V3「待たせたわね…エレナ、アンジュ」
にこ「私達、悪の軍団『ネガμ's(仮)』がこの世界を支配するのよ!」
ツバサ「ショッカーに改造され『輝き』を失った私達は…もう二度と、スクールアイドルに戻る事は出来ない」
エレナ「確かに今の私達は『輝き』を失くした…だが、それならば私達なりの方法でまた取り戻せば良い話だ」
アンジュ「ちゃんとやらなくちゃねぇ…また、私達三人でね」
ツカサ「人は自分自身の意思で生きなければならない…どんな世界でも、その意思は変えない!」
穂乃果『じゃあね、ツバサさん…大好き』
グレイブ「穂乃果さん…私も、大好きよ」
ゼイビアックス「フハハハ…」
ディケイド「来るなら来い!全てを破壊してやる…!!」
こころ「あなたたちがこうさかゆきほさんとあやせありささんですか?」
ここあ「おねがい、ここあたちといっしょに…こたろうをさがして!」
キバーラ「彼はもう一人の『矢澤コタロウ』…あなた達の世界にいる虎太郎くんとは別の世界の『矢澤虎太郎』よ」
第22話『ツカサ』
(それは…初めて彼女達と出逢った日の事だった)
花陽「あぁーっ!!」
凛「どうしたの!?」
花陽「あれ…!」スッ
?「…」スタスタ
穂乃果「にこちゃん!?」
海未「でも…それにしてはいつもより少し背が高くないですか!?」
真姫「そうね、髪も短いし…」
凛「気のせいだよ!にこちゃんは三年生の割に小さ…大きいニャー!?」
ことり「といっても、にこちゃんより少し大きいくらいだけどね…」アハハ
?「…ん?」クルッ
八人「!」
?「…」ジーッ
凛「あぁ、いや…」
?「アンタ達…もしかして『μ's』か?」
絵里「えっ、知ってるの?」
?「知ってるも何も…オレは、矢澤にこの弟だ」
八人「…ええーっ!?」
花陽「男の子だったのぉ!?」
海未「確かに初めて声を聞いた時、にこの声より若干低いような気はしていましたが…」
希「にこっちに弟がいたなんて…」
真姫「しかも…ちょっと生意気」
凛「まるで、にこちゃんが男の子になったみたいニャ…!」
?「アンタ達の話は姉ちゃんからよく聞いている…姉ちゃんのバックダンサー、ってな」
八人「…」
絵里「バック…」
希「ダンサー?」
真姫「誰がよ…?」
?「姉ちゃんからは…アンタ達が『スーパーアイドル・矢澤にこ』のバックダンサー『μ's』だといつも聞かされている」
八人「はぁ!?」
?「やはりな…アンタ達のその反応を見ると、かなり事実と異なるみたいだな?」
八人「…」
?「そうじゃないかと思ってはいたが…全く、仕方ないな」ハァ
穂乃果「え、えーっと…?」
絵里「あの…その話、詳しく聞かせてくれない?」
?「そうだな…ついてこい」スタスタ
穂乃果「ちょっ…ちょっと~!?」ダッ
穂乃果「…ここが、にこちゃんの家?」
?「賃貸だけどな」
真姫「それ、別に言う必要無いじゃないのよ…?」
?「そうか…アンタみたいなお嬢様でも賃貸という言葉は知ってるんだな」
真姫「どういう意味よ、それ!?」
希「まあまあ…真姫ちゃん、落ち着いて」
穂乃果「あはははは…」
花陽「それにしても、どうして最初はにこちゃんの話を信じちゃってたの?」
海未「『μ's』の写真や動画を見れば…私達がバックダンサーで無い事くらい、すぐに分かるはずなのに」
ことり「ねぇ…お姉ちゃんが歌ってるとことか、見たことある?」
?「もちろん…これまでのアンタ達の活動は、全て見てきた」
?「例えば、高坂穂乃果…」
穂乃果「へっ…私?」
?「アンタは人を惹きつける魅力…カリスマ性とも言えるものを持っている」
穂乃果「い、いやぁそんな…」エヘヘ
?「次に…絢瀬絵里」
絵里「?」
?「アンタは常にロシアのバレエコンクールの上位だった経験を活かして…『μ's』のパフォーマンスを飛躍的に向上させた功労者だ」
絵里「ハラショー…君、よく知ってるのね?」
真姫「…功労者である事は否定しないのね」
?「それに、西木野真姫の類い稀な作曲の才能は素晴らしく…」
真姫「うぇえ!?///」
?「それは…園田海未の素直でセンスのある詞ととてもマッチしている」
海未「センスがある…そんな事、初めて言われました」
?「星空凛のバネと運動神経は…スクールアイドルとしては全国の中で比較しても、相当高いレベルを誇っている」
凛「えっ、そうだったの?」
?「小泉花陽の優しい歌声は…個性の強いメンバーの歌に見事な調和を与え、絶妙なバランスを保っている」
花陽「ええっ!?ぜ、全然そんなことないよ…?」
?「『μ's』を牽引する穂乃果の対の存在となるよう…メンバーを優しく包み込む包容力を持ちながらも、時には無邪気な一面を見せる東條希」
希「…」フフッ
?「そして、甘い声と仕草でアキバ中の人々を魅了させた伝説のカリスマメイド…ミナリンスキー」
ことり「!」
?「いや、元と言ったほうが良いか?…南ことり」
ことり「うぅ…」
?「もちろん、こうやってアンタ達それぞれについてもちゃんと調べているさ…ネットカフェでだけどな」
穂乃果「えっ…何でネットカフェなの?」
?「それは…姉ちゃんが話をするだけして、動画や写真を頑なに見せようとしなかったからだ」
絵里「にこったら…そこまでして、君に本当の事を知られたくなかったのね?」
?「ああ、だから最初の頃は素直に話を聞いていたんだが…段々と話の辻褄が合わなくなってきたからオレも流石におかしいと思ってな」
穂乃果「何か、涙ぐましいというか…」
真姫「情けないというか…」
海未「詰めが甘いというか…」
?「ここだ…合鍵持ってないから、インターホン鳴らすぞ」ピンポーン
ハーイ!
ガチャ…
にこ「あら、コタr…!?」
絵里「こんにちは…私、あなたのバックダンサーを務めさせていただいている絢瀬絵里と申します」
にこ「ぬぁっ…アンタ達!」
穂乃果「にこちゃん!」
にこ「何でアンタ達が来るのよ?」
?「ただいま、姉ちゃん…バックダンサーの皆が姉ちゃんと話をしたいそうだぞ?」
にこ「!…そ、そう」アハハ
海未「申し訳ありません…すぐに済みますので、よろしいでしょうか?」ニコッ
海未「…」スンッ
にこ「え、えっとぉ…?」
真姫「にこちゃん、バックダンサーってどういう事よ!?」
凛「説明するニャー!!」
にこ「な…何のことかわからないにこー♪」
にこ「じゃ!」ギィッ…
海未「あっ、ドアを閉めて鍵をかけるつもりですよ!?」
?「ふんっ!」ゴッ!!
にこ「なっ…!?」
絵里「それを…彼が右足の爪先で止めたわ!!」
ことり「な、何で海未ちゃんも絵里ちゃんも実況してるの…?」
希「スゴいなぁ、今の…ウチもいつかやってみようかな?」
?「…おい、姉ちゃん」
にこ「は、はいっ!?」
?「どうしたんだよ、そんなに誤魔化して…?」
にこ「違うわよ!?ただ…ち、ちょっとね」
?「ほう…だが弟のオレまで締め出そうとするとは、どうやら余程聞かれたくない事があるようだな?」ゴゴゴ
凛「ま、まるで悪役みたいだニャ…」
?「さあ…本当の事を教えてもらおうか、コ・ア・ク・マ・さん?」ニヤリ
にこ「あ、あはははは…」ピクピク
にこ「たいへん申し訳ありませんっ!」ガバッ
にこ「…えっ、夢?」キョロキョロ
にこ「何なのよ、もう…」ハァ
ガラッ!
にこ「ひぃっ!?」
?「…おはよう、姉ちゃん」
にこ「おはよう…何、いきなりどうしたのよ?」
?「出来たぞ…」
にこ「はぁ?…何が出来たのよ」
?「…こっちだ」スタスタ
にこ「えっ…!?ちょっとどこに行くのよ、アンタ!」ダッ
?「…」ガラッ
にこ「って、寒っ!?何でいきなりベランダの窓開けるのよ…?」
?「…『μ's』」
にこ「!…もしかしてこの雪だるま、私達?」
?「ああ…今日のライブ、見に行くから」
にこ「アンタ…」
?「途中でヘマしないように…オレが近くで応援してやる」
にこ「!…ふふっ、見てなさい?」
にこ「私がセンターで、思いっきり歌うから!」
?「…はぁ?」
にこ「何でそんなビミョーな顔してるのよ!?」
?「いや、また嘘ついてんのかと…」
にこ「私がいつ嘘ついたって言うのよ!?」
?「…バックダンサー」
にこ「あっ!…あ、あれは言葉のアヤみたいなものよ」ゴホン
?「あの時はとてもそんな風には聞こえなかったけどな…」
にこ「私がそうと言ったらそうなの!」
にこ「とにかく今日はにこもセンターよ、だって『μ's』は…全員がセンターだから!」
?「!…そうか、なら大丈夫だな」フフッ
にこ「そういえば…今日はオトノキの合格発表でしょ、まだ家にいて大丈夫なの?」
?「ああ、大丈夫だ」
にこ「そう…朝ご飯は?」
?「もちろん、もう作ってある…姉ちゃんの分もな」
にこ「いつも悪いわね…じゃあ、一緒に食べましょう?」
?「ああ…ん?」チラッ
?「晴れてきたか…この天気なら、雪だるまもすぐに溶けるかもな」
?「…いや、それでいいか」
?「むしろ…良いのかもな、それで」
にこ「コタロウ、もう窓閉めなさい!早く食べないと冷めちゃうわよ!?」
コタロウ「ああ、分かってる…すぐ行く」パタン
(…スクールアイドル)
(それは学校の在校生達だけで結成され生み出された高校生のアイドル)
(スクールアイドルの人気は留まるところを知らず、世界中へと広まっていた)
(その時、出逢ったのは矢澤にこの弟『コタロウ』と九人の少女『μ's』)
(今、秘められていた本当の物語が…幕を開ける)
~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~
コタロウ「…いただきます」
にこ「いただきます」
(オレ達はご飯や味噌汁、焼鮭に沢庵…納豆という献立の朝食を食べ始めた)
コタロウ「…」モグモグ
にこ「う~ん…」ズズッ
コタロウ「…どうしたんだ?」
にこ「悔しいけど、アンタが作ったこのお味噌汁…にこやママが作ったお味噌汁に負けないくらい美味しいわ」
コタロウ「!…そうか、そりゃどうも」
にこ「さすが私の弟ね…それにしても、ついこないだまでずっと私がご飯作ってたのにいつの間にこんなに料理上手になったのよ?」
コタロウ「それは…何でもない」
にこ「はぁ?何よ、それ…気になるじゃない」
コタロウ「別にどうでもいいだろ、そんな事…」
にこ「どうでもよくないから聞いてるんじゃないのよ…それにアンタ、前から思ってたけど姉の私に向かって生意気じゃない?」
コタロウ「そうか?…だとしたら、きっと姉ちゃんに似てしまったんだろうな」モグモグ
にこ「何ですってぇ!?」ガタッ
コタロウ「朝から騒々しいな…」
にこ「アンタのせいじゃない!…っていうか、今のどういう意味よ!?」
コタロウ「それより、そこ…ついてるぞ」
(オレは姉ちゃんの右の頬にご飯粒がついている事を指摘した)
にこ「えっ?…あっ」
コタロウ「…」モグモグ
(今ではこうして姉ちゃんと普通に話しているが…それは穂乃果達『μ's』の協力があったからだった)
(初めて穂乃果達八人に出逢ってから数日が経ったある日…オレは少し俯きながら、中学校から下校していた)
コタロウ『…』スタスタ
(姉ちゃんが事実を話してくれなかった事に憤りを感じていたオレは…あの日から、ずっと姉ちゃんと話せずにいたのだった)
コタロウ『どうして…本当の事を話してくれなかったんだよ』ハァ
?『コタロウくん!』
コタロウ『?』
(声に気付いたオレが顔を上げると…そこには穂乃果と絵里がいた)
穂乃果『こんにちは!』
コタロウ『アンタ達…オレに何の用だ?』
穂乃果『お母さんのこと、にこちゃんから聞いたよ…未確認に襲われてからずっと病院で眠ったままなんだって』
コタロウ『!』
(数ヶ月前…刑事だった母さんは、城南大学の考古学研究室が発掘中だった長野県の九郎ヶ岳遺跡で起きた事件を調査していた)
(そんな中、母さん達警察は事件と同時期に現れ始めた未確認生命体の犯行によるものと推測し…奴らの拠点を捜索していた)
(その拠点を一人で見つけ出し、応援を待っていた所を奴らに気付かれてしまい…襲われた母さんは意識不明の状態で病院に運ばれた)
(今も…母さんは病院のベッドで、眠ったままだ)
コタロウ『…確かにそうだが、それがどうした?』
絵里『皆で君とにこの事をずっと心配してたの…あれから、にことはちゃんとお話してる?』
コタロウ『同情のつもりか?…そんな事、アンタ達には関係ないだろ!?』
穂乃果『関係あるよ、だって私達にも…妹がいたから』
コタロウ『…えっ?』
穂乃果『コタロウくん、あかつき号って…知ってる?』
コタロウ『…数年前に生存者一名を除いた乗客全員が行方不明の事故に遭ったという、あの旅客船の事か?』
穂乃果『うん…実はあの事故で生き残ったのって、私のことなの』
コタロウ『!』
穂乃果『お父さんもお母さんも妹も乗ってたんだけど…みんな、どこに行っちゃったのか分からなくなっちゃって』
穂乃果『船に乗っていた時のことも覚えてなくって…何で私だけ助かったのって、ずっと思ってて落ち込んでいた時期があったの』
コタロウ『…』
絵里『…私も同じ時期にね、シブヤ隕石の事故で妹と離ればなれになってしまったの』
コタロウ『それって…飛来してきた謎の隕石がシブヤ一帯を壊滅させ多くの行方不明者を出したと言われている、あの事故か?』
絵里『ええ、私は何とか自力で助かったんだけど…妹は行方知れずのままで捜索は打ち切られてしまった』
絵里『そしてシブヤの一部の区域は、未だにエリアXとして封鎖されてる…』
絵里『私も穂乃果と同じように…どうして私だけ助かったのかって、ずっと心を閉ざしてしまっていたわ』
コタロウ『…アンタ達』
絵里『でもね、そんな時…私達はオトノキが廃校になる事を知ったの』
穂乃果『だから、このままじゃいけない…いつか妹達が帰ってくるまで私達が絶対にオトノキを守らなきゃって思ったの』
穂乃果『それから私は、スクールアイドルに興味を持って…スクールアイドル《μ's》を始めた』
穂乃果『そして…私達はにこちゃんに出逢った』
コタロウ『…姉ちゃんに?』
絵里『ええ、例え一人だけになってもアイドル研究部の活動を続けるその姿を見て…私達に何か出来る事は無いか考えていたの』
穂乃果『それでね…私、思ったんだ』
穂乃果『にこちゃんと一緒に、この九人でスクールアイドルを…《μ's》をやりたいって』
穂乃果『妹の雪穂が入りたかった、オトノキを守るために…って!』
コタロウ『…アンタ達の気持ちは分かったが、結局はオレに何が言いたいんだ?』
穂乃果『にこちゃんはね…元気のなかった弟のコタロウくんに喜んでほしい、笑顔になってほしいと思って嘘をついてたんだよ』
穂乃果『本当はお母さんが眠ったままで、にこちゃんだって寂しいはずなのに…』
コタロウ『!』
絵里『私達にも妹がいたから…にこがお姉さんとして、あなたを不安にさせたくない気持ちが分かるの』
穂乃果『だから、私達も…コタロウくんには笑顔でいてほしいんだ』
穂乃果『もちろん…にこちゃんにもねっ!』
コタロウ『…悪いが、もうオレの事は放っておいてくれないか?』
絵里『コタロウくん…』
コタロウ『姉ちゃんやアンタ達の気持ちは理解した…だが、それでもオレは姉ちゃんに何て話し掛ければ良いのか分からないんだ』
コタロウ『姉ちゃんに怒ってしまったオレは…今更、何を言えば良い?』
穂乃果『…何て言えばいいのか分からないなら、コタロウくんから無理に話しかけなくても良いんじゃないかな?』
絵里『えっ…穂乃果?』
コタロウ『はぁ?』
穂乃果『だって、私達もいるんだよ!』
穂乃果『誰かが立ち止まれば、誰かが引っ張る!誰かが疲れたら、誰かが背中を押す!』
穂乃果『みんな少しずつ立ち止まったり、少しずつ迷ったりして…それでも進んでるんだよ!』
穂乃果『だからきっと、また…みんなで笑えるよ!』
コタロウ『…!』
穂乃果『良い方法があるんだ…絵里ちゃん、あれお願い!』
絵里『なるほど、そういう事ね…分かったわ!』
コタロウ『?…一体、何をしようt』
絵里『ちょっとくすぐったいわよ…亜里沙直伝、笑いのツボ!』ドスッ!
