ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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オラリオ上空から下へ

 ロキ・ファミリアの歴史的遠征。その出発に立ち会うというオラリオ早朝のイベント。

 ダンジョンに遠征隊(ロキ・ファミリア)が入った後、集まった群集たちはようやく広場から離れ、日常へと戻ろうとしていた。そんなときである。轟音と共にガネーシャ・ファミリアの建物が吹き飛ばされる。正確には主神ガネーシャをかたどった建物の右半身が吹き飛ばされ、左半身は炎を上げて炎上している。

「俺のホームがぁぁぁぁ!」

 遠征出発を、ファミリアのほぼ全員を率いて見送りに来ていたガネーシャが悲鳴を上げる。

 ホームを直撃したのは、ハリーたちを追いかけていたドラゴンのブレスである。ガネーシャ・ホームに気の毒なことをしたが、これはもう仕方が無い。運が悪かったとあきらめるしかない。

 

 そして爆発の煙と埃が舞い上がる中、ハリー、リリルカ、ベルが乗った箒がその中から空中に飛び出す。

 ドラゴンも三人の後を追って穴から這い出してきていた。

 ホームに居残っていたガネーシャ・メンバーが大慌てで、テイムモンスターの退避と、非戦闘員の避難を開始する。一方、高レベル冒険者はドラゴンを取り囲み、戦う気満々である。だが、ドラゴンが、棘のついた尾を振り回して周囲を破壊し暴れ始めると周囲は沈黙した。さすがに死亡したものは居ないようであるが、大多数が大なり小なり負傷してしまったのである。無事だったものが攻撃しようとしたが、ドラゴンは怒号を上げ、羽ばたきをはじめる。その風に吹き飛ばされて、誰も何もできないまま、ドラゴンの体は浮き上がり、飛翔しはじめる。

「空に逃がすな! 翼を狙え!!」

副団長の指示で魔法を使える者、弓矢で攻撃する者、様々にファミリアメンバーが攻撃に入るが、ドラゴンの羽ばたきで弾き飛ばされ、硬いうろこに阻まれて有効打にはならない。

 

 ついにドラゴンの巨体が宙に浮く。悠々と空を飛ぶドラゴン。そして下を向くとブレスを吐き出した。直撃し爆発炎上するガネーシャ・ホーム。炎を上げて崩れ落ち、瓦礫があたりに飛び散り、たちまちあたり一帯が火の海になる。地上からは相変わらずドラゴンを狙う矢、魔法、投げ槍が飛んでくるが、距離がある上、飛び回るドラゴンには当たる気配が無い。

「GYUAAAAASASS」

 自分の絶対的有利を確信したのか、オラリオ中に響き渡る声でドラゴンが吼える。そして力強く羽ばたくと高度を更に100mほど上げ、再びブレスを吐き出す。破壊され炎上する建物、衝撃で倒壊する建物。瓦礫に巻き込まれて打ち倒される者たち。悲鳴を上げて逃げ惑う市民たち。

 それを見守っていたガネーシャは自分たちの無力さに歯噛みするが、空を飛ぶドラゴンに対して取れる対抗手段が無かった。フレイヤ・ファミリアに救援依頼を出したとしても、たとえオッタルが来たとしても、空を飛ぶ相手に対抗できるとは思えなかった。そうしてる間に団員に担がれるようにして強制的にガネーシャは避難させられる。

 家を破壊され悲鳴を上げるオラリオ市民たちも、ガネーシャ・ファミリアに誘導されて避難し始める。だが逃げ先を狙うかのようにブレスが放たれ建物が爆発する。建物の破片があたりを飛び交い、煙が立ち込め、どこに逃げたらいいのかも分からなくなってしまう。人々は煙に巻かれ、泣き叫ぶ。

そんな中、

「ファイアボルト!!」

切り裂け(セクタクセンブラ)!!」

 白熱の雷と、真空の刃がドラゴンを直撃した。

 

 

********

 

 

