ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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時間経過が原作とかなり剥離していますが、ご容赦ください。



戦争

「良い眺めだ、来てもらってよかったよ、ポッター君」

 そう呼びかけるのは、フィン・ディムナ。彼は今、ハリーとティオネの三人で、新しい箒ダムセルフライ─魔力を消費しない箒もあったほうが良いということで、新規に作成─に乗りこみ、高空から戦場を偵察しているのだ。

「やはり上空からの方が、敵の布陣の様子が分かりやすい」

「そうですね、さすが団長です!」

 眼下の戦場で戦っているのは、ラキア軍とオラリオ連合軍である。

 

 ラキア。軍神アレスを頂点にする、国全体で一つのファミリア。オラリオの富を狙い、今までに何度も、万を超える軍勢で戦争を仕掛けてきている。ただ、悲しいかな、構成員の殆どがレベル1。居てもレベル2、極めて稀にレベル3が存在する程度なのだ。これはオラリオ外部では強力なモンスターが存在せず、ランクアップする要因が無い事が原因である。

 

 対してオラリオ連合軍。冒険者は、モンスター蔓延るダンジョンで戦闘に明け暮れている。そんな冒険者が所属する探索型ファミリアが、連合軍の中核を形成しているのだ。所属団員はやはりレベル1が多いというものの、レベル2、3はもちろん、第一級、第二級冒険者も参加している。それだけではない。ギルドの要請により、世界最高レベル7のオッタルも、今回はファミリアを率いて参加しているのだ。人数で劣っていても、レベルでは圧倒的に勝っている。

 

 そしてレベルの差は極めて大きな戦力差である。戦争遊戯(ウォーゲーム)でベル達が、レベル1のアポロン団員達を、あっさりと突破した事からも分かるだろう。この時代、単純比較するならば、量よりも質が重要なのである。

 

 従ってラキア軍が勝利するためには、レベル差を出し抜く巧妙な作戦が必要となる。とはいっても、ラキアトップのアレスが残念な性格なので、力押しの正面からの突破作戦ばかり採用しているのである。当然そんな単純な作戦であれば、レベルで優っているオラリオ連合軍は、負けることはない。更に、オラリオ連合軍はフィンが指揮を執っているのだ。

 

 そして、そんなフィンが駄目押しの策として、ギルドに要請したのが、ハリーの連合軍への参加。箒に乗って空中偵察を行えば、戦局をより優位に持っていけると考えたのだ。その為、ハリーを含むヘスティア・ファミリア全員が連合軍に参加していた。

 

 そしてフィンが空中偵察に出かけるのであれば、当然、ティオネもついてくる。そしてハリーの視力では無理だが、レベル6のフィンたちには、戦場全体が明瞭に見えているようだった。戦況を確認しつつ、フィンが独り言を呟いている。

「基本的な、重装歩兵を中心とした布陣。両翼も基本にのった教科書に載せたいようなお手本のようなものだ。だが、全局面でオラリオ側がラキア軍を食い止めて─」

 その瞬間、ブラッジャーが来るという直感に従い、ハリーは急旋回で回避行動をとる。そのそばを高速で飛び抜ける巨大な矢。

「バリスタによる対空射撃。ドラゴン・スレイヤーのことはラキアも確認済み。まあ、さすがに時間がたっているから、知られているか。とは言え発見されるのが早いな・・」

 そうしている間に、第二、そして第三の矢が飛来してくる。だが下からくると分かっていれば回避は容易。素早い箒捌きでことごとく回避するハリー。その間も偵察を続けていたフィンは、頃合いかと判断し、ハリーに帰還を促した。

 

 

********

 

 

「・・というわけで、戦況事態は問題ないと思ってて良いはずだ」

 フィンはロキにそう報告する。横で聞いていたタケが自分の眷属が調べた内容と、フィンの偵察内容をすり合わせ、確度が高い情報へとまとめ上げていく。そして戦場一帯の地図上にオラリオ連合軍とラキア軍の駒を置き、現在の戦況を示して見せる。

