「一回の遠征を長期化するか、短期の遠征を何度もするか」
遠征から帰還した報告─全員無事帰還、到達階層更新等─をギルドへ済ませて、不要なドロップ品を売却。そうして始まったファミリア会議。リリルカが全員を見回して、説明を開始する。
最初の遠征は、大成功といってよいだろう。
まず、ファミリアとしての到達階層の更新。14階層から一気に19階層まで更新した。
続いて19階層のドロップ品を売却したことによる経営の黒字化。ギルドへ徴税金を支払ってもおつりが出るものだった。とはいってもレベル3が二人もいるので、当然の結果であろう。
そこで問題になるのが、冒頭のリリルカの発言、これからの探索をどうするのかである。資金的にも、アビリティを伸ばすためにも、できるだけ深い階層に挑むのが良いのだが・・。
「問題は食料品などの補給ですね。長期間遠征をするには補給が不可欠です。18階層で補給をしながら遠征を続けるには、物価の関係でまだ我らがファミリアには資金が足りません。となると地上から補給品を持ち込むために、サポーターを追加で雇う必要があります。もしくは、ハリー様どうぞ」
「
ハリーが説明する。
「魔法をかけることによって、見かけ以上に大量に物が入るカバン。これを使えば、補給の問題はかなり解決するはずだ。少なくとも、現在の4倍ぐらいは運べるから、30階層程度までは、大丈夫になるんじゃないかな」
それを聞いたヘスティアが驚きの声を上げる。
「しかし、そんなカバン、聞いたこともないぜ。買うと高いんじゃないのかい?」
ニッコリ笑ってハリーが答える。
「大丈夫、問題ないです。何故なら、僕が今から造るからです。ただし、造るのに専念したいので、しばらくダンジョン探索は参加できないんだけれど・・」
パーティの主力が一人抜ける。しかし、これは、将来的には有りうる事態である。
「大丈夫。前衛を、ヴェルフ、ミコトさんが。僕が中衛兼、後衛をすれば問題ないと思う」
そう説明して、大丈夫だと保証するベル。それにヴェルフが付け加える。
「実は、俺もちょっと造りたい剣があるんでな。ハリーがカバンを造った後に、交代で武器造りに専念したいんだが、良いか?」
それにベルが一瞬考えてから答える。
「その場合は、前衛を僕とミコトさんが、後衛をリリとハリーがするから大丈夫かな」
ヘスティアが、ふむふむと考えて感想を言う。
「人数が増えてくると、パーティの組み合わせも色々と有るわけだね。状況によってメンバーが変わるのも、君たちにとっては良い経験になるんじゃないかな? 場合によっては他のファミリアと合同で探索、遠征をすることもあると思うぜ?」
実際ロキ・ファミリアは、前回、ヘファイストス・ファミリアに依頼し、鍛冶師を組み入れて遠征に赴いている。他にも、ギルドからの強制依頼などで、別ファミリアと組むこともある。ヘスティアの言うことは実際にありうることなのだ。
以上の事を踏まえて、まだ当分の間は、地上からの日帰りでの探索、それと18階層を拠点とした短期の遠征を繰り返す事に決定した。
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さて、その後ヘスティア・ファミリアでは、作成に専念するということでハリー、ヴェルフが交代でパーティを一時離脱。リリルカもステイタスを伸ばすために前衛に出て、ハリーがサポーターというか荷物持ちをするなど、色々とパーティ編成を変更してみた。そして、実感して分かったことは、パーティの中核はベルとリリルカの二人だということだった。
ベルは二刀流で前衛として戦い、魔法で空中のモンスターも攻撃でき、速度を生かした中衛ができる。
リリルカは、荷物持ち、地図を覚えての道案内、モンスターの解体ができる。この解体作業をリリルカ程手際よく出来るメンバーがいなかったのだ。ベルやハリー達が一体のモンスターから魔石を取り出している間に、リリルカは三体のモンスターの解体を終えているのだ。
そして14階層で様々なパーティ編成の連携調整をしたあと、18階層遠征を実施。資金面でも、各自のステイタスも、大きく成長したのであった。そして、そろそろ16~19階層ではなく、19~21階層をメインの探索場所にする事を考え始めた。
ハリー以外のメンバーが遠征に行っている間、そして、自身が遠征に参加している間も、ハリーはカバンを作成し続けた。その甲斐あって、七個のカバン─名前が長いのでマジックバックと命名した─を完成させたのだった。
二つは、自分たちで使う。救急箱マーク2も加えると3個である。ちなみに、最初の救急箱は使われなくなった。今は、ベル(とハリー)からの最初のプレゼントということで、リリルカの自室で大事に保管されている。
従って一個当たり2000万ヴァリスで売り払えば、全部で1億ヴァリス。借金返済に間に合うのだった。さて、次の問題は、何処に売りつけるかである。2000万ヴァリスを支払い可能で、かつ伝手があるところは・・。
ロキ・ファミリア。
