ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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すいません、投稿が今後不定期になります


Wangoballwime?

 そして翌朝。ベルたち四人は、受付嬢(エイナ)に、リリルカのランクアップ報告をしていた。

「おめでとうございます、アーデさん。本当によかったですね」

 リリルカの苦労をベルから少し聞いているエイナはちょっと涙ぐむ。

「今日はどうされるんです?」

「12階層で午前を過ごした後、13階層にすすみます。リリにはサポーターに専念してもらう予定ですね」

 ランクアップ後の調整が必要であるが、リリルカのメインは、サポーターである。ベルやハリーと違って、直接戦うことは少ないので、急いで調整する必要もなかった。

 同じ理由で、リリルカ用の救急箱Mk2の作成も急いでいなかった。ベル用の装備が出来たら、その後に作成するのだ。

 

 さて、エイナとの打ち合わせが終わり、出発しようと出口に振り向いた四人。そこに二人の美女を発見する。

 

 一人は、軽くウェーブがかかった黒髪を肩まで伸ばした、おっとりとした表情の二十台近いような女性。もう一人も同じ年頃の女性だが、こちらは、やや釣り目な瞳が勝気な印象を与えるショートカットの女性である。

 二人は、輝く太陽のエンブレムを肩に付けていた。

「昨日の人達・・の知り合い、ですかね・・」

 リリルカがつぶやく。昨日の焔蜂亭にいたのは男性ばかりだった。首をかしげているリリルカにはかまわずに、短髪の女性がベルに近づく。そして、封筒を取り出した。

「あなた、白兎のベル・クラネルよね。世間ではドラゴン・スレイヤーといわれてる?」

「くくく、ベルのやつもてるなぁ・・」

 にやにやと笑いながら、ヴェルフがリリルカをつつく。むっとするリリルカ。

「これ、主神から。うちのファミリア、アポロン・ファミリアで開催する神の宴への招待状よ。確かに渡しましたからね」

 そういうと、封筒をベルに押し付け、去っていった。黒髪の女性はベルに目礼して、あわてて追いかけていった。

「招待状ねぇ・・」

 今からダンジョンに行くのに破れやすいものを渡されても、困るだけである。仕方がないので、ハリーは、受付嬢(エイナ)に夕方まで預かってもらってはと提案し、エイナも快く了承したので、夕方、また取りに来ることになった。

 

 

********

 

 

「えーと、ニンフが月夜に踊りを舞う頃合、月桂樹の木陰に集うわれらは芳しき夜の香りをみなと分かち合いたく、妙なる調べと、心浮き立つ物を用意し、皆様のお越しを希う・・。なんでしょうかこれは? 黒歴史(ポエム)?」

「まあ、招待状だね。気取った言い方をしているが、何のこたぁない、アポロンの所が神の宴をするから、来てくださいねということだよ、リリルカ君。ふーむ、眷属を一人連れてくるようにとなっているぜ」

 リリルカから渡された封筒の中身、招待状をヘスティアが読みながら声をあげる。

 

 すでに夕方、魔石の換金も終えて、ホームに帰還している。ハリー達は夕食の準備中である。粉々呪文で、野菜を粉砕して微塵切り代わりにし、続けて、燃えよ(インセンディオ)で鍋を沸騰させる。調味料で味を調えて、野菜スープの出来上がり。魔法を使うと簡単である。

 ヘスティアは招待状を読み込み、注意すべき事項をつらつらと確認していく。

「えーと、なになに・・眷属は男女は問わず一人つれてくること。フォーマルな格好で来ること。ワルツも演奏されるとのこと。タッパーは持込不可。馬車で迎えを送る。えーと、迎えに来る時刻まで書いてあるねぇ・・」

 それを聞いていたハリー達は、まあ、団長ですし、お気に入りですし、付いていくのはベルだなと確信する。とは言うものの、ここで問題になるのは、ドレスコードである。

「二人はフォーマルな服なんて持ってましたっけ? もっていないなら、これを機会に一着そろえては?」

 ヘスティアは神なので、残念ながら成長することはない。つまり、身長はこれから先も変わらないから、買っても無駄になることはない。

 ベルはこれから成長するであろうから、サイズが合わなくなる。だが、宴に他のファミリアもくるということは、団長がそれなりにきちんとした格好をしていないと、対外的によろしくない。そう考えると、買っておいても無駄になることはないだろう。

