ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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ドラゴン騒ぎの後始末いろいろです・・・


ハリーの挑戦

 ドラゴンが死んだことを確認すると、三人はへたり込んでしまった。

 

 だが、それから大勢の人たちがやってきた。

 

 まずは、何事かと慌ててやってきた、デメテル・ファミリア。農作業をしていたら、この騒ぎである。ドラゴンの死体に驚いた彼らであったが、へたり込んでいた三人を発見するとすぐにホームに運んで、治療と称して手厚い看護をはじめた。

 それから次にやってきたのは、ドラゴンがオラリオ市外に墜落するのを目撃したガネーシャ・ファミリアとギルド・メンバー。

 死体の見張りに残っていたデメテル・ファミリアから事情を聞くとすぐに、三人のところにもやってきた。三人の話からドラゴンの種類は、ダンジョンの階層をブレスでぶち抜いた以上は資料にあるとおり、砲竜(ヴァルガング・ドラゴン)となった。

 だが、ハリーがただ一人、『故郷に伝わるハンガリー・ホーンテールの見かけと同じだ』と主張したので、困ってしまった。だが、ドラゴン調査部隊から、このドラゴンには魔石が無い『特殊固体』と連絡が入ると、『ハンガリー・ホーンテール』を固体名称として扱うことにした。ハリーもそれに納得するしかなかった。

 

 そして魔石が無いということは、全身くまなく素材にできるということである。狂喜乱舞した生産系統のファミリアは、こぞって買取を申し出た。討伐したベル達に所有権があるので、ヘスティアも含めて、どう取り扱うかを話し合った。そして一部の素材を取り分けて、残りはすべてギルドを通じて売却した。そして得た金額の大部分を、ドラゴンに破壊されたオラリオ復興に使うようにと、ギルドに提供したのである。これには皆が喜んだ。

 

 実のところ、大金だったので、寄付するのはちょっと、いや、かなり? 惜しい気がしたのである。とはいうものの、自分たちを追いかけてドラゴンが、地上まで来たことを後ろめたく思っていたので、このようなことになったのだった。あと弱小ファミリアが巨大資金をもっていると、良からぬ輩に目をつけられて、無用なトラブルを招きよせるのでは? というヘスティアの思惑もあった。

 

 そして取り分けておいた資金で、装備を新調すると同時に、ホームの改修をするべきだと、ハリーが強硬に主張した。

 たしかに、現在四人になったヘスティア・ファミリアでは教会地下室で生活するのはかなり手狭である。地上部分を修理して、今後のためにも、もっと大勢で住めるようにすべきである。そのための資金としてドラゴン売却金を使おうというのである。

 執筆スペースが欲しいリリルカや、手狭になってベルといちゃつきにくいと感じているヘスティアや、『もっと大勢で』という部分にファミリア巨大化を夢想するベル。結局ハリーの提案に全員賛成した。

 

 

 そして、ベル、ハリー、リリルカにとって、大事なことがもう一つ。ドラゴンとの戦闘後、ヘスティアが三人の恩恵の更新をしたのである。

 

「やったぜ、ベル君! ランクアップだ!」

 ヘスティアが、ステイタスを書き写した紙をベルに渡す。そこには確かにレベルが2と記されていた。そして待望の発展アビリティも。

「えっと、神様、このアビリティは?」

「うん、発展アビリティは『幸運』一個だけだった。おそらく、これから人知の及ばぬところで、いろいろと助けになると思うぜ。まあ、他の選択肢がないから、これを選ぶしかないけど、損はしないと思う」

 冒険者が努力しても得られないもの、自前の努力でどうしようもないもの、それが幸運である。それがステイタスとして自分の努力で得られることができるかもしれなくなったのである。ベルは喜んでいた。

 

 そしてリリルカ。残念ながら、ドラゴンとの遭遇前のステイタスが低かったのでランクアップは無理だった。だが、ステイタスが恐ろしく大幅に上がっていた。リリルカの話を聞いてベルとハリーは思い出したのだが、ミノタウロスの強化種をリリルカが(一応)撃退していたのである。

