最低で最高の   作:優しい傭兵

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ただいま


俺が許せるその日まで

『えー…3年生は最後の高校生活です。次なるステージに進むために今ある時間を大切にしてください。これにて始業式を終わります』

 

 

1月某日。

 

 

 

高校生活最後の3学期を迎えたこの日、俺は始業式をいつもの如くサボり屋上に来ていた。

 

「はぁ……」

 

 

あのスキー実習を終えた3年生は冬休みに突入し、帰省する者も居れば、極寒の中炬燵の中で身動きできない地獄(快楽)を味わっている者など、各々の生活を満喫しているなか、俺は自分の家でボーッとしていた。

 

 

これには理由がある。

 

 

そうです。絵里とのことです。

 

 

そうですよ告白しましたよ。あれからひと言も絵里と喋ってないよ。連絡先も消してるから来ることも送ることもねえよ。

あの後ちゃんと東條達にバトンタッチして、ホテルに送り届けたよ。いや流石に疲れた。できる限り揺らさない様に負荷を掛けない様に最善の注意を払いながら!

 

 

 

けどなぁ…。

 

それからというもの、絵里を顔を合わせても声を掛けられることもなく、逆もまた然り。まああんな事があったから、特に絵里が顔を合わせても顔を真っ赤にしてしまうので、俺は何もしない様にいつもの如く、無視をし続けることにしている。

 

 

 

「どちらかと言うと俺の方が恥ずかしいのだが」

 

 

色々ありましたよと言って好きですよとカミングアウトしてるんだ。俺の方が大ダメージだわ。

本当に余計な事言った。あの気持ちは心の奥深くに閉じ込めていたのにあの時の俺は何をしてるんだよ。あの時間に戻ってぶん殴るぞ。

 

 

「はぁ……」

 

何回目のため息か覚えていないが、もうこれっきりにしておこう。クソ野郎な俺だけども幸せが本当に消えそうだ。

 

 

 

 

「戻るか…」

 

 

天然水のペットボトルを握りつぶして教室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「九条君」

「あん?」

「ちょっといい?」

 

中庭の庭掃除(ペナルティ)をしているときに、凄いニコニコしてる東條に声を掛けられた。なんだよその顔…。思いっきり何か考えてるだろ。

 

 

「まずお礼。あの時はありがとう」

「……俺は何もしてないんだが…」

「謙遜せんといて。ウチは凄く感謝してるんやから」

「あぁそう…」

「嬉しくない?」

「さあな」

「ひねくれてんな。後、あの時怒鳴ってごめんなさい…」

「気にするな。大親友がそんな目に遭っていたら誰だってそうなる」

「そうかもしれんけど、ウチ、胸倉も掴んだし…」

「喧嘩してたらよくつかまれる。気にするな」

「………怒ったし」

「似てるな」

「言わんといて!」

「だから気にするな。どっちかというと俺は頼ってくれたのが嬉しい」

「そっ…か」

 

あらびっくり。ニコニコ顔からりんごのような真っ赤な顔に早変わり。

いや、トマトだな。μ'sのあの赤い子みたいだ。

 

 

「で?俺に用があるんだろ」

「あ…うん。また荷物運びやねんけど」

「書類か」

「そうそう」

「……またか」

「ごめんな!ウチ今日外せへん用事があるんよ!」

「俺仕事してたのに…」

「お願い!一生のお願い!」

「どんだけだよ。別に構わないけど、どこにだ?生徒会室か?」

「そう。で、でも!今回は少ないから!そんなに重くないよ!」

「全然気にしてないんだが」

「ほんとごめんな!またお礼するから!」

「別にいらん。書類どこだ」

「えっと、書類は……」

 

 

 

あれ?

なーんかデジャヴを感じる。

 

***

 

 

 

 

確かに今回は書類は少ないが、なぜ東條は生徒会への書類を運んでるんだろう…。確か生徒会って新規で高坂穂乃果達が生徒会に入ってるような。あれか。OGとして手伝ってくれてるのかな。

 

 

「ご苦労なこって」

 

 

生徒会室に付いたので、片手でノック…。

いや待て。確か東條が生徒会室には誰も居ないって言ってたな。別にノックいらねえじゃん。

 

 

 

「失礼しまーす」

「えっ」

「え?」

 

 

誰も居ないと思って扉を開けると、なぜかそこにはずっと俺の悩みの種である張本人、絢瀬絵里さんがいらっしゃるではありませんか。

 

 

あ、まさか。東條の奴、あんなに必死だったのはこの為か!

 

 

「あのタヌキがぁ……」

脳裏でニヤニヤしてるのが目に浮かぶぜちくしょう。

 

 

 

「あっ…えっと…」

「あ……」

 

絵里がどうしたらいいのかキョロキョロしながらモジモジしてる。そうだよな…俺がここにいたら色んな意味で迷惑だな。

 

 

「あー…東條に頼まれた書類を届けに来たんだ」

「そ、そう…」

 

意識させず、意識せず。いつものようにだ。

書類を机の上に置き踵を返した。

 

 

「じゃあな」

 

扉に手を掛けたとき。

 

 

「ま、まって!」

「は?」

 

絵里に静止させられる。

 

 

「えっと…その…」

「…………」

「うぅ………」

「………」

 

モニョモニョしていた口から出た言葉は…。

 

 

 

「お、お茶……飲んでいかない?」

「あ?あー……、いただこう…かな?」

 

 

 

お茶貰うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうぞ」

「どうも」

 

