白物語   作:ネコ

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忍界大戦
101 忍び連合?


 面の者は、その場に集った者たちに向けて言い放つ。

 

「自己紹介といこう。知っている者もいると思うが……、俺の名はうちはマダラだ」

 

 その名を聞いてその場に緊張がはしる。その中で真っ先に動いたのは雷影だった。雷影はなにも言わずに、マダラとサスケに向けて殴りかかる。

 

 当たると思われた瞬間、その拳は身体ごとすり抜けて、マダラの後ろの壁を破壊した。

 

 すり抜けたにも関わらず、雷影は焦ることなく振り向きマダラを見据える。そして、今度は逃さないとばかりに、チャクラを更に練り上げ始めた。

 

 マダラも焦ることなく、サスケを見せるのは終えたとばかりに、面に開けられた眼へとサスケを吸い込んでいく。吸い込み終えたところで雷影の準備はできたが、その時にはサスケがいないために、動きを一時止めてしまう。

 

「サスケを出せ……いや、始めにビーを返してもらおうか」

「そう慌てるな。まずは俺の話を聞け」

「少し待て雷影。聞くだけ聞いて話はそれからじゃぜ」

 

 雷影の隣にゆっくりと移動しながら、土影が雷影を止める。雷影も、先ほど自分の攻撃を避けたからくりが判明しないこともあり、渋々とだが、チャクラをそのままに話を聞く体勢に入った。

 

 そのやりとりを聞いてからマダラは、更に高所へと移動しそこに座ると、自分の計画について話し出す。

 

「話を聞く気になってくれたようだな。……話と言うのは俺の目的、月の眼計画についてだ」

 

 マダラは、月の眼計画について語り出す。途中で、サスケの事や、八尾がまだ捕まっていないことが話された時、その都度話が中断されていくが、大筋はズレることなく進んでいく。

 

(これって、サスケがマダラに操られたって説明つければ、抜け忍の件はどうにかなるんじゃ……)

 

 月の眼計画について賛同するものなどいるはずもなく、始めから分かっていたかのように、マダラは声高だかに宣言する。

 

「やはり、理解は得られんか……。いいだろう。ここに、第四次忍界大戦の宣戦を布告する」

 

 それだけ言うと、マダラは自分自身を眼の中に吸い込み、その場から消え去ってしまった。

 

「さて、どうしたもんかの……」

 

 土影の言葉で、沈黙を保っていた者たちも今後のことを話し合う。

 

「敵は既に尾獣を7体も所持している。忍び連合をつくるしかないだろう」

「雷影様はどうなのですか?」

「ビーは無事だったようだが……、暁のやつらに、これ以上好きにさせるわけにはいかん! 忍び連合で一気に叩く!」

 

 この一言で、火影を除く四人は頷き、意思がひとつになる。

 

 マダラの言葉は、それだけ衝撃的であり、また、忍び連合を設立するに十分な内容だった。もし、ここにマダラが現れず、月の眼計画を話さなければ、こうも早く纏まらなかっただろう。

 

「しかし、逃げ出した火影はどうするんじゃ? どちらにしても、木の葉にこの事を伝えねばなるまい」

「ダンゾウは信用できん! 今回のことでそれがよく分かった! それに、この事が木の葉に伝われば、里での信用も失うだろう……」

「それだと、誰に話せばいいのかしら?」

 

 ダンゾウの今回の逃亡により、信用を失ったことで、五影たちは木の葉の誰に、今回のことを話すべきか迷っていた。しかし、それもすぐに提案が上がる。

 

 提案者は、風影である我愛羅だった。

 

「木の葉で信用できる忍びなら心当たりがある」

 

 その言葉により、皆の視線が集まったところで、その名を口に出す。

 

「写輪眼のはたけカカシだ」

 

 白い牙の息子と言うことで、その実績と知名度から土影は納得し、鉄の国へ来る道中での出来事により雷影はダンゾウよりも信用できると判断する。水影は白を見ると、白がそれに頷き返したことで納得した。白が波の国であり、木の葉の里と同盟を結んでいるので、それを判断材料としたのだ。

 

 ただ、火影の事だけだと思っていた白にとって、水影の次の言葉は予想に反したものだったが……。

 

「では、木の葉には私たちが伝えましょう。丁度ここにいる白は、波の国の者で、木の葉とは同盟を結んでいますから」

「えーっと。まだ同盟を結んだばかりですし……(いや、まてよ……)」

 

