ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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魔道書

 その後、三人目の団員(予定)決定ということで、明日は休みなのでせっかくだからということで、四人でお祝いに出かけることにした。行き先は《豊穣の女主人》。ベルにとっては苦い思い出もあるところだが、シルたち店員たちには良くしてもらっている店である。今日もダンジョン帰りの冒険者が押し寄せ、大いににぎわっている。

 三人でダンジョンにもぐるようになって資金がたまっているので、値段を気にせずにみなで飲んで、食べることにした。まずは一杯目のエールで乾杯した後、お互いの自己紹介・・というかシルたちへリリルカの紹介である。ここで驚愕の事実が発覚した。

「え、リリって15歳?! 僕より年上!?」

 ベルが年齢を聞いて驚く。

「はい、そうです、もしかして、リリは小さいので年下だと思われていましたか?」

 にっこり微笑むリリルカ。

「ちなみに僕は18歳。だとすると、一番年下はベルになるね」

 ハリーの言葉にショックを受けてジョッキを持ったまま固まるベル。まさか団員と団員予定の中で自分がいちばん年下だとは考えてなかったのである。そんな固まったベルの右腕にヘスティアがしがみつく。

「まあまあ、ベル君、僕は年齢なんて気にしないさ。年下だろうと年上だろうと、ベル君はベル君さ!」

 それに対抗してリリルカがベルの左腕にしがみつく。

「そうですね。ヘスティア様も良いことを言いますね。ベル様が年下でも、リリもま~ったく気になりませんから」

「あらあら~、でも年は近いほうが良いですよ~。ささ、ベルさん。もう一杯どうですか」

 そういって、ベルのジョッキを交換するのは店員シルである。いや、店員さん、仕事しようよとハリー最初は思ったのだが、何でも同じテーブルに座って料理や酒を勧めてお金を使わせるようにするのも大事な仕事らしい。いや、それって店員の仕事なんだっけと悩むのだが、しばらく悩んだ後、『郷に入っては郷に従え』という言葉を思い出して、考えるのをやめることにしたハリーであった。

 現在シルは、ベルにジョッキを勧めているのだが、なんとはなしに冷んやりとしたものを感じる微笑を浮かべている。ハリーは、しばらくの間ベルをほおって置くことにした。となるとハリーが話す相手は消去法で最後の一人になるわけである。

 

 リュー・リオン。

 薄緑の髪の間から見える耳の長さが、彼女がエルフであることを示している。リヴェリア、エイナとエルフ(とハーフエルフ)に知り合いはいるが、この二人とは違い、冷たく無機質な表情のため、何を話題にしたら良いのか分からなかった。ダンスパーティに女の子を誘おうとして、何もしゃべれなかったことを思い出す。

「ポッターさんは魔法が使えると伺いましたが・・・」

 ハリーが考えている間に、なんとリューのほうから話しかけてきた。エルフなだけあり魔法への興味が他の種族よりも高いようだ。

「冒険者になられてから、これだけ短期間で魔法が顕れるのは珍しいですね。なにか思い当たることがあるかお聞きしても?」

 無表情なまま話しかけられても、怖いだけである。だが、せっかくの話題なので、ハリーは考えてみる。まいった。魔法の数については、ごまかす方法をファミリアで考えていたが、覚えるきっかけについては考えていなかった。しかたがないので正直に答える。

「ごめんなさい、思い当たることは無いですね。ただ、最近覚えたわけではなくて、数年前から使えていたので・・・」

 だがベルがこの話題に食いついてきた。

「そういえば、魔法を覚える方法って何かあるんですか? 僕でも使えるようになりますか?」

 目をきらきらさせている。そういえば、最初、出会ったときにも目をきらきらさせていたなぁとハリーは思い出した。好奇心旺盛なのだろう、ヘスティアとリリルカを両手にぶら下げたままこちらに身を乗り出して聞いてくる。

 それにリューは考える。リリとヘスティアも興味を持ったのか、みんながリューに注目する形になった。

「恩恵というものは、その個人の経験が顕れるものです。したがって、魔法を発現させるさせるためには、魔法的なことをするのが良いとされています。たとえば、世界の理を勉強をする、魔法についての研究をし、理解を深める。エルフは魔法に関して研究するものが多いので、魔法を発現するものが多いという学説を持っている人もいるようです。まぁ、本当かどうかは確かめようがありませんが・・・」

 ベルはがっかりしたようである。

「勉強ですか・・・。本のを読むのは好きだけれど、そんなにたくさんの本は手に入らないし、ましてや、勉強なんてする方法が無い・・・」

 そうしてベルはジョッキのエールをぐいっとあおる。ハリーは気づいたのだが、元の世界でならばベルとリリルカはまだ学校に行っている年齢のはずだ。だが実際には冒険者として生活している。学校自体が無いのだろうか。でも、読み書きは普通にできているし・・?

