比企谷提督と千葉鎮守府   作:血塗りの晶

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お久しぶりです。また会えましたね!





……エタっててごめんなさい!反省してます!m(_ _)m


22.俺が鈴谷に甘いのは、間違っていない

執務なんてロクでもない。

だが、ロクでもないこの仕事をこなさねば、俺に給料は入らず、悠々自適な老後が送れない……いや、そもそも今働いている時点で間違っているんだよなぁ。働いたら負けであるというプライドを持った俺にとって、労働とは毒である。だいたい、俺をこんな美女だらけの場所に投入するという考え自体間違っているんだ。

 

……帰りたいなぁ。

 

と、無駄にげんなりと自己被害妄想を頭でくるくる回している。

横には今時女子高生っぽい鈴谷が書類とにらめっこを続けていた。

 

 

「……無理なら、休んでいてもいいんだぞ?」

 

 

「それ、私いる意味なくなっちゃうじゃん!?」

 

 

俺がそうやってやや低めの声で彼女に問いかけると、まるでお笑いのツッコミばりに勢いのよい返答が返ってくる。

ギリギリと歯ぎしりしながら、ゆっくりと書類の要点をまとめて鈴谷はなんとか報告書のまとめを行なっていた。

 

判子を押したりだとか、流石にそこら辺は彼女でも出来、その辺のことはすぐに終わりを告げたのだが、まだまだ面倒な仕事は多い。

 

会計報告とか、計算の苦手な俺にはちょっと何やってるか分かんない。って状態で、鈴谷も案の定計算が苦手っぽかった。というか、資材の費用とか、光熱費とか色々計算しないといけないのかよ。

多少の無駄遣いしてもいいくらいに時間に猶予を持たせてほしいところだ。

さて、そのことはとやかく言ったところで仕方がない。問題は、鈴谷にある。

 

 

……あの、計算どころか文章作成能力も中々酷いんですが。

はっきり言おう。

鈴谷に執務は向いていない。というか、事務仕事自体が彼女の性に合ってなさそうである。下っ端として働くのに慣れている俺に比べ、ここに来てまだ日にちも浅い彼女だ。当然と言ったら当然かもしれない。

 

 

「鈴谷、そろそろ休憩いれようか……」

 

 

「まじで!?」

 

 

「ああ、超まじだわ……ていうか俺無理にやらせてるわけじゃないからね?」

 

 

「分かってるって!」

 

 

本当に分かっているのか?

今思い出したかのような惚けた顔を見てしまい、軽くちょい嫌な上司みたいに自分を置き換えちゃったよ。

 

 

……いや、別に自分のことをいい提督だわ。とかナルシストな考えは持っていないが……。

っべ〜〜!……とか言う戸部みたいにポジティブじゃないし。

なんなら材木座からあのテンションを取った根暗キャラってほどまである。やだ、俺って材木座以下だった!?

まあ、材木座以下ということはないか……だって材木座だし。

変なことを考えてしまった……多分疲れているんだな、うん。

 

 

俺はマッカンを鈴谷には緑茶を差し出して束の間の休息に浸る。

それにしても、鈴谷がいると本当に空気が明るくなるというか、賑やかという俺には無縁の空気を与えてくれているような気がする。

 

 

「まあ、あれだ。鈴谷がいると執務室が明るくなるな」

 

 

「へっ!?」

 

 

しまった。柄にもないことを言ってしまった。

しかし、鈴谷は顔を俯けたまま固まってしまい、その表情を読み取ることができない。嫌われたらマジで今後の関わり方が分からなくなる。

不安を抱きつつ、そのまま沈黙を続けていると急に鈴谷が顔を上げた。

 

 

「提督は、私といて楽しい?」

 

 

唐突にそんな質問をしてくる。

想像もしていなかったようなことを言われ、言葉に詰まる。俺が楽しい? そもそも仕事中に楽しいと感じるというのはどうなんだろうか……いや、そういうことを言っているんじゃないんだろう。

俺らしい言葉で、俺の気持ちを伝える。

 

 

「一人でやっているより、気分は楽になったな。無言で黙々と作業をこなすのも嫌いじゃないが、ずっと一人というのも退屈だし」

 

 

「へー、そうなんだ。……というか、返答が捻くれてるね」

 

 

くすりと笑う鈴谷に顔を背けると、上機嫌になった鈴谷は俺の顔を背けた先に立ち、顔を覗き込んでくる。思わず顔を赤らめてしまい、さらに笑われた。

 

 

「提督って、面白いね」

 

 

「……面白かったら、友達沢山できてんだよなぁ。というか、休憩はもういいのか?」

 

 

「まだ休むに決まってんじゃん!……ほら、提督。肩とか揉んであげる♪」

 

 

上機嫌の鈴谷は、無理矢理こちらに近寄ってそのまま俺の肩に手を置く。

いや、ちょっと褒めたくらいで、心許しすぎやしませんかね。なにそれ。チョロインってやつなんですか?

