また三人で歌ったり踊ったりできるのね?」

 

英玲奈「そうか、それは楽しみだな…」

 

ツバサ「ええ…でも、またダンスグループを組むだけじゃ面白くないわ」

 

あんじゅ「えっ?」

 

英玲奈「どういう事だ?」

 

ツバサ「やるからにはこの学校の顔…つまり、私達はアイドルになるの」

 

英玲奈「アイドル…?」

 

あんじゅ「あんじゅ達が?」

 

ツバサ「そう、学校のアイドル…『スクールアイドル』として」

 

あんじゅ「『スクールアイドル』…そういえば、芸能科の先生もそんな話をしていたわね?」

 

英玲奈「ああ、確か…ここの生徒数を増やそうとPRしたり将来的にプロのアイドルを育成する為のプログラムだと言っていたな」

 

ツバサ「実は…この学校に編入する手続きをした時、ここの理事長から話を聞いたの」

 

ツバサ「このUTXから『スクールアイドル』を広めていけば…いずれは野球のような全国大会も開かれるだろうって」

 

ツバサ「そうなればUTX高校もその波に乗らない訳にはいかない…ぜひ君もその『スクールアイドル』の候補の一人にならないかって」

 

英玲奈「…待て、ツバサ」

 

ツバサ「何かしら?」

 

あんじゅ「候補の一人って…どういう事なの?」

 

ツバサ「UTX高校の『スクールアイドル』は…芸能科の選ばれた数人の生徒だけで構成される」

 

ツバサ「つまり過酷なレッスンを全て優秀にこなした者だけが…UTX高校の『スクールアイドル』になれるという事よ」フフッ

 

あんじゅ「なるほどね…ツバサちゃんの言いたい事、何となく分かっちゃったわぁ」

 

英玲奈「そうだな…全く、ツバサの無茶ぶりには相変わらず苦労するな」ハァ

 

ツバサ「あら、無茶な事なんてないでしょう?」

 

ツバサ「今の私達が三人揃えば…こんな事、ちょっとの勇気と情熱くらいで軽く乗り越えられるわ」パチッ

 

(私はまた…余裕を見せながら二人にウィンクをした)

 

英玲奈「ふっ、そうだな」

 

あんじゅ「うふふっ…そうね?」

 

ツバサ「…」フフッ

 

(それから私達三人は…歌やダンスなどのあらゆるレッスンをこなし、優秀な成績を修めた)

 

(高校二年生になったある日…UTX高校のスクールアイドルとして選ばれた生徒の発表を聞いた私達は、UTXの屋上にいた)

 

ツバサ「…選ばれたのは、私達三人だけだったわね」

 

英玲奈「ああ…」

 

あんじゅ「まさか、こうなっちゃうなんてねぇ…」

 

英玲奈「む…そういえば、これからスクールアイドルを始めるならグループの名前が必要になるんじゃないのか?」

 

あんじゅ「そうね…どうするの、ツバサちゃん?」

 

ツバサ「…グループの名前ならもうとっくに決めてあるわ」

 

英玲奈「本当か?」

 

あんじゅ「どんな名前なの?」

 

ツバサ「…アレよ」

 

(私は…空へ飛び立つ三羽の白い鳥を指差して、こう言った)

 

ツバサ「『A-RISE』」

 

英玲奈「『A-RISE』…?」

 

ツバサ「そう、それが私達のグループの名前よ」

 

ツバサ「アルファベットの始まりの『A』と鳥が飛び立つ『RISE』…良いと思わない?」

 

あんじゅ「『A-RISE』ねぇ…そう聞くと、なんだか素敵な名前でワクワクしちゃうわぁ」

 

ツバサ「ふふっ…」

 

英玲奈「…じゃあ、これからは私達三人で『A-RISE』だな」

 

あんじゅ「うふふっ…頑張りましょうね?」

 

ツバサ「ええ!」

 

(この時、私は…二人にもう一つの『RISE』の意味を伝えなかった)

 

(そしてこれからも…私はあの時に見た、太陽のように眩しく笑った少女の話をする事はきっとない)

 

(私の心と人生に光をもたらしてくれたあの少女を…)

 

(『A-RISE』を結成して一年半が経ち…私達はUTX高校の生徒としてもスクールアイドルとしてもカリスマ的な存在となっていた)

 

(そして理事長の予想通り…スクールアイドルの全国大会『ラブライブ!』の第一回大会が開かれる事になった)

 

(もちろん『A-RISE』である私達も、UTX高校のスクールアイドルとして参加した)

 

(どこまでも真っ直ぐな『正義』と駆け引きをする為の『狡さ』を手にしたこの時の私達には…他の誰にも負ける気はしなかった)

 

(そして決勝で他のスクールアイドルに圧倒的な差をつけた私達は大会に優勝し…名実共に全国のスクールアイドルの頂点となった)

 

(それから数日後…私達はUTX劇場で『ラブライブ!』に優勝した記念のライブをする為に、控え室にいた)

 

ツバサ「あら、今日も矢澤さんからお花が来てるの?」

 

英玲奈「む…?ああ、そうだな」

 

ツバサ「彼女ってライブやイベントの度にいつもお花を贈ってくれるのよね…いつか、直接会う機会があったらお礼言わないと」フフッ

 

あんじゅ「はぁ~…」

 

英玲奈「どうした、あんじゅ…溜め息は良くないぞ?」

 

あんじゅ「だってぇ~…」ハァ

 

英玲奈「…」ハァ

 

あんじゅ「英玲奈ちゃんだって、溜め息出てるしぃ…」

 

ツバサ「…」

 

(『ラブライブ!』が終わって…私達はなぜか心が空っぽになったような感覚に陥っていた)

 

(大会に優勝してから…私達の心をくすぐってくれる刺激的な何かが、いまいち物足りていないような気がしていたのだ)

 

(つまり、今の私達には…お互いに切磋琢磨できるようなライバルがいなかった)

 

(他のスクールアイドルが弱いなんて言いたい訳じゃない…私達はただ、三人だけでお互いを高め合う事しか知らなかったのだ)

 

(そのうえ、小さい頃に約束した『もっと大きな事をやる』という夢も叶ってしまって…続ける意味がもう無いような気もしていた)

 

(私達はこれからメンバーを増やすか、解散してそれぞれの道を進むか…迷っていた)

 

ツバサ「…あら?」カチカチ

 

(そんな時…私は『ラブライブ!』の公式サイトで、あるスクールアイドルの動画を見た)

 

ツバサ「!!」

 

あんじゅ「ツバサちゃん…?」

 

英玲奈「どうかしたのか?」

 

ツバサ「…この子達のパフォーマンス、どう思う?」

 

英玲奈「どれどれ…『μ's』?」

 

あんじゅ「あら、この子達が着ている制服って…音ノ木坂学院の制服じゃない?」

 

英玲奈「そういえば、少し前に音ノ木坂学院にスクールアイドルがいるという話を耳にしたが…この前の大会には出ていなかったな」

 

ツバサ「!…そうなの?」

 

英玲奈「ああ…しかし、何だろう?」

 

あんじゅ「彼女達の歌とダンス…何となく惹かれちゃうわよねぇ?」

 

英玲奈「ああ、どちらも非常に優れているという訳ではないのだが…」

 

あんじゅ「すごく楽しそうに見えちゃうのよねぇ…」

 

ツバサ「…」

 

(私はセンターに立ってパフォーマンスをするサイドテールの少女の笑顔に確かな見覚えがあった)

 

(あの時に私が見た、少女の太陽のように輝く眩しい笑顔は…今でも私の胸の中に刻まれている)

 

(だから…彼女がスクールアイドルになった事を知って、私はとても嬉しかった)

 

ツバサ「面白い子達が…出てきてくれたわね」フフッ

 

(彼女のおかげで…私の中でまた一つ、夢が生まれた)

 

 

 

ツバサ「…帰ってきたわね、私達の世界」フゥ

 

(電王の世界でゼロノスの変身者に一枚のFFRカードを預けた私は…ある手段を使って、一足先にこの世界へと戻ってきていた)

 

(まさか、この世界がまだ危機的な状況に陥っているなんて…今でも私は信じられなかった)

 

(いえ、むしろ…信じたくなかった)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(オレ達が会話していると…スタジオの背景が違うものに変化した)

 

亜里沙「いよいよ…やってきたんだね」

 

雪穂「うん、やっと戻ってこれたんだ…!」

 

ツカサ「…『μ'sの世界』」

 

雪穂「でも…この背景の場所って、確かUTXじゃない?」

 

亜里沙「あっ、本当だ…なんでかな?」

 

ツカサ「不思議がる必要もないだろ…ちくわには必ず穴が空いているのと同じくらい、当然の事だ」

 

雪穂「…えっ、何それ?」

 

亜里沙「どういう意味なの?」

 

ツカサ「…外の様子を見てくる」スタスタ

 

雪穂「なんでスルーするの!?」

 

ガチャ

 

ツカサ(オレはスタジオのある部屋を出て…写真館の外へと出た)

 

ツカサ「もうこんな時間か…それにしても、鷲をこんな所で見るなんて珍しいな」

 

ツカサ(赤くなった夕焼けの空を舞う九羽の鷲をオレが見つめていると…雪穂と亜里沙が写真館から出てきた)

 

亜里沙「わぁ~…本当に戻ってきたんだね!」

 

雪穂「帰ってきたんだ…私達の世界に」

 

亜里沙「なんだか…懐かしい気がするね?」

 

雪穂「…そうだね、私もそんな気がするよ」

 

ツカサ(すると…近くを歩いていたおばあさんや子供達が雪穂と亜里沙に挨拶をしてきた)

 

おばあさん「こんにちは…」ペコリ

 

雪穂「あっ…はい、こんにちは!」ペコッ

 

子供達「こんにちは~!」

 

亜里沙「こんにちは~!」ブンブン

 

ツカサ(亜里沙は手を振りながら、子供達に負けないくらいの大きな声で元気に挨拶を返していた)

 

ツカサ「皆、何も無かったかのように歩いているな…」

 

雪穂「きっと…怪人のいない平和な世界に戻ったってことなんだろうね」

 

亜里沙「うん、絶対そうだよ!」

 

ツカサ「…良かったな」

 

亜里沙「うん!」

 

雪穂「…ツカサのおかげだよ」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「ツカサが他の世界にいるお姉ちゃん達を助けてくれたから…この世界も元に戻ったんだよ?」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「だからさ、今度は私達が…」

 

ツカサ「…お前、もしかして熱でもあるのか?」

 

雪穂「…は!?」

 

ツカサ「いや、いつもはそんな素直な事言わないだろ?」

 

雪穂「失礼しちゃうなぁ…ずっと今まで一緒に旅してきたっていうのに、私のことを何だと思ってるの!?」

 

ツカサ「じゃじゃ馬」

 

雪穂「なっ…!」

 

亜里沙「ちょっとツカサ、言い過ぎだよ…」

 

ツカサ「そうか?…別にそんな事ないだろ」

 

雪穂「あのねぇ…!」プルプル

 

亜里沙「雪穂、どうどう…」

 

雪穂「だから馬じゃないってば!」

 

ツカサ「とにかく…早くここを出て、自分達の家に帰ってくれ」

 

亜里沙「へっ?」

 

ツカサ「この世界も平和になったんだ…お前達がこの写真館に居続ける理由ももう無いだろう?」

 

亜里沙「でも私たち、まだ…」

 

ツカサ「やっとお前達がここから出て行くんだ…清々する」

 

雪穂「!!」

 

亜里沙「そんな…せっかく今まで一緒に旅してきたのに」シュン

 

雪穂「…そう、私も清々するよ」

 

亜里沙「え…雪穂?」

 

雪穂「結局、ツカサは…私達のことなんてその程度にしか思ってくれてなかったんだね?」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「そんな…どうして雪穂までそんなこと言うの?」

 

雪穂「それは…っ!」

 

ツカサ(雪穂はオレを見て何かを言いかけようとした)

 

ツカサ(そんな彼女の瞳は…オレには少し潤んでいたように見えた)

 

雪穂「…早く帰ろう、お姉ちゃん達も心配してるだろうし」ガチャ

 

亜里沙「あっ…待ってよ、雪穂ー!」ダッ

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(その時のオレ達はまだ…気付いていなかった)

 

ツカサ(この世界に、とてつもなく大きな異変が起こっている事を…)

 

 

 

ツバサ「…あら?」

 

ツバサ(とある公園の中に入って歩いていた私は…掲示板に張られていたポスターを見つけた)