 ハリーが考えている間に、シルは一言断ってから、お変わりを取りに席を立った。

 

「ベルは読み書きはどうやって覚えたの?」

「ああ、オラリオに来る前に、田舎でお爺ちゃんに、教えてもらったんだ」

「へえ、良いお爺ちゃんだねぇ」

 祖父の世代の親族が居ないハリーにはちょっとうらやましい。

「うん、オラリオにきてからちっょと、少し、いや、やっぱり大分かな、かなりスケベなお爺ちゃんだと分かったけれど、良いお爺ちゃんだったよ」

 ベルの祖父がなくなっていたことを思い出したハリーは、話題をリリルカに振ってみた

「ええと、リリは、ファミリアで皆と覚えました。あのころはまだ、親が居て、待遇がまだましでしたからねぇ・・」

 瞳の光が消えて、ベルの腕を抱いたまま、リリルカがぶつぶつと呟く。

「それからは大変でした・・」

 勉強について尋ねただけなのに、何か場の雰囲気が暗い。流れを変えたいとハリーは思い、リューに話題を振る

「えっと、学校とかはないのでしょうか?」

 義務教育とか無いようだと思いながらも確認するハリー。だが予想は覆される。

「一応ありますよ。ただ入学制限があるので、オラリオの一般市民は通わないんですよ。ポッターさん」

「学校にいった人たちのほうが魔法を覚えることが多いんですか?」

「どうなんでしょうね。魔法に対しての適正、すなわち、個人の資質も影響が大きいようですし。まだまだ分からないことも多いですから、これからの研究が待たれるところですね」

 そこへシルが戻ってきた。ジョッキを乗せたトレイを片手で支え、もう片方の手で何かを持っている。

「ベルさん、本が無いということでしたら、これ(・・)は如何でしょうか」

 そういうと、リューは立派な装丁のどっしりした黒い本をベルに手渡す。

「誰のか分からないのですが、忘れ物なんです。ミア母さんにも、ヘスティア・ファミリアに貸すのなら問題ないといってくれましたし。しっかり勉強して魔法を覚えてくださいね」

 そういってシルはにっこり笑った。立ち上がり、大喜びで受けとるベル。本を受け取るときに、シルともちゃっかり握手をしているが、本人は自覚は無いようだ。それをジト目で見るリリルカとヘスティア。

「帰ったら早速読んでみます。ありがとう、シルさん!」

 その後、たらふく食べたヘスティア・ファミリアは帰宅し、リリルカは三巻を書かないとと呟きながら、自分の宿へと戻るのだった。

 

 ホームに戻り、片づけをしてのんびりとしている時間。ハリーは箒、ドラゴンフライの調整、ベルとヘスティアは読書をはじめた。

 ハリーはクッション呪文の点検をし、ワックスをかける。小枝の一本一本の向きを微調整し、固定を確認する。鐙が緩んでいないかを確認し、調整を終える。立ち上がって、ストレッチをして体のコリをほぐす。次は、二本目の箒の作成を考えなくてはならない。二人乗り用というリクエストが一応あるのだ。もちろんドラゴンフライでも三人は乗れる。だが、乗ることはできるが、かなり密着した状態で、真ん中に乗った人は押しつぶされるような形になる。だから三人で空を飛ぶとなると、もうちょっと大型の箒が必要になる。材料から買わないとだめかなぁとハリーは判断する。幸い明日は休みにしているので、ついでに材木店に買いに行こうと予定を決める。時計に目をやるとすでに夜もかなりふけていた。

 二人の様子はと見ると、すでに二人とも本に頭を乗っけて寝落ちしていた。

「やれやれ、神様の年齢は聞かなかったけど、結構、いい年なはずなんだけどなぁ・・・」

 しかたがないので、浮遊呪文をつかって二人をベッドまで運び、ハリーも眠りについた

 

 一方リリルカは・・・

「明日はダンジョンはお休みなのです。ならば、今が原稿を書くときです! ふふふ、今日のベル様も素敵でした。リリがモンスターに囲まれてぼこぼこにされた時、さっそうと現れたベル様!! かっこいいです! 素敵です!! こう、胸が苦しいほどせつないというか、頭が沸騰するというかぁ! あぁ私と同じ状況にパリーが陥り、それを今日のようにペルが助ける。くぅ、いいです、このシチュエーション!! 書かずにはいられない!」