「ふむ、そうだね。早速明日仕立てることにしよう」

 幸い、宴の日付は、三日ほど後。仕立ても十分間に合うはずであった。

 

 そしてもう一点の問題。

「ワルツが演奏されるってことは、これはダンスの必要があるぜ」

「踊ったことなんてないですよ・・」

 ヘスティアの呟きにベルが答える。田舎で育ったベルには踊る機会があるはずもない。至極当然の答えである。

「実は僕もなんだぜ・・」

 天界でも、宴は開かれていたが、ヘスティアはそこで食べるか、おしゃべりをするかのどちらかだったので、踊ったことは無いのだった。

「じゃあ、三日間で踊れるように特訓だ。幸い僕は経験があるし、二人に教えられますよ。そんな難しいもんじゃない、すぐに躍れるようになるさ」

 思わぬ所からの提案。ハリーがダンスができるとは思わなかった三人は驚く。

「なんとまあ、ハリー様は色んなことができるんですね」

 戦闘においては魔法を使い、ホームに戻るとミアハとポーション作成の情報交換、マジックアイテムの作成をし、料理もこなす。さらに、ダンスも踊れるときた。呆れるほどに多才だなぁと感心するリリルカ。

「学校で色々とね・・」

 苦笑いするハリー。

「じゃあ、さっそく始めよう。まずは立つ時の姿勢から・・。リリルカは曲代わりに手拍子を頼む」

 リリルカの見学の元、ベルとヘスティアの特訓が始まった。

「ベル! 照れずに、ぎゅっと抱き寄せて。視線は合わせるか、進行方向に向けて! 照れてないで動く動く」

 ぎゅっと抱きしめられて、ご満悦なヘスティア。それを見ていてムッとなるリリルカ。

「ハリー様、私も練習してみたいです!」

「じゃあ、ヘスティア様と交互に、ベルの相手をやってもらおうか」

 だがヘスティアが、反論する。

「いやいや、ハリー君、まずは宴に出る僕の上達が先じゃないのかい?!」

 もっともな言葉ではあるのだが。

「そのとおりなんですが、ヘスティア様とベル(ランク2)ではスタミナに差がありますからね。時々休憩入れないと。それにこういうのは、普通は男性側かリードすることになってるんで、ベルが先に上達したほうが、良いんですよ」

 ハリーの説明も、もっともなものである。

 こうして、宴の前日まで、ベル、ヘスティア、リリルカの練習は続けられることになった。

 

 そして翌日、ダンジョンに行く前に大急ぎで、採寸を無事に終え、服の調整を頼むベルとヘスティア。マダム・マルキンソンやオリバンダーとは違い、鼻の穴の間隔など、妙な場所は採寸しなかったのがハリーには残念だった。どう考えても、あの時は無関係な所まで採寸してたよなぁ、と一人ごちるハリーであった。

 

 

********

 

 

 神の宴、当日。

 探索とバイトを早めに切り上げ、出発準備に専念する。

 ベルは黒を基色とした、オーソドックスな礼服に。ヘスティアは、青色のドレスに紺色青紫色で豪華でそれでいて落ち着いた刺繍を施した、ふんわりとしたドレス。襟元、袖口にたっぷりとレースが縫いつけられて、可憐な少女といったいでたちだ。

「いつかは、私やハリー様も連れて行ってくださいね」

 苦笑いするヘスティア

「そうしたいところだけれど、神の宴は基本的に参加は神だけだからねぇ。眷属まで呼ぶとしたら別口になるかな」

 今回の宴の趣向が特別だと説明する。そしてベルにエスコートされて馬車に乗り込むヘスティア。なかなかにさまになっている。

 

 そうしてヘスティアとベルを見送った後、ハリーはリリルカに提案する。

「さて二人はパーティでおいしいものを食べるんだろうし、僕たちもヴェルフを誘っておいしいものでも食べに行かないかい?」

 無論、リリルカに反対する理由はない。早速出かけることにした。

 

 ヴェルフの工房により三人で豊穣の女主人に向かう途中、ハリーは気になるものを見つけた。客寄せをしているアコーディオン弾きである。

「さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。今話題のドラゴンスレイヤーの人形劇、始まるよ~」

 ヴェルフをつつくハリー。

「何あれ?」

「おっ、ハリーはまだ見たことがないのかい? じゃあせっかくだから見ていこうぜ」

 ハリーたちの他にも何人かが集まり、アコーディオン弾きに誘導されて馬車の周りに集まる。馬車の側面がぱかりと上側に開き、内部が見えるようになった。内部はちょっとした立派な舞台になっていた。