 強化種のミノタウロスと特殊固体のハンガリー・ホーンテール。これら二体を退治した経験が加味されているのだろう。一部のステイタスがEになっていた。それをみてリリルカが泣いたのは当然であろう。これまではステイタスがまったく伸びなかったのであるから。

 ちなみに、泣いたリリルカをベルが慰めたので、ヘスティアが嫉妬に怒り狂った。英国人のハリーは紅茶とスコーンを奉げて、ヘスティアのご機嫌をとるのだった。

 

 そして最後に。

 ハリーもベルと同じくランクアップし、自分のステイタスを見て苦笑いしていた。そう、簡単な共通語(コイネー)なら読めるようになったのである。そんなハリーの様子を見てヘスティアも寂しそうな表情も浮かべつつ苦笑する。

「まあまあ、ハリー君、予想もしないアビリティが出たからって、そんな顔をすることは無いぜ。まあ、僕もそんなアビリティが現れるとは予想外だったけどね」

 ハリーに現れた『発展アビリティ』といって良いのかどうか、ヘスティアは判断がつかなかった。だが、レベルアップと同時に現れたので発展アビリティというしかないのであるが・・・

 おそらくというよりは、絶対確実に史上初の発展アビリティにして、史上最後の発展アビリティ。

 ハリー以外にはこれが発展アビリティとして現れることは無いだろう。ステイタスの更新をしたときには、ヘスティアは自分の目がおかしくなったかと、顔を洗って目薬を差して見直したぐらいである。

「まあ、『魔力』を習得したんだから、今後はオラリオ式の? 魔法を覚える可能性があるわけだ。本当に君オリジナルの魔法になるだろうから、期待していいんじゃないかな」

 そういわれても、すでに杖魔法を習得しているので、満足しているハリーである。それに、魔法界に戻れば、恩恵は消えて、オラリオ式の魔法は使えなくなる。

 

 だが、それよりも大事なことがある。そうハリー待望のランクアップである。ハリーが入団するときの条件、『ランクアップして強くなったら故郷に帰る』、これを満たしてしまったのである。ちょっとしんみりするハリーとヘスティア。

「ってハリーも、神様も、なんでそんなに冷静なんですか! ランクアップですよ! ランアップ! お祝いしましょう! あ、エイナさんに報告しないと! 一緒に報告に行って、帰りについでにご馳走の材料を買ってきましょうよ!?」

 その条件を忘れているようで、そういって喜んでいるベルである。だが、その騒ぎも、ノックの音で中断される。

「誰でしょうね、もしかして入団希望者ですかね」

 と、ぶつぶつと呟きながらリリルカがドアを開ける。

 

 入ってきたのは、赤髪を肩まで伸ばした女神。黒いタイトスカートに、白いシャツ。赤いジャケットを着込んでいる。最大ファミリアの主神が一人ロキである。

「やっほー、ハリーはん、遊びに来たでー。それと、どちび、こんなところがホームなんかい。しけとんなー、もうちっと広いところに引っ越したほうがええで? まあ、今日来たのは別件や」

 

 ベルとリリルカがお客様用に椅子とテーブルを準備し、お茶を煎れたりとすばやく動き回り、てきぱきとおもてなしの準備をする。

「さ、ロキ様、お茶をどうぞ」

 テーブルに着いたロキとヘスティアに紅茶を勧めるベル。

「はじめまして、ヘスティア・ファミリア団長ベル・クラネルです」

 にこにこしながら挨拶をするベルを見て、ロキは『なんか、ほんわかしたやっちゃなぁ。主神と眷属とは似ないものなんやなぁ』と考えていた。ロキはベルに礼を言って、紅茶を一口飲むとさっそく本題を切り出した。

 

「今回来たのはな、ドラゴン退治をしたのが、ヘスティア・ファミリアのところと聞いたからやな。まあ、空を飛んで戦うハリーはんたちは、うちも見たから知ってたけどな。格好よかったで。どうなることかと心配したけど、無事に退治したとはたいしたもんやで、ほんま、なぁ」

