ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン   作:バステト

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遅くなりました・・


そして・・その後・・

 ギルドは奪還された。

 ヴォルデモートに爆破されたこともあり、建物は見事にボロボロになっていた。おまけに魔石倉庫に貯蔵されていた魔石は、モンスターに喰われ、一欠けらも残っていなかった。

 大損害である。

 ただし現金(ヴァリス)は運び出す時間が無かったのか、使う必要が無かったのかは不明だが、ほとんど手付かずで残っていた。現金さえあれば、ダンジョンから生還した冒険者から魔石を買い取ることができる。そうすれば魔石加工産業も停滞することなく動き続けることができる。

 ギルド、および産業界の関係者は安堵の息をつくのだった。

 

そして調査隊が二つ編成された。

一つは、闇派閥と戦闘から逃亡したモンスターの追跡部隊。

もう一つはダンジョン内部の状況を調査する部隊。

 

 

 追跡部隊は、ロキ・ファミリア主導で編成されるた。

 今回の騒動は、闇派閥がモンスターを引き連れて、ダイダロス通りから襲撃を仕掛けた事が発端である。このことは、アポロンをはじめとした幾人かの証人によって、明らかにされている。したがってダイダロス通りに闇派閥のアジト、もしくはそれに準じる物があることは間違いない。ダイダロス通りを虱潰しに調査する必要がある。

 だが、ダイダロス通りは『もう一つの迷宮』と言われる入り組んだ場所である。捜索は本来であれば、困難である。だが、逃走したモンスターがアジト迄の痕跡を残していれば、それを追跡してアジトに辿り着くことができる。

 そのためベート・ローガ主導でロキ・ファミリアのメンバーが追跡をしたのである。

 

「臭う、臭うぜ、モンスターの臭いがよぉ~!」

 進みながらベートは叫ぶ。レベル6になっているベートは、五感が強化されている。つまり獣人のもともと優れた嗅覚が、更に強化されているのだ。臭いを手掛かりにモンスターを追跡することは困難なことではなかった。

 ベートの隣を並走しながらアイズは呟く。

怪人(レヴィス)に追いつけるかもしれんな」

 それにベートが反応する。

「おめぇが、取り逃がすとは珍しい」

 肩をすくめてアイズは答える。

「ステイタスは、相手(レヴィス)()()()だった。ステイタス任せで全力で逃げられると、さすがに追いつけなかった」

 戦闘技術ではアイズが上、ステイタスではレヴィスが上だった。そのためアイズと怪人レヴィスとの戦闘は、互角であったのだ。だが力比べや、走力等の単純なステイタス勝負に持ち込まれるとアイズの分が悪い。穢れた精霊が全滅する等、状況不利と悟ったレヴィスの全力逃走に、アイズは追いつけなかったのだ。

 

「何、最深部に向かえばまた会える」

 さばさばとした表情でアイズは宣言する。カラテの足しになる相手との勝負である。心はやるものがあった。

 そしてもう一人のライバルもどきの、サミラを思い出す。サミラが所属するイシュタル・ファミリアは闇派閥とのつながりを疑われて、現在、ギルドの取り調べを受けている。どうなるのであろうか? だがその辺りはロキやフィンが上手くやるはずだと考え、アイズは追跡に意識を戻す。

 ちょうど目的地に着いたようだった。

「ここだな」

 上手く偽装されているが、ベートの嗅覚と、アイズのニンジャとしての観察眼は誤魔化せなかった。偽装をはぎ取り現れたのは、厳重に封印された出入口。開ける手段は()()無い。

 だが見張りを立てて監視すれば、これ以上の奇襲は防げる。まずは主神とギルドに報告が必要だった。

 

そしてもう一つの調査部隊。

 ダンジョンに異常が発生していないか、ダンジョンアタックしても問題が無さそうか確認するための調査団。これに関しては、地上の安全が確認されてからの出発となる。ガネーシャ・ファミリアの団長を中心としたメンバーが編成される予定であり、出発の準備が進められている途中である。

 

********

 

 

 さてアイズが一瞬だが気にしていたイシュタル・ファミリアなどの闇派閥に関連したファミリアの取り調べであるが・・

 