「あるところに兎と呼ばれる少年がいました・・・」

 アコーディオン弾きの語りとともに、白髪赤眼の人形が舞台に現れる。今までの流れからいうと、どう考えてもベルである。その少年はオラリオへと向かい冒険者となる。そして仲間をあつめダンジョンに挑戦する。その仲間の一人は黒髪黒目で頬に雷型の傷がある魔法使い。どう考えてもハリーである。

 兎たちはめきめきと実力をつけていく。

 そんなある時、ダンジョンから地上にドラゴンが現れる。オラリオの冒険者たちは迎撃に向かうが、空を飛ぶドラゴンには手も足も出ない。だが黒髪の魔法使いが空を飛ぶアイテムを作り出し、二人はドラゴン退治に空に舞い上がる。二人はドラゴンと激しい空中戦を繰り広げるが、魔法使いがドラゴンの動きを止める魔法を使い、兎がドラゴンの首を一撃で切り落とし、退治に成功するのだった。

 人形同士の空中戦に、手に汗握って見守っていた観客たちは歓声を上げる。

「さあさあ、ドラゴンスレイヤーにちなんで作ったドラゴン・マフィンを如何かね。白と黒と二種類あるから買っていってくんな!」

 そんなアコーディオン弾きの声に、何人かの観客はマフィンを買っていくのだった。

「あー、とりあえず、それぞれ四つずつ買っていっていいかな?」

ハリーが一言いうと、ヴェルフがアドバイスを送る。

「あぁ、結構うまいからな、もっと買っても良いんじゃないの? 白はナッツ入りで、黒はブラックベリー入りだ」

「あっはい」

 

 

********

 

 

「かんぱーい」

 場所は豊穣の女主人にうつり、三人はリュー・リオンと共にエールを飲んでいる。

「しかし、人形劇になっているとは思わなかったよ。マフィンも買ってしまったし・・」

 ぼやくハリー。

「マフィンですか、差し入れありがとうございます。みんな喜ぶと思います」

 そういうと、リューは店の奥にマフィンが入った袋を持って行ってしまった。

「え、あれ、いつのまに差し入れになっちゃったの?」

 戸惑うハリーであるが、飲食店に食べ物を持ち込むほうが悪いといえば悪い。

「差し入れとは気が利くじゃないか、こいつは私のおごりだ。景気よくやんな!」

 四つのジョッキを威勢よくテーブルにたたきつけるように置くミアさん。こう言われてしまっては諦めるしかない。

 ちゃかりと戻ってきているリューとともに、再度乾杯をする四人。

「ポッターさん」

 珍しくもリューがハリーに話しかける。全員の視線が集まる。

「この街にドラゴンを実際に見たことがある人が何人いると思います?」

 リューの問いかけにハリーは考え込む。ハリーの人生においては、ハグリッドが卵から孵したドラゴンが一匹、三大魔法学校対抗試合の時に四匹、グリンゴッツ銀行地下で一匹と、全部で六匹のドラゴンを見たことがある。だが、これらはすべて特殊な事例である。魔法界には動物園などないし、一般的な魔法使いであれば、見ることもなく人生を終えてもおかしくないかもしれない。マグル達にはドラゴンは最も有名な()()()()()モンスターであり、見たことがある人は一人もいないはずである。ではここのオラリオでは?

 

 考え込むハリーにリューは説明する。

「この前のドラゴン騒動の前までは、一般市民も含めて、レベル4、レベル5の冒険者でも見たことがある人はほとんどいなかったのです。なぜならあのようなドラゴンが生息しているのはダンジョンでも深層階層。そこにたどり着くためには、個人の実力ではなく、ファミリアとしての実力が必要になるからです。そのようなファミリアは、ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアなどごく限られてますね。

 だから、ドラゴンを退治するといっても、一般市民にとっては、どこか実感が薄いのです。いわば対岸の火事、隣町から伝わる噂話と同じ。『直接に自分達が見ることはないだろう』と、そんな風に考えています」