(突然、絵里に首の辺りを突かれたオレは…何故か笑いが止まらなくなってしまった)
コタロウ『!?…あはは、あっはっはっは!』
穂乃果『よーし、行っくよ~!』グイッ
絵里『ふふっ…』
コタロウ『ちょっ、やめ…あっはっはっは!』
(穂乃果に無理やり手を引っ張られ、絵里に背中を押されたオレは…とある場所へと連れて行かれた)
穂乃果『にこちゃん!』
にこ『あっ…練習なら出られないっt』
コタロウ『…』ハァ
にこ『ちょっ…何で連れてきてんのよ!?』
穂乃果『だって、コタロウくんに見てもらいたいんだよ…にこちゃんのステージ!』
にこ『ス、ステージ…?』
(それからオレ達はオトノキの校内に入り…オレはステージが建てられた屋上で待たされていた)
コタロウ『おい、ステージってどういう事なんだ…?』
穂乃果『いいからいいから…ほらっ!』
コタロウ『はぁ?…!』
(ステージには…衣装を着た姉ちゃんが立っていた)
コタロウ『ア、アイドル…?』ボソッ
にこ『…コタロウ、歌う前に話があるの」
コタロウ『え?』
にこ『今まで嘘をついてしまってごめんなさい…スーパーアイドルにこは、今日でおしまいにするわ!』
コタロウ『!?』
にこ『…』
コタロウ『じゃあ…夢だったアイドルをやめるつもりなのか?』
にこ『ううん!やめないよ…』
にこ『これからは…ここにいる《μ's》のメンバーとアイドルをやっていくの!』
コタロウ『…今までバックダンサーだって思っていたんじゃなかったのか?』
にこ『…うん、そう思ってた』
にこ『けど…違ったの!これからは、もっと新しい自分に変わっていきたい』
にこ『この九人でいられる時が、一番輝けるの!』
にこ『一人でいる時よりも…ずっと、ずっと』
コタロウ『…』
にこ『今の私の夢は宇宙ナンバーワンアイドルにこちゃんとして、宇宙ナンバーワンユニット《μ's》と一緒に…より輝いていく事!』
にこ『それが、一番大切な夢…私のやりたい事なの!』
コタロウ『!…姉ちゃん』
にこ『だから聞いて?これは私が一人で歌う、最後の曲…』
(その時、ステージにあった風船が宙を舞い…姉ちゃんはいつもの笑顔を見せながら唄った)
にこ『にっこにっこにー!!』
(それはまさに…姉ちゃんが夢見ていた、理想のアイドルと言える姿だった)
(こうして、姉ちゃんの本当の気持ちと決意を知ったオレは…再び姉ちゃんと接する事が出来るようになったのだった)
(朝食を食べ終えたオレは…中学の制服に着替え、家を出ようとする)
コタロウ「…じゃあ、行ってくる」
にこ「本当に一人で大丈夫なの?」
コタロウ「大丈夫だ、心配ない」
にこ「そう…分かったわ、行ってらっしゃい」
コタロウ「ああ」
にこ「あっ…それと、未確認には気を付けるのよ?」
コタロウ「…分かった」ビシッ
(オレは姉ちゃんにサムズアップをして…自宅のマンションを出た)
(神田明神の境内に入ると…誰かが後ろからオレの名前を呼ぶ声が聞こえた)
コタロー!
コタロウ「?」
?「はぁはぁ…おはよう!」
コタロウ「樹里か…おはよう、今日も元気そうだな」
樹里「うん!コタロウもこれからお参りするの?」
コタロウ「ああ、そんな所だ」
樹里「それなら…僕と一緒にお参りしよう!」
(彼の名前は『絢瀬
チャリン…カランカランカラン!
コタロウ「…」ペコッ
樹里「…」ペコッ
パンパン!
コタロウ「…」ペコッ
樹里「ふぅ…じゃあ、行こうか!」
コタロウ「…そうだな」
(お参りを終えたオレ達は神田明神を後にして…オトノキへと向かった)
樹里「緊張するね~…僕達、ちゃんと受かってるかなぁ?」
コタロウ「さあ…どうだろうな」
樹里「あっ!…そういえば、絵里姉さん達のライブってお昼からだったよね?」
コタロウ「ああ」
樹里「僕は兄さんと一緒に見に行こうと思うんだけど…コタロウはどうするの?」
コタロウ「一応、色々な所を一人で回ってから行こうかと思う」
樹里「そっか…早くライブの時間にならないかなぁ」ワクワク
コタロウ「…そういえばテレビで見たぞ、この前のフィギュアスケートのロシア大会」
樹里「えっ…見てくれてたの!?」
コタロウ「ああ、初優勝だったそうだな?」
樹里「あっ、うん…ショートもフリーもスゴく調子が良かったんだ!」
コタロウ「そうか…おめでとう」
樹里「ありがとう!コタロウが僕の優勝を祝ってくれるなんて、嬉しいなぁ…」フフッ
コタロウ「何でだよ…オレだってそれくらいは言うぞ?」
樹里「じゃあ…もし次のフランス大会も優勝したら、この前行ったあのお店のハンバーガー奢ってくれる?」
コタロウ「別に構わないが、あそこはチェーン店じゃないか…どうしてまたそこのハンバーガーが食べたいんだ?」
樹里「日本に住んで初めて食べたあのハンバーガーの味が忘れられないんだ…だから、また食べに行きたいなって」
コタロウ「なるほどな…それだったら大会関係なく、近いうちに一緒に行くか?」
樹里「本当!?」
コタロウ「わざわざそんな嘘を言う訳が無いだろ」
樹里「楽しみだなぁ…絶対にいつか行こうね?」
コタロウ「ああ、いつかな」
(それからオレ達は…秋葉原と御茶ノ水と神保町の間に位置している国立音ノ木坂学院にやってきた)
コタロウ「…いよいよ、だな」
樹里「うん…!」
(国立音ノ木坂学院…通称『オトノキ』はかつて生徒数の減少の一途を辿り、廃校の危機に陥っていた)
(もともと女子校だったオトノキは、七年前に共学化した事で一時的に生徒数は増加したが…三年前から再び入学希望者が減少した)
(それから今年度に入学した一年生のクラスは一クラスとなってしまい…ついにはオトノキの生徒に廃校が知らされる事態となった)
(その廃校の危機を救ったのが…スクールアイドル『μ's』だ)
(オトノキの女子生徒九人がスクールアイドルとして様々な活動をしてきた功績によって…入学希望者は増加し、廃校は撤回された)
(姉ちゃんが通っていたこのオトノキを受けられるようになったのは…他でもない、姉ちゃんや穂乃果達『μ's』のおかげだ)
樹里「コタロウ、あれ!」
コタロウ「!…来たか」
(すると…合格者の受験番号が掲示板で発表された)
コタロウ「112、113…」
樹里「僕の番号、あった…やった!ハラショー!!」
コタロウ「…!」
樹里「良かったぁ~…コタロウはどうだった?」
コタロウ「それが、受験番号が『118』なんだが…」
樹里「え…その顔、まさか!?」
コタロウ「ああ…あった」
樹里「あったの!?…もう、ビックリするから紛らわしい顔しないでよ!」
コタロウ「悪い悪い…」
樹里「でも、やったよ…これで音ノ木坂だよ!」
樹里「僕達、音ノ木坂の生徒だよ!!」
コタロウ「ああ…『μ's』にも、感謝しなくちゃな」
樹里「うん、そうだね!」
(その直後に教職員から説明を受け、学生証を貰ったオレ達は…オトノキを出ようとしていた)
コタロウ「…ん?」
(すると正門には…受験生達にチラシを配っている金髪の少年が立っていた)
?「『μ's』のエリーチカこと絢瀬絵里の実家の味で有名なロシア料理店『赤いサラファン』だ…ぜひ来てくれ!」
樹里「あっ…斗里兄さん!?」
?「おお!樹里とコタロウじゃないか…今から帰るという事は二人共、オトノキに合格したんだな?」
(彼は『絢瀬
(休みの日にオレが樹里の家であるロシア料理店に行くと…大抵は斗里が店員をやっている為、既にオレの顔は覚えられているのだ)
樹里「うん!」
斗里「ハラショー…それは良かった」
コタロウ「それはそうと、アンタはこんな所で何をしていたんだ?」
斗里「実は今日、おばあさまにここでお店を宣伝するように頼まれてな…」
コタロウ「店の宣伝って…ちゃんと学校の許可はとったのか?」
斗里「問題ない…既に南理事長からの許可は貰っている、彼女もお店の常連だしな」
樹里「なるほど、さすが兄さん!」
斗里「それほどでもない…しかし本当なら今頃、妹の亜里沙も樹里と一緒にこのオトノキを受けていただろうにな」
樹里「あっ…うん」
斗里「もし亜里沙がここにいれば、コタロウに紹介して…ボーイフレンドになってもらおうと思っていたんたが」
コタロウ「…はぁ?」
樹里「そうだね…コタロウだったら、きっと亜里沙に相応しいボーイフレンドになってたと思うよ」
コタロウ「いや、だから何を勝手に…」
(斗里はオレをスルーしたまま、話を続けようとする)
斗里「あの日、俺が止めていれば…二人でシブヤに行く事も無かっただろうに」
斗里「俺が止めなかったせいで、亜里沙は…」
樹里「…亜里沙」シュン
コタロウ「!…おい、斗里」
斗里「…!」ハッ
斗里「ごほんっ…まあ、今の自分達に出来るのは愛する我が妹の帰りをただひたすら信じて待つ事ぐらいだけどな」
樹里「兄さん…うん、そうだね!」
斗里「さて、そろそろ配ったチラシでお客さんも入ってきている事だろうし…お店に戻らないとな」
樹里「あっ…じゃあ、僕も手伝うよ!」
斗里「本当か?…ありがとう、樹里」
樹里「それじゃ、僕は兄さんと一緒におばあさまのお店に行くね?」
コタロウ「分かった…じゃあ、また後でな」
樹里「うん、またここで会おうね!」
斗里「ダスビダーニャ、コタロウ!」
(オトノキの正門を出て樹里や斗里と別れたオレは…真っ先にとある場所へと向かった)
(『西木野総合病院』の病棟に入ったオレは…母さんが入院している病室を訪れた)
コンコン…ガラッ
(ノックをしてから、ゆっくりドアを開けたオレは…ベッドで眠っている母さんに話しかけた)
コタロウ「…どうだ、具合は?」
にこの母「…」
コタロウ「オレ…オトノキに合格したんだ」
コタロウ「これでオレも姉ちゃんと同じ学校に行けるな…まあ、姉ちゃんはもうすぐ卒業だから一緒に通う事は無いんだがな」
にこの母「…」
コタロウ「それはそうと『μ's』のライブ、今日の昼からだぞ…本当に行かなくて大丈夫なのか?」
コタロウ「姉ちゃんがアイドルやるの楽しみにしてたんだろ…なのに、ここで寝たままで良いのか?」
コタロウ「…何とか言ってくれよ、母さん」
にこの母「…」
(オレがどれだけ話し掛けても…母さんが目を開けて返事をする事は無かった)
(もし母さんと話が出来る状態であれば…きっと、母さんはオレの高校合格をオレ以上に喜んでくれていた事だろう)
(そして…姉ちゃんがスクールアイドル『μ's』のメンバーとして、仲間達と共にライブをする事を何より楽しみにしていただろう)
コタロウ「あとな…今朝、オレの作った味噌汁が美味しいって姉ちゃんが褒めてくれたんだ」
コタロウ「スクールアイドルで頑張ってる姉ちゃんの力になりたいって思ってから…色々、勉強してたんだ」
コタロウ「まあ、姉ちゃんの部屋から母さんの料理のレシピが書いてあるノートを勝手に借りて見てただけってのもあるんだがな…」
にこの母「…」
コタロウ「いつか…母さんにも、オレが作った料理を食べてほしい」
コタロウ「だから…早く目を覚ましてくれよ、母さん」
にこの母「…」
コタロウ「…っ」ググッ
(母さんの笑顔を見られない事が、何よりも悔しかったオレは…自分の拳を強く握りしめていた)
(病院を出たオレは…芳林公園へとやってきた)
コタロウ「いたな…おーい!」
(オレは遊具で遊んでいる女の子と男の子に向かって声をかけた)
女の子「あっ、コタロウせんせい!」ダッ
男の子「…!」ダッ
コタロウ「よう…ひめり、蒼矢」
(この子達は『南 ひめり』と『園田
コタロウ「元気か?」ナデナデ
蒼矢「!」コクコク
コタロウ「そうか…それなら何よりだ」
ひめり「それにしてもコタロウ先生、きょうもカッコいいねぇ~…」
コタロウ「そうか?…まあ、それほどでもあるかな」フフン
ひめり「じゃあ…ひめりとつきあってください!」
コタロウ「イヤだ」キッパリ
ひめり「そんなぁ!?…おねがぁい!」
コタロウ「そんな脳が蕩けるような声でお願いされてもイヤなもんはイヤだ」
ひめり「どうしてぇ…?」
コタロウ「今のオレが十五歳で、ひめりが五歳…十歳も離れてるんだぞ?」
ひめり「それは…あいのちからでなんとかっ!」
コタロウ「無理だろ…そういう言葉はせめて、自分の姉ちゃん達と同じぐらいの歳になってから言え」
ひめり「でも、ひめりのほうからはやくてをうたないと…ことりおねえちゃんや『μ's』のみんなにとられるかも!」
コタロウ「『μ's』が?…いや、ないない」
ひめり「わからないよぉ~…とくに、にこちゃんとか!」
コタロウ「オレの姉ちゃんは一番ないから安心しろ…というか、ひめりには蒼矢がいるだろ?」
蒼矢「…」ボーッ
ひめり「そうやくん?…そんな、あるわけないよぉ~!」
コタロウ「何で?」
ひめり「だってぇ…いつもむくちだし、たよりないんだもん」
蒼矢「…?」
コタロウ「だが、そう思っているのは…ひめりだけかもしれないぞ?」
ひめり「へっ?」
コタロウ「蒼矢はいざという時に頼りになる男だ…何故なら蒼矢はあの園田海未の弟なんだからな、オレには分かる」
ひめり「そうだけどぉ…うみさんみたいにたのもしくないし」
コタロウ「普段はそう見えるだけだ…でもな、蒼矢の名前は海未がつけたんだ」
ひめり「…うみさんが?」
コタロウ「ああ…海未が『真っ直ぐで折れない芯を持った強い男の子になりますように』という理由でつけたんだ」
コタロウ「蒼矢自身もそれを知っている…弓道をしている海未の姿も見てきている訳だしな」
ひめり「…」チラッ
蒼矢「…」ボーッ
ひめり「ほんとかなぁ…?」
コタロウ「そういえば…二人も『μ's』のライブ、見に行くのか?」
ひめり「うん、かおりおねえちゃんといっしょにいくよ!」
コタロウ「そうか…かおり先生はどこにいるんだ?」
ひめり「あそこだよ!」
コタロウ「?」クルッ
(ひめりが指を差す方向には…ベンチに座る女性が手を振りながらオレの名前を呼んでいた)
?「コタロウく~ん!」フリフリ
(彼女は『南 かおり』…オレの通う中学で一時期、教育実習生として彼女が赴任してきた時に生徒のオレと知り合いになった)
(最近までカフェでバイトをしながら勉強に励んでいた彼女は…めでたく教員免許を取得し、来年度からオトノキの養護教諭として配属される事になった)
コタロウ「よう…かおり先生」
かおり「久しぶりだね!…どうだった、結果は?」
コタロウ「ああ、オレも樹里も合格した」
かおり「二人ともさすがだね…おめでとう!」
コタロウ「どうも」
かおり「じゃあ、私が保健室の先生としてコタロウくんと樹里くんのケガの手当てとかしちゃうんだ…緊張するなぁ」ドキドキ
コタロウ「どうしてオレと樹里限定なんだよ…他の生徒の手当てもちゃんとしてやれよ」
かおり「あっ…そっかぁ、それもそうだね!」
コタロウ「…アンタ、本当に大丈夫なのか?」
かおり「大丈夫だよ~…こう見えて、ことちゃんが小さい頃にお裁縫でケガしちゃった時は私がいつも手当てしてたんだよぉ?」エッヘン
コタロウ「別に威張る程の事ではないだろ…まあ、自信があるなら良いけどな」
かおり「うふふ…だから、コタロウくんももし学校でケガしたりとか不安な事があったらいつでも保健室に来てね?」
かおり「私がちゃんと治療したり…話を聞いたりするから!」
コタロウ「そうだな…もしそうなったら、な」
かおり「ふふっ、それにしても『μ's』のライブ…楽しみだなぁ~」
コタロウ「そうか…かおり先生は『μ's』のライブを生で見るのは初めてだったな?」
かおり「うん、教員免許取るまで色々と忙しかったから…ことちゃん達のライブになかなか行けなかったの」
かおり「ことちゃん達が『μ's』をやってくれたおかげで、私も保健室の先生としてまたオトノキに戻る事が出来た訳だし…」
かおり「だから、今回こそは私も近くでひめちゃん達と一緒に…『μ's』の応援をしたいの!」
コタロウ「そうか…アンタが来るって知ったら、きっとことりもオレの姉ちゃんも穂乃果達も喜んでくれるだろうな」フフッ
かおり「そうかな…それなら、良いんだけど」
コタロウ「間違いない、オレが保証する」
かおり「えへへ~…あれ、もしかして私がコタロウくんに励まされちゃってる?」
コタロウ「どうだかな…じゃあ、オレは他に寄る所があるから、そろそろ行くぞ?」
かおり「うん…また後でね!」フリフリ
ひめり「コタロウせんせい、またね~!」ブンブン
蒼矢「…!」ブンブン
コタロウ「おう、また後でな」フフッ
