ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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ランク3
借金を返済しよう・・


 夜、ベットの中でハリーは考える。

 ヘスティア・ワンドの作成代金の金策である。金策で思い出すのは、フレッジョ達の開店資金。彼らは資金として1000ガリオンがあればなんとかなった。今回、ハリーが挑むのは、それとは桁が違う。1億ヴァリスである。何軒の家が建つんだろうというレベルである。途方もなさすぎて、どこから手を付けようかと、諦めの気分になるハリー。

 

 気を取り直して、いろいろと考え始める。まず以前にも話題になった割れない魔法薬瓶。これは売れる。ただし消耗品ではないから、いつまでも売れるというわけではない。それに、1億ヴァリス稼ぐためには、8千本以上作らないといけない。そんなに作るのは大変だし、8千本も売れるとも思えない。他にも売るものが必要である。

 そこで参考になるのが、リヴェリアの言葉。

『移動魔法なのだぞ。いちいち、歩いて移動しなくてすむのだ。ダンジョン探索がどれだけ楽になるか。画期的なものなのだ』

 すなわちダンジョン探索が楽になる画期的な方法があれば、お金になるということである。

 

 さてダンジョン探索が楽になるとは何だろうか。移動が楽。荷物が少ない。休憩がゆっくりできる。御飯が美味しい。戦闘が楽。この辺りであろうか。

 というわけで順番に考えるハリー。

 

 まずは移動が楽になる方法。箒は結局、ベルには使えなかった。おそらく、他の人たちも使用は無理だろう。となると、つぎの候補は、ハグリッドも乗っていた空飛ぶバイク類になるのだが、元々はマグル製品であり、ハリーには作り方が全く分からないから無理。

 後はセストラルなど魔法生物に騎乗するぐらいだが、近所に魔法生物がいない。ガネーシャ・ファミリアがテイムしたモンスターに騎乗しているぐらいであろう。とはいえ、深層に向かうレベルの冒険者ならば、テイムモンスターに騎乗するよりも、自分で走ったりした方が早い、と思われる。

 つまり残念ながら移動を楽にする方法は無い。

 

 次は荷物を少なくする。これに関してはアイデアがある。ハーマイオニーが使っていた確かビーズバッグ。あれには検知不可能拡大呪文がかけられていて、大量の荷物が入れられるようになっていた。リリルカの救急箱に同じ加工をすれば、魔法薬瓶を大量に持ち運べるようになる。うん、これはいい考えだ。しかも一個当たりの値段をかなり高くしても、文句は出ないであろう。売るだけでなく自分たちでも使用できる。

 

 休憩がゆっくりできる方法。ダンジョンで休憩する方法は二つ。18階層などの安全階層で休憩する。または、ルームに入って壁を破壊する。どちらもモンスターが発生しない場所である。ううむとハリーは唸る。逃亡生活をしていた時に、マグル避けの呪文を使っていたので、応用でモンスター避けの呪文ができないかと考えていたのだ。だが考えてみると、通路を歩いているモンスターならば、モンスター避けの呪文が利くだろうが、壁から生まれてくるモンスターに対しては効果がないような気がする。だとするとモンスター誕生防止が必要だが、これは難しそうだ。普段やっているような壁を傷つけるのが、早くて簡単である。

 あとはクィディッチ・ワールドカップ観戦で、ウィーズリー家と使用した検知不可能拡大呪文のテントだろうか。これさえあれば、ダンジョンだろうと、船の上だろうと、崖っぷちの狭い場所であろうと、豪華ホテル並みのスペースは確保できる。隠れた場所にこっそりテントを張れば、見張りも少なくて済むはずだ。うん、これは良いんじゃないだろうか。テントの中で寝るだけでなく、先ほどの荷物を運び込むこともできる。テントだから畳んでしまえば、持ち運びも楽だ。うん、これは良い。

 

 気をよくしたハリーはさらに続きを考える。

 

 美味しいご飯が食べられる。これは魔法で何とかするのは無理。逃亡生活をしていた時には、碌な材料がなかったから、魔法を使っても美味しいご飯は作れなかった。逆に言うと、材料があれば美味しいご飯が作れるのは、魔法界でもこちらの世界でも同じような気がする。材料をなんとかする方法は、結局は荷物の話になるので、どうしようもない。

