ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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ハリー、黄昏の館に運び込まれる

 ティオネによってロキ・ファミリアのホームへ運び込まれたハリー。主神とファミリア幹部が同行というよりは担いで帰ってきているため、門番も何の文句もなしにハリーも中に入れた。

 ティオネはまずはハリーを救護室に運び込む。壁にぶつかっていたから、たんこぶぐらいはできているであろうし、ポーション類はまとめてここで管理されているからである。同時にロキはリヴェリアを探しに言った。治療魔法もつかえるし、魔法についてもスキルについても造詣が深いリヴェリアならば、ハリーがぐるぐると回る球体になったことについても何か意見があるのではないかと考えたのだ。さらにエルフの王族であり、異世界?のことについても知識があるかも知れない。まさにうってつけの人物である。

 

「リヴェリアママー、どこいったんやー」

 と叫びながらホーム内部を歩いていると、しかめっ面をしたリヴェリアが現れた。

「だから、私はママではないといつも言っているだろうに! 何の用事なのだロキ?」

 ロキはしれっとした顔でリヴェリアの手を掴むと救護室へ向かって歩き始める。

「ちょっと怪我人がいるんでな、見てもらいたいんや」

 基本的に面倒見が良いリヴェリアなので、怪我人がいるといわれては断るわけにも行かない。リヴェリアは文句を言いながらもおとなしく救護室まで付いていった。

 

「ふむ、単純な打撲だな」

 一通り、ハリーの診察を追え、ポーションで治療を始めながらリヴェリアが診断した。

「そうか、他に問題はないんか?」

「いやないな。しばらくすれば、気が付くだろう」

 余分なポーションをふき取ると、手をぬぐい、リヴェリアは、ロキとティオネに振り返った。

「先程も事情を聞いたが、スキルか魔法を使ったのは間違いないのか? 恩恵はないのだがな」

 そう頭部以外の場所に怪我がないか確認するため、背中も見ていたのである。そのため、ハリーが恩恵を持っていないことは分かっていた。

「うん、確かに使っていたわよ。体が、ぐるぐるっと回転するような感じで、20cぐらいにまで小さくなって、それから、元に大きさに戻ったのよ。その前に姿くらましとかいってたから、そんな魔法かスキルなんでしょうね」

 ふむといってリヴェリアは考える。恩恵なしでも魔法的能力が高い種族たとえば、エルフなどであれば先天的に魔法が使える場合がある。しかし恩恵なしでスキルを使えるという話は聞いたことがなかった。ということは、必然的にこの男が使ったのはスキルではなく魔法ということになる。そして、恩恵なしで魔法を使っている以上は、先ほどの例に『きわめてまれではあるがヒューマンも先天的に魔法が使える場合がある』というのを付け加える必要がある。言葉には出さずにリヴェリアはそこまで考えを進めていた。そてさらに推測を進める。もしかしたら・・

 そこでハリーがうめき声と共に意識を取り戻した。

「うう、いったい、ここは・・・?」

「ハリーはーーーーーーーーーーーーん! 大丈夫か? うちやロキや、ちゃんと見えるか!」

 ハリーに向けてルパンダイブをするロキ。ちなみに服は脱いでない。

「アッハイ」

「うんうん、よかった。よかった。ここはうちの家や。ハリーはん、頭ぶつけて気ぃうしのっとったんや。それで、ここまでつれてきたんや。まぁ安心して療養してくれてええで!」