(公園を後にしたオレは…ある場所へと向かって再び歩き出した)
(UTXビルの前にやってきたオレは…ビルから出てきたボーイッシュな格好をした女性に話しかけた)
コタロウ「よう、慧」
女性「おっ…コタロウじゃないか!?」
(彼女は『星空
(慧の身軽でアクロバティックなダンスをカッコ良いと思った当時のオレは…慧からよくダンスを教わっていた)
(姉ちゃんは『にこみたいな可愛いアイドルにはあんな激しいダンスは似合わないニコ~』とか言って、すぐに通うのを止めてしまったが…)
慧「それで…受験、どうだった?」
コタロウ「ああ、合格した」
慧「!…そうか、おめでとう」
コタロウ「どうも…今からオトノキに行くのか?」
慧「うん、実はさっきまで…このUTX高校でプロアイドルに転向するスクールアイドルの三人に振付を教えていた所だったんだ」
慧「これから彼女達も連れて…『μ's』のライブを見に行くつもりだよ!」
コタロウ「なるほどな、それを知った凛が緊張しないと良いが…」
慧「凛ならきっと大丈夫だよ…私の自慢の妹だからね!」
コタロウ「じゃあ、そのくらいじゃ緊張しないって事か?」
慧「もちろん!」
コタロウ「そうか…じゃあ、オレはここで」
慧「うん、またオトノキで会おうね!」
コタロウ「ああ」スタスタ
メイド服の女性「スクールアイドル専門雑誌『CROCUS』の特別号でーす!」ピラッ
(秋葉原の電気街にやってきたオレは…メイド服を着た女性達が配布していた一枚の小さな冊子を受け取った)
コタロウ「『CROCUS』か…ん?」
(その冊子の内容は…この後行われるμ'sのライブの宣伝だった)
?「『μ's』のライブもありまーす、よろしくにゃ~!」ピラッ
コタロウ「!…もしかして」
(オレはその中でネコ耳のカチューシャを着けながら冊子を配るロングヘアーの女性に話しかけた)
コタロウ「萌…相変わらずだな、その語尾」
?「にゃっ?…あっ、コタロウくん!」
(彼女は『星空
(地元のダンス大会で優勝した小学生のオレを…当時、同じ小学校で新聞部員をしていた萌が取材してきた事が出会いのきっかけだ)
コタロウ「よう…さっき、UTXで慧に会ったぞ」
萌「そうだったの!?最近、お仕事で忙しかったからなかなかお姉ちゃんや凛ちゃんとも会えてないんだよね~…」
コタロウ「じゃあ…この後の『μ's』のライブにも行かないのか?」
萌「いやいや…ライブには取材に行くよ?凛ちゃん達の可愛い姿は萌がちゃんとレポートしたいからね!」
萌「どうやらライバル誌の『HSI』もライブの取材に来るみたいだし…負けてられないにゃ!」
コタロウ「なるほどな、ところで…そのメイド服は『μ's』のライブと何の関係があるんだ?」
萌「う~ん…それはやっぱり、ここで『μ's』がメイド服を着てライブをしたかr」
コタロウ「嘘だな…アンタが単にメイド服を着たかっただけだろ?」
萌「何で分かったの!?」
コタロウ「…そんな事だろうと思ったよ」ハァ
萌「でも、可愛くないかにゃ?…ネコちゃん風メイド!」
コタロウ「別に…一度も思った事無いが」
萌「だよねぇ…憧れるにゃ~」
コタロウ「…聞いてないだろ、人の話」
萌「萌、知ってるよ!コタロウくんはネコ耳よりウサ耳の方が好きなんだよね~?」
コタロウ「勝手に人の好みをでっち上げるな、オレにそんな嗜好は無い」
萌「あはは…冗談だよ、冗談!」
コタロウ「じゃあ、オレは他に寄る場所があるからまた後で…萌が書いた記事、楽しみにしてるぞ?」スタスタ
萌「うん、ありがとねー!バイバ~イ!!」フリフリ
(萌と別れたオレは…秋葉原の電気街を抜けて歩いていった)
(昌平橋の方へ歩いて行くと…一人の青年が目を閉じた状態でヴァイオリンを奏で、聴いていた人々を魅了させていた)
コタロウ「この綺麗な音色は…やっぱりか」
~♪
(演奏が終わり青年がゆっくりと目を開けると…人々は皆、拍手していた)
パチパチパチ
青年「!?…あ、ありがとうございます」ペコリ
(青年は聴衆がいた事に気付いていなかったのか、軽くお辞儀をするとヴァイオリンをケースに仕舞い…そそくさとその場を後にした)
青年「早く帰らなきゃ…」スタスタ
コタロウ「待て」グイッ
(オレは青年が着ていた上着の裾を引っ張った)
青年「わあっ!?」
コタロウ「せっかくの才能を持っているんだ…もっと自信持っても良いんじゃないのか、葉太兄」
青年「!…コタロウくん?」
(彼は『小泉
(一年前、家の郵便受けに入っていたヴァイオリン体験教室のチラシに興味を持ち…彼の工房を訪ねたのが葉太兄と出会ったきっかけだ)
葉太「久しぶりだね…元気にしてた?」
コタロウ「毎日三食しっかり食べているからな、それよりアンタ…また痩せたんじゃないのか?」
葉太「うん、ちょっと新しいヴァイオリンの製作で忙しくてね…あまり食べられていないんだ」
コタロウ「ちゃんと食べないとダメだぞ…そうだ、今度来る時にオレが料理を作ってやる」
葉太「えっ…良いの?」
コタロウ「ああ、何が良い?」
葉太「じ、じゃあ…オムライスとおにぎりで!」
コタロウ「炭水化物と炭水化物か…まあ、葉太兄がそう言うなら別に構わないが」
葉太「気を遣わせてごめん…そういえば、受験の方はどうだったの?」
コタロウ「ああ、合格した」
葉太「そっか…おめでとう」
コタロウ「どうも…ひとまず、アンタみたいに人見知りせずに高校生活を上手く乗り切ってみせるさ」
葉太「あはは…そういえば、この前に僕があげたヴァイオリンは弾いてくれてる?」
コタロウ「ああ、葉太兄が指定していた課題曲の『渡』や『音也』はもちろん…最近は色んな曲を耳コピで弾けるようになってきたな」
葉太「ふふっ…そっか、コタロウくんがここまでヴァイオリンを好きになってくれて嬉しいよ」
コタロウ「…それもこれも、アンタがレッスン代をかなり割引してくれたり手話まで教えてくれるって言うから教室に通えたってのはあるけどな」
葉太「僕の初めての教え子だったからつい嬉しくてね…それに、コタロウくんは最初から『誰かに何かを伝える』才能があったから」
コタロウ「…才能?」
葉太「うん!」
コタロウ「それなら、そういう事にしておくか…ところで『μ's』のライブは見に行くのか?」
葉太「もちろんだよ…花陽ちゃんがずっと憧れていたアイドルになって踊る姿を、僕も兄としてこの目で見たかったからね」
葉太「それに…『μ's』である彼女達の音楽は、音楽家の僕にとっても素晴らしいインスピレーションを吹き込んでくれるからね」
葉太「オトノキの卒業生として…こんなに嬉しい事はないよ」
コタロウ「…そうか」
葉太「それじゃ…僕は一旦、工房に戻ってからオトノキに向かうね?」
コタロウ「ああ…また後でな」
葉太「うん!」
(葉太兄と別れたオレは…とある行きつけのお店に向かって行った)
(地元の人々から親しまれている老舗の和菓子屋『穂むら』に着いたオレは…引き戸を開け、お店の中に入った)
女性店員「あっ、コタロウくんじゃない…いらっしゃい!」
コタロウ「よう…光姉」
(この女性は『高坂
(オレが少し前にこの店の揚げ饅頭にハマって以来、毎日のようにこの店の和菓子を買いに訪れている為…いつの間にか覚えられていた)
光穂「今日は何が良い?」
コタロウ「そうだな…じゃあ、揚げ饅頭で」
光穂「揚げ饅頭ね…今、厨房で揚げてもらってる途中だからもう少し待っててくれる?」
コタロウ「大丈夫だ…まだライブまで時間があるからな」
光穂「あっ!?そういえば今日は穂乃果達のライブがあるのよね…早めに店じまいしないと」
コタロウ「…まさか、忘れてたのか?」
光穂「そ、そんな…姪の大事なライブを忘れる訳ないじゃない」アセアセ
コタロウ「…目が泳いでるぞ」
光穂「ら、来週だと思ってたのよぉ~!」
ガララッ
(その時、瑠璃色の着物を纏う一人の若い女性がお店に入ってきた)
女性客「ご機嫌よう、光穂先輩」
光穂「いらっしゃい…久しぶりだね!」
女性客「コタロウもいらしていたのですね…ご機嫌よう」
コタロウ「…弓未姉、押忍」ペコッ
弓未「やめてください、コタロウ…今の私はもう園田道場の師範代などではなく一人の主婦なのですよ?」
(旧名『園田
(オレが小学生の頃に行った園田道場の武道体験教室で、師範代だった彼女から色々教わったのが出会いのきっかけだ)
(その四年後にとある研究所の所員と結婚し…現在は道場から離れ、専業主婦として暮らしている)
コタロウ「いや、分かってはいるんだが…弓未姉にだけはどうしてもこうなってしまうんだ」
光穂「小さい頃からのクセってなかなか直らないものだよね~…それで、弓未ちゃんは何を買いに来たの?」
弓未「はい、今回は…妹の海未への差し入れにこちらのほむまんを一箱持って行こうと思いまして」
一穂「ほむまん一箱ね…毎度あり!」
コタロウ「そういえば、さっき…芳林公園で蒼矢に会ったぞ」
弓未「そうでしたか…蒼矢は元気そうにしていましたか?」
コタロウ「相変わらずだ」
弓未「ふふっ、それなら安心しました…蒼矢はああ見えて繊細な所がありますから」
光穂「弓未ちゃん…はい、お待たせ!」スッ
弓未「!…ありがとうございます、それではまた」ペコッ
ガララッ
(光姉から紙袋を渡された弓未姉は…深くお辞儀をしてから、お店を出た)
光穂「お嫁さんって良いよねぇ~…一度で良いから私もあんな風になってみたかったなぁ」ハァ
コタロウ「…まるで自分はもう結婚できないみたいに言うな?」
光穂「だって私、もう三十代なんだよ?」
光穂「それなのに未だにドジでおっちょこちょいで…こんな私と結婚してくれる優しい人なんている訳ないよ」
光穂「はぁ…そうだ、コタロウくん!」
コタロウ「無理だ」
光穂「えぇっ、まだ何も言ってないじゃん!?」
コタロウ「どうせ『婿になってくれ』とか冗談で言うつもりだったんだろ?…もういいだろ、そのやりとり」
光穂「あ…分かっちゃった?」
コタロウ「何回このくだりをやったと思ってるんだ…もうこれで八十三回目だぞ?」
コタロウ「それに、そういう事を言うのは…本当にこの人だって思った人だけにしろ」
光穂「う~ん…だったらさ、穂乃果ちゃんはどう?」
コタロウ「はぁ?何でそうなる…」
光穂「ん~…なんとなく、かな?」
コタロウ「…」ハァ
光穂「あっ、でも…もしかしたらコタロウくんには穂乃果ちゃんより雪穂ちゃんの方がよく似合っt」
(光姉がそんな事を言っていると、厨房からおばあさんが顔を覗かせてきた)
おばあさん「大事な常連客に何を言ってるのかねぇ…ほら、揚げ饅頭出来たよ」
光穂「あっ…はーい!」
コタロウ「今日も元気みたいだな、ほむ婆」
(このおばあさんは代々続く穂むらの店主だ…本名は知らないが、オレはいつも『ほむ婆』と呼んでいる)
ほむ婆「当たり前さね…まだまだ若いモンに負ける気はしないよ」
光穂「でも本当だったら、お姉ちゃんとそのお婿さんにお店を任せてたはずなんだけど…あの事故があったらさすがにね」
光穂「せめて、雪穂ちゃんがいてくれたらなぁ…」
コタロウ「!…光姉」
光穂「…今頃、コタロウくんに紹介できたのに」ハァ
コタロウ「おい」
ほむ婆「コラ、光穂っ!口動かすより手ぇ動かしな!!」
光穂「わわっ、いけない…ごめんなさい!」
ほむ婆「やれやれ…本当におしゃべりなんだから、この子は」ハァ
光穂「そんなに怒らないでよ~…どうどう」
ほむ婆「私は馬じゃないよ!いいから早くお客さんに商品を渡しな!!」
光穂「ごめんってば…はい、どうもありがとね!」スッ
コタロウ「…どうも、じゃあまた後ほど会場で」
ほむ婆「おっと…ちょいとお待ち」
コタロウ「?」
ほむ婆「あんた、珈琲は好きかい?」
コタロウ「お茶じゃなくてか?…別に嫌いではないが」
ほむ婆「だったら家にあがって私の淹れた珈琲、飲んでいきな…私は珈琲にも自信があるんだよ」
(オレは高坂家の居間に通され、ほむ婆の淹れる珈琲を飲む事になった)
ほむ婆「ほら、飲みな」
コタロウ「…いただきます」ズズッ
ほむ婆「どうだい?」
コタロウ「!…美味い」
ほむ婆「そいつは良かった…そうだ、これも見ていきなさい」ドサッ
(ほむ婆は一冊の分厚いアルバムを台に乗せると…オトノキの制服を着た若い頃のほむ婆や風景など色々な写真をオレに見せてきた)
ほむ婆「これは全部、カメラ好きの主人が撮ったものだよ…若い頃はこうして主人とよく世界中の色々な場所を旅して回ったもんさ」
コタロウ「世界中か…それはスゴいな」
ほむ婆「ああ、いくつか苦労した事もあったけど…主人と旅をしている時は本当に楽しくてね」
ほむ婆「それは娘や孫達が生まれた後も変わらなかった…カメラを何度か買い換えながら、色んな写真を撮ってきたよ」
コタロウ「そうか…ん?」ペラッ
(オレがアルバムの最後のページを捲ると…そのページの写真は全てピンボケしていた)
コタロウ「なあ、どうしてここのページの写真だけがこんな写り方になっているんだ?」
ほむ婆「それは主人が十台目に買い換えた時の事かね…そのカメラにしてから、どうも撮る写真が全部おかしくなっちまったんだ」
コタロウ「写真がおかしいって…カメラの故障とかじゃないのか?」
ほむ婆「私もそう思って主人と一緒に写真屋に直してもらいに行ったよ…でも、カメラはどこも壊れてなかったそうだ」
コタロウ「じゃあ、何で…?」
ほむ婆「主人曰く…そのカメラは『別の世界を旅したいのかもしれない』と言っていたよ」
コタロウ「…はぁ?」
ほむ婆「『このカメラは自分を受け入れてくれる世界を探している…だがこの世界は、こいつに撮られたがってない』」
ほむ婆「『だから勝手に歪んじまう、街も光も人も…この世界の全部がこいつから逃げていく』」
ほむ婆「『だから、こいつは…自分を受け入れてくれる世界を探しているんだ』」
ほむ婆「『それなら…私はこいつを別の世界に旅立たせてあげたい』と、主人は言っていたよ」
コタロウ「…さっぱり意味が分からないな」
ほむ婆「私も同じ意見だよ…でも、主人の言っている事はあながち間違っていないような気もしたんだ」
ほむ婆「まあ、その直後に主人は病で倒れちまったけどね…」
コタロウ「そうだったのか…ちなみに、それはどんなカメラだったんだ?」
ほむ婆「どうだったかね…ピンクっぽい、二眼のトイカメラだったと思うねぇ」
コタロウ「そのトイカメラは今も家にあるのか?」
ほむ婆「それが…光穂が間違えて、要らなくなった物と一緒に骨董屋に売りに出しちまったんだよ」
コタロウ「光姉らしいな…そういえば、どうしてそんな話をオレに?」
ほむ婆「あんたのその顔つきが、主人や娘婿にもよく似てたもんだからねぇ…つい昔話をしたくなったんだよ」
コタロウ「…何だ、そういう事か」ハァ
ほむ婆「それに…あんたが近いうちにそのカメラを手に入れて、旅をする事になるんじゃないかと思ってね」
コタロウ「はぁ?…オレがか?」
ほむ婆「ああ…一体、他に誰がいるって言うんだい?」
コタロウ「でも旅って…第一、オレはまだ中学生なんだぞ?」
ほむ婆「確かにあんたはまだ若い、だが近いうちに…あんたは自分にとって大事なものを探す旅に出る時が来るような気がするんだ」
コタロウ「大事なもの?」
ほむ婆「そうさ、それでもしなかなか答えが出てこなかったとしても…決して焦る事はないよ」
ほむ婆「何故なら…どんな旅にも無駄はないからね」
コタロウ「…旅に、無駄はない?」
ほむ婆「ああ、どんな人生にも無駄がないのと同じさ」
コタロウ「…なかなか難しいな、ほむ婆の言ってる事」
ほむ婆「いずれ分かるさ…あんたが私の言葉を、覚えている限りはね」
コタロウ「…」
コタロウ「オレにとって大事なもの…か」スタスタ
(穂むらを出たオレがオトノキへと向かおうとしていると…どこかから力強くて綺麗な歌声が聞こえてきた)
コタロウ「…?」
(オレが導かれるように歌声の聞こえる方へ行ってみると…そこには人のいない通りで、自前のスタンドマイクを立てて唄う女性がいた)
~♪
(『as time goes by』というミュージカルや洋画で有名なその曲を唄っているその女性は…どこか、誰かに似ているような気がした)
(そしてその女性の首元には…マゼンタのカラーリングをした二眼のトイカメラが掛けられていた)
~♪
(オレは歌が終わるまで…女性の歌をずっと聞いていた)
女性シンガー「…」フゥ
コタロウ「…」パチパチパチ…
女性シンガー「!」
