ハリーはベルとヘスティアを迎えに行くため教会地下室を出発した。まず向かうのはバベル前の広場である。状況は詳しくわかっていないが、昨日に引き続いて、今日もダンジョンにもぐることは無理じゃないかとハリーは考えていた。となるとリリルカ・アーデに今日もダンジョンに潜るのは休みだと連絡しなければならないのだが、連絡先がわからなかったのだ。今度聞いておこうと決心しつつ、広場へと到着する
背負っているはずの巨大なバックパックを目印にリリルカを見つける。
「おはようございます。ハリー様。あれ、ベル様はどこですか」
いつもと違い、一人でやってきたハリーに疑問をぶつける。それでハリーは昨日の説明を始める。
「そのことなんだけれど、昨日の怪物祭でモンスターが脱走したのは知ってるかい?」
「ええ、ロキ・ファミリアと、あと無名の冒険者様が退治したそうですが、まさかハリー様が?」
「いや僕じゃなくて、ベルが一匹退治したんだけれど、格上の敵だったみたいで、くたびれているだろうから、念のため今日は静養するためにダンジョンはお休みにしようと思うんだ」
リリルカはハリーを半眼でジトッと見つめた。
「僕、何か変な事言った?」
何故だか不安になり、落ち着かない気分になるハリー。
「いえ、『だったみたいで』とか『くたびれているだろうから』とか、モンスターを退治したときからずっと、ハリー様はベル様と別行動だったようですが、なぜ、くたびれているだろうと推測しているのかと不思議になりまして・・・」
「ああ、今ベルたちは『豊穣の女主人』という所にお世話になってるそうで、そこから伝言がきたんだよ。で、今から迎えに行くところ」
その返事を聞いて、リリルカは首をかしげ、むむむと唸る。
「うーん。。。ハリー様、ちょっと気になる事がリリにはあるのですが、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「うん、もちろん。いいとも」
なんだろうと思いながら、ハリーはリリルカの質問を待つ。
「まちがっていたら申し訳ありません。単刀直入にお聞きしますが、ハリー様は○モでしょうか?」
「ちがうわぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 何言ってんのぉぉぉ!」
度肝を抜くリリルカの質問に、ハリーは絶叫してしまう。周りにいる冒険者が、なんだなんだと注目する。それに気づいてハリーはあわてて、声を潜める。
「いえ、ベル様となんだか妙に仲がよろしいようですし、昨日から会っていないのに、『今はくたびれている』とか『今日は一日休ませる』とか様子がわかっているツーカーの様子とかがどうも、その、なんですか、そのう、ねぇ?」
ちょっとモジモジとしながらも視線をそらし、顔を少し赤くしながら、リリルカは言葉を続ける。
「『ねぇ?』じゃないよ! 『ねぇ?』じゃぁぁぁぁぁ! 違うから! 僕、ノーマルだからね!」
いろいろと言われることも多かったハリーであるが、ホ○と言われたことは無かった。多分無かったような気がする。どうだったかな。この子何か怖いよとうなだれるハリーであった。
「違うのですか? ベル様の提案には大体無条件で賛成しているようですし、私はてっきりそうなのかとばかり」
「ほんっと、違うから! それはベルが団長だし、無難でまともな提案だから、反対する必要が無いからだよ!」
もうベルたちの事は放っておいて、家に帰ってベットに潜り込んで眠りたいと切実に感じるハリーであるが、そうも行かない。
「わかりました。では、そういうことにしておいて差し上げます」
あくまで信用しないリリルカであるが、ハリーは名案を思いついた。
「ああ、じゃあ、リリも付いてきてくれる。荷物運びを手伝って欲しいし、あと神様には嘘がつけないだろう。神様に保証人になってもらうから」
「なるほど、それはいい考えですね。では行きましょう。『豊穣の女主人』でしたね。場所はわかります。こちらですよ」
会話自体は五分もかかっていないはずなのに、激闘を一日し続けたような疲れを感じるハリーであった。
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だがハリーの受難はこれで終わったわけではなかった。リリルカの案内で目的地『豊穣の女主人』に到着し、二階で休んでいたベルたちと無事に合流できた。ベルとヘスティアは二人ともすでに起きており、ハリーの『今日のダンジョン探索はお休み』に賛成して、ホームでゆっくりすごす事にしたのである。