「なるほど。で、何が問題なんや?」

 此処は、オラリオ連合軍の一応本部。ロキ、ガネーシャ、フレイヤと各ファミリアのトップが集まってフィンの偵察報告を受けている。

「補給部隊の位置が、想定よりもだいぶん後ろだ。後ろ過ぎるといってよい。前線に補給物資を届けるには、あの距離は手間がかかりすぎる」

 ロキとガネーシャは興味深げに聴き入り、フレイヤは退屈なのか欠伸を可愛らしく噛み殺していたが、立ち上がった。

「私は、これで失礼するわね。オッタル、私の代わりに話を聞いていてね」

 そういって天幕から出ていった。止めても無駄だと分かっているので、止める者はいなかった。

 

「それからお前は何を推測している? すでに考えているのだろう?」

 世界最高峰のレベル7。あふれる存在感をそのままに、オッタルがフィンを急かす。

「一つ目。今の敵の前線部隊が、捨て駒なので補給する気が無い」

 過去のラキア迎撃戦にも参加しているガネーシャが反論する。

「アレスは脳筋だが、あれで眷属は大事にしている。眷属を見捨てるような作戦は取らんだろう」

 その言葉にロキはじめ他の神々もうんうんと頷く。

「だとしたら、二つ目。逆に前線部隊が補給を取りに来る。つまり、前線の位置を補給部隊近くまで下げる予定で布陣している」

「そっちの方が可能性としては有りそうだが、単細胞のアレスにそんな事を考える事が出来るか? 優秀な司令官が採用されたという情報も入手出来ておらんが・・?」

 タケがそれに異を唱えるが、一つ目よりは有りそうである。

 

 そしてオッタルもフィンに問いかける。

「前線をそこまで下げたとして、ラキア側は何か得があるのか? 地形的にも何も変化はなかったと思うが?」

 フィンはニッコリ笑うと、タケが作った戦況地図上の補給部隊が居る所を指し示す。

「ここが補給部隊が居る所だ。そして我々が居るのは、此処。そしてラキア軍との戦闘場所、つまり前線がこの辺り。ところが前線がこの補給部隊の近くまで移動すると、こうなる」

 何もない平野を、前線を表す連合軍とラキア軍の駒が移動し、軍補給部隊の近くで停止した。

「つまり、我々の背後が平野になってしまう。我々、冒険者は馬を使わないが、ラキア軍には騎馬隊がいる。騎馬にとっては、平野は走りやすい地形だ、その機動力を存分に生かせる」

「つまり、騎馬隊がうちらの背後に回りこんで奇襲か、包囲攻撃をするっちゅうことか?」

 納得したロキ。

 

「それと、我々の補給部隊も狙うだろう。だから僕たちとしては─」

 そう言うとフィンは更に駒を動かし、前線をラキア補給部隊の向こう(ラキア)側まで移動させた。

「─いっそのこと、更にラキア軍を押し込んで、敵の補給物資をさっさと奪い取ってしまおう。そうすればラキア軍は継戦能力は無くなるので、撤退せざるを得ない」

 フィンの勝利予告宣言に、勝ったも同然と喜ぶガネーシャ。だが、フィンと付き合いが長いロキとオッタルは厳しい顔のままだ。戦場も計画通りには進まないと知っているタケも無表情のままである。

「で、お前は何を心配しているのだ? 話せ」

「親指がね、疼くんだ。今までに無い程の疼きかたでね」

 

─フィンの親指が疼くのは、危険を知らせる為─

 

 有名な話である。そして過去にないほどの疼き方。

「だから不安要素を取り除くためにも、さっさと進軍して終わらせてしまおう」

 

 

********

 

 

「進軍速度を上げるのは良いとして、ラキア軍の情報が欲しい。部隊長、出来ればもっと上の階級の者を捕虜にしたい。出来るかい、アイズ?」

「造作もない。朝の内に捕まえておく」

 此処はロキ・ファミリアの天幕。幹部がロキを中心にして会議をしている。連合軍の会議で、進軍速度を上げて、速攻で戦争を終わらせる事になったが、実はフィンはまだ不安なのだ。それでラキア軍が何を計画しているか、捕虜をとって尋問することにしたのだ。そのため、最も身軽なアイズに指示が下った。もちろん、これはファミリア独断での行動だ。

「ヘスティア・ファミリアからポッター君に来てもらって、尋問に立ち会ってもらおう。ラウル、すまないけど、連絡お願いできるかい?」

「大丈夫っす、今から行って来るっすよ」

 ラウルが素早く天幕を出ると走り去った。

 

