ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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前回の投稿で早めに投稿といったので、急いでみた。


モンスター・パーティ

 ベル、ハリー、リリルカはダンジョンの10階層まで通っていた。ベルとハリーがモンスターを倒し、リリルカが死体を戦闘の邪魔にならない場所に移動させる。そして魔石の剥ぎ取りと、ドロップアイテムの回収をする。時々モンスターが大量にわくときには、リリルカもクロスボウで援護する。二時間ごとに休憩をいれ、昼休憩の時には軽く軽食を食べる。これらの指揮をリリルカがとるという大活躍ぶりだった。

 休憩時にはダンジョンの壁を破壊すると、モンスターが出現しないという豆知識も、リリルカが二人に教えた。今は三人とも床に直接座り込み、シルが持たせてくれたサンドイッチを三人で食べている。

 

 サンドイッチを飲み込み、一息いれたベルが、にっこりと笑いながらしゃべる。

「なんだか三人での戦いにもすっかり慣れたね」

 ここしばらく10階層に通っているせいか、ここでの戦いにベルも大分慣れたようだ。

「そうだねぇ、リリのおかげで戦うのがずいぶん楽だよ」

 ハリーも同意する。相変わらず、戦闘で魔法をがんがん使っているが、マインドダウンする様子は見られない。ときどきマインド・ポーションを飲む振りをしてごまかしている。

「ふふ、お世辞を言っても何も出ませんよ、ハリー様。ただ、前衛を勤める方がもう一方いらっしゃると、もっと戦闘が安定すると、リリは思うのです。あ、すみません、サポーターごときが、でしゃぱったことを申し上げました・・」

 褒められて嬉しいのか、リリルカはにっこりと笑いながら返事をする。小説が出版されることといい、このパーティだと売り上げを人数割りするので、自分の取り分がしっかりとあることといい、最近自分には運が向いているのではないかと思い始めているリリルカである。それで調子に乗って、今までのパーティでの戦闘と比較し、足りない部分を指摘してみた。

 

 その提案に考えるベル。ホームで話したようにリリルカをヘスティア・ファミリアに誘う予定であったが、それ以外のメンバーはまだ考えていなかった。

「パーティメンバーの募集か・・。考えないといけないね。他のパーティはどうやってメンバーを増やしているんだろう? リリ、知ってる?」

「そうですね、別パーティに異動するといっても、やはり同じファミリア内部での異動が多いですね。あとはある程度、名の売れた冒険者様でしたら、ファミリア以外の冒険者様でも入りたがる方が居ますね。もちろん、逆のパターン、引き抜きもあります」

「じゃあ、リリも含めて四人目のメンバーを探すにしても、僕たちはある程度は有名にならないといけないわけか」

 そのベルの発言に、わたわたと慌てるリリルカ。ちょっと顔が赤くなっているようだが、照れているからなのか、慌てているからなのか、怒っているからなのかは分からない。

「ちょっと、ベル様! リリが仲間だなんて、リリはしがないサポーターですよ! 冒険者様と肩を並べてパーティメンバーといえるような者ではないのです!」

 それに対して、此処は真面目に回答しないといけないところだと感じたベルは、食べるのをやめ、リリルカを正面から見据える。

「いや、僕にとってはリリは大事な仲間だ。サポーターだとか冒険者だとかは関係ないんだ。必要な仲間なんだ。できれば、ヘスティア・ファミリアに改宗(コンバージョン)して欲しい。いや、できればじゃなくて、どうしても改宗して欲しい」

 

 え、あれ、ファミリアメンバーを募集する話だったのに、なんだか愛の告白みたいなんだけれど? 僕居ちゃいけなかったかなとハリーは気まずさを感じて、無心にサンドイッチに付いてるパン粉の数を数えはじめた。

「え、ちょっとベル様。そんなことを言われてもリリは困ってしまいます。ご冗談はおやめください」

 軽くしゃべっていたことなのに、ベルが真剣な表情になったことに驚き、魂消るリリルカ。さらに顔を赤くさせ、耳まで真っ赤になってわたわたと両手を動かす。そのせいでサンドイッチの具が床に落ちるが、それにも気付いていないほど、リリルカは慌てていた。

 ハリーはパン粉の数は放って置いて、ダンジョンの床の砂粒の数を数え始めた。無心だ、無心になるんだハリー、とそう自分に言い聞かせる。ハグリッドとマダム・マクシームのラブシーンに遭遇した時でも無心になれた。それなら今でも出来るはずだ。そして、その時のことを思い出したハリーは無意識のうちに、ゴシップ記者が変身したコガネムシを探して、周囲に視線をめぐらした。危機一髪でハリーはダンジョンの壁の傷が急速に修復されていくことに気づいた。

