過去での出来事、今から3年くらい前かな。俺がまだ中学3年生になったかなってくらい頃の話だ。この時の俺は至って普通の男子中学生だった。学力も普通、運動は人並みにできるほど。強いて周りの学生と違うものと言えば少しだけ体つきが良くて発育が良かったことかな。俺の中学校での平均身長は163だったんだが、俺は少し頭飛び出したぐらいの170前後ぐらいだったところ。肩幅が大きかったから必然的に大きく見えるかな。
まあ、今から話す事にこれはそこまで関係はしない。
この頃の俺と絵里の関係…といえば、『恋人』だったってところかな。あいつと俺は小学生の頃からの幼馴染でいつも一緒だった。
そして中学生になったら?色々とませてくる年齢だ。恋だの恋愛だのと盛ってくる時代。その時代の中俺たちは周りにバレない様に付き合っていた。そんな時にバレてみろ?どいつもこいつも恋バナだ妬みだリア充がー!ってなるに違いない。
幸せだったかって?そりゃ当たり前だろ。ずっと一緒だった女の子と恋人同士になったんだぜ?最高にハイッてやつだになってたわ。
けど、まさか絵里が俺の事を好きだとは思わなかった。あいつにはもっと俺なんかよりお似合いの男子なんか腐るほどいるのに俺を選んでくれた。正直半泣きだった。
それからは周りにバレない様にイチャイチャしたよ。帰りに一緒にアイス食って休みの日は使えるだけの小遣いでデートしたり一緒に飯食ったりとな。楽しかった。
それからだ。付き合って3ヶ月ほど経ったときだ。
『俺の日常は崩壊した』
貴方は愛する者のためにならどんな奴にだってなれる覚悟はあるか?
これを貴方は覚えているだろうか。今回もこの『鍵』が関係してくる。
それからは不幸の連続だ。消え、いじめられ、蔑まれといった負のスパイラルの連続だ。耐えれない、消えたい、死にたい、常にそれを思う日常だ。どこの、誰も、俺の味方はいなかった。いや、いなくなったの、間違いだ。
さて、ここから本格的に説明しようか。
まず、きっかけから話をしよう。
この結末になったきっかけは…。
『俺の両親が殺されたことからだ』
***
『現在、〇〇にて無差別連続殺人犯が逃亡しています。近辺の方は十分お気を付けください』
その日はそんなニュースを見て始まった。いつもと変わらない日常だ。起きて、朝飯食って、おふくろと親父に行ってきますを言って家を出た。今日は親父は仕事で休みだから家で久々の夫婦団欒を満喫するらしい。やれやれ、ラブラブ夫婦め。
そこからも変わらない。学校に行くまでに絵里と一緒に学校に行って、授業を受けて、弁当食って、友達と笑って、家に帰った。
その日の絵里は妹の亜里沙ちゃんと晩御飯の買い物をすると行って先に家に帰ったのを覚えてる。
俺も何を想っていたのか鼻歌歌いながら帰ってたんだよ。周りからしたら少し気持ち悪いな。
家について「ただいま」って言って家に入ったところで違和感に気づいた。何か日頃では絶対嗅がない独特な匂いが鼻に刺してきた。
親父の名前もおふくろの名前も読んでも返事がないからおかしいなとは思ったんだ。バカみたいに早くなってる心拍数を深呼吸しながら無理やり抑えて居間の扉を勢いよく開いた。
その先には地獄絵図だった。
一面に広がる赤い血。言い換えるなら赤い海。
蹲ったまま動かなくなった親父。
俺に背を向けて横になったまま倒れているおふくろ。
無造作に割られている窓ガラス。
めちゃくちゃに荒らされたリビング。
そして、窓から逃げようとしている全身真っ黒の服を着た……男がいた。
深く帽子を被っているから顔がよく見えなかった。全身真っ黒で、体のそこ等中についている返り血。
俺を見つめた後、血相を変えてそいつは俺の前から姿を消した。
なんだろうな。まったくともってそいつを見た瞬間、動けなかった。
何とかして動かなかった体を動かしても歩くのが限界だった。
なんとか両親に近づいて2人とも体を起こした。
2人とも胸に深く包丁が突き刺さり、どくどくと血が溢れている。そして2人の顔は虚ろな顔つきだったのを微かに覚えている。
生気を失った目、少し冷たくなっている体、何度声をかけても返事がないシンとした空気。
頭が真っ白になったまま、2人に突き刺さっている包丁を引き抜いた。
「親父…おふくろ…?」
なんだこれは?どういうことだ?血?包丁?あの男は?どうして動かないんだ?一体…なんなんだ?