コタロウ「良かったよ、今のアンタの歌」
女性シンガー「…そっか、ありがとう」
グゥゥゥゥ…
(その時、どこかからお腹を空かせている音が聞こえてきた)
女性シンガー「!?」
コタロウ「…今の、アンタか?」
女性シンガー「ち、違うよ…?」
コタロウ「いや…明らかにアンタの方から聞こえてきたんだが」
女性シンガー「だ、だから私じゃないってば~…」
コタロウ「…そうだ、そういえばここに出来たての揚げ饅頭が」ガサゴソ
女性シンガー「ええっ!?」
コタロウ「もし正直に言ってくれれば、半分ほど分けてやるんだが…腹が減ってないって言うのならオレ一人で食べるしかないな」
女性シンガー「あ、揚げ饅頭…っ!」ゴクリ
コタロウ「欲しいなら正直に言え…これ、食べたいんだろう?」
女性シンガー「~っ!…く、ください///」
コタロウ「全く、仕方ないな…ほら」スッ
(オレは女性シンガーに割った揚げ饅頭の半分を渡した)
女性シンガー「あっ、ありがとう…いただきます!」パクッ
女性シンガー「美味しい…やっぱり、穂むらの揚げ饅頭はこうだよねっ!」
コタロウ「あれ…オレ、さっき穂むらで買ったなんてアンタに言ったっけか?」
女性シンガー「あ、いや…私も何度か食べた事あるから知ってるんだよ!」
コタロウ「?…そうなのか」モグモグ
女性シンガー「ごちそうさまでした…それにしても君、優しいんだね」
コタロウ「優しい…オレが?」
女性シンガー「だって…見ず知らずの私に食べ物くれたでしょ?」
コタロウ「アンタの歌が素晴らしかったからな…それは投げ銭の代わりだ」
女性シンガー「あははっ、ありがとう…ところで一つ聞いていい?」
コタロウ「何だ?」
女性シンガー「君…バックルとカードはまだ持っていないの?」
コタロウ「はぁ…?」
女性シンガー「だから、バックルとカードだってば…持ってないの?」
コタロウ「カードって…まだオレは中三だぞ?クレジットカードなんて持てる訳無いだろ」
女性シンガー「ふふっ…あはは!」
コタロウ「何だよ、突然?」
女性シンガー「君、面白いね!」
コタロウ「別に笑わせようと思ったつもりは無いぞ…?」
女性シンガー「まあ、本当に持ってなければ何も知らないみたいだし…大体分かったよ」
コタロウ「オレには何が何だかさっぱりなんだが…何者なんだよ、アンタ?」
女性シンガー「通りすがりの女性シンガーだよ、別に覚えなくても良いけどね…はっ!?」
コタロウ「どうしたんだ?」
女性シンガー「カメラ、忘れた…!」
コタロウ「…じゃあ、その首に掛かってるのは何だ?」
女性シンガー「へ?あっ…てへっ!」ペロッ
コタロウ「アンタ、相当おっちょこちょいだな…?」
女性シンガー「ふふっ、ごめんごめん…あったんだから良いじゃない」
コタロウ「そういう問題じゃないと思うが…」
女性シンガー「あっ…そうだ、良かったらこのカメラを君にあげるよ」スッ
(そう言って女性シンガーは…オレにカメラを渡してきた)
コタロウ「はぁ?…でもそれ、アンタの大事なカメラなんだろ?」
女性シンガー「うん…そうなんだけど、このカメラは君が持ってた方が良いと思ったの」
コタロウ「…オレが?」
女性シンガー「そうだよ、だって君は…」
コタロウ「オレは…何だよ?」
女性シンガー「…ううん、やっぱり何でもない」
コタロウ「?…何だよ、それ」
女性シンガー「とにかく…これは君が持っててよ、ね?」
コタロウ「全く、仕方ないな…分かったよ」ハァ
女性シンガー「じゃあ、決まりだねっ!」
(女性シンガーはオレにカメラを渡すと…今度はマイクを片付け始めた)
女性シンガー「さてと、そのトイカメラも託せた事だし…そろそろ行こうかな?」
コタロウ「もう行くのか?」
女性シンガー「うん…せっかくの一人旅だから、もっと色々な場所を見て回りたいんだ」
コタロウ「…ずっと一人なのか?」
女性シンガー「今はこうやって私だけで色々な所を旅してるけど…これでも、昔は仲間と一緒に皆で歌ってたのよ?」
コタロウ「仲間と一緒に?」
女性シンガー「うん…でも、色々あってね」
女性シンガー「結局、グループも終わりになって…当時はどうしたら良いか、よく分からなかったし」
女性シンガー「次のステップに進める良い機会かなとかって考えたりもした…でも、答えはとっても簡単な事だったの」
コタロウ「…答え?」
女性シンガー「うん…今まで自分達がなぜ歌ってきたのか、どう在りたくて何が好きだったのか」
女性シンガー「それを考えたら、答えはとても簡単だったよ」
コタロウ「…何となく、分かるような分からないようなだな」
女性シンガー「今はそれで良いんだよ…きっと君もいつか、新しい自分自身を見つける旅に出る時が来るから」
コタロウ「新しい…自分?」
女性シンガー「そう…すぐに分かるよ」
コタロウ「…」
女性シンガー「あっ、あんな所に白くて小さなコウモリが!?」ビシッ
コタロウ「はぁ?」クルッ
(女性シンガーが指を差した方向を見たが…白い蝙蝠の姿はどこにもなかった)
コタロウ「蝙蝠なんてどこにもいな…って、ん?」
(オレは女性シンガーがいた所へと向き直ったが…女性シンガーの姿は既にどこにも無かった)
コタロウ「あれ、どこに行ったんだ?…まあいいか」
コタロウ「!…そういえばこれ、ほむ婆が言っていたカメラの特徴と似てるような」ジーッ
コタロウ「…いや、気のせいか」スタスタ
(オレは女性シンガーから貰ったトイカメラを首に掛け…そのままオトノキに向かおうと歩いていった)
コタロウ「このカメラで、撮ってみるか…『μ's』を」
コタロウ「おっと…ライブの時間まであと少しだな、近道でもするか」ダッ
(路地に入ったオレの目の前に突然…オーロラのようなものが出現した)
コタロウ「!?…何だ?」
(すると…オーロラから突然、短い黒髪の男性が出てきた)
コタロウ「なっ!?」
?「やあ…初めてお目にかかるね、矢澤コタロウくん」
コタロウ「どうしてオレの名前を…!」
コタロウ「…アンタ、まさか『ドラゴンナイトの世界』のマスター・ユーブロンか?」
?「確かにそうだが…君、よく私の事を知っているな?」
コタロウ「自分でもどうして知っているのかよく分からないけどな…で、オレに何の用なんだ?」
ユーブロン「私は…君をスカウトしに来たんだ」
コタロウ「スカウト…?」
ユーブロン「そう、私達はベンタラと地球の他にも新たに確認されたこの世界を守る為…優秀な戦士を求めている」
ユーブロン「そして…おめでとう、君は私達の仲間として選ばれた」
コタロウ「…仲間?」
ユーブロン「そうだ…私が独自に調査をした結果、君にはとてつもない素質が秘められている事が分かった」
ユーブロン「未だ覚醒こそはしていないが…君には未知の可能性が秘められている」
コタロウ「…それで、オレに声を掛けてきたという訳か?」
ユーブロン「ああ…それに、私は君の願いを叶える事だって出来る」
コタロウ「オレの願い…?」
ユーブロン「…そういえば君のお母さんは長い間、病院で意識不明のままだったね?」
コタロウ「!…そうだが」
ユーブロン「君が私と共に来てくれるのであれば…君のお母さんを目覚めさせるのも、私にとっては容易な事だ」
コタロウ「なっ…それ、本当なのか!?」
ユーブロン「本当だ…嘘だと思うなら、私の力を少し試してみるといい」
コタロウ「力を?…うわっ!?」
(次の瞬間、オーロラが迫り…オレはオーロラの中へと入った)
コタロウ「!…ここは」
(オレ達がオーロラで移動してきた先は何と…母さんが眠っている病室だった)
ユーブロン「君のお母さんを…少しだけ起こしてあげようじゃないか」スッ
(ユーブロンは…そっと母さんの額に手をかざした)
コタロウ「…それで本当に母さんが起きるのか?」
ユーブロン「シーッ…静かに」
にこの母「…んっ」パチリ
ユーブロン「…よし、お目覚めだ」
コタロウ「!」
(すると…母さんが意識を取り戻したのか、目を開いた)
コタロウ「母さん?…オレだ、母さん!」
にこの母「…っ」
ユーブロン「少し待つと良い…長い間、意識が無かったからな」
コタロウ「そうか…母さん、ゆっくりで大丈夫だ」
にこの母「…コタ、ロウ?」
コタロウ「母さん…オレが、分かるのか?」
にこの母「え、ええ…」
コタロウ「良かった…母さん!」ギュッ
(オレは母さんを抱き締めた、が…母さんはユーブロンの顔を見て何かに気付いたようだった)
にこの母「!…コタロウ、この人は?」
コタロウ「ああ、母さんの意識を取り戻させてくれたんだ…」
にこの母「あなた…私の子供に近付いて、今度は何を企んでいるの!?」
(母さんは突然、ユーブロンに向かって声を荒げた)
コタロウ「えっ?」
にこの母「その顔でごまかしたつもりでしょうけど…あなたの素性は、全て調査済みよ!」
ユーブロン「…おやおや、どうやら余計な記憶の方まで取り戻してしまったみたいだな?」
(そう言って、ユーブロンの顔は…全く違う茶髪の欧米人風男性の顔に変わった)
ナルタキ「フゥ…」
コタロウ「アイツは!?…どういう事だよ、母さん!」
にこの母「私が未確認生命体の拠点の一つを突き止め、潜入しに行ったあの日…この男は未確認と手を組む協定を結んでいたの」
にこの母「この男は…『秘密結社ショッカー』の幹部よ」
コタロウ「ショッカー…!?」
(初めてその組織の名前を聞いたはずなのに…不思議とオレは、その組織の事をよく知っていた)
にこの母「応援を待っていた途中、彼らに見つかってしまった事で…私は彼に催眠をかけられていたの」
にこの母『ぐうっ…』
ナルタキ『君にはしばらく眠っていてもらおう…この世界を、我々の手中に収める為にね』スッ
にこの母『!』バタッ
コタロウ「!…じゃあ、母さんが眠らされていたのはあいつのせいだったのか?」
にこの母「そうよ…彼に騙されてはいけないわ」
ナルタキ「誤解だよ…私は彼の願いを叶えてやりたいと純粋に思っただけだ、騙そうとまでは思ってない」
にこの母「ふざけないで!私はともかく、私の子供達には指一本触れさせな…っ」ドサッ
(突然、母さんは糸の切れた人形のように…再び意識を失ってしまった)
コタロウ「母さん?…おい、母さん!」
にこの母「…」
ナルタキ「悪いね、時間だ」
(男性がオーロラを操り…オレ達は再びさっきの路地へと戻ってきた)
コタロウ「お前…母さんを元に戻せ!」
ナルタキ「戻してやるさ、君がショッカーに入れば…今すぐにでも」
コタロウ「!…何だと?」
ナルタキ「いいか、よく考えろ…君の母さんを元に戻せるのはこの私だけなんだぞ?」
ナルタキ「君が望めば母さんは意識を取り戻す、でもそうするかしないかは…君次第だ」
コタロウ「オレ次第…?」
ナルタキ「そうだ…君が選ぶんだ」
コタロウ「…」
ナルタキ「それに、ショッカーに入れば世界や人生の全てが君の思いのままになる…悪い話じゃないと思うがね」
コタロウ「…」
ナルタキ「さあ、早く選べ…我々と共に来て母親を取り戻すか!我々を拒み母親を見捨てるか!?」
コタロウ「…」
ナルタキ「どうした?…選べ!!」
コタロウ「…いや、選ぶ必要はない」
ナルタキ「何?」
コタロウ「何故なら…オレの答えはその選択肢のどちらでもないからだ」
ナルタキ「どちらでもない…だと?」
コタロウ「そうだ…オレはお前達を拒み、母さんを救う!」
ナルタキ「!?」
コタロウ「オレは…ショッカーに入るつもりはない!」
ナルタキ「そうか、では…私に刃向かうという事かね?」
コタロウ「当然、そうなるな…」
ナルタキ「そうか…ならば、力尽くで君を連れて行くまでだ」
(男性は…オーロラから赤いイモリの化け物達を呼び寄せた)
コタロウ「こいつらはゲルニュート…いや、レッド・ミニオンか!」
ナルタキ「その通り、私の忠実な下僕だ…そして」スッ
ナルタキ「私には…こういう便利な道具もある」
(男性はポケットから黒い何かを取り出し…オレに見せつけた)
コタロウ「それは…ベンタラに行く為のカードデッキ!」
ナルタキ「よく知っているね…君の世界には、他の世界の情報を仕入れるスパイでもいるのか?」
コタロウ「いや…オレ自身でも、何故それを知っているのか分からない」
ナルタキ「そうか、じゃあ…これは分かるかね?」バッ
(男性がカードデッキを掲げると…腹部にベルトが出現した)
コタロウ「…!」
ナルタキ「KAMEN RIDER!」
(ベルトにカードデッキを挿した途端、カードデッキが裏表に激しく回転すると…男性を球状のオーラが包み出した)
コタロウ「!」
(やがて…男性は黒い戦士へと変身した)
?「…フン」
コタロウ「アドベントマスター…いや、微妙に少し違うな」
?「ほう、私が偽のアドベントマスターに変身出来る事まで知っているとはな…ますます君に興味が湧いた」
コタロウ「…オレは今すぐにでもお前を忘れたいけどな」
偽アドベントマスター「フフフ…やれ」スッ
レッド・ミニオン「…!」ダッ
コタロウ「!」
(レッド・ミニオン達がオレに襲いかかろうとした…その時だった)
?「ふんっ!」ガッ!
(クワガタ虫のような赤い何かが現れ…オレを守るように、レッド・ミニオンの一体を攻撃した)
レッド・ミニオン「!?」バタッ
コタロウ「あれは…クウガ?」
(オレは…そのクワガタ虫のような赤い何かを見て、すぐにクウガと認識した)
クウガ「ちょっとアンタ…にこの弟に何しようとしてんのよ!」ゼェゼェ
(クウガが発したその声は…姉ちゃんの声とよく似ていた)
コタロウ「なっ…もしかして、姉ちゃんなのか!?」
クウガ「!…コタロウ」
コタロウ「何で、姉ちゃんがクウガに…?」
クウガ「クウガ?…アンタ、何でこれの名前を知ってるのよ?」
コタロウ「それは…オレにもよく分からない」
クウガ「はぁ?何よそれ…まあ、私も何でこんな姿になれたのかよく分からないけどね」
コタロウ「そうなのか?」
クウガ「ええ、リハーサルの時に穂乃果が急に『コタロウくんが危ない!』って言い出したもんだから…皆でアンタを探してたの」
クウガ「そうしたら、その途中で…急にこんな姿に変わっちゃったのよ」
コタロウ「…他の『μ's』の皆は?」
クウガ「まだ手分けしてアンタを探してると思うわ…とにかく、アンタが無事で安心したわ」
偽Aマスター「やはり彼女も仮面ライダーだったか…何をしている、やれ!」
レッド・ミニオン「…!」ダッ
クウガ「懲りずにまた来たわね…コタロウ、早く逃げなさい!」
コタロウ「姉ちゃんは?」
クウガ「私はここで食い止めるわ…その間にアンタは、どこか遠い所に逃げなさい!」ガッ!
コタロウ「だが…」
クウガ「いいから早く行きなさい!!」
コタロウ「…!」
クウガ「さあ、行きなさい…早く!」ゴッ!
コタロウ「っ…!」ダッ
(オレは…次々とレッド・ミニオンを倒していく姉ちゃんを置いて、その場から離れた)
クウガ「これで赤い化け物は皆やっつけたわね…ちょっと、そこのアンタ!」ビシッ
偽Aマスター「…何だね?」
クウガ「この大銀河宇宙ナンバーワンアイドルが来たからには…これ以上、私の弟に手出しはさせないんだから!」
偽Aマスター「なるほど?弟想いの良いお姉さんだね…実に美しい姉弟愛だ」
クウガ「そんな事、アンタに褒められても全然嬉しくないわよ!」
偽Aマスター「まあ落ち着け…君のお母さんも、弟を庇う君を見てさぞ喜んでいた事だろう」
クウガ「はぁ?…何が言いたいのよ、アンタ」
偽Aマスター「…もし君のお母さんが私によってずっと眠らされていると知ったら、君はどう思うかね?」
クウガ「!?」
偽Aマスター「君の弟をショッカーの一員として迎え入れる為に眠らされた…と知ったら、君はどう思うだろうと思ってね」
クウガ「アンタ…そんな事だけの為に、私達のママを!?」
偽Aマスター「ああ…しかし、もう彼女の命を駒にする必要もない」
偽Aマスター「君の弟が我々を拒んだ事で…彼女が目覚める事はもう二度と無いのだからな」
クウガ「!!」
偽Aマスター「悔しいか?悔しいだろうな…君の大事なお母さんはもう、元通りにはならないのだからな」
クウガ「っ…許さない」
偽Aマスター「ほう…今、何と言った?」
クウガ「私はアンタを…許さない!」
偽Aマスター「そうか…ならば遠慮なく来ると良い」
クウガ「はぁぁぁぁぁっ!!」ダッ
偽Aマスター「この石を手に入れた私に敵えば…の話だがな」スッ
クウガ「っ!?…きゃぁっ!」バチバチッ!