 まず闇派閥のメンバー。

 自爆攻撃をしていたのでほとんどは死亡していたが、何人かは自爆する前に無力化されたので捕縛されている。捕らえて時間がたつにも拘わらず、暴れたり叫んだりと精神が高ぶっているので、ミアハから提供された精神安定剤(安らぎの水薬)を処方し、話ができる程度に落ち着かせた。そして、これらのメンバーの尋問がギルドとガネーシャ・ファミリアによって進められている。犯罪者の取り締まりなどで尋問のノウハウはあるので、やや時間がかかるが、地上における関係者、アイズとベートが発見した出入口の開放手段などが分かるだろう。

 

 そして闇派閥とは言いづらく、関係者への影響が大きいファミリアの主神。イシュタルの取り調べも行われる。歓楽街の元締め。薬剤系統最大ファミリア。

 神の尋問が、ギルド代表者、ガネーシャ、フレイヤ、ロキ、ヘルメスの立会いの下で行われることになった。

 取り調べられるファミリアが影響力があり、重要(デリケート)な問題となっていた。神が相手であることも関係し、無下に扱うこともできず、バベルのある程度装いが整えられた一室で取り調べというよりは、話し合いに応じるという形で調査が進められることになったのであるが─。

 

「─では、イシュタル様はオラリオを破壊する意図は無かったと仰るわけですか?」

「ああ、その通りだ。闇派閥に資金援助したが、見返りにフレイヤとの抗争の戦力(穢れた精霊)を得るためだ。オラリオを破壊する意図は全くない」

「しかし闇派閥に資金援助すれば、治安が悪化し、オラリオの秩序が破壊されるとは考えなかったのですか?」

 ギルド代表者の質問をイシュタルは鼻でせせら笑った。

「そんなものどうでもいい。治安について考えるのはギルドやガネーシャの仕事だ。私には関係ない」

 そしてイシュタルは(まなじり)を釣り上げてフレイヤを睨みつけた。

「すました顔で! バベルの上からぁっ! 女王でございと居座り続けるフレイヤを! 天界へ送還できるんならっ! オラリオがどうなろうと知ったことかぁっ!」

 髪を振り乱して叫ぶイシュタル。呆れた表情でそれを見つめる列席した神々。当のフレイヤは涼しい顔で、

「あ~らあら、怖いわねぇ・・」と呟いている。

「それがお前さんの本音かい・・。いやまあ、フレイヤ憎しは分かっとったけど、そこまで思いつめとったとはなぁ・・」

 ロキも呆れて呟いた。呆れた原因は二つ。フレイヤに対する増悪と、聞かれるがままにイシュタルが本音を吐露しているからである。それには理由があり、ミアハ謹製の真実薬を紅茶に入れて、こっそりと飲まされているからである。その効能に呆れているのである。

 こうして事情聴取が終わった。細かいことについてはイシュタルの眷属にも確認する必要がある。とはいえ、どうなってもイシュタル・ファミリアの解体、は無理としても改革は必要だというのが、神々を含めた出席者の総意であった。

 

 

********

 

 

 続いてディアンケヒトとの話し合い(事情聴取)が始まる。

イシュタルとの事情聴取で出た話題なのだが、今回の騒動の首謀者である喋るモンスター、ヴォルデモートの地上での拠点はどこなのか? イシュタルがヴォルデモートと接触した時には、すでに地上に拠点があったらしい。そしてそれを準備したのがディアンケヒトだというのだ。

 にわかには信じがたいことだが、イシュタルに真実薬を飲ませて得られた情報なので、ディアンケヒトとの話し合いがセッティングされた。

 

 これまた真実薬を飲ませての話し合いになるのだが、相手は薬剤ファミリアの主神。紅茶に入れたぐらいでは、ばればれであると、ミアハから意見があった。

 それで、真実を話しているという保証が欲しいと交渉したところ、ディアンケヒトもいくつか条件を付けて、真実薬を飲んでの話し合いを了承した。ファミリアの実情や、眷属のステイタスなどについては質問事項に入れないこと。質問事項の監視役として、ライバルではあるが信頼はできるミアハも同席させること。ミアハが制止した場合、質問には答えなくて良いこと等である。

 

「─それで、闇派閥に協力する見返りに、眷属に手を出させないと約束させたわけですね?」

「ああ、その通りだ。だから全力でファミリアの拡大を推し進めた。うちの団員が増えれば、それだけ奴が手を出せない人数が増える。消極的な抵抗ではあるが、やらないよりはましだと思った」