 ばんばんと背中を叩きながら、べた褒めするロキの言葉に喜ぶベルと、箒で空を飛んだことを思い出して青ざめるリリルカ。

「それでな。念のための確認やけれど、君らランクアップしたやろ?」

 ベルはにこにこしながら、ハリーはまじめな表情でその言葉に頷く。どうせ、ランクに関してはギルドを通じて公表されるのである。隠す必要は無かった。

「うんうん、そかー。あれを倒したんなら、そうやろうなぁとは思ったんや。おめっとうさん。これランクアップのお祝いな」

 そういってロキはベルに袋を渡す。ベルが中身を確かめると、肩につけるエンブレムバッジが10枚ほど入っていた。ただし、エンブレムの図案はまだ刺繍されていない。

「これはそっちの二人で分けてーな。それとこっちはハリーはんようや」

 ロキはハリーに別の大きな袋を渡す。ハリーが中を確かめると、ポーション類がぎっしりと、それとなんとエリクサーも1本入っていた。それから小型のナイフが一丁である。ロキはハリーに頭を寄せると囁いた。

「ナイフは小型の魔剣や。威力は、うんまあ、たいしたことはあらへんが、不意打ち程度には役に立つやろ。元の世界で役に立ててや」

 ベルとハリーはお礼の言葉を述べる。ヘスティアもしぶしぶとではあるが、きちんと礼を述べる。確かに魔剣を準備できたのは、ハリーにはとても助かることであった。

ヘスティアも、ロキが来た理由は、ハリーが帰るので見送りの来たのだろうと見当をつけていた。となると、事情を知らないリリルカに説明せねばなるまい。

 

「さて、リリルカ君。ちょっと話がある」

 改まってヘスティアがリリルカを呼び、ハリーについての事情を説明する。ただし、異世界から来た事や、魔法を大量に使えることなどは伏せる。移動魔法についても移動スキルと説明する。理由は簡単、ランクアップしたが、帰れなかった場合の事を考えたのである。ハリーにとっては、帰れることが最善であるが、主神であるからには、あらゆることを考慮しなくてはならない。リリルカは目を白黒させながら、話を聞いて、何とか情報を消化した。

 

「つまり、故郷に帰るためにスキルを強化しないといけない。そのためにはアビリティを上げるだけでなく、ランクを上げる必要があるというわけですね」

 そして、リリルカは心配そうに尋ねる。

「でも、レベル2で大丈夫なんでしょうか? レベル3が必要だったとしたら?」

 それには、ハリーが杖を構えて、立ち上がりながら答える。

「うん、それはもう試して見るしかないのさ」

 そのハリーを、ヘスティアが慌てて止める。

「だが、試すのは、ちょっと待つんだハリー君。戻ったら、君は直ぐに戦いに参加するわけだろう。準備をしておいたほうがいい。とりあえず、ダンジョンに潜る時の装備に変えてポーション類も整えるんだ。その普段着の格好で戻るのはまずい」

 

 ヘスティアの指摘は最もであった。以前、リヴェリアに指摘されたように、時間の流れがどうなっているか分からないが、最悪、死喰い人の集団とヴォルデモートの目前に戻る可能性もあるのだ。戦闘準備は整えておいたほうが良い。

 さっそく、装備を着替え、ロキからもらったポーション類の袋を背中のバックパックに移動させる。数少ない荷物であるハグリッドから貰った鞄と忍びの地図などの荷物もバックパックにつめる。そして杖をホルスターに差込み、さらに予備の武器と魔剣を腰に装備する。なんだかんだで、ハリーが準備を整えたのは20分後だった。

 

 ベルは複雑そうな顔で、ハリーと握手をする。ハリーがランクアップして嬉しいのだが、同時にハリーとの別れを意味することになると、先ほどのヘスティアの話を聞いて思い出したのだ。

 最初の仲間との別れはつらいものがあった。

「ハリー、元気で」

 色々と言いたい事はあるのだが、さまざまな思いがぐちゃぐちゃに沸きあがり、それしか言う事が出来なかった。

「ベルもがんばれ」

 がっしりと握手してハリーも答える。

 