 ドラゴンがブレスを吐き、市街を破壊し始めたときの事だ。

 空中に居るドラゴンに対して有効な攻撃ができず、逃げ惑う人たち。それを空から見てベルが宣言した。

「助けに行こう」

「まぁ、そうなる・・よなぁ・・」

 考えてやったわけではないが、ドラゴンを地上まで誘導してしまったような結果になり、ハリー達は後ろめたさを感じていた。

 それに地上に出れば、何とかなると考えていたのに、ドラゴンに空を飛ばれていては、他の冒険者も手も足も出ないようだった。

 現在空を飛べるのは、ハリーたちだけ。ここはもうハリーたちで何とかするしかないであろう。ハリーは仕方が無いなあという表情でベルに同意すると、そのままドラゴンに向かって横から突っ込んだ。

 

 

「ファイアボルト!!」

切り裂け(セクタクセンブラ)!!」

 二つの魔法がドラゴンを直撃する。ダメージがあるのか無いのか分からないが、鱗が煤けて少し黒くなっている。

麻痺せよ(ステューピファイ)! 切り裂け(セクタクセンブラ)! 爆発せよ(コンフリンゴ)! 燃えよ(インセンディオ)

 ハリーも覚えている呪文を連続で唱える。どれが有効かは分からないが、とにかく攻撃あるのみである。ベルも箒の後ろから、ファイアボルトで攻撃している。

 こんな時に助言をくれるハーマイオニーが居たらよかったのにと、ハリーはちらりと考える。彼女が今は居ない以上は、自分で何とかするしかないので、まずはドラゴンについて知っていることを全部思い出そうと試みる。

 ドラゴンが、いらいらと怒りのこもった目でこちらを見て追いかけてきた。

「ハリー、奴の周囲を旋回して!」

 ドラゴンの突進を脇に飛びのいてよける。ドラゴンの黄色い目玉がぎろりとこちらを睨む。その迫力にリリルカは悲鳴を上げっぱなしだ。

 

『アリー、わーたしが思うにドラゴンの鱗はとても頑丈デス』

 頭を優雅に振って髪を後ろに払うフラー・デラクールの姿がなぜか脳裏に浮かぶ。

 ハリーは自分も頭を振って雑念(フラー)を追い払い、ドラゴンの対処法を考える。今までの人生でドラゴンに最も詳しい人物といえば、ロンの兄、チャーリー・ウィーズリーである。だが、彼はいつも忙しく、じっくりと話をできたことが無い。

『正々堂々と勝負だハリー』

 箒を片手にハッブルパフのクディッチ・ユニホームを着て微笑むセドリックと

『ハリー、君は飛ぶのがウマイナ』

 森の中を歩くビクトール・クラムが、クディッチの話をしていることを思い出す。

 

 関係ないことを思い出す自分の脳みそに腹を立てながらも、急速旋回をして、ドラゴンのブレスを回避する。同時に、ドラゴンの背後にピタリと箒をつける。これでベルが魔法を打ち放題だ。だが、なんと、ベルはドラゴンの背中に飛び移った。

 すかさず、ベルはナイフをドラゴンの背中に突き立てるが、傷がついていない。あきらめずに何度も切り付けるが、鱗が硬く、ろくにダメージを与えていないようだ。その間にもドラゴンは背中の異物(ベル)を振り落とそうと、体をめちゃくちゃにねじり、暴れる。

 振り落とされると思ったのか、ベルは、ドラゴンの後ろのほうを指差し、そちらに飛び降りと合図する。ベルを受け止めるべく、ハリーは箒を操る。だが、それよりも早くドラゴンの尾がベルの体を掠め、バランスを崩したベルが転げ落ちる。あわてて、ハリーは箒で落下するベルを捕まえに急降下する。それを追ってドラゴンも体を捻じり、急旋回して追いかけてくる。

 

 羽が生えた黄金のスニッチを掴まえる事に慣れているハリーにとって、空を落ちていくベルを捕まえるのはたやすいことだった。そう、ドラゴンが隣を飛んでいなければ。

 噛まれるか、ブレスを吐かれるか、それとも体当たりか。接近するドラゴンに、リリルカがまたも恐怖の叫びをあげる。口を大きくあけて噛み付きにかかるドラゴンにリリルカが思わず、腰につけていた袋を投げつける。それは偶然だが、ドラゴンの口の中に飛び込んだ。ドラゴンでもむせることがあるのか、GEFUGEFUと咳き込むようにして懸命に頭を振り回して、袋を口から吐き出した。