 そしてロキがニヤニヤしながら、、フィンに小声で問いかける。

「ハリーはん、偵察に尋問に大活躍やな~。おまけにマジックバッグや、魔法薬瓶の作成も出来るときとる。入団、承知しとけばよかった~と思っとるんちゃうか?」

 つい先日に購入したばかりのマジックバックと魔法薬瓶、今まで存在もしなかったアイテムである。リリルカは仕入れ先が別にあるような口ぶりだったが、ハリーが所属するファミリアが売り込みに来ていた。ハリーの事情を知らないならまだしも、知っていれば、真相はバレバレであった。

 苦笑しながらもフィンは、そんなことはないと、答える。

「ポッター君は冷静な性格だからね。別のファミリアであっても友好関係を築くことは難しい事じゃない。こちらが友好的に接すれば良いだけだからね。であれば、特に問題はないと思うよ」

 入団拒否の理由を、ハリーは冷静に受け止めていたことから、フィンはそう判断していた。だが、フィンが残念がるのを期待していたロキは、面白くなさそうな顔になるのだった。

「じゃあ、明日に備えて、各自解散して休息すること」

 不安が有るにしろ、冒険者は体が資本。眠れるときに眠っておくのも大事な仕事なのだ。

 

 

********

 

 

 そして翌朝。

「では行ってくる」

 そう言うとアイズは、ひょいと、敵部隊の上に文字通り跳び乗った。すぐさま敵兵の肩から肩へ、兜から兜へと走り、見る間に連隊長の所まで辿り着いた。見ていたティオナはぼやく。

「あんな器用な事、出来るのはアイズぐらいよねぇ・・。私だったら、全員吹っ飛ばしていく方法にするわ」

 そういっている間にも、アイズが連隊長の頭を蹴り飛ばして気絶させた。意識を失い、馬から崩れ落ちる連隊長を、アイズは素早く抱え上げて肩へと担ぐ。そして行きと同じように、敵部隊の上を走って帰ってきた。

「じゃあ、フィンの所に届けてくる」

 軽いジョギングから帰ってきたような軽い口調で軽く言うアイズ。連隊長を取り戻すべく、ラキア兵が必死で追撃をかけてくるが、それを待ち受けるのはティオナである

「じゃあ、私は、あの部隊、全滅させとくから、伝えといてねー」

 同じく、軽い口調で言うティオナ。そしてウルガを構えなおす。

「じゃあ、あんまり怪我させないようにするけど、まあ、そっちから攻めて来たんだから、ある程度の怪我は仕方がないと我慢してよねぇ~」

 そしてティオナをはじめとするロキ・ファミリアの蹂躙が始まった。

 

 

********

 

 

 ロキ・ファミリア天幕。連隊長を肩に担いだアイズが入ってきた。既に役者は揃っている。

「早いね」

 苦笑するフィン。午前のうちにと言ったが、まだ七時ぐらいだ

「チャメシ・インシデントだ、造作も無い」

 実際、アイズにとっては、ちょっと軽い運動をしたうちにも入らない。地面に連隊長を降ろすと、ロープで手早く縛りあげる。

「で、ポッター君、この真実薬を数滴、水に溶いて飲ませれば、どんな質問にも正直に答えるようになるわけだね? ちょっと効果を確かめたいんだけど」

 ハリーは肩をすくめた。

「ミアハ様から頂いた貴重な薬なので、慎重に大事に使うことをお勧めしますよ」

 ハリーが見守る中、ミアハが一人で作成した魔法薬なので、ミアハから貰ったというのは嘘ではない。出来上がったのは一瓶だけだったので、貴重なのも嘘ではない。

 ちなみにミアハは他にも色々と同時進行で魔法薬の作成に挑戦していた。具体的には、ポリジュース薬や、魅惑万能薬等々、六年修了時には作れるようになると、スラグホーンが言っていた魔法薬である。そう既に、ミアハの魔法薬に関しての腕前はそこまで進んでいるのだ。神の力を封印しているとはいえ、さすがミアハ、司る権能が医療(薬)というのは伊達ではなかった。

 

「では、ラウルに飲んでみてもらおうと思っていたが止めておこう」

 それを聞いてラウルはほっとする。誰だって黙っていたいような秘密がある。それに痛くも無い腹は探られたくないものだ。

 ハリーは、真実薬を数滴、ティーカップに垂らして掻き混ぜた。その間にアイズによって、連隊長は椅子に身動きできない様に縛り付けられる。ハリーは連隊長の口を開くと、その中にゆっくりと薬を注いでいく。一杯すべて飲み干すと、尋問が始まった。