 だから、魔法界よりはマグル界の知識を利用した方がよいだろう。マグル達は、即席ヌードルというものを食べたりしていた。フリーズドライしたヌードルと具材が入ったカップがあり、それにお湯を入れて一定時間待つと美味しいヌードルになるというものだ。なんであれを逃亡生活に持っていかなかったんだろう。とはいえ食料の準備をしてなかったのは自分も同じなので、ハーマイオニーに文句を言う筋合いではないなと考えるハリー。

 あとは缶詰、瓶詰技術だろうか。とはいうものの、瓶詰はどこかで見た記憶が有るような気がする。缶詰は金属加工が大変そうだから、たぶん無理だろう。瓶詰に絞って考えた方がよさそうだ。割れない瓶をつかえばそこまで難しくなく出来るだろう。む、ということは、魔法薬用じゃなくて、食料用の割れない瓶が必要になるのか・・。

 

 最後は、戦闘が楽なダンジョン探索。

 そんなものはない

 階層を一つ降れば、敵は強くなるんだから、そうすれば戦闘はきつくなるのである。強力な武器があれば良いのだろうが、マグルの武器はこの世界では作る技術がない。魔剣を大量生産する方法も無い。魔法界での武器といったら、強力な杖となる。結局のところ、戦闘が楽になる方法はないのだ。

 

 

 明日になったら、皆に相談して見ることにしよう。そう考えをまとめると、ハリーはようやく眠りにつくのだった。

 

 

********

 

 

「というように、色々と考えてみたんだけれど、どうだろう?」

 此処は14階層のルームの一つ。現在休憩中なので、ハリーの商売というか金儲けの話を聞くパーティメンバー。

「僕も考えた方がいいね」

 ベルがそう言うが、ハリーが諭す。

「僕の場合は、元の世界に杖を持っていくから、ベルとは違う。ベルはこちらでファミリアを率いていくし、ナイフは、何十年か経って次の団長に渡しても良いんだし、お金は良いんじゃないか」

 ハリーの説得に納得するベル。その間に考えていたリリルカが意見を喋る。

「うーん、とりあえず、ピクルス類を入れた瓶詰はあります。あとモンスター避けの匂い袋があるので、それの効果をさらに長時間化できれば良いですね。ただ、どちらも大した儲けにはならないと思います」

 リリルカが頬に右手を当てて更に考え込む。

「カバンとテントは高く売れそうです。だけど犯罪に悪用されないように注意が必要です。テントなんか、盗賊山賊人攫い闇派閥、その他諸々の悪人のアジトにぴったりですよ。軍隊用にもあると便利でしょうね」

「あとカバンは密輸にも使えそうだな。となると、少数生産にして、信用が置ける相手にだけ売るってのが良いんじゃないか? 武器と一緒だ」

 ヴェルフが付け足す。

「私は乾燥ヌードルというのが食べてみたいです」

 ミコトは麺類に興味を惹かれたようだった。

「それは、僕たちが大量に作るのは無理だから、商売系ファミリアにアイデアを売って生産は任せよう。箒に乗れればよかったんだけどなぁ」

 空を飛ぶことに心惹かれるベルが残念がる。

「商売系といわれましてもベル様、心当たりがあるので?」

「この前の神の宴の時に、ヘルメス様に出会ったんだ。そこはどうだろう? 色んな事をしているって言ってたよ」

 ヘルメスの名前を聞いて微妙な顔になるリリルカ、ミコト、ヴェルフ。特にミコトは、ヘルメスのタケミカヅチに対する態度を知っている。おかげでオカメがヒョットコの真似をしているような、微妙な顔になってしまった。それを見たハリーはとりなすように喋る。

「まあ、まずは、実際に作れるかどうか試してみよう。作れないかもしれないし。出来てからギルドにも相談してみれば良いんじゃないかな」

「カバンも作るんですよね?」

 サポーターのリリルカはそこに興味があるようだ。

「うん、まずは救急箱から改良してみるよ」

 金儲けの話はひと段落ついたと判断したベルが立ち上がり、ドラキチを使ってルームの壁を改めて傷つけていく。

「じゃあ、お金の話は此処までにして、次は魔法とスキルの試し打ちを始めよう」

 いよいよファイアボルトと能動雷撃の試射が始まる。

 