だが、ここでリリルカがハリーをまたもや、半眼でジトッと見つめる。その様子を見て不安に襲われるハリー。
「うーん。。。ハリー様、ちょっと気になる事がリリにはあるのですが、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「うん、なんかもう、嫌な予感と駄目な予感しかないけど、ほっとくのもまずい気がするから、もうはっきり言ってくれて良いよ」
なかば自棄なハリーである。
「ハリー様はロ○○ンでしょうか? ヘスティア様や私を見る目つきから、どうもそんな気配がするのですが」
二人の会話を聞いていたヘスティアが、反射的にハリーから距離をとる。
「ちがうわぁぁぁぁぁぁぁ!!!! いきなり、何言ってんのぉぉぉ!」
ヘスティアの態度に傷つくハリー。そのハリーの心からの絶叫を聞いてほっとするヘスティア。
「うるさいよ、一体何やってるんだい! 元気になったんなら帰っとくれ!」
階下から店主の怒号が響き渡る。ベルが慌てて、すいませんすいませんと階段の上から、見えないだろうに、ぺこぺこと頭を下げて謝っている。
「と、とりあえず、お礼を言ってから帰ろうか、ベル君。それとサポーター君。ハリー君は○リコ○じゃないから大丈夫だよ。嘘じゃない」
ヘスティアが言うが、その答えを聞いてもジト眼を崩さないリリルカ。
「じゃあホ─」
「いや、それも違うからね! 本当だからね!」
即座に喰い気味にハリーが否定し、ヘスティアがそれを真実だと保障する。こうして、ようやくリリルカの誤解は解けたようである。ハリーを見る目つきがようやく元に戻った。一人、ベルだけが、なんだかよく分かっていなかった・・・
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その後、スキルを如何なく発揮したリリにも荷物運びを手伝ってもらい、ホームまで帰還した。そしてリリは片付けたい用事があるということで帰宅し、その他の三人は思い思いにくつろぐことにした。
ハリーはこの際だと最近進めている作業を再開する。
リリルカに教えてもらった材木店で購入した材料を、自分の荷物を入れている棚から取り出す。片手でちょうど握りやすい太さで、1.7メートルほどの長さの木の棒。まずは木の棒に仕上げとして、丁寧に固形ワックスをかけ、ごしごしと磨きをかける。それから大量の細い木の枝の長さを、大体同じ長さに切りそろえる。
そして、最初の木の棒の一端に、細い枝を束ねて取り付ける。枝が外れないように一本一本を丁寧に接着していく。
それを見ていたベルが我慢できなくなったのか話しかける。
「ねえ。ハリーちょっと聞くけど、それってもしかして箒だよね」
今迄は、戦闘用の棍棒を作っているとベルは考えていたのだ。作業の手を止めずにハリーが答える。
「うん、うまく出来るかどうかわからないけど、箒だよ」
ベルとヘスティアから見ると、どう見ても箒だし、上手く立派な箒が出来ているとしか思えなかった。掃除用具をこんなに一緒懸命に作ってどうしちゃったのと思ったが、ハリーが満足しているのならまあいいかと、考えた。
「ああ、ところで、忙しそうなところ悪いが、ハリー君。君にプレゼントがあるんだ。さあ、開けてみてくれたまえ!」
ぶわっとばかりに肩にかかる髪を後ろに振り払ってポーズをつけてヘスティアは、ハリーに長さ50cほどの細長い袋を差し出した。
ハリーは受け取ると袋を開けて中身を取りだす。出てきたのは、鈍い焦げ茶色の杖だった。長さは40センチほど。握りの部分から先端まで二重螺旋に文字が刻まれている。そして、しっかりとした短剣ほどの重量感がある。今まで持ったことがある杖の中では一番重い。
「これは?」
軽く振りながらハリーは尋ねる。指になじみ、腕になじみ、そして魔法力にしっくりとくる。以前使っていた不死鳥の尾羽の杖と同じようにしっくりと来る。自分にあった良い杖だと分かる。
「
明かりをつけると滑らかにすっきりと魔法を使用できる。
「うん、僕が君たち二人に準備した武器さ。ベル君にはナイフを、ハリー君には杖を。特にハリー君は自分用の杖が無いって言っていたからね。これがあれば探索も少しは楽に進むだろう」
