最低で最高の   作:優しい傭兵

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この回をスキーまでに挟ませていただきます。
その方が良いかと思いまして。


真っ白い雪

「今日はラブライブ最終予選。絶対に勝つわよ!」

『おー!!』

 

空は暗く、降り落ちてくる雪は一瞬にしてあたり一面を白銀の世界へと変えた。建物も道路も、人間が通り、目に入るもの全てが真っ白に染められていた。

勿論それは音ノ木坂学院も同じこと。降り積もる雪は学校全体を白く染め上げられている。

その学院に集まる9人の女神たちμ's。今日はラブライブへの最終予選当日。この闘いで勝ち残れば等々ラブライブへと足を踏み入れることができる。

 

今まで頑張ってきた事は無駄ではなかった。決して後悔をしないために、彼女たちは自分の心に活を入れる。

 

 

同時に、気合を入れるためのカツサンドを頬張りながら…。

 

 

 

「じゃあ、私たちは先に会場にいってるわね」

「穂乃果とことりと海未は生徒会の挨拶が終わってからの集合ね」

「雪が降ってるからちょっと予定より遅く始まるのがめんどうやね」

「来るとき気を付けてね」

「特に穂乃果。コケちゃだめよ」

「も~!真姫ちゃん酷いよ~!私そんなにドジじゃないよ!」

『え?』

「みんなで私の事見ないで!?」

「冗談よ」

「でも本当にコケそうだから心配だニャ」

『それは同感』

「うわ~ん!皆がいじめるよ~!」

 

そこらを走り回っている時点でお察し。

 

 

 

「…………」

「エリチ?」

「あっ…な、なにかしら?」

「なにかしらはウチのセリフや。どないしたん?」

「いや。天気がね…」

「天気?」

「今は雪も落ち着いてるから大丈夫だと思うけど……なんだか嫌な予感がして」

「エリー落ち着きなさいよ。一応予報では晴れるって言ってたわよ」

「んー……ロシアで育ったから、雪は侮ってはいけないって思ってて…」

「心配性な絵里ね」

「オカンやね」

「ママか何かしら」

「お母さんだね」

「私まだ18歳なんだけど!?」

『母性が…』

「うそでしょ!?」

 

 

けど本当に晴れるのか心配なのは変わりない。空の様子がおかしい。さっきよりも黒さが増しているように見える。そして木の揺れようから見て北風も強くなっている。これが本当に晴れになったりするのが逆におかしく感じてくる。

 

 

 

 

「……嫌な予感がするわね」

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「…………」

 

音ノ木坂の屋上にて。持っているコーヒーを飲んで一息つくと白い息が口から出てくる。今日の気温は1度を下回っているだろうと思えるほど冷え込んでいる。熱燗のコーヒーを飲んでもなかなか体が温まらない。

だが、体に新しくできた痣や怪我にはある意味良いのかもしれない。天然のコールドスプレーのようだ。今吹いてくれている風は少し心地いい。

 

今日も今日とでまたリンチだ。以前絵里と一緒にショッピングモールにいたことがモロにバレてしまって2、3人んだったのが今度は倍の6人で襲ってきやがった。数が多ければいいてもんじゃねえんだぞ。俺の体は亀の甲羅でもなんでもねえんだから。

 

 

「いって…」

 

制服の袖を巻くってみると所々赤く腫れあがっている。切り傷も増えてるし、よく見ると青く腫れてるところもある。暴力は無限、体力は有限。言葉を交わす間も無く拳を振り上げるのは弱い証拠だ。拳でしかどうにかできないといった汚い野郎の行動なんだよな。でも、こんな事考えても意味はない。

どうせ俺の言葉を信じるのは誰も居ない。どんなに親しくなっても信じる奴はいないし、俺もそいつが俺の言葉を信じてくれる奴って信じられない。『人殺し』のレッテルを張られてる間はずっとだ。

このまま俺の周りが変わらなかったら大人になっても苦労しそうだ。さっさと時が経てば俺は万々歳だよ。俺の事を知らない所に行って、下手なりに生きていくのが俺の望みなんだから。

 

 

「はぁ……」

 

 

くだらない事を考えても何も変わらない。所詮は妄想の戯言だ。今はクソ野郎なりに生きてやろうじゃないか。

 

 

 

「和平君」

「あ?」

「ここにいたのね」

「なんだよ理事長。こんなところまで来て」

「今日の事を聞きたくてね」

「はい?」

「知っての通り今日はラブライブの最終予選なのよ?あなたは見に行かないの?」

「行くかよンなところ。俺が行ったらどうなるかわかってるのかよ。馬鹿馬鹿しい」

「なら、せめてこれだけ受け取って」

「ん?」

 

渡されたのはどこにでもあるタブレット。そこには『放送までしばらくお待ちください』と出ている。

 

「なんだこりゃ」

「最終予選だからテレビ局も動いてるのよ。しかも動画サイトで生放送。これなら君も見れるでしょ?どこにいても」

「……あんたお人好しって言われねえか?」

「さあ?優しいってよく言われるは。誰かさんのお母さんにも」

「ちっ……そうかよ」

「それを渡したかったの。それじゃあね」

 

理事長はそれだけを言い残して背を向ける。そして屋上の扉のドアノブを握った瞬間、顔の反面だけ俺に向けて口を開いた。

 

 

 