 

 ファイアボルト。

 それがハリーに発現したと聞いた時には、リリルカは一人興奮し、彼女の妄想の中で勝手にキャラクターたちが動き出していた。

『一人一人は小さな火でも!』

『二人合わせれば、炎になる!』

『『合体魔法 フレアストーム!!』』

 というようなペルとパリーが活躍する光景が、リリルカの頭を駆け巡っているのだ。

 

 

 そんなウキウキしているリリルカはさて置き、ハリーは右手を開いたり閉じたりしている。マグル界で生活している間、ちょっとした漏電体験をしたことがあった。それとベルのファイアボルトを間近で見ていたので、ヒュアキントス戦のように自分に逆流しないかと、心配しているのだ。緊張を押し殺し、意を決して右手を壁に向ける。

「ファイアボルト!」

 右手から壁へと撃ち出される炎の雷。だがそれは手の平から30cぐらいの所で直進をやめた。勢いはそのまま左右に分かれて長さ2M弱の稲妻となり、片方は太く、もう片方はほっそりとしたシルエットになっていく。

 そして一瞬ののちに出来上がったのは一本の箒。ハリーの右手の先でふわふわと空中に浮かび、ぱちぱちと静電気を放電している。

 怪訝な顔になるパーティメンバー。期待を裏切られて崩れ落ちるリリルカ。

「いくらハリー様がホウキスキーだからって、箒を作る魔法なんてありなんですか?」

 

 だが、ハリーにはこれが何なのかシーカーの本能で分かっていた。これは只の箒ではない。クィディッチ・ワールドカップの選手が採用しているワールドクラスの箒! そしてホグワーツ三年生の時からハリーが愛用していた箒、ファイアボルトなのだ!!

 

 ハリーは右手を伸ばし、ファイアボルトをがっしりと掴み、すかさず飛び乗った。感電するんじゃないかという不安は既にどこかに吹き飛んでいた。そして、加速、上昇、下降、急旋回を軽く試してみる。

 

 素晴らしい。

 

 自作の箒とは加速、反応性、旋回スピード、すべてが違う。クッション呪文も完璧である。ルームの中では最高速度は出せないが、おそらくは、本来の箒と同じ速度は出るだろう。

 満足したハリーは、箒から飛び降りるのだった。箒は、空気中にパチパチという音を残して、放電され溶ける様に消え去っていった。

 

「うん! 良い魔法だよ。箒作成魔法、いや箒召喚魔法? 最高だね! まあ、すごい魔法だと思う。最高速度は後で外で測ってみよう!」

 顔を紅潮させて喜びながら捲くし立てるハリー。もともとハリーは数十の魔法を使えるし、本人が喜んでいるなら、新しい魔法が箒でもいいかと自分を納得させるベルたち。

「魔力はどれくらい使ってそう? マインドダウンの心配は? 飛んでいるときに箒がなくなったりしないよね?」

 言われてハリーはもう一度ファイアボルトを使用し、ルーム内をゆっくりと旋回してみる。だが、そのスピードはヴェルフ達からみるとかなりのスピードだった。

「比較のしようがないんだけれど。呼び出すときに魔力を使ってる。そのあとは、ちょっとずつ減っている感じがする。箒の姿の維持に使われてるのかな」

「だとすると長時間にわたって箒を出し続けるには、マインドポーションを飲む必要がありますね。でないとマインドダウンが起きると、箒が無くなって落っこちてしまいますよ」

「分かった、そうするよ」

 リリルカの指摘に大人しく頷くハリーであった。

 

「じゃあ、次は僕のスキルだね。どういうものか見当が付かないんだけれど」

「え、そうなの?」

 箒から飛び降りたハリーは、ベルの言葉に驚く。意外や意外、ハリーには見当がついているようだ。そんなハリーの横で、箒が放電し溶け去っていく。

「まさかハリー様は見当がついているので?」

「うん、ファイアボルト・マキシマのことだよね?」

 驚いて確認するリリルカに、あっさりと断言するハリー。だが、そう言われても皆は理解できていない。その様子を見たハリーは説明を続ける。

「今、僕も魔法を使って分かったけれど、ファイアボルトの詠唱だけで、本来は直ぐに魔法が発動するはずだよね。その後ろにマキシマってつけている分、発動スタートの時間がずれて、そのずれの時間分がチャージされて、威力が上がってると思うんだ」