 興奮で顔面を真っ赤にさせて、全力で『ドキドキ! ダンジョンラブ!!』を書き進めていた。

 

 

*********************************

 

 

 翌朝、ヘスティアが朝食を作っているとき、ベルが飛び起きた。

「うわあああーーーーー」

 いきなり叫ぶベルに慌てるハリーとヘスティア。

「どうしたんだいベル君! 起きるなり絶叫とはただ事じゃないぜ!」

 そんなヘスティアの声が耳に入っていないのか、ベルは恩恵の更新を頼んでくる。

「更新! 恩恵の更新をお願いします! なんだか僕、魔法を覚えている気がするんです!」

「おいおい、ベル君。本を読んだからって、すぐに魔法を覚えられるものじゃないと思うぜ」

 あきれるヘスティア。

「でもまあ、昨日は、結局なんだかんだで更新してなかったし。朝ごはんを食べたら、更新しよう。ただし! ダンジョンにいっちゃ駄目だぜ。まずは今日、きっちりと準備をするんだ。わかったね」

 がっくりとするが、確かに更新して魔法を覚えていると分かったら、準備もせずにダンジョンに突進するだろう。その自覚があるベルはおとなしく朝食の準備を手伝う。すばやさがAに近くなっているだけのことはある。食器類をセッティングし、ヘスティアが作り上げた料理をすばやく、こぼさず、テーブルへと運ぶ。残像ができるんじゃないかと思うほどのスピードだ。

 

「さぁ、準備ができましたよ、食べましょう、神様!」

 これにはヘスティアも苦笑する。

「わかったよ、ベル君、でもよく噛んで食べるんだぜ。でないと消化に悪いからね」

 しかたなく、ゆっくりと食べるベル。三人は今日の予定を話す。ヘスティアはいつも通りにバイトである。ベルとハリーは、昨日ダンジョン内部で捨ててしまった道具類の新規買出しである。使ってしまったポーションなどの消耗品類、リリルカ用のバックパック、予備の武器、その他の雑多な品々。買うものは大量にある。幸いこれまでのダンジョンアタックで資金は保管してある。それとハリーは新しい箒の材料の買出しで材木店にもよっていく。そうしておしゃべりをしているうちに、皆食べ終わった。ハリーが申し出る。

「片付けは僕がやるから、ベルは先に更新を」

「ハリー君、いいのかい? すまないね」

 ハリーは浮遊呪文で食器類をふわふわと持ち上げて、流しへと移動させる。そして清めよ(スコージファイ)で汚れをきれいに落とす。ヘスティアとベルには、ハリーが数十の魔法が使えると説明しているので、ホームでは思う存分魔法を使っていた。きれいになった食器類に再び浮遊呪文をかけて、食器棚へと収納する。この間、約五分。魔法が便利だと改めてしみじみと感じるハリーであった。

 

「やったーーーーー!!」

 ベルの歓喜の声が響きわたる。どうやら、予想通りに、魔法を覚えたようだ。にまにまと笑いながら、ハリーのところにやってきた。今度はハリーの更新の番である。

 ヘスティアが背中に乗り、イーコールを背中に落とす。

「まったく、ベル君が魔法を覚えるなんてねぇ・・。覚えない子供も多いって言うのに・・。まあ、うちには規格外のハリー君が居るし今さらか・・」

 諸悪の根源がハリーのような言い草である。しかし、他の世界から来た魔法使いという説明に納得してくれるヘスティアに対して、ハリーは苦笑いするしかない。そうしている間に、ヘスティアはステイタスをコイネーに書き起こす。ちなみにハリーは文字の勉強もしているので、数字は問題なく読めるようになった。

「これでよしっと。ハリー君はトータル200オーバー。全部のアビリティがBになったね。これからもっとダンジョンの奥に行くことになるだろうが、気をつけるんだよ」

「明日からは、飛んで逃げられるように、箒を持っていくんで大丈夫ですよ」

 安心させるように説明する。

 そしてハリーはベルに覚えた魔法の詳細をたずねる

「超速攻魔法。ダンジョンで試さないと実際の効果は分からないけど、使い勝手はよさそうだよ」

「そういえば、起きた時から魔法を覚えたって、確信を持ってたけど、何でそんなに自信があったの?」

「うん、すごい不思議な夢を見てね。あ、これは魔法を覚えたって確信したんだ」

 魔法を覚えたのが、そうとう嬉しいのか、いまだにニコニコしているベルである。

「へぇ、不思議なこともあるもんだねぇ。何かそんなことが起こるような原因はあったっけ」

 あごに手を当てて考えるベル。

 