「おい……なんでなんだよぉ…」
目から零れている涙が止まらない。どうしてこんな事にならなければならないんだ?
「君」
「……」
「これは…何かな?」
「……親父…おふくろ…」
後ろから声を掛けられて振り向くと、警察の男たちが数名。多分、今の俺の状況から俺が両親を『殺した』と判断したんだろうな。
「これはお前が?」
「あ……うぁ…」
「…だめだなこりゃ」
「どうします?部長」
「こいつじゃない。こいつは俺がやるからその両親を手厚く対応してやってくれ」
「了解」
そこから先は覚えていない。
その後、俺の目に映ったのは警察の人たちが両親の体を黒の死体袋に入れる光景と鏡に映った俺の死んでいるかのような顔つきだった。
***
両親の死から立ち直れていない俺は、学校にもいかず、飯も喉を通さず、無気力な時間を過ごしていた。考えてしまうのは、頭に浮かんでくる両親の死に顔を見た瞬間に吐き気が止まらなくなりトイレに駆け込む日々。だが腹に何も入れてないから出てくるのは苦い胃液だけ。
「くそっ…」
便器に吐いた後、リビングのソファに横になる。なんて自堕落な生活だ。だけどこんな事しか今は考えられない。
”どんな事も今はどうでもいい”となっている。
ピロリンッ
絵里『和平?最近学校にも来てないけどどうしたの?大丈夫?』
流石絵里は優しいな。恐らく彼女は俺がこんな状態だったとしても心配してくれるんだろうな。
『大丈夫だ。風邪だよ風邪』
風邪だったらどんだけ楽だろうな本当に…。
さて、そろそろ他のやつらに詮索されないために少しでも学校には出るか…。
この時、俺はわかっていなかった。
この時に
***
不幸なんて何度も来ると予想したことはあるだろうか。否、『もうこんな事起こってほしくない』と考えるといったような負のスパイラルを無理矢理にでも止めようと考えるだろう。だが、これは自分や、または他人が故意や偶然に起こせるような事ではない。言ってしまえば『偶然』といった現象なのかもしれない。
俺が何が言いたいって?
『ここまで不幸が続くと思うか?』
久しぶりに学校に来て教室のドアを開けた。
俺の瞳に映ったのは、吐き気がするようなゴミのような光景だった。
絵里の周りを大勢の人間が取り囲み、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせている姿。俺と絵里の机には『死ね』『ゴミ』『人殺し』『キモイ』『消えろ』などの単語が醜い字で書き殴られている光景。
別に俺の事を言うなら構わないが、俺は別のことにムカついているんだよ。
『な~んで絵里がこんな目にあっているのかな~?』ってな。
しかもよく見たら絵里の制服にはところどころ誇りまみれ。顔にはちょっとした痣。微かに濡れている髪。
そして最後には。
「なんであんな人殺し庇うんだよ気持ち悪ぃな!」
「和平の事をそんな風にいうのはやめて!何もしらないくせに!」
「知りたくもねえから言ってるんだよ!」
「九条なんてどうせ碌な人間じゃないんだからこのままみじめにしてやればいいのよ!」
「貴方達に和平が何をしたって言うのよ!」
「うるせえ!」
「きゃっ!」
絵里を壁際に向かってドンッと突き飛ばす。
それが俺の着火剤になった。
・
・
・
「ぎゃぁ!?」
「おいおいこの程度でへたばんな…よっ!」
「がふっ!!」
そして時間は過ぎて放課後。絵里を突き飛ばした奴を呼び出して絶賛お話し中。今こいつの顔面は鼻血と涙と吐瀉物でべたべただ。
「な…なんなんだよぉ…この人殺しがぁ」
「それはこっちのセリフだボケ。絵里に何してくれてんだよ」