 

ツバサ「『WANTED』…ね」

 

ツバサ(そのポスターには…私を含めた三人の人物が顔写真付きで指名手配されていた)

 

ツバサ「それにしても、懐かしいわね…この場所も」

 

ツバサ(私は…ある出来事を思い出していた)

 

 

 

ツバサ(当時、小学校低学年だった私は…同じクラスだった英玲奈とあんじゅにある事を相談しようと公園で待ち合わせていた)

 

あんじゅ『くしゅん!うぅ…またバケツでおみずかけられちゃったわ』

 

ツバサ(あんじゅは…可愛くておっとりした性格で男子から人気があった為、妬んだ女子達からよくイジメられていた)

 

英玲奈『ひどくやられたな…これ、タオルだ』スッ

 

あんじゅ『ありがとう…えれなちゃんはさっきとられたすいとう、かえしてもらえたぁ?』フキフキ

 

英玲奈『いや、おまえはロボットなんだからあぶらでものんでいろといわれて…かえしてもらえなかった』

 

ツバサ(英玲奈は…整った顔立ちと真面目で優し過ぎる性格だった為に、気に入らなかった男子達からよくイジメられていた)

 

あんじゅ『そっか…じゃあ、あんじゅのすいとうでよかったらのんで?』サッ

 

英玲奈『ありがとう、あんじゅ…』ゴクゴク

 

ツバサ『えれな、あんじゅ…またせちゃってごめん』

 

あんじゅ『あっ、ツバサちゃん…!?』

 

英玲奈『ツバサ、そのおでこのらくがき…どうしたんだ?』

 

ツバサ『さっき、クラスのみんなにかかれちゃって…みんながわらってるからわたしもわらうしかなかったんだけどね』エヘヘ

 

英玲奈『…チビってかかれているぞ』

 

ツバサ『そっか…なんてかかれたのかおしえてもらえなかったけど、やっぱりそんなふうにかかれちゃってたのね』

 

ツバサ(そして、私は…皆と比べて身長が低かった事やおでこが広い事を周りからよくバカにされていた)

 

あんじゅ『ヒドい…これ、えれなちゃんのタオルだけどよかったらふいて?』スッ

 

英玲奈『わたしからも…つかってくれ、ツバサ』

 

ツバサ『…うん、ありがとう』ゴシゴシ

 

ツバサ(いつからこうなってしまったのかは覚えていなかったけど…私達はこの毎日を過ごす事に慣れてしまっていた)

 

ツバサ(私達はそういう運命のもとに生まれてきたのだと…どこかで諦めていた部分もあったのだと思う)

 

ツバサ(だから…特に辛いとは思わなかった)

 

英玲奈『そういえばツバサ…わたしたちにだいじなはなしがあるんじゃなかったのか?』

 

ツバサ『うん…じつはわたし、ふたりとやってみたいことがあるの』ガサゴソ

 

ツバサ(私はランドセルから一枚のチラシを出した)

 

『オトノキちびっ子ダンス大会 開催!』

 

あんじゅ『ダンスたいかい…?』

 

ツバサ『じつはわたし…ダンス、はじめてみたいなっておもったの』

 

あんじゅ『ってことは…ツバサちゃんがそのたいかいにでるってことぉ?』

 

ツバサ『そう…いっしょうけんめいおどって、みんなからほめてもらうの!』

 

英玲奈『しかし、ダンスをやったこともないのに…ほんとうにだいじょうぶなのか?』

 

ツバサ『そ、それは…』

 

あんじゅ『そうよねぇ…もしツバサちゃんひとりだけでやるんだったら、あんじゅもたいへんだとおもうわ』

 

ツバサ『…そう、だよね』シュン

 

ツバサ(英玲奈とあんじゅにそう言われて…私は落ち込みかけていた)

 

ツバサ『じゃあ、やっぱりやめたほうがいいのかな…!』

 

ツバサ(その時、ふと私は…自分と同じくらいの身長の女の子が公園にある大きな水溜まりに向かって走っている姿を見かけた)

 

?『はっはっ…』ダダッ

 

ツバサ『…』

 

英玲奈『?…どうしたんだ、ツバサ』

 

あんじゅ『あのこがどうかしたのぉ?』

 

ツバサ『…』

 

ツバサ(不思議と私は…真っ直ぐに走っていく女の子に見惚れていた)

 

少女1『ほのかちゃん!』

 

少女2『…!』

 

ツバサ(『ほのか』と呼ばれる女の子は同い年くらいの二人の友達に見守られながら…水溜まりを飛び越えようとジャンプする)

 

ほのか『たぁーっ!』

 

少女1『あっ!』

 

少女2『うわっ…』

 

ほのか『ああっ!?』バッシャーン!

 

ツバサ(女の子は…そのまま水溜まりの中へと浸かってしまった)

 

ほのか『つめたーい!』

 

少女1『ほのかちゃーん!』

 

ほのか『んー、なんで…なんでなんでなんでぇ~!』

 

少女1『やっぱりムリだよ…かえろう?』

 

ほのか『だいじょうぶ、つぎこそできる!』

 

ツバサ(女の子は立ち上がると…さっきと同じ位置からもう一度、水溜まりを飛び越える為に挑戦しようとする)

 

ほのか『…いくよ!』ダッ

 

ツバサ(すると、再び走り出した女の子がジャンプする直前…私の耳にあるメロディが聴こえてきた)

 

ララランラン、ララランラン、ラーラーラランランランララン…♪

 

ツバサ『このメロディ、なに…?』

 

あんじゅ『えっ、ツバサちゃんにもきこえるの?』

 

ツバサ『!…あんじゅも?』

 

英玲奈『わたしにも、はっきりきこえる…』

 

ツバサ『えれなも?…!』

 

スタッ

 

ツバサ(私達が次に見た時には…女の子は既に水溜まりを飛び越えていた)

 

ほのか『…』ニコッ

 

ツバサ(女の子は二人の友達に向かってピースサインをしながら、笑っていた)

 

少女1『スゴい…スゴいよほのかちゃーん!』

 

少女2『わぁ…!』パチパチパチ

 

ツバサ『!…わかった』フフッ

 

英玲奈『ツバサ…?』

 

あんじゅ『なにがわかったのぉ?』

 

ツバサ(私はあの『ほのか』と呼ばれている女の子のおかげで…ようやく気付いた)

 

ツバサ(私は今まで辛いと感じなかったのではなく…辛いという気持ちそのものを我慢していた事に)

 

ツバサ(そして、それはきっと私だけでなく…英玲奈やあんじゅも同じなのだと)

 

ツバサ(私は女の子の諦めずに立ち向かう勇気と太陽のような眩しい笑顔を見て…初めて今のこの状況から抜け出したいと思った)

 

ツバサ『ねぇ、だったら…さんにんでいっしょにやってみない?』

 

あんじゅ『えっ…あんじゅたちも?』

 

ツバサ『そう、わたしたちはすごいんだってことを…みんなにしょうめいするの!』

 

英玲奈『ほんきでいっているのか?できるかどうかわからないのに…』

 

ツバサ『できるかどうかじゃなくて…やってみたいかどうかよ』フフッ

 

英玲奈『!』

 

あんじゅ『!』

 

ツバサ『…どう?』

 

あんじゅ『あんじゅは…やってみたい』

 

英玲奈『…じつをいうと、わたしもだ』

 

ツバサ『だったら…やってみましょう!』

 

ツバサ『だって、わたしたち…いままでずっといじめられてもがまんしてきたんだもの!』

 

ツバサ『だから、きっとやりたいとおもえば…どんなこともできる』

 

ツバサ『どんなゆめだって…かなえられるはずよ!』

 

英玲奈『ツバサ…そうだな』フフッ

 

あんじゅ『わたしたちさんにんで…がんばりましょうねぇ?』フフッ

 

ツバサ『ええ!』

 

ツバサ(それから大会に参加して優勝した私達は…学校でイジメられる事も無くなり、楽しい毎日を過ごすようになった)

 

ツバサ(やがて次の学年に進級を控えた春休みに入った時、私は海外の有名なダンススクールの講師をしていた大会の審査員からスカウトされた)

 

ツバサ(『ぜひウチのダンススクールに来てほしい』と言われ、悩んでいた私は…すぐに英玲奈とあんじゅの二人にこの事を相談した)

 

あんじゅ『…そう、それでどうしようかかんがえていたのねぇ?』

 

ツバサ『ええ…リーダーをやってきたきみならもっといろんなことができるはずだって』

 

英玲奈『…いってみればいいんじゃないか?』

 

ツバサ『え…?』

 

あんじゅ『そうね…そのほうがいいのかもしれないわねぇ?』

 

ツバサ『えれな、あんじゅ…どうして?』

 

英玲奈『わたしもあんじゅも…ツバサがさそってくれたおかげで、うたっておどることのたのしさをしったんだ』

 

あんじゅ『ツバサちゃんもきっと…おんなじきもちのはずよ』

 

ツバサ『!…ふたりとも』

 

英玲奈『あんじゅもてんこうすることだし…な?』

 

ツバサ『えっ…そうだったの?』

 

あんじゅ『うん、じつはわたしにも…べつのしんさいんさんからウチにこないかっておはなしがきてたの』

 

ツバサ『じゃあ、えれなも…?』

 

英玲奈『ああ、わたしも…べつのしんさいんのせんせいがいるゆうめいなダンススクールにスカウトされていたんだ』

 

ツバサ『…じゃあ、おたがいはなればなれになるのね』ハァ

 

あんじゅ『そうよ…いまだけは、ねっ?』

 

ツバサ『へっ…?』

 

英玲奈『わからないのか?いつかまた、さんにんであつまって…もっとすごいことをしてやるんだ』

 

あんじゅ『あのたいかいのときよりも…みんながビックリするようなことをね!』

 

ツバサ『…!』

 

英玲奈『だから…やくそくだ、ツバサ』

 

あんじゅ『いつか、また…さんにんであいましょう!』

 

ツバサ『えれな、あんじゅ…ええ!』

 

ツバサ『ぜったいに、わたしたちさんにんで…また』フフッ

 

 

 

ツバサ「…」フフッ

 

ガサガサッ

 

ツバサ「!」

 

ツバサ(近くの茂みから物音が聞こえた私はすぐに…敵が私を狙って隠れていると判断した)

 

ツバサ(敵の数は…おそらく、十人くらい)

 

ツバサ「はぁ…あなた達、見て分からなかったかしら?」クルッ

 

ツバサ(私がそう言って振り返ると…『戦斗員』と呼ばれるガスマスクを着けた屈強な男達が物陰から次々と出てきた)

 

ツバサ「せっかく思い出に浸っているひとときを過ごしていたというのに…邪魔をしないでくれる?」

 

戦斗員「…」

 

ツバサ「…悪いけど今、私は機嫌が悪いの」

 

ツバサ(私は腹部からベルトを出現させ…風力エネルギーをベルトの中にある二つの風車へと吸収させた)

 

ツバサ「相手になるからには…それなりに楽しませてくれるのよね?」

 

 

 

ツカサ(帰る支度を整えた亜里沙は…中学の制服に着替え、スタジオのある部屋にやってきた)

 

亜里沙「ツカサ…」

 

ツカサ「!…雪穂は?」

 

亜里沙「先に出て、私を待ってくれてるよ…『ツカサとはもう顔も合わせたくない』って言ってた」

 

ツカサ「…そうか」

 

亜里沙「良いの…?」

 

ツカサ「あいつが決めた事だからな…もしかしたらオレも近々、別の世界に旅立つかもしれないしな」

 

亜里沙「…ねぇ、ツカサ?」

 

ツカサ「ん?」

 

亜里沙「私たちと最初に会った時…私が写真館でツカサに言ったこと、覚えてる?」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙『あなたと私たちの目的は『μ's』や私たちの世界を助けるために、九つの世界を救うこと…』

 

亜里沙『そして、あなたの記憶が戻るようにお手伝いすること!』

 

亜里沙「私ね…世界が平和になった今でも、ツカサの記憶が戻るように何かできることはないかなって思ってるんだ」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「さっきはあんなこと言っちゃってたけど…きっと、雪穂も同じことを思ってる」

 

ツカサ「…だから?」

 

亜里沙「えっ?」

 

ツカサ「結局、何が言いたいんだ…?」

 

亜里沙「…私たちは、まだツカサと一緒にいたい」

 

ツカサ「!」

 

亜里沙「だって…ツカサは私たちの世界を救ってくれたのに、私たちはツカサに何もしてあげられてないんだよ!?」

 

亜里沙「なのに、もうこれでお別れだなんて…さみしいよ!」

 

亜里沙「今まで一緒に旅をしてきた仲間なのに、どうしてツカサは私たちを…」

 

ツカサ「…言いたい事はそれだけか?」

 

亜里沙「えっ…?」

 

ツカサ「お前達が勝手にしてきた約束なんて…オレにとっては、別にどうだっていい」

 

亜里沙「ツカサ…でも!」

 

ツカサ「いいから早く自分の家に帰れ!」

 

亜里沙「!」ビクッ

 

ツカサ「オレの事はもう…放っておいてくれ」

 

亜里沙「…っ!」ダッ

 

ガチャ…バタン!