 

「ベル、アーデ! 話は後だ! 壁の傷が治ってる!」

 驚くべきことに傷が修復された途端に、バキバキと音をたててひびが入り、モンスターが生まれ始めようとしている。

 ベルとリリルカもすでにサンドイッチを放り出し、戦闘準備に取り掛かる。ベルはナイフとバゼラードを構え、リリルカはバックパックをすばやく背負う。

「これは! 出てくるモンスターの数が異常です! こんなときにモンスターパーティ!?」

 ダンジョン内部で発生するモンスターの異常な大量発生。格下相手しか出ない階層で出会うならまだしも、同格のモンスターと戦う階層で出くわした場合は、全滅することも多々ある事態である。

「ハリー! 出来るだけで良いから壁を破壊して! 数が増えるのが困る! 通路に敵が居ないなら、入り口で撃退する! 全員、ルームから出て!」

 ベルが矢継ぎ早に指示する。判断としては間違っていない。数の増加を抑え、多数に取り囲まれない場所で戦う。問題は─

「ベル様! 通路もヒビだらけです!!」

 問題は、そう、通路でもヒビ割れが発生していた場合である。リリルカが見たように既に大量発生の兆しが現れていた。

「リリ! 一番近い階段はどっち!?」

 ベルの問いかけにリリルカが出口のほうを指差す。モンスターはほとんどの場合階層を移動することは無い。したがってモンスターパーティが起ころうとも別の階層に行けば、助かるはずである。

「全速で移動する! リリ、荷物はいいから、バックパックは捨てて!」

 その間にもハリーは切り裂け(セクタクセンブラ)で壁を破壊して、できるだけモンスターが出てくるのを妨害する。リリがバックパックを捨てるとベルはリリルカを背中に担ぎ上げる。

「武器を使えないと困るから、しっかりしがみついてて。ハリー、階段に全力で向かう。僕が先頭でいくから遅れないように付いてきて。それから追ってこられないように、後ろに護れ(プロテゴ)を時々出しておいて。出来るよね」

「もちろんさ、まかせて」

 

 そして二人は走り出す。ベルのステータスはすでにBを超えてAに近づいていたが、リリルカを背負っているため、ハリーも何とか付いていけた。

 最初はモンスターは壁から出ようとしていた。二人は全力で走る。

 さらに進むと、壁から生れ落ちたばかりのモンスターがこちらに気づき威嚇のほえ声を上げて、よたよたと追ってきた。

 さらに進むと、殆どのモンスターがこちらに近寄り、攻撃してきた。それらをベルがナイフで切り払い、バゼラードで叩き飛ばす。

 さらに進むとこちらに近寄るモンスター数が増え、あしらうベルのスピードがやや落ちる。ハリーも護れ(プロテゴ)で追撃を避けると同時に、裂けよ(ディフィンド)切り裂け(セクタクセンブラ)で敵を倒す。魔法力が上がると同時に威力も上がっていた。詠唱をして背後に護れ(プロテゴ)を使い、同時に無詠唱で裂けよ(ディフィンド)を前方に打ち出し、モンスターを倒す。

 もっと進むとすべてのモンスターがこちらに向かって攻撃をし、体当たりをぶちかまし、スクラムを組んで走るのを止めようと躍起になっていた。モンスターの集団の中で停止すれば、一巻の終わりだ。一体一体は倒せても、この数である。そのうち体力、気力がつき、全滅することは目に見えていた。

 ベルはとっさのことで、壁沿いを走り、そして壁に蹴上がり、垂直に走ってスクラムを越える。そのベルを追うため、スクラムが崩れ、ハリーがドサクサ紛れにベルに追いすがる。

「箒があれば」

 そうハリーは箒を持ってきていなかったのである。箒さえあれば、三人でそれに乗り飛んで逃げることはたやすかっただろうだが、現在持っていないものに対して悔やんでも仕方が無い。今は全力で安全地帯に向けて走るだけである。

 

