いつもの着流しの上に皮鎧と皮の籠手などで防御を固めたヴェルフは、好調にラキア兵士を叩き飛ばしていた。レベル2になった彼の膂力に、太刀打ちできるラキア兵士は居なかったのだ。近くで戦っているリリルカの様子を見る余裕さえあった。
リリルカは、何時もの救急箱で戦わず、以前練習した槍を使って、ラキア兵を殴り飛ばしていた。リリルカもレベルが上がって力が強化されたことで、槍を上手く扱えるようになったのだ。正確に言うと、『右手一本で上手く槍を扱える力を手に入れたから』である。では左手は何をしているのか。救急箱マーク2を持っている。
ヴェルフは以前、リリルカが槍を使った時のことを思い出す。あの時は、槍で突いたら、踏ん張りがきかずに、その反動で後ろにひっくり返っていたなぁと懐かしむ。リリすけがもっと重ければと叫んだけど、今じゃぁ救急箱持ってるだけで、俺よりも重いもんなぁ~とぼやくヴェルフ。
事実そのおかげで、リリルカは踏ん張りも効くようになって、槍で突いたら相手が吹き飛ぶようになっていた。もしリリルカの槍の間合いをかいくぐって接近されても、救急箱をぶつければ、重量差で相手は吹き飛んでいく。
リリルカは、レベルアップによって力を身に着けた。救急箱によって重さを手に入れた。そうであればスリをしたり、手際よくモンスターの解体をするなど、元々器用なリリルカである。槍を片手で扱い、
そんな、ヴェルフに、少し派手な飾りを鎧につけた男が、切りかかってくる。
「お主、似た顔を見たことがある。はっきり思い出せんが相手をしよう」
それを聞いたヴェルフは、似た顔・・そういえば親父がラキアに居た、そちら関係かと冷や汗を流す。ばれて困るわけではないが、負けるわけにもいかない。大刀をふるい相手の攻撃を防ぐが、素早く的確な反撃を捌くのに精いっぱい。そのうえ相手の一撃一撃が重く、レベル2のヴェルフが力負けしそうになる。
「てめぇっ! この力の強さ! レベル2か!」
ヴェルフは叫ぶが、その間にも相手の剣に肩当を切り飛ばされる。
「いかにも。『旋風剣』のバイヤーと言われている」
バイヤーは余裕綽々でヴェルフに応えつつ、今度は、反対側の肩当を斬り飛ばした。さすがにこれはまずいとヴェルフは焦る。彼は一般ラキア兵士を叩き飛ばしていたが、それはレベル2というステイタスによるものが結構大きい。本来彼は『戦う鍛冶師』と自称しているように、戦うけれど、もともとの根っこの部分は鍛冶師である。レベルが同じ相手、しかも対人戦闘の
「そらそらそらそら!」
しかもバイヤーは二つ名通りに旋風のように剣をひらめかせて、高速で打ち込んでくる。ヴェルフは勝てないと判断する。そう判断したヴェルフの行動は素早かった。躊躇なく右腰に佩いた剣を左手で引っこ抜く。やや細身で長さ60Cほどの片刃剣。
「二刀流か? 付け焼刃では、使いこなせんぞ!」
バイヤーがそう言う。
「まあ、そうだな。卑怯というかもしれんが、魔剣を使わせてもらおう」
ヴェルフが言い返すが、バイヤーは嘲笑する。
「接近していたら、魔剣は使いにくいぞ。振り降ろされる前に剣で弾く、逸らす、避ける。対処の仕方はいくらでもある」
「そうなんだが、こいつは俺が作ったちょっと変わり種でな、まあ御託はいいとしていくぞ!」
そして守勢ではなく攻勢に張り替え、二刀で斬りかかるヴェルフ。だが、慣れない二刀流なのか、バイヤーに余裕で避けられ、剣で防がれる。だが、それも、片刃剣を防ぐまでだった。
「なんだ、それは!?」
苦痛の色がこぼれるバイヤー。片刃剣を自分の剣で受けた瞬間、腕に激痛が走ったのだ。
「変わり種の魔剣といったはずだぜ?」
ニヤリと笑うヴェルフが持つ片刃剣は、パリパリと電撃を空に放っていた。
以前造り上げた、火口代わりの弱い炎を噴き出すナイフ。いわば火口の魔剣。それを発展させて、通常サイズかつ電撃を放つ魔剣を、新しく作り上げたのだ。電撃は刀身に纏わりつき、触れたモノに対して、手痛い電撃として叩き込まれる。触れるだけで電撃が流れ込むのであるから、敵からすると厄介この上ない武器である。しかも一度に放出する魔力はごく少量。すなわち魔剣が崩れ去るまでの使用回数が、飛躍的に伸びているのだ。