なんで生徒会室に湯呑があるのかは今は問うまい。おそらく触れてはいけない所なのだろう。絵里から頂いたお茶を一飲みし、ふぅと一息つく。

 

 

「…………」

「…………」

 

静か。すんごい静かなんだが。絵里なんか俺の方見て固まってるんですけど。

 

 

「…なんだよ」

「…な、なんでもないわよ」

 

嘘つけオイ。あんなに見てて何にもない訳ねえだろ。

 

 

 

「ねえ、和平」

「ん…?」

「あの時の言葉なんだけど…」

「あの時?」

「そ、その…す、好きって言ってくれたこと…」

「あ”っ…」

 

やべえすげえ声出た。

 

 

 

「あ、いや…あれは俺の…その、その場の勢いとかなんとか…」

「そ、その場の勢いなのあれ…」

「あっ!いや、その…」

「嘘…なの?」

「違う…あれは本心…なんだ」

「そう…そっか」

「おう…」

「私…その、貴方の事…」

 

椅子に座って手を合わせてもじもじさせている絵里。けど、今の俺にその先の言葉を聞いていい資格はない。

 

「絵里」

「ふぇ!?な、なに?」

「その先の言葉は言わないでくれ。どっちかの言葉だろうけど言わないでくれ」

「和平…?」

「分かっているはずだ。あの時お前を俺は助けたけど、それで今までの事をすべてチャラにできるとは思っていない」

「でも、もうこれ以上自分を傷つける必要はないはずよ!貴方はそれ以上の罰を受けてるのに」

「違うんだ絵里。これはすべて俺の自己的な我儘なんだ。許さない許してほしいじゃないんだ」

「じゃあなんで…」

 

俺に許される資格はない。これはケジメだ。これはツケだ。これは償いだ。言葉や少しの行動で帳消しになんてできない。

 

だから。

 

 

 

「絵里にはこれからの俺を見て欲しい。俺がお前の横に立てる男になれているか」

「見定めるって事?」

「そうだ。今までお前にしたことは取り返しがつかない。今ここでごめんなさい言って許して貰えるとも思っていないし、お前が俺を許してくれても俺は納得ができない」

「本当に…貴方の我儘なのね」

「あぁ、俺は心も考える事もクズだからな。またお前に俺の我儘を聞いてもらうことになる」

「それは、どれくらいの期間?」

「そうだな。俺が、自分で自分を許せた時だ。だから、いつになるかはわからない」

「そう……馬鹿なんだから…」

「悪い」

 

机の上に置いていた俺の右手を絵里が両手で握ってくれた。

 

 

 

「分かった…確かに私もすぐに大丈夫とはさすがに言えないわ。私もそこまで優しい人間ではないもの…」

「それが普通だ」

「だから待ってる。貴方が…自分を許せる時まで」

「本当に悪い…」

「これ以上謝らないで。怒るわよ」

「………ありがとう…」

「えぇ」

 

絵里の両手を今度は俺の両手で包み込む。

 

 

 

「ところで和平」

「ん?」

「どっちの言葉も聞きたくないって言ってたけど、この時点で答えは分かっているわよね?あの雪の中で私もつり橋効果でこうなったのかもしれないけれど…」

「……………ぇ?」

「だって最初に私が嫌いって言ったら、この話は無かった事になるんじゃ……。貴方が嫌いだったら待つ理由もないわけだし…」

 

 

 

えっと……ということは…。

 

 

 

「っ!」

「あ、和平が赤くなった」

「せっかくの雰囲気壊すんじゃねえよ…」

「ご、ごめんなさい…気になってしまって…」

「~~~~~~っ…俺はもう帰る!」

「あ、そ、そう……」

「くそっ…変な気分だ畜生がっ…」

「えへへ…」

(可愛いなこの野郎!)

 

 

 

「じゃあな…」

「えぇ……また…ね」

 

手をフリフリして見送ってくれる絵里。俺は顔が熱くなりすぎて頭がショートしたのか、生徒会室の扉を力いっぱい閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…絵里の奴…」

 

あんなこと言っていたけど、俺の心は変わらない。俺は今の俺を許せない。俺は自分を好きになれない。俺が、まともで、真っ当な人間になるまで、絵里には必要以外近づかない。

 

 

 

そうすれば……絵里との関係を気にせず離れられる(・・・・・・・・・・・・・・・・)のだから。

 

 

 

 

 

俺が……ここを卒業するまで。

 

 

 

 

 

 

ピリリリリリッ

 

 

 

 

「あん?」

 

ポケットに入っているスマホを取り出して、画面を見る。

 

 

「っ……」

 

着信ボタンをタッチする。

 

 

「もしもし…」

「よう九条。元気か?」

「なんだよ部長さん」

「おい、俺は部長じゃねえもう刑事だ」

「はいはい…それでなんの用だよ」

「やっと、というべきか。お前に伝えることができたんだ」

「伝える事?」

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先日18時頃、お前の両親の仇…無差別連続殺人犯を逮捕した。今は俺の署の預かりになっている。面会をすることは可能だが……どうする?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体のそこからマグマのような熱い怒りが込み上げてきた。あと数秒すれば噴火するレベルまで達している時点で俺はその怒りに蓋をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった……面会はいつだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この怒りが爆発したとき、俺はどうなるのだろうか。

 




えーっ、長い間お待たせいたしました。就職活動も終了したのでここに帰ってくることができました。
だれだ8月とか言っていたのは(自分です)

ちょっと本調子に戻るまで時間がかかると思いますが、ご了承ください。


さて、物語を進めましょうか。
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