ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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Solicitation poster:I want You!

 メレンへの旅行が終わり、オラリオに帰還したロキ、ヘスティア一行。再びダンジョンにもぐる冒険の日々が始まるのだった。

 そして嬉しい知らせがヘスティア一行を待ち受けていた。

 

 まず一つ目。

 ヴェルフ待望のランクアップ。そして発現した発展アビリティ『鍛冶』。ヴェルフいわく、これで もっと良い武具が作れるぜ!とのことだった。喜ぶベル、ハリー、リリルカ。レベル2のメンバー率が7割を超えたのだ。

 

 そして二つ目。

 ヘスティア・ホームの改修が完全に終了した。前回、荷物を運び込んだ時にも内部に入っていたが、今回、工事終了の引渡しということで、改修を請け負っていたゴブニュ・ファミリアから、建物内部の案内と説明を受けるメンバー。

 一階には、集会場にもなる食堂、厨房、小型の浴室、客室、資料室、倉庫など、ファミリアとしての機能を果たす部屋が配置されている。そして二階には、主神の部屋、団長の執務部屋、団員達の私室などが配置され、居住スペースになっている。ちなみに修繕されたステンドグラスは食堂の天井近くの壁に配置されている。

 現在は四人しか居ないが、これから人が増えていくに従い、二階に住むメンバーも増えていくだろう。心躍るヘスティアと、ベルであった。

 

 

********

 

 

 翌日、ギルド前の広場に集合するパーティ・メンバー。今日から13階層、四人にとって新規の階層に進出するため、アドバイザーに連絡をしておくのだ。

 すでに待ち受けていたヴェルフに近づくベル、ハリー、リリルカの三人。三人とも微妙な顔になっている。それに気づいて苦笑いを浮かべるヴェルフ。ギルド内部へと入り、エイナがいる窓口へと向かう。

「今日から13階層よね、ベル君」

 早速、エイナから、復習代わりのモンスターに関しての注意勧告が始まる。

「ヘルハウンド、アルミラージ、そしてミノタウロス。注意すべきはこの三種類ね。それぞれ特徴があるし、強力なモンスターよ。ミノタウロスは13階層には居ないとは思うけれど、以前のように5階層まで登ってくるようなことがあるから警戒は必要よ。ただイレギュラーが発生しないなら、ヘルハウンドが一番の難敵だから。準備は大丈夫よね?」

 OKだと答えるリーダーのベル。そして、先程からの疑問をエイナにぶつける。

「あのー、エイナさん。街中に張られている()()張り紙(ポスター)は何なんですか?」

 昨日メレンから戻ってきたときには、暗くなりかけていたので、よく分からなかったのだ。だが今日の朝日の中で見た張り紙は衝撃的だった。

 

 ベルもよく知っているディアンケヒトが、上半身裸になり隆々たる立派な筋肉をあらわにした絵で、左手を腰に当てて、右手の人差し指をこちらに向けて、というか突きつけている姿である。そして、その張り紙の下部には『I want YOU! 来たれディアンケヒト・ファミリアへ!』と二段に分けて書かれていた。ベルの質問を聞いて苦笑いするエイナ。

「まぁ、見ての通り、ファミリアの勧誘ポスターね。違法・・というわけではないから、取り締まるわけには行かないし、別段害は無いし・・。ポーションの割引セールをしていて、飛ぶ鳥を落とす勢いで商売をしているのよねぇ・・。ポーション作成の人手がたりないという噂ね。事実、薬剤系統のファミリアから改宗する冒険者も何人か居るみたいよ」

「とはいうものの、描かれているディアンケヒト様の視線が、すべてこちらを向いているようで、落ち着かないんですが・・、どうにか、ならないんでしょうか?」

 リリルカが訴える。これは例のあの現象、どの方向からポスターを見ても、描かれている顔と目が合ってしまうという現象である。そしてそのポスターが一枚二枚なら良いものの、場所によっては、10枚ほど並べて張られているのだ。先程の広場でも、色々な方向に立て看板があり、ポスターが10枚単位で張られていた。これで落ち着けというほうが無理であろう。