偽Aマスター「どうした、もう動けないのか?」
クウガ「アンタ、私に何を…うっ!?」
偽Aマスター「君の自由を奪ってみた…究極の闇をもたらすというこの『地の石』でな」
クウガ「何…ですって」
偽Aマスター「あー、不安がる事はない…君の仲間も既に何人か同じ目に遭ってもらっているからな」
クウガ「!?」
偽Aマスター「気付かなかったのか?私の目的は、この世界と彼だけじゃない…君達『μ's』もだ」
クウガ「そん…な」
偽Aマスター「さあ、仲間達と共にこの世界を支配し…愛する弟を捕まえに行こうとしようじゃないか?」
クウガ「ぐっ…逃げ、て…コタ…ロ」
偽Aマスター「フフフ…ハハハハハハ!!」
(オレは…何も考えず、ただひたすら走り続けていた)
コタロウ「一体どうなってるんだ、これは…?」ハァハァ
(人々は泣き叫びながら、逃げ惑い…周りにある建物は全て崩落していた)
コタロウ「くっ…!?」
(しばらく走り続けていたオレは…いつしか、オトノキの正門までやって来ていた)
コタロウ「良かった、オトノキは無事だな…っ!?」
(その時、校庭の方から大きな爆発音と人々の叫び声が聞こえてきた)
コタロウ「今のは…?」
(その先が危険かもしれないのは自分でもよく理解している…でも、このままでは『μ's』が守ってきたオトノキが壊されてしまう)
コタロウ「…!」ダッ
(そんな状況をこのまま黙って通り過ぎていく訳にはいかない…そう思ったオレは、校庭の方へと急いで向かった)
(校庭に辿り着いたオレの目には…異様な光景が映っていた)
コタロウ「…!」
(校庭には崩れ落ちた仮設のライブステージの機材が周辺に散らばり…そこにいた人々は剣を振るう戦士達から逃げ回っていた)
キバ「やぁーっ!」
ブレイド「ははっ…あははっ!」
コタロウ「龍騎にキバ、それにキングフォームのブレイド…!」
(戦士達は…『μ's』のライブを楽しみに来ていた観客達に襲いかかろうとしていたのだ)
コタロウ「どうして、こんな事に…!」
?「私が教えてあげよう」
コタロウ「!?」クルッ
偽Aマスター「…」フッ
コタロウ「!…まさか、あれもお前の仕業だと言うのか?」
偽Aマスター「察しが良いな…君を捕まえる為に、私が力を与えてやったのだよ」
コタロウ「力…だと?」
偽Aマスター「そうだ…例えばブレイドにはスペードスートのアンデッド十三体と融合するキングフォームの力を与えた」
偽Aマスター「完全にアンデッドと融合しているせいか、心までアンデッドに乗っ取られているようだがね…」
コタロウ「なっ…!?」
偽Aマスター「それとあの赤い龍の戦士は君は龍騎と呼んでいたね?…残念ながら、その呼び方は違う」
コタロウ「何…じゃあ、ドラゴンナイトか?」
偽Aマスター「惜しいな…今、正解を見せてやろう」
(赤い龍の戦士は突然、黒いオーラに全身を包み込むと…黒い龍の戦士に変貌した)
コタロウ「あれは…オニキス!」
偽Aマスター「私がカードデッキを少し弄ってやったんだ…どうかね、なかなか面白い手品だろう?」
コタロウ「ふざけるな…こんな事で罪のない人々を襲って何が面白いんだ!?」
偽Aマスター「お気に召さないようだね…ならば、今度はこれだ」パチン
(偽のアドベントマスターが指を鳴らすとキバは飛翔態に変化し…空に飛び上がって極太の光線を吐き出した)
コタロウ「!?」
偽Aマスター「ザンバットバットのないザンバットソードをキバに持たせたんだよ…実に愉快だろう?」
コタロウ「お前…いい加減にしろ!」
偽Aマスター「おっと、まだこれだけじゃない…アレを見てみろ」
コタロウ「えっ?…!」
(近くには…カブトがカブトクナイガンのクナイモードで人々に襲いかかろうとしていた)
カブト「あぁーっ!」
コタロウ「そんな、カブトまで…!」
偽Aマスター「君は…赤い靴の物語を知っているかね?」
コタロウ「赤い靴…まさか、あの暴走スイッチか!?」
偽Aマスター「そう…私が少し弄ってみたんだ、ワームを倒すという目的や装着者の意思に関係無く暴走するようにね」ニヤリ
コタロウ「お前…!?」クルッ
?「ふっ…はぁっ!」ブンッ
コタロウ「おわっ!?」サッ
グシャッ!
(オレは背後にいたアギト・バーニングフォームの攻撃を何とか避けたが…近くの壊れた機材が粉砕される程に、その威力は強力だった)
コタロウ「アギト…!?」ゾクッ
(妙な悪寒を感じたオレが後ろを振り向くと…そこには一人の見覚えのある少女がいた)
コタロウ「!…もしかして、ことりか?」
(しかし、こちらに近付いてくることりの髪の色はいつものグレーがかったベージュではなく…真っ白なものだった)
ことり「変身…」
『スカルフォーム』
(ことりは腹部に巻いていたベルトにパスをタッチさせると、額の髑髏と銀色のマフラーが特徴的な…黒い傷だらけの戦士に変身した)
コタロウ「あの姿は…幽汽!?」
幽汽「よく知ってるな、だったら話は早い…消えろ!」ブンッ
(幽汽は火を纏った自分の剣を地面に叩きつけると…『ターミネイトフラッシュ』という地を割りながら進んでくる衝撃波を放った)
コタロウ「ぐっ…うわっ!」ゴロゴロ
(ギリギリの所で身を翻したオレは何とか直撃を免れたが…あまりの威力に思わず吹き飛ばされてしまった)
幽汽「生きてたか…意外としぶといねぇ、お前?」
コタロウ「まさか、ことりの身体を乗っ取るなんて…卑怯だぞ!」
幽汽「ハッ、弱いクセにピーピーと…うるさいガキだ」
コタロウ「聞こえるか!?…目を覚ませ、ことり!」
幽汽「チッチッ…呼んでも無駄、邪魔しないようにこいつは眠らせてるから」
コタロウ「何だと…!」
幽汽「当分、目は覚めないよ!」
(オレに近付いてきた幽汽が大きな剣を振り下ろそうとしたが…偽のアドベントマスターが幽汽に声をかけた)
偽Aマスター「やめろ、幽汽…私は彼を生け捕りにしろと言ったはずだぞ?」
幽汽「ガキが生きてようがどうなろうが関係ない…俺は戦えればどうでもいい」
偽Aマスター「おつむの軽さのせいで私の命令が聞こえていなかったようだな…貴様、自分の世界が消されても良いのか!?」
幽汽「!…ハァ、分かったよ」
コタロウ「…今だ!」ドンッ
(オレは幽汽を突き飛ばし…また逃げようと試みた)
幽汽「グッ…あのガキ!」
偽Aマスター「案ずるな…手駒はまだいる」
コタロウ「…!」ピタッ
にこ「…」
コタロウ「姉ちゃん…無事だったのか?」
にこ「…」
コタロウ「どうした、姉ちゃん?…まさか!?」
偽Aマスター「姉と弟、感動の再会だな…泣かせてくれるじゃないか」
コタロウ「お前、姉ちゃんにまで…一体何をした!?」
偽Aマスター「君があまりに駄々をこねるものだからな…この『地の石』で君の姉さんの自由を奪ってあげたのだよ」スッ
(偽のアドベントマスターはそう言って…持っていた『地の石』を堂々とオレに見せつけてきた)
コタロウ「なっ!?…お前、何て事を!」
偽Aマスター「私に逆らった罰だよ…何せ君はショッカーの誘いを拒んだのだからな」
コタロウ「ふざけるな…早く姉ちゃんを元に戻せ!」
偽Aマスター「それは出来ない相談だな…何故なら、彼女達七人はもう純粋な私の操り人形なのだからな」
コタロウ「七人?…まさか!?」
幽汽「やっと気付いたようだな…今、暴走してお前や人々を襲っているのは紛れもなく『μ's』だとかいう女共だ」
偽Aマスター「残る二人には逃げられたが、七人も操っていれば問題はない…君とこの世界を手に入れば全てが済む話なのだからな」
コタロウ「いい加減にしろ!『μ's』はスクールアイドルだ…姉ちゃん達に人々の笑顔は奪わせない!」
幽汽「フン、随分と減らず口の多いガキだ…テメーはそろそろ大人しく俺達に捕まっていろ」
コタロウ「オレは絶対に捕まらないし、お前達の仲間にもならない…そして『μ's』の皆も元に戻す!」
幽汽「あんな事言ってるぞ…どうするつもりなんだ?」
偽Aマスター「フゥ…やれ、クウガ」
にこ「…変身」ニィッ
(いつもとは違うぎこちない笑みを浮かべながら…姉ちゃんは黒い瞳のクウガ・ライジングアルティメットに変身した)
クウガ「…」
コタロウ「姉ちゃん…目を覚ましてくれ、姉ちゃん!」
クウガ「…!」ダッ
(何度も呼び掛けるオレに対し…クウガは走り出し、襲いかかってきた)
クウガ「!」ガッ!
コタロウ「うぐっ…放せ!」
(オレはクウガに捕まり…身動きが取れなくなってしまった)
偽Aマスター「優しく扱いたまえよ、何せ君の弟は…有望なショッカーの首領候補なのだからな」
クウガ「…」コクリ
コタロウ「お願いだ…やめてくれ、姉ちゃん!」
幽汽「お前はそこで黙って…この世界が俺達の物になるのを黙って見ていろ」
コタロウ「嫌だ…そんな事、させてたまるか!」
幽汽「諦めの悪いガキだ…そんなに嫌なのか?」
コタロウ「当たり前だ…オレは目の前で誰かの命や笑顔が奪われそうになる光景を黙って見過ごせるほど腐っちゃいない!」
コタロウ「通り過ぎずに戦う事…それが、オレの決めた事だ!!」
偽Aマスター「何を言っても無駄だ…君に彼女達を止められるほどの力は無い」
幽汽「おい、クウガ…そのガキの口を塞げ」
クウガ「…」スッ
コタロウ「~!」モゴモゴ
(クウガに口を塞がれたオレがもがいていたその時…どこかで聞き覚えのある二人の少女の声が聞こえた)
謎の声A「待ちなさいよ!」
謎の声B「これ以上…あなた達の好き勝手にはさせへんよ!」
ガガガッ!
クウガ「!?」
(次の瞬間、見覚えのあるロボットが右腕に持ったタイヤ型の盾からマシンガン砲を繰り出し…オレはクウガの拘束から解かれた)
コタロウ「危なっ!?…って、オートバジン?」
オートバジン「…」スッ
(オートバジンは…まるで庇うかのようにオレの目の前に立った)
幽汽「誰だ!…!?」
(すると…ディスクアニマルのイワベニジシとシロネリオオザルが偽のアドベントマスターと幽汽を牽制した)
偽Aマスター「グッ!」
コタロウ「ディスクアニマルまで…オレを助けてくれたのか?」
謎の声B「うふふっ…そうよ、この式神さん達にはウチのパワーをたーっぷり注入してるからね?」パシッ
謎の声A「こっちは私のだけどね…ありがとう、オートバジン」ポチッ
『Vehicle Mode』
(オレの横には…オートバジンをビークルモードに戻す真姫とディスクモードになったディスクアニマルをしまう希がいた)
コタロウ「!…真姫、希」
希「コタロウくん…大丈夫、怪我してない?」
コタロウ「あ、ああ…」
真姫「本当に世話が焼けるんだから…何で、私達がこんな事しなくちゃいけないのよ?」
希「あれ…そんな事言って、真姫ちゃんもコタロウくんの心配してなかったっけ?」
真姫「うぇえ!?だ、誰が…私はただコタロウが情けないから放っておけないだけっ!///」クルクル
コタロウ「はぁ?…だったら、どうしてそんなに顔を赤くして自分の髪の毛を弄くるんだよ?」
真姫「放っといて!」
コタロウ「何だよ、それ…意味が分からないな」ハァ
偽Aマスター「君達、せっかく逃げられたというのに…わざわざ操られに戻ってきたのかね?」
希「別に逃げた訳じゃないよ?ウチらはただ…皆を取り戻しに来ただけ」
偽Aマスター「ほう…?」
コタロウ「二人とも、本当に操られてない…のか?」
希「うん、ウチらは大丈夫よ…オトノキの制服を着た女の子が助けてくれたからね!」
真姫「でも私、学校で見た事無いんだけど…あの子って本当にオトノキの生徒だったの?」
希「確かにウチも見た事無いけど、あの子が自分でオトノキの生徒だって言うてたし…嘘をついてる感じでもなかったから別に気にしなくてもええんやない?」
真姫「それはそうだけど…」
希「あっ…そういえば、その子からコタロウくんにこれを渡すように頼まれたんよ」
コタロウ「…オレに?」
希「うん…はい!」スッ
(希はオレに…白いバックルと一枚のカードを渡してきた)
コタロウ「!?…これって」
希「実はオトノキの制服を着た女の子から、コタロウくんに渡すようにお願いされたんよ…それは君が使うべき物やって」
コタロウ「オレが使うべき物…って事は」
女性シンガー『バックルとカードはまだ持っていないの?』
コタロウ「…そうか、だいたいわかった」
偽Aマスター「アレは…ディケイドライバーだと!?」
幽汽「おい、何だそれは?」
偽Aマスター「『シックスエレメント』という特別
な輝石が埋め込まれたベルトだ」
偽Aマスター「本来は我々、ショッカーが密かに開発していた物なのだが…何者かによって設計図と共に盗まれていたという話だ」
幽汽「それは間抜けな話だねぇ…だが、あのガキがアレを持った所でおもちゃにしかならないだろ?」
偽Aマスター「馬鹿が、ディケイドライバーを侮るな!」
幽汽「何…どういう事だ?」
偽Aマスター「ディケイドライバーは彼のようにショッカーの首領としての素質を持った者が装着する事で、恐るべき力を発揮する…!」
幽汽「恐るべき力…だと?」
(腹部にディケイドライバーを装着したオレは…真姫と希の前に出て、一枚のカードをかざした)
コタロウ「オレは通り過ぎずに戦う…そして、姉ちゃんや穂乃果達を取り戻す!」
偽Aマスター「愚かな…今すぐ奴からディケイドライバーを取り上げて捕まえろ!」
(オーロラからレッド・ミニオンの集団とそれを率いるヤゴ型怪人のホワイト・ミニオンが現れ…オレ達を取り囲んだ)
コタロウ「…変身!」
(オレは展開したバックルにカードを挿入し…バックルを閉じた)
『カメンライド…ディケイド!』
(その瞬間…オレの姿を眩い光が包み込んだ)
クウガ「!?」
アギト「…?」
(やがて光から出てきたオレの姿は…縞々のバーコード状の顔と『十』のモチーフが入ったマゼンタの身体に変化していた)
ディケイド「…」
希「ふふっ…やっぱり、あの子の言ってた通りみたいやね?」
真姫「どうやら間違いないみたいね、あの姿が…」
偽Aマスター「ディケイド…!」
ディケイド「…行くぞ」
(オレは左腰のライドブッカーというカードホルダーを開くと、三枚のカードを取り出し…そのうちの一枚をバックルに入れた)
『カメンライド…ファイズ!』
(オレはファイズというライダーに姿を変え、右手を軽くスナップした)
希「真姫ちゃん、あれ…!」
真姫「ええ…私と同じ、ファイズよ」
幽汽「おい、姿が変わったぞ…何だアレは?」
偽Aマスター「あらゆる素質を持った者が変身したディケイドは…カードによって他のライダーの姿や能力を得る事が出来るのだ」
偽Aマスター「それが『カメンライド』…そして」
『フォームライド…ファイズ!アクセル!』
(オレは二枚目のカードを入れ…アクセルフォームのファイズに形態を変えた)
『Start Up』
(ファイズアクセルを起動させたオレは超高速で十体のレッド・ミニオンを上空へ吹き飛ばし…最後の一枚のカードをベルトに入れた)
『ファイナルアタックライド…ファ・ファ・ファ・ファイズ!』
DCDファイズ「はぁーっ!」
(オレは空中にいるレッド・ミニオン達に向けて…アクセルクリムゾンスマッシュを放った)
レッド・ミニオン「!」
『Reformation』
(アクセルフォームの効果が切れると…オレはディケイドの姿に戻った)
ディケイド「…?」
(何故だ、初めて変身したにも関わらず…どうしてオレはこの力が使えている?)
(武道の経験があるとはいえ、オレは…このディケイドの戦い方を知っている?)
ディケイド「一体、どうして…」
希「危ない!」
ディケイド「え…おわっ!?」サッ!
(希の声に気付いたオレは、レッド・ミニオンが投げた大きな手裏剣を避けた)
ディケイド「くっ…危ないだろ!」スッ
(オレはまたライドブッカーから五枚のカードを取り出し…そのうちの二枚をバックルに入れた)
『カメンライド…ヒビキ!』
DCD響鬼「…シュッ!」
『アタックライド…オンゲキボウ・レッカ!』
(オレは響鬼に姿を変えると…あちこちからやって来るレッド・ミニオン達を召喚した二本の音撃棒・烈火で次々と打ちのめした)
DCD響鬼「はっ!」ドドンッ!
真姫「あの姿、希と同じ…!」
希「うん…響鬼やね」
『フォームライド…ヒビキ!クレナイ!』
『アタックライド…オンゲキコ・バクレツカエンツヅミ!』
DCD響鬼「はっ!」
(身体が真紅に染まった響鬼紅に姿を変えたオレは、音撃鼓・爆裂火炎鼓をホワイト・ミニオンの身体に取り付けると…)
ホワイト・ミニオン「!?」
『ファイナルアタックライド…ヒ・ヒ・ヒ・ヒビキ!』
DCD響鬼「音撃打・爆裂真紅の型!!」
(最後のカードをバックルに装填し…ホワイト・ミニオンに音撃棒の連打を音撃鼓越しに浴びせた)
DCD響鬼「はぁーっ!」ドドドドッ!