「ギルドに通報して、対応を任せようとは思わなかったのですか?」

「無理だな」

 筋肉が盛り上がった肩をすくめてディアンケヒトが答える。

「奴は我々神々と同じく、嘘を見抜くことができる。しかも相手が神であってもだ。下手をしていたら、今頃俺も、ソーマと同様に天界に送還されていただろう」

 そして、ディアンケヒトは苦笑を浮かべる。

「この真実薬は、驚くべきものだな。奴相手だと、嘘でも真実でもないことは言えたが、この薬だと真実しか言えん。なかなか大した劇薬だよ」

 ミアハを称賛するディアンケヒト。

「では具体的に協力した事というのは?」

 ディアンケヒトの呟きをスルーして質問するギルド員。

「うむ、まあ、秘薬を使って奴の身体を全快させたこと、奴が地上に来た時の拠点を提供したこと、奴のローブやら何やらの装備を用意したことかな。まあ見返りに毎日ポーションを補充してもらったが・・」

 ギルド員は地上の拠点場所を書き留めると、部屋の外に待機していた者に渡し、すぐに調査に向かうように指示した。

「・・まあ、杖に関しては、こちら(スタッフ)(ワンド)の認識違いで、ごたごたしたが、最後はヘファイストスに協力してもらって無事に準備が済んだ・・」

 ディアンケヒトの思い出したような呟きに、ギルドメンバーが驚いた。

「ヘファイストス様も関係しているのですか!?」

「ん? ああ、俺がアドバイスして、あいつの団員に手を出さない様にっていう条件で武器を提供させたぞ」

 まさかヘファイストスが関係しているとは思っていなかったギルド員は、メモを作成すると部屋の外に待機していた者に渡して上層部に報告させた。

 

「ポーションの補充というのは?」

 ロキが質問する。それに対して腕を組んで唸り声をあげるディアンケヒト。

「それがなぁ、よく分からんのだが、奴は、ポーションが一部残っていれば、それを増量させることができるんだよ。下級だろうが上級だろうが特効薬だろうがな。だから毎日少量だけ残しておけば、奴がそれを器一杯迄、増やしてくれるんだ。品質はそのまんまでな。魔法かスキルなのか全く分からんが、やってのけていたのは事実だ・・」

「極めて稀有、かつ有能な能力だな」

 ガネーシャが感想を言う。

「ああ、そうだな。ヒトであれば、団員にしたかったところだ。だがモンスターだ。しかも知性があるからテイムも出来んだろう」

 そう言われるガネーシャ。仮面をかぶっているので表情までは分からないが、苦笑している雰囲気が漂ってくる。さすがのガネーシャも知性あるモンスターの存在を知ったばかりであろうし、テイムをやってみる機会があったとも思えなかった。それがこの場にいた者たちの総意であった。

 

 ガネーシャがすでに知性あるモンスター、異端児についての情報を、既に持っていること。そのうえで異端児をテイムするという考えが無かったことに対する苦笑だとは誰も思いもしなかった。

 

 その後はオラリオ外部に協力者が居るか等の確認が行われ、ディアンケヒトの事情聴取は終了した。

 

 

********

 

 

 そしてハリー・ポッター。

 

 

 敵の首謀者とみなされているヴォルデモートとの会話内容から、二人は昔から知り合いであることは明白であった。

 

 古くから、知性があり喋るモンスターが存在していたことをハリーは知っていて、かつ、それをギルドへ報告していなかったのである。これは極めて重大な問題だとギルドは考えていた。

 

 とは言え相手は、黒のドラゴンスレイヤー。真実薬を飲んでの事情聴取になるが、今までのオラリオに対しての貢献を考え、丁寧な対応をとることになった。

 ハリーは、真実薬を飲むことに、顔をしかめた。

 だがミアハから『事件に無関係なことについては、質問しない。またハリーが喋った内容については口外しない』と言われたこと。

 さらにロキが『まずは神々が話を聞くべきなんじゃないか。ガネーシャもいるし、ギルド員はその後でも良いんじゃないか』と発言したこと。モンスター討伐とラキア撃退に活躍したロキ・ファミリア主神の提言であり、ギルド員は断ることが出来ず、かなり渋々であったが、退室したこと。