ヘファイストス・ファミリア。
ヘルメス・ファミリア。
これだけであろうか。後は、もしかしたら払えるかもしれない、タケ・ファミリア。
結論から言うと、完売できた。
売り込みにロキ・ファミリアを訪れた時、リリルカが2400万ヴァリスを提示。予め知っていなかったら、ハリーは驚いた表情をし、その後の商談の流れをぶち壊していただろう。それに対して、団長のフィンは、高すぎるとして1600万ヴァリスを逆提案。
リリルカが、大量に運べるだけでなくカバンに入れると重さを感じない等、値段が高い理由を述べ、ちょっとだけ下げた値段を提示。
フィンも負けじと、カバンの入れ口のサイズが小さいので大きなドロップ品を入れられない等、値段を安くする理由を言って、ちょっとだけ上げた値段を逆提案。
二人がそんな応酬を何度も繰り返すたびに、互いの金額が近づいていった。最終的に、リリルカの提案『この値段で二個買ってくださるなら、オマケとしてハリー印の魔法薬瓶50本をつけましょう』が話の流れを変えた。
そしてハリー印の魔法薬瓶のアピールポイント、割れにくい事の説明。実験のためにリリルカが床に叩きつけてみせた。割れなかったので納得する面々。もっと数が欲しいというフィン。残念ながら入手が困難と渋ってみせるリリルカ。もし追加で作成出来たら、優先的にロキ・ファミリアにに売って欲しいとフィンが伝え、商談は終了する。
こうして、一個当たり2100万ヴァリスで二個売れたのだった。
黄昏の館を出て、ハリーはリリルカに尋ねる。
「割れにくいといったのは何故なんだい?」
「割れないと言ったら、防具代わりに使いそうでしたから」
「防具にするのは流石に無理だよ。盾の表側全部に瓶を並べて使うのはちょっと、ねえ?」
「いや、あの勇者なら、ひょっとしてひょっとしますですよ?・・」
と呟くリリルカであった。
ヘファイストス・ファミリアでも、団長に好評で、これがあれば試し切りに行く時に大量に持ち込めると、にこにこと笑いながらの商談であった。
ヘルメス・ファミリアでは、ヘルメスから、誰が作ったのか、作成方法はどうやっているのかと、かなり突っ込んで訊かれたが、すべて秘密ですと、はぐらかして答えた。とは言え、それで諦めるヘルメスではない。しつこく問い詰めるヘルメスに、リリルカの怒りが炸裂してしまった。アポロン・ファミリア開催の神の宴で、ベルとアイズが踊るきっかけづくりをしたと聞いていたのも、怒りの要因だったのかもしれない。
リリルカ曰く、『商人の仕入れルートを探ろうとするのは、冒険者のステイタスを詮索するのと同じぐらい御法度です!!』
そうして2500万ヴァリスに値上げした。
ヘルメスがこのカバンの作成方法を知りたがったのには、少し理由がある。彼のファミリアの団長アスフィが神秘のアビリティを持ちで、様々なマジックアイテムを作成していた。そんな彼女ならマジックバックも作成できるのではと、ヘルメスは考えたのである。それで少しでも情報を得ようとしたのだ。だが失敗してしまった以上は、もう現物を買い込んで、参考にするしかない。渋々とその金額で購入したのだった。
タケ・ファミリアでは戦争遊戯の際に砦の地図を貰ったので、提示額は2100万ヴァリスにしたところ、即決で買い取ってくれた。長期の旅行に助かるとのことだった。
ハリーとしては、タケ・ファミリア団長達の格好が忍者であること、砦の内部地図を持っていたことから考えて、スパイ活動に使うのかなぁと考えていた。スパイ活動には関わらないことが一番と思ったので、何も詮索はしなかったが・・。商談が終わり、タケと雑談をするハリー。
「団員の皆さんは、普段から、いつも忍者の格好をしているんですか?」
「うむ。ニンジャの格好がいわば、我がファミリアの
そしてニヤリと嗤うタケ。
「ニンジャという言葉を知っているから、特別に教えてやろう。逆に言うと、ニンジャという人目を惹く格好をやめれば、普通の服を着込んでしまえば、我らのメンバーだとわからん。つまり完璧な
あ、なんか藪蛇だったかなと思い、愛想笑いを浮かべるハリーだった。
こうして、ハリーは1億800万ヴァリスを用意できたのだった。
ちなみに借金返済のためにハリーが考えていた、もう一つの方法。検知不可能拡大呪文をかけたテントの作成であるが、こちらは、作成に失敗していた。原理としては同じなのだが、どうしても上手くいかないのであった。原因として考えられるのが、元々の入り口サイズ。カバンとテントで違いすぎるからだろうと諦めたのだった。
そしてハリー印の割れない魔法薬瓶も、200本ほど作成していた。50本はロキ・ファミリアにオマケとして引き渡すが、残りはミアハ・ファミリアに渡して、こちらに納品するポーション類に使う予定である。まじめな話、ハリーは頑張ったのだ。
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善は急げと、ハリーは
「じゃあ、さっそく、杖の使い心地を報告してもらおうかしらね?」