 食い気味に話すロキ。あきれるティオネ。分けが判らずちょっと引いているリヴェリア。それにティオネが耳打ちをする。

「寝ぼけているハリーにキスされて、ロキは一目ぼれしたみたいなのよ」

 ほぉうと、面白そうな表情を浮かべるリヴェリア。立ち上がると、エルフ王族としての威厳を漂わせて、ハリーに向けて自己紹介をする。

「お初にお目にかかる。私はリヴェリア・リヨス・アールヴ。ロキ・ファミリアで副団長を務めている」

 あわててハリーはベッドから飛び起きると、優雅にお辞儀をする

「丁寧な挨拶ありがとうございます。僕の名はハリー・ジェームス・ポッター。魔法使いです」

「ふむ、魔法使いということだが、よければ、いろいろと聞かせてもらえないだろうか」

「ちょーとまち、リヴェリアママ。ハリーはんは怪我が治ったばかりやって、痛い痛い、アイアンクローはやめて!」

 リヴェリアの強力な(レベル6のステイタスによる)アイアンクローががっしりとロキの頭をつかんでいる。もちろん手加減はしている。

「だから、ママというのはやめたほうがいいのに・・・」と呆れたようにティオネがつぶやく。

「さきほどロキから聞いたのだが、別の世界からきたというのは本当なのかね?」

 足が宙に浮いたままで痛みでのた打ち回るロキが存在しないかのように話を続けるリヴェリア。絶対に逆らってはいけない人だと認識したハリーは、姿勢をただし、冷や汗を流しながら正直に答える。

「おそらく本当だと思います。僕がいた世界では、ここオラリオという都市はありませんでしたし、シアンスロープ?やボーズ?のような人はいませんでした。巨人や子鬼はいましたが・・・・」

 ボーズではなくボアズであるが、一度聞いただけなのでハリーは間違えていた。

「ふむ。では姿くらましというのは? それは魔法なのかね?」

 ここでティオネが横から説明をする

「リヴェリアはここオラリオで一番の魔法使い、つまり、世界で一番の魔法使いということなのよ。いろいろと相談すれば、元の世界に返る方法がはっきりするんじゃないかしら」

 正直にいうとティオネはこのハリーという男が信用ならなかった。恩恵もなしに魔法を使う? しかもロキにディープキス?あやしい。あやしすぎる。

 それはともかく、ティオネの助言を聞いたハリーは、説明を始める

「姿くらましは、姿現しとそろってセットになった呪文です。姿を消すのが姿くらまし、姿を現すのが姿現しです。具体的にいうと、A地点で姿を消して、すかさずB地点で姿を現すというか・・・瞬間移動の魔法といったほうが判りやすいですか?」

 マグルとしての知識が説明方法をかえる

「ふむ、移動系統の魔法か・・・興味深いな、実演できるものなのか?」

 オラリオの冒険者が覚える魔法は戦闘に役立つものが多い。攻撃防御回復などなど・・・。移動に関する魔法は珍しい部類に入った。目をきらきらとさせて、期待に満ちた顔になるリヴェリアをみて、ハリーは、サンザシとユニコーンのたてがみの杖を取り出した。そして一振り。

 バチン!

 音と共に、今いる場所から、部屋の片隅に一瞬で移動する。

「おお、すばらしい! で、これはどのくらいの距離を移動できるのだろうか? 間に壁などの障害物があった場合はどうなるのだ? 目的地に隙間がない場合は? 行ったことが無い場所にも移動できるものなのか? 恩恵がないようだが、どうやって習得したのだ? 恩恵がなくても習得できるものなのだろうか? 私にも習得できるのだろうか? 習得するにはどのような訓練を・・」

「ちょいまち、ちょーいまちーや、リヴェリアおちついて、な、落ち着くんや」

 眼をきらきらとさせたまま、ハリーを問い詰めるリヴェリアを、ロキが制止する。こんなリヴェリアを初めて見るティオネはあっけにとられていた。

「いやいや、ロキよ。移動魔法なのだぞ。いちいち、歩いて移動しなくてすむのだ。ダンジョン探索がどれだけ楽になるか。画期的なものなのだ、これがあわてなくてどうするのだ?」