 これらの事から、ハリーは真実薬を飲むことに同意した。

 

 

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「俺がぁっ! 俺がっ、ガネーシャだぁぁっ!」

 サイドチェストのポーズで、胸筋の厚みと腕の太さを強調しながらガネーシャが叫ぶ。

「いちいちうるさいわ、あんさんは黙っとれっ!」

 ガネーシャのあまりの大声に、耳をふさいでロキが咎める。

「分かった、分かった。ではポージングをしながら話をしよう」

 そういうとガネーシャはフーン、フーン、フーンとポージングを取り始めた。

 それを見たハリーはディアンケヒトとの初遭遇の時を思い出していた。うん、ガネーシャ様がオリジナルで元祖なんだなと納得し、なんとなく緊張感や緊迫感が皆無になりリラックスしてしまったハリーであった。もちろんガネーシャは、それを狙ってポージングしていたのである。

 

フーン、フーン、フーン。

「ポッタァァァ!」

 ポージングを続けながらガネーシャが叫ぶ。

「喋るモンスターとはっ! 以前にもっ! 会ったことがっ! あるのかっ!」

「え、いいえ、無いですよ」

 ハリーがとっさに答える。

 事実ハリーはダンジョンにおいて、喋る美竜女モンスターと出会ったことは無い。真実である。同席していた神々にもそれが嘘ではないと分かる。もちろんガネーシャにも。

 

 だが─

「ふむ。嘘だな」

 ガネーシャは断定した。

「おいおい、ガネーシャ、何を言ってるんだ? 嘘を言ってないことぐらい分かるだろう?」

 ヘルメスが呆れた声を出すが、ガネーシャには断定できる根拠があった。

「モンスターが喋るところを見たら、普通は驚き慌てるものだ。ところがお主は、喋るモンスターに話しかけられても、冷静に対応していたというではないか。その冷静さはどこからきた? 以前にも喋るモンスターに出会ったことがあるのではないか? だから冷静に対応できた。そう考えざるを得んのだが? どうだ?」

 さすが、ガネーシャである。ウラヌスから知性あるモンスター、異端児について情報を得ているだけのことはある。異端児の情報を自分の眷属に教えた時の反応から、ハリーの冷静さが一般の冒険者から逸脱していることを見抜いていたのだ。

 

 ハリーの冷静さには、オラリオ界に来る前、数多くのヒト以外の生物と会話した経験が生きている。

 動物園の蛇

 グリンゴッツ銀行の小鬼

 禁じられた森のケンタウロス

 ハグリッドのペットだったアラゴグ

 屋敷しもべ妖精

 四年生時に第三の課題の迷路で出会ったスフィンクス

 

 またそれ以外にも水中人とダンブルドアが会話をするのを見ていたし、巨人との会話もできると知っている。

 ヒト以外の者にも知性があり、会話が可能であるという経験があったので、戦闘中にリザードマンから話しかけられても、落ち着いて対応できたのだ。

 

 だが、これらのことを、すっかり、度忘れしているので、『会ったことが無い』とハリー自身としては真実を言ったことになる。そして、ガネーシャだけが、それが事実とは異なることを見抜いたのだ

 

「まあ、喋るモンスターと出会ったと報告しても、与太話や幻覚として相手にされないだろうから、黙っているのはいいとして。会ったことは有るのだな?」

 

 そして考え込むハリー、記憶の引き出しをかき分け、ようやくアラゴグと会話をしたことを思い出した。

 

「故郷で会ったことがありますね。とても驚きました。でも、そのおかげで世の中(魔法界)は何が起こっても不思議はないと思うようになりましたよ」

「で、そのモンスターはどうなった?」

「寿命で死にました」

 ハリー自身を食べようと追い掛け回してきたネクロマンチュラのボスなので、特に悲しいという気分にならなかったことも思い出す。

「ふむ、そうか。それは残念だ。どうして喋れるようになったのか知っているか?」

「良くは知らないんですが、飼い主(ハグリット)が言葉を教えたんだと思います。鸚鵡のように知能が高いものなら言葉を理解できるようだし、そのモンスターもたまたま知能が高かったんでしょう」