 

ツカサ(亜里沙は瞳に涙を浮かべながら…スタジオのある部屋から出て行った)

 

ツカサ「…」ハァ

 

ツカサ(おそらくオレはこれから…また違う、別の世界を旅する事になるだろう)

 

ツカサ(もし、そうなれば…平和になった『μ'sの世界』にまた訪れる可能性は限りなく低い)

 

ツカサ(だからこそ…オレはあえて、二人を突き放した)

 

ツカサ(そうまでしなければ彼女達はきっと…オレとの約束を果たそうと、この写真館に残るかどうか考えていただろう)

 

ツカサ(オレは…これ以上、彼女達を巻き込みたくなかった)

 

ツカサ(支えてくれる彼女達の存在があったからこそ…オレは今まで、世界を救う為に戦えた)

 

ツカサ(だが、彼女達には…『μ'sを超えるスクールアイドルになる』という夢がある)

 

ツカサ(オレはその夢の邪魔を…絶対にしたくないと思った)

 

ツカサ「…部屋の掃除でもするか」ハァ

 

 

 

ツバサ「期待外れもいいとこね…」フゥ

 

ツバサ(全ての戦斗員を倒した私は…既に変身を解除していた)

 

ツバサ(戦斗員達の身体は、白い泡状になるまで溶けていき…やがて跡形もなく消滅した)

 

ツバサ「一刻も早く…二人と合流しないといけないわね」

 

?「ツバサ~!」バサバサ

 

ツバサ(私のもとに飛んできたのは…見覚えのある白い小さな蝙蝠だった)

 

ツバサ「あら…キバーラじゃない」

 

キバーラ「もぉ~!探したわよぉ?」プンプン

 

ツバサ「ふふっ、心配させてごめんなさい…もう大丈夫よ」

 

キバーラ「…ホントに?」

 

ツバサ「ええ、問題ないわ」

 

キバーラ「そう…良かったわぁ~」ホッ

 

ツバサ「キバーラがここにいるって事は…もしかして、あの子達ももうこの世界に来ているの?」

 

キバーラ「…ええ」

 

ツバサ「そう…という事は『彼』も今はこの世界にいるって訳ね」

 

キバーラ「…その通りよ」

 

ツバサ「それなら、そろそろ決着をつけないといけないわね」

 

キバーラ「!…本気なの、ツバサ?」

 

ツバサ「もちろん本気よ…当然、あの二人もね」

 

ツバサ「この世界の問題は…私達自身の手で、終わらせたいの」

 

ツバサ「例え…それと同時に、この命が尽きてしまったとしても」

 

キバーラ「!」

 

ツバサ「…なんてね、冗談よ」フフッ

 

キバーラ「ツバサ…」

 

ツバサ「さて、今までずっと私のワガママを聞いてくれたキバーラだけど…またお願いしたい事があるの」

 

キバーラ「…分かったわ、いくらでも聞いてあげる」

 

ツバサ「けっこう大変な仕事になるわよ?」

 

キバーラ「ウフフッ…任せなさい!」

 

ツバサ「本当に良いの?」

 

キバーラ「あなたとアタシの仲じゃない…気にする事はないわ」

 

ツバサ「…そうね、ありがとう」スッ

 

ツバサ(私はある人に宛てた一通の手紙を…キバーラに託した)

 

キバーラ「!…この宛名って」

 

ツバサ「お願いね?」

 

キバーラ「…ええ!」バサバサ

 

ツバサ(キバーラが飛び去ったのを確認した私は…公園を後にした)

 

ツバサ「…」スタスタ

 

 

 

雪穂(写真館を出た私と亜里沙は…それぞれの家に帰ろうと、ゆっくり歩いていた)

 

雪穂「…」

 

亜里沙「…」

 

雪穂「はぁ…ツカサってば、本当に素直じゃないよね!」

 

亜里沙「…えっ?」

 

雪穂「私達のことを心配するなら、もっと他に言い方があるはずなのに…もう!」プンプン

 

亜里沙「ふふっ…やっぱり、雪穂もそう感じてたんだね?」

 

雪穂「そりゃそうだよ…今まで、ずっと一緒に色んな世界を旅をしてきたんだよ?」

 

雪穂「そんなの…イヤでも分かるに決まってるじゃん」

 

亜里沙「…雪穂」

 

雪穂「でも、もし仮にツカサの旅に着いて行ったら…私達はこの世界に帰れなくなるかもしれない」

 

雪穂「だからツカサは…あえて私達を、冷たく突き放したんだと思う」

 

亜里沙「…うん、それは私も分かってる」

 

亜里沙「でもね…私、ツカサとした約束をどうしても破りたくない」

 

亜里沙「だって、ツカサは…私たちの仲間だから」

 

雪穂「それは私もそうだけど…あっ!?」ピタッ

 

亜里沙「どうしたの?」

 

雪穂「これ…一緒に持ってきちゃった」

 

雪穂(私は亜里沙に青いカバンを見せた)

 

亜里沙「そのカバンって…ツバサさんの?」

 

雪穂「うん、どうしようか?」

 

亜里沙「そのカバンの中って…『ディエンドガン』が入ってるんだったよね?」

 

雪穂「いや、そんな名前じゃなくて…『ディエンドライバー』って名前だったと思う」

 

亜里沙「そっか…ツバサさんに会ったら、早く返さないといけないね」

 

雪穂「そうだね…帰る前に一度、UTX高校に寄ってみた方が良いかな?」

 

亜里沙「う~ん…」

 

ユキホー!

 

雪穂(すると…誰かが遠くから大きな声で私達の名前を呼びながら、こちらに向かって走ってきた)

 

雪穂「お…お姉ちゃん!?」

 

穂乃果「ハァハァ…えいっ!」ガシッ

 

雪穂(走るお姉ちゃんはそのまま勢いよく、私に抱きついてきたが…お姉ちゃんの力はあまりにも強過ぎた)

 

雪穂「ちょっ…だから痛いって!」

 

穂乃果「あっ…ごめん、つい嬉しくて!」エヘヘ

 

雪穂「もう…」ハァ

 

亜里沙「穂乃果さん、お久しぶりです!」

 

穂乃果「へっ…えっと、亜里沙ちゃんだっけ?」

 

亜里沙「?…はい!」

 

穂乃果「久しぶりだね~…最後に会ったのっていつだったっけ?」

 

亜里沙「えっ…?」

 

雪穂「…は?」

 

穂乃果「ごめんね~…最近、何だか忘れっぽくって!」アハハ

 

亜里沙「でも、この前…穂乃果さんたちが私たちを怪人から助けて」

 

穂乃果「怪人…何のこと?」

 

雪穂「!」

 

亜里沙「…覚えて、ないの?」

 

穂乃果「覚えてないも何も…私、そんなの知らないよ?」

 

亜里沙「でも、穂乃果さんは『仮面ライダー』に…」

 

雪穂「待って、亜里沙!」

 

亜里沙「…雪穂?」

 

穂乃果「『仮面ライダー』って…何?」

 

雪穂「う…ううん、何でもないから!」

 

雪穂「きっと…寝てる時に見た夢と混ざっちゃったんだよ!」

 

穂乃果「ゆ、夢…?」

 

雪穂「そう、夢!」

 

雪穂「だから…この話は忘れて!」

 

穂乃果「そっか~…夢の話だったんだね!」

 

亜里沙「ゆ、雪穂…?」

 

雪穂(私はお姉ちゃんに聞こえないよう…亜里沙にこう説明した)

 

雪穂「たぶん…この世界が平和になったから、お姉ちゃんが仮面ライダーになった記憶がないんだと思う」ボソッ

 

亜里沙「!…そうなの?」

 

雪穂「怪人が出たことすらも覚えてないみたいだし…きっと絵里さん達もお姉ちゃんと同じだと思う」

 

亜里沙「そっか…」

 

穂乃果「…ねぇ、私にナイショで何の話してるの?」

 

雪穂「い…いや、別に!」

 

亜里沙「何でもないですよ!」

 

穂乃果「ふ~ん…ところで雪穂、その手に持ってる青いカバンは何?」

 

雪穂「えっ、これのこと…?」

 

穂乃果「そうそう…そのカバンって新しく買ったの?」

 

雪穂(私は色々聞かれると面倒なことになると思い…ツバサさんのカバンだとは答えなかった)

 

雪穂「まあ…そう、かな」

 

穂乃果「良いなぁ~…それ、私がこの前買ったカバンと交換してくれる?」

 

雪穂「はぁ…?ダメに決まってるじゃん」

 

穂乃果「えぇっ!なんでなんで~!?」

 

雪穂「なんでも」

 

穂乃果「うぅ~…ケチ!」ベー

 

アリサー!

 

亜里沙「あっ、お姉ちゃんだ!」

 

雪穂(私がお姉ちゃんと話していると…絵里さんが私達のもとにやってきた)

 

絵里「あら、穂乃果…あなたもまだ帰ってなかったの?」

 

穂乃果「うん、雪穂と一緒に帰ろうかなと思って!」

 

絵里「そう…実は私も今日は亜里沙と一緒に帰ろうと思っていたの」

 

亜里沙「お姉ちゃん…会いたかった!」ギュッ

 

絵里「あらあら…亜里沙ったら」フフッ

 

雪穂(久々に絵里さんに会って喜ぶ亜里沙は…絵里さんに抱きついた)

 

亜里沙「あれ…?」

 

絵里「…どうかしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「えっ?あっ…ううん、何でもないよ!」

 

雪穂「…?」

 

絵里「ふふっ、じゃあ…帰りましょうか?」

 

亜里沙「うん!」

 

穂乃果「絵里ちゃん、亜里沙ちゃん…じゃあね!」

 

絵里「ええ…また明日ね」

 

亜里沙「さようなら!」

 

雪穂「…じゃあ、また」

 

亜里沙「うん、またね!」

 

雪穂(亜里沙と絵里さんは…お互いの手を繋いで、私達と別れた)

 

雪穂「…」

 

穂乃果「じゃあ、私達も…手を繋いで帰ろっか!」

 

雪穂「あっ…えっ、は!?」

 

穂乃果「まあまあ…そんな遠慮しないで!」ガシッ

 

雪穂(お姉ちゃんは無理やり私の手を引っ張って、家に帰ろうとする)

 

雪穂「いや、恥ずかしいからやめてよ!?」

 

穂乃果「いいからいいから~♪」

 

雪穂「よくないよ!?」

 

穂乃果「よーし…家まで飛ばすよ~!」ダダッ

 

雪穂「わわっ…だから、そんなに勢い良く走ったら転んじゃうってば!」

 

雪穂(そういえば亜里沙…絵里さんに抱きついた時、何か変わった所でもあったのかな?)