ヴェルフは再び、魔剣を使用して電撃を刀身にまとわせる。そこへバイヤーが切り込んできた。魔剣が相手では守勢に回るのは不利と判断したのだろう。矢継ぎ早に斬撃を打ち込みヴェルフを防戦一方に追い込む。その際も魔剣で防御されない様に、魔剣は回避し、素早く動き回る。
ヴェルフよりも剣術に優れているバイヤーは、その攻防の間、魔剣の攻撃を受けることは無かった。だが、追い込まれている自覚はあるようだ。一息入れるために再度、距離をとった。
「なかなか厄介な武器だが使い手の剣術がいまいちのようだな。二刀流の訓練をしていないのが、ばればれである。それでは俺には勝てんよ」
今の攻防の間にヴェルフの隙でも見つけたのだろうか。余裕の表情になっているバイヤー。
「今度は二刀流の訓練もしておくことっ」
喋っている途中で、バイヤーは白目をむくと虚ろな表情になり、そのまま崩れ落ちた。そのバイヤーの背後に居たのはリリルカ。右手の槍で思い切りバイヤーの後頭部をぶっ叩いたようだ。
「何を遊んでいるんですか、大男は? 敵はまだまだ大勢いるんですから、一人に拘らずに、どんどん倒してもらわないと困りますよ」
「あっはい」
リリルカはサポーター歴が長かった。したがって武人の心意気とか、騎士道精神とか、戦士の矜持とかいうものに対しては、冷淡な態度しか取れなかった。そんなものが私を助けてくれましたか? というわけだ。
こうして二人は再度ラキア兵との戦いに戻った。
しばらくすると、各ファミリア連合軍に退却の指示がでる。リリルカとヴェルフもそれに従い、小走りに退却する。先頭を走るのは神々の集団と、その周囲を護衛するフレイヤ・ファミリア。それに各ファミリアが続く。最後尾で殿を務めるのは、ロキ・ファミリア。
連合軍が小走りに走り続けると、ラキア軍もそれを追ってくる。
お互い走り続けるうちに連合軍、ラキア軍とも、横に広げていた戦列が一か所中央にまとまってくる。
そしてさらに走るうちに、
予めリヴェリアと、レフィーヤの二人が詠唱をし、待ち構えていたポイントに到達したのだ。連合軍が、ロキ・ファミリアが誇る最大火力二人の脇を駆け抜けていく。そして最後に殿のロキ・ファミリアが二人の後ろに走り込んだ。
これでリヴェリアと、レフィーヤの二人の前にはラキア軍しかいない。
威力よりも、効果範囲を広くとることに重点を置くように調整した冷凍呪文が、二連続でラキア軍へと解き放たれた。
本来であれば、怪物際の時の様に、ある程度の範囲であれば、敵を氷漬けにできるだけの威力がある。だが横一列の状態からするとだいぶん密集しているとはいえ、ラキア軍はまだまだ広範囲に広がっている。ラキア全軍を効果範囲に入れるほどにすると、どうしても威力が低下するのだ。それをカバーするのが二連撃である。
この攻撃によって、ラキア軍はほぼ全軍が魔法の効果範囲に収まった。周辺温度が下がるどころか、装備している衣類の温度も下がり、体温が一気に低下し、低体温症となり動けなくなるラキア兵。それどころか、凍傷になる者までいる。こうなれば、戦闘どうこう言っている場合ではない。戦意を喪失して個々に投降をする者が相次ぎ、指揮官も降伏を申し出たのだった。
ここにラキア軍の侵攻はついえたのだった。
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咆哮を終えたミノタウロスが突撃をかける。その先にいるのは、猫人のアキ。ミノタウロスは、残された右眼でアキを見据え、黒大剣を振りかぶる。その進路に無謀にも立ち塞がったのはラウル。突撃を邪魔しようと、ミノタウロスのスピードに合わせて、ほぼ完璧なタイミングで、横薙ぎに剣を振りぬいた。
だが、ミノタウロスは、突進を一瞬止めて再度ダッシュすることで、ラウルの斬撃をやり過ごす。そして振り降ろした黒大剣の柄で、ラウルを横へと殴り飛ばす。ミノタウロスは、半ば振り下ろした黒大剣の切っ先を、素早くアキに向けると、突撃の勢いのまま全力で突き込んだ。
もちろんアキとて、ただ大人しくやられる道理は無い。ラウルの必死の攻撃により、数瞬とはいえ貴重な時間を稼いだのだ。その時間を無駄にすることなく、猫人ならではの柔軟な動きで身をかわす。だが、予想以上にミノタウロスの攻撃が早い。ぎりぎりで黒大剣を避けられないと分かり、衝撃に身構えるアキ。だがしかし