 実際、アラゴグ以外では喋るネクロマンチュラは居なかったことからハリーはそう推測する。

 

「ふむ、なるほど、言葉を教え込む、か・・。うちのテイムモンスターにも教えてみるか。いや、こちらの指示には従うし、こちらの言葉は理解できていると考えるべきだな。しかし発声器官が発達していないから喋れないと考えるのが妥当なのか? 言葉を紡ぎだす能力も未発達と考えるべきだな・・うーむ、難しいな・・」

 ポージングを続けながら考え込み始めたガネーシャ。

「まあまあ、ガネーシャ。考えるのは後にしてくれ」

 ヘルメスが窘める。

 

「でポッター君。敵のヴォルデモートだったか、奴はどういう存在なのだい? モンスターなのに魔法を使うは、喋るは、訳が分からないんだが?」

 

 会話の主導をするのはガラじゃないんだけどなぁと思いながらも、ヘルメスが続ける。

「ヴォルデモートは元々は人間です。邪悪な魔法使いで、自分の魂を分割して他のモノに憑依させることができます。あのモンスターに憑依したんでしょう」

「えげつないスキルやな。それって自分をどんどん増殖させることができるってことやろ。乗っ取った体のステイタスも活用できるやろうし、厄介やな」

 ロキの呟きにヘルメスも疑念を漏らす。

「あれ、ということは、ヴォルデモートがもっと存在している?」

 それにハリーは首を振る。

「分割するにはある程度の準備が必要らしいし、これ以上は無いはずなので大丈夫です」

「ふーん、それが本当なら敵の親玉はあれで終わりということでええんやな。第二第三の親玉が現れたりはせんやろな」

 

 ヴォルデモートの分霊箱は七つ

 そのうち日記帳、ゴーントの指輪、スリザリンのロケット、ハップルパフのカップ、レイブンクローの髪飾り。これら五個は、オラリオ界に来る前に破壊した。

 

 ナギニ。魔法界に残されたままである。

 

 ハリー・ポッター/リザードマン。ハリーは意図せずしてオラリオ界にヴォルデモートの魂を持ち込んだ。

 だがそれもリザードマンと共に破壊した。すなわち、オラリオ界にヴォルデモートの魂は存在しない。

 

「もう現れることは無いですね」

 ハリーは断言する。

「だけど本体、分割される大元の本体が、いるんじゃないのかい」

 ヘルメスが指摘するが、そもそもの本体は魔法界にいるので、こちらにはやってこれない。だからオラリオ界にヴォルデモートが現れることは無いのだが、それをどう説明するべきか─

「ええと、そうですね。本体は僕の故郷に居るけど、これ以上魂の分割はしないと思います」

「何故、そう判断できるんだい?」

「もともと魂を分割していたのは、魔法的に自分を強化するためで、これ以上分割したら魔法的な加護が減るとヤツは考えているので、分割はしないでしょう。そして本体も故郷から出てこないです」

「ポッターッ! 何故そこまでヴォルデモートについて詳しいのだっ!」

ポージング中のガネーシャにハリーが答える。

「それはヴォルデモートは、僕の故郷で極悪人でした。大勢の人を殺し、僕の両親も奴に殺されました。敵をとるのがっ、僕のっ、宿願なんですっ! そのため敵を倒す方法を仲間と調べ上げたんです」

「フーム敵討ちか」

「それだけじゃありません、出来るだけ早く奴を止めないと、もっと多くの殺人が行われます」

 

「うーん、でもポッター君、倒せるのかい? いや、分身の一つを倒せるんだから大丈夫だな。ということは、オラリオに来たのは修行のため? これから故郷に戻るのかい?」

「はい十分、強くなったら故郷に戻る予定です」

「でも、それは難しいと思うよ。高レベル戦力のオラリオ外への流出は避けたいところだからねぇ」

 難色を示すヘルメス。とは言えこれは、ヘルメスのマッチポンプ。

 商業ファミリアとしての一面を持つヘルメス・ファミリアの護衛として、ギルドに指名依頼を出すことでポッターを故郷に返すという手助けをするためなのだ。

 そうすれば旅の間に親しくなり、マジックバックや、ヴォルデモートに関してもより詳細な情報を得られると考えているのだ。

 