 

雪穂(私の気のせいだと、良いんだけど…)

 

 

 

ツカサ(他の場所を掃除し終わったオレは…最後に自分の寝室を掃除していた)

 

ツカサ「よし、これで一通り終わったな…ん?」

 

ツカサ(オレはベッドの枕の横に…『ツカサへ』と書かれた置き手紙とピンク色の大きな冊子があるのを見つけた)

 

ツカサ「いつもオレの部屋には入るなと言っているはずなんだが…こんな事をするのは亜里沙か?」ハァ

 

ツカサ「全く、仕方ないな…とりあえず手紙を読んでみるか」パサッ

 

ツカサ(手紙を読んでみると…そこにはたった一文しか書かれていなかった)

 

『せっかく写真撮ってるんだから、このアルバムに撮った写真をちゃんと入れておいてください』

 

ツカサ「この字は雪穂か…あいつ、手紙でもいちいちうるさいな」

 

ツカサ(手紙を読んだオレは一緒に置かれていた冊子を手に取ると…表紙にはある題名がつけられていた)

 

ツカサ「…!」

 

『旅のアルバム』

 

ツカサ「こっちは亜里沙の字か…なるほど、だいたいわかった」

 

ツカサ(きっと二人は…オレがこれまで色んな世界で撮影した写真を残せるようにと考え、どこかで買ってきてくれたのだろう)

 

ツカサ「確か、今までの写真はここに…あった」

 

ツカサ(オレはベッドの横にある小さい棚の引き出しから、これまで撮影した十枚の写真を取り出した)

 

ツカサ「…これで全部だな」

 

ツカサ(オレは早速、アルバムを開いて…まず一枚の写真をアルバムのポケットの中に入れた)

 

ツカサ「思えば…これが一番最初に撮った写真だったな」

 

ツカサ(その写真は…オレが雪穂や亜里沙に初めて会った時に撮影した写真だった)

 

ツカサ「…他の写真も入れてみるか」

 

ツカサ(残りの九枚の写真もアルバムのポケットの中に入れたオレは…ゆっくりとアルバムを閉じた)

 

ツカサ「よし、これで良いな…」パタン

 

ツカサ「ひとまず今日は早く晩飯や風呂を済ませて寝るか…でも一人だからな、これからは節約してシャワーで済ますか」

 

ツカサ「晩飯は食べさせる同居人がいないからな…どうしたもんか」スタスタ

 

ツカサ(オレは掃除機を持って、自分の部屋を出た)

 

 

 

穂乃果「いっただきまぁ~す!」

 

雪穂「い…いただきます」

 

雪穂(家に帰った私達は…お姉ちゃんが作った晩ご飯を食べようとしていた)

 

穂乃果「うん…今回の肉じゃがは前のより美味しくできた気がするかなぁ~?」モグモグ

 

雪穂「…」

 

穂乃果「あれ…雪穂、食べないの?」

 

雪穂「えっ?」

 

穂乃果「もしかして…どこか具合でも悪いの?」

 

雪穂「あっ、いや…そんなことないよ?」

 

穂乃果「じゃあ…私の作った肉じゃが、食べたくないとか?」

 

雪穂「食べたくないってわけじゃないけど…何か変だなぁと思って」

 

穂乃果「…変?」

 

雪穂「そりゃ変でしょ…いつもはぐうたらしてばかりのお姉ちゃんが、珍しく晩ご飯作ってるんだから」

 

穂乃果「えぇっ!?ひどいよぉ~!」

 

雪穂「それに、お父さんやお母さんも家にいないし…」

 

穂乃果「あっ…二人なら、旅行に行ってくるって言って出かけたよ?」

 

雪穂「旅行!?」

 

穂乃果「うん」

 

雪穂「急だなぁ…私、全然知らなかったんだけど?」

 

穂乃果「そうだったっけ?前にお母さんが言ってたと思うんだけど…」

 

雪穂「いや…そんなの聞いた覚えないよ?」

 

穂乃果「じゃあ、ちゃんと聞いてないとか…」

 

雪穂「そんなのありえないでしょ…お姉ちゃんじゃないんだし」

 

穂乃果「うっ、当たってるだけに言い返せない…」

 

雪穂「…で、そのケガは何?」

 

雪穂(私はお姉ちゃんの右手の人差し指にばんそうこうが貼られていたことを指摘した)

 

穂乃果「これ?実は…じゃがいも切る時に一緒に切っちゃって」エヘヘ

 

雪穂「そんなことだろうと思った…本当、お姉ちゃんったらそそっかしいよね?」

 

穂乃果「アハハ…気をつけます」

 

雪穂(私はお姉ちゃんが作った肉じゃがを食べ始めた)

 

雪穂「…」モグモグ

 

穂乃果「…どう?」

 

雪穂「いまいち…かな」

 

穂乃果「そっかぁ~…厳しいなぁ」ハァ

 

雪穂「そうかな…もとからこんな感じだよ?」

 

穂乃果「う~ん、今回は自信あったんだけどなぁ…」

 

雪穂「…前にツカサが作ってくれた肉じゃがが美味しかったせいかな?」ボソッ

 

穂乃果「えっ、何か言った…?」

 

雪穂「あっ…ううん、何でもない!」

 

雪穂(私はこれ以上、お姉ちゃんに何かを聞かれないように…急いで晩ご飯を食べた)

 

穂乃果「…」

 

 

 

雪穂「うぐぐっ、入らない…!」グギギ…

 

雪穂(晩ご飯を食べて、お風呂を済ませた私は…部屋にあったズボンを履こうとしていた)

 

雪穂「あと、もう少し…っ!」グギギ…

 

雪穂(でも…お腹の周りがどうしてもキツくて、私は履こうとするのを止めた)

 

雪穂「だ、ダメだ…やっぱり無理!」ハァハァ

 

雪穂「それにしても、おかしいなぁ…このサイズなら前まではすんなり入ってたはずなんだけど」

 

雪穂「何で入らなくなったんだろう…!」ハッ

 

雪穂(私は…旅をしていた間、ずっとツカサが作る美味しい料理を毎日よく食べていたことを思い出していた)

 

雪穂「もしかして私…また、体重増えた!?」

 

雪穂(そういえば…龍騎の世界でご飯を食べていた時に、ツバサさんにこんなことを言われたような気がする)

 

ツバサ『食べ過ぎには気をつけてね』

 

雪穂「まさか、あの言葉って…そういう意味だったの?」

 

雪穂(そういえば、旅をしていた間の私は…ちゃんとした運動をあまりしていなかったような気がする)

 

雪穂(たまに走ることはあったけど、怪人から逃げ回ったりとか誰かを追いかけたりとか…それぐらいしかしていなかったと思う)

 

雪穂「ヘコむなぁ…またダイエットしなきゃ」ハァ

 

~♪

 

雪穂(ショックを受けて落ち込んでいると…私の携帯に着信音が鳴った)

 

雪穂「あれ…亜里沙から?」

 

雪穂(私は亜里沙からの電話に出た)

 

雪穂「…もしもし、亜里沙?」

 

亜里沙『あっ…雪穂?』

 

雪穂「こうやって電話するのも久しぶりだね…それで、何かあったの?」

 

亜里沙『う、うん…実はね?』

 

亜里沙『お姉ちゃんの様子が…いつもと違う気がするの』

 

雪穂「…絵里さんが?」

 

亜里沙『うん…』

 

雪穂「私からは、特に何も変わってないように見えたけど…」

 

亜里沙『私も最初はそう思ってたんだけど…さっき、お姉ちゃんに抱きついた時に変だなって感じたの』

 

雪穂「抱きついた時って…何が変だったの?」

 

亜里沙『…お姉ちゃんのニオイがいつもと違うの』

 

雪穂「えっ…ニオイ?」

 

亜里沙『うん、いつもお姉ちゃんは優しくて良いニオイがするはずなんだけど…今日は違ったの』

 

雪穂「ニオイがいつもと違うって…シャンプーや石けん変えたとか、コロンつけたとかじゃないの?」

 

亜里沙『ううん、全然そういうのじゃなくて…』

 

雪穂「そういうのじゃないって…じゃあ、何のニオイがしたの?」

 

亜里沙『それが…何のニオイもしなかったの』

 

雪穂「…えっ?」

 

?「…」ポンッ

 

雪穂(その時…後ろから誰かが私の肩を叩いた)

 

雪穂「!?」クルッ

 

穂乃果「雪穂ぉ~…はい、お茶!」コトッ

 

雪穂(私に声をかけたのは…お風呂からあがったばかりのお姉ちゃんだった)

 

雪穂「ビックリしたぁ…ノックもしないで入ってこないでよ、もう!」

 

穂乃果「ア、アハハ…ごめんごめん」

 

雪穂「しかも人が電話してる時に話しかけてきて…本当、お姉ちゃんってデリカシーないよね!?」

 

穂乃果「エヘヘ…」ポリポリ

 

亜里沙『雪穂…雪穂!どうしたの!?』

 

雪穂「あっ…ごめん、勝手にお姉ちゃんが私の部屋に入ってきちゃって」

 

亜里沙『そうだったんだ…良かったぁ』ホッ

 

穂乃果「…あっ、そうだ!」

 

雪穂「何…まだ何かあるの?」

 

穂乃果「実は明日…UTXの屋上でライブの練習をすることになったの!」

 

雪穂「UTXで?どうしてまた…」

 

穂乃果「UTXのエラい人がね…『ぜひライブの練習場所として使ってほしい』って言ってくれたんだ!」

 

雪穂「UTXの偉い人…?」

 

穂乃果「うん…その人、雪穂や亜里沙ちゃんにも会いたいって言ってたよ!」

 

雪穂「えっ…私と亜里沙に?」

 

穂乃果「うん!」

 

雪穂「私達、まだスクールアイドルじゃないんだけど…?」

 

穂乃果「実は…私がその人に二人のことを話したら、ぜひ会ってみたいって!」

 

雪穂「えぇ…?」

 

穂乃果「お願いお願いお願~い!この通りだからぁ~!!」ジタバタ

 

雪穂(お姉ちゃんは突然、私の部屋の床に寝転がり始め…駄々をこねた)

 

雪穂「うるさいなぁ…もう分かった、分かったから子どもみたいなことしないでよ!」

 

穂乃果「えっ…本当に!?」ガバッ

 

雪穂「…亜里沙、今のお姉ちゃんの話なんだけど聞こえてた?」

 

亜里沙『うん、私は大丈夫だよ!』

 

亜里沙『もしかしたら…ツバサさんに会えるかもしれないし!』

 

雪穂「あっ、そっか…」

 

穂乃果「決まりだねっ!」

 

穂乃果「じゃあ…今日はもう早く寝よう!」

 

雪穂「もう寝るって…まだ夜九時になったばっかりだよ?」

 

穂乃果「でも明日も早いからねぇ~…亜里沙ちゃんも早く寝て、絵里ちゃんと一緒に来てね!」

 

亜里沙『あっ…はい!』

 

穂乃果「それじゃ、おやすみ!」

 

亜里沙『お、おやすみなさい!』

 

雪穂「いや…まだ私達、話してる途中なんですけd」

 

穂乃果「ほいっ」サッ…ピッ

 

雪穂(お姉ちゃんは私の携帯電話を取り上げると…勝手に亜里沙との電話を切ってしまった)

 

雪穂「…って、ああっ!?」

 

穂乃果「雪穂も早く寝ないとね~…はい!」スッ

 

雪穂「ありえない…!何で勝手に人の電話切っちゃうの!?」

 

穂乃果「気にしない気にしない…」

 

雪穂「気にするよ!!」

 

雪穂「ったく、もう…あれ?」

 

雪穂(お姉ちゃんから携帯を取り返した私は、また亜里沙に電話しようとしたけど…)

 

雪穂「ウソ…?圏外になってる!?」

 

穂乃果「変だねぇ…電波障害でもあったのかな?」

 

雪穂「どうしてこんな時に…もう、こうなったのもお姉ちゃんのせいだからね!?」

 

穂乃果「まぁまぁ…どっちにしても亜里沙ちゃんとはまた明日会えるんだから、その時に話したら良いんじゃない?」

 

雪穂「それは、そうかもしれないけど…」

 

穂乃果「だよねっ!じゃ、おやすみ~…」フワァ

 

雪穂「待ってよ!?まだ話は…」

 

バタン

 

雪穂(お姉ちゃんはそのまま…自分の部屋に戻っていった)

 

雪穂「ちょっと!?いつも自分勝手なんだから…ん?」

 

雪穂(私がふと部屋の床を見ると…ばんそうこうが落ちていた)

 

雪穂「このばんそうこうって…お姉ちゃんの?」ヒョイ

 

雪穂(そうだとしたら…もしかしてばんそうこうを貼っていたままお風呂に入ったせいで、はがれちゃったのかな?)

 

雪穂「そそっかしいなぁ…ん?」

 

雪穂(ばんそうこうをごみ箱に捨てようとした私がふと、ばんそうこうの内側を見ると…)

 

雪穂「…何、これ?」

 

雪穂(そこには…緑色の液体がにじんでいる跡があった)

 

雪穂「お姉ちゃんのばんそうこうじゃなかったのかな…?」ウーン

 

雪穂(私はしばらく考えていたけど…答えは出てこなかった)

 

雪穂「…まあ、いっか」ポイッ

 

雪穂(考えるのをやめた私は…ばんそうこうをごみ箱に捨てた)

 

雪穂(とにかく…明日、亜里沙に会った時に話の続きを聞いてみよう)

 

雪穂(そう思い、私は…寝る準備を始めることにした)

 

雪穂(お姉ちゃんがまだ襖のすぐ向こう側にいるのに気がつくこともなく…)

 

穂乃果「…」

 

 

 

1号「はっ!」ドカッ!