 水影の言葉に反対しようとしたところで、ダンゾウとコハル相手に結ばれた、自分の誤解を解く良い機会であると考えた白は、考えを改めて賛同の意見をあげようとするが、我愛羅に先を越される。

 

「それには及ばない。こちらは帰り道に寄る程度で済む」

「そう……。ではお任せしましょう」

「あ……」

 

 白を置き去りにして次の話へと進んでいく中、白は自分の判断の遅さに肩を落として落ち込んでしまう。

 

 しかし、話の中で雷影の言葉に白は顔を上げる。

 

「ここに来る時に、はたけカカシと九尾のガキには出会った。その辺を探せばまだいるかもしれん」

 

(そうだ! 今追わせてる影分身から伝えて貰えば!)

 

 白はゆっくりと後ずさり、柱の陰に入ってから氷遁秘術を使用して、連絡を取り合う。

 

 影分身との話が終わった頃には、忍び連合の話は終わり、忍び連合の代表は雷影が務めることとなった。これにより、忍び連合軍が結成となる。

 

「各影は、それぞれの国の大名に話を通してもらおうか。それから大名会談の設定だ」

「大名会談の立会人については、こちらで準備するでござる」

 

 雷影はそれに頷き、五影会談は終了となった。

 

「白。青の後を追いますよ」

「分かりました」

 

 ちゃっかりと、柱の陰から照美の後ろに移動していた白は頷き、外へ向けて走り出した照美の後に続く。

 

 外に出てからのある程度までの足取りについては、鉄の国の侍が知っており、途中まではその話を基に追跡する。侍の監視網から出たところからは、青の付けた目印を追っていく。

 

「目印から見て、そう時間は経っていないようね。……青がどこに居るか分かりますか?」

「あちらに、反応があります」

「では急ぎますよ」

「その前に伝えておきたいことがあります」

「なんです?」

 

 ここで白は、青に誘導尋問を仕掛けるよう照美へと進言した。流れ通りであれば、心転身の術で青の意識が、ダンゾウの部下と入れ替わった状態であるはずだからであり、その憶測が正しいことを、青のチャクラが雄弁に語っていた。

 

 青がいる場所に辿り着いた時には、丁度青が木から飛び降りたところだった。照美はすぐさま瞬身の術で青を抱きかかえると地面へと降ろす。

 

 青が飛び降りた先には、木に括られた鎌が設置されていた。

 

「ありがとうございます。水影様」

 

 荒い息を上げながら、青は照美へと礼を述べる。それは演技とは思えないほど、見事なものだった。

 

「何があったの?」

「ダンゾウの部下の術で、身体の自由が利かなくなり、危うく命を落とすところでした」

「幻術か何かかしら?」

「心転身の系統だと思われます」

 

 照美と青が話している間に白は周囲を見渡し、目的の物を探す。それはすぐ近くにあった。

 

(こんな藁人形に相手を移し入れる術か……。研究のためにもお持ち帰りしたいけど、もうすぐ解けちゃうんだよな)

 

 白は、木に鎌で突き刺さった藁人形を取り外して、早速術式について何かないかと調べ始めた。青のチャクラはこの藁人形から感じられ、逆に青の身体からは、ダンゾウの部下のチャクラが感じられる。

 

「その右目の術が発動したということは、あなたの白眼を狙ったようね」

「そのようです。それよりも、この手の縄を解いていただけませんか?」

 

 青は両手を照美に差し出して、縛ってある縄を解くように願い出た。それを照美は快諾する。

 

「ええ。分かりました……。暗部のトップであるあなたが、こうも容易く術に掛かるなんて……、精進が足りないのではないですか?」

「面目次第もありません」

 

 謝る青に対して照美は、青の両手を結んでいた縄を、更に強固に結び直して青に言い聞かせる。

 

「あなたは誰?」

「何を言っておられるのです?」

「暗部のトップは長老です。あなたではありません」

「……カマを掛けられたか……食えないババアだ」

 

 その直後に鈍い衝撃音がし、青は吹き飛ばされた。照美は拳を前に出した状態で、白へと視線を向ける。

 

「今のは……私が……言ったのでは……」

「白。今度はどう?」

「まだチャクラの残滓を感じるのですが……(もういないのかな?)」

 

 確信が持てずに白が答えると、照美は頷き返答する。

 

「分かったわ」

「ちょっ! 待っ!」

 

 青が言い終わらないうちに、再度鈍い衝撃音が青を襲うことになった。

 