 そういわれて、ベルたちは、この前の戦争遊戯を思い出す。砦の門をくぐった直後のベルの魔法は、攻撃範囲が広がっていた。ヒュアキントスの輝く光輪が相手の時、マキシマと付けていない時には負けていたが、マキシマとつけると極太の稲妻になって逆に相手を破壊した。

「ということは、マキシマの後にも、なにかスーパーとかウルトラとかミラクルと続ければ、威力が上がるということでしょうか?」

 今言ったリリルカの言葉が正しいとすれば、ファイアボルト・マキシマ・スーパー・ウルトラ・ミラクルと付ければ、かなり威力が上がりそうである。

「うん、上がると思うよ」

 ハリーも肯定する。

 

「でも、実際には付ける必要はないんじゃないかな。なんというか、そのう、感覚的なことで言いにくいんだけれど、『ファイアボルト』って、ただ口にした時と、魔法で撃ち出す時とで、ベルは頭の中で区別してるじゃない」

 だが分かりにくかったようだ。皆がまたもや首をひねっている。

「ええーと、例えばベルが皆に作戦を説明する時に『僕がファイアボルトを撃ったら、みんなで突撃』って言ったとしても、魔法は撃ち出されない。でもベルが攻撃の時に『ファイアボルト』って言ったら、魔法が撃ち出される。これってベルが頭の中で無意識の内に、撃つ撃たないのスイッチを切り替えているというか、区別をしているからだよね」

 今度は納得する面々。超短文詠唱呪文の使い手が身近にいないと分かりにくい説明であった。

 

 そしてハリーがこのことに気づいたのには、自分がファイアボルトを試したのも理由だが、もう一つ理由がある。一年生の魔法の授業、ハーマイオニーがロンに浮遊呪文を教えていたことを思い出したからだ。

『杖の動かし方はヒューン・ヒョイよ、そして呪文はウィンガーディアム・レヴィオーサよ。ウィンガビアム・レヴィオサーじゃないわ』

 この時、ハーマイオニーは杖を動かしながら説明をしていたが、練習用の羽根は動かなかった。つまり、魔法使いたちも無意識に、発動する、発動させないのスイッチを切り替えているといえる。だからこそ、ハリーはベルの魔法の使い方に気づいたのだ。

 

「だから頭の中というか、心の中というか、意志の中?で?ファイアボルトって攻撃スイッチを入れて、しばらく詠唱をしなかったら、その分チャージされると思うんだ。そして詠唱して撃ち出せば、チャージされた分、威力が上がったファイアボルトになると思う」