「それでエイナさん、勧誘ポスターは別に禁止じゃないんですか?」

「ええ、一応は禁止じゃないけれど、悪ふざけが好きな神に落書きとかの悪戯されることもあるから、使うときには注意してね。ベル君たちもやってみるの?」

 そう言われて、ベルが上半身裸になって、こちらを指差している所を想像するメンバー。ヴェルフが笑いをこぼす。

「まあ、やるなら、もっと筋肉をつけてからだな。でないと逆効果だ。ぶふっ。昔オヤジが持ってた絵に落書きしたことを思い出すぜ。顎髭、描いたら、えらい怒られたなぁ」

「いやいや、やらないからね。堅実に真面目に行くから。もしも、やるとしても、鎧を着込んだ絵にしてもらうから、その時にはヴェルフの腕の見せ所だよ」

 ベルの反論に、真面目になるヴェルフ。

「むむ、そう考えると、ベルが注目されるだけでなく、俺の作った武具も注目されるわけか。だとすると新しい武器も早めに完成させたほうがいいな。まあ、後四、五日で出来上がるぜ」

 雰囲気が真面目なものに戻ったのを見て、ベルが号令を出す。

「よし、じやあ、ダンジョンに向かって出発! エイナさん、行って来ます! それと、ポスターは僕達は作りませんからね!」

「あら、残念。作ったら、私、一枚欲しかったのに」

にっこり微笑み四人を送り出すエイナであった。

 

 

********

 

 

 ギルドからバベルへと移動し、地下へ、ダンジョンへと向かう。すでにフォーメションの調整は出来ているので、後はランクアップしたヴェルフの調整だけだ。ダンジョンの12階層へと移動しつつ、戦闘をこなし、調整をやっていく。そして13階層への階段に到達するパーティ。

 

「じゃあ、これから初めての階層だから、みんな油断しないように。ヴェルフの調整も含めて、しばらくは、僕とヴェルフの二人で前衛、リリは、真ん中で、ハリーが後衛。エイナさんからの情報によると連戦が続くから、最初はすぐに撤退できるように階段近くのルームで戦うからね」

 ベルが全員に注意する。

「では進もう」

 階段を降りて、13階層の探索を開始する。目指すは、階段近場のルーム。出入り口が一つのちょっとしたスペースがある部屋である。出入り口が一個で奇襲を受ける確率が下がるので人気の狩場である。もっと上層のルームは、こっそりと魔法の練習をするのにも適した場所で、別の意味で人気である。

「階段近くのルームは、すでに別パーティが居座ってますねぇ・・」

 探し回るうちに徐々に階段から離れていく。その間にも、モンスターとの戦闘は続く。オークやインプ、シルバーバックや、ウサギ型モンスターのアルミラージ。連戦が続く。

 

 とくに厄介な敵が、エイナが特に注意していたヘルハウンド。致命的な遠距離攻撃として、鉄をも溶融させる超高熱ブレスを吐き出すのだ。体に直接あたったら、燃えるのを通り越して炭になってしまう。盾で受けても一瞬ならばまだしも、受け続ければ溶融してしまう。厄介極まりない敵だった。このヘルハウンド対策として、サラマンダー・ウールの装備が必須となっている。このウール、耐火性能がきわめて優れており、ヘルハウンドのブレスを浴びても燃えることがなく、それどころか熱まで遮断するのだ。

 だがベルたちにとっては事情が若干ながら異なる。

 

護れ(プロテゴ)っ!」

 轟々たるブレスがハリーの魔法によって遮断される。もちろん、ベル達は念のためにサラマンダー・ウールのマントで体を防護している。

「す、すごいですね」

 リリルカが、ごくりと喉を鳴らしながらつぶやく。彼女の視線の先では、護れ(プロテゴ)に遮られたヘルハウンドの火炎ブレスが眩い光を放っている。

「燃え尽きろっ! 外法の業! ウィル・オー・ウィスプ!」

 腕を突き出したヴェルフが叫ぶ。とたんに前方のヘルハウンドが居る辺りで、爆発音が響き渡る。

「今のは?」

「俺の魔法だ。魔法攻撃にタイミングよく合わせることによって、魔力爆発を発生させることが出来る。平行詠唱の練習で失敗した時のように爆発が起こるん・・だけど・・」

 そこまで言ってヴェルフは気付く。

「このパーティのなかじゃ、俺の魔法が一番詠唱が長いのか・・。みんな平行詠唱するまでもないんだな・・」

 ベルも、ハリーも超短文詠唱魔法。それどころか、ハリーは無言呪文が使える。リリルカの魔法は戦闘用の魔法ではないので、平行詠唱の練習が基本的には必要ないし、そもそもヴェルフには存在を教えていない。