 ハリーは思いつくことがあった。

「二人とも、昨日は本を読みながら寝てしまっていたけど、その本が原因?」

 ベルは昨日読んでいた本を本棚から取り出す。中身をぱらぱらとめくっていくうちに顔が真っ青になる。本を閉じると、題名を確認して真っ青を通り越して、真っ白になる。それに不信を抱いたヘスティアが本をベルから取り上げると題名を読み上げる

「えーとなになに・・『フグでも読むだけで魔法が使えるようになる魔法指南書』・・ってこれ魔道書じゃないか!! なんでこんなものがぁぁぁ!!」

 驚愕のあまり、変な顔になるヘスティア。

「昨日、店員さんが貸してくれたじゃないですか」

 何でそんなに驚くのか分かっていないハリーは冷静に指摘する。

「そういや、そうだった・・やばい、ハリー君、これは読むだけで魔法が使えるようになるマジックアイテムなんだ。買うと数億ヴァリスする超貴重本だ・・」

 焦るヘスティアだが、事態が分かっていないハリーはのほほんと、返事をする。

「じゃあ、ベルは読み終わったことだし、今から返しましょう。そうしましょう。破いたら大変だ」

 ベルは真っ白に燃え尽きたままだが、ヘスティアはソファに崩れ落ちて、頭を抱えて叫ぶ。

「違うんだ、ハリー君。この手の本は一度読んだら効力が無くなるんだ。魔法を覚えられるのは最初に読んだ一人だけ。その後は効力を失いただの紙束になるんだ」

 ハリーは本を手に取ると開いてみた。ぱらぱらとページをめくってみるが、どのページも真っ白である。ふむと考え、本を机に置き、杖を引き抜き、直れ(レバロ)をかけてみる。改めて確認するが、やはり真っ白のままであった。

 ハリーの一連の行動を期待してみていたヘスティアであったが、何も起こらないと分かるとため息をついた。そして、ハリーから本を受け取るとベルに渡した。

「仕方が無い、借りてた以上は返さざるを得ないから、最初から白紙だったと言うんだ。数億ヴァリスなんてとても弁償できる金額じゃない。さっ、これでこの問題は片付いた。そろそろ出かけよう」

 確かに問題はそうするしかなさそうであった。しばらくするとベルも諦めがついたのか、再起動して、動き出した。ただ電池が切れたブリキの人形のようにぎこちない動きである。

 

 まずは買い物の準備で、買出しリストを作りはじめた。もちろん、ハリーも横から手伝う。ハリーは今後居なくなる可能性があるので、実務的なことはベルがメインでやることになっているのだ。まあ、リリルカも居るので、リリルカの改宗後は実際には二人でやることになるのだが・・・。ベルがうんうんと唸りながらもリストを完成させたので、戸締りをして、二人は出発する。

 最初の目的地は、最大の問題店である豊穣の女主人である。

 

 

********

 

 

「あらあら~、今日はダンジョンはお休みでしたよね。こんな早くからどうしたんですか、ベルさん」

 出迎えてくれたシルに事情を説明する。

 三人でどうしようかと頭を抱えていると、マスターのミアがやってきた。厨房で仕込みをしつつ、三人の話を聞いていたのである。

「この忙しいのに、何をぐたぐた悩んでいるんだい」

 あきれたように言うと、ベルの手から(元)魔道書を取り上げると、隅にあるゴミ箱に放り込んだ。

「すんじまったもんは、仕方が無い。もともとはどこの誰がおいていったかも分からない代物なんだ。忘れていったほうが悪い。さ、これで用事は済んだだろう。シルは仕込みを手伝いな! リューに任せてると全部消し炭になっちまう」

 その声であわてて、シルは厨房に走っていく。そしてミアはじろりとベルとハリーを睨む。

「あんたがた、冒険者なんだろう、こんなところで油売ってて、ダンジョンに行かなくてよいのかい。さぁ、行った行った!」

ミアの大声に追い立てられるようにして、二人は店を後にした。

 

「あれでよかったのかな・・・?」

 ベルが呟いたのは、しばらく歩いてからだった。心配しているベルには悪いが、ハリーとしては、まあ、持ち主になっているっぽい?、ミアがいうのであれば、それで解決したと判断していた。『すんじまったもんは、仕方が無い』というのは、いつ死ぬか分からない、いかにも冒険者らしい言葉だと思ったのも事実だ。ミアから"それ"を言われて、ハリーは不思議と納得していた。