 いや、それって難しいんじゃないのか? そんな変なスイッチ、どうやって入れるのさと、全員が心の中で突っ込んだ。ベルはため息を漏らす。

「スイッチというか、なんというか、練習しないと駄目っていうのは、わかったよ・・なかなか難しそうだ・・」

 更にハリーがアドバイスをする。

「攻撃するつもりで、声に出さずに頭の中だけで『ファイアボルト』って唱えてみれば?」

 少なくともハリーが無言呪文を最初に成功させた時には、それでうまくいった。ベルの場合も、超短文詠唱呪文なので、上手くいくかもしれない。

「じゃあ、それでやってみるよ」

 魔法に関しては、魔法使いのハリーが専門なのでアドバイスに従うベル。無言のまま右手を壁に向ける。そしてその姿勢を保つことしばし・・。

「ファイアボルト!!」

 今までにない極太の雷が撃ち出され、ルームの壁を直撃、腹に響く爆発音が響き渡る。煙が晴れると、壁には深さ1M直径3Mほどのクレーターができていた。

「うわぁ・・ すごい威力だな」

 呆れるハリー達。だが、ベルの様子がおかしい。額から汗をダラダラと流している。

「大丈夫ですか、ベル様?」

 異常に気づいたリリルカが慌てて駆け寄る。呼吸も荒くなっているベルは地面へと座り込んだ。

「・・うん、大丈夫。ただ・・なんというか・・きつい」

 それを聞いたリリルカは救急箱から、素早く、ポーションとマインドポーションを取り出して、座り込んだベルに渡す。受け取ったベルは貪るように飲んでいく。

「単純に威力が上がるけれど、その分の精神力(マインド)や体力は消耗するってところじゃないのか」

 ベルが疲れているだけと判断し、安心したヴェルフが推測する。

「威力が上がるが、それ相応の代償があるってことだろう」

「魔法は詠唱文が長くなると、それ相応に威力と消耗度合いが上がります。『チャージ時間が長くなる』=『詠唱文が長くなる』となると、納得いく考えですね」

 ミコトも自分の魔法について考えながら意見を述べる。

「それとやってみて分かったけど、魔法とは違って、平行詠唱みたいなことは出来ないと思う」

 飲んで回復したベルも参加してきた。

「体を動かすと、今までチャージした分が消えそうな感じがした。もう少し、いろいろ試してみるよ」

 

 そうして、ベルはファイアボルトで、能動雷撃の確認を続けるのだった。

 

 そうして確認できたこと。

 ファイアボルトでのチャージは、かなり出来るようになった。心の中で詠唱する方法でスイッチを入れられる。

 チャージをしながらの移動は無理。チャージが消える感じがする。ただしチャージをストップしての移動は出来ないことはない。四回に一回は移動に成功する。

 その場から動かないのであれば、ファイアボルトのチャージは問題なくできるようになった。最大5分。威力はとんでもなく上がる。ただしベルの消耗もとんでもなく凄い。5分のチャージ一回でマインドダウンになり、ぶっ倒れた。

 結論。今まで通りマキシマとつけるのが使い勝手がよい。ただそれ以上の強化が必要な場合は、停止してのチャージが良い。

 それからファイアボルト以外の『アクティブ行動』へのチャージが、まだ上手く出来ない。スイッチの連想、つまりチャージスタートが上手く出来ないのだ。

「アクティブ行動って何でしょうね?」

 リリルカが問いかける。

「ジャンプや攻撃だと思うんだ。だけど、心の中でジャンプって呟いても上手く出来ない。別の方法を考えないと・・」

 

「ベル様、まずは一日目の成果としては十分ではないでしょうか。ポーション類もだいぶん消費しましたし・・」

 本日二回目のマインドダウンから回復したベルに、リリルカが提案する。

「魔法限定だけどチャージできるようになったし、今日は十分だと思うよ。僕も魔法を試せたし」

 箒魔法を使用するには、ダンジョンの外の方が都合がよいハリーも続ける。

「私も、魔法の検証の時は、何日もかけて検証しました。18階層遠征の練習もありますから、今日は、もうこれくらいで良いんじゃないでしょうか?」

 ミコトも続ける。

「そうだね。じゃあ、スキルの検証はこれくらいにして、探索を再開しようか」

 リリルカの膝枕から起き上がると、ベルも探索へと気持ちを切り抱えた。

 

 レベル3へのランクアップを報告した時に、エイナから提案された遠征の話。エイナの言い分としては、レベル3が二人もいるので16階層までの上層での活動は問題はないといえる。ただし、地上から16階層に往復すると、移動時間が大幅にかかる。だったら、いっそのこと18階層を拠点として、泊まりがけで遠征をした方がよい。そうすれば、16階層だけでなく、さらに下層の19階層も探索もできる。レベル3がいるファミリアのギルドへの徴税額は大きくなるので、そうした方が稼ぎが良くなり、楽になる。

 冒険してはいけないと、いつも口を酸っぱくしているエイナからの提案なので、ベルは驚いていた。しかし言われていることは道理に合うことなので、賛成したベル達である。

 その時にエイナからいくつか条件が出された。そのうちの一つが、14階層で戦闘をこなし、ランクアップ後とメンバー追加の調整をすることであった。今日ここに来たのは、スキルや魔法の検証もあるが、調整も目的なのであった。

 ベルたちは検証を停止し、モンスターとの戦闘を再開し調整を始めるのだった。

 




金儲けの話を書いていると、なんだか別の話になってしまったという違和感しかない・・。

補足
フレッジョ
フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーの双子のことです。

逃亡生活
ハリポタ第七巻での、魔法省襲撃後のキャンプ生活のことです。

チャージ
 以前ヘスティアが考察していた『スキル未満のスキルの発現』も影響しています。それで戦争遊戯の時にも効果が少し現れています。

次回『18階層遠征』

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