 そしてジョッキから一口飲むリュー。

「だが、貴方達は違いました。現実に地上に現れたドラゴンを、市民達の、冒険者たちの、お祭り好きな神々の前で実際に倒して見せたのです。ダンジョンの奥深くにいるドラゴン退治は無関係じゃない、実際の現実の脅威なのだと実感しているところを、貴方達が救ったのです」

 キャットピープルが料理を運んできた。リューは礼を言って受け取ると、話を続ける。

 

「話は少し変わりますが、三大冒険者クエストはご存知でしょうか?」

 リューが問いかけるが、答えを待たずに話をつづけた。

「かつてダンジョンから地上に解き放たれた強大な三体のモンスターの討伐。陸の王者(ベヒーモス)海の覇王(リヴァイアサン)。そして黒竜(隻眼の竜)。これら三体のモンスターの討伐クエストのことです。このうち二体はゼウス、ヘラの二つのファミリアによって討伐されました。残りは黒竜(ドラゴン)だけなのです。しかし、黒竜の猛威はすさまじく、ゼウス、ヘラの両ファミリアは全滅しました。今現在も黒竜(ドラゴン)は退治できていないのです」

 皆がリューの話に聞き入っている。

「そして先ほどの話に戻りますが、ダンジョンから現れ、空を舞うドラゴンを撃退する若き冒険者。これが意味する事はお分かりですか?」

 戸惑うハリー。ヴェルフとリリルカも黙って聞いている。

「貴方達が成長すれば、砲竜(ドラゴン)だけでなく黒竜(ドラゴン)も倒せるようになるんじゃないかと、みな期待しているのです」

「えぇぇぇ・・」

 期待されても戸惑うハリーである。

「だから人形劇にして人気にあやかろうというわけです。もちろん、マフィンがおいしくないとだめですが。それに他にも人形劇ではなくて、ちゃんとした演劇にするという噂も聞いていますよ」

「あぁー、それは俺も聞いたことがある! 楽しみだよな」

 楽しそうなヴェルフの声を聴きながら、リリルカは一人冷や汗を流していた。

 

 

********

 

 

 豊穣の女主人での食事を終えて、ホームに帰還するハリーたち。二人が寛いでいると、ほどなくベルとヘスティアも帰ってきた。なぜか二人とも機嫌が悪い。

「まったくアポロンにも困ったもんだよ! この前の喧嘩を理由にして、僕らに戦争遊戯(ウォーゲーム)を吹っかけてきたんだぜ!」

「本当に言いがかりも酷いもんですよ。喧嘩の責任が全部こっちにあるっていうんだから、めちゃくちゃだ」

 ヘスティアとベルが愚痴をこぼす。

「何ですか戦争遊戯(ウォーゲーム)って?」

 よくわかっていないハリーにヘスティア達が三人がかりで説明する。簡単に言えば、賞品を賭けたファミリア同士の決闘。賞品や決闘方法は神会で決められるが、暗黙のルールの一つとして『見物する神々が楽しめること』というのがある。神々の娯楽としての側面も強いのだ。

「で、こっちが負けたらベル君を向こうのファミリアに引き抜くってんだ! 冗談じゃない、そんなもの受けられるわけないだろう! 断固拒否して帰ってきたよ」

 憤るヘスティア。ベルも相当怒っているようだ。

「無理やり戦争遊戯を始められたりとか、ゼウス・ファミリアのように潰されたりとかはないんですか?」

「それは無いね。アポロンの狙いはベル君の引き抜き(コンバージョン)だ。もし万一うちのファミリアが潰された場合には、ベル君はアポロンのところ以外に改宗(コンバージョン)するだろう。つまり、アポロンはベル君を手に入れることはできない。だからどんな手段でもいいから戦争遊戯に持ち込んで、改宗(コンバージョン)を賭けの対象にする必要があるわけだ。だから、こちらが申し出を断れば問題ない」

 だが、そのヘスティアの判断は間違っていた。

 

 

********

 

 

 翌朝。ヘスティアはアルバイトに、ベルたち三人はダンジョンにそれぞれ出発するため、ホーム玄関から外に出た。彼らを出迎えたのは、輝く太陽のエンブレムを付けた冒険者達。魔法が、魔剣の攻撃が、周囲から一斉にベルたち四人に一斉に降り注ぐ。

