ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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やや短めです


ギルド突入

 日が昇り、ギルドからラキア連合軍へ使者を送り出した後、救援が来るまでの間。ギルドもただ手をこまねいていたわけではない。やらねばならぬことは色々とあった。

 まずは住民と神々の避難。謎のテイマー集団やテイム・モンスターの情報の整理と対策。

 モンスターがいるのは、ダイダロス通りとギルドの周辺。その地区から優先的に、住民を避難させる。それと同時にバリケードを作成し、テイマー集団やモンスターが、ギルド周辺から移動できない様に閉じ込める。どちらもギルド職員とガネーシャ・ファミリアが主導になり、あとはオラリオに残っているファミリアが、手伝いをする形で作業が進んでいく。

 ラキア軍襲来がなければ、各ファミリアの主戦力がオラリオに居るので、さっさとテイマー集団を討伐し、このようにギルドを占拠されることも無かったはずである。歯噛みしながら作業を続ける職員と冒険者だった。

 同時に神々とその護衛もバベルに集合し、臨時の神会が始まる。とは言っても、碌な情報がないので、会場で駄弁ったりするぐらいしかすることがない。

 イシュタルなど一部の神の姿が見えないが、眷属のレベルが高く、ちょっとやそっとでは、テイマー集団に負ける心配は不要であると判断したのだろう。さもなければ、目立つバベルに立てこもるよりは、他の場所で隠れていた方が良いと判断したのだろう。そういうわけで気にする者は誰も居なかった。

 

 

 そして正午が過ぎるが、テイマー集団は、幸いにもギルドに立て籠ったまま静かにしている。現状のままで静観していれば、これ以上の騒動は起きないのではと、ギルド職員たちが楽観的な考えになる。そんな時にオラリオ待望の救援が帰ってきた。

 とはいえ全員ではない。猛者オッタル、勇者フィン、拳姫アイズの三人だけである。驚いたことにドラゴン・スレイヤーが操る箒に乗って、先行して帰ってきたのだ。最強戦力の雄姿を見せつけるかのように、オラリオ上空を箒でぐるりと一周した後、バベルへと着陸する。そうそうたるメンバーの登場に、バベルに置かれたギルド仮本部は大いに沸いた。謎の集団の鎮圧は時間の問題と考え、落ち着き安心する人々。

 そんな中、ハリーとベルは、ヘスティアとミコトと合流し、互いの無事を喜ぶのだった。

 

 バベルにつくや否や、フィンは早速、ギルド仮本部に入り、まとめられた情報に目を通し、今オラリオ上空から偵察した情報とすり合わせ、整理に取り掛かる。同時に、ヘルメス・ファミリアの団長アスフィを呼び出した。しばらくして現れたアスフィにフィンが問いかける。

「爆発物の対処方法だが、安全な場所で(接近される前に)誘爆させる以外に良い方法は無いかい?」

 ダンジョン24階層での出来事から、アスフィが爆薬を使用することと、闇派閥のメンバーが自爆攻撃を仕掛けてくることは、お互い承知の上の事だった。眼鏡をくいっと上げると、アスフィは冷静に答える。

「無いですね。爆発物の主な材料となる火薬は、濡れると爆発しません。しかし、闇派閥が使っている爆発物の作成者もそれを承知の上で、対策として当然、防水処理をしているはずです。でないと水をかけるだけで自爆攻撃を防げますからね」

 まあ、そうだろうねと、それに頷くフィン。答えは予想していたようだ。

「攻撃は最大の防御と言うし、さっさと誘爆させるしかないね。もちろんヘルメス・ファミリアも闇派閥とモンスターの討伐に協力してくれるんだよね」

 アスフィ達の()()()、アイズ経由で把握しているフィンは確認する。『協力しないとレベル詐称の事をギルドに暴露する』という言葉の裏を、きっちり読んだアスフィは、黙って頷く。

 

 

 一方、フィンが情報を把握し、事態への対処方法を纏めている間に、他の二人、アイズとオッタルもサボっていた訳ではない。モンスターの駆逐に乗り出していた。

 二人を中心にして、ギルドに突入しようという意見も最初はあったのだ。しかし、ギルドに立てこもる集団に突撃をかけた場合、高レベル冒険者がたった二人では、取り逃がすモンスターが出るかもしれない。せめて第二級冒険者の数をそろえて包囲網を整えてから突入するべきだ。ギルド内部で大人しくしているのに、わざわざ藪蛇をつつくこともあるまい。これらの判断の元、救援部隊が戻り、人数がそろうまでギルド奪還は後回しになった。

 そのため、アイズとオッタルは、テイマーの制御下から逃れたのか、街路を彷徨う(ワンダリング)モンスターの駆除を先に始める。住民の避難や、ギルド封鎖のバリケード作成作業をするには、街路に居るモンスターが邪魔なのだ。

