ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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ちょっとばかり、短めです


ハリー、ホームへ帰る

 ばたばたと強風が吹き付ける。殴るような風にハリーは意識を取り戻す。ぜえぜえと切れる息。かすむ視界。ふと気づくと大量の脂汗が顔に浮き出ている。そして体に走る激痛。真っ暗闇の中で、ゆっくりと腕に力をいれて体を起こす。全身が汗に覆われており、それが 風に吹かれて体温が低下していく。がたがたと震えつつも、硬くこわばった腕をあげて額を袖でぬぐおうとして気がつく。箒に乗っている。そして再び体に激痛が走る。前のめりに箒に倒れ、ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返し、痛みが過ぎ去るのをおとなしく待つ。

 呼吸が収まり、ようやく痛みが治まる。そのままの姿勢で、何が起こったのかを考え始めた。まずはあたりの様子を知らなければ。

 ゆっくりと首をまわしてあたりの様子を伺う。前後左右は満点の星空。外にいることが分かる。そして足元には暗闇が広がり、はるか下方にぼんやりとした光が小さく小指の先ほどの大きさに見える。

 慎重に腕を伸ばして体を起こし始めるがまた痛みが走ったので箒に寄りかかる。

 

 そしてハリーは理解した。

 先ほど、ハリーは出来上がった箒の試運転でベルたちの目の前で箒にまたがった。そして全開加速で真上に上昇したのである。とうぜん全力でまず箒が上昇し、ハリーにぶつかる。そしてハリーごと上昇したのだ。つまり、箒で自分の急所を強打したのと同じことである。自分の体を一気にこれだけの高度までもってくる勢いで強打したのである。よく死ななかったものだとあきれるやら、情けないやらであった。

 ハリー自身は今まで最新式の箒に乗っていて知らなかった、というよりは、気づいていかったが、箒のすわり心地は本当は悪い。ただの木の棒であるから当然であるが、座ると痛い。そしてそれを改良するために、古くはクッションを箒に乗せてその上に座って飛んでいた。現在ではクッション呪文が最初から箒にかけられている為、急所を強打することは無い。さらには、鐙を取り付けて加速に耐えるようになっている。

 

 今回ここまでスピードがでる箒になるとは思っていなかったので、ハリーは乗り心地のことを考えずに作成してしまっていた。ずぶの素人が作ったので歩くぐらいのスピードで飛べればまあいいやと考えていたのである。だが、予想に反して結構なスピードが出ていたようだ。これは帰ったら、いろいろと改良が必要だと思い、はたと気づいた。この乗り心地が悪い箒で今から無事に帰れるのだろうか。

 足元の光がたぶんオラリオだろう。あれだけ小さく見えるということはかなりの高度まで来てしまっている。というかさっきよりも小さくなっていないか。気絶した後もずっと上昇を続けていたのだろうか。箒に前のめりになったまま、ゆっくりと止まるように念じてみる。周囲に何も無いので動いているのか判別が難しい。オラリオに向かってゆっくりと進み始める。風が下から吹き始めたので、おそらくは降りているのだろう。停止するときにまたも衝撃が走るだろうが、失神しないように気をつけなくては・・・今考えると気を失っている間に箒から落ちなくて良かった。この高度から落ちていたら死んでいたはずだ。ぞっとしないことに気がついて、箒を握る手に力をこめる。

 

 気がせいて、効果スピードが速くなっていたようだ。先ほどよりもオラリオが大きくなっているように見える。すこしスピードを緩めることにする。暗闇の中で地面に激突するのはごめんだ・・・。だんだんと高度が下がり、オラリオの町並みが大分わかるようになってきた。さらに高度を落とし、バベルの最上階と同じぐらいまでに到達する。ここまで来たら墜落することも無いだろう。あとは油断せずにスピードに注意してホームまで戻れば大丈夫だ。これ以上高度を下げると町を歩いている人に気づかれる可能性がある。高度を保ったまま、ホームまで移動する。いつもは地上を歩いているのに、こうして空中からみる町並みは奇妙なものであった。

 そういえば、街中の上空をこのくらいの高さで箒で飛んだことはなかったと思い出した。乗り心地を改良したら、また飛ぶことにしようと決心した。教会まで戻ってくると、ベルとヘスティアがハリーを見つけ、手を振っていた。

 急所が心配だったので、ハリーは手を振り返すことはせずに、地面にまで着地した。箒を杖のように立てて、体を伸ばしてまっすぐに普通にたつ。がくがくとひざが笑い、指がこわばる。強打したダメージが思っていたよりも大きかったようだ。特に精神面に。