 

 その間にハリーは無事にベルを捕まえて、箒に乗せていた。

「何やってるんですか、ベル様! 無茶しすぎです!」

 確かにリリルカが言うように無茶苦茶な行動だった。だがベルは叫び返す。

「無茶でも何でもやれることは全部やらないとっ! でないと倒せないんだ!」

 そんな二人を後ろに乗せてハリーは高度を稼ごうと全力で箒を操っていた。後ろからドラゴンが追ってきているのである。

 

 そしてハリーの脳裏に、薄暗いグリフィンドール談話室の中、暖炉の炎の中に浮かんだシリウスの生首を見ながら、四年生のハーマイオニーが悩んでいる光景が浮かぶ。彼女はこう言っていた。

『何か単純で簡単な呪文で、効果を発揮できるはずよ』

 思い出したその光景で、ハリーはようやく、どうすればいいのかが分かった。

 たしかに単純で簡単な事を積み重ねる。そして、複雑で困難なことを構成するのだ。ハリーは二人に作戦を伝える。

 

 

「そう、うまくいくんですか ハリー様」

 リリルカが相変わらず白い顔のまま、疑念を言葉にする。

「ファイアボルト!!」

 ベルがさっそく魔法でドラゴンを攻撃する。

「いいかい、リリルカ。やるしかないんだ。でないと僕たちはドラゴンに食べられておしまいだ・・。じゃあ、いくぞ」

「頼みますよハリー様。私、まだ死にたくないんですからねぇぇぇぇぇ!」

 悲鳴を上げてリリルカは箒にしがみつく。

「ベル、マインドポーションを飲んでマインドの回復を忘れずに! 僕の分も飲んでいいから! リリルカ、僕のホルスターに入ってる分をベルに渡して」

 そのハリーの指示に従い、リリルカがおっかなびっくりと、箒を握り締めていた手の片方を無理やり引き剥がす。そして、ハリーのホルスターからマインドポーションを取るとベルに渡す。

「ベル様、これでマインドポーション、全部で残り4本です、うえっぷ」

 ハリーが急旋回をしてブレスを回避したので、リリルカがそれに耐え切れなかったようだ。

「リリ、もうちょっとだから、がんばろうっぷ」

 ベルもハリーの箒捌きについていけないようだった。だが、相手はドラゴンである。先ほどのベルの言葉ではないが、ここで無理をしなければ、どこで無理をするのだという話である。オラリオ上空を突っ切りながら、ドラゴンのブレスをかいくぐり、こちらからもベルが魔法(ファイアボルト)で攻撃する。

 さしてダメージが無いとはいえ、度重なる攻撃を受けて、ドラゴンはいらいらとしているのか、黄色いはずの目を真っ赤に光らせて、ハリーたち三人の箒を追いかける。完全に標的をハリーたちに定めたようだ。大きく旋回して、ハリーはそれをかわし、ぐるぐると大きくオラリオ上空を旋回し、ブレスを回避しながら高度を稼ぐ。上へ上へと薄い雲をつきぬけ、どんどんと上昇する。

 

「ベル様、これ、が、最後、の、一本、です」

 オラリオが遥か下方で小さく見えるようになったころ、リリルカが途切れ途切れに宣言する。そう、ベルは三本分のマインド・ポーションを飲みながら、魔法でドラゴンを攻撃していたのだ。その甲斐があって、ドラゴンは煩わしさに怒り狂い、なんとしても三人を食べるかブレスで焼くかしようと頭が一杯のようだった。そして恐ろしい執念で三人を追いかけていた。

「よし、高度も十分だ。いくよ、二人ともしっかりしがみついてて」

 その声にベルはこれが最後と全力の魔法を打ち出す。

「ファイアボルト・マキシマァァァ」

 以前ハリーが守護せよ(プロテゴ)の後に『マキシマ(極大化)』とつけていたのを思い出して、真似してみたベルである。もちろん、付け加えても効果があがるわけではない。だが気合が入った詠唱のためなのか、今までで最大の炎の雷がドラゴンを襲う。ドラゴンはそれに怒り、さらに猛々しくなっていく。

