最低で最高の   作:優しい傭兵

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悪者のある日

高校3年生になって早3ヶ月。時期的には梅雨だな。

 

 

そこは、人目に付かない学校の校舎裏。

 

 

「おらっ!」

「ぐふっ…!」

「お前が学校に来るだけでも罪って分かるかな?分からねえかクズだから」

「矢澤さんや東條さんに話しかけてもらえるからっていい気になるなよオラァ!」

 

殴打によって聞こえてくる鈍い音。そこでは4人の男子グループが九条和平に対して暴行を行っている姿だった。

 

 

――けっ…一応成績ではお前の方が低いんだけどな。屁理屈だなこれは――

 

 

「何笑ってんだよてめえ!」

「いっ!?」

 

――ってえええええ!?この野郎太ももの横蹴りやがった!?クソいてえじゃねえか!――

 

 

「ラーストっ!!」

「ぶっ!?」

 

太ももを膝で蹴られて、地面に膝をついている俺の顔面に向かって蹴りが放たれる。蹴りは俺の顔面に直撃し鼻血が凄い勢いで出てくる。

流石に効いた…。そのまま地面に仰向けの状態で倒れる。

 

 

 

「今日はこれくらいにしといてやる。あんまり学校では調子のるんじゃねえぞ」

「ははっ、鼻血で顔面ぐちゃぐちゃじゃねえかキモっ!ww」

「ちゃーんと家でママに手当してもらえよギャハハハッ!」

 

 

 

それを言い残し男たちは校舎の中に消えていった。

 

 

 

「ちっ……」

 

 

別に喧嘩が苦手って訳ではない。更に言うと得意な方だ。あの時から喧嘩なんてバカみたいにしていたんだからな。

けどここであいつらにやり返したら教師にチクられて俺が怒られる。仕掛けたのはあいつらだと言ってもどうせ教師は信じない。嘘ついていると思われてもっと信じられなくなる。どうやら俺は教師にも嫌われているようだな。

理不尽だよな色々。俺何にもしていないのにここまでするか普通?よかったな俺が優しい奴で。優しい奴じゃなかったらすぐに追いかけて歯の一本や二本折ってるぞ。あ、やべ全然鼻血とまらね…。

 

 

 

「全面的に信用されてないからやり返したら進学無くなるかもしれないしな」

 

 

もう一度言おう。理不尽だぜ本当に。

 

 

 

 

 

 

 

「またボコボコにされてるわね。いつも通り」

「ん?」

 

 

視線を移すと救急箱を持っている小柄な女の子、矢澤にこがいた。

 

 

「よっ、衛生兵」

「誰が衛生兵よ。傷に塩塗るわよ」

「やめてください死んでしまいます」

「ったく…」

 

 

手際よく俺を治療してくれる矢澤。傷口にガーゼを当てて包帯を巻いてくれて、絆創膏を丁寧に張ってくれる。

 

「いつも思うけど、なんでやり返さないのよ。男のくせに」

「分かってんだろ…理由ぐらい」

「そうだけど、悔しくないの?」

「悔しいっちゃ悔しいが、そこまで怒ったりは無いな」

「理不尽よね。ほんと」

「お?今日は意外に優しいな。やっぱりあの子たちがアイドル研究部に入ってくれたのが嬉しかったのかあたたたたたたた!!?バカバカ力入れすぎだ!!」

「うるさい!傷口にピンセット突っ込むわよ!」

「拷問か!?」

「はい終了」

「がふぅ!?」

 

バシンッと俺の背中を叩く矢澤。ツンデレか?ツンデレってやつだなこれが。

 

この頃、矢澤はμ'sと呼ばれるアイドルグループが自分の『アイドル研究部』に入ったのが嬉しいのか、最近笑顔が増えた。後輩が増えたからか、はたまた同じ夢を追いかける仲間が増えたからか。なんにしても、矢澤にとって良い事なのは確かだ。

 

 

「まぁ…苦労もあるけどね」

「あー…絵里か」

 

μ'sはスクールアイドルの祭典、『ラブライブ』に参加するために生徒会とガチンコ勝負の真っ最中。生徒を集める為の行為なのはお互い一緒だが、決まりだの可能性だのといった御託揃いですれ違いが生じている。生徒会では理事長に反対され右往左往しながら四苦八苦している。μ'sは生徒会、正確には絵里の壁がキツすぎて中々相手にしてもらえない。絵里のことだから『認められないわ!』とか言ってんだろうな。