とはいえ、事前に報告書を作成していたので、それを渡して説明するだけの簡単なお仕事である。スムーズに報告は終わった。
「・・やっぱり、重さが気になるようね・・でも、鋼なみの強度を確保するには圧縮は不可欠、片手剣より軽いのは確か。いや、強度はそこまで必要なければ、圧縮率を下げて軽くできる・・。この際もう重さは良いとして・・芯は二重構造にしてみる・・スタッフにして両手で扱うようにすれば・・槍、それに弓矢にも応用が・・」
ぶつぶつと自分の世界に浸っている鍛冶神。ハリーは咳払いをして、鍛冶神を呼び戻す。
「それでですね、借金の事なんですけれど、1億ヴァリス用意できたのでお渡ししたいんです」
そういうとハリーはマジックバッグの売り上げを机の上に置いて、鍛冶神に差し出した。
「いえ、これは受け取れないわね。借金は私とヘスティアとの個人的な問題よ。貴方から受け取る義理はないわね」
ちょっと視線が冷たくなった鍛冶神。彼女は、ヘスティアがハリーに借金を肩代わりさせていると思ったのだ。
「はい、だから、返済ではなく、お渡しするんです。
ナイフに関しては、これからもベルが、つまりファミリアメンバーが使っていくでしょう。いわばナイフはファミリアと一緒にいるわけです。
でも杖は違います。実は僕はレベルが上がったら、故郷に帰る予定です。その時杖も一緒に持って帰るんです。いわば僕の我儘で、杖はファミリアと引き離されるわけです。それはさすがに申し訳ないと思うんで、杖の分のお金をお渡ししたいんです」
ハリーが真摯な表情をしているのを見て、考えを改める鍛冶神。
「ヘスティアはそれを承知しているのね?」
「杖を持って帰るということは知っています。でもお金を今渡そうとしていることは知りません。それでお願いなんですが、借金はこれで返却したということは、黙っていて貰えないでしょうか。それで、ヘスティア様が今後働いて返却してくるお金は、積み立てていてください。そしてベルたちが困った時に、そのお金を渡してください。将来の保険ということです」
それを聞いた鍛冶神は、呆れ返っていた。
「貴方、良くもまぁ、面倒なことを考えるものねぇ・・」
武器生産のトップ・ファミリアの主神に、金を預かってくれという頼み事である。とはいえ、借金の3分の1は返却になる。そのことを知らないヘスティアは、今返却された分も返却するため、真面目に働き続けるだろう。自堕落生活を防止するには、良い材料になるのだ。そう考えて、深い溜息をついた。
「なんというか、ヘスティアには勿体無い眷属ねぇ。いいわよ、やってあげようじゃないの」
ヘスティアに甘い鍛冶神は、ハリーの申し出を受けるのだった。こうして杖の分の返済は無事に終了。つまりヘスティアの借金は、本人が知らない間に、3億から2億に減額されたのだった。
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ヴェルフは剣の作成をしていた。野営の時にハリーと話していた。弱い弱い魔剣。
柄も含めて25C弱のサイズ、剣というよりナイフである。打ち終わったばかりの魔剣を手にしたヴェルフは、それを木屑に向けて発動させる。刃の先端から弱弱しいオレンジ色の炎が噴き出す。それを受けた木屑は赤くなり炎を上げて燃え始めた。
「ほー、上手くいったなぁ・・」
弱い魔剣であるため、直ぐに崩れ落ちる事はない。しばらく遠征で使い続けても大丈夫であろう。その魔剣を10本ほど作成した後、ヴェルフはつぶやいた。
「それじゃ、練習はこれくらいにして、次を造りますかね」
そして、再び炉に向き直るヴェルフ。彼がその『次』を作り出すのには、もうしばらく時間が必要だった。
これで、ハリーの杖、ヘスティア・ワンドの分の借金は返済しました。ロキの予測が正しいとすれば、後はレベル4になったら、ハリーは心残り無く帰れるわけです。遠征を繰り返してステイタスも伸びているから、もうちょっとですね。
補足
アスフィ
ヘルメス・ファミリア団長。青髪で眼鏡をかけたクール・ビューティ。
空を飛べるようになる靴を作成、装備している。つまり現時点で、ハリー以外で空を飛べる唯一の人物。ただしこのアイテムの存在は秘匿され、ほとんどの人は知らない。
ハリーが作ったマジックアイテムも、そのうち再現してくれそうですね。
ニンジャという言葉
使ってしまったが、うぬの不覚よ! ハリーは要注意人物としてマークされました。
この言葉をオラリオで知っているのは、発展アビリティ忍者をもっているアイズとその主神周辺、タケミカヅチ・ファミリア、ミコト、ハリーぐらいですね。
積立
実際に積立が始まるのは、ナイフの2億分を返却してからになります。だいぶん先の話ですね。
ヴェルフの次
変わり種の魔剣です。原作に出てくるヴェルフの魔剣のような凄いモノではないです。
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