 もうベルに出来ることは無い。ここからは、ハリーの腕前にかかっている。

 

声よ響け(ソノーラス)!」

 

ベルとリリルカに、大声を出す呪文をかける。かけられたベルとリリルカは悲鳴を上げるがそれは作戦であった。ハリーは箒のスピードを落とすと同時に向きを180度回転させ、ドラゴンと正面から向き合う形になる。チャンスと見たのか、ドラゴンが口を開け噛み付いてくる。だが、ハリーはそれを予想していた。ひょいとばかりに、さらに少し上昇し、すかさず魔法で反撃する。

 

 使う魔法は、結膜炎の呪文。

 

すれ違いざまの攻撃であったが、うまく命中させることができた。そうこれこそが簡単で単純で効果的な魔法。かつて三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)でハリー、セドリック、フラーたち各校代表が、それぞれドラゴンと戦うときに、シリウス・ブラックが暖炉の炎越しに教えようとした呪文。そして、ビクトール・クラムが使った魔法だ。

 

「GUGUAYARARA」

 怒りと結膜炎で目を真っ赤にし、涙を流して苦しがり、悲鳴を上げるドラゴン。だが目がよく見えず苦しみながらも、悲鳴を目当てに向きを変えてハリーたちに襲い掛かろうとする。それを避けるとハリーは垂直に真下に加速してオラリオに落ちていく。二人の悲鳴を目印に、箒を追いかけて同じく急降下するドラゴン。重力による加速も合わさり、かつて無いほどのスピードを見せるハリーの箒。気持ちがいいほどのスピードで真っ逆さまに落ちていく。

 びょぉびょおと吹き付ける向かい風の中、後ろの二人は、目印の悲鳴を上げ続ける。ハリーは風に目を眇めつつ、もっと早くもっと早くと箒からスピードを絞り出していた。

 

 最初のうちは、高度があったのでまだ良かった。だが落下の速度が上がり、高度が下がり、次第にオラリオが大きくなり、地表の様子が見えてくるようになると恐怖心が湧き上がってくる。目が良く見えないドラゴンが追いかけてこられるようにと大声を上げていた後ろの二人(ベルとリリ)だが、今では純粋に落下の恐怖で、本気で悲鳴を上げていた。

「ちょっとハリー様! このスピード本当に大丈夫ぶぶふぶぶぁぁぁぁああ、ぎゃあぁぁぁぁ」

 特に高いところが苦手なリリルカは絶叫していた。風にあおられ、かぶっていたフードが顔に張り付くようしてはためいている。呪文でさらに大声になるようにしていたため、ハリーはだんだん耳が痛くなっていたが、箒の操縦に全身全霊をかけるべく、それを意識の外に追いやった。ドラゴンも目がよく見えないまま、強力な羽ばたきで、悲鳴を頼りに、ハリーたちを追いかけて急降下していた。時折、悲鳴に向けてブレスを吐くが、悲鳴をかき消すことができず、それがさらに羽ばたきを強力にする原動力になっているようだ。

 ハリーは全力で箒を操縦しつつ、背後にも気を配ってブレスを回避し、いつ上昇に転ずるべく箒を立て直すかタイミングを見計らっていた。タイミングが遅いと自分たちも地面に激突するし、早すぎるとドラゴンを地面にたたきつけることができない。ぎりぎりまで地面にドラゴンをひきつけることが必要だった。

 

 これがハリーの計画、ウロンスキー・フェイント。

 スニッチを見つけたふりをして相手シーカーと共に地面に急降下し、激突寸前で上昇する。ビクトール・クラムがクィディッチ・ワールド・カップ決勝でやって見せ、相手シーカーを地面に叩きつけた技だ。ハリーはこれを、自分達を餌替り(スニッチ)にしてドラゴン相手にやってのけようというのである。

 