 そうして階段を目指して走る三人の目に、別の冒険者パーティが現れ、パーティリーダーらしき赤髪の男がこちらに怒鳴りつけてくる。

「おう、おめえら手伝え!  さっさと逃げるぞ」

 怒鳴った男は長剣を振り回し周囲をモンスターをひるませる。その間に鎧に身を固めた重戦士が突進して体当たりでモンスターを吹き飛ばし、さらにシールドを振り回して、モンスターの間に隙間を開ける。ハリーたちもモンスターを切り払いながら、三人に合流し、モンスターを切り払う。ベルが動きやすいように、リリルカはベルの背中から飛び降りる。途端に、爆発的にスピードがあがるベル。縦横無尽に、床を、壁を走り回り、周囲のモンスターを切り倒していく。

「ひゅー、すげぇな、ぼうず!」

 だが、そのパーティと合流したことで、ベルたちの移動速度は目に見えて落ちていた。

 

 三人で走り続けて逃げる。ただし別パーティはモンスターパーティの中に置き去りにするという選択肢。

 そしてもう一つ。別パーティと合流して戦力をアップさせた上で戦いながら逃げるという選択肢。

 この二つがあったわけだが、すべての冒険者が互いを見殺しにしないで助け合うという考えを持っているわけではなかった。

別パーティを見殺しにするという選択肢を思いつかなかったので、ベルは無意識のうちに、合流するという選択肢をとっていたのだ。

 ハリーは後ろに向けて護れ(プロテゴ)を使い、モンスターの追撃を封じる。だが、それにタイミングを合わせるかのように、周囲の壁にいっせいに亀裂が走る。それもただの亀裂ではない二重三重の亀裂だ。バキバキと音を立てて、モンスターが生み出される。六人はあわてて階段へ走り始める。

 だがしばらく走るとリリルカが遅れ始める。サポーターをやらざるを得ないだけあって、ステイタスが低いのだ。こんなところでも足を引っ張る自分のステイタスに、リリルカは心の中で悪態を吐く。

「ち、なにやってんだ、おいてくぞ!」

 赤髪の冒険者が叫ぶ。それをきいて置いていかれると怯えたような表情になり、反射的に叫ぶリリルカ。

「冒険者様、置いてい、いかないでください!」

「そのしゃべり方、てめぇ、サポーターかよ! サポーターなら足止めして俺たちを助けな!」

 そういうと、重戦士がシールドを振り回してリリルカを殴りつけ、追ってくるモンスターの群れに弾き飛ばした。

「ぎゃぁ!」

 叩き飛ばされ、悲鳴を上げて倒れこむリリルカ。

「リリ!」

 リリを助けるため、反転して戻っていくベル、足を止めるハリー。そんな三人をあっさりと見捨てて、走り去る三人組。

 全速で走るベルにリリを任せ、ハリーは三人組へと怒りにまかせて、無言呪文でくらげ足の呪いと、詠唱呪文で出来物の呪いを飛ばす。

 そして、モンスターの波にのまれた二人に向きなおり、助けるために全力で魔法を使う。

 

 イメージするのは。

 

 フリットウィック達が使った守護の魔法。

 

 凶悪な死喰い人さえ、退けたあの魔法。

 

護れ(プロテゴ)! 護れ(プロテゴ)!」

 

 そして魔法力の全力をこめる。

 

護れ(プロテゴ)極大化(マキシマ)ァァ!」

 

 ヘスティア・ワンドに刻まれた神聖文字、それがハリーの意思に答えるかのように薄い光を放ち、極大化された防御呪文を放出する。

 ハリーは杖を操り、ベルたちの周囲、そしてダンジョンの壁と天井をも呪文で覆っていく。

 モンスターの中に放り込まれて、ぼこぼこに殴られているリリルカを助け出したベルは、周囲のモンスターを切り飛ばしていく。倒すことを目的とした攻撃ではなく、攻撃不能にすることを目的とした攻撃。ハリーの護れ(プロテゴ)がモンスターの追加を防いでいる間に、護れ(プロテゴ)のこちら側のモンスターをすべて、行動不能にして周囲を見回す。

 奥のほうから押しよせる追撃のモンスター達は、ハリーの護れ(プロテゴ)の見えない透明な壁に顔を押し付け、破壊しようと躍起になってそこらを叩いて回っている。だが、護れ(プロテゴ)を破壊して襲い掛かることはできないようだ。これだけの数のモンスターに襲われたら、体中をぐちゃぐちゃにされて死んでいるところだ。そう考えてベルはぞっとする。

 壁から生み出されるモンスターたちも、見えない護れ(プロテゴ)とダンジョンの壁にはさまれて動けなくなっているが、必死にもがいている。

 

 ハリーはベルとリリルカに走りより二人を引っ張って走り始める。

 ベルは防具があるため、比較的軽症であるが、防具がほとんどないリリルカは、体中が傷だらけだった。顔は腫れ上がり、腕の片方は明らかに折れており、変な方向に曲がっている。激痛のためか意識が朦朧としている。足も骨折しているようで立つことも出来ない。

