稀代の暗殺者は、大いなる凡人を目指す   作:てるる@結構亀更新

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カルトは進化した!

天空闘技場?どこ?ていうか何?

 

もしこれが漫画だったら頭上に大きなクエスチョンマークが浮かんでいることだろう。一体兄さんは何言ってるんだ。

だいたい私、この世界のこと何も知らないんだよ?どういう文化レベルにあるのかも、政治制度も、ここがどこかも。うわ、そう考えると結構私まずいな。早いところ情報収集しないと。

 

まあ今はそれはともかくとしてだ。

 

兄さんや、私はまだ赤ん坊なのだよ。単独で外うろちょろしたら警察に預けられちゃう感じなのだ。ここの世界に警察っていう組織があるのかは知らないけど。まあ何が言いたいかっていうと、私そんな今から仕事できるほど成長してないんだよ。

 

脳内でそう訴えかけると、思い出した、とでも言うようにポンと手を打つ兄さん。

……この人頭いいけど、頭悪いぞ。なんか一個のことに集中しちゃうと周り見えなくなるタイプだ。

 

「カルトは考えてること全部こっちに伝わってるの覚えてないの?人のこというのもおこがましいほどのバカだね。」

 

やめて兄さん!そんな生ゴミを見るような目で見ないで!ついでに手をナイフみたいに変形させるのもやめて!

 

涙目で首を横に振りまくると、兄さんの目線が若干和らいだ気がした。つまり、殺気が乗った目から呆れたような目に変わった。

まあそれがいいかどうかは別問題だ。けど命は大切だよ、何よりも。うんうん。

 

そんなことを考えていると、兄さんがいつもの緑の飾りがついた針を出す。

ん?んん?待って、ちょっと待って?

それ針だよね。さっき刺さないとか言ったよね。その舌の根も乾かないうちに針の先端をこっちに向けるってどういうことかな。

 

「精神操作用の針はささないって約束しただけ。それにこの針は、別にカルトを害するためのものじゃない。むしろこれ、喉から手が出るぐらいほしいものだと思うよ。今のカルトにとっては。」

 

へ?何それ。

害するものじゃないってことは、人間を操作する用のやつじゃないってことか。

というか兄さんの能力って針の種類で分けられてるんだね。そういう風に複数の能力を持つことも可能と。なるほど。

でもまあ全く関係性のない能力を複数持つことは難しいんだろうけど。兄さんの能力の傾向からして。

 

まあそんなのはどうでもいい。それよりもだ。

私が喉から手が出るぐらい渇望してるもの。それはどういうことか。

情報?力?いや、ほしいものはいっぱいありますけど。むしろこの際なんだってほしいですけど。くれるなら。

 

「じゃあいいよね。刺すよ。」

 

はあ?

ちょ、待てや兄さん。やっぱりあなたアホでしょ。

確かにくれるならほしいとは言った。でもそれ、安全の保証は?そんなあやふやな状態でおとなしく刺させるような性格してないんですけど。まずどういうものなのか説明しろや。

 

針を持って近寄ってくる兄さんを避ける。何このデンジャラス鬼ごっこは。リアル鬼ごっこよりもリアルだよ、命の危機的な意味で。

とはいえ赤ん坊の足では限界があるわけで。数回かわすと、勢いよく間合いを詰められて腕をつかまれる。

 

「刺してから説明する。その方が早いし、わかりやすいでしょ。」

 

いや、だから刺してからじゃ遅いんだって。

首を横に振って全力で嫌がるも、兄さんはそんなことを歯牙にもかけず、ブスリと私のうなじに針を刺した。

 

いた!いった!何これすごい痛い!

 

刺されたところから兄さんのオーラが浸透していく感覚がする。そしてさらに兄さんのオーラが私の体を変えてくるような感覚。それはもう、死ぬほど気持ち悪い感覚だった。いや、死ぬよりはマシだけど。

骨が、筋肉が、血管が、引き延ばされるような、そんなイメージ。それが脳に意図せずとも浮かぶ。

 

痛みで思わず涙目になる。そのぐらい痛い。

人為的な成長痛とでも言おうか。それも数年分を濃縮したような。

 

「うん、これなら問題ない。」

 

兄さんが満足げにそう呟くと同時に、身体中の痛みが引く。まだじんわりと痛みはあるけど、それでもだいぶマシだ。

なんだよこれ。すごい害あるじゃん。何が喉から手が出るぐらいほしいだ。私痛いのが好きなドMじゃないんですけど。もしそう思われているならば誠に遺憾である。

 

恨みがましい目で兄さんを見やりつつ、刺されたうなじを触ろうと右手を伸ばす。

………およ?