 そしてハリーはモンスターの所までアイズ達を空輸する係をしている。オッタル、アイズ二人ともステイタスは高いので、屋根の上を移動することは問題なくできる。だが、屋根から屋根への移動は面倒なのだと二人に主張されれば、やらざるを得ない。だが、箒に乗りこむ時に、オッタルの口角が、楽し気にわずかばかり上がっているのを、ハリーは見つけていた。それにアイズの『ふんふんふふふん』という鼻歌を確かに聞いた。要するに二人とも、箒での飛行を楽しんでいるのだ。もちろん、二人とも、そんなことは絶対に認めなかったが。

 そしてガネーシャ・ファミリアをはじめとする冒険者たちは、モンスターをギルド地区に封じ込めるための、バリケード作成を継続する。

 

 そうしてオッタルとアイズが、ワンダリング・モンスターを駆逐し終えた頃に、救援部隊の本体が到着した。喜びに沸く、ギルド職員、冒険者たち、そして残っている住民達。

 

 

 住民たちの避難は終わり

 メレンからの武器、食料などの補給物資の輸送も段取りが済み

 ギルド周辺の、モンスター封じ込めのバリケードも、ほぼ完成した

 そして、今、充分な戦力がオラリオに戻ってきた。

 

 ギルドのモンスターも討伐して、ようやく大混乱に終わりが来る。そう皆が安堵する

 

 

********

 

 

 ガレスの指揮の元、帰還したメンバーは、オラリオに戻ったばかりだが、補給をするとすぐにギルド突入準備を整える。さすが第一級、第二級冒険者。スタミナも高く、頼りになると周囲に思わせる。

 フィンは、早速突入部隊を発表する。基本的に各ファミリアごとにレベル4、または5の冒険者がリーダーとなり、レベル3以下の者がサポートとしてリーダーにつく形でパーティを編成。戦闘は1パーティで1モンスターを相手取り、手ごわい相手には2パーティで挑む。

 そして黒フードや、強化種と思われるミノタウロス等、情報にあった手ごわい相手はレベル6以上の者だけで構成したパーティが相手をする。

 そして全体を二つに分け、正面入り口と、裏口とに配置してそれぞれ突入する。ちなみにオッタルとガレスのコンビと、ガネーシャ・ファミリアのパーティが裏口からの突入である。

 

 モンスターも掃討されてすっかり人通りがない市街を、討伐隊は移動する。ギルド到着前にガレスたち裏口突入部隊は分離し、裏側へと回る。突入準備は整った。

 

 そしてフィンが突入指示を出す前に、大音響を立てて、ギルドが大爆発した。城壁に反響し、オラリオ市街に、木霊が轟く。バベルに匹敵する高さまで立ち上る巨大な火柱、周囲の建物やバリケードを藁くずの様に吹き倒す凄まじい強力な爆風。あまりの強風に体が軽い冒険者の何人かは、吹き飛ばされている。そうでない者も、何かにしがみ付いて突風に耐えるのに精いっぱいだ。

 そんな中、ラウルのサポーターとして参加していたベル達は、ハリーのプロテゴでどうにか耐えていた。しかし爆風と共に吹き付ける煙や粉塵で、周囲の様子が分からなくなっている。

「さすがっすよ、ハリー君! 展開が早いっすね!」

「何とか僕たちは無事だけど、他の人たちは」

「団長たちは大丈夫だろうけど・・」

 ハリーの心配に猫人(キャットピープル)のアナキティが同意する。プロテゴの中に入っているのは、たまたま隣り合っていたラウルとアナキティの2パーティだけなのである。

「全員一時退却! 煙が無い所まで下がれ!」

 フィンの声が全員に警戒を促す。だが、少しばかり遅かった。

 

 爆風と粉塵に紛れて、様々なモンスターがこちらに突撃していた。その中には報告になかった巨大なモンスターも何匹か含まれている。瓦礫を吹き飛ばし、煙をふりはらいながら出てきたのは、高さ3Mに達しそうな巨大な灰色の牡牛。だが只の巨大な牡牛ではなく、背中からその巨体に見合ったサイズの女性の上半身が生えている。牡牛と女性型部分を合わせると身長6M超ほどだろうか。その巨体に相応しい地響きを立てながら突進してくる。穢れた精霊(巨大モンスター)。闇派閥とイシュタルが、切り札として準備していたモンスターだ。

 

 穢れた精霊は、その一体だけではない。巨大な緑の化け物蟹も現れた。全高は2M程度で先程の牛よりも小さいが、逆に幅が6M程もある。そしてぐるぐると振り回している長さ2M幅が1Mは有る巨大な二つの鋏。人間どころかミノタウロスでも、楽々と真っ二つにできる巨大さだ。牡牛型と同様に背中に女性の上半身がついている。爆発で破壊された瓦礫を、わしゃわしゃと八本の足で踏みつけ、こちらに突進してくるその姿は、悪夢としか言いようがなかった。

 

 これら報告になかった初見の巨大モンスターの突撃に、煙で視界がふさがれた状態ということもあり、冒険者たちの隊列はぐしゃぐしゃにかき乱される。

 