 それに親の敵討ちである。神々にとって、極上のエンターテイメントであることは間違いない。それを身近で見学できるのだ。ヘルメスにとっては最上の愉しみである。

 

「まあ、それについてはなんとかなるやろ」

 ロキが口をはさむ。

「オラリオに対する潜在的な脅威やしな。絶対に許可が下りないというわけではないやろな。どう思うガネーシャ?」

 ポージングをやめてガネーシャが考え込む。その間にフレイヤが口をはさんだ。

「故郷に戻る場合、他のファミリア・メンバーは同行するのかしらね?」

「いえ、僕一人で戻ります」

「あらあら、そうなのね。ならレベルいくつだっけ? 一人ならば問題ないでしょうね」

 ベル・クラネルがオラリオにとどまることを知り、それ以上の興味が消えたフレイヤである。

 

 そしてガネーシャも言葉を紡ぐ

「許可は下りるだろうが一人というわけにもいかんだろう。敵討ちに成功して無事戻ってくれば良いが、そうでなかったら?」

「なら、うちのラウルを同行させよ。それならええやろ」

「ハイノービス・・、レベル4であったな・・。ならば問題あるまい」

 ロキの提案にガネーシャが頷く。

 

こうしてハリーの尋問は終わった。

 

 

********

 

 

 そして処罰が言い渡される。

 

 まずはイシュタル。

 ファミリアによる直接の破壊活動も問題だが、闇派閥への資金援助は見過ごしがたい。また今後も闇派閥の資金源になる恐れがある。

 

 やったことは、基本的には資金提供のみ(・・)なので天界への強制送還するまでのことではない。となると、罰金や、アポロンのように一定期間のファミリアの解体と結成不可、オラリオからの追放という選択肢が出てくる。

 ここで問題なのが罰金でファミリアの資金をすべて没収したとしても、歓楽街の元締めであるので、資産としての店舗は残り、資金自体の回復は比較的速やかにできる。では店舗を没収となるとギルドで経営できる類のものではないし、結局は類似のファミリアに売却することになる。そしてその類似ファミリアが、イシュタルの息のかかったファミリアである可能性が極めて高い。したがって罰金や資産没収は、懲罰という意味では効果が薄い。

 

 ファミリアの解体と結成不可であるが、これまた問題である。歓楽街の元締めを解体することになる。大混乱が発生するだろうことが容易く予想できるため、この方法もとることができない。

オラリオからの追放も同様である。

 

 また、どの場合であっても打倒フレイヤ活動をするだろう。その場合フレイヤ打倒の余波でオラリオが破壊されることは十分に予測できる。

 

 こうして思い余ったギルド上層部が出した結論は『罰金』と『イシュタル神の幽閉』である。幽閉とはいっても神に対しての幽閉なので牢屋ではなく、バベルの上層部の何室かをイシュタル幽閉用の部屋とし、そこにイシュタルを軟禁したのである。

 これによってイシュタルとその眷属の接触を制限し、ファミリアとしての活動は一応はできるようにしたのだ。

 

 もちろん、接触時にはギルドが立会い、会話内容のチェックや介入が行われる。。

 ステイタスの更新、新規加入者へ恩恵を刻む際にも立ち会うことになる。当然反発されたが、「では更新と新規メンバー獲得をやめればよろしい」と言われてしまい、この条件を飲むしかなかった。

 そしてギルド側としては新規加入を何十年かの計画でやんわりと減らして、徐々にイシュタルファミリアを中規模、そして、零細ファミリアへ、最後には解体する予定であった。

 いきなりの解体が問題であるのならば、長期間かけて解体すればよいとう目論見である。

 

 イシュタルの身の回りの世話─掃除や、食事の給仕等─はギルドからフレイヤ・ファミリアへと委託され、委託金が毎月支払われることになった。

 

 

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 続いてディアンケヒト。

 眷属を守るための行動という言い分が認められる。ただし、ファミリアの財産の八割を没収。競合ファミリアの再建に資金があてられる。薬剤ファミリアからの改宗者は、一年後に元のファミリアに戻すように決定される。

 

 それと余談ではあるが、ポーションの価格に関して、ギルドが今後は口を出すようになった。

 割引攻勢をかけて薬剤ファミリアが潰れても、価格を高騰させて冒険者が購入できなくなっても、問題であるという建前である。

 