…………………およよよ?

 

 

後ろに回そうと伸ばした手。それはつい数分前までは赤ん坊らしいぷにぷにの腕だった。

でも、今は。

 

細くてすらっとした長い、小学生ぐらいの子にありがちな腕。

思わず全身を見る。

さっきとは比べ物にならないぐらいしっかりして長い足。二足歩行とか余裕な感じの足。

 

待って。もしかしてこれって。

 

声を出そうと肺に空気を貯めて、喉を震わせるイメージをする。

 

「あー、あ、え?」

 

なんの問題もなく声が出る。さっきとは違う、自分の意思で制御できる声。

ならば、それならば試してみなければ。

 

「イルミ兄さん。」

 

一音一音ずつゆっくりと声を出す。

すごい。話せる。

 

それは確かに当たり前のことなのかもしれないけど、ここひと月ぐらい赤ん坊の思い通り声が出ない喉を味わってきた身からすると、それはとてもありがたいことだった。歩けるとか、手が自由に動くとか、もちろんそれも嬉しいんだけど、やっぱり喋れるというのはそれとは比較にならないほどの嬉しさがある。

 

「兄さん、喋れた。」

 

そう言いながら、兄さんに抱きつく。

喋れた。自由に歩けるようになった。手先が器用に動かせるようになった。

 

ごめん兄さん。本当にありがとう。

 

普通に意識がある状態で、自分の思い通りに体が動かないのは思いの外辛かった。特に歩けないのは、声が出ないのは、自分の想像していたよりも堪えた。

早く成長できないかなって思って、そのために能力作ってやろうかぐらい思ってた。そのぐらい私にとって体が幼児のままというのは辛いことだった。まあ私じゃなくても同じ状況に陥ったらみんな困るだろうけど。

 

やっと、思い通りに動く体を手に入れられた。

あ、だから兄さんは喉から手が出るくらいほしいものって言ったのか。本当にその通りだ。

 

多分兄さんは私が早く仕事できるようにっていういう意味で刺したんだろうけど、それでもその行動に私は救われた。これからあと数年は悩まされなければならなかったはずの問題が、こんな少しの間の我慢で解決した。

 

「兄さん、ありがとう。本当に本当にありがとう。ずっと恩に着る。」

 

そう言いながらぺこりと頭を下げると、兄さんに不思議そうな目で見られる。

むう、せっかく人が真面目に感謝してるのに。まったく。

 

「俺はカルトがそのままの容姿じゃ仕事できないから、俺のために針を刺したんだよ?」

「うん、わかってる。でも感謝してる。」

「ふーん、まあいいや。」

 

ちょ、兄さん。何がまあいいやだよ。もうちょっとちゃんと受け止めようよ。可愛い妹だろうが。

そうだよ、私妹だった。自分で言ってて思い出したわ。

 

「妹?あ、そっか。カルトって性別男じゃないのか。」

「……生まれた瞬間から女ですが何か?」

「俺別に赤ん坊の性別わかるほどそこに精通してないから。」

「確かにそうか。そこは私も見分けつく自信ないわ。」

 

そう呟いた瞬間、兄さんが怪訝そうに眉をひそめる。

ん?今私なんかしたか?

 

「……その一人称。」

「一人称?それがどうかしたの?」

「私ってなんか気持ち悪い。」

 

はあ?なんじゃそりゃ。意味がわからん。

だって女の一人称なんて私が相場でしょ。兄さんは私をなんだと思ってるんだ。

 

「せめて僕ぐらいにしてよ。」

「え、なんで?だって私女だよ?」

 

兄さんの眉が私、といったところでさらに深くひそめられる。

うわー、そこまで拒否るかー。あ、でも確かに他の兄弟みんな弟だもんね。多少の違和感はあるのか。

でも生まれ持った一人称を変えるのって結構大変だと思うんだけど、ていうか私が変えて得られる利点が何一つないんだけど。

 