ヘスティアがそういうと、ベルも短剣を取り出してハリーに見せてくれた。黒い短剣で表面に文字が刻まれている。
「この二つの武器は、使用する君たちと共に成長する。君たちが強くなれば、それに応じて二つの武器も強くなってくれる。明日からはそれを使ってくれたまえ」
魔法使いにとっては杖というのは命の次に大事なものと例えられる。そして、とつても無く自分にしっくり来る杖をプレゼントされて、ハリーは感動していた。
「ありがとうございます。ヘスティア様」
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元気になったベルと共にハリーはバベルの前の広場でリリルカを待つ。そこに一人の冒険者が背後から現れ、ベルの肩をつかむ。
「おいおい兄さんたちよう。最近景気がいいって話じゃねえか。ちょーとばかし、俺にもそのおすそわけくんねぇかな」
この前の男である。
「また来たのか」
ベルが眉間に皺を寄せながら、冒険者に問いかける。ハリーは無言呪文の用意をしながら相手に近づく。
「なーに、この前の返事を聞かせてもらおうと思ってな。簡単なことよ。今ならアーデもオメェさんたちに油断しているはずだからな?」
ハリーが相手の肩を右手で捕まえると同時に、杖無しの無言呪文で
そうマグルとして生活し、魔法界での生活もしてきたハリーにとっては『犯罪者は公権力機関に突き出すべし!』という意識があるのだ。ダンジョンの中は『力あるものが正義』という不文律が支配する無法地帯であるらしい。しかし、ここはまだ地上。公権力機関であるギルドに突き出す予定なのである。幸いこちらには、ベルに好意を持っている
そこにタイミングよく、リリルカが現れた。
「おはようございますって、その男はどうしたのですか?」
ぎょっとしてリリルカは口元を手で押さえている。
「うん、ちょっと気を失ってる。知ってる人?」
「ええ、知ってるも何も同じファミリアです」
「じゃあ、ちょっとこの男をギルドに連れて行くから、手伝ってくれるかな」
ベルは空いた手で逃げ出しそうなリリを引き止める。
「わ、わかりました。リリもお手伝いしますね」
ベルとハリーの二人で、男の両肩を支え、ギルドのエイナの所へ向けて歩きだす。リリルカは荷物を持ち二人の後をついていく。
ベルが男を支えたまま、エイナに、別室で相談があると告げる。抱えられた男はベルのパーティメンバーで具合が悪いのだと誤解したのか、エイナはすぐに会議室の一つに案内してくれた。
「エイナさんも立ち会ってほしいんですが、良いですか」
机をはさんでベルの反対側に気を失った男を座らせる。男が意識を取り戻したときに暴れだしたらすぐに取り押さえられるように、ハリーは男の後ろに立つ。
エイナとリリルカはベルの後ろに待機である
「いいけど、その人はベル君たちの仲間よね。何だが尋問するみたいに見えるんだけれど、私の気のせいかしら?」
それにベルが答える。
「いえ、仲間じゃないです。会うのは二回目なんですが、こちらのリリ、僕たちと同じパーティ・メンバーなんですけど、そのリリを襲撃する計画を僕たちに持ちかけてきたんです」
それを聞いた瞬間エイナの表情が硬いものになる。
「そのエンブレムはソーマ・ファミリアのものね。そちらに抗議と共に厳重注意をしましょう」
「いえ、ギルド職員様、リリはそれは無駄だと思います」
「なぜ!? どう考えても犯罪行為じゃない!!」
リリルカの言葉に、エイナが憤る。
「なぜなら私もソーマ・ファミリアのメンバーだからです。おそらくファミリア内部の揉め事として処理されるでしょう」
それに対して淡々とリリが反論する。
「しかし、だからといってほうっておける事じゃないわ。あなたもこれでは困るでしょう」
「あのエイナさん、まずはこの男を取り調べたいのですが・・・」
「ベル君は黙ってて、これは由々しき問題なのよ」
「アッハイ」
ベルだけではなく全員が黙り込む。右の人差し指を額に当て眉間に皺を寄せて考えるエイナ。
「ギルド内部でもソーマ・ファミリアに関係するトラブルが増えていること、他の薬剤系統や鍛冶系統のファミリアとの揉め事も多くなっているということがあります。ファミリア運営がうまくできていないということで、ギルドからソーマ・ファミリアに対して指導ができるかも知れません。複数のファミリアが迷惑を受けている以上、ギルドから指導をしても問題はないでしょう」