「まあ、対魔法使い用の魔法ってところだな」

 ハリーはそれを聞いて、無言呪文だと詠唱しないからタイミング合わせられないんじゃないかなと考える。どちらにしろ、ヴェルフと敵対することはないので、どうでも良いことではあるのだが・・

 

「じゃあ、ヴェルフ、もう一度、対魔法を。それでブレスが終わったら、ハリー、護れ(プロテゴ)解除。僕が突っ込むから、みんな続いて」

 ベルがてきぱきと指示をする。

「じゃあ、行くぞ。燃え尽きろっ! 外法の業! ウィル・オー・ウィスプ!」

 再度、爆発音が響く。ブレスの息継ぎ間際だったのか、ブレスが途切れる。すかさず護れ(プロテゴ)を解除して、合図を出すハリー。クラウチングスタートから、すばらしい勢いでダッシュするベル。左手にバゼラートを構え、右手を突き出す。

「ファィアボルトッ!!」

 ベルの腕から稲光が飛び出し、ガリガリと空気を削る音を出しながら、モンスターへと迫る。右側に居るヘルハウンドを直撃して、首から上を吹き飛ばす。そこまで駆け寄り、残った胴体を蹴飛ばして急制動し左を向くベル。これで真ん中に居るヘルハウンドが邪魔になって、左側に居たヘルハウンドは、ベルを攻撃できない。メレンでのアマゾネスの戦いでやられた、多人数相手の戦闘方法。自分がやられて嫌な戦法は、こちらが相手に使うと良い戦法になると思い、実践してみたベルである。

 バゼラードで切りつけ、さらに接近して、ポンパンチを叩き込む。そして、迂回して、こちらに噛み付こうとしてくる別のヘルハウンドの噛み付き攻撃を、地に伏せるようにして回避する。そして、そのまま前足をたたき斬る。

 そうしている間に、ハリーと、ヴェルフが接近しており、魔法と大刀で攻撃を始める。もちろん、リリルカも救急箱でヘルハウンドを突き飛ばしていく。

 

 程なくして、モンスターを全滅させることが出来たのであった。そして、ハリーがヴェルフに問いかける。

「なあ、ヴェルフ、さっきの魔法なんだけどさ。照準っていうか、狙うのはどうやってるの? さっきは、ブレスでヘルハウンドは見えなかったよね」

 ヴェルフは大刀を振って血払いをして答える。

「一応、照準というか、腕を突き出して、それで狙いを定めるんだ。一直線に魔法が飛んでいく感じかな」

「それ、へたしたら護れ(プロテゴ)のところで爆発してたんじゃ・・?」

 しばらく考えるヴェルフ。

「いや、相手の詠唱にあわせてタイミングよくだから、発動後だと爆発しない。ヘルハウンドで言うと、ブレスを吐き出す時で、護れ(プロテゴ)だと、ハリーが叫ぶ時にあわせてないと爆発しない。はずだ」

 これはつまり、完全防護状態からの、限定的ではあるが、攻撃が出来るということである。ベルのファイアボルトだと、護れ(プロテゴ)を解除する必要があるのだ。ヴェルフの説明を聞いてほっとするハリー。ベルとリリルカも不安がなくなり、ほっとしたようだった。ベルがまとめる。

「じゃあ、これからも対魔法はヘルハウンドに使っていくけど、ヴェルフ、次からは、戦闘前に何をするか、説明してね。今回はよかったけど、ブレスからの防御中に護れ(プロテゴ)が爆発してたら、とんでもないことになってたから」