 

「ふぅー、疲れた。地上っていいもんだね」

 まだ体は痛むが、二人に心配させまいと、やせ我慢をして引きつった満面の笑みを浮かべるハリーである。

「飛ぶのってきついの?」

 ベルが目をきらきらとさせて尋ねてくる。

「この箒だとちょっときつい、もっと改良して乗り心地をよくしないとだめだね」

「お帰りハリー君、なかなか帰ってこないから心配したよ、でもまあ、無事に帰ってきたからよしとしよう」

 ほっとした様子のヘスティアがさらに続ける。

「その箒があれば誰でも空を飛べるのかい。僕もぜひ飛んでみたいんだが」

「あ、神様、僕も飛んでみたいです!」

 返事に困るハリー。マグルは飛べないが、こちらの世界では誰もが魔法を使える可能性を秘めているのである。つまりマグルではないとも言える。そしてヘスティアはマグル以前に神様である。飛べるんじゃないかなぁ・・・と考える。

「飛べるかどうかは分からないから、試してみよう」

 そういってハリーは箒を地面に横たえる。

「さっき僕がやったみたいに、箒の横に立って『あがれ』と命令してみて。それで箒があがったら、飛べるはず」

 それを聞いて二人はやってみるが箒はピクリとも動かない。

「うーん、ハリー、ぜんぜん動かないよ?」

「だめかぁ・・、魔法を覚えたあとならできるのかも・・」

「じゃあ、ハリー君、僕は魔法を覚えることはないから、ずっと飛べないってことかい?」

 ヘスティアがショックを受ける。

「まぁ、そういうことになりますね」

「じゃあ、僕が後ろに乗っけますよ」

 とベルが元気にフォローする。喜ぶヘスティア。

「じゃあ、ベル君、約束だよ! 二人乗りで空の散歩かあ、楽しみだなあ」

 ごほんと咳払いをしてハリーが二人に告げる。

「ただし箒の乗り心地は悪いんで、それをもっと改良しますね。あと二人乗り用の箒も作りますからね。デートはそれでしてください」

「やっだなぁ、ハリー君、ベル君とラブラブデートだなんて照れるじゃないか」

 にっかりと笑いながらヘスティが照れ隠しに、ハリーの肩をぶん殴る。痛みに顔をしかめるハリー。成長期の耐久ステイタスを突破して痛みを与えるとはさすが神、只者ではない。

「ところでハリーは何で箒をそんなに欲しがったの?」

 ベルの質問にハリーが答える。

「特に理由は無いけど、強いてあげるとすれば、故郷では箒をもって空を飛ぶのが当たり前だったからかな。箒を使って空を飛びながらするスポーツもあったし。僕はそれが得意だったんだ。同年代での代表選手に選ばれてたしね」

 とハリーは自慢する。

 ほへ~と感心する二人。空を飛びながらとかどんなスポーツかぜんぜん想像もできない二人だが、さすが、大量に呪文を使えるようになる魔法使いの国だと感心する。

「あと、まあ、荷物を箒にくくりつければ、運ぶのが楽かなぁとか、ダンジョンの奥まで行くのに時間がかかるから、箒に乗れば楽に移動できるかなと思ったんだ。移動だけで時間かかると思ったんだ」

 とはいうものの、荷物の運搬に関してはリリルカがいるので今は問題ない。いざとなったら、検知不可能拡大呪文の魔法のかばんを作れるか試してみても良いし・・。単純に移動に役立てられるかどうかである。

「何をするにしろ、この箒を仕上げてからだね。これの名前は何にしよう」

「ドラゴンフライなんてどうだい? ハリー君?」

 ヘスティアの提案に考えるハリー。たしかそんな名前の戦闘ヘリがマグルの世界にあったような気がする。まあ、いいんじゃないかと判断する。

「じゃあ、この箒の名前はドラゴンフライにします」

 こうしてハリーは箒を手に入れた。クッション呪文をもちいて座り心地を改良して、なおかつ二人乗りもできるようにするまではさらに四日ほどかかった。

 

 

********

 

 




 作者は昔、ジャングルジムで遊んでいて、足を滑らせて、ジャングルジムの棒の右側に右足が、左側に左足が滑り落ちたことがあります。そしてその後の記憶がしばらくありません。

次回は『リリルカ・アーデ、デビュー決定』です


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