 さらにスピードをあげて、地表に向かう。忙しく、前後を振り返り、ドラゴンと、自分たち箒と、地表との距離を確かめる。その際にオラリオの様子がちらりと視界に入る。先ほどのドラゴン・ブレスで燃えあがった建物からモクモクと煙が上がり、避難の為か人でごった返している町並みが視界を掠める。

 

 そして、これはもう地面にぶつかるのを回避できないと、リリルカが本気で死ぬのを覚悟したとき、ハリーは呪文を唱え、箒を引き起こした。

黙れ(シレンシオ)!」

 呪文をかけられた後ろの二人(ベルとリリルカ)は声を出そうとしているが、ぴたりと声が止まる。悲鳴が聞こえなくなり目標がなくなるが、構わず、ドラゴンはまっすぐに急降下を続ける。そしてドラゴンは、高空からの急降下のスピードのまま、恐ろしい勢いで地面に激突していた。衝撃で土煙が爆発的に、オラリオ外壁以上の高さまで舞い上がる。激突音はオラリオ中に響き渡った。

 

 後ろを向いていたベルは上手く行ったことに、拳を突き上げ無言のまま喜びを爆発させる。ハリーは減速しつつ、箒の向きを力づくで無理やり変えて、水平飛行に移ろうとする。箒がそれに逆らい、ぎしぎしと軋む音を立てる。喜んでいたベルとリリルカにもそれは聞こえ、箒が壊れるという恐怖で、二人は身をすくませる。リリルカの顔色は白を通り越して緑色になり始めている。ハリーは全力で腕に力をこめて箒を引き起こし、ようやく、地面と平行にすることに成功する。だが、そこまでだった。みしみしと悲鳴を上げていた箒が、ハリーの手の中でバキリと音を立てて、ひびが入り、すぐに全体に広がる亀裂となり、真っ二つに割れてしまったのだ。三人は箒から放り出され、地面に叩き付けられ、ごろごろと転がる。

 

 数十m転がってようやく止まった三人。ベルがすばやく立ち上がり、武器を構えて、ドラゴンが落ちた方向を向いて警戒する。たちこめる土煙は収まる気配を見せず、ドラゴンが死んだのか、はたまた、ぴんぴんとしているのか、様子がまったく伺えない。

「二人とも大丈夫?」

 警戒したまま、ベルが問いかける。

「リリは無理です。動けませんです。もう放っておいてください」

 リリルカは草臥れ果てて、不貞腐れたように地面に仰向けに寝転がったままそう返す。ハリーは痛みを堪えて、ようやく立ち上がり、杖をホルスターから抜き、ベルのそばまで歩いて、並んで立ち、警戒する。もうこれだけの事をするだけで疲労困憊だった。

「あれでだめなら、もう出来ることは僕たちには無いよ。さっさと逃げよう」

 とは言うものの、箒が壊れた今、空を飛ぶドラゴン相手に逃げられるとはハリーは思っていなかった。計画が上手く言っていてくれと祈るハリーである。

 そうして、二人がドラゴンを警戒していると風が土埃を吹き払い、徐々にドラゴンの様子が見えてくる。まったく動きが見えず、気絶しているかと最初は思う二人である。リリルカは疲れ果てて寝転がったままで、地面にいるってすばらしいと呟いている。

そしてさらに土埃が吹き飛ばされ、徐々にドラゴンの様子が詳しく分かる。ドラゴンは頭を下にしてつぶれており、どう見てもその特徴的な長い首が折れていた。首の骨が肉を突き破って飛び出しているのが見える。地面にぶつかった頭部もひしゃげている。

 

 死んでいる。

 

 ハリーの計画がこれ以上に無いほど上手く行き、ドラゴンを退治できたのだった。

それを確認したベルとハリーは安堵のあまり、へたり込んだ。

 




補足
 地面直前で姿くらましするという方法があるのですが・・・
 この話のハリーは、姿くらましよりも、箒のほうに信頼をおいています。あと、ベルとリリルカの二人を連れて、付き添い姿くらましを上手く出来るか、ハリーには自信が無かったのです。下手をしたら、空中に姿現しした途端に、ばらけたりしますので・・。それで、この方法となりました


次回『ハリーの挑戦』
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