そう言えば、今回は新しい艦娘が登場します。
建造ドッグ、ここは艦娘を作り出すことが出来るというなんとも不思議な場所である。
確かに大きな機械があるのだが、ここから艦娘…つまり人間が誕生するなんて、中々におかしな話だ。
生命は何もコウノトリが運んでくる訳ではないのだから。
生命が誕生するということはそんなに単純なことではなく、もっと大きな大変なことなのだ。
………それなのに…。
「……なぁ、本当にここから艦娘が出てくんのか?イマイチ想像が出来ないんだが……」
「大丈夫よ、ちゃんと艦娘は建造されて、ここに艦娘として現れるのだから」
やっぱり信じられん。
「……いや、でもなぁ……原理とか全然分かんないんだが…」
「あら、原理なんて簡単よ。そこにいる妖精さんが艦娘を作るだけのことよ」
えっ?なにそれ。妖精って……ここはファンタジーな世界じゃないんだぞ。
だいたいこの世界に妖精なんているはすが……。
「………はっ?何このちっちゃいの……人形?」
「それが妖精よ、今さっき説明したばかりじゃない」
いや、叢雲さん。
説明して、なんでも分かるなんて無いですからね。
妖精って普通に何?ってなるから!!
「……いや、説明はされたが…」
「とにかく妖精さんが艦娘を作るの。いい加減に現実をみなさい。今までのあんたの常識と今この環境の常識とでは全くの別物なのよ」
「そうだな……順応性を高めようと思う」
「…それでいいのよ」
まあ、現実を真摯に受け止めて、俺なりに理解していくしか無いか……。
提督として、しっかりしていかなければ……。
「……建造ってどうすればいいんだ?」
「そこに資材を入れるのよ。燃料、鋼材、弾薬、ボーキサイトの四種類が主な材料になるわ」
「なるほど……量はどうすればいい?」
「取り敢えず、まだこの鎮守府には十分な資材が確保しきれていないから、艦娘を建造するのに最低限必要な全て30のレシピでいきましょ」
「……おう、全て30だな」
……30って、単位はどれくらいなのだろうか?
グラム?キログラム?トン?
まぁ、いいか……。
あと、トンってことは無いな、うん!
「……資材入れたぞ、ん?一時間って書いてあるが……これは何だ?」
「建造にかかる時間よ。時間によってどのような艦娘が建造されるのかが変わってくるのよ。もうひとつドッグがあるからそっちでも建造しちゃいなさい」
「ああ、分かった」
叢雲に言われるがままにもうひとつのドッグにも最低値の資材を投入する。
時間は22分………なんというか……。
「………なあ、叢雲」
「…ん?何かしら」
「…建造ってこんなに速いもんなのか?」
「そうね、正直私もこんなに速いのは前々から不思議に思っていたわ。……これも妖精さんの力ってことかしらね?」
「……ええ、妖精って…なんか今凄いやつだと実感したわ」
そんな会話をしている最中にも、妖精はせっせと働いている。
こんなにちっこい妖精が艦娘を一時間や数十分程度で作り出すことが出来る。
なんというか、やっぱり色々と受け入れられない現実が目の前にある現実……。
訳が分からなくなって考えてることがめちゃくちゃになっている。
何が『受け入れられない現実が目の前にある現実』だよ!何言ってんのか俺でも分からんわ!
「……あんた、なんか目が凄く泳いでいるわよ?大丈夫…?」
「…いや全然大丈夫です」
どうやら動揺しているのがばれていたようだ……オーケー……クールにポーカーフェイスを貫こうか。
「……それから建造についてもうひとつ言うことがあるわ」
「…ああ」
「この建造には時間が決まっているけれど、実は建造の時間を短縮することが出来るのよ」
なに!?
「それはどういうことだ!?これ以上に短くなるのか?」
「ええ、このバーナーを妖精さんに渡すと、今すぐにでも仕上げてくれるわ」
と言いながら叢雲は傍においてあったバーナーを持ち上げる。
サイズ的には普通に見えるが、妖精に持たせるには少しばかり大きいくらいのバーナー。
特に変わったようなものでも無く、シンプルな感じだ。
このバーナーで建造の時間を短縮出来るのなら、短時間に多くの艦娘を建造して、あわよくば艦娘だらけの世界にでも出来るのではないだろうか?
「……なあ、これってどのくらい有るんだ?」
「残念ながらバーナーはとっても便利だけど、ここにはこれひとつしか置いてないわ。欲しかったら調達してくるのね」
「まぁ、そうか……取り敢えずコレ使ってみても良いか?」
「良いんじゃない?あんたが提督なんだから一々私に許可なんて要らないわよ」
「そうか……なら使うぞ!」
取り敢えず、一時間のドッグの方を作業している妖精にバーナーを渡す。
妖精は嬉しそうにバーナーを受け取った。
……妖精って可愛いな。
ボオオオォォォ!!!
バーナーを受け取った妖精さんが、いきなり資材に向かってバーナーを炊きはじめた。
俺が何しても火の粉すら出なかったバーナーから、凄まじい火力で炎が噴射されている。
これが妖精さんの力なのだろう。
見た目によらずに圧巻の働きである。
「……艦隊に新しいメンバーが加わったようね……出迎えなさい」
「……えっ!あ、あぁ…そうだな。悪いぼーっとしてたわ」
どうやら建造は既に終わっていたようだ。
しかし、今の建造……バーナーを使ってから5秒もかからなかった……。
凄まじいと心の底から思う。
「……あの……軽巡洋艦、
本当にドッグから艦娘が出てきた。
分かってはいたことなのだが、やっぱり驚くわ、これ。
「……ああ、えっと。俺はここの提督の比企谷八幡だ。神通さん、これからよろしくお願いします」
「……ちょっと、なんで私は呼び捨てなのにこの子には『さん』をつけるのよ?」
いや、なんで早々そこにツッコミ入れるんだよ。
建造出来ての第一声がそれって……叢雲、大物過ぎ……。
あと、神通さんは中々俺と同じ臭いが……いや、流石に失礼だわ……。
こんな美人がボッチなはずは無いな、うん!
「……提督?…その……私は…どうすれば良いのでしょう……?」
「…えっ……叢雲、どうすればいい?」
「……そうね、取り敢えず軽巡洋艦が建造出来たのだから出撃しても良いんじゃない?」
なら、そうだな。やることは取り敢えず決まった。
「よし、なら今すぐに出撃し「あっ!待ちなさい。その前にあんたは書類仕事についての方が優先よ!」
「………えっ…!?」
書類……仕事。
なんてことだ、書類仕事なんて……書類仕事なんて……。
「ほら、早く行くわよ。神通、あなたも着いてきて」
「……え、はい。…とにかくよろしくお願い致します…」
「………仕事……したく…な…い」
出撃をさせようとした比企谷であったが、叢雲が執務について思い出した為、比企谷はあえなく書類仕事へと駆り出されたのだった。
今までの執務について忘れていた分、どっとやる気が失せていく比企谷であった。
ちなみに、もうひとつのドッグで建造されていた艦娘はそのまま放置。
執務が終わるまでドッグの中で待機となった。
比企谷が連れていかれる光景を、妖精はじっと見つめていたという……。
忙しくて書くのが大変ですねw