「まあ、そうやけど、、ハリーはんの事情もきいてくれんかな。な!?」

 確かに、礼儀に反した行動であったと冷静になるリヴェリア。それに対してハリーが説明を始める。

「距離に関しては、本人の魔法力しだいで、ある程度は伸びるようですが、かなりの長距離は移動できます。

 間に障害物があっても、大丈夫です。別の部屋への移動もできます。隙間がなかったら、・・・どうなるんだろう・・・。

 あと魔法使いなら訓練すればできます」

「うむ、そして、その訓練が、だっとやって、でぃやっとやって、どーんってするんや」

 謎のポーズをきめながら、すがすがしいどや顔でロキが宣言し、またティオネに足を踏まれた。

「そしてこの移動魔法を使えば、この世界から、もとの世界に移動できると考えたのですが、結果は失敗しました」

「ふむふむ」

 リヴェリアは考える。確かにエルフに伝わる昔話や伝承には異世界もどきが出てくるものがあるにはある。黒エルフや白エルフや小人族などの一部はもともと異世界に家があったのだが、家に帰る方法を失い。この世界にとどまるようになったというものだ。ただし、移動方法は境界や関所の扉を開けて移動するとそこは妖精界だったり人間界だったりと簡単に移動できたとなっている。伝承のため詳しい描写は抜けているのだろうが、これではハリーの役には立たないだろう。

「元の世界に戻ろうとしたときには、20cまで体が小さくなって、そのあと元に戻ったということだが? たとえば、移動できる限界以上に移動しようとした場合は、どうなるのかね? 同じように体が小さくなったりする? それともまったく何も起こらない?」

 ハリーは考えた。限界以上の移動はやったことがなかった。でも、最初にホグワーツで訓練したときには。。。

「やったことは無いのでわかりませんが、何も起こらないということは無いと思います。最悪、身体がばらけたり、しますね。ばらけるっていうのは、身体の一部分だけが移動したり、残されたりすることです」

「ふむ、リスクはそれなりに在るということか」

 こつこつと人差し指で、机をたたきながら、リヴェリアは考える。

「身体が小さくなったということは、魔法は発動していると考えてよいだろう。身体がばらばらにならなかったのは、たまたまかもしれん・・・。もしくは、異世界移動の場合には移動に失敗してもばらけない? 魔力によって移動距離が左右されるというならば、魔力を挙げれば、効果が上がり、異世界にも移動できるかもしれん・・・。だが魔力といっても、どれたげ魔力を上げればいいのか? 」

 静かにリヴェリアの独り言を聞いていたロキが、それに続ける

「ということはや。魔力を上げれば、ハリーはんは元の世界に戻れるということやな」

「まぁ、理論的にはそうなるんだろうが、あくまで推測にすぎんし、どれほど魔力を挙げればよいのか検討もつかんぞ。それに魔力を上げても結局は不可能かもしれん」

「だけど、仲間が危険な目にあってるんです! 戻らないと!」

 ふと元の世界の仲間のことを考え、あせり始めるハリー。

「危険というが、どのような危険なのだね」

 そこでハリーはリヴェリアに元の世界のことをかいつまんで説明した。ヴォルデモートという闇の魔法使いがいること、魔法使い世界を支配しようとしていること、仲間とともに対抗するために戦っていること、ホグワーツという魔法魔術学校で戦闘が行われていること、ハリーが投降すれば仲間には危害を加えないといわれたこと、ハリーは投降し即死呪文で攻撃されて気がついたらここオラリオでほっぺたをつつかれていたこと・・・

「なるほど。君の言うことが正しいとすれば、ここは君からすれば異世界になる。ということは、時間の流れ方も違う可能性が高い」

「どういうことゃ、リヴェリアママ」

「こういう昔話がある」

 ロキに再びアイアンクローをかけながらも、落ちついた口調でリヴェリアは説明を続ける。

「昔々、男が妖精郷に迷いこんで数十年過ごして自分の故郷に帰ったそうだが、故郷では一日しか時間がたっていなかったそうだ。だから、ここオラリオで数年暮らしても、ハリー君、君が元の世界に戻った時には、一日も時間がたっていないかも知れない」

「でも、時間の流れが違うとはいえないわけですよね!?」

 ちょっといらいらし始めたのかハリーが叫ぶ。だがリヴェリアは落ち着いてハリーを諭す。

「確かにそのとおりだ。あわてる必要は無いが、のんびりしていて良いという訳でもない。無理をしない程度に急いだほうが良いだろう。でないと、無理をして君が戻って、その、ばらけてしまっていては、友人たちも心配するのではないかね?」