そして普段の表情に戻るエイナ。
「ただし、ヘスティア・ファミリアとソーマ・ファミリアの関係が悪化する可能性があるので、今回の件については伏せておいて、『一般的な複数のファミリアから苦情が来ているから、注意する』という形にします。それでもよいですか、ベル君?」
真面目な表情で問いかけるエイナ。それを見て真剣な表情でしばらく考えるベル。そして尋ねる。
「リリはそれで良い?」
リリルカは自分に話が振られるとは思っていなかった。だが、これでファミリア内部で問題になると立場が悪くなるのは自分であった。どうあがいても勝てない相手なのである。その自分のことを考慮してくれるベルの配慮が嬉しかった。
「はい、かまいません」
それを聞いてエイナは溜め息をついた。
「できるだけ面倒にまきこまれないようにしてね、ベル君」
「あのーベル様、リリは首ですよね」
うつむいてリリルカがベルに問いかける。
「え、何言ってるの、そんわけないじゃないか。」
「でも、このままリリを雇っていると、うちのファミリアとのトラブルが起きそうですよ」
だが、エイナが解決策を提示する。
「リリルカ・アーデさんですね。今回のことは体調不良で急に倒れてしまったのを、ベル君とポッターさんが、こちらに連れて来てくれたということにしますので、問題は起こらないでしょう」
そしてエイナは溜め息をまたついた。
「私はあなたのアドバイザーというわけではありません。ですが、あえて言わせていただきます。
ハリーがこっそりとベルをつつく
「
それを耳ざとく聞いていたエイナが説明する。
「
ベル、ハリー、エイナの視線を受けたリリルカは俯いたままか細い声で答える。
「・・・考えてみます・・・」
その日は三人でダンジョンにもぐったのだが、リリルカの様子がふさぎこんでいたため、早々に切り上げて地上へと帰還した。
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夜、ハリーが箒の仕上がり具合をチェックしている間、ベルはヘスティアに、リリルカのことを相談していた。
「・・・というわけで、団員同士の仲が悪いどころではなくて、強盗をするようなんですよ。こんなことってありえるんですか? ひどいと思いませんか神様!」
机に両肘を置き、指を組んだ上に顎を置いて考え込むヘスティア。実際のところ、ヘスティアがある程度の内部事情を知っているファミリアは
「ベル君、ファミリアが大きくなれば、いろんな考え方の人が集まる。『全員が仲良く』とは行かないさ。事実、ヘファイストスの所だって、まあ、一部ではあるんだけれど、団員同士での喧嘩もあるらしい。とはいっても、強盗はねぇ・・」
腕を組み、椅子の背もたれに寄りかかり、考え込むヘスティア。
「何とかできないでしょうか?」
頼み込むベル。だが現実は非情だ。
「ベル君、君は団長だ。君が考えなくてはならないことは、ますば君自身の目標と、ヘスティア・ファミリア、そしてうちのメンバーのことだ。何故、他のファミリアに所属するメンバーのことをそんなに心配するんだい?」
言われて絶句するベル。ヘスティアが何を言っているか分からないようだった。
「何故って困っている人がいたら、心配したり助けるのは当たり前でしょう」
ふむと、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしてベルを見つめるヘスティア。二人の話を聞きながらハリーは箒のチェックを進める。
「ベル君、それは確かに人として当たり前のことだが、なかなかできることじゃあない。そんなことができる君を僕は誇りに思うよ。とはいっても、今言ったように団長としての立場を忘れずに行動して欲しいな」
そういうとヘスティアは落ち着かせるようにベルの両肩に手を置く。
「だが、まあ、そこまで心配することはないと思うぜ。ギルドのアドバイザー君がソーマの所に指導をいれるんだろう? ギルドの指導って言うのはなかなか強力なものでね。従わなかったら、いろいろとペナルティを受ける。だから、ソーマもファミリアの状態改善に乗り出すはずさ。それでも駄目ならギルドから更に強力な介入があるだろうしね。まずは様子見でよいと思う」
この言葉を聞いてベルが落ち着いたので、ヘスティアはベルの肩から手を離し、椅子に座りなおす。