 

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 鍛冶神(ヘファイストス)。主神が杖一本を提供しただけなので、ファミリアへのおとがめなし。鍛冶神はいくらかの個人資産を、罰金としてギルドへ納付。

 その後、鍛冶神は個人資産を、孤児院や学校など色々なところに寄付するようになった。

 

 

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 そしてもう一つ特筆すべきことが、ミアハ・ファミリア。

 病院ファミリアが経営されることになったのだが、ハリーが教えた魔法薬の作成も実施している伊。これにギルドが着目。真実薬等のような劇薬が一般に流通すると困るので、結局、薬販売は禁止のまま。しかし魔法薬は有用なので、ギルド専属で作成するようになる。つまりギルド専属薬剤ファミリアという裏の面も持つことになった。

 

 

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 そして我らがヘスティア・ファミリア。

「それじゃ、恩恵の更新をしよう」

 そうしてヘスティア・ファミリアメンバーが更新をする。

 リリルカ、ヴェルフはラキア軍との戦闘のおかげがステイタスがかなり上昇した。

 ミコトは、ヘスティアの護衛に専念して、戦闘はしなかったので、ステイタスは伸びなかった。

 

 ベル・クラネル。アステリオスという格上と互角に戦ったことで、ステイタスは大幅に伸び──

「やったぜ、ベル君! ランクアップだ!」

 新しいスキルは無かったが、速攻というアビリティを習得した。レベル4へのランクアップ。最速記録である。

 

 そしてハリー・ポッター。ヴォルデモートを打ち破ったことでステイタスは大幅に伸びランクアップを果たした

「よし、ハリー君ランクアップだ・・・」

 前回レベル3で姿くらましをした時の手応えから、今回レベル4であれば魔法界に帰還できるだろうと確信しているヘスティアである。

 

 さっそく関係者が集められて、別れの挨拶と話し合いが行われる。

 ハリーは黒のドラゴンスレイヤー、そしてこの前のヴォルデモート騒動から有名人となっている。そんなハリーがいきなり行方不明になっては不審に思うものが出るに違いない。アドバイザーのエイナは絶対に気にするであろう。

 それを回避するためにも、ハリーが消えるのに何らかの説明が必要であった。

 

 

********

 

 

「さてハリーはん。ちょっと今後の相談なんやが、ハリーはんは故郷に戻るんやろ。

 それにラウルを同行させるって言ってもーたんやけど、別の世界にラウルは行かれんやろ。それでどうしよう思うてな」

 

 場所はヘスティア・ホーム。メンバーはヘスティア・ファミリアの面々に加えて、ロキとミアハである。

 

 ロキのぼやきにヘスティアが同意する。

「ふむ、まあ、そこはハリー君の偽物を仕立てて、オラリオからラウル君と二人で出る。その後変装を解いてオラリオに戻る。

 じゃなかったら、強くなる修行中にダンジョンで死亡した、または行方不明になったと芝居を打つのが良いんだろう。だけど、どちらもなぁ・・」

 問題はギルドが確認のために事情徴収するだろうこと。その場合には、当然、神々が同席して真偽を判断するのだ。つまり、どうやっても芝居がばれるというわけだ。

 

「となると、申し訳ないですが、ラウル様には、同行するハリー様が本物だと信じ込ませることが必要なわけですね。

 そうすれば、ラウル様は『あっというまに故郷に帰られてしまった。多分箒で空飛んで』と証言しても大丈夫なはずです」

 ある意味、変装の名人ともいえるリリルカが確認する。

 リリルカのシンダー・エラでは、そっくりに変身できる。ただし体格が同程度という大前提条件がつくので、同じ小人族のフィン・ディムナならまだしも、体格が違うハリーには変身することはできない。

「もう一つ。変装をといたらオラリオにこっそり入り込める人物でないとあかん。外に出た記録がないのに、中に入ろうとするのは問題や」

 城壁を乗り越えての侵入は高レベル冒険者ならできそうである。だが低レベル冒険者ではほぼ無理だ・・。

 しかもハリーが異世界から来たという事情を知っている人間である必要がある。

 

 まとめると、変装の名人、オラリオに忍び込める、そしてハリーの事情をすでに知っている人物。極めて条件が厳しい。

 