「そう・・ですね」

 リヴェリアのいうことにも一理あると理解できたのか、ハリーは無理やり気分を落ち着かせようとした。

「まあ、確かにな。魔力を上げんことには帰えられんからな。無理してあげることもできんしなぁ」

「ちょっとロキ」

 ハリーを慰めるロキにティオネが突っ込む。

「魔力をあげるって、まさか」

 それにニィっと笑ってロキは答える

「うん、そのまさかや」

 ロキは真剣な顔になるとハリーに向かってたずねる。

「ハリーはん、ロキ・ファミリアに入団せえへんか? 冒険者になってランクと魔力(ステイタス)を上げれば、その移動魔法が強化されて故郷に戻れるようになるで」

 ハリーは考え込む表情になった。早く元の世界に戻りたい。しかし、それには、魔法力をあげる必要がある。冒険者になれば時間がかかるが、魔法力を上げて帰れるようになるかも知れない。今のところ帰る方法にほかに当てがないようだ。そう考えると選択肢は一つしかなかった。

「すいません、お願いできますか?」

「よっしゃ、大歓迎やで、ハリーはん!!」得たりとばかりにロキは膝を叩いた。

 

だが、そこでリヴェリアが疑念をこぼす。

「ふと思ったのだがな、ロキ」

「なんやねん?」

「昔、フィンが闇派閥の主神を強制送還したことがあったが、そのときに眷属は全員、一人残らず恩恵を失ったのだよな?」

いきなり昔話を始めたことに戸惑うが、ロキは答える。

「まあ主神が神界に戻れば恩恵は失われるな。それがルールや」

その答えにリヴェリアは言い難そうに質問をする

「それはつまり言い換えると異世界(神界)と、オラリオがある世界。別々の世界へと主神と眷属が引き離されたら、恩恵は失われるということではないか? そうだとしたら、異世界(ハリーの世界)と、この世界(オラリオ界)にハリーとロキが分かれた場合、ハリーの恩恵は失われ、こちらに戻ってこれないのでは? 世界間の移動が可能なのは、あくまで恩恵があるからこそだと推測できるのだが・・?」

「ゴフッ」

図星であったようで、変な声を上げて、倒れるロキ。あわてるティオネ。

「だ、大丈夫や・・。ちょっとダメージが大きかったような気がしただけや」

倒れたまま強がるロキを、リヴェリアが抱きかかえて、立ち上がらせる。その時ぼそぼそとロキへと呟く。

「まあ、うちのアイズでさえ、ランクアップに一年かかったのだ。つまりそれくらいの間は一緒にいられるわけだ。すぐ帰ってしまうよりはいいだろう。まあ元気を出せ」

それを聞いて少し元気を取り戻すロキ。

「うん、うん、そうやな。よっし! ハリーはん、大事なのはまずは帰れるようになることや。ハリーはんの友人らが大変な目におうとるなら、見捨てる訳にもいかん! どーんと、うちにまかせい!」

そうして無い胸をどーんと叩くロキ。頼もしい。普段はおちゃらけていることが多いが、いざというときにはしっかりと締めてくれる。さすがは主神だと思わせる態度であった。

 

「ああそうや、念のためフィンにも説明しとこうか。あ、フィンっていうのは、団長、ファミリアメンバーのリーダーな。ほないこか」

 リヴェリアは掃除の途中なのでいったん部屋に戻るとのことだった。フィンに会うということならば、もちろん団長大好きなティオネは同行する。そしてロキ、ティオネと共にハリーは黄昏の館内部を団長室まで移動する。

 

「団長~、はいりま~す」

 ティオネがノックと同時に中に入る。フィンにハリーを紹介して、そして三人で事情を説明する

「入団は認められない」

とても済まなそうな表情を浮かべフィンが告げる。

 




・ハリーの杖ですが、もともと使っていた、不死鳥の尾羽根を芯にしている柊の杖は折れてます。今回というか、オラリオに来てから使っているのは、ドラコから奪った杖です。

追記
説明不足がありましたので、魔法界からオラリオ界へと、ハリーが戻ってこれないという説明を追加しました。
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