「そんなの…どうでぎゃぁあ!?」
「どうやら本当に腕の一本折ってほしいようだな?やってほしければそう言え」
「ああああああ!痛い痛い痛い痛い!!?やめてくれ痛い痛い!!!」
「なら俺の質問に全部答えろ」
胸倉を掴んで壁に叩きつけた。
1つ、なんでこんなことになったか。2つ、どうして俺が人殺しってなっているか。3つ、どうして俺がなるべき立場が絵里になって、半分リンチになっているのか。4つ、どいつ共がこのことにした張本人か。
こいつは半泣きになりながら喋ってくれた。
まず、こんなことになった魂胆は絵里だった。それは2つ目の理由と関係があった。俺の両親が死んだ事の情報、又は噂が学校に流れていたそうだ。しかも中学生なんか噂が大好きなグループだ。噂が流れれば『あれだこれだ』と話が進み都合の良い情報になる。その結果がこれだ。俺だって好き好んで両親をぶっ殺すわけがない。どこからか情報が入りこんな状況になったのだろう。
それで噂になっているのを目の当たりにした絵里は。
『和平はそんなことしない!』
そうなるとどうだ?次はそいつに標的が向く。中学生なんて碌な奴らなんかいやしない。数で集まって一つをつぶすしか能がない。自分が正しい自分はこう思っているから合っていると都合の良い解釈を喋る。
お前らがなんの真実を知っている?見たのか?聞いたのか?俺からこの両親の死を。
ふざけんじゃねえ。反吐が出る。
碌に分かろうとしない奴が何を一丁前に正義の味方ずらをしている。俺からしたら全員クズだ。気持ちが悪い。
その結果が絵里のリンチだ。人殺しをした俺の味方をしているからこいつも人殺しだと決めつけ数の暴力に終着したのだろう。絵里は何も悪くないのに。
これが3つ目までの答えだ。
そして4つ目。これを言いふらした奴らは数名。全員の名前を聞き出した俺は完膚なきまでに叩きのめした。中に女がいたのは予想外だから言葉で叩き潰してやった。
まあ勿論先生にチクる奴は出てくるから俺は先生に呼び出しを食らう。
この時は俺が悪かったですと話しを進めてすぐに終わらせた。長いこと話しても俺に得なんて一切ないからな。
頭お花畑な奴らだ。敵が一人だからやれるところまで全力でやってくる。てめえらが俺と同じ立場になったら堪えられるのかねえ?無理だろどう考えても。
「和平。心配しないで、私は大丈夫だから」
「私はずっと和平の味方だから」
「和平の事信じてるから」
こんな目にあいながらも絵里は俺の友達でいてくれる。最高の友達、最高の彼女。こんな女の子は絶対いない。
なんでだろうな。
こんな事まで言われたのに。
『俺は彼女を裏切ったのか』
まあ過去を悔いても遅い。なっちまったものはしょうがない。
”こうするしか、絵里がこれから傷つくことなく、助けられる道がないと思ったからだ。”
さて、問題だ。
貴方は自分にとって大切な友がこんな目にあっていたならどうする?助ける?見捨てる?別にどれが合っているとかではない。ただ貴方の答えを聞きたいだけだ。
俺はそうだな。標的を俺に向けさせるかな。そしたら少なくとも絵里は標的にされない。苦しむのも痛いのも俺だけ。俺だけ傷ついて彼女が救われるなら安いものだろ。
けどこれだけじゃだめだ。絵里は優しいからな。俺がどうやっても絵里は付いてきてくれる。こんな奴放っておけばいいのにな。
じゃあどうする?
答えは一つ。
『俺に目を向けさせるために、彼女を裏切り、彼女から遠い人間になればいいんだ』
どうやって?
『最低で最悪な事をして…俺が完ぺきな悪者になればいいって訳だ』
全員の目の前でな。
シリアスは続きます。