 ぎょっとして驚きのあまり固まるヘスティアをすかさずベルが抱えて回避する。ハリーはリリルカの襟首を捕まえると、ベルに続いて包囲攻撃から脱出する。

 四人は何とか無事であったが、ホームは攻撃を受けて崩壊する。その轟音に周囲の住民たちが何事かと道路に飛び出してきた。

「ああぁぁぁ、せっかくリフォームしたのに・・」

 嘆くヘスティアであるが、今はそれどころではない。アポロン団員たちが、追撃を仕掛けているのだ、ベル達四人は、必死で走る。

「逃げるのはいいけど、どこに向かえば!?」

 ハリーの問いかけにヘスティアが答える。

「癪だけど、バベルに行くんだ。ヘファイストスの所に逃げ込もう」

 こういう時に頼りになるのは、有力な友人。何度も世話になっているが、今回も助けてもらおうという考えである。

「ハリー様! 箒を使いましょう!」

 ハリーは背中に括り付けていた箒を外して、跨ろうとするが、待ち伏せをしていたアポロン団員が斧を叩きつけてきた。とっさにハリーは箒で防御するも、走るスピードが落ちてしまう。

「ベル、先に逃げろ!」

 その言葉に頷き、スピードを上げるベル。リリルカも遅れまいと必死で走り続ける。

 ハリーは箒で相手をぶん殴り突き飛ばす。だが、最初の攻撃で切れ目が入っていたのか、真っ二つに折れてしまった。これではもう空を飛ぶことはできない。残念に思いながらもハリーは箒を振り捨て、ベルたちに追いつくべく全力で走り続ける。

 

 そのころベルはヘスティアを抱えて全力で走ってた。まずはヘスティアの安全確保が優先なので、リリルカよりも先行しているのだ。だが、バベルに逃げ込むことが読まれていたのか、ヒュアキントスが襲い掛かる。初撃はかわすも体勢を崩し、盛大に路上を転がるベルとヘスティア。すかさずヒュアキントスの追撃が襲い掛かる。ベルはバゼラードとヘスティア・ナイフで応戦する。ヒュアキントスは巧みにフランベルジュを操り、ベルをヘスティアから引き離し孤立させる。そしてヘスティアへとこん棒で殴りかかる下っ端のアポロン団員。見事な連携である。

「怪我をさせる程度にしておけよ!」

 ヒュアキントスの注意が飛ぶ。神殺しという大罪を犯す気はないようであるが、こん棒で殴られてただで済むとは思えない。だが黙って殴られるような大人しいヘスティアではない。逆に自分から団員に向かって一歩踏み込むと、右拳を下っ端団員の鳩尾に叩き込んだ。

「ひべぶっ!!」

 悲鳴を上げながら十数M吹き飛ばされる下っ端。他の下っ端団員も思わぬ事態に動きが止まる。そこを見逃すヘスティアではない。すかさずラリアットを手近の下っ端の横腹に叩き込んで、これまた十数M吹っ飛ばす。

「馬鹿な! 武神でもないのに、なぜこんなことができる!?」

 驚愕するヒュアキントス。すかさずベルが攻撃の手を激しくするも、軽いバックステップで距離をとられてしまう。

 ヘスティアはどこからか取り出したローブを羽織り体を隠す。

「ある時にはファミリアの経理係、またある時には優秀なサポーター、またある時はヘスティア様の影武者! その正体は!!」

 ローブを恰好つけて脱ぎ去る。底にいるのは赤髪の小人族。

「ヘスティア・ファミリア・メンバー、リリルカ・アーデ! ふふふ、皆様、私の変装術に騙されましたね」

 実際にはリリルカの変身魔法(シンダー・エラ)でヘスティアになっていただけなのだが、それを言う必要はなかった。

「ならば、本物はどこにいったのだ!?」

「それを言う必要はない!!」

 ヒュアキントスに切りかかりながらベルが叫ぶ。

 だが、ヒュアキントスはそれに対して大剣(フランベルジュ)を全力で一閃させた。

 その一撃は、ガードのバゼラードを打ち砕き、ベルの右肩に深々と食い込んだ。そしてそのまま、ベルを振り払うとヒュアキントスは襲撃が失敗したのを悟った。

「ベル・クラネル、戦争遊戯を受けなければ、今後も同じことが繰り返される。そのことを覚えておけ。引き上げるぞ」

 去っていくアポロン・ファミリア。

 リリルカはベルに駆け寄ってホルスターからポーションを取り出すと、ベルの治療を始める。

「このままじゃ駄目だ、もっと強くならないと・・」

 悔しさに涙を流しながらベルはつぶやいた。

 