 そして追撃のモンスターが現れる。

 花の蛇型モンスターや、報告に会った強化種と思しきモンスター達。鎧を着込んだモンスターが、ガーゴイルが、黒い大剣をもったミノタウロスが、槍を持ったアラクネが、瓦礫を乗り越え突撃してきたのだ。しかもそのうちの何体かは、巨大モンスター(穢れた精霊)の黒獅子や黄色い山羊の巨大な背中に乗って、地響きのような足音共に襲い掛かってくる。その突撃先は、フィン達レベル6の集団。

 爆発と第一陣のモンスターに動揺した他パーティのフォローをしようとしていたフィンのパーティ。穢れた精霊の突撃に気付き、迎撃に動き出すも、わずかに初動が遅れる。その間に巨大モンスターはティオナ達に激突し、吹き飛ばしていた。そしてミノタウロスが山羊型モンスターの背中からフィンに向かってとびかかる。

「私の団長にナニする気だぁっ!」

 ティオネがククリナイフを叩き付ける。だが、ミノタウロスは、その攻撃を黒大剣で弾き返し、突進の勢いに任せてフィンに肉薄する。体勢を崩しながらも槍の間合いを突破し、左腕で殴りかかるミノタウロス。勢いは有るが破れかぶれのその攻撃に、フィンは落ち着いて手を添えて、体を反転させつつ、背負い投げにもっていく。だが、その攻防の最中にミノタウロスとフィンの体が、一瞬のうちに吸い込まれるように縮んで点となり、姿を消す。

 

「す、姿くらまし!?」

 その光景を見たハリーは仰天とする。魔法界での移動方法である姿くらましと、全く同じ現象であった。ミノタウロスがそんなことができるとは思えないが、事実、フィン諸共に姿を消している。気が付くと、強化種と思しき武装したモンスター達は、すべて姿を消していた。残っているのは、穢れた精霊、花蛇などのモンスター集団である。

「え、ハリー君、今のが何なのか、分かるっすか? 団長どうなったんすか?」

 うろたえるラウル。呆然としながらもハリーは答える。

「移動魔法・・何処に行ったかは分からない・・」

 そこにベートの怒鳴り声が響く。

「あー、うっとうしい! 手前ら雑魚共は邪魔なんだよっ! 下がってろ!」

 だが、こんな風に言われて、大人しく黙って下がるようでは冒険者ではない。反発しモンスターと戦おうとするのだった。だが、落ち着いて考えれば、冒険者たちも思い出せたはずだ。モンスターの突撃があるまでは、フィンも同じく一時退却と指示していたことを。

 そして指揮官(フィン)不在のまま戦闘の場は無秩序に広がり、事態は混迷の度合いを深めるのだった。

 

 

******

 

 

「ふはははははは! やるな、あのモンスターども! 穢れた精霊を育てるのに、ギルドの魔石倉庫(魔石)を利用するだなんて、いやまったく! 皮肉が聞いているじゃないか! しかも全部で、一、二・・。全部で六体か! サミラ! アイシャ! 分かってるだろうね! 手筈通りにやるんだよ!」

「まかせてくださいよぉぉぉ!」

 イシュタルの言葉に威勢よく叫ぶサミラ。すでに団長サミラの指示のもと、イシュタルの眷属は、オッタル殲滅の手順を整えていた。今は、彼女たちは、ホーム(高層建築)のバルコニーから、ギルド本部、オラリオ全体を偵察し、その標的(オッタル)がどこにいるか調べているのだ。打倒フレイヤ・ファミリアに燃えるイシュタルにとっては、このオラリオの騒乱は、まさにうってつけの状況であった。そしてこの混乱を生み出した原因に感謝していた。もちろんイシュタルなりの感謝であり、最終的には、寝首をかくこと等を考えていたが。

「オッタルさえ潰せば、後は雑魚ばかりだ。ようやく、望みがかなうとなると、感慨深いものがあるねぇ・・」

 にやにやと笑みをこぼしながらイシュタルは悦に入るのだった。

 

 




補足
穢れた精霊
ソードオラトリオでの言及が微妙だが、この話では灰色の牡牛とその同種は穢れた精霊とする
イシュタルがらみ?なので、多分おそらく、牡牛はギルガメッシュがらみの話が元ネタと推測される。
元ネタ違いだけれど、数を増やすために黄道十二宮の生物から追加のモンスターを選抜。従って迷宮に居ない山羊、獅子などもベースになっている。


瞬間移動
魔法界には、一般的な瞬間移動方法は三つある。一つは姿くらまし。一つは煙突飛行ネットワーク。最後の一つはポートキー。ポートキーにするものは何でもよい。つまりモンスター(ミノタウロス)でもよい。そしてポートキーが発動する時に、ポートキーに(ミノタウロスが)触っていれば移動することができる。
炎のゴブレット:墓場からホグワーツ敷地内への帰還、不死鳥の騎士団:魔法省からホグワーツ校長室への移動、などの原作での様子を見ると、ポートキーは短時間で作成できるようだ。
 姿現しができないはずのホグワーツ敷地内クィディッチ競技場への移動ができるなど、セキュリティ全部無視できるっぽいヤバい移動性能を示す。こんなヤバい級アイテムの作成ノウハウは、機密情報扱いでよいはずなのだが・・ジェームズは何で作れるんだ?



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