 

戦斗員「…!」バタッ

 

2号「…ふぅ、これでみんな倒したわね?」

 

1号「ああ、そのようだな」

 

2号「そういえばついでに壊しちゃったけど…これ、何の装置かしら?」

 

1号「それは…おそらく携帯の電波を遮断する装置だろうな」

 

2号「分かるの?テキトーに聞いたつもりだったんだけどぉ…」

 

1号「機械には少し詳しいんだ」

 

2号「ふぅ~ん…一体、今度は何をしようとするつもりなのかしら?」

 

1号「ここの警備が手薄だった事も不自然だな…『彼女達』がいないのもおかしい」

 

2号「確かに…それはそれで何だか腑に落ちないわね?」

 

1号「うむ、私達も見くびられたものだ」

 

2号「そう思うと、何だか急に疲れてきちゃったわねぇ…」ハァ

 

1号「無理もない…午前の二時過ぎだからな」

 

2号「もうそんな時間なのね…このままここに居てもお肌に悪いし、早く帰って休みましょう?」

 

1号「そうだな、そうしよう」

 

?「待て!」

 

1号「!」バッ

 

ヘラクス「裏切り者というのはお前達か?」

 

2号「裏切りも何も…私達はあなた達の味方になったつもりは無いわよ?」

 

ケタロス「フン、蛆虫共が…我々に刃向かう反抗勢力はこの俺達が始末する」

 

ヘラクス「俺達は世界を勝ち取る為なら、例え相手が女だろうと容赦はしない!」

 

1号「…どうやら、まだ帰れそうにはないみたいだ」

 

2号「んもぅ~…こうなったら本気出して、早めに片付けちゃいましょう?」

 

1号「ああ、了解だ」

 

『Rider Beat』

 

ヘラクス「お前の相手は…この俺だっ!!」ダッ

 

1号「…」フッ

 

『Rider Beat』

 

ケタロス「我々の魂は…『ショッカー』と共にありぃぃぃぃ!!」ダッ

 

2号「うふふっ…」

 

 

 

ツカサ(夜が明け…オレは写真館を出た)

 

ツカサ「…ん?」

 

ツカサ(服装は写真館を出る前とほぼ同じだったが…いつの間にか、中のTシャツだけが別のものに変わっていた)

 

ツカサ「ピンク…いや、マゼンタカラーのTシャツか」

 

ツカサ(そのTシャツには…『25』という数字が大きくプリントされていた)

 

ツカサ「で、名前の方は…これか?」ガサゴソ

 

ツカサ(オレはこの世界での肩書きを確認する為に…上着のポケットの中から紙を取り出した)

 

ツカサ(紙には『門矢ツカサ』とだけ書かれていたので…おそらくこれが、この世界でオレが名乗るべき名前なのだろう)

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

ツカサ(この世界での自分の名前を確認したオレは…それを元の場所に仕舞った)

 

ツカサ「ふぅ…それにしても、何かが引っ掛かるな」

 

ツカサ(スタジオの背景や外の景色が変わらないという事は…オレはまだ『μ'sの世界』にいる)

 

ツカサ(だからこそ…オレは、不思議に感じていたのだ)

 

ツカサ(これまでの旅は…各世界に起きた異変を食い止める事で、次の世界へと移動してきたはずだ)

 

ツカサ(だが今回は…異変を食い止めたにも関わらず、次の世界に移動できていない)

 

ツカサ「世界の異変はもうなくなったはずなんだが、おかしいな…!」ハッ

 

ツカサ(オレは旅を始める直前…誰かに言われていたある言葉を思い出した)

 

『ディケイドである君と高坂雪穂と絢瀬亜里沙の存在が…μ'sとこの世界を救う鍵になるの』

 

ツカサ「…まさか、昨日の出来事が原因なのか?」

 

ツカサ(もし昨日のやりとりが原因で次の世界に行けないのなら…この世界も『μ's』も、まだオレは救えていないという事になってしまう)

 

ツカサ(それが本当だと仮定すれば…オレはまた、雪穂と亜里沙に会わなければいけない)

 

ツカサ「全く、仕方ないな…」ハァ

 

ツカサ(ひとまずオレは雪穂に会う為に…穂むらへと向かった)

 

ツカサ(さっき、ポケットから紙を取り出した時に一緒に入っていたもう一つの何かを落としていた事にも気付かずに…)

 

 

 

雪穂(その頃、私達は…UTXの屋上にいた)

 

雪穂「本当にここで練習するんだ…」

 

亜里沙「そういえば…お姉ちゃんたち、ここでA-RISEと第二回予備予選のライブをやったんだよね!」

 

雪穂「そうだったね…まさかあの時はお姉ちゃん達がツバサさん達と会って話してたなんて思いもしなかったよ」

 

亜里沙「私も!」

 

雪穂「…ところで、お姉ちゃん達は?」キョロキョロ

 

亜里沙「練習着に着替えてから来るって言ってたよ!」

 

雪穂「そっか…」

 

亜里沙「あれ…雪穂、そういえばあの青い銃は?」

 

雪穂「うん、実はツバサさんに返そうと思って青いカバンに入れて持って来たんだけど…まだツバサさんに会ってなくて」

 

亜里沙「そうなんだ…」

 

雪穂「あっ…そういえば昨日は話が終わってなかったのに、途中でお姉ちゃんが割って入ってきちゃってごめんね?」

 

亜里沙「そんな…別に私は気にしてないよ?」

 

雪穂「あの後にお姉ちゃんが勝手に電話切っちゃったから、かけ直そうとしたんだけど…携帯の電波が圏外になっちゃってて」

 

亜里沙「大丈夫だよ…私もかけ直そうとしたら、圏外になってたから」

 

雪穂「えっ、亜里沙も?」

 

亜里沙「うん…朝にテレビのニュースを見て知ったんだけど、午前二時過ぎまで電波障害があったらしいよ!」

 

雪穂「そうだったんだ…ところで、絵里さんの話なんだけど」

 

亜里沙「…うん」

 

雪穂「ニオイがしなかったっていうのは…」

 

?「お待たせしました」

 

雪穂「?」クルッ

 

穂乃果「…」

 

雪穂(私達が振り返ると…そこにはお姉ちゃんとことりさんがいた)

 

雪穂「もう…本当に間が悪いよね、お姉ちゃんってば」

 

穂乃果「…ごきげんよう」

 

雪穂「いや、むしろ機嫌悪い方なんだけど…」

 

亜里沙「穂乃果さん、いつもと違う…何だか海未さんみたい」

 

雪穂「全然似てないし、変でしかないでしょ…あれ?」

 

ことり「…」

 

雪穂「そういえばことりさん…髪型がいつもと違いますよね?」

 

亜里沙「私のお姉ちゃんと同じポニーテールだね…」

 

ことり「ええ…ハラショーでしょ?」

 

雪穂「は、はい…?」

 

穂乃果「素晴らしいですね…あなたもそう思いませんか?」クルッ

 

雪穂(お姉ちゃんが後ろを振り向くと、そこには…なんと凛さんのような格好をした海未さんがいた)

 

海未「ニャー!!」

 

雪穂「えっ、海未さんまで!?」

 

海未「さぁ…今日も練習!いっくニャー!!」

 

亜里沙「かわいい…こんな海未さんも良いかも!」

 

雪穂「いやいや…そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

雪穂(すると今度は…凛さんが髪の毛をイジりながらやってきた)

 

凛「ナニソレ…イミワカンナイ!」クルクル

 

雪穂「意味分かんないのはこっちの方なんですけど!?」

 

凛「メンドーなヒト…」

 

穂乃果「そんな話し方はいけませんよ?」

 

凛「オコトワリシマス!」

 

亜里沙「凛さんは真姫さんみたいになってるね…?」

 

海未「ニャー」

 

雪穂「一体、何がどうなってるの?」

 

穂乃果「ライブの練習です」

 

雪穂「は…?それが!?」

 

ことり「ええ、みんなで決めたことよ」

 

雪穂「は、はは…頭痛くなってきたんで帰ります」スタスタ

 

海未「あー!?途中で帰ろうとするのはズルいニャー!」ピタッ

 

雪穂「ちょっと海未さん!?放してくださいよ!」

 

亜里沙「良いなぁ…」

 

雪穂「別に良くないから!」

 

…ポン

 

海未「ニャ?」クルッ

 

雪穂(私にしがみつく海未さんの肩を優しく叩いてくれたのは…真姫さんだった)

 

真姫「…」

 

雪穂「あっ、真姫さん…!」

 

真姫「とは言っても、別にずっとこれで練習やるって言った覚えは…無いやん?」

 

亜里沙「その話し方…もしかして、希さんかな?」

 

雪穂「そんな、真姫さんまでおかしく…」

 

?「にっこにっこにー!」

 

亜里沙「あっ…花陽さんだ!」

 

花陽「あなたのハートににこにこにー!青空もー…にこっ!」

 

亜里沙「スゴい…にこさんになりきってる!」

 

雪穂「でも青空って…今、けっこう曇ってますよ?」

 

花陽「…にこっ!」

 

雪穂「あの…無理に押し通そうとしなくて良いですから」

 

ことり「ハラショー」

 

雪穂「えっと…ことりさん、もしかしてロシア語のレパートリーそれだけしかないんじゃないですか?」

 

ことり「そんなことないわよ?ボルシチ、ピロシキ、ビーフストロガノフ…」

 

雪穂「全部食べ物でしかないですよ!?」

 

亜里沙「でも、みんなから見たお姉ちゃんのイメージってだいたいこんな感じだと思うし…」

 

雪穂「…亜里沙、それ以上は言わないであげて?」

 

にこ「亜里沙ちゃ~ん…」クネッ

 

亜里沙「えっ…にこさん?」

 

にこ「絵里ちゃんはぁ、そんな感じじゃないと思うよぉ~?」クネッ

 

雪穂「あの…さっきからクネクネしてますけど、それは誰のモノマネなんですか?」

 

にこ「そんなヒドいこと言うと、おやつにしちゃうぞぉ~…チュンチュン♡」クネッ

 

亜里沙「もしかして、ことりさんかな…?」

 

雪穂「えぇ…?ことりさんってあんな感じじゃないと思うけど」

 

希「やぁー!今日もパンが美味いっ!!」パクッ

 

亜里沙「希さんは…穂乃果さんだね!」

 

雪穂「うん、間違いなくそうだね」

 

穂乃果「えっ…どこもツッコまないんですか?」

 

雪穂「は?ツッコむわけないじゃん、いつもあんな感じだし…」

 

ことり「こら、また遅刻よ」

 

希「ごめぇーん…」

 

穂乃果「…」

 

絵里「大変ですっ!」

 

亜里沙「あっ、お姉ちゃん!」

 

雪穂「えっと…あと残ったのは花陽さんだけか」

 

亜里沙「花陽さんはもういるよ?」

 

雪穂「いや、そっちの花陽さんはにこさんで…やっぱりいいや」

 

亜里沙「?」

 

穂乃果「どうしたのです?」

 

絵里「スー、ハー…スー、ハー…」

 

絵里「み、皆がっ!」

 

亜里沙「…?」

 

絵里「皆がぁ~!」

 

雪穂「…?」

 

絵里「やっぱり変よ」

 

穂乃果「…えっ、やっぱり?」

 

雪穂「やっぱりも何も…最初からずっとそう言ってたよ!?」

 

ことり「そうね…本当にね」

 

凛「キモチワルイ」

 

真姫「だから…凛、それやめなさいよ!?」

 

凛「オコトワリシマス」

 

真姫「…っ!」ワナワナ

 

絵里「まあまあ、真姫…」

 

真姫「…フンッ!」プイッ

 

絵里「凛も…もうやめなさい」

 

凛「やめるなんて…ミトメラレナイワァ」

 

絵里「…凛?」ゴゴゴ

 

凛「ヒッ…!」ビクッ

 

穂乃果「そもそも、海未ちゃんが『長時間のライブだから途中で空気を変えてみた方が良い』って言い出すから…」

 

海未「なっ…私のせいにするんですか!?」

 

海未「それを聞いて『じゃあ、また入れ替わってみよっか?』って希が言ったからこうなったのですよ!?」

 