そしてベルは、以前、階層進出の事で、ハリーがエイナに対して強硬な態度をとったことを思い出して、大丈夫だったかなと少し不安になっていた。
「とはいっても、様子をみて、それでもその子の状態が改善されないようであれば、アドバイザー君が言うように改宗を薦めても良いんじゃないかな。そしてその改宗先がうちでも、僕はぜんぜん構わないぜ。もちろん、そのサポーター君、ええっと、名前はアーデ君だっけ、その子が良いといったらだけれどね」
きっちりとベルをフォローするヘスティア。なかなかベルの性格を把握しているようで、頼もしい主神である。
「そうですね、うちに誘ってみますね」
ヘスティアの話を聞いて喜ぶベル。
「まあ、女の子が増えることには心配だけれどね。今後もメンバーが増えるんなら、女の子が入ってくることも仕方ないだろうしねぇ・・」
苦笑しながら言うヘスティアである。が、突然、ハリーが喜びの声を上げる。
「やっと、やっとできた!」
ヘスティアとベルはハリーを見つめる。ハリーは完成した箒を両手で握り締め、にこにこしている。二人は掃除道具が完成して何故そこまで喜ぶのか分からなかった。
「あー、ハリー君、箒が完成したのか。明日からの掃除が便利になる? のかな?」
ハリーは箒をひゅんひゅんと振り回す。ステイタスは上がり続け、武器の取り回しにそこまでなれていないハリーでも、器用があがっていたので、昔カンフー映画でみた中国拳法の達人が棍を振り回すように、箒を振り回すことができた。そして喜びを爆発させてハリーは宣言する。
「ふっふっふっふっふっ。この箒は実はただの箒ではなくて、魔法の箒なんですよ」
「ほほう、ごみを掃き集めるのがとても簡単とか?」
あくまで掃除道具としてしか見ないヘスティアにハリーはがっくりする。だが、空を飛ぶ箒がない世界のため、こればっかりは、実演するしかないだろう。
「まあ、説明するより見せるほうが早いですからね。これは空を飛ぶ箒なんです。ちょっと外に出て飛んで見せますよ」
そういうと地下から出て地上に向かった。もちろん二人も見物のために続く。
ハリーは一端、箒を地面に横たえる。その箒の横でまっすぐに背筋を伸ばして立つと、右手を横に箒の上のあたりに伸ばして一言、命じた。
「上がれ」
地面に置かれていた箒が生命を持ったかのように飛び上がり、ハリーの右手の中に納まる。
「おお! 動いた!」
「ハリー君、君はマジックアイテムが作れるのかい?」
驚く二人。
「いくつかは作れます」
自信を持って宣言するハリー。だが実際は箒を作れるかどうかは試してみるまで分からなかったのだ。クィディッチで使っていた箒の整備のために、すこしばらした事はあった。そして、箒に呪いをかけることが出来るかどうか確認するために、いろいろと調べたこと。その経験と、クディッチ仲間から聞いた知識、ハーマイオニーから聞いたマジックアイテム作成のノウハウ、後は本で聞きかじりした知識を基に作ったのである。上がれの命令に箒が従ったことから、この箒で空を飛べると今では確信していた。そして、箒が作れる以上は他のマジックアイテムも作れるかも知れないと考えるハリーであった。
そんな考えを隅に押しやり、まずは 記念すべき初飛行だとハリーは箒にまたがる。
「じゃあ、ちょっと、箒の試運転で空を飛んできます。すぐ戻って来ますからね」
そういって二人の返事を待たずにハリーは全力で上昇した。夜空に吸い込まれていくハリーを見て、ベルとヘスティアは歓声を上げるのだった。
以下、ハリーの杖の詳細です・・。適当に考えたので、読み飛ばして問題ないです
ハリーの新しい杖
ヘスティア・ワンド。神聖樹の幹から切り出した材木を、ヘファイストスが薬品処理して高圧縮して杖にしたもの。芯にはヘスティアの髪の毛を使用している。 高圧縮、つまり押しつぶすという加工をしているため、やや重いのが欠点。この薬品処理+高圧縮するというのが、鍛冶神が試してみた新しい製作方法。
能力的には、使用者のステイタスにもよるが、ハリーの世界の死神が作り上げた、死の秘法であるニワトコの杖を超える(はず)。
以上の説明をヘスティアはハリーにはしていない。そのため、ハリーにとっては、よくなじむ極めて良い杖という認識。
次回は『ハリー、ホームへ帰る』です。このホームはヘスティア・ファミリアのホームです・・