 

 

 その頃、先に隠遁で追跡をしていた影分身は、離れた位置から望遠鏡にてダンゾウたちを監視していた。

 

(ゆっくり歩いてくれて助かるな。感知結界なんて使ったらすぐにバレるだろうし……。文明の利器は使わないと)

 

 鉄の国を出ようとしたところで、白の見覚えのある場所が、ダンゾウたちの前方にあることに気付く。

 

(あの石橋は……)

 

 そこは、ダンゾウがサスケたちと戦った場所だった。白は、その場所へと先回りして、全体を見渡せる場所へと移動する。

 

 ダンゾウたちが、石橋の中央に差し掛かったところで、突如何者かの襲撃を受けた。

 

 それは、先ほどまで五影会談の場にいたマダラである。

 

 マダラは、1度攻撃してから離れると、ダンゾウの護衛役と戦い始める。その間にダンゾウは、右腕に取り付けられた拘束具のネジを取り外していた。

 

 ダンゾウの部下であるフーとトルネの攻撃は、尽くマダラには効かずにすり抜けてしまう。しかも、1度物体の中に入った場合は、マダラのチャクラを感知できないようで、2人して周囲の警戒を行っていた。

 

 トルネの方は上着を脱ぎ、身体を変色させていつでも攻撃できるようにし、フーはトルネの背後が見えるように、トルネの前に立つ。

 

 どこに現れるか分からない以上、2人で視野をカバーしあうしかなかった。しかし、それすらもマダラには関係がなく、トルネの背後に現れると、逃げられないようにトルネを掴み取り吸い込んでしまう。

 

 マダラは、トルネに触ったことにより、毒蟲に感染してしまった右腕を、根元から千切り取って感染の拡大を防ぐ。

 

 その瞬間を逃すことなくフーはマダラに攻撃するため近付くが、マダラは、毒蟲に感染して千切り取った右腕をフーへと蹴り飛ばし、フーがその右腕に気を取られた隙にフーを吸い込んでしまった。

 

 時間にして、ダンゾウ襲撃から10分も経っていないだろう。しかし、その時間でダンゾウは右腕の拘束具の解除を完了して巻いていた包帯をほどき始めた。

 

 それから、一旦消え去ったはずのマダラは、再びダンゾウの前に現れると、その眼からサスケと香燐を出す。

 

 サスケはダンゾウの姿を認識すると、一歩前に出てダンゾウに話しかけた。香燐はマダラに何かを言われて、すぐに柱の陰へと走っていく。

 

 話していた途中で、ダンゾウは印を組み終わると、サスケに向けて走りだした。サスケはその場を動かずにチャクラを高めていく。

 

 ダンゾウが、サスケに攻撃しようとしたところで、サスケの不完全な、一部のみのスサノオが発現しダンゾウを捕らえた。

 

 そして、離れている白のもとまで聞こえる声で叫ぶ。

 

「本当の事かと聞いてるんだ!!」

 

 叫んだと同時にサスケのチャクラが、あの広間の時のように変質していく。今度はあの時のような冷たいものではなく、怒りに満ちたものだった。

 

 ダンゾウからイタチの事を語られたサスケは、ダンゾウが言い終えぬうちにスサノオで握り潰してしまう。

 

「お前がイタチを語るな……」

 

 そうサスケが呟いた時、幻のようにして、サスケの背後にダンゾウが現れた。

 

 ダンゾウは再度印を組むと、今度はクナイを片手にサスケに攻撃するが、スサノオによって阻まる。

 

 スサノオは更に進化し巨大化すると、その拳を降り下ろし、ダンゾウを圧死させた。

 

 しかし、今度もまた、圧死したはずのダンゾウの姿は幻のように消え去り、今度は柱の上に現れる。

 

 物理的な攻撃では効かないと判断したのか、サスケはスサノオで、ダンゾウの乗っていた柱を破壊し、空中で身動きのとれないダンゾウに天照を使用する。

 

 ダンゾウは天照をくらい、石橋に落ちて燃え尽きた。

 

 それを確認したサスケは、かなりバテているのか、スサノオを解いてしまう。香燐により多少はチャクラを回復したとはいえ、その前に雷影たちとやりあっていたのだ。この疲労は当然の事と言えた。

 

 それを待っていたかのように、ダンゾウはまたしても、サスケの背後に幻のように現れると、風遁で攻撃を仕掛ける。

 

 気配を察したサスケは、素早くその場を飛び去り風遁の直撃を避けるが、避けた先は石橋の外だった。

 