希「あれ、そうやったっけ?」

 

海未「覚えていないのですか!?」

 

ことり「お、落ち着いて海未ちゃん…」

 

海未「一度ならず二度もこんな辱しめを受けておいて…落ち着ける訳がないじゃないですか!」

 

にこ「ちょっと花陽…アンタ、前にやった時にも言ったわよね?」

 

花陽「に、にこちゃん…?」

 

にこ「『にこっ!』じゃなくて『にこっ♡』よ!可愛くやんなきゃダメじゃない!?」

 

花陽「ピャアッ!?」

 

にこ「こうなったら特訓するしかないわね…!」

 

花陽「えっ…何を?」

 

にこ「もちろん、にこになりきる特訓よ!」

 

花陽「と…特訓!?」

 

にこ「生半可な気持ちで私のマネをするなんて甘いのよ…とにかく、みっちり指導してあげるわ」

 

花陽「だ、だ…誰か助けてぇ~!!」

 

ギャーギャー

 

雪穂「ライブまであとちょっとしかないのに…こんなんで本当に大丈夫なのかなぁ?」

 

亜里沙「私は面白かったから、もうちょっと見たかったけどなぁ…あれ?」

 

海未「大体、希はそういう所が…!」シュゥゥゥ…

 

亜里沙「海未さん…?」

 

雪穂「…どうかしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「いや、何だか海未さんの様子が変な気がして…」

 

雪穂「変って…今よりさっきの方がよっぽど変だったと思うけど」

 

亜里沙「そうじゃなくて…ううん、やっぱり何でもない」

 

雪穂「…?」

 

穂乃果「…」

 

 

 

ツカサ(穂むらに着いたオレだったが…店の出入口には一枚の張り紙が貼られていた)

 

『都合により二〇〇九年一月二十五日を以て閉店します 長らくのご愛顧ありがとうございました 穂むら』

 

ツカサ「二〇〇九年の一月に…閉店?」

 

ツカサ「いや、そんなはずはない…きっと何かの間違いだ」

 

ツカサ「…」ガタガタ

 

ツカサ(オレは店の引き戸を開けようとしたが…出入口の鍵は閉まっていた)

 

ツカサ「皆、どこかへ出かけているのか…ん?」ピラッ

 

ツカサ(オレがふと張り紙を捲ると…そこにはまた別の張り紙が貼られていた)

 

ツカサ「『指名手配』…!」

 

ツカサ(それは…ツバサを含めた三人の女性が指名手配されているという内容のポスターだった)

 

ツカサ「なぜアイツが?…!」

 

ツカサ(その時…耳の中が痛くなり始めた)

 

ツカサ「何だ、この感覚は…っ!?」

 

ツカサ(オレが空を見上げると…三種類ほどの怪物が次々と現れ、目の前に落ちてきた)

 

陸のアンデッド「…」

 

空のアンデッド「…」

 

海のアンデッド「…」

 

ツカサ「!…特徴が無さ過ぎて断定しづらいが、何となくアンデッドだという事は分かるな」

 

ツカサ(そして、他の怪物よりも二回りほど大きな体格をした怪物が空から着地してきた途端…凄まじい波動が生まれた)

 

マザーアンデッド「…」

 

ツカサ「うわっ…!」ゴロゴロ

 

ツカサ(波動の影響を受けたオレは仰け反り、薙ぎ倒されてしまう)

 

ツカサ「ここじゃ変身して戦えないな…もし仮に勢い余ってこの穂むらまで破壊してしまったら、雪穂に何て怒られるか」ハァ

 

マザーU「…」スッ

 

ツカサ(大きな怪物は無言で他の怪物達に指示すると…怪物達はオレに向かって襲いかかってきた)

 

ツカサ「やはり、やるしかないのか…ん?」

 

ブゥゥゥン…

 

ツカサ(すると…白と黒、それぞれ違う色のフルフェイスヘルメットを被った二人の人物がバイクに乗ってこちらに向かってきた)

 

ツカサ「あの二台のバイクの形と白と赤のカラーリングは…『サイクロン』か?」

 

ツカサ(『サイクロン』…それは、とある悪の組織に肉体を改造された二人のライダーが乗っていたマシンだ)

 

ドカッ!

 

マザーU「!?」ゴロゴロ

 

ツカサ(二台は大きな怪物に体当たりし、吹き飛ばしてから止まると…黒いヘルメットを被った方の女性がオレにこう尋ねてきた)

 

黒ヘル「…君がディケイドか?」

 

ツカサ「?…確かにそうだが」

 

黒ヘル「乗れ」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

黒ヘル「早く」

 

『アドベント』

 

ツカサ(その直後…どこかから声が聞こえるとコオロギ型のミラーモンスターが硝子の向こう側から飛び出し、怪物達を攻撃した)

 

ツカサ「なっ…サイコローグ!?」

 

ツカサ(身軽に動き回るサイコローグは…まるでオレ達を守ろうとするかのように、怪物達の注意を逸らしていた)

 

ツカサ「どうしてアイツが…?」

 

黒ヘル「急いでくれ、話は後だ」

 

白ヘル「今、逃げないと…ここの被害がどんどん広がっちゃうわよぉ?」

 

ツカサ「…全く、仕方ないな」ハァ

 

白ヘル「うふふっ…そう来なくっちゃね」

 

ツカサ「ヘルメット、あるか?」

 

黒ヘル「当然だ」

 

ツカサ(オレは赤いヘルメットを借りて…黒いヘルメットを被った方の女性の後ろに乗った)

 

白ヘル「あら…そっちに乗っちゃうのぉ?」

 

ツカサ「別にどっちでもいいだろ?」

 

白ヘル「私の身体の方が柔らかいのにぃ…」

 

ツカサ「…行ってくれ」

 

黒ヘル「ああ」

 

ツカサ(二台のサイクロンは走り出し…オレ達はその場を後にした)

 

オルタナティブ「…」スタスタ

 

マザーU「…!」

 

オルタナティブ「…はぁっ!」ダダッ

 

 

 

雪穂(あのやりとりの後…お姉ちゃん以外のみんなは自分の練習着に着替えるために、更衣室に戻っていた)

 

穂乃果「う~ん、またダメかぁ…」

 

雪穂「そりゃそうでしょ…変でしかないよ?」

 

穂乃果「みんな楽しんでくれるかなって思ってたんだけどなぁ…あれ、ところで亜里沙ちゃんは?」

 

雪穂「ああ…亜里沙なら、ちょっと手を洗いに行ってくるって言ってたけど」

 

穂乃果「…そっか」

 

雪穂「そういえばツバサさん達は?」

 

穂乃果「あっ、えっと…ツバサさん達はプロのアイドルに転向するからちょっと忙しいみたいで」

 

雪穂「はっ…プロ!?」

 

穂乃果「う、うん…言ってなかったっけ?」

 

雪穂「初めて聞いたんだけど、それ!」

 

穂乃果「そっか…ツバサさん達に何か用事でもあったの?」

 

雪穂「まあ、そんな感じだけど…」

 

穂乃果「へぇ…そうなんだ」

 

雪穂「というかお姉ちゃんさ…それ、海未さんの練習着なんでしょ?」

 

穂乃果「へ?…あっ!」

 

雪穂「早く更衣室に戻らないといけないんじゃないの?」

 

穂乃果「で…でも、もう少しこのままでも良いかなぁ?」

 

雪穂「良いわけないでしょ…海未さん、きっと困ってるよ?」

 

穂乃果「だ、だよね…ちょっと行ってくる!」ダダッ

 

雪穂「もう…」ハァ

 

 

 

ツカサ(オレを後ろに乗せて、サイクロンを走らせる二人の女性は…地下へと通じるトンネルの中に入った)

 

ツカサ「おい…一体、どこまで行くつもりなんだ?」

 

黒ヘル「…」

 

ツカサ(オレの質問に答える事なく、二人の女性はしばらく薄暗い地下通路を走り続けていた)

 

ツカサ(やがて通路を抜けると…二人はマシンを止めた)

 

黒ヘル「着いたぞ」

 

ツカサ(マシンから降りたオレ達は、それぞれヘルメットを取った)

 

ツカサ「…」

 

白ヘル「はぁ…いつも思うけど、あんなジメジメした所を通るのはやっぱり慣れないわねぇ」

 

黒ヘル「サイクロンで来るにはここしか道が無いからな…我慢するんだ」

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(オレは二人の女性の顔に見覚えがあった…さっきのポスターでツバサと一緒に指名手配されていた二人だ)

 

ツカサ「アンタ達は…!」

 

白ヘル「あら、私達の事…知ってたのぉ?」

 

黒ヘル「当然だろう、何せ私達は反逆者として指名手配されているからな」

 

白ヘル「やっぱりそうよねぇ…私のファンかと思っちゃった」ハァ

 

黒ヘル「自己紹介が遅れたな、私の名前は統堂エレナ」

 

白ヘル「私は優木アンジュよ…よろしくねぇ、坊や?」

 

ツカサ「坊やじゃない、門矢ツカサだ…とりあえずアンタ達には聞きたい事が山程ある」

 

アンジュ「何でも聞いてちょうだい、お姉さん達が手取り足取り教えて…あ・げ・る♡」

 

エレナ「おい、アンジュ…あまりからかうな」

 

アンジュ「だって、坊やが可愛い顔してたからぁ…」

 

ツカサ(オレはアンジュのちょっかいを流しながら、ある質問をぶつけた)

 

ツカサ「なぁ、ここは…『μ'sの世界』じゃないのか?」

 

アンジュ「!」

 

エレナ「…」

 

ツカサ「それとも…!?」クルッ

 

ツカサ(後ろから気配を感じたオレが振り向くと…そこには工業用のツナギを着た一人の男がいた)

 

?「…」

 

ツカサ(その男の顔は…穂乃果の父の顔と瓜二つのものだった)

 

ツカサ「…おやっさん?」

 

エレナ「立花さん…今、戻りました」

 

ツカサ「立花…?」

 

エレナ「彼は立花トウベエ…私達のサポートをしてくれている人だ」

 

アンジュ「ただいまぁ~♪」フリフリ

 

トウベエ「…」スタスタ

 

ツカサ(おやっさんは手を振るアンジュをそのままスルーし…二台のサイクロンを整備し始めた)

 

アンジュ「もう、つれないんだからぁ…」

 

ツカサ「…」

 

エレナ「もしかして君は…彼女から何も聞いていないのか?」

 

ツカサ「彼女って…綺羅ツバサの事か?」

 

アンジュ「その様子…やっぱりツバサちゃん、坊やには何も話してなかったみたいねぇ?」

 

エレナ「元は私達だけで済ませる問題だったからな…仕方がない、私達が話そう」

 

ツカサ「問題って…どういう事だ?」

 

エレナ「…一緒に来てくれ」スタスタ

 

ツカサ(オレを連れて歩くエレナとアンジュは…梯子を上り始めた)

 

ツカサ「今度はどこに連れて行くつもりなんだ?」

 

エレナ「地上だ、ある場所に繋がっている」

 

ツカサ「…ある場所?」

 

アンジュ「すぐに分かるわぁ」フフッ

 

ツカサ(梯子を上りきると…突然、オレの顔に藁が降ってきた)

 

ツカサ「!?く、口に藁が…!」ゴホゴホッ

 

アンジュ「大丈夫ぅ?」

 

ツカサ「何とかな…ん?」

 

ツカサ(周りを見回すと…一面には藁が広がっていた)

 

ツカサ「どこだ、ここは…まさかアルパカ小屋とでも言うんじゃないだろうな?」

 

エレナ「その通りだ」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

アンジュ「あら、ここが前までアルパカ小屋だったなんてよく分かったわねぇ?」

 

ツカサ「ただ勘で言っただけなんだが…!?」

 

ツカサ(小屋から出たオレが見たものは…半壊した校舎だった)

 

ツカサ「音ノ木坂学院が…壊されている?」

 

アンジュ「う~ん、ちょっと違うわねぇ…」

 

ツカサ「…違う?」

 

エレナ「ここは…『城南大学附属高等学校』だ」

 

ツカサ「どこからどう見ても音ノ木坂学院にしか見えないんだが…」

 

エレナ「…そうだろうな」

 

ツカサ「はぁ?だから何が…!!」ハッ

 

アンジュ「…ようやく、分かってもらえたみたいねぇ?」

 

ツカサ「まさか、この世界は…!?」

 

 

 

海未「…」スタスタ

 

亜里沙「…」

 

亜里沙(さっきの海未さんの様子が気になっていた私は…こっそり海未さんの後をついていた)

 

亜里沙(更衣室に行ったお姉ちゃんたちと別れちゃったけど…どこに向かってるんだろう?)