そこまで考えると、兄さんにデコピンを食らわされる。

ていうかそれはもうデコピンとかいう可愛い言葉でくくれるもんじゃない。さりげなくオーラ込めるな、この道徳観念吹っ飛んでった系兄さんが。どこの世界の兄が、か弱い妹にオーラでガードできなかったら死ぬレベルのデコピンをお見舞いするんだよ。

ていうか本当に痛いんだけど。これ以上バカになったらどうしてくれる。

 

「今更じゃない?脳細胞が多少破壊されたぐらいでそのバカの程度は変わらないでしょ。」

「うわ兄さん、そういうこと言ってると友達いなくなっちゃうよ!常に言葉には思いやりを……って!」

 

兄さんの針が飛んできたのをギリギリで避ける。こら兄さん、さりげなく舌打ちするんじゃない。

ていうか今のやつ、ちゃんと避けられる速度で投げてるじゃないですか。一応約束は守ってくれる系兄なんですね。了解しました。

 

「カルトは今ここで潰すより、キルのために働かせて潰す方が俺にとって有益だと判断しただけ。」

「何それ、そっちにしても潰すのは確定なんですか?」

「カルトが潰すのにはもったいないと思える間は生かしておいてあげてもいいよ。」

「うーわ、何その生殺与奪権握られてる感じ。一生潰さないでいてくれたらありがたいです。 」

「じゃあ最低条件としてその一人称何とかしてよ。そうじゃないといちいち私って聞くたびに頭握りつぶすよ?」

 

相変わらずの無表情のまま手をこちらの頭上の上にホバリングさせる兄さん。やめて、それ冗談のつもりでも、全く冗談に聞こえないから。兄さんがやると本気にしか見えないから。

 

「何言ってんの。本気だよ、いいから早く一人称を僕か俺にどっちにするか選んで。」

「……僕か俺の二択ですか。もしかして兄さん、僕っ娘とか俺っ娘とか好きだったり?」

 

冗談混じりにそう言うと、兄さんに冗談の要素が全くない冷たい目で見られる。

いやだー、怖いよー。まだ死にたくないよー。

 

「ミルと一緒にしないでよ。ただ私っていうのが気に入らないだけ。」

「え、あ、やっぱりミルキそういう系なんだ。すごい納得いくけど。こんなに納得いったの久しぶりだけど。」

「ていうかカルトのその、兄さんと呼び捨ての境はなんなの?ミルも一応兄だよ?」

 

うわ、急に話飛ばしやがって。このマイペース自由人が。一人称の話はどうなった。

まったくもう。兄さんすごい人付き合い向いてなさそうだよ。空気読めない、てか読まないし。

っじゃなくて、兄さん呼びの話だっけ。

 

確かによくよく考えてみると謎だ。

私が兄さんってつけて呼んでるのはイルミ兄さんだけ。他は基本全部呼び捨てだ。

うーん、なんでだ………って、あ。

 

「精神年齢、かも。」

「どういうこと?」

「兄さんってだいたい20超えてるでしょ。それだったら前の人生の年齢を足してもお兄ちゃんなんだよ。」

 

そう説明しても、何言ってるんだっていう目で見られる。兄さん怖い。

 

「だから、前の人生の記憶足すと、私の年齢って20歳と半年ぐらいになるんだよ。それだったらイルミ兄さん以外みんな弟でしょ?だからイルミ兄さんだけ兄さんで、他は全部呼び捨てなんだと思う。」

「ああ、なるほど。だから言動が見た目と釣り合ってないのか。子供の可愛らしさがびっくりするほどなかったわけだ。」

 

いや、兄さんなに変なとこで納得してるんですか。というかそんなこと思ってたの?