 

 

「けど私たちは諦めないわ。絶対に」

「まあせいぜい頑張れ。俺は知ったこっちゃないが」

「ふん、アンタは私たちの事をさりげなく応援してればいいのよ」

「さりげなくか」

「ほら、ちゃんと顔とかの血、流しなさいよ。そろそろ授業なんだから」

「おう、俺は遅れていくからさっさと行けよ。勘違いされるぞ」

「じゃ、またね」

 

そう言い残して彼女は去っていった。どうせ今更急いだところで遅刻なのは確実だから少しゆっくりしながら行こう。

 

 

 

「絵里…か」

 

まあ分かりきっているが絵里とは会話をするどころか目すら合わせない。当然と言えば当然だ、かれこれ3年間くらいだからな。いや、たまに偶然目が合うときはあるよ?その時はあっちがすごい勢いで顔をそらす。通常の3倍のスピードで。どんだけ嫌いなんだよ。

好きなのは今でも変わらない。一途なんだろうな俺…。いや、多分とらえ方次第ではストーカー扱いだ。大丈夫…そこまでのことはしていない。けどそれも叶わぬ願い。奇跡でも起こらない限り、天地がひっくり返っても無い。

今でもあいつに何かあったら手助けはするつもり、けど間接的にだ。直接的に協力なんてしてみろ。そんなことしたらマジでどうなるかわからん。

 

 

あの時に決めただろ…。悪者になるって…。だからこんなリンチ程度でやられてんじゃねえよ和平さんよぉ…。

 

 

 

 

 

あいつのためならどんな痛みだって耐えてやる…。おふくろ、丈夫な体に産んでくれてありがとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すんませーん遅れました」

 

 

お調子者スタイルで行こう。教室に入ると当たり前かのごとくクラスの連中が俺を見る。だがすぐさま顔をそらすのがほとんど。けどクラスの中で俺を見つめる視線が複数。東條と矢澤。そしてさっきまで俺をリンチしていた男ども。あれだけボコボコにしたつもりがケロッと回復して帰ってきてるんだからな。めっちゃ顔青いし。

絵里は…まあ見てないわな。

 

 

 

 

「……教科書49ページだ」

「ラジャーっす」

 

先生なんて見もしないからな!俺が遅刻するのなんかいつものことだから。

 

 

俺の定位置、一番後ろの窓際の席。クラス決めの時からずっとこの場所から動いてない。席替えで移動したことなんて一度もない。俺からしたらラッキーなんだけどな。

 

 

「ふぅ……」

 

 

横目で少し離れた場所にいる絵里を見つめる。俺なんて見向きもせず真面目に授業を受けているその姿はまさしく生徒の鑑。さすがは生徒会長様だ。テストなんて毎回1位だしな。俺?一応20位以内だぞ?

けどこんな点数をとっても教師は俺に気を掛けたりしない。むしろカンニングをしているんじゃないかってぐらい疑いを掛けられる。まあその時はもう一度テストして証明するんだけどな。どんなひっかけ問題が出てもなんのその。舐めんじゃねえよ。

 

 

 

ブブッ・・・。

 

 

 

(ん?)

 

 

教師にバレない様にスマホを開く。画面には。

 

東條

『また?』

『おう』

『大変やね』

『優秀な衛生兵がいるから問題なし』

『体の傷は消えても心の傷は消えへんよ』

『慣れてるし、俺は狂ってるから心なんてないと思うぞ』

『悪者さんは残酷で最低やもんな』

『よくお分かりで』

『けど…優しすぎる』

『・・・・・・気のせいだ』

『かもやね・・・。無理せんときよ』

『お』

 

 

 

 

無理もくそもない。自分で決めた道を進んだ結果がこうなっただけだ。確かにあの頃、両親が死んで、いじめられ、絵里と最低な別れをしたときはこうなるとは思わなかったさ。まあ、絵里をあんな風に裏切ったら恨みを買うやつは増えるし、両親を殺したっていう未遂を立てられ馬鹿にされたりは高校に入ってからもあるのはわかっていたし、今更どうこうしようとも考えていない。流れに身を任せるしかねえのかもしれない。