 ベルは武器を鞘に収めると、再びリリルカを背負い、走り始めた。ハリーはもその後に続く。そしてどうにかこうにか、階段まで三人はたどり着いた。

「とにかく、このまま地上まで向かおう! リリの治療をしないと!」

 ポーション類もすでに使い切って、手持ちが無いため、治療ができなかったのである。殴られて体中を腫れ上がらせたリリは、ベルの背中で意識を失っていた。

 

 二人は走り続け地上へと漸くたどり着いた。

 

 一番近い治療所ということで、ギルドのエイナの元まで走り続ける。そんな彼らをみて冒険者達はざわざわと注目していた。

「ベル君! モンスターパーティが発生したと聞いて心配したわよ。無事でよかった!」

 壊れたテーブルや椅子が倒れ、雑然としたギルドのホール。そこの受付でエイナが叫ぶ。

「リリが重症です。治療をお願いします!」

 

 ベルの無事を喜ぶエイナであったが、背負われたリリルカを見て治療室に案内する。治療医はすばやく診察し、ベルとハリーの手伝いの元、折れた腕の位置を元に戻し(その際リリルカは痛みで暴れた)、何本かのポーションを使用して治療は終わった。

 

 

「じゃあ、ベル君。明日まで休むのね?」

 今は、ハリーがリリルカを背負っていた。リリルカは治療が終わった後は、再び気を失い眠りについたのである。ギルドに置いていくわけにもいかないし、ヘスティア・ファミリア・ホームまで連れ帰ることにしたのである。

「ええ、今日は疲れましたし、一日休みます。幸い資金はある程度ありますから。一日休んで問題ないです」

「うん、それがいいと思うな。長い冒険者生活だと、こういうこともあるから、気を落とさないでね」

 ハリーが横から尋ねる。

「モンスター・パーティはこれからどうなるんですか? 大量のモンスターがいるから、あの階層に入れないんじゃ?」

 ベルたちの安否を心配していたエイナは、アドバイザーの顔に戻るとメガネの位置を指で直して説明を始める。

「しばらくは様子を見ます。そしてモンスターの数が減らないようでしたら、クエスト、すなわちモンスター討伐クエストをギルドが発行することになります。この場合、クエスト受注条件に上級冒険者であることが付け加えられることになりますね。

 そして討伐が終わるまでは、階層に立ち入る際には、十分に警戒するように、注意喚起が行われます」

 ギルドとしては本当は禁止したいところであろうが、そこまではギルドに強制力が無いのであろう。以前7階層進出時に、ハリーとエイナが揉めたのと同じ問題である。

 そしてエイナは続ける。

「でも三人が無事に戻ってきてくれて私は嬉しい。ベル君、最初に下した即時撤退の判断は正しかったと思うわ。命あってのものだねだからね。戻ってきてくれてありがとう。そして、このモンスターパーティが終わるまでは、あの階層に立ち入らないようにしてね」

 そしてエイナに別れを告げて三人はホームに向かった。

 

 

********

 

 

 ぽくぽくと、二人と一人は歩く。

 ベルは昔のことを思い出していた。昔といってもほんの十日ちょっと前のことである。そのときは、一人でダンジョンとホームを移動していた。そして、ハリーが仲間になって二人で行動するようになった。そして今は他所のファミリアだが、リリルカが加わり、三人になった。

「力が欲しいな。もっと強くなりたい」

 ぽつり呟くベル。

「強くなって何をするんだい?」

 

 ハリーは尋ねる。ハリー自身は、強くなりたいと思ったことはあまり無かった。『何になりたい』か、ではなく、『何をしたい』か。今までの短い人生では常にそう考えていたように思うハリーだった。

「うん、そうだね、仲間を守りたい。リリがこんな怪我をしないように、ハリーも怪我をしないように。仲間を守れる強さが欲しい」

 ベルの答えを聞いて、にやっと笑うハリー。

「おいおい、ベル。僕だって戦えるんだ。君一人で戦う必要は無いんだぜ。みんなで戦えばいいんだ」

 

 そういってハリーは、死の秘宝を探していたときの事を思い出していた。『みんなを頼るのよ』、そうアドバイスをしてくれたのは誰だったか。いつも正しい助言をしてくれたハーマイオニーだったか、それとも、ロンだったか。