「
超高速でハリーの防御魔法が上空から展開される。
黒大剣の一撃と、突進してきたミノタウロスの体当たりで
「
上空から闇派閥やモンスター達に魔法が降り注ぐ。
「
余裕を見せるためか、わざわざ有言呪文を使ってみせるヴォルデモート。モンスター達の頭上に張られた
スネイプが飛んだのと同じ、空を飛ぶ技と悟るハリー。もともとあの技をスネイプに教えたのはヴォルデモートなのだ。
だが今ハリーとヴォルデモートがいるのは空中、ハリーの最大の強みは飛ぶことなのである。『今世紀最年少シーカー』といわれたハリーの才能は伊達ではない。この一点においては、お辞儀でさえ太刀打ちできないのだ。それでも、対等になったわけではない。戦闘ではヴォルデモートがまだまだ格上。空中戦に引き込んだことで、その差を縮めただけに過ぎないのだ。
ハリーは気持ちを引き締め、再び攻撃を仕掛ける。
「
ヴォルデモートは、杖の一振りで、それを無効化する。さらに、空中に幾つもの短剣が現れ、宙を飛んでハリーに襲い掛かる。だが、所詮は空中でのこと。ハリーは箒で素早く上昇し、それを躱す。ヴォルデモートもハリーを追い、二人はぐんぐんと高空へと上昇していく。
オラリオ市街を眼下に望み、ハリーの攻撃が始まる。
「
ハリーの周囲に十数羽の茶色の鳥が現れる。
「
ハリーが杖でヴォルデモートを指し示すと、茶色の鳥が羽ばたき、勢いよくヴォルデモートに向かって、ミサイルの様に飛び掛かる。ヴォルデモートが防御のために杖を動かすより早く、ハリーは次の一手を進める。
「
ハリーの呪文で、鳥たちが次々と大爆発を起こす。ヴォルデモートの至近距離での爆発。熱風と煙と衝撃が襲い掛かり、よろめくヴォルデモート。
「
ハリーが最も信頼する呪文が紅の光線となり、ヴォルデモートに突き進む。だが、直撃する瞬間に、ヴォルデモートの姿が掻き消える。姿くらましだ。
何かが来る!
その直感に従い、ハリーは全力で左に回り込みつつ、急降下し回避行動をとる。そのおかげでか、蛇の形をした黒い炎は、ハリーを飲み込むことなく、ハリーの頭上を通り過ぎた。だがそれは囮。
「アバダケダブラ」
更に緑の閃光が、ヴォルデモートからハリーへと撃ち出される。だがハリーは箒から飛び降りて、それを回避する。落下するハリーの頭上で箒は放電し、消えていく。そして落下するハリーは手を伸ばし詠唱する。
「ファイアボルト!」
途端にハリーの手の中に新しい箒が現れる。ハリーはそれに跨ると再び上昇する。
こうしてハリーとヴォルデモートの空中戦はますます激しさを増していった。
********
一方、地上では、闇派閥&モンスターと、冒険者の戦いが再開されていた。アイズがモンスターにダメージを与えていたので、大部分の冒険者たちは有利に戦闘を進めていた。しかし、ミノタウロスだけは格が違った。片目片腕を失い、戦闘力は半分以下になっているはずだが、そのパワーと恐るべき執念でもって、暴れまわっているのだ。
これには、ラウル達、第二級冒険者達も攻めあぐねていた。何とか集団で取り囲み、相手取ろうとするが、ミノタウロスはそのパワーで、冒険者を打ち払い、囲みを破り、暴れまわるのだ。そして何故か執拗にアキを狙い続けている。
「狙われてるけど、アキ、なにかしたんすかっ?」
「何もしてないわよっ!」
間に合わせの治療をして戦線復帰したラウルが悲鳴をあげる。だがそんなことを言われてもアキも悲鳴を返すしかない。
ラウルもアキも知らないことであるが、このミノタウロスには前世の記憶がある。その記憶にあるのは、恐ろしい凶暴なドラゴンに追いかけられていたこと。必死で逃げていたが、猫人に魔法で突き飛ばされたこと。そのためドラゴンに踏みつぶされたこと。あの猫人が居なければ、死ぬことは無かったのに、という深い恨みが記憶にあるのだ。
この恨みを忘れぬために、ミノタウロスは、猫人の魔法の閃光からアステリオスと名乗っているのだ。そして坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというわけではないのだが、猫人とドラゴンすべてに憎しみを持っており、今、目の前にいる猫人アキを執拗に狙うのである。いわばとばっちりである。