 考え込む一同。そしてハリーが閃いた。

「ポリジュース薬。それを使えば絶対にばれることなく変装できる」

 そしてハリーは皆にポリジュース薬の説明をする。

「体格や性別関係なしに、外見は本人そのものになってしまうわけだね?」

 ヘスティアが確認する。

「そうです、相手の体格に合わせて、薬を飲んだ本人の体格も含めて変化します」

「なるほど、なるほど・・」

 考え込むヘスティアだった。

「なぁんかやばい薬やなぁ。そんなん闇派閥に渡ったらえらいこっちゃで。ハリーはん所の世界はよくまぁ、治安維持ができとるもんやな・・」

 呆れるロキである。

 考え込んでいたヘスティアが、顔を上げて質問する。

「で、その薬はもうミアハは作ったことがあるのかい?」

「ああ、すでに作ったことはある。保管してあるぞ」

 よしよしと頷くヘスティア。

「それならば、ハリー君。君は本来の元の世界の友人達が心配なんだろう。それに比べれば、こちらの事情については、どうとでもなることだ。気にすることは無い。後のことは、どーんと任せたまえよ」

 有る胸をドーンと叩いて見せるヘスティア。途端に不安になるロキであるが、言っていることは確かなので反対はしなかった。

 

 

「それじゃあ、ハリー君、髪を一束、貰っておくよ」

 そういってヘスティアが髪を一束切り落とし、ミアハに渡す。ミアハは慎重に髪を包むと懐に入れた。

 ハリーは準備を整えていた。クィディッチ・ユニホームに似た戦闘服とマント。カバンにはポーションと小型の魔剣。そして右手に構えるはヘスティア・ワンド。ヴォルデモートとの戦いでは、不死鳥の尾羽の杖が有効だったが、異世界への姿くらましでは単純に強力な神造武器のほうが良いと判断したのだ。

 

「それでは皆さん。お世話になりました」

 万感に思いを込めて一礼するハリー。ベルをはじめ、皆から激励の言葉が賭けられる。そしてハリーは体を起こすと、すかさず叫ぶ

「姿くらまし!」

 

 体が瞬間的に臍の辺りに収縮し、点となり、姿が消える。そして小気味よいキンッ! という音を立てて静けさがあたりに満ちた。

 

 姿くらましに成功したのだ。

 

 

その後、ハリーがダンジョンで活躍する姿を見た者はいなかった・・・

 

 

 




 さて、この作品、『ハリー・ポッターとオラリオのダンジョン』は、オラリオとその周辺でのハリーの活躍を描いたものです。
 姿くらましで、異世界移動に成功した以上は、このお話は此処にて終了となります。
(一応エピローグがあります)


補足

安らぎの水薬
ハリーから教えられてミアハが造った魔法薬。不安を鎮め、動揺を和らげる。

イシュタル幽閉
幽閉されて、フレイヤ・ファミリアの団員に日常の世話をされるだけです。某竈の女神はぐーたらして気楽に快適に過ごせますが、イシュタルだと話が違います。
フレイヤに魅了されている相手、すなわち自分の魅了が通用しない相手と毎日顔を突き合わせないといけません。美の女神としてのプライドを毎日叩き壊されるわけですので、十分な罰になるでしょう。

ラキアとの戦後処理
一般兵士はそのまま釈放。上層部の捕虜は身代金と引き換え(超ぼったくり)に釈放です。


後のことは、どーんと任せたまえよ。
その時のヘスティアの計画
1 ポリジュース薬(ハリー)を作る。
2 リリルカがそれを飲み、ハリー偽になる
3 ラウルとハリー偽でオラリオを出る。ラウルはハリー本人だと信じている
4 二日ほど移動した後、リリルカはポリジュース薬を飲むのを止める
5 ポリジュース薬の効果が切れたら、シンダーエラを使い、小人族(男)に変身する
6 オラリオに帰る
7 ホームに帰還して魔法を解除する
ハリー偽や小人族(男)の荷物はマジックパックに入れておく。
ただし、ロキが「うちの可愛い眷属を騙すのは心が千切られるような思いやなぁ、あぁ、つらいなぁ」といってごねたのでヘスティア・ファミリアからロキ・ファミリアへの貸し一つとなった。魔剣一本よこせといわれるかもなぁ・・


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