「いいんじゃない、僕は、いかにも冒険者らしい解決方法だと思ったよ。たぶんミアさんも昔は冒険者だったんじゃないかな」

「そうだろうねぇ・・」

 これで気分が上を向いて、少しは元気が出たのか、ベルの表情が明るくなった。。

 それから、二人はリストの順番に買い物を進め、昼ごろ荷物が多くなったので、一旦、ホームに帰還する。その時に、ベルが作った簡単な昼飯を食べた後、また市街に出かけ、買出しを続ける。

 

 ようやくすべての買出しが終わったのは午後も大分過ぎたころだった。

 最後にハリーが箒の材料を買い込み、ホームへと帰還する。二人とも、けっこうくたくたであった。

「ねえ、ハリー、思ったんだけれどさ。ハリーのプロテゴがなかったら、僕たち昨日死んでたんじゃないかな。あれで追撃を防げたのは大きいと思うよ」

 ソファーに沈み込んだままベルが呟く。

「うん、そうだね。あと、ナァーザさんも言ってたけど、階段を超えてモンスターが移動しなかったのも運が良かったと思う。時々階段を使うモンスターが居るらしいからね」

 ポーション類の補充のため、ミアハ・ファミリアの店にも寄って、そのときモンスターパーティの話をしていたのである。ベルは身震いをするとハリーに告げる

「レベル2相当のモンスターが5階層まで来たことがある・・・」

 爆弾発言である。今のベルとハリーならば、5階層はパーティを組まずにソロでも余裕である。そんな場所に絶対に勝てない格上のモンスターが居るなど、ハリーは聞いたことが無かった。エイナのレクチャーでもそんなことには触れていなかった。移動するとしてもせいぜい2階層分ぐらいだったはずである。

「それマジ?」

「うん、かなり下の階層で大量発生したミノタウロスが、トップ・ファミリアから逃げて5階層まで来たそうなんだ・・」

 絶句するハリー。そんな事態には対処のしようが無い。昨日のようなモンスターパーティならば、一体一体は自分と同格。しかし、下の階層からモンスターが移動してきたら、相手は格上。そんなものが群れを成していたら・・。

「よく生き延びたね。どうやったの」

 ハリーの問いかけに、当時のことを思い出し、顔を赤らめて肩をすくめるベル。

「全力で走って逃げた。そしたら、ロキ・ファミリアの、そのう、拳姫アイズ・ヴァレンシュタインさんが、助けてくれたんだ」

「へぇ・・・」

 そんな人ロキ・ファミリアに居たかなといぶかしむハリー。怪物祭のときに出会ったことをすっかり忘れている。もっともハリーは入れてくれるファミリアを探していたので、ロキ・ファミリアのメンバーとの交流は少なかった。いろいろと案内をしてくれたラウル。出入りの際に挨拶をしていた門番。そして魔法談義をしに来る副団長のリヴェリア。この三人が最も交流が多かったメンバーであった。

「ハリーはロキ・ファミリアに居た時に、アイズさんを見なかったの?」

「ファミリア探しに忙しくて・・・」

 

 そして、ハリーはせっかくだからと、ロキ・ファミリアの説明をする。具体的には、ホーム内部にどんな施設があるか。寝室などがある個人エリア、訓練場所や食堂などの共用エリア。食堂や、警備員、門番は団員がやったり、外部から信用できるものを雇ったりしているなどの運営方法、などなどである。今は無理だとしても、今後のヘスティア・ファミリア運営に役立つだろうからとの思いからである。ベルも最初は聞き流していたが、メモ用紙を持ってきて、最初から説明をやり直してもらい、熱心にメモを作り始めた。途中で話が脱線して、クィディッチの試合のことなど魔法界の話を解説したりした。

 そうして、反省会だか、今後のファミリアの運営方法論だか、単なる雑談だか、よく分からないまま話ははずみ、一日は過ぎていったが、なかなか有意義な一日だったと、二人は満足したのだった。

 

 そしてヘスティアがもどった後は、三人で夕飯を食べ、明日に備えて眠りにつくのであった。

 




 ハリーの誕生日は七月末です。オラリオにやってきたのは七月、18歳になる直前です。オラリオですごした日数的に18歳としています。

 ハリーがロキ・ファミリアについてベルに説明していることは、秘密情報っぽいですが、中堅~大人数ファミリアでの必要設備などの大雑把な説明に絞っているので、秘密情報にはなっていません。さすがに見取り図とかは書いてないです・・


昼、ダンジョンでモンスターパーティに出会い死にかける
夜、酒場で大騒ぎ。
冒険者はタフでないとやっていけない・・


次回『ファイヤボルトと光の御柱』
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