ホワイト・ミニオン「…!」
(ホワイト・ミニオンを倒し、響鬼紅の効果が切れたオレは…再びディケイドの姿に戻った)
ディケイド「これで全部か…」フゥ
クウガ「…」スッ
(安心していたのも束の間…両手をかざしたクウガがオレに向けて『暗黒掌波動』というエネルギー波を放ってきた)
ディケイド「!?…うわぁっ!」ゴロゴロ
クウガ「…」スタスタ
(倒れていたオレに向かって、クウガは更なる攻撃を仕掛けようと…ゆっくりと近付きながら再び両手をかざそうとしていた)
ディケイド「姉、ちゃん…ぐっ!」
(先ほどのダメージによって、オレはすぐに態勢を立て直す事が出来ず…変身も強制的に解除されてしまった)
コタロウ「!」
偽Aマスター「油断したようだな…隙だらけだ」
希「コタロウくん!」ダッ
幽汽「…おい、待てよ」
(希と真姫がオレの元に向かおうとしたが…間に幽汽が割って入ってきた)
真姫「何よ、あなた…邪魔しないでくれる?」
幽汽「邪魔なのはお前らの方だ…消えろよ、早く」
真姫「っ…あなたこそ、ことりの身体から出て行きなさいよ!」
幽汽「嫌だね、どうしても取り返してほしかったら…お前らも変身して俺と戦ってみろよ」
真姫「…いいわ、やってやろうじゃない!」
希「待って、真姫ちゃん」
真姫「希…!」
希「もしウチらが戦ったら…ことりちゃんを危ない目に遭わせる事になるかもしれんのよ?」
真姫「でも、このままじゃ私達やコタロウまで…!」
希「ええから…もう少しだけ、皆が来るのを待ってあげて?」
真姫「!…もう、分かったわよ」ハァ
幽汽「おい、どうした…戦わないのか?」
真姫「…」
希「…」
幽汽「変身しないのなら…消えろっ!」ダッ
コタロウ「希、真姫…!」
?「やめて、ことちゃんっ!!」バッ
(真姫と希を斬りつけようとする幽汽の前に立ちはだかったのは…かおり先生とひめりだった)
幽汽「!?…何だお前ら、どけ!」
ひめり「いや!」
かおり「ことちゃんを元に戻すまでは…この先は絶対に通しません!」
ひめり「だから、ことりおねえちゃん…はやくもどらないとひめりたちのおやつにしちゃうよ?」
かおり「そうだよ、ことちゃん…かおり達があなたをおやつにしちゃいますよ?」
幽汽「何だ…お前ら、何を訳の分からん事を言っている!?」
ひめり「ひめりね、またことりおねえちゃんがつくったフリフリのふくで…みんながおどっているところをみたいの!!」
かおり「私もあなたがデザインから手掛けたステージ衣装を見るのを楽しみにしているの…だから目を覚まして、ことちゃん!!」
幽汽「いいから、消え…っ!?」ピタッ
(かおりとひめりを見た幽汽の動きは…突然、止まった)
真姫「…やっと気が付いたみたいね?」
希「良かった…やっぱり、あの子の言う通りにして正解やったみたいやね!」
真姫「正直、私は半信半疑だったけどね…」ハァ
幽汽「なっ…何で!?」
?『…かおちゃん、ひめちゃん』
かおり「この声は…ことちゃん!」
ひめり「ことりおねえちゃん!」
幽汽「お前…ま、まさか!?」
ことり『もう、これ以上はあなたの好きにはさせない…絶対に!』
幽汽「グッ…!」
偽Aマスター「貴様ら…一体、何をした!?」
希「別にウチらは何もしてないよ?」
真姫「私達はただ…それぞれのメンバーの大切な家族に来てもらって、呼び掛けてもらっているだけよ」
偽Aマスター「それぞれのメンバーだと?…まさか!」クルッ
(偽のアドベントマスターが振り返ると…そこにはキングラウザーを白刃取りしている蒼矢とブレイドに話しかける弓未姉がいた)
ブレイド「!?」ギリギリ…
蒼矢「…」ググッ
弓未「どうしたのですか、海未…貴女はそんなに心の弱い人間だったのですか?」
ブレイド「…っ!」ギリギリ…
弓未「本当に私達を斬れるものなら斬ってみなさい、海未…ですが見てみなさい」
蒼矢「…!」キッ
ブレイド「!?」
弓未「こんなに真っ直ぐな目をしながら剣を受け止める蒼矢を…貴女は斬る事が出来るのですか?」
ブレイド「…?」
弓未「その程度で悪しき者に心を支配されるようでは…貴女にスクールアイドルと道場の跡取り娘の二足の草鞋は履けません!」
弓未「だから早く正気に戻って…あなたのラブアローシュートで私達の心を射抜きなさい、海未っ!」
ブレイド「う"っ…あぁぁぁっ!!」
(その近くでは、慧と萌が…オニキスに呼び掛けていた)
慧「おい…目を覚ませ、凛!」
萌「ねぇ、凛ちゃん…あの時のファッションショーでしたライブは覚えてるかにゃ?」
オニキス「…?」
萌「覚えてるよね?だって、凛ちゃんがセンターだったんだもんね…萌も取材に行ってたからよく覚えてるよ」
萌「だから萌、知ってるよ…スクールアイドルを始めてから凛ちゃんの心は星空みたいにキラキラ輝いてるんだって!」
オニキス「…」
慧「確かにあのライブが終わってから凛、スゴく可愛い服を着るようになったもんな…前は私のお下がりばかり着てたのに」
慧「でも、今の凛は…可愛くない!」
オニキス「…!」
慧「早く戻って、いつもみたいに…元気に駆け回ってくれよ!」
萌「もしそれが無理なら…ここで萌達を倒してみてよ!」
慧「だが私達はどうやっても絶対に倒せないし倒れない…一つでも命を奪ったら、お前はもう後戻りできなくなるからな!」
萌「凛ちゃんはそれを望んでいる訳じゃないんでしょ…だったら、にゃんにゃんにゃーんって言ってよ!!」
慧「そうだ、凛…それにお前にそんな真っ黒の衣装は似合わない」
慧「お前といえば…イエローだろう!!」
オニキス「…っ!?」
(一方でキバの飛翔態に声をかけていたのは…葉太兄だった)
葉太「花陽ちゃん…僕だよ、分かるかい?」
キバ「…」
葉太「妹である君に襲われるなら…兄として、この命を奪われても惜しくはないよ」
葉太「でもね、今の君は…花陽ちゃんじゃない」
キバ「…?」
葉太「君の心のミューズが泣いているのが分かるんだ、哀しみの音楽が…誰か助けてという君の声が聴こえるんだ!」
キバ「!」
葉太「君が翳りそうな時や歪みそうになった時は、僕が君に陽を当てて調える!だから…ちょっと待っててっ!!」
キバ「…うっ、ううっ!」
偽Aマスター「どうした、何が起きている!?」
希「元に戻してるんよ…皆を」
偽Aマスター「元に戻しているだと?」
真姫「ある子から教えてもらったのよ…『この世界にしかいない大切な家族が声をかける事で、メンバーの暴走は止まる』って」
(希と真姫が偽のアドベントマスターと話している間に…斗里と樹里がカブトを止めていた)
斗里「よせ、姉さん!」ガシッ
カブト「うわぁぁぁっ!!」
樹里「やめてよ…しっかりしてよ、姉さん!」
カブト「はぁはぁ…いやぁぁぁっ!」
斗里「よし…一緒に姉さんを止めるぞ、樹里!」
樹里「うん、兄さんとなら例え…喉がカラカラになっても!」
斗里「じゃあ、行くぞ…かしこいかわいい!?」
樹里「エリーチカ!」
斗里「かしこいかわいい!?」
樹里「エリーチカ!!」
カブト「…!?」
樹里「こんな時だからこそ正直に言うけど…今の姉さん、全然賢くも可愛くもないよ!」
斗里「その通りだ…生徒会長をやっていた時の姉さんは賢かったし、スクールアイドルをやっている時の姉さんはものスゴく可愛い」
斗里「でも、今の姉さんは…姉さんらしくない!」
樹里「だから…賢くて可愛かった、あの頃の優しい姉さんに戻ってよ!」
斗里「元に戻らないのなら、戻るまで何度でも言ってやる…かしこいかわいい!?」
樹里「エリーチカ!!」
カブト「うぐっ…ああっ!?」
(そして、アギトには…光姉とほむ婆が懸命に呼び掛けていた)
光穂「穂乃果ちゃん、もうやめてよ…穂乃果ちゃん!」
アギト「はぁぁぁっ!」ブンッ
光穂「わあっ!?」サッ
ほむ婆「穂乃果っ!!」
アギト「…!」ピタッ
光穂「やっと止まってくれた…もう、危ないでしょ!?」
ほむ婆「不安だったんだろう、穂乃果?…訳の分からない力に振り回されて」
アギト「!」
光穂「それくらい私達にも分かるよ…だって、私達も家族なんだよ?」
ほむ婆「あんたは自分に押し潰されそうになってる…でもね、そういう時はもっと自分自身を信じな」
アギト「…?」
光穂「だって、あなたは…このオトノキの廃校を阻止したスクールアイドル『μ's』の『高坂穂乃果』なんだよ?」
ほむ婆「あんた自身の持っている力が皆を巻き込んできたから…今まで誰も出来なかった事をやってのけたんじゃないのかい!?」
光穂「だから弱い自分に負けないでよ…これからも多くの人を巻き込んで、皆の夢を叶えてみせてよ!」
光穂「その為にも、穂乃果ちゃん…ファイトだよっ!」
ほむ婆「ファイトだよっ!…穂乃果!!」
アギト「あ…あっ、ああっ!?」フラッ
(暴走したメンバー達が自我を取り戻し始めているのを見て…オレもある事を試みた)
コタロウ「そうか…おい、姉ちゃん!」
クウガ「…?」
コタロウ「にっこにっこにー!」
クウガ「!」
コタロウ「にっこにっこにー!!」
(オレは姉ちゃんの心に届くように…途中で立ち上がりながら、全力でポーズをして叫んだ)
クウガ「…」
偽Aマスター「彼女にはどれだけ呼び掛けようと無駄だ、何故なら彼女は…私が持っているこの『地の石』で操っているのだからな」
希「ふふっ…それはどうやろうね?」
偽Aマスター「何?」
真姫「にこちゃんはね…そんな石なんかで乗っ取られる程、ヤワじゃないのよ!」
コタロウ「にっこにっこにー!!!」
クウガ「…うっ!?」
ピシッ!
(その時…偽のアドベントマスターが持っていた『地の石』に亀裂が入った)
偽Aマスター「これは…何故だ!?」
コタロウ「オレはディケイドである以前に…大銀河宇宙ナンバーワンアイドル『矢澤にこ』の弟の『矢澤コタロウ』だ!」
コタロウ「たった一人しかいない弟なんだ…だから、姉ちゃんの暴走が止まるのは当たり前だ!」
偽Aマスター「グッ…おのれ!」
クウガ「ううっ…」
コタロウ「おい、聞こえるか姉ちゃん…今から言う事は滅多に言わないからよく覚えておけ!」
クウガ「コ、タ…ロ?」
コタロウ「姉ちゃんが皆を笑顔にさせられるのなら…弟であるオレが全力で支えてやる!」
コタロウ「弟であるオレが一緒に戦ってやる!」
コタロウ「それに、姉ちゃんは…もう一人なんかじゃないはずだろ!?」
クウガ「!」
偽Aマスター「何をしている、クウガ!早くディケイドを捕まえろ…私の命令を聞け!!」
クウガ「ううっ…ああぁぁぁっ!?」
コタロウ「『μ's』の仲間達と一緒にステージに立って…また皆を、笑顔にしてくれよ!」
コタロウ「だから、元に戻って笑ってくれよ…姉ちゃん!!」
偽Aマスター「私に従え、クウガ!!」
クウガ「…うるさいわよ」
ピシッ!
偽Aマスター「!?…『地の石』が、更にひび割れているだと?」
クウガ「さっきからうるさいって言ってんのよ…私の弟が何て言ってるか、よく聞こえないじゃない!」
コタロウ「姉ちゃん…!」
偽Aマスター「馬鹿な、クウガの意識は…この『地の石』で完全に操っていたはずだ!」
クウガ「あのね…『にこにーはみ~んなのも・の♡』なの」
偽Aマスター「!」
クウガ「大銀河宇宙ナンバーワンアイドルの私が…そんな石で、アンタの物なんかになる訳…ないでしょうが!!」
パキンッ!
偽Aマスター「グアッ!?」
にこ「うっ…」フラッ
コタロウ「姉ちゃん!」トスッ
(『地の石』が砕け散った瞬間、クウガは姉ちゃんの姿に戻り…オレは倒れようとする姉ちゃんの身体を優しく受け止めた)
にこ「コ…コタロウ」ハァハァ
コタロウ「大丈夫か?」
にこ「え、ええ…何とかね」
希「にこっち!」ダッ
真姫「にこちゃん!」ダッ
にこ「希、真姫ちゃん…」
真姫「もう、心配させないでよ!」
希「ウチら…二人だけになって、これでもけっこう心細かったんよ?」
にこ「そう…悪かったわね、迷惑かけて」
真姫「謝らないで!」
にこ「えっ?」
真姫「私達からしたら…にこちゃん達がいなくなっちゃう方が、よっぽど迷惑なんだから!」
希「そうよ、にこっち…それよりももっと他に言う事があるんと違う?」
にこ「アンタ達…ありがとね、助けてくれて」フフッ
希「うふふっ…どういたしまして」
偽Aマスター「お前達…よくも私の計画の邪魔を!」
?「グワァァァ!?」ゴロゴロ
(いつしかことりに憑依していたイマジンは追い出され…偽のアドベントマスターの前に転がってきた)
偽Aマスター「!?…どうした、ゴーストイマジン!」
ゴーストイマジン「奴らが全員、正気を取り戻した…これ以上は無理だ!」
偽Aマスター「無理だと?この役立たずが…もう一度、南ことりに憑依しろ!」
?「そんなこと…二度とさせないよ」
偽Aマスター「!」クルッ
(偽のアドベントマスターが振り向いた方には…穂乃果に光姉、ほむ婆がいた)
穂乃果「…」
コタロウ「穂乃果…」
真姫「穂乃果!?」
希「元に戻ったんやね?」
穂乃果「うん、おばさんとおばあちゃんのおかげでね!」
光穂「良かったぁ~…私にパンチしてきた時はどうなるかと思ったよ」ホッ
ほむ婆「全く、世話焼かせるねぇ…本当に手のかかる孫娘だよ」フッ
穂乃果「あはは、ごめんごめん…」
?「穂乃果だけじゃないわ」
(穂乃果と並び立ったのは…同じく正気を取り戻した絵里達だった)
真姫「エリー!」
希「えりち…それに、皆も!」
絵里「希、真姫、ありがとう…あなた達が家族の皆を連れてきてくれたおかげよ」
絵里「その代わり…けっこう恥ずかしい思い、しちゃったけどね」
斗里「仕方ないだろ?姉さんを元に戻す為だ」
樹里「賢くて可愛い姉さんを取り戻せるんだったら…僕達、何だってやるよ!」
絵里「ふふっ…斗里も樹里も、私の為にありがとう」
ことり「かおちゃんもひめちゃんもごめんね、時間かかっちゃって…」
かおり「大丈夫よ…気にしないで、ことちゃん」
ひめり「やさしいことりおねえちゃんにもどって…ひめりたち、うれしいの!」
ことり「二人とも…えへへっ!」フフッ
海未「姉上…申し訳ありません、私が不甲斐ないばかりに」ペコッ
弓未「顔を上げてください、海未…私達は貴女が戻ってきてくれただけで嬉しいのです」
蒼矢「…」ナデナデ
海未「蒼矢…あなたの逞しさには助けられました、本当にありがとうございます」フフッ
凛「あの、凛…」
慧「気にしちゃダメだよ…凛、いつも通りに接してくれればそれで良いんだから」ポンポン
凛「ニャッ…慧お姉ちゃん?」
萌「そうだよ…萌達はまた可愛い凛ちゃんが見られたら、それで十分だにゃ!」
凛「萌お姉ちゃん…えへへ、ありがとニャ!」
花陽「お、お兄ちゃん…ごめんなさい」
葉太「僕は兄として当たり前の事をしたまでだよ…それにいつもの美しい花陽ちゃんに戻ってくれただけで、僕は満足なんだ」
花陽「あ、ありがとう…お兄ちゃん///」
偽Aマスター「…クソッ、せっかくの私の計画が全て台無しだ!」
絵里「残念だったわね…でもこれ以上、あなた達なんかにこの世界を好き勝手させないわ!」
ことり「そしてみんなも、コタロウくんも…あなた達には渡しません!」
海未「だからこそ、私達は…もうあなたのような者の言葉には惑わされません!」
花陽「それに、ライブステージをこんなにして…絶対に許せません!」
凛「もうごめんなさいって泣いて謝っても…許してなんかあげないよ!?」
希「うふふっ…皆、もうとっくに心の準備は出来てるみたいやね!」
真姫「ほら、にこちゃんも一緒に行くわよ…立てる?」
にこ「私を誰だと思っているのよ…当たり前でしょ!?」
穂乃果「コタロウくんも…覚悟は出来た?」
コタロウ「ああ、もちろんだ…光姉達は安全な場所に避難を!」
光穂「よ~し…皆、こっちだよっ!」ダッ
弓未「はい、光穂先輩!」
蒼矢「!…ん」グイッ
ひめり「へっ…そ、そうやくん!?///」
かおり「あっ!?…ひめちゃん、良いなぁ」ボソッ
萌「ほら、早く行っくにゃ~!」ダダッ
慧「あっ!…ったく萌のヤツ、姉妹の中で一番速いからって飛ばし過ぎだぞ?」ダッ
葉太「わあっ!?み、皆さん…置いて行かないでくださいよ!」
斗里「さーてと…俺達も行くぞ、樹里!」
樹里「うん…コタロウも姉さん達も、気をつけてね?」
絵里「ええ!」
コタロウ「樹里…お前もな」
樹里「ふふっ…うん、
ほむ婆「いいかい、あんた達?どんな事になっても…ガッツだよっ!」
コタロウ「ほむ婆…ああ!」
穂乃果「おばあちゃん…うん、ファイトだよっ!」
(ほむ婆達が去って行ったのを確認し、オレと『μ's』の九人は…それぞれの変身プロセスをとった)
偽Aマスター「無駄な足掻きを…やれ!」
(偽のアドベントマスターはオーロラから…大量のホワイト・ミニオンを呼び寄せた)
コタロウ「変身!」
『カメンライド…ディケイド!』
(オレは奴らに立ち向かう為に…再びディケイドに変身した)
μ's「変身!」
(それと同時に『μ's』の九人も…それぞれのライダーに変身した)
ディケイド「皆…あの黒いライダーとことりに憑いていた怪人はオレ一人に任せてくれないか?」
電王『へっ?』
ブレイド「コタロウが…一人でですか!?」
ディケイド「ああ、そうだ」
キバ「そ、そんな…平気なの?」
ディケイド「当たり前だ」
カブト「何か考えがあるの?」
ディケイド「そういう訳じゃないが、オレは…このディケイドの力でどこまで出来るか試してみたいんだ」
ファイズ「何よ、それ…イミわかんない」
龍騎「スゴい自信ニャ~…」
響鬼「別にええんやない?ウチもコタロウくんなら出来ると思うし!」
アギト「私もそう思う!」
ディケイド「希、穂乃果…」
カブト「…にこはどう思う?」
クウガ「にこは別にどっちでも良いわ…ただし!」ズイッ
ディケイド「!」
クウガ「負けたらタダじゃおかないわよ…良いわね?」
ディケイド「…任せろ」フフッ
アギト「よ~しっ…行こう、みんな!」ダダッ
(オレはホワイト・ミニオンを『μ's』に任せ…ゴーストイマジンと対峙した)
ゴーストI「こうなりゃ奥の手だ…今度はお前に憑依してやる!」ダッ
ディケイド「させるか!」スッ
『アタックライド…ブラスト!』
ディケイド「はっ!」バシュッ!