 

 

 

 

「九条これ答えてみろ」

「1<x<3っすね」

「・・・・・・正解だ。余所見はするんじゃないぞ」

「はいはーい」

 

悪いがちゃんと話は聞いてんだよ。グルで俺を辱めるつもりかもしれないがそう簡単にさせてたまるかよ。成績は良い方が俺にとっちゃかなりなメリットになるからな。

 

 

 

「ちっ…」

「つまんない…」

「きっしょいな…」

 

 

 

 

 

「あん?」

 

 

 

 

シーン・・・・・・――。

 

 

 

 

陰口叩く奴らにはこれに限る。陰口叩くくらいなら面と向かって行ってこい。碌に喋れん奴がこそこそすんのはダサすぎるぞお前ら。

 

 

 

「九条うるさい」

「俺ですか」

 

 

 

クスクス……。

 

 

 

 

(はぁ…あほくさ…)

 

 

嫌われ者はどこまで行っても嫌われ者なんだよな~…。

 

 

 

 

 

(これ以上何かをするとまた怒られそうだから真面目に受けるか)

 

 

そこから俺は教科書、ノートを開き、しっかり黒板を見て授業を受けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

俺を見てくる視線に気づかぬまま…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「九条君、これ運ぶの手伝ってくれへん?」

「嫌だ」

「お願い!一生のお願い!」

「こんなところで一生のお願い使うなよ勿体ない」

「じゃあ使わないけどお願い!」

「………どこまでだよ」

「やった!やっさしい~!」

「タヌキめ」

 

 

帰ろうとした瞬間に東條に資料室に連行されている現在。腕はやめろ腕は。ちょっと前にリンチされて痛いんだから。いててててて!!?

 

 

「どこまでだよ」

「秘密~♪」

「あほか。捨てるぞコレ」

「嘘嘘。すぐにつくから」

「…や~れやれだぜ」

 

 

広辞苑3倍くらいある資料の山を担ぎ、東條と一緒に廊下を歩くこの姿。勿論、すれ違う奴らはそれを良しとは思わない。

 

 

 

「うわ…殺人者」

「なんで東條さんと一緒に歩いてるんだよ…」

「早く帰ろ・・・血生臭い匂いがついちゃうから」

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

「なんか・・・ごめんな。人通りの少ないところを通ったつもりやってんけど…」

「気にするな。何時ものことだ」

「怒らへんねんな」

「怒ってなんになる?同情されるわけでもなく、心配されるわけでもなく、悲しんだりするわけでもないのに?何にもわからない奴らに知ってほしくもない。こんな幼稚な嫌がらせをしてくる奴らの程度が知れるぜ。程度の低い奴らと張り合うだけで時間と体力の無駄だ。あいつらの土俵でやり合うつもりは微塵もない。張り合うって事はあいつらと同じレベルだって主張してるようなもんだ」

「プライド?」

「プライド・・・かもな」

 

 

真正面から殴りにかかる奴らの方がまだマシだ。陰でグチグチいう事しかできず、碌に体も張れない。男だけど陰口言って喧嘩ができない奴、女だからと弱音を吐いて真向から言ってこない奴。気分が悪くなる…。陰口叩いてのけ者にしたいなら勝手にそうしろ。

 

 

俺はもう誰も信じない(・・・・・・・・・・)

 

 

「ふふっ」

「何が可笑しいんだよ」

「べ~つに」

「………?」

 

 

 

 

「あ、東條!ちょっといいか?」

 

 

 

 

そんな話をしながら歩いていると、急に先生に呼び止められた。

 

 

 

 

 

「はい?」

「山田先生が呼んでたぞ。急用らしい」

「え、・・・ウチですか?」

「おう、すぐに頼む」

「わかりました。ごめん九条君。これ頼むわ」

「はいはい」

 

東條の持っていた資料を俺の持っていた資料に上乗せする。

 

 

 

「ちなみにこれはどこまで?」

「生徒会室やから」

「へいへ………ん?」

「じゃ、いってきま~す!」

 

 

 

 

 

まって?あいつ今なんて言った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生徒・・・・・・会室?」

 

 

 

 

尋常じゃないくらい冷や汗が出た。

 

 

 

 

 

 

 




(`・ω・´).+゚.。oO(これからの展開を妄想中)
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