子供の可愛さって………兄さんはいったい私に何を求めてるんだろうか。本当に不思議だ。笑っちゃうぐらいに不思議だ。

うーん、まあ確かに一般的な乳幼児と同じような動きをできていたとは言わないけど、それでもそんなに言われるほど釣り合ってなかったんだろうか。まあそりゃそうか。そもそも普通に思考できてる時点で子供らしさなんて皆無だったわ。

 

まあ確かにそうなんだけどね。否定はしないけどね。でもやっぱりなんかこう、ババア扱いされているようで胸にくるものはある。

 

「兄さんも呼び捨てがいいの?」

「は?なんで?」

「いや、いきなり話題すっ飛ばしてまで振ってきたから、そういうことなのかと。」

「……別に。」

「それはどっちなんだよ。ていうか何、その絶妙な間は。」

 

兄さんのどっちとも取れなくはない微妙な返答に突っ込むと、むにょんと頬を引っ張って伸ばされる。

バタバタ暴れても取れる気配はない。というかむしろ引っ張られて私が痛いだけだ。

ちょっと不満げに眉尻を下げると、仕方ないなあって感じで手を離される。

 

じんじんと真っ赤になって痛む頬を抑える。うわー、さすがだわ。力強すぎてあれだけの時間でも内出血の量が異常。

 

「で、結局一人称の話はどうなったの。」

 

強引に話を軌道修正させる。これ以上兄さん呼びの話してたら、私の頬が破れる。さすがにそれは嫌です。なごやかにいきましょうや。

と、その話題に戻すと、また兄さんの眉がしかめられる。

 

「とりあえず私は却下。気持ち悪い。」

「えー、そんなことないよ。一人称が私の人間なんて捨てるほどいる……どころかむしろ女だったら圧倒的多数だよ。母さんだって一人称私じゃん。」

「だから嫌なんだよ。あの人苦手だし。」

 

そう言いながら本気で嫌そうな顔をする兄さん。

ああなるほど。だからそんなに私、嫌いなのね。兄さんいつも地味に母さん避けてるもんね。

 

「……変えなかったら、どうなる。」

「俺が衝動的に頭を握り潰す。」

「わーお、デンジャラスだね。」

 

苦笑いしながらそう呟くと、さらに兄さんの眉の間のシワが深くなった気がする。

この人、マイナスの感情の表情は何気に結構浮かべるよなあ。笑ってるのは見たことないけど。ていうか見たら多分幻覚だと思うけど。

それぐらい兄さんに笑顔は似合わないんだよなー。無表情が板につきすぎてるんだよ。

 

「わかった、善処する。」

 

仕方なくそう言う。だって頭握り潰されたくないもん。死にたくないもん。

本当に兄さん、母さん苦手なんだろうなあ。一人称が一緒ぐらいで思わず私が母さんと重なって苛だっちゃうぐらい。

まあそりゃそうか。だって兄さんこの家に結びつける念をかけたのは母さん。私でもそれぐらい過敏になるかもしれない。

 

あ、違う私じゃない、僕、か。

 

僕ねえ。すごい性別不詳感が。まあいいけどね。そっちの方がラクそうだし。

だって外ウロウロしたり、最終的に旅とかした時って、女って思われるより男って思われる方が安全性高そうじゃない?この世界に人攫いっていうものがあるかどうかは知らないけれど。

一般的に人身売買業界において、男より女の方が価値高いと思うんだよね。主に見た目的な意味で。

 

「人攫いねえ、誘拐だったらウチもやってるけど。」

 

兄さんが何気なくボソリと呟いたその言葉で、この世界にも人身売買的なものがあることが発覚しましたー。

まさかウチがやってるとは。恐ろしい。

誘拐して依頼主に受け渡すってことかなあ。自分でゆっくり嬲り殺したいとか。うーわ、想像するとなかなかえげつない話だ。

でもまあそういう場合もあるだろうけど、普通に奴隷として取引される場合もあるのかなあ。そう考えるとある程度強くなってからじゃないと単独で外歩くの怖いかも。

 

うーん、やっぱりスラム街みたいな治安悪い場所あるのかな。どうなんだろ。

うわ、何度も思ったけどやっぱりわ……僕何も知らないなあ。

 

むう、さすがにいつまでもこの状態だったら仕事云々以前に、死ぬ未来しか見えないよ。変な場所に迷い込むとか、うっかりマフィアに喧嘩売っちゃったとか、何気なくやったことが犯罪行為だったとか。

 

いや、暗殺って犯罪行為だけどね!?