 

さて、時は少し遡る。走るハリーに声がかけられる。

「ハリー君、ハリー君、こっちだ、こっちに来てくれ!」

 聞き覚えのある声に、ハリーは立ち止まり、死角になった物陰に移動する。木箱の下にいたのはヘスティアであった。

「よかった、無事だったんですね」

「ああ、ベル君とリリルカ君が陽動で、アポロンたちの注意を引いているから、今のうちにこっそりとバベルに行こう」

 ハリーは頷くと、杖を取り出し、ヘスティアに目くらまし呪文をかける。

「なんだか水をかけられたような感触なんだが、なんだいこれは?」

 カメレオンのように周囲に溶け込むと言おうとして、この世界にカメレオンがいるかどうか迷うハリー。とりあえず適当に説明する。

「目くらまし呪文。周囲からはヘスティア様が見えなくなります。透明になったようなものですね。僕からも見えないんで、コートの端を掴んでいてください。途中の広場でヴェルフと合流して、ヘファイストス様と面会ができるようにしてもらいましょう」

 

 

 二人は目立たないように、急がず慌てず、広場につくと目論見通り、ヴェルフと合流しバベルへと辿り着いた。ちょうどそこにベルとリリルカもやってきた。期せずして合流できたことを喜ぶ三人。ハリーはベルとリリルカにニッコリ笑ってウインクをして、問題ないと知らせる。

 エレベーターに皆で乗り込み上へと向かう。周囲に人目がないのを確認して、ハリーはめくらまし呪文を解除する。

「おわっ! ヘスティア様? 一体いつの間に乗ってたんですか!?」

「うん、ぎりぎりで飛び乗ったんだ。気づいていなかったみたいだね」

 びびるヴェルフに何食わぬ顔をしているヘスティア。あわただしく、情報交換をする四人。

「くやしいが、これはもう戦争遊戯を受けざるを得ないようだ。十日だ。それだけ時間を稼ぐから、みんなは強くなってくれ。僕は神会でできるだけ有利な条件を引き出すようにする。ここでいったん解散だ」

「「「わかりました」」」

「大変な事態になっちまったな、おい・・」

アポロン・ファミリアは中堅のファミリア。それなりに人数も多い。ヘスティア・ファミリアはたった三人。人数差を考えるととても勝ち目があるとは思えない。

 

その間にもエレベーターは目的の階に到着した。ヘスティアは勝手知ったる通路を進むとヘファイストスの部屋の扉を開けて中に入る。

「ヘファイストス、すまないが、神会を開く手続きを頼む。戦争遊戯を受けざるを得ないようだ」




 うん、やっぱり、パーティは、同じファミリアで組むのがよいのですね。本文中には書いていませんが、礼服の採寸のために待ち合わせに遅れると、ヴェフルに連絡入れてます。連絡するのが手間です。急な用事が入った場合等、連絡がしにくいです。同じファミリアなら、朝起きたときにすぐ連絡できるんで楽なんですけどね。

 どうでもいい話ですが、ベルのじいちゃんの名前が何なのか気になってます。『わしの名前はゼウス! ゼウス・ファミリアの主神と同じ名前なんじゃあっ! うわぁっはっはっはっ!!』とか村人に名乗ってるとは思えないし・・。いや名乗ってるのか・・?


補足
1料理
ハリー。ダーズリー家でペチュニア叔母さんの手伝いをしていたので、料理ができます。『ハリー・ポッターと呪いの子』ではジニーとの結婚後はハリーが料理をしているという描写もあります。

ベル。じいちゃんと二人暮らしで家事を分担していただろうから、料理もできます。

ヘスティア。竈の神なので料理はできます。

リリルカ。両親からは、料理の練習の暇があれば金を稼いで来いと言われていたので、料理はできません。

2マグルでドラゴンを見たことがある人は一人もいないはずである
もしいたとしても忘却術をかけられているはず・・・


3オラリオ市民はドラゴンを見たことがない。
原作によると、ガネーシャ・ファミリアがインファント・ドラゴンをテイムしているようです。怪物祭でテイムを見せている可能性が高いのですが、ここでは除外しています。

ヘスティアが隠れていた箱を、段ボール箱から木箱に変更しました

次回『Der Kongreß tanzt』
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