 

海未「時間切れ…仕方ないですね」

 

亜里沙「?」

 

亜里沙(すると海未さんは…目の前にあったガラスの中に吸い込まれていった)

 

亜里沙「えっ!?」

 

亜里沙(ビックリした私がガラスの前まで行ってみると…海未さんはガラスの向こう側に映っていた)

 

亜里沙「!?」

 

海未「…着いてきているのは分かっていましたよ、亜里沙」フフッ

 

亜里沙「海未さん…?」

 

海未「これ、何だと思いますか?」

 

亜里沙(海未さんはポケットから何かを取り出した)

 

亜里沙「それは…?」

 

海未「これはミラーワールドからのライダー…リュウガに変身する為のカードデッキです」

 

亜里沙「リュウガ…じゃあ、もう海未さんはブレイドじゃないってこと?」

 

海未「…」

 

亜里沙「あれ、でも世界は平和になったはずなのに…何でそれを持ってるの?」

 

海未「フフッ…鈍いのですね」

 

海未「この世界の私は、ブレイドなどというライダーではありません…」

 

亜里沙(冷たく笑った海未さんのお腹には…黒いベルトが巻かれていた)

 

海未「受け入れるのです、私達を…変身」

 

亜里沙(そのベルトにカードデッキを入れた海未さんは…ブレイドとは違う黒いドラゴンのライダーに変身した)

 

リュウガ「…」

 

亜里沙「受け入れるって…どういうことなの?」

 

?「亜里沙」

 

亜里沙(私は声のする方を向くと…そこにはお姉ちゃんがいた)

 

絵里「…」

 

亜里沙「…お姉ちゃん?」

 

絵里「あなた達の旅は…『この世界』で終わらせる」

 

亜里沙「えっ…『この世界』って?」

 

絵里「まだ気付かないの?この世界は…あなた達の世界ではないという事よ」

 

亜里沙「!?」

 

絵里「フフッ…悪かったわね、今まで騙してて」

 

亜里沙「そんな…ウソじゃないの?」

 

絵里「ええ、嘘なんかじゃないわ…ここはあなた達の世界とよく似た別の世界よ」

 

亜里沙「別の、世界…!」

 

絵里「ところで亜里沙…どうして私からいつもするはずの匂いがしなかったのか、分かる?」

 

亜里沙「え?」

 

絵里「私は…あなたがよく知っている『絢瀬絵里』じゃないからよ」

 

亜里沙「お姉ちゃんじゃ…ない?」

 

?「…やあ、絢瀬亜里沙くん」

 

亜里沙「?…!?」

 

亜里沙(声に気づいた私がガラスの向こう側を見ると、海未さんが変身した黒いライダーの隣に…あの男の人が立っていた)

 

亜里沙「あなたは…あの時の!」

 

ナルタキ「…」

 

 

 

雪穂(私がしばらく屋上で待っていると…誰かが声をかけてきた)

 

?「会いたかったよ、高坂雪穂くん」

 

雪穂「はい?…!?」

 

ナルタキ「…」

 

雪穂「…どうして、あなたがここに!?」

 

ナルタキ「簡単な事だ…私が君のお姉さんに頼んだんだよ、君達と私を会わせるようにとね」

 

穂乃果『その人、雪穂や亜里沙ちゃんにも会いたいって言ってたよ!』

 

雪穂「ってことは…あなたが?」

 

ナルタキ「そうだ…いや、少し訂正しよう」

 

ナルタキ「私がお願いしたのは…君の本当のお姉さんじゃない」

 

雪穂「本当のお姉ちゃんじゃないって…どういうことですか!?」

 

ナルタキ「…」

 

?「雪穂ちゃん…そのままおとなしくしててね?」ヒョコッ

 

雪穂(その時、彼の後ろから一輪の青い薔薇を持ったことりさんが出てきた)

 

雪穂「ことりさん…?」

 

ことり「今、私の薔薇に彩りを加えてあげるから…あの子達の赤い血とあなたや亜里沙ちゃんの涙で」パシッ

 

雪穂(ことりさんはどこからか飛んできたカブト虫を掴むと…それを右腕のブレスレットに装着させた)

 

ことり「…変身」

 

『Henshin…Change Beetle』

 

雪穂「!…金色の、カブト?」

 

コーカサス「…」スタスタ

 

雪穂「そんな…戦いは終わったんじゃ!?」

 

?「終わってなんかないよ」

 

雪穂「!…お姉ちゃん?」

 

穂乃果「それに…ここは『μ'sの世界』じゃない」

 

雪穂「『μ'sの世界』じゃない…?」

 

穂乃果「そして…私達はスクールアイドル『μ's』じゃない」

 

雪穂「…それ、どういう意味?」

 

穂乃果「まだ分からないの…?」

 

穂乃果「私は…あなたのお姉ちゃんじゃない」

 

雪穂「!?」

 

穂乃果「ことりちゃん…ううん、コーカサス」

 

コーカサス「…」ガシッ

 

雪穂(金色のカブトは…私を捕まえて、逃げられないようにした)

 

雪穂「な、何するんですか!?」

 

コーカサス「…」

 

雪穂「放してください!」

 

穂乃果「雪穂…捕まった亜里沙ちゃんがどうなってもいいの?」

 

雪穂「!…亜里沙が?」

 

穂乃果「おいで、ネオトルーパー」

 

雪穂(お姉ちゃんがそう言うと…銀色の戦闘服を着た人がやってきた)

 

雪穂(それは…カブトの世界で見たZECTの戦闘服によく似ていた)

 

ネオトルーパー「…」

 

穂乃果「頼んだよ」

 

ネオトルーパー「了解しました」

 

雪穂(私は戦闘服を着た人に連れられて…屋上を出た)

 

雪穂「お姉ちゃん…」

 

穂乃果「…」

 

雪穂(一体、私はどこに連れて行かれちゃうんだろう…?)

 

ナルタキ「…よくやった、彼女達を油断させる為にやった君達のさっきの茶番劇はアカデミー女優もビックリの演技だったぞ?」

 

穂乃果「ありがとうございます」

 

ナルタキ「これで後は…ディケイドだけだな?」

 

穂乃果「はい、もう他のみんなが向かっていると思います」

 

ナルタキ「そうか…邪魔な『HOPPER』共の始末も、計画通り頼むぞ?」

 

穂乃果「お任せを…行こう、コーカサス」スタスタ

 

コーカサス「…」スタスタ

 

ナルタキ「…フッ」

 

 

 

ツカサ(ここが『μ'sの世界』じゃないと知ったオレは…移動しながら、エレナとアンジュからある話を聞いていた)

 

ツカサ「…今、何て言った?」

 

エレナ「この世界に『μ's』はいない…九人のメンバーも元々、この世界には存在していないはずだった」

 

アンジュ「だけど今、実際に彼女達はこの世界に存在している…これがどういう事か分かるぅ?」

 

ツカサ「…誰かが作り出した偽者という事か?」

 

アンジュ「うふふっ…正解♡」

 

エレナ「この世界の彼女達は…ある組織が別の世界から持ってきた技術を使って、生み出されたんだ」

 

ツカサ「…その組織の名前は?」

 

エレナ「同種の血統による全体の、神聖なる支配権…『Sacred Hegemony Of Cycle Kindred Evolutional Realm』」

 

アンジュ「それを略したのが…『SHOCKER(ショッカー)』」

 

ツカサ「ショッカー…どこかでよく聞いた事のある名前だな」

 

エレナ「ショッカーはライダーに変身する『μ's』の九人を使って、この世界を支配しようと企んでいる」

 

アンジュ「どっちかって言うと正しくは…ライダーが『μ's』に変身しているって感じだけど」

 

ツカサ「ライダーが『μ's』に化けてるって事か…なるほど、だいたいわかった」

 

エレナ「そして、それを率いているのが…!」

 

アンジュ「!…あら、やっぱり来てたのねぇ?」

 

ツカサ(オレ達が校内のグラウンドに辿り着くと…そこには絵里、凛、真姫、希、花陽、にこの六人がいた)

 

にこ「…ディケイド、こっちに来なさい」

 

ツカサ「!」

 

絵里「無理よ…おそらくディケイドは既に『HOPPER』の二人から私達の正体を聞いているはず」

 

にこ「し、知ってるわよそんな事!悪の軍団の代表として言ってみただけよ…」

 

花陽「あ、あの…ディケイドを私達に渡してくれませんか?」

 

真姫「言う事を聞いてくれたら…命だけは助けてあげるわ」

 

アンジュ「あらぁ…私達がそうやって素直に坊やを渡すとでも思っているの?」

 

エレナ「残念だが無理な相談だな…諦めろ」

 

希「へぇ…じゃあ、あの二人がどうなってもええって事やんな?」

 

ツカサ「あの二人?…まさか!?」

 

凛「そのまさかだよ…雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんは今ごろ、地下に閉じ込められてるに違いないニャ」

 

ツカサ「お前ら…本当の正体を現せ!」

 

ツカサ(オレはバックルを取り出そうとするが…エレナが止めに入ってきた)

 

エレナ「待て」

 

ツカサ「だが…!」

 

アンジュ「ここは私達に…任せてもらえるかしら?」

 

エレナ「君は渡さない…捕まった君の仲間も助け出す、絶対にな」

 

ツカサ(その瞬間…エレナは白いベルト、アンジュには赤いベルトがそれぞれの腹部から出現した)

 

ツカサ「そのベルトは…!?」

 

ツカサ(ベルトに風力エネルギーを吸収させた二人は…ベルトの風車を回転させながら、戦闘スーツを身に纏う)

 

ツカサ(最後に特殊なマスクを頭部に装着し…二人は『HOPPER』としての変身を完了させた)

 

1号「…」

 

2号「…」

 

ツカサ「『The First』の1号と2号…まさか、二人が改造人間だったとはな」

 

1号「『二人』…そうか」

 

ツカサ「…違うのか?」

 

2号「それは…ナ・イ・ショ♪」

 

にこ「まったく、しょーがないわねー…アンタ達!」

 

ツカサ(にこに呼ばれ…グローブとブーツが黄色い六人の『HOPPER』が目の前に立ちはだかった)

 

ツカサ「アレは…『The NEXT』のショッカーライダーか」

 

絵里「その通りよ、私達の組織は…そこにいる彼女達のコピー体を造り出せる程に優秀なの」フフッ

 

ショッカーライダー1「…」

 

絵里「ショッカーライダーの能力は…あなた達が今まで相手にしていた『戦斗員』を遥かに超えるわ」

 

にこ「やっちゃいなさい!」

 

ショッカーライダー「…」ダダッ

 

1号「行くぞ、アンジュ」

 

2号「ええ…エレナちゃん」

 

 

 

雪穂(捕まった私は…無理やり、地下の牢屋の中に入れられてしまった)

 

ドンッ!

 

雪穂「うわっ!」ヨロッ

 

ネオトルーパー「このカバン…一旦、預からせてもらうね」

 

ガチャン!