「最後…かもね」

「あ?」

「もしかしたら、あの子達の戦いはここで幕を閉じるかもしれない。ラブライブの本選に行くことなく、ここで負けるかもしれない」

「何が言いたい」

「無理強いはしない。けど、最後になるかもしれない今回だけでもあの子達の、いいえ…絢瀬絵里さんの雄姿をその目で見たらどう?」

「このタブレットでも見れると思うが?」

「いわば保険ね。貴方が【どうしても】見れなかった時の保険」

「どうしても……だと」

「陰からでも、どこからでもいい。姿を現せることなく見ることは可能なはずよ」

「俺がそんな事するとでも思ってんのかよ」

「思ってないわ。けど、そうしない訳でもないでしょ。未来は誰にも分らないんだから」

「っ………」

「傷つけることでしか人を救えない君にも、少しは良い事があってもいいと思うわよ」

 

 

 

 

 

 

 

【楽しんできなさい】

 

 

 

そう言い残して、理事長は校舎の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が見るのを見通しての言い方じゃねえかどう考えても」

 

タブレットを強く握りしめる。

 

 

 

 

 

「………気分次第だ」

 

 

 

残りのコーヒーを飲もうと缶を傾けようとした時、一瞬にして雪の降る量と風の強さが変わった。雪の大きさが大粒になり、北から吹いてくる風の勢いが増した。空は黒くなり、視界に見えるありとあらゆる物が真っ白になってゆく。

 

 

 

 

「………ビンゴかよ畜生」

 

 

コーヒーを飲み干してスチール缶を力の限り握りつぶした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『大丈夫なん穂乃果ちゃん達!?こっちも凄い雪なんやけど』

「い、今のところは…、けど雪が…」

『交通の便が悪くなりそうやね…』

 

生徒会の挨拶を済ました穂乃果達2年生組。外に顔を出してみるとそこはとてつもない大雪と嵐だった。校舎の出入り口付近から雪が降り積もり足を踏み入れると埋まってしまいそうになっていた。更に風が強すぎるお陰で視界が悪い。右を見ても、左を見ても。

 

 

白。白。白―――――。

 

 

 

挨拶を終わらせ、すぐさま最終予選の会場へと赴かなきゃいけないのに、天候により遮られている。

 

 

『まだ時間があるとは言っても、気をつけなよ!』

「うん。今お父さんが車を回せるか試してくれてるから…様子を見るね…」

『うん…。怪我だけはせんといて…』

「ありがとう希ちゃん。また後で」

 

スマホの受話器マークに触れ電話を切る。

 

 

「穂乃果」

「海未ちゃん…」

「雪……弱くなりませんね…」

「でも、大丈夫だよ!きっと、雪は病んでくれるはずだから!」

「えぇ、私もそう願っています。願っては…いるのですが…」

 

願いは届かないのかもしれない。奇跡は起こらないかもしれない。けど、私たちはこんな所で立ち止まっているわけにはいかない。皆が待ってくれている。私たちの事を。戦いが待っている。ラブライブへと進む道を手にするために。学校を救うのだ。

 

 

この学校が―――大好きだから。

 

 

 

「穂乃果ちゃん…」

「ことりちゃん…」

「私も…一つしかない考えが出なかったよ。道は…一つしかないって」

「私も……すべきことは一つしかないって、考えたよ」

「穂乃果…ことり…」

「海未ちゃんも?」

「私も、です。こんなところで突っ立ているのはいけないと思います。こんなところで負けるわけにはいきません!」

 

3人同士、頷き合い、意思を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行こう。歩いて!!」

「うん!」

「えぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

マフラーを首に巻き付け、厚手の軍手を身に着ける。制服の上にダウンコートを着込み準備完了。

そして念には念をでニット帽を目のあたりまで深くかぶる。こうして居れば完璧な怪しい人だ。これなら誰も俺には気づかないはずだ。逆に気づこうとしないだろう。だって傍から見たら怪しい不審者だぜ?

 

 

おいそこのねえちゃん俺と一緒にお茶しないか?(涙)

 

 

やめよう気持ち悪い。吐きそうだ。調子に乗るのもいい加減にしようか俺。

 

 

 

 

ゴミみたいな事してないでやるべきことをしに行こうかしらね。

外に出ると、そこには俺と一緒の考えをしていたのか、自称μ'sお助け隊と呼ばれる『神モブ』の3トリオがいらっしゃってた。なんだっけ?ヒフミ?だっけ…?まあいいや。

 

 

「みんなー!こっちも手伝ってー!」

「穂乃果達が来る前にはある程度終わらせるよー!」

「けど無理はしないで!皆でやればすぐに終わらせれれるよ」

 

神モブの3人組の他にも、音ノ木坂の学生ほぼ全員が校舎の外に集合していた。皆そろってその手には雪掻き用のスコップやシャベルを所持。

答は簡単。ここにいる全員、高坂穂乃果達を無事に会場まで送り届けようと集まった優しい心の持ち主たちだ。高坂穂乃果達が無事にたどり着くように、進む道すべての道の雪を掻き分けて、道を切り開いている。

μ'sはたった1年未満でここまで大きな存在となった。決して敬うほどの存在でもなく、決して疎まれる存在でもなかった。

『助けてあげたい』『力になってあげたい』といった自ずと湧きあがらせるほどの絶大な力を持ち、かけがえのない友達を持っているからこそ、今の現象が生まれたのだ。

 

 

これがすべて彼女たちの持っている絶巧な力だ。俺から見たらとても眩しいくらいだ。

 

 

 

羨ましいと少しだけ思った。俺も彼女たちのような頼られたり、必要とされるような人間になってみたいものだ。

 

 

そんな事、一生かかっても来ねえけどな。

 

 

 

 

 

さてと…やるとしますか。

 

 

 

 

「あ、貴方も手伝ってくれる!?助かるよー!」

「気にするな」

 

 

 

恰好が恰好なのでバレないものだな。

 

 

 

 

「因みに聞くけど、貴方は何でμ'sの為に手伝ってくれるの?」

「そうだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪が大っ嫌いだからかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

お掃除開始。

 

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