(オレは一枚のカードをベルトに入れて、ガンモードにしたライドブッカーから光のエネルギーを発射し…ゴーストイマジンを拘束した)
ゴーストI「ウグッ…!」
ディケイド「幽霊モチーフのイマジンだけあって憑依能力には長けているようだが…所詮、お前は三下に過ぎない」
(動けないゴーストイマジンを一時的に光の粒子に変え、こちらの目の前に呼び寄せたオレは…ライドブッカーの銃口を向けた)
ディケイド「はぁーっ!」ガガガッ!
(ゴーストイマジンに無数の光弾を連射したオレは…奴を元いた場所に戻し、拘束を解いた)
(これは『DCDJ(ディケイドジェイル)』…オレ一人の技だ)
ゴーストI「グワァァァァァ!!」
ディケイド「まあ、こんなもんか…!」バッ
偽Aマスター「フンッ!」ブンッ
(ゴーストイマジンを倒した直後、偽のアドベントマスターが殴りかかり…オレはその攻撃を避けた)
ディケイド「くっ…!」サッ
偽Aマスター「喜べ…お前はこの私が直々に相手をしよう」
ディケイド「今度はペテン師が相手か…もう二度と母さんも姉ちゃん達も、お前の思い通りにはさせない!」スッ
『アタックライド…スラッシュ!』
(オレは一枚のカードをベルトに装填し、ライドブッカーをソードモードに変えた)
偽Aマスター「何をするつもりかね?」
ディケイド「そんなもの、最初から決まってる…こうするんだよ!」
(オレは…胸部の十字から相手を拘束する光線を放出して、偽のアドベントマスターの動きを止めた)
偽Aマスター「何ッ!?」
ディケイド「はあっ!」ザシュッ!
(オレはバーコードのようなものに包まれながら浮上する奴を下から斬り上げると…すぐに飛び上がり、再び奴を斬りつけた)
ディケイド「やあーっ!」ズバッ!
偽Aマスター「ウガァァァ!?」ズドン!
(オレに斬られた偽のアドベントマスターは…地面にめり込むように倒れた)
(これは『DCDV(ディケイドヴァニッシュ)』…オレ一人の技だ)
ディケイド「…」フゥ
アギト「コタロウく~ん!」
(オレの所に変身したままの『μ's』の九人がやってきた)
ディケイド「!…皆」
カブト「白い化け物達は皆、倒してきたわ!」
ディケイド「そうか…こっちも今、片付けたところだ」
クウガ「やるじゃない…さすが、にこの弟ね?」
ディケイド「…まあな」フフッ
アギト「!?」クルッ
クウガ「どうしたのよ、穂乃果?」
アギト「…まだ、終わってないみたいだよ」
カブト「えっ…?」
ガッ!ドカッ!ゴッ!バキッ!
ディケイド「うわっ!?」
(オレ達は突然、何者かの攻撃を受けてしまった)
クウガ「っ…何よ、今の!」
???「油断していたよ…まさか私がお前達のような人間に真の姿を見せる事になるとはね」ポイッ
(姿を現した黒い甲冑のような姿をした怪人は…砕け散ったカードデッキを地面に投げ捨てた)
ディケイド「アイツは…ゼイビアックス!」
アギト「ゼイビアックス…?」
???「そう、私は宇宙から来た誇り高き戦闘種族・カーシュの生き残り…ゼイビアックス」
ディケイド「お前…ドラゴンナイト達に倒されたはずじゃなかったのか?」
ゼイビアックス「そうだ、確かに私は『ドラゴンナイトの世界』で…ベンタラと地球の戦士達によって敗れた」
ゼイビアックス「しかし魂だけの存在となって様々な世界を彷徨ううちに…私はこの世界に辿り着き、君達『μ's』の歌を聴いた」
アギト「私達の…歌を?」
ゼイビアックス「そうだ、実に美しく素晴らしいものだったよ…君達のいるこの世界ごと私の物にしたいくらいにね」
クウガ「!…アンタ」
ゼイビアックス「そんな時、私は『秘密結社ショッカー』の特殊な科学技術によって…この身体を復活させた」
ゼイビアックス「故に今の私は…ドラゴンナイト共に倒される前と全く同じ力を持っている」フフッ
ディケイド「くっ…厄介な事になったな」
アギト「あの、コタロウくん…ドラゴンナイトって誰なの?」
ディケイド「ドラゴンナイトというのは…別の世界の龍騎の事だ」
龍騎「えっ、凛のこと!?」
ディケイド「少し違うな…姿は龍騎と同じだが、この世界とは全く別の世界にいるベンタラの戦士の事だ」
アギト「ベンタラ…弁鱈?もしかして、お魚弁当ってこと?」
ブレイド「そんな訳無いでしょう!?」
クウガ「アンタ…どんだけお腹減ってんのよ!」
電王『あはは…』
ディケイド「もう一つの地球の事をそう呼ぶらしい…オレも何故、こんな事を知っているのか分からないけどな」
カブト「そう…どちらにしても、彼と戦う事は避けられないのね?」
キバ「でも、さっきのあの人の攻撃…とっても強かったよ?」
電王『本当に私達だけで出来るのかな…?』
ゼイビアックス「フフフ…」
(ゼイビアックスは笑いながら…悠々とこちらに近付いてくる)
クウガ「出来るかじゃなくてやらなきゃいけないのよ!そうじゃないと世界が大変な事になってしまうわ…」
ブレイド「にこの言う通りです…コタロウ、何か打つ手はないのですか?」
ディケイド「一応、あるにはあるんだが…」
アギト「何なに?」
ディケイド「『リンクベント』というアドベントカードを使って、同時に技を繰り出せば…ゼイビアックスは倒せるはずだ」
カブト「『リンクベント』…凛、持ってる?」
龍騎「ううん…凛のカードデッキには、全然入ってないみたい」
ディケイド「『リンクベント』は『ドラゴンナイトの世界』にいるマスター・ユーブロンという人物が造り出したアドベントカードだ…今の凛が持っていないのも当然だ」
クウガ「そんな…それじゃ、どうしようもないじゃないのよ!?」
ファイズ「待って!希、カードって確か…?」
響鬼「あっ!?そっか…これの事やね!」スッ
(響鬼は一枚のアドベントカードを取り出し…それをオレに見せた)
ディケイド「それは…『リンクベント』!」
クウガ「何で希が持ってるのよ!?」
響鬼「ふふっ、カードのお告げ…ってとこかな?」
ファイズ「よく言うわよ…実はこのカードも、コタロウにベルトを渡してってお願いしてきたその子から貰ったの」
響鬼「『もし使う時が来たら、使って』…ってね!」
ディケイド「なるほどな、だいたいわかった…凛!」
ブレイド「リンクベントです!」
龍騎「うん!」
(響鬼からカードを受け取った龍騎は…それを左腕のドラグバイザーに入れた)
『LINK VENT』
ゼイビアックス「何…リンクベントだと!?」
(ゼイビアックスが驚いて間もなく…遥か上空から強力なエネルギーが、龍騎の右手に向かって降り注がれた)
龍騎「ニャッ!?」グラッ
ディケイド「皆、凛を支えるぞ!」
アギト「う…うんっ!」ガシッ!
ディケイド「凛、そのエネルギーを奴にぶつけろ!」
龍騎「分かったニャ!」
(オレ達が支える中、龍騎は右手をかざし…エネルギーの全てをゼイビアックスにぶつけた)
龍騎「ニャーッ!!」
ゼイビアックス「グッ…グハァァァァァ!?」
(エネルギーを浴びたゼイビアックスは…先ほどの欧米人風男性の姿に変わった)
ナルタキ「…!」ハァハァ
ディケイド「…勝負はついた、諦めてオレ達の世界から出て行ってくれ」
クウガ「私達のママも…早く元に戻しなさい!」
ナルタキ「…グォアァァァァ!!」
全員「!?」
ナルタキ「ガキ共が…許さん、許さんぞ!」
(そう言って男性は…オーロラから一人のライダーを召喚した)
?「…フッ」
ディケイド「なっ…アイツは!?」
キバ「私と同じ、キバ…?」
ディケイド「キバはキバでも『闇のキバ』と呼ばれるダークキバだ…まさか怪人の他にライダーを呼び寄せる事も出来るとはな」
ナルタキ「今の私はショッカーの幹部だからな…ところで、君達は『リンクベント』について何か勘違いをしているようだね?」
ディケイド「勘違いだと?…!」ハッ
ブレイド「どうしたのですか、コタロウ!?」
ディケイド「『リンクベント』は…『ドラゴンナイトの世界』にいる十三人の戦士全員が使う事で真の効果を発揮するカードなんだ」
龍騎「どういうこと…?」
カブト「つまり、一人だけで使っても効果は薄い…そういう事ね?」
ディケイド「ああ、実際に『ドラゴンナイトの世界』での奴は…十三人がそのカードを使った事で倒されている」
電王『そんな…!』
ディケイド「オレ達が凛を支えていたおかげで、奴を人間体に戻す事までは出来たが…迂闊だった」
ナルタキ「今頃になって気が付いてももう手遅れだ…ダークキバ、やれ!」
キバットバットⅡ世「ありがたく思え…絶滅タイムだ!」
ダークキバ「喜べ…キング自ら、貴様達を地獄に送ってやる!」スッ
(ダークキバはフエッスルを取り出すと…ベルトのキバットバットⅡ世にそれを吹かせた)
キバットバットⅡ世「ウェイクアップ・スリー!」~♪
ディケイド「ウェイクアップ・スリー…まさか、その技は!?」
ナルタキ「そうだ…『キングスワールドエンド』だ」
響鬼「『キングスワールドエンド』…コタロウくん、それってどんな技なん?」
ディケイド「所謂、ダークキバの自爆技だ…使えば一瞬でこの辺りの全てが灰になる」
クウガ「何ですって!?」
ファイズ「もし、そんな事になったら…オトノキがタダで済むはずないじゃない!」
ナルタキ「この学校だけではない…君達が暮らす街はおろか、世界が消滅する可能性もあるだろうな」
ブレイド「どうして…あなたはこの世界を狙ってやって来たはずでしょう!?」
ナルタキ「私に刃向かった罰だ…貴様らはこのまま、この世界が消えるのを指を咥えて眺めていろ!」
(そう言って男性は…吸い込まれるようにオーロラの中へと消えていった)
ディケイド「おい…逃げるな!」
カブト「待って、コタロウ…あれを!」
ダークキバ「ハァァァァッ…!!」
ディケイド「マズい、ダークキバが光り出した…爆発するぞ!」
クウガ「…ねぇ、穂乃果」
アギト「何…?」
クウガ「アンタなら…こういう時、どうする?」
アギト「!…もちろん、決まってるよ」フフッ
クウガ「そう…って事は、きっと私と同じ考えなんでしょう?」
アギト「うん、多分ね…みんな!」
カブト「?」
ディケイド「何だ?」
アギト「あの人を…止めるよ!」
ディケイド「はぁ!?何を言って…」
電王『それ、良いと思う!』
ディケイド「ことりまで…無茶だ!」
クウガ「…賛成の人」スッ
(そこで手を挙げていたのは…オレ以外の九人、つまり『μ's』のメンバー全員だった)
ディケイド「姉ちゃん…皆、どうして!?」
響鬼「決まりやね」
アギト「よし!そうと決まったら行こう?」
ディケイド「考え直してくれ、ダークキバの技は世界を滅ぼすかもしれない程に強力なんだぞ…あまりにも無謀過ぎる!」
クウガ「うるさいわよ!!」
ディケイド「!…姉ちゃん?」
クウガ「無謀な賭けだろうが何だろうが…私達はこの世界を守る為に、勝ちに行かなきゃいけないのよ!」
ディケイド「!」
アギト「…そうだよ、コタロウくん」
ディケイド「穂乃果…?」
アギト「こんな姿になっても、やっぱり私たちは…音ノ木坂学院のスクールアイドル『μ's』なんだよ」
ディケイド「スクールアイドル…『μ's』」
クウガ「そうよ、だから私達は…この世界にいる皆を笑顔にしたいの」
カブト「もちろん…コタロウにもね」フフッ
ディケイド「絵里…でも!」
クウガ「だったら、アンタはそこで見てなさい!」
カブト「ここは私達に任せて…絶対に、彼を止めてみせるから」
ディケイド「ダメだ…行くな!」
アギト「…みんな、行くよっ!」
ブレイド「ええ、もう一度…!」
電王『もう一度…』
響鬼「もう一度!」
カブト「ライブをする為に…!」
キバ「またみんなと…会うために!」
ファイズ「私達は、絶対に…止めてみせる!」
龍騎「行っくニャ~!」ダッ
ディケイド「待てよ、皆…待ってくれ!」
(オレの制止も聞かずに、姉ちゃん以外の八人は走り出した)
クウガ「コタロウ、もし仮に私達が止められなかったら…どうするか分かってるわね?」
ディケイド「…え?」
クウガ「その時は…お願い、あなたがこの世界を救って?」
ディケイド「…無理だ、だってオレはアンタに笑ってもらいたくて…ディケイドに変身しようと思ったんだ」
ディケイド「アンタがいなかったら戦えない!」
クウガ「…アンタならきっと出来るわよ」
クウガ「私の笑顔の為に戦おうとするだけでも強いんだもの…きっとアンタは世界中の人の笑顔の為だったら、もっと強くなれるわ」
ディケイド「…!」フルフル
クウガ「大丈夫よ、コタロウ…私達は必ず生きるから」
クウガ「だからこんな時くらい…私の言う事、聞きなさいよ」
ディケイド「何だよそれ…まさか命令かよ、姉ちゃん?」
クウガ「…ええ、命令よ」フフッ
ディケイド「!」
クウガ「コタロウ…じゃあね」ダッ
ディケイド「姉ちゃん…姉ちゃん!!」
アギト「…にこちゃん」
クウガ「ずーっと、コタロウが心配だった…たった一人しかいない弟だったから」
クウガ「でも、それなのに私は…コタロウに嘘をついてしまった」
アギト「…」
クウガ「きっと、これは…私への罰ね」
アギト「…多分、そうじゃないと思う」
クウガ「え?」
アギト「もし、そうだとしたら…コタロウくんはあんなににこちゃんのことを心配してないと思うもん」
クウガ「!」
アギト「もし雪穂もここにいたら…おせっかいな雪穂のことだから、きっとコタロウくんと同じことを言ってただろうなって思うし」
クウガ「穂乃果…」
カブト「そうね、もし亜里沙もここにいたら…私達の事を心配してくれていたと思うわ」フフッ
クウガ「…絵里」
アギト「だから、気にしないで…にこちゃん」
カブト「どんな時もずっと…私達がそばにいる」
アギト「もうひとりじゃないよ!」
クウガ「!!…ふふっ、そうだったわね!」
ダークキバ「グワァァァァァ!!」
アギト「…そう、私達がこの世界を守ろうとするのは」
カブト「学校が大好きで…」
ファイズ「音楽が大好きで…」
クウガ「アイドルが大好きで…」
龍騎「踊るのが大好きで…」
キバ「メンバーが大好きで…」
響鬼「この毎日が大好きで…」
ブレイド「頑張るのが大好きで…」
電王『歌うことが大好きで…』
アギト「『μ's』が…大好きだったから!」
μ's「やぁーっ!!」ガシッ
(μ'sが同時にダークキバを抑えた瞬間…ダークキバは爆発し、オレはその爆風に巻き込まれてしまった)
ディケイド「うわぁぁぁぁぁっ!!」
キバーラ「た、大変…急いで別の世界に逃げないと!」
?「イーッ!」バサッ
キバーラ「!?」モゴモゴ
?「こちら、戦闘員1010号…例の白い蝙蝠を虫取り網で捕獲しました」
?「回収したディエンドライバーと一緒に持ち帰ります…報告は以上です」ピッ
?「はぁ、やっぱりこの覆面はキツいですね…ぷはっ!」スポッ
少女「ふぅ…それにしても、ショッカーが捜していたこの子をこんな所で捕まえられるなんて」
キバーラ「~!」モゴモゴ
少女「目的の『μ's』の輝きも…まさか二本分回収できるとは思いませんでしたし」
少女「まあ、一本の方は成分が少ないので…クローンを造る素材に使った方が良いかもしれませんね」
少女「さて…ディエンドライバーの最終調整も完了しましたし、早くこの世界を抜け出しましょうか」スタスタ
少女「…!」
少年「…」
少女「ここまで飛ばされてくるなんて…せっかくだし、もう一度だけチャンスをあげましょう」
少女「そうと決まれば、彼も…消滅しかけているこの世界から連れ出さないと」フフッ
少年「…」パチリ
少年「!?」ガバッ
(気が付いて起き上がったオレは…辺り一面が全て真っ白で何も無い場所にいた)
少年「ここはどこだ…オレは、誰なんだ?」
(オレは思わず首から提げていたマゼンタカラーのトイカメラに触れたが…自分がどこから来た誰なのか、どうしても分からなかった)
少年「分からない、何も…思い出せない」
?「目が覚めました?」
少年「!」バッ
?「何度起こしても、目を覚ましてくれなかったので…少し心配したんですよ?」
(オレが振り向いた先には…何となく見覚えのある学校の制服を着た一人の少女がいた)
少女「それにしてもあなた、見事に使いこなしてましたね…私が造ったディケイドライバーを」フフッ
少年「アンタは…?」
少女「私?私は…そうですね」
少女「『悪魔の科学者』ってところです」
少年「『悪魔の科学者』ね…ところで、オレは何者なんだ?」
少女「えっ…もしかして、何も覚えていないんですか?」
少年「それが…自分がディケイドという仮面ライダーに変身して戦っていた事しか思い出せないんだ」
少年「後は、ぼんやりとだが…自分のいた世界に『μ's』というスクールアイドルがいた事ぐらいだ」
少女「そうですか…それだけ覚えているのなら、私としては充分ですけど」ボソッ
少年「何か言ったか?」
少女「いえ…実は、私もあなたがディケイドであるという事以外は何も知らなくて」
少年「…そうか」
少女「突然ですが、ディケイド…あなたは『μ'sの世界』を救うつもりはありますか?」
少年「『μ'sの世界』…?」
少女「スクールアイドル『μ's』のいる世界です…彼女達の世界を救うには、ディケイドであるあなたの力が必要不可欠なんです」
少年「オレの…力が?」