そして、ついにミノタウロスの一撃がアキを捉える。吹き飛ばされ地面に叩きつけられるアキ。骨が折れたのか腕が変な方向に曲がっている。痛みで視界がチカチカと瞬く中、深呼吸をしながら何とか身を起こす。だが、そこで腕をとられ、再び痛みに声を上げる。だが、バシャバシャと何かをかける音がして、その痛みはたちまち消え去っていった。瞬いていた視界も元に戻っていく。
ポーションを誰かが使ったのだと悟り、元に戻った視界で見ると、白髪赤眼、顔面を蒼白にしたベル・クラネルが、ポーションをかけていた。
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──僕は雑魚だ──
そんな昏い思いに憑りつかれ、視界も思考も真っ暗に曇るベル。そんなベルの前に、猫人が転がり込んできた。ベルに自覚は無いが、冒険者としての経験が、瞬間的に様々な情報を突き合わせる。
アナキティ猫人メレン蛇花アマゾネス共闘ロキ・ファミリア重傷ポーションホルスター・・
ベルの身体が勝手に動き、ホルスターからポーションを取り出そうとする。自分の体が自分のもので無いような、現実感を喪失した状態で、ベルは自身の体の動きを見守る。
それは冒険者としての本能なのか、無意識なのか。怪我をしたら治療するという、何度も何度も繰り返し行ってきた行動を、なぞっているだけなのか。恐らく条件反射的に動いているのだろう。
無意識の内にベル・クラネルの身体は、ポーションでアキを治療しようと動いていた。それでベルの意思は、ああそうかと自覚した。
幼い頃にゴブリンに襲われた時、助けに現れた祖父の事。ミノタウロスに襲われた時に現れたアイズの事を思いだす。二人はベルにとってまさに英雄だった。そして英雄に憧れたことを思い出す。
──僕は雑魚だ──
──だけど、英雄の背中に追いつきたいと、英雄になりたいと思った、その思いは本物なんだ──
──だから、いつまでも、守られているわけには、いかないんだ──
今だに感覚が無い脚に、力と気合を入れて、しっかりと立つ。ふわふわとする地面を踏みしめ、アキに近寄る。何処か他人事のような感じがする自分の腕を操り、ポーションの蓋を取りはずすと、アキにザバザバとかけた。
ガチガチと音がするが、どこから聞こえるのかと思ったら、自分が震えて歯が鳴っている音だった。歯の根が合わない程、怖がって震えている。やっぱり自分は臆病者なんだなと、自嘲するベルである。
だが、精神的重圧で暗く狭くなっていた視界は、少しずつ晴れていく。それに伴い、まだぎこちなさが残るものの、体も動かせるようになってきた。
「大丈夫ですか、アキさん?」
そう問いかける程には、ベルは元に戻っていた。
「私は大丈夫だけど、あなた、顔色凄い悪いわよ? 怪我は?」
ベルの顔色を見ていたアキは心配する。だが、それにベルは落ち着いて答える。
「大丈夫です。もう守られてばかりじゃありませんよ」
そしてベルは、恐怖と緊張でこわばっている腕を無理矢理に動かし、ドラキチとヘスティア・ナイフを構える。
そこに傷だらけのミノタウロスが、転がるように飛び込んできた。アイズに重傷を負わされ、ラウルとアキのパーティと戦い、体中が傷だらけになり、黒大剣も手から離れて今では無手になっている。まさにミノタウロスも、それと戦ったラウル達も、お互い満身創痍になっている。
だが、その執念はいささかも衰えを見せず、ミノタウロスは血塗れの身体でアキを狙っていた。
「GAWAHAWA」
ミノタウロスが右手を伸ばす。それをベルはナイフで横へと打ち払う。と同時に
「ファイアボルト・マキシマ!!」
ベルの魔法が迎撃する。太い稲妻がミノタウロスの胸元を直撃し、勢いを止める。すかさず、ベルが間合いを詰めてドラキチで斬りかかる。ベルとミノタウロスの体格差から、ベルは接近戦を仕掛けるのが良いと判断したのだ。恐怖を飲み込み、二刀を使ってベルは戦いを挑んでいく。
「皆、ベル君が、頑張ってる間に回復っす! え? ポーションが切れてる!?」
残念ながら、ポーション類は使った瓶も、使っていない瓶も、ミノタウロスの攻撃を受け、割れてしまっていた。