 

 

俺の中で鈴谷の株が戸塚のすぐ下まで上昇していた。

 

 

「提督、どう?疲れ取れてる?」

 

 

肩揉みにそんな即効性なんてあるはずがない。……いや、美少女に肩を揉んでもらうという背徳感を加味すれば、疲れを感じないということもあるかもしれない。むしろ、耐性がなさすぎて疲れが増してしまうまである。

……おいおい、その理論だと逆効果になっちゃうんだが、何を言っているんだ俺は。逆に逆にと思考を掻き回しすぎて、最終的に無茶苦茶な結論に至ってしまった。反省しよう、うん。

 

 

「あのな、鈴谷」

 

 

「うんうん!」

 

 

いかん。鈴谷の期待に満ちた眼差しを裏切るわけにはいかない。戸塚以外にこんなにも煌びやかな瞳を持つものがいたとは……。

俺は心の底から思う。守りたい、この笑顔。

そうと決まれば、俺の返答は決まっている。

 

 

「……ああ、すげぇ癒されるわ。お前マッサージとか得意なのな」

 

 

秘技!取り敢えず褒めるである。

実際、鈴谷の肩揉みは的確に凝ったところを解してくれるような高精度なものであった。鈴谷の気分を害さないためにも少々誇張した表現をしたのだが、どうだろう。

 

 

「嘘っ、こうやって肩揉んであげたりって初めてなんだけど……」

 

 

「そうなのか。初めてには思えないくらい上手いぞ」

 

 

「えへへ、なんか照れる。提督に褒められるのって、なんだろう……心が温かくなる感じがする」

 

 

鈴谷は優しげな口調でそう言う。

そんな初々しい鈴谷の様子を俺もにこやかに眺める。……仮に叢雲にこんな視線を向けていたら、警察に突き出されるか、海底に沈められることだろう。執務中であればなおのことである。そう考えると叢雲怖すぎるだろ。もう少しヒロイン力を向上させてほしいものだ。

 

 

「……まあ、あれだな。執務はそんなに急いでやらんでもいいか。苦手なものを無理してやるなんて合理性に欠けるし、なにより俺に似合わない」

 

 

「おっ、提督サボっちゃうの?」

 

 

「断じてサボりじゃない。厳正な審査の結果サボタージュを推奨しているだけだ」

 

 

「それがサボりって言うんだよ。まあ、私もあんまり難しいこと出来ないから、提督がそう言ってくれるとちょっと気が楽になるね!」

 

 

まあ、無理を強いるのは俺のやり方ではないし、無理をするのも俺らしくない。残った分は、また叢雲にぶん投げてこっぴどく叱られるという不名誉な対価を貰っておこう。

 

 

「ということで、今日の執務はこれくらいにして……鈴谷、なにかしたいこととかあるか?」

 

 

「あっ、じゃあさ!私マンガとか読みたい!」

 

 

「そうか。……なら、近くのコンビニでマンガ本でも買ってくるか」

 

 

鈴谷に甘すぎるという指摘をしてくる輩よ。

……反論はしない。

 

 

「マジで!」

 

 

「まあ、俺もちょうど読みたい気分だったからな。叢雲にバレたら、鉄拳制裁待ったなしな危ない行為ではあるが……今日くらい大丈夫だろ」

 

 

「提督。私、提督に一生ついていくよ」

 

 

ストレスの発散は大事だから。そう、これは後々の鎮守府のために必要なことだから。決して、俺に対して純粋に優しく接してくれている鈴谷のささやかな願いを叶えるための行動ではないのだ。……ただ、利害が一致しただけであって、特に意味はない。本当に!(必死

 

 

「……じゃあ、行くか」

 

 

「うん!」

 

 

そのままテンションの高い鈴谷と共に執務を放棄し、俺はコンビニへと向かう。久しぶりのお出掛け。

騒がしいのは、そこまで好きではないと思っていたが、鈴谷とのコンビニでの買い物は少し楽しかった気がした。

 

 

……当然、後日。

俺と鈴谷は、執務をサボりマンガ本を読み漁るという奇行がバレたため、叢雲に延々と説教をされたのだった。

 

 

 

 

 

 

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