 リリルカとも握手をする。

「ハリー様。これだけ盛大にお見送りされてるんですからね。失敗したら気恥ずかしいですよ。戻れるように、頑張ってください」

 言い方はきついが、ハリーの帰還の成功を祈ってくれるのは分かるので、ハリーは苦笑する。だが、言われたことはもっともである。緊張が高まるのを感じるハリーであった。

「うん、ベルを頼んだよ」

「まっかせてくださいませ!」

 ベルの事を頼まれて嬉しいリリルカである。

 

「さて、ハリー君。故郷に帰ったとしても、君が僕の眷属であることには変わりない。事情を知っているから、無理をするなとは言えないけれど、元気ですごすんだよ」

「大丈夫です。今までありがとうございました」

 ヘスティアに声をかけられなかったら、今になっても、未だファミリアに入っていなかったかもしれない。それを思うと本当に感謝の念しかない。

 

「ハリーはん」

 そういうと、ロキが抱きついてキスをしてきた。

「がんばるんやで!」

 涙を流しながらそう言うと、ロキはハリーから離れる。

 

「それでは、皆さん! 行きます!!」

 ヘスティア・ワンドを構え、その場で体を回転させて、姿くらましを発動させる。

一瞬のうちに、体が臍の辺りに吸い込まれるように巻き込まれる。そして、10cほどの球体になり、ぐるぐると回転する。

 

 ロキだけは以前も姿くらましを見たことがあるので、ランクアップの効果が出ているのが分かった。それと同時に、キリキリと、そう、たとえるならば、壁に穴を開けようとする、音ならぬ音がするのにも気づいた。

 ヘスティアにもそれが聞こえたようだ。

「がんばるんだ・・」

と呟いている。だが、ハリーの体はそれ以上小さくならなかった。

「巻き戻るで! 注意や!」

 ロキは叫ぶと、すばやくベルの後ろに隠れる。ロキ・ファミリアが深層に遠征に行っている現在、ロキに万が一があっては、それは遠征メンバー全員の全滅につながるのである。ハリーに対する好意は好意で、主神としての立場は立場なのである。眷属に対する責任というものがあった。

 ロキが隠れるのを見たヘスティアとリリルカも、ロキに倣ってすばやくベルの後ろに隠れる。ベルは、ばっちこーいとばかりに腕を広げて、受け止める準備をする。

 その瞬間、ハリーの体は巻き戻り、その反動で天井に打ち上げられた。そして落下して、床に叩きつけられるかと思われたが、それはベルがうまく受け止めた。

 

 ベルがうまく受け止めたとはいえ、ハリーはその前の回転で目を回しているようで、それを見たベル達は、あわてて、ベッドに運び込んだ。ヘスティアがハリーの肩をつかみ、慰める。

「残念ながら、ハリー君、もうちょっとランクアップが必要のようだ・・」

 ロキはロキで、ちょっと複雑な思いだった。だが、まあ、ハリーが未だしばらくはオラリオ居るのならば、それはそれで嬉しいのである。ロキはハリーが目覚めるまで、ほっぺたをつついて遊んだり、看病するのだった。




すまん、ハリー、まだ帰れないんだ・・・


補足その1
ハンガリー・ホーンテール・ヴァルガング・ドラゴン
全長10Mの巨軀を誇る。背中には一対の巨大な翼、体中に棘が生え、黄色の目が光る大紅竜。その火炎ブレスは階層をぶち抜き攻撃することができる。スペースがあれば飛ぶことも可能。今回地上に出てきた固体は、ハリーの主張でハンガリー・ホーンテールという固体名がついた。血塗れのトロールのような通り名ですね。

補足その2
『魔石が無いということは、全身くまなく素材』
原作でこのあたりは未だ書かれていないので、独自設定です・・・

補足その3
リリルカのハリーへのつっこみ。ハリーには何かあると、うすうす分かっています。過去の事情や、ステイタスなどについては詮索しないという暗黙の了解のもと、思いっきり手加減しています。


次回『神会』
すまない、本当にすまない。タケが登場します。
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