 頭をかいて、すまん、すまんと謝るヴェルフであった。

 

 

 ようやく空いているルームを発見し、そこで落ち着いて、モンスターを狩り進める四人。ほどなくバックパックが魔石とドロップアイテムでいっぱいになったので帰還するのだった。

 

「じゃあ、荷物を置いて、あとで、酒場の焔蜂亭に集合な。場所は分かるか?」

 今日はヴェルフのランクアップ祝いで四人で飲み会なのだ。

「場所は私が分かりますから、大丈夫ですよ」

「よし、じゃあ、俺のほうが先についてるな、酒だけ注文しておくぜ。お勧めがあるんだ」

 

 そういうと一旦パーティは解散した。

 

 

********

 

 

 ベルたちは、ホームに戻ると荷物を置いて、体の汚れをシャワーで洗い流す。ヘスティアもバイトからすでに帰還している。

「ふふふーん、僕の夕飯は、1日限定10食の特製じゃが丸君弁当だぜ! まあ、僕はこれを食べてるから、気兼ねせずに君達はお祝いしてくるんだね。っと、久しぶりのダンジョンだったし、更新しとくかい?」

 顔を見合わせる三人。たしかに、待ち合わせには、まだ時間はある。

 

早速ベルから更新を始める。

「ふむふむっと。全体的に良く上がってるけれど、器用が特に上がり方が大きいね」

 

 そしてハリー。

「よいしょっと。うん、魔法力の上がり方がすごいね。うーん、アビリティの上がり方は、魔法使い的な感じで順調だね」

 

 最後のリリルカ。

「・・・落ち着いて聞いてくれたまえ。リリルカ君。ランクアップ可能だ」

 あまりの衝撃に固まっているリリルカ。それに言い聞かせるためにヘスティアは繰り返す。

「もう一度言おう。ランクアップ可能だ。つまり、レベル2になったんだ! おめでとう、リリルカ君!!」

「・・や・・」

 呟きにどうしたんだろうと、いぶかしむヘスティア。

「やったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 飛び起きて、叫ぶリリルカ。その弾みで、リリルカの背中に乗っていたヘスティアはベッドから転がり落ちる。そして、その大声に驚いたベルとハリーが扉をあわただしくノックする。

「どうしたんですか!? 大丈夫ですか!? 神様!?」

 ぶつけた頭をさすりながらヘスティアが、何でもないわけじゃないけど、大丈夫だと叫び返す。

「リリルカ君、落ち着くんだ!」

 しばらく雄たけびを上げて、ようやく落ち着いたリリルカ。興奮のあまり、呼吸が荒くなっている。

「ほら、落ち着くんだ、一緒に深呼吸して、そら、ひっひっふっー」

 二人で深呼吸してようやく落ち着いたリリルカ。

 

「さてアビリティがDになって、それでランクアップ可能になっている。おそらくだが、メレンで、新種モンスターとアマゾネスと戦った事が大きい要因だと思う。それとだね。発展アビリティが発現可能だ」

 そして一瞬、言い淀むヘスティア。

「ええと、『切開』というものなんだが・・。聞いたことがないんだ・・。何か思い当たることはあるかい?」

 何故に僕の眷属たちは、そろいもそろって聞いたこともないレアアビリティが発現するんだろうか・・と悩みながら返答を待つ。それに幸運や魔力なら、分かりやすいけど、切開は、どんな効果があるんだろう。

「えーと、原因は分からないですねぇ・・」

 悩むヘスティア。このアビリティを発現させてしまってよいのだろうか。成長抑制スキル保持の疑いがあるリリルカである。他にもどんなマイナス要因のステイタスがあるのか、予断を許さない眷属なのだ。聞いたことがないアビリティは危険であった。

「うーん、発現させてしまうべきか・・どうしよう。しばらくランクアップを保留して考えてみるかい?」

 慎重なヘスティアに対して、リリルカは即断した。

「いえ、その『切開』を発現させてください。ランクアップします!」

 

こうしてリリルカは待望のランクアップを果たし、レベル2になった。

 




次回『Golden mead』
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