「なら補給部隊から持ってくるっす。その間にアキのパーティは魔剣でベル君の援護、は接近戦してて無理だから、他のモンスターを攻撃っす! 僕とアキはベル君と一緒に戦うっす!」
アキはポーションである程度は回復しているが、ラウルはボロボロのままである。だが、指揮官が根性を見せないと行けない状況と、ラウルは気力を振り絞ることにしたのだ。
三人がかりでミノタウロスと戦闘を開始する。
とは言え、ラウルはボロボロである。ミノタウロスに殴り飛ばされ、治療も間に合わせにしか受けていない。ぶっちゃけた話、指揮官だからという、責任感と精神力だけで動いているのだ。当然動きが悪い。そのため避けそこねたミノタウロスの裏拳が体をかすめ、盛大に吹き飛ばされ頭を瓦礫にぶつけて気絶してしまった。治療するにもポーションが無い現状、戦線に復帰することは無理だった。
そしてアキ。先程のダメージは簡単に治療したものの、連戦が続いて体力が底をつきかけ限界に近かった。動きが悪い。なんとか戦えているが、このままでは二進も三進もいかなくなるだろう。
そしてベル。
戦闘開始直後から恐怖にとらわれて動けなかったのが逆に幸いし、体力気力すべて万全である。最初は身体がこわばっていたが、対峙したミノタウロスの迫力に、一瞬でそのこわばりも吹き飛んでいった。右手にドラキチ、左手にヘスティア・ナイフを持ち、二刀でもって接近戦を挑む。そして攻撃の合間に隙をついて魔法を使う。
「ファイアボルト・マキシマ!」
チャージされたファイアボルトがミノタウロスを直撃し、動きを一瞬止める。そこにベルが二刀で切りつける。浅手ではあるが確実にダメージを与えていた。
先程までのベルは、ファイアボルトを撃ちだす時に、腕を標的に向けて構えていた。だが、今のベルは、そんな構えを取らずに、ファイアボルトを撃ち出せるようになっていた。アキをポーションで治療した時に、何処か他人事のような感じがする自分の腕を操った経験から、
顔に直撃させて目くらましとして使ったり、左腕の傷跡に直撃させたり、チャージした状態で直撃させて動きを止めたりと、自由自在に
そうやって闘うベルたちの頭上で、爆発音が響く。
そして悲鳴と共にハリーが箒と共に落ちてきた。
地面に墜落するところだったが、ギリギリのところで制動が間に合い、減速に成功したが、かなりの勢いで衝突した。だが、衝撃のダメージが大きかったようだ。体中に裂傷が出来ており血だらけである。オマケに
そして続いてリザードマンが落ちてきた。こちらは、脚を下にして落下してきて盛大な衝突音を立てて着地した。そして優雅な動きで杖を構える。
そんな二人に周囲の視線が集中し、一時だが、戦いが停止する。ミノタウロスでさえ、モンスター達のボスが
「手応えが無いな・・」
シュルシュルという擦過音を出しながらヴォルデモートがハリーに喋る。
「俺様が合成したドラゴンを倒したのだから、魔法。武器。何か力を隠していると思ったのだが、そうでもないようだ・・力の出し惜しみをする
自分を納得させるための独り言のような口調で、ハリーに向かって話しかけるヴォルデモート。無意識の内に杖をゆらゆらと動かしている。
「俺様本体と何度も戦ったが、お前は生き延びた。異郷の地で、本来は分身体の一つの俺様が、このように決着をつけるとは、感慨深いものがあるな・・。興味深い関係であったが、これで終わりだ。さらばだ、ハリー・ポッター」
だが、その時、ハリーたちの横から叫び声が上がる
「ハリィィィィィィ!! これを使えぇぇ!!」
叫んだのは神ミアハ。ミアハは、ハリー目掛けて全力で何かを放り投げた。30M程離れた場所からハリー目掛けて、キラキラと青く輝く細長いものが飛んでいく。
ハリーとベルには、それがハリー印の魔法薬瓶だとわかった。
補足
バイヤー
原作には出てこない。
今世紀最年少シーカー
ヴォルデモートがホグワーツに入学したのは1938年。ハリーが入学したのは1991年。つまりヴォルデモート在学時代も含めて、ハリーが今世紀最年少シーカー。すなわち飛ぶことについては、ハリーはヴォルデモートよりも才能が有ると言える
猫人に対する恨み
『格上のモンスター』を参照。この時、リリルカは変身魔法で猫人に変装している。
次回『約束された勝利の──』
リド・リドル「アクシオでインターセプト! うーん、美味い、もう一杯!」