 サスケは慌てることなく、風遁で受けた傷から血を取り鷹を口寄せしその上に乗ると、上空からダンゾウを見据える。

 

 サスケはチャクラが残り少ないのだろう。スサノオを出さずにダンゾウへと斬りかかった。ダンゾウは敢えてその攻撃を受ける代わりに、サスケの首を掴むが、速度が速すぎたために、すぐに拘束から逃れられてしまう。

 

 斬り捨てられたはずのダンゾウは、また幻のように消え去り、再び違う場所に現れた。

 

 しかし次の瞬間、ダンゾウの動きが一時的に止まる。それはサスケの幻術だった。しかし、その止まった時間は2人にとっては十分な時間だった。

 

 サスケはダンゾウの背後に回ると、刀で突き刺そうと手を伸ばす。

 

 しかし、その伸ばされた手は途中で止まり、サスケの身体に呪印が現れる。それは、ダンゾウがサスケの首を掴んだ際に刻んだものだった。

 

 動かないサスケに慌てた香燐は、柱の陰から姿を現して、ダンゾウへと襲いかかるが、あっさりと蹴り返されてしまう。

 

 ダンゾウは印を組むと、サスケの刀を手に取り首へと突きつける。

 

「イタチは何故このようなゴミを残したかったのだ……? これは、完璧だったお前唯一の失敗作ではないか」

 

 それに合わせて、マダラはサスケを吸い込もうとし、香燐は駆け寄ろうとするが、それよりも早くダンゾウに迫るものがあった。

 

 それはひとつの巻物。

 

 どこにでも見かけるような普通の巻物である。

 

 ダンゾウは、その上から落ちてくる巻物に気付き、それを剣で払い退けようとした。

 

(―――解火法印―――)

 

 しかし、払い除けることができたのは巻物のみで、その巻物から発せられる黒炎に、ダンゾウは包まれてしまう。

 

(これで1回分と時間稼ぎはしたからね)

 

 サスケの幻術に、ダンゾウが陥ったときに動いたのはサスケだけではなく、白も動いていた。

 

 懐から巻物を取り出し、札を剥がしてダンゾウ目掛けて放り投げたのである。

 

 距離もあり、放り投げた分落下までに時間が掛かったが、それを香燐がカバーしたことにより丁度よい具合で、巻物はダンゾウの元へたどり着いた。

 

 この時、ダンゾウはすぐにその場を離れればよかったのだろうが、落ちてきたのが巻物と分かり油断したのだろう、払い除けたのが間違いだった。

 

(さて、次はどこに現れるのかな?)

 

 黒炎にて燃えている最中、サスケはダンゾウの言葉により、雄叫びをあげてスサノオを発現した。そのスサノオは今までの骨と筋肉だけのスサノオではなく、衣を纏った人そのものだった。

 

 それを見たマダラは、吸い込むのを取り止め、香燐はその姿に立ち止まってしまう。

 

 サスケは次にどこに現れるかを、スサノオが持つ弓矢を構えながら探るが、出てくる気配はない。

 

 業を煮やしたサスケは、手当たり次第に矢を放ち始めた。

 

「出てこい!! いつまで隠れてるつもりだ!!」

 

 スサノオの攻撃で、石橋は次第に崩れていく。その攻撃は石橋の上にいた香燐にも影響を与えた。手当たり次第に攻撃したため、香燐にも攻撃が当たったのである。

 

 しかし、そんな攻撃も長続きするはずもなく、スサノオを維持できなくなったサスケは、血を吐き片膝を付く。

 

 それからいくら待ってもダンゾウが現れることはなかった。

 

(逃げたのか? 探知結界に捉えられないんだけど……。 というか、香燐やばいんじゃ……)

 

 そんなサスケへとマダラは、近付いていく。

 

「サスケ……ダンゾウを殺ったのはいいが、天照はやり過ぎだ。遺体が完全に燃え尽きてなくなってしまった」

「……ダンゾウは死んだのか?」

「ああ」

「そうか……」

 

 自分でとどめをさしていないので、釈然としないのだろう。俯きなにごとか呟き始める。

 

 マダラは、巻物を囮として、天照をサスケがダンゾウに喰らわせたと勘違いしており、スサノオの新しい形態変化に内心喜んでいた。

 

 白はと言うと、いつまで経っても現れないダンゾウに対して、まさかと言う思いから、冷や汗を流していた。

 


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