 

雪穂(戦闘服を着た人は私からカバンを奪うと…牢屋のカギを閉めて、どこかへ行ってしまった)

 

雪穂「ツバサさんのカバン…取られちゃった」

 

雪穂「そういえば、何か前にもこんなことがあったような…デジャヴかな?」

 

雪穂(私がそんなことを一人で呟いていると…近くで倒れていた誰かが目を覚ました)

 

?「んぅ…雪穂?」

 

雪穂「亜里沙!?」

 

雪穂(私は亜里沙の近くに駆け寄った)

 

雪穂「大丈夫?ケガは!?」

 

亜里沙「私は気を失ってただけだから大丈夫…ごめんね、捕まっちゃって」

 

雪穂「ううん、私もここが私達の世界じゃないことに気付けなかったし…ごめん」

 

亜里沙「そんな…雪穂は悪くないよ」

 

雪穂「…そうだ、ツカサがきっと助けに来てくれるよ!」

 

亜里沙「でも、あんな別れ方しちゃったからもう別の世界に行っちゃってるかも…」

 

雪穂「あっ…そう、だよね」

 

亜里沙「私たち、ずっとこのままなのかな…?」

 

雪穂「それは…ん?」ペタペタ

 

亜里沙「…どうしたの?」

 

雪穂「これって…石板?」

 

亜里沙「本当だ…何だろう、これ?」ペタペタ

 

雪穂「う~ん、私にも何が何だか…」

 

?「この子達よ!」

 

雪穂「?」クルッ

 

雪穂(私達が振り向くと…三人に増えたさっきの戦闘服を着た人が、牢屋の外まで戻って来ていた)

 

ネオトルーパー1「…」

 

雪穂「あの…私達に何か?」

 

ガチャ

 

雪穂(三人は…牢屋のカギを開けて、中に入ってきた)

 

ネオトルーパー2「お邪魔しま~す…」

 

雪穂「えっ!?」

 

亜里沙「何…?」

 

ネオトルーパー3「はい、さっきのカバン!大切な物が入ってたんでしょ?」スッ

 

雪穂「あっ、どうも…じゃなくて!」

 

ネオトルーパー1「いや~…さっきは乱暴な事しちゃってごめんね?」

 

雪穂「…はい?」

 

ネオトルーパー2「ここに潜入するにはどうしても、ここの人になりきらないといけなかったから…」

 

亜里沙「なりきるって…あなたたちは?」

 

ネオトルーパー3「私達、二人を助けに来たの!」

 

雪穂(三人はヘルメットを脱ぐと…それぞれの名前を言った)

 

ネオトルーパー1「ぷはっ…えっと、私はヒデコ」

 

ネオトルーパー2「それで…私がフミコ」

 

ネオトルーパー3「ミカだよ、よろしくね!」

 

亜里沙「あっ…!」

 

雪穂(私達は三人の顔に見覚えがあった)

 

雪穂(私達の世界では『μ's』の活動を色々とサポートしてくれていた三人だ…前にお姉ちゃんから話を聞いた覚えがある)

 

雪穂(直接、話したことはないけど…『あの曲』をアキバで一緒に踊ったことを私達は覚えていた)

 

ヒデコ「じゃあ、行こうか?」

 

雪穂「行くって…どこにですか?」

 

ミカ「やだなぁ、決まってるじゃん!」

 

フミコ「ここから逃げよう!」

 

雪穂「!」

 

亜里沙「…はい!」

 

雪穂(私と亜里沙はヒデコさん達と一緒に牢屋を出て、走り始めた)

 

 

 

ツカサ(六人のショッカーライダーは…ダーツ型の爆弾を『HOPPER』の二人に投げつけた)

 

ツカサ「爆風で見えないな…あの二人、大丈夫なのか?」

 

ツカサ(しかし二人は…無傷で爆風の中から飛び出し、ショッカーライダー達を攻撃していく)

 

1号「はっ!」ガッ!

 

ショッカーライダー5「…!」

 

2号「えいっ!」ゴッ!

 

ショッカーライダー6「…!」

 

ツカサ(数だけで言えばショッカーライダー達の方が有利だが…二人の『HOPPER』はそれをものともしなかった)

 

ツカサ(エレナが変身した1号は圧倒的な『力』、アンジュが変身した2号は多彩な『技』を魅せて…敵を翻弄しているのだ)

 

ツカサ(1号がアッパー、2号が回し蹴りで六人のショッカーライダーのうちの二人を撃破すると高く飛び上がり…)

 

1号「はぁっ!」バキッ!

 

ショッカーライダー3「!」

 

2号「やっ!」ドカッ!

 

ショッカーライダー4「!」

 

ツカサ(それぞれの『ライダーキック』でまた二人、ショッカーライダーを倒していく)

 

にこ「ちょっと…アンタ達、しっかりやんなさいよ!?」

 

絵里「予想外だったわね…こうなったら、私が行くべきかしら?」

 

キィン…キィン…

 

絵里「!…どうやら、まだその必要はないみたいね」フフッ

 

ツカサ「この音は…まさか!」

 

『アドベント』

 

1号「!?」

 

ツカサ(どこかから低い音声が聞こえた瞬間…近くのガラス片から飛び出してきたドラグブラッカーが1号の身体を咥えた)

 

ガッ!ゴッ!

 

1号「ぐっ…!」

 

ツカサ(ドラグブラッカーは咥えた1号をあらゆる障害物にぶつけると…地面に放り投げた)

 

1号「…うっ」ゴロゴロ

 

『ストライクベント』

 

リュウガ「…」

 

ツカサ「アイツは…リュウガ!」

 

ツカサ(右手にドラグクローを装着したリュウガは…立ち上がろうとした1号に『昇竜突破』をぶつけた)

 

1号「ぐはっ!?」

 

ツカサ(たった一撃の破壊力で…1号のスーツは色が変色するほどにボロボロになり、マスクも外れてしまった)

 

エレナ「…」ドサッ

 

2号「エレナちゃん!!」

 

『Hyper Clock Up』

 

ドカッ!バキッ!

 

2号「きゃっ!?」

 

にこ「やっと来たのね…ずいぶん遅かったじゃない?」

 

ツカサ(倒れたエレナに気を取られた2号は…超高速で動く誰かから執拗に攻撃されていた)

 

ツカサ「あれは…ハイパークロックアップか?」

 

『Hyper Clock Over』

 

コーカサス「…」

 

ツカサ「!…コーカサス!?」

 

コーカサス「…!」スッ

 

『Maximum Rider Power』

 

ツカサ(コーカサスは左腰に装着されたハイパーゼクターの角を押し倒すと…そのまま2号に向かってミドルキックを放った)

 

コーカサス「…」ドガッ!

 

2号「ああっ!!」

 

ツカサ(コーカサスの『ライダーキック』の衝撃でヒビが入った2号のマスクは外れ…アンジュは倒れてしまった)

 

アンジュ「ううっ…」ドサッ

 

ツカサ「…エレナ、アンジュ!」

 

絵里「やはりスクールアイドルとしても、ライダーとしても…私には素人にしか見えなかったわね」

 

にこ「いよいよ…『HOPPER』も終わりね!」

 

ツカサ「させるか!」

 

ツカサ(エレナとアンジュを助ける為、オレは一枚のカードをディケイドライバーに入れ…ディケイドに変身した)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「はっ!…!?」

 

ディケイド(しかし、二人のショッカーライダーと真姫が目の前に現れ…オレの行く手を阻んだ)

 

真姫「…それはこっちの台詞よ」

 

ショッカーライダー1「…」

 

ショッカーライダー2「…」

 

ディケイド「!…全く、仕方ないな」ハァ

 

真姫「あなたは…もう私達のものよ」

 

ディケイド(真姫は角が黒い音叉を取り出すと…それを足で行儀悪く鳴らした)

 

キィィィン…

 

真姫「…歌舞鬼」

 

ディケイド(桜吹雪が彼女の身体を覆った後…彼女は歌舞伎のような見栄を切るように桜吹雪を払いのけ、鬼の姿に変わった)

 

歌舞鬼「…」

 

ディケイド「その緑と赤と金の派手な色合いは歌舞鬼か…だったら!」

 

『カメンライド…デンオウ!』

 

ディケイド(オレはライドブッカーから一枚のカードを取り出すと…ベルトに装填し、ソードフォームの電王へと姿を変えた)

 

DCD電王「…さあ、鬼退治だ」

 

歌舞鬼「!」

 

凛「アレって…電王!?」

 

花陽「でも…あの電王はちょっと違うみたいだよ?」

 

凛「えっ?…あっ、ホントだ!」

 

にこ「アンタね…よく見なくても分かるでしょ!?」

 

DCD電王「…手始めに、これだ」スッ

 

DCD電王(オレは更にライドブッカーから四枚のカードを取り出し…その中から一枚のカードを選び、バックルに入れた)

 

『アタックライド…オレ、サンジョウ!』

 

DCD電王(その直後、オレは電王ソードフォーム特有のあの名乗りとポーズをした)

 

DCD電王「オレ、参上!」

 

歌舞鬼「…?」

 

DCD電王(だが、それ以外にカードの効果は何も起こらなかった…)

 

DCD電王「…///」ゲホゲホッ

 

にこ「はぁ?何よそれ…」

 

DCD電王「オ…オレに聞くな!」

 

にこ「アンタがやってきたんでしょ!?」

 

希「あっ…もしかして『オレ、三条!』って自己紹介したかったんやない?」

 

DCD電王「そんな訳ないだろ!…ったく、他にまともなカードはないのか?」

 

DCD電王(オレは残りの三枚のアタックライドカードも見たが…)

 

『ボクニツラレテミル?』

 

『コタエハキイテナイ!』

 

『ナケルデ!』

 

DCD電王(おそらく他の三フォームの名乗りをするだけで…どれも役に立たなそうなカードだった)

 

DCD電王「あ、あいつら…!」

 

歌舞鬼「…!」ズバッ!ザシュッ!

 

DCD電王(歌舞鬼は持っていた音叉を音叉剣に変えると…オレに連続で斬りかかってきた)

 

DCD電王「うわっ!?」

 

絵里「…ショッカーライダー、彼を捕らえなさい」

 

ガシッ!

 

DCD電王(絵里の命令を聞いたショッカーライダー達が…オレを拘束する)

 

ショッカーライダー1「…」

 

ショッカーライダー2「…」

 

DCD電王「なっ…おい、離せ!」

 

歌舞鬼「!」ダッ

 

DCD電王(それを見た歌舞鬼は…緑の霊石の『音撃棒 烈翠』と音撃鼓を取り出した)

 

DCD電王「なっ…!」

 

歌舞鬼「…」ドンッ!

 

DCD電王(歌舞鬼はその場で音撃鼓を巨大化させると、オレに向かって『音撃打 業火絢爛』と呼ばれるエネルギー波を放った)

 

DCD電王「うわぁっ!?」

 

ショッカーライダー1「!」

 

ショッカーライダー2「…!」

 

DCD電王(その威力はショッカーライダー達を巻き込んで倒してしまう程に絶大で…変身も強制解除されてしまった)

 

ツカサ「ぐっ…!」ゴロゴロ

 

絵里「…ディケイド、私達と来なさい」

 

ツカサ「断る、と言いたい所だが…エレナとアンジュを見逃したら考えてやる」

 

絵里「…リュウガ」

 

リュウガ「…」スッ

 

ドラグブラッカー「!」

 

ツカサ(リュウガに命じられたドラグブラッカーは…倒れているエレナとアンジュのもとへ向かっていった)

 

ツカサ「おい、何のつもりだ!?」

 

絵里「決まってるじゃない…裏切り者は排除する、それがショッカーの掟よ」

 

ツカサ「お前ら…!」

 

にこ「ドラグブラッカー、早く『HOPPER』の二人を食べちゃいなさい!」

 

エレナ「…」

 

アンジュ「…」

 

ツカサ「待て…やめろ!!」

 

ツカサ(オレがそう叫ぶと…聞き覚えのある声がした)

 

?「じゃあ…こういうのは、どう?」

 

ドカッ!

 

ドラグブラッカー「…!」

 

ツカサ(その声が聞こえた直後、何かが高速でドラグブラッカーにぶつかってきた)

 

リュウガ「!?」

 

コーカサス「!?」

 

ズシーン…!

 

ツカサ(高速でぶつかってきた勢いで吹き飛ばされたドラグブラッカーは…リュウガとコーカサスを巻き添えにして倒れた)

 

にこ「はぁ!?」

 

ツカサ「一体、何が…!」

 

ツカサ(目を凝らしてよく見てみると、ドラグブラッカーに激突したのは…)

 

凛「今のって…ニャニャ!?」

 

歌舞鬼「…」

 

ツカサ(どうやら歌舞鬼は…誰かに倒された後、投げ飛ばされたようだ)

 

花陽「そんな…いつの間にやられちゃったのぉ!?」

 

?「答えは簡単…彼女が『本物』じゃないからよ」ザッ

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(すると、オレの横には…白いマフラーをなびかせる赤い仮面の戦士がいた)

 

V3(NEXT)「…」

 

絵里「アレは…Version3!」

 

ツカサ「その声は、まさか…!」

 

V3「…久しぶりね」

 

希「ふぅ~ん、どうやら…『HOPPER』が全員揃ったみたいやね?」

 

エレナ「うっ、ツバ…サ?」

 

アンジュ「ツバサ…ちゃん」

 

V3「待たせたわね…エレナ、アンジュ」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「もう私達はスクールアイドルの『A-RISE』じゃない…」

「信じているだろうな…きっとまたスクールアイドルとして歌えると」

「あなた達がもたらしたのは、地獄よ」

「じゃあね…」

第21話『Next Party』

すべてを---超える。

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