「うん、一人で背負い込む必要は無いんだ。もちろん自分が、自分にしかできない事はある。でも、友人や仲間に頼って良いんだよ」

 まじめな表情になってハリーは続ける。そして思い出すのは、ヴォルデモートに命を差し出すために、禁じられた森の中を歩いたときのことだった。死の恐怖に負けそうになったが、死者の魂を呼び出す蘇りの石で両親たちを呼び出し、心の支えになってもらった。

 さらには、死喰い人の追跡を避けるため、七人のポッターになって追跡をかわしたこと、ホグワーツで死の秘宝を探すため、時間稼ぎをしたことなど、自分が仲間に助けられてきたことを思いだしていた。

「だからさ、 そう、仲間を頼ってかまわないんだぜ。もちろん、僕だって君を頼るしね」

 その実感がこもったハリーの言葉にベルは頷く。

 

 そして三人はホームにたどり着いた。

 まずはリリルカをベッドに寝かせる。それから、自分達の治療、武器防具の整備、無くなった装備や備品の補充。やらないといけないことは大量にあるが、治療が終わった時点で残りは明日することにして、二人も休むことにした。モンスターパーティに初めて遭遇して、精神的に疲れていたのだ。

 ハリーがお茶を入れて、ベルが軽い軽食を作り、午後休憩としゃれ込む。紅茶の匂いで気づいたのか、リリルカが起き上がる。

「えっと、ここはどこです・・ベル様たちのホーム?」

 きょろきょろと辺りを見回し、リリルカは無事に生きて帰れたことに気づいたようで、安堵の涙がこぼれだす。

「よかった、もう絶対、リリは死んだと思いました」

 ベルがリリルカのそばにより、頭をなでる。

「馬鹿だなぁ、僕等がリリを見捨てる分け、無いだろう」

「どうして、どうしてベル様は冒険者様なのに、サポーターであるリリを助けたのですか? 冒険者様ならば、あの時の者達のようにリリを捨て駒にして、見捨てて行ってるはずです。どうして助けたのですか?」

「リリを助けるのに理由なんて無いさ」

 やさしく、頭をなでながらベルが答える。

 それを聞いてぽろぽろと涙を流し始めるリリルカ。

「ひ、ひどいです、そんな言い方されたら・・・」

 しゃくりあげるリリルカ。静かに頭を撫で続けるベル。

「ありがとうです」

 しばらく泣いた後、気分が落ち着いたのかリリルカは小さな声で礼を言った。

 

「たっだいまーーーー」

 ドアをすごい勢いであけてヘスティアが帰ってきた。

「明かりが点いてたから、帰ってきてたのに気づいたぜ。じゃが丸君をもらってきたんだ。じゃが丸君パーティしようぜ! ってサポーター君どうしたんだい?」

 泣いているリリルカと頭をなでているベルに気づいてヘスティアがあわてる。なかなか良い雰囲気の二人で、あせったヘスティアはベルを引き離す。

「ちょっとベル君はこっちに座るんだぁーー。そしてサポーター君は斜め向かいね。ベル君の正面はハリー君が座るように」

 一瞬のうちに、『ベル-リリルカ引き離し配置』を確立させるヘスティア。

 さっきまでの甘い雰囲気にいたたまれない気持ちだったハリーは、『ヘスティア様、グッジョブ!』と心の中でエールを送るのだった。

「さて何があったのか話してもらおうか!?」

 

 ベルたち三人は今日一日のことをヘスティアに説明するのであった。

 

「ふむふむ、事情はわかったぜ。だからといって、ベル君とくっついているのは気に食わないな」

「いえいえ、ただ慰めていただけですよ」

 言い訳をするベルであるが、ヘスティアはそれをあまり信用していない。

「まあ、いいや、それでだね。サポーター君に対してベル君は言いたいことがあったと思うんだが、ちゃんと言ったのかい?」

 それに対してベルはにっこりすると、改めてリリルカに向き直る。

「リリ。ヘスティア・ファミリア団長として、君をうちのファミリアに勧誘したいんだ。改宗をお願いできるかな」

 リリルカの答えはもちろんyesだった。

 




補足
くらげ足の呪いと、できものの呪い。この二つの呪いを同時に受けると、顔中にクラゲの足が生えます。

第七巻でフリットウィックが使った守護の魔法はプロテゴ・ホリビリスです。ただ、マキシマと叫ぶ方が気合入れやすいので、マキシマにしています。

ギルドでリリの治療に使ったポーション代金は、ベルが払っています。市販品よりもちょっと割高になっています。

次回『魔道書』
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