少女「そう…それこそが、失ったあなたの記憶を取り戻す為の手掛かりになるかと」
少年「オレの記憶が…そんな事で取り戻せるのか?」
少女「はい…まだ『μ'sの世界』が完全に消滅するまで少し時間があるので、あなたが頑張れば『μ'sの世界』を救えるはずですよ」
少年「オレが世界を救うって…一体、どうすればそんな事が出来るんだ?」
少女「…例えば、これを見てください」
(その時、一面が真っ白だったこの場所が…まるで宇宙空間のような場所に変化した)
(そこでは…地球のような星がいくつも回っていた)
少年「!?」
少女「凄い光景ですね…これ、何だか分かりますか?」
少年「…どの星も地球のようにしか見えないな」
少女「そう…全部、地球です」
少年「はぁ!?本当にここにある全部の星がか…?」
少女「はい、ですが…」スッ
(少女が指差す方には…重なりそうになっている十個ほどの地球があった)
少年「何だ、あれは…?」
少女「あの中の一つが『μ's』のいる世界です…そして、それと重なりそうになっている後の九つの世界がそれぞれのライダーの世界です」
少年「ライダーの…世界」
少女「九つのライダーの世界にはそれぞれ一人ずつ…ライダーに変身する『μ's』のメンバーと全く同じ名前、同じ顔の子がいます」
少女「それは本来、独立した別々の物語のはずだったのですが…何かの弾みで世界が一つに融合しかけてしまったみたいで」
少年「何かの弾みって…原因でもあるのか?」
少女「思い当たる節はあります…確実な事ではないので、まだ何とも言えないですが」
少年「?…そうなのか」
少女「とにかく、このままだと彼女達がいる世界だけでなく…全ての世界が消滅する事になってしまいます」
少女「その為にディケイド…あなたは九つの世界を旅しなければいけません」
少女「それこそが『μ'sの世界』を救い、あなたの記憶を取り戻す…たった一つの方法です」
少年「…どうしてオレなんだ?」
少女「あなたが全ての仮面ライダーを破壊する者だからです…何故なら《創造》は《破壊》からしか生み出せませんから」
少女「残念な事だけど、何も残してはいけないんです…何も」
少年「はぁ?それ、どういう意味だ…!?」
(次の瞬間、オレの意識は途切れ…いつの間にか知らない場所へとやって来ていた)
少年「…どこだ、ここ?」
少女「ここは…『光写真館』です」
少年「『光写真館』って、あの『光写真館』か…!?」キョロキョロ
少女「どの『光写真館』の事を言っているのかは分かりませんが…今日からあなたの旅の拠点になる事は確かです」
少年「旅の拠点って、ここがか?」
少女「ええ…九つの世界の間を移動する時はそれまで外が昼だったとしても絶対に夜に変わりますので、それを合図にして動く事をオススメします」
少年「…」
少女「あっ、食糧の事なら心配しないでください…予めここの冷蔵庫には食べ物も飲み物も入ってますし棚にお米も備蓄してあります」
少女「あなたのお財布にもある程度、お金を入れておきましたし…しばらくは生活に困らないかと」
少年「随分と至れり尽くせりだが…少し都合が良過ぎやしないか?」
少女「これは『μ'sの世界』を救おうとしてくれるあなたへの贈り物です…それに、私もあの世界が無くなったら色々と困るんです」
少女「あっ、でも…私がこの写真館や食糧などを提供した事については誰にも言わないでくださいね?」
少年「誰にもか?」
少女「はい…何を聞かれても『いつの間にかそうなっていた』みたいな感じで、それとなく誤魔化しておいてください」
少女「それが…この写真館を拠点として提供する代わりのお約束です」
少年「そうか…なるほどな、だいたいわかった」スタスタ
少女「どこへ?」
少年「散歩だ」
少女「そうですか、じゃあ…私もこれで」
少年「何か用事でもあるのか?」
少女「ええ、ちょっとした用事がありまして…これから九つの世界とは別の世界に向かう予定なんです」
少年「…また会えるのか?」
少女「それは…分かりません」
少年「そうか、じゃあ…またいつかな」ガチャ
少女「…はい、またいつか」
バタン
(少女に別れを告げたオレは…スタジオのある部屋を後にした)
少女「さて、残り八人の『ネガμ's(仮)』の最終調整もしたいですし…そろそろ『A-RISEの世界』に戻りましょうか」フゥ
少女「早く『A-RISE』の輝きも手に入れないと…彼がこの世界にいる事を言えば、きっとゼイビアックスも動くでしょうし」
少女「そうすれば、いつか私の『実験』もきっと…!」
(写真館を出たオレは…導かれるようにとある学校の門の前までやって来ていた)
少年「『音ノ木坂学院』…もしかして、ここは『μ's』のいる学校じゃ?」
少年「…少しだけ、入ってみるか」スタスタ
(そのまま、オレは学校の中に入り…校庭へと向かった)
少年「…」
(校庭に着いたオレが何となく腹部にバックルを装着し、ゆっくりと瞼を閉じたその時…誰かの声が聞こえてきた)
?『お願い…雪穂や亜里沙ちゃんと一緒に、九つの世界を救ってほしいの!』
(何だ、この聞き覚えのある騒々しい声は…?)
?『ディケイドである君と高坂雪穂と絢瀬亜里沙の存在が…μ'sとこの世界を救う鍵になるの!』
(この声も、どこかで聞いた事あるような…)
?『お願い、世界を救って…?』
(今の声も…確か、よく聞き覚えが)
少年「…」パチリ
(目を開けたオレは…近くで自分と同い年くらいの二人の少女が隠れている事に気が付いた)
(敵、或いは味方か…もしかして彼女達が『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』なのか?)
(そんな事を思いながら…オレはズボンから取り出した一枚のカードを見つめた)
少年「!」
(その直後、オレの周りにオーロラのようなものが出現した)
レッド・ミニオン「…」
亜里沙「あの子、大丈夫かな…?」ボソッ
(そうか、この世界が…なるほどな)
少年「…ここが『μ'sの世界』か」
レッド・ミニオン「…」バッ
少年「…」サッ
(オレは…レッド・ミニオンの攻撃を難なく避けた)
レッド・ミニオン「!?」
(オレはレッド・ミニオンと少し距離を置いた後…ベルトのバックルを開いた)
少年「…変身!」
(オレは持っていた一枚のカードを裏に返し…バックルに装填した)
『カメンライド…ディケイド!』
レッド・ミニオン「!?」
亜里沙「ま、眩しい…」
雪穂「うっ…」
(バックルを閉じたオレは光に包まれ…その姿を変えた)
ディケイド「…」
亜里沙「あっ…もしかして!」
雪穂「…うん、間違いない」
雪穂「ディケイド…!」
(そう、オレはディケイド…通りすがりの仮面ライダーだ)
ディケイド「さて…始めるか」
(こうしてディケイドとして戦うようになったオレは、あの声に導かれるまま…二人の少女と共に旅をする事になったのだった)
(そう…『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』から『ツカサ』という大切な名前を貰って)
???「…」パチリ
???(大ショッカーの基地内でしばらく眠っていた俺は…目を覚まし、玉座から立ち上がった)
???「…夢か」ムクリ
戦闘員「お目覚めですか、大首領様…?」
???「ああ…実に良い気分だ」
戦闘員「…そうですか、それは安心しました」
???「ベルトの分析の結果はどうだ?」
戦闘員「はい…『クウガの世界』を始めとした九つの世界にある物質以外にも、幾つもの世界から採取されたあらゆる物質が使われていた事が判明しました」
???「そうか、なるほどな…大体分かった」スタスタ
戦闘員「大首領、どちらに…?」
???「決まっている…『μ's』を俺の物にする」
戦闘員「!」
???「『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』の行方は?」
戦闘員「写真館にはいませんでした…現在、捜索中です」
???「それならあの一族の兄弟を呼べ…奴らがいれば、すぐに見つかるはずだ」
戦闘員「イ、イーッ!」ダッ
???「待ってろ…『μ's』」
???「世界は、俺が貰う…!」ニヤリ
雪穂「まさかツカサの正体が別の世界からやって来たにこさんの弟さんだったなんて…」
亜里沙「うん…私もビックリしたよ」
雪穂「キバーラ…どうして今までそんな大事なこと、私達に黙ってたの?」
キバーラ「それは…ツバサに口止めされていたからなの」
亜里沙「えっ…ツバサさんも知ってたの?」
キバーラ「ええ…『μ'sの世界』でアタシが見た事全部を話したの、そうしたら」
ツバサ『あの子達には何も話さない方が良いでしょうね…』
キバーラ『どうして?』
ツバサ『彼が自分自身の力で記憶を取り戻そうとしているからよ…それに、私やあなたが話した所で今の彼は信じないわ』
キバーラ『確かに、そうかもしれないけど…あの二人には言ってもいいんじゃないの?』
ツバサ『雪穂さんと亜里沙さんは…自分達の世界とあの子の記憶を元通りにする為に、あの子の旅に同行しているのよ?』
ツバサ『だから、彼女達にそれを告げるのは無粋というものよ…例えそれが真実であってもね』フフッ
キバーラ「という事だったの…今まで黙ってきてごめんなさい」
亜里沙「…気にしないで、キバーラ!」
キバーラ「!…亜里沙ちゃん」
雪穂「ツバサさんが私達のことを想って、そう言ってくれたんでしょ?…だったら仕方ないよ」
キバーラ「雪穂ちゃん…」
雪穂「だったら、なおさらツカサに会わないとね…私達がこのことを教えてあげなきゃ」
雪穂「それに…このカメラも、早く返さないとね」
雪穂(私はツカサから預かったカメラを…ジッと見つめていた)
亜里沙「…ツカサ、大丈夫かな?」
雪穂「きっと、いつもの無愛想な顔をして帰ってくるはずだよ…ツカサのことだから」
亜里沙「そうだよね…ツカサなら、絶対に帰ってきてくれるよね!」
雪穂「うん…ところで、さ」チラッ
こころ「ここあ、そっちはどうですか?」キョロキョロ
ここあ「うん…こっちはだいじょうぶだよ!」
こころ「こっちもいじょうありません…どうやら、まだだいじょうぶみたいですね」フゥ
雪穂(私達はなぜか…写真館を出て、とあるマンションの駐車場にいた)
雪穂「私達…何でこんな所にいるの?」
亜里沙「もしかして、こころちゃんとここあちゃん…誰かに狙われてるの?」
ここあ「ええっ、ふたりとも…なにいっちゃってるの!?」
こころ「大ショッカーからにげるためにきまってるじゃないですか!」
亜里沙「え?」
雪穂「大ショッカーから…逃げる?」
こころ「そうですよ!とくにゆきほさんとありささんは、かおがバレているのできけんなんです!」
ここあ「しゃしんかんにいたままだとつかまっちゃうからね…きをつけないと!」
こころ「あいてはあくのぐんだんなんですよ?どこであなたたちがねらわれているかわかりませんから!」
雪穂「えっと…」
亜里沙「どういうこと?」
ここあ「えっ!それもしらないでいっしょにきてたの!?」
こころ「あなたたちは…せかいをかえるかもしれない、すごいちからをもっているんですよ!?」
亜里沙「へっ、スゴい力…?」
雪穂「世界を変えるかもしれないって…本当にそんな力が私達にあるの?」
こころ「はい、ほのかさんからききました!」
雪穂「えっ…お姉ちゃんから!?」
ここあ「うん、ほのかおねえちゃんがここあたちにそうおしえてくれたの!」
こころ「みらいのスクールアイドルをめざしているふたりなら…きっとせかいをかえてくれると!」
雪穂「…」
亜里沙「どうしたの、雪穂?」
雪穂「なるほど、状況が読めてきたよ…あのお姉ちゃんの言うことだもんね」ガックリ
ここあ「そんなビミョーなかおしないでよ!」
こころ「『μ's』のおねえさまをみならって…いつも『にっこにっこにー♪』ですよ!」
雪穂「いや、多分…お姉ちゃんはテキトーに言っただk」
こころ「はい、みなさんごいっしょに!にっこにっこにー♪」
ここあ「にっこにっこにー!」
亜里沙「にっこにっこにー!!」
雪穂「亜里沙まで聞いてないし…もう、お姉ちゃんったら何で変なこと吹き込むかなぁ?」ハァ
?「おい、テメーら…見つけたぜぃ!」
雪穂「!?」クルッ
雪穂(私達の目の前には…重たそうな金棒を持っている二本角で鬼のような姿をした銀色の怪人がショッカー戦闘員達を連れて立っていた)
亜里沙「誰…?」
こころ「あ、あれは…」
ここあ「シルバラ!?」
雪穂「シ、シルバラ…?」
亜里沙「知り合いなの?」
ここあ「ちがうよ!あいつは『超・電王』ってえいがにでてきた『オニ一族』っていうてきのひとりなんだよ!?」
雪穂「え…映画?」
こころ「じつは、おとうとのこたろうが『仮面ライダー』ずきで…よくてれびのりあるたいむやでぃーぶいでぃーでみていたんです」
ここあ「そうしたら、いつのまにかここあたちまでハマっちゃって…」
雪穂「えぇ…?」
こころ「それにしても、まさかふっかつしてわたしたちのせかいにやってきていたなんて…!」
シルバラ「大ショッカーに甦らせてもらったんだよ…もう一度、俺達の切り札を動かす為になぁ!」
ここあ「やっかいなことになっちゃったなぁ…こうなったら、みんなでにげよう!」
こころ「そうするしかないですね…みなさん、わたしがあいずしたらいっせいにダッシュです!」
亜里沙「うん、分かった!」
雪穂「ええっ!?いきなりそんな…」
こころ「やるしかありません!いきますよ…」
?「動くな!」
ここあ「!?…こころ、あれ!」
こころ「えっ…!?」
雪穂(いつの間にか、シルバラの隣には…三本角の金色の怪人が立っていた)
雪穂(そして、その怪人は…気を失っている一人の男の子を人質にしていた)
こころ「こたろう!!」
虎太郎「…」
シルバラ「兄ちゃん!」
?「よく見つけた、ミミヒコ…これでこの世界は大ショッカーの物だ」
ここあ「おそかった…まさか、ゴルドラのヤツにつかまっていたなんて!」
亜里沙「あの人も『オニ一族』の仲間なの…?」
こころ「はい、なまえはゴルドラ…シルバラのおにいさんです!」
ゴルドラ「『高坂雪穂』に『絢瀬亜里沙』…これ以上逃げれば、この子供の命は無い」
シルバラ「兄ちゃんがそう言ってんだ、早くしろ…ついでにそこの白い蝙蝠も大人しくこっちに来やがれ!」
キバーラ「マズいわね、この状況…人質がいるんじゃ逃げる事も出来ないわ」
亜里沙「そんな…どうしよう、雪穂!?」
雪穂「…っ!」
ここあ「ダメ!」
こころ「みなさん、いってはいけません!」
雪穂「!…こころちゃん、ここあちゃん」
ここあ「これはきっと大ショッカーのわなだ…みんながいっても、あいつらはこたろうをはなすつもりなんてないんだ!」
こころ「そもそも大ショッカーはこたろうをかえしてくれるとはひとこともいっていません…だから、いっちゃダメなんです!」
亜里沙「でも、このままじゃ虎太郎くんが…!」
こころ「それが大ショッカーのやりかたなんです…もくてきのためだったら、どんなにひきょうなことだってやってしまうんです!」
ここあ「だからここは、おねえちゃんたち『μ's』がたすけにくるのをまって…」
???「残念だったな…もう『μ's』の助けは来ない」
亜里沙「えっ?」
雪穂(誰かの声がしたその瞬間…大ショッカーの人達は慌てていた)
ゴルドラ「この声は…大首領様!」
シルバラ「おいテメーら、道を開けろ…大首領様のお通りだ!」
戦闘員「イーッ!」ササッ
雪穂(ショッカー戦闘員達が道を開けると…その間からゆっくりと一人の少年が姿を現した)
亜里沙「!…そんな」
キバーラ「ウ、ウソでしょ!?大ショッカーの大首領って…」
雪穂「ツカサ…?」
ツカサ「…」
次回、仮面ライダー×ラブライブ!
「俺は全ての破壊者だ…俺はそれを受け入れた」
「うわぁっ!?…っ!」
「わぁ~!」
「全ての『μ's』メンバーを集める…」
「ス・テ・キ~!」
「うぅっ…」グスッ
「どうしてみんなをカードなんかに!?」
「もしかして…?」
「いいんだよ、止めなくて」
「戦うとは、こういう事だ…」
「これは、一体…?」
「私に言われても…」
「あの子はもう、あなた達の知ってるツカサじゃない…」
「凛ちゃんもそうだったんだね!」
「この世界も既に、大ショッカーの魔の手が…!」
「ダレカタスケテー!」
「任せて!」
「滅びの現象が起きているのね…」
「どうしよぉ~!?」
「私が面白くしてあげる」
「何をしたんですか!?」
「それこそが大ショッカーによる、全ての世界の征服だ」
「曲は出来る?」
「…!」
「イーッ!」
「難しいなぁ…」
「お姉ちゃん達を取り戻せるなら、私はツカサを倒してみせる!」
「Yes,We are school idol!」
「出発ニャ~!」
「行ってらっしゃい…」
「世界はもう、おしまいなの…?」
「命ある限り戦う…それが、仮面ライダーなんでしょ?」
「さあ、行こう!」
「私達がツカサを止める!」
「μ's…ミュージック・スタート!!」
第23話『僕らは君のなかで』
「もう一度です!」
叶え、私たちの夢――