 

まあそれはともかくだ。早いところわ、僕は基礎常識を身に付けたいわけで。で、それを知ってるであろう人が目の前にいるわけで。

 

「ねえ兄さん、よくよく考えるとわた………じゃなくて僕、この世界のことよく知らないんだよね。」

「ああ、そうだね。言動の節々から伝わってくるけど。」

「というわけで兄さん、わ……僕に基礎的な常識教えてよ。じゃないと何もできないよ?」

 

そう頼むと、兄さんは結構しっかり面倒くさそうな顔をする。

えー、だってそうじゃないと僕、役に立たないよ?何にも出来ないよ?

そう脳内で訴えかけると、兄さんに諦めたようなため息をつかれる。

 

「わかった。ただ、仕事と並行してだけど。」

「それはわかってる、兄さんが忙しいのも。」

「ああ、俺もそうだけど、カルトもね。」

 

当然のように言われた言葉が理解できない。

カルトもね?どういうこと?僕も仕事と並行?………って、あ。

 

「カルトの仕事は、キルが200階に到達するまでキルに念能力者が接触するのを防ぐこと。今の段階で下手に念能力に触れさせたくないし、ましてや洗礼なんて受けさせられたら笑えないから。」

「……ああ、なるほど。でもそれって兄さんがやったほうが………ってごめん!今僕なんか気に障ること言った?」

 

急にすごい殺気を放ってくる兄さんからジリジリと離れる。

いやあ、何やった僕。心当たり皆無ですが。

 

「俺が行く予定だったんだけどね。キルが俺のオーラに敏感すぎて、絶以外の状態で接近すると警戒されちゃうんだよね。ましてや殺気なんて出したら一瞬でバレる。」

 

針をくるくると回しながら、また深いため息をつく兄さん。

そんなに行きたかったんですか?どんだけブラコンなんですか?ああ、ブラコンでしたね。

 

ていうかそれって、キルアにばれない様に張り付いてなきゃいけないってこと?めっちゃ大変じゃん。

そもそもどうやってくっつくの?僕もその天空闘技場とやらに行かなきゃいけないの?

 

「そういうこと。天空闘技場ってファイトマネー的には200階が一番上なんだけど、一応200階以降もあるんだよ。で、そこでは戦闘に念能力使っていいの。」

「……つまり、僕にその200階以上のエリアに行ってこいと。」

「キルの監視とカルトのレベルアップが同時にできる、一石二鳥のいい案だと思わない?」

「僕、まだ生まれて一年経ってないんだよ?」

 

必死の抵抗を何も聞こえないかのようにやり過ごす兄さんに、頬を膨らませる。

まったくもう、死んだらどうするんだよ。しーにーたーくーなーいー。

 

「じゃあ命令する?無理やりカルトの抵抗権奪ってもいいけど。」

「うわーパワハラ。わかった、やる。けど、周辺地理と天空闘技場っていうところの全体的なレベルとルール教えて。」

 

そう言うと、一瞬目をそらされる。

いや、でもここは譲りたくないぞ。むしろ譲れないぞ。ここ譲ったら死ぬぞ。

 

「……教えてくれないなら、母さんに兄さんが一人称変えろって言ってきたって言うよ。兄さんがそこまで母さん嫌悪してるって知ったら、母さんブチ切れちゃったり………」

「カルト、そんなに死にたいの?」

「いいえ、死にたくない。だから情報が欲しいの。」

 

情報。それは生きる上で一番大切なものだ。

知ってたら難なく乗り越えられることでも、知らなければ死ぬ以外の選択肢がなくなる。

だから、たとえどんな手を使ってでも僕は情報が欲しいわけで。だって生きたいから。

 

そう考えたのを読み取ったのか、兄さんに珍しいものを見るような目で見られる。

 

「意外とカルト、そういうところちゃんと考えてるんだね。」

「兄さんは僕をなんだと思ってるの?」

「救いようのないバカ。」

 

そんなとてつもない暴言を浴びて、心が死ぬ。胸を押さえて蹲っていると、さらに兄さんのバカにしたような目が追い打ちをかける。

それでも曲げないで兄さんがYESっていうのを無言で待っていると、兄さんがマリアナ海溝よりも深いため息をついて。

 

「……俺が時間割いた分、仕事で返してよ。」

「了解です、兄さん!」

 

なんだ結局ツンデレか。

そう思った瞬間針が飛んできたけど、それすらも照れ隠しと思えばいいものですね。絶対違うけど。

 

 

 

 




会話書けるだけでこんなにラクなんだ………

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