 名前、所属、主神の名前、主神をどう思っているか、今回のラキア侵攻の目的は、計画を立てたのは誰か、どんな作戦を考えているのか、補給部隊がここまで後ろなのは何故か

 

 そして分かったのは、『いや、それは無茶だろ』と言いたいラキアの作戦であった。

 

 ~ラキアの補給部隊を囮にして、連合軍をおびき寄せる。

 ~補給物資を放置して、ラキア軍は退却する。

 ~オラリオ軍が、補給物資の接収のために進軍を停止する。

 ~その隙をついてラキア騎兵部隊が、オラリオ軍背面に回り包囲する。

 ~補給物資は、実は火薬も仕込んだ容易に燃える可燃物なので、火矢で爆破炎上させる。

 ~混乱している連合軍を周囲から一斉攻撃。

 ~大ダメージを与えたら、一端、撤収。

 ~その日の夜、夜襲をかけて混乱させる。

 

 ~一方、ラキアと手を組んでいるファミリアがオラリオで反乱を起こす。

 ~反乱ファミリア、ギルドを乗っ取りオラリオを支配する。

 ~オラリオという拠点がなければ、連合軍は補給できずに時間と共に壊滅する。

 ~そのあとは、ラキアがオラリオも支配する。

 

 つまり、ラキア全軍が陽動部隊。反乱ファミリアが活動を容易にするため、オラリオの主戦力をオラリオから引き離すための罠だったのである。

 

「ロキ? これは本当かい?」

 話された作戦を聞いて、尋ねるフィン。こんな穴だらけの作戦を実行しようとは、何考えてるんだろうと呆れ返ってしまった。穴だらけで、どこから間違いを指摘するべきか分からないぐらいだ。一緒に聞いていたロキも頭が痛いのか、眉間を揉んでいる。

「残念ながら、全部本当の事やな。っちゅうかなぁ、本当の事だと思っとるっつーやつやな」

 連合軍は、ロキ、フレイヤ、ガネーシャを中心に、戦闘ができるファミリアのほとんどで構成されている。つまり高い戦力を保持している。

 連合軍に参加せずオラリオに居るのは、人数が少ない中小零細ファミリア。当然所属している冒険者のレベルも低く、戦力として数えられない。

 つまり連合軍がオラリオに戻れば、反乱はあっさりと鎮圧できるのだ。補給うんぬんの話どころではない。それにいざとなったら、メレンで補給はできるのだ。

「アイズ、念のために、こいつと同格の捕虜を、もう一人捕まえてきてくれないか」

「分かった、しばし待て」

 フィンの指示を受けてアイズが再び出陣した。そこでロキがはたと顔を上げる。

「そういや、イシュタルん所は参加しとらんな」

 

 

そして二人目の捕虜が喋った作戦内容は一人目と同じであった。

 




ギルドを乗っ取る
「え、ウラヌス様の代わりに主神様が御祈祷を!?」

補足
ダムセルフライ
命名は例によってヘスティア。

ランクアップする要因が無い
 オラリオ外部の強力なモンスターと闘う方法として、黒龍にいきなり挑む。メレンから流出した水棲モンスターに水中戦を挑む。あとテルスキュラの様に眷属同士で闘わせる等があります。どの方法も大量の死人が出ます。

冒険者は馬を使わない
荷物を運ぶときは別ですが、レベルが高い冒険者は、馬に乗るより自分が走ったほうが早いらしいのです。原作において、誘拐されたヘスティアを追いかけるベルとアイズは、自力で走りました。

六年修了時には作れるようになるとスラグホーンが言っていた魔法薬
原作『秘密のプリンス』最初の魔法薬学の授業時の言葉。おそらくスラグホーンが言いたい事は
『六年修了時には(もし材料と作成方法を知っていれば)作れる(技術を習得している)ようになる』だと思います。でないと危険な薬が大量に出回る危険性がありますので。
この話ではわざと曲解して、『六年修了時には(材料と作成方法を授業で教えられて、)作れる(技術を習得している)ようになる』としています。

真実薬
飲んだ人に質問すると正直に答えてくれる魔法薬。要するに自白剤。もちろんオラリオにも自白剤は有る。
神に嘘は通じないが、黙秘は通じる。しかし、この薬を飲ませると黙秘もできない。


次回『蠢く混沌』

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