白物語   作:ネコ

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105 潜入?

 説明を終えた時には、自来也は腕を組み考え込んでしまう。自分のチャクラを真似できるとなれば、感知結界を張っても意味がなく、最悪仲違いになってしまう。しかし、逆に少数精鋭だからこその強みもあった。

 

 白ゼツはそれほど強くないのである。早い話が、一緒に巻き込むくらいの攻撃をしても、他の2人であれば、十分に避けるなり、防御するなりできるだろうと考えられた。実力を知っているからこそ、実施できることではあったが……。

 

 小南は神の紙者の術による起爆札で離れた位置から攻撃するため、そもそもチャクラを吸いとられることがない。白も基本的に通り抜け様に斬りつける戦い方だ。残るは自来也だけだが、2人には気にせずに攻撃するように言うと、仙人化のためのチャクラを練り始める。

 

 穢土転生体については、小南と白で封印することになった。

 

 そこはかとなく不安な白は、チャクラを高めていつでも対処できるようにしておく。穢土転生体の中でも、長門やイタチが出てきた時のためだ。

 

 説明の上でも、この2人が相手になった場合は、逃げに徹することを伝えていた。

 

 これには2人とも了承し、イタチは自来也が。長門は小南が相手をすることで話はついた。白の知識の中で危険な相手は、この2人だと思ったからだ。

 

 2人は長門の遺体を取り返すという目的もあったので、これに、長門の魂を昇天させることも白の説明で追加された。

 

 敵の拠点に潜入してからは、見つかったものが囮となって逃げる手はずで自来也から説明を受けたが、そう事が容易く進むとは思えず、問い返す。

 

「こちらの位置が感知されてると思うんですが……?」

「まあ、わしらは敵の情報の奪取と戦力を削ぐことを目的としとる。感知されてると分かれば、作戦を切り替えるしかないの」

「結局戦うんじゃないですか……」

「そんなに嫌か?」

 

 自来也の言葉に意外なものでも見るような目で、白は自来也を見つめる。

 

「争いを無くす世を目指していた人の言葉とは思えませんね」

「わしも好んで戦うわけではない。それに人がいる以上、大なり小なり意見が異なる。……争いがなくなることはないだろう。しかし、此度の大戦だけは今までと別なのは分かる。……5大国が手を組むなど今まで無かったことだ。今まで自国の事しか考えてこなかった者たちが手を取り合っておる。……この大戦が終われば、平和な世が来ると、信じるに足ると思わんか?」

「それ死亡フラグなんじゃ……」

 

 自来也の最後の言葉を聞いて白は呟く。そんな白に自雷也は首を傾げた。言っている意味が分からないのだろう。そこで白は、あることを感知して自来也に伝える。

 

「まだ少し先ですが、水面下のかなり広範囲に大量のチャクラを感じます。多分白ゼツです」

「もうバレおったか……ブン太いけるか?」

「わしがそいつらをやりつつ、余った分は上にやる」

 

 そう言うと、ガマブン太は水面下に潜ってしまう。水面上には3人のみが立ち尽くしていた。

 

 しばらくすると、水面が盛り上がり、大量の水飛沫と共に、こちらも大量の白ゼツが上空へと打ち上げられた。

 

 打ち上げられた白ゼツに向けて、それぞれが攻撃を開始する。

 

 白は雷刀牙を片手に構えて、氷遁秘術・魔鏡氷晶の高速移動を繰り返す。広範囲に展開された魔鏡氷晶は、その間を繋ぐ線上の敵を逃さずバラバラに切り裂いていった。

 

 小南は上空に飛び立つと、起爆札を海面周辺へとばら撒き、落ちてきた白ゼツを一気に爆発の中へと誘っていく。起爆札は小南の口寄せにより次々と現れ続け、爆発が落ちてきた白ゼツを、また上へと持ち上げて落ちるを繰り返し、息絶えるまで続けていく。

 

 自来也は、仙人モードになると、両肩に口寄せした蛙に、怒鳴り散らされながら殴られていた。

 

「いつまでも遊ばないでくださいよ!」

「なんじゃお前は! わたしゃあ小僧に用があるんじゃ! おぬしゃあ黙っとれ!」

 

 自来也の横に現れて諌める白に、シマが言い返してきた。自来也が生きていたことが嬉しいのだろう。白に言いたいことだけ言うと、また自来也への追及へと入っていった。それを見て白は言っても無駄だと悟り、白ゼツとの戦いに戻っていく。

 

「かあちゃん。どうやら今はそれどころじゃなさそうじゃ」

 

 フカサクは周りを見て、シマを諌めた。それにあわせて、シマは周りで起きている事へと目を向ける。

 

「いったいどがーななっとるんじゃ?」

「それがどうやら忍界大戦が起きているようでして」

「人らの争いに、あたしらは係わらん! そんなとこに呼ぶな!」

「お待ちください。今回の大戦は、今までのものと違いますので」

 

 自来也はフカサクとシマに説明していく。その間にもいたるところで、水柱が上がり……爆発が上がり……バラバラになった白ゼツが落ちていく。

 

 それでも、下を通る全体の、ほんの1パーセント程度にすぎなかった。

 

「そぎゃーなことは、はよ言わんかい!」

「かーちゃんがよう聞きもせんと喚くからじゃ」

「とーちゃんはだまっとき! そうと決まったらさっさとやるで!」

 

 自来也は、更に2匹の蛙を口寄せする。2匹の口寄せ蛙にはシマから、ガマブン太の後押しをするために、水面下へと向かうよう指示を出した。それから自来也も白ゼツとの戦闘に参加していく。

 

 自来也も白や小南と同じように近づかずに仙法にて遠距離から攻撃していった。

 

 水面からの水柱は更に数を増やし、白ゼツの数も増える。さすがに全てに対応することも出来ず、時間が経つにつれて通り過ぎていく数も増えていった。

 

 しかし、3人共に周囲を気にせず戦えるということで、打ち上げられた白ゼツを次々と屠っていく。

 

 それは下の白ゼツが通り終えるまで続くかに思われたが、夜も明けようという時にフカサクの言葉で終焉を迎えることになった。

 

「連合が組まれとる言うたの?」

「ええ。この後方の雷の国に本部があるようです」

「この下のやつらは連合とブン太たちに任せて、わしらはアジトに行った方がいいんと違うか?」

「それもそうですの」

 

 そう言って、一旦仙人モードを解除した自来也は、白と小南に大声で呼び掛け、シマとフカサクは海中のガマブン太たちに新しく指示を出す。

 

「白! 小南! 海中のやつらはブン太たちに任せてわしらは敵のアジトにいくぞ!」

 

 白は聞こえてませんとばかりに、移動を繰り返し、小南は爆発音で聞こえない。そんな2人に業を煮やしたシマが口から白に対して蛙の鳴き声による音波攻撃を仕掛けた。同じくフカサクは、小南に対して水遁による水鉄砲を口から放つ。

 

 その両者からの攻撃で、一旦その場は静かになった。白は耳を押さえながら、小南はずぶ濡れになりながら自来也を睨みつけている。

 

(白ゼツ相手をずっとやっておこうと思って感知したのを伝えたのに……)

 

 2人は自来也の元へ集まる。白は露骨に嫌そうな顔を。小南は無表情に。

 

「大きい方を叩くけんついてきんさい!」

「分かった」

「はーい……」

 

 それぞれ返事をすると、自来也は頷いて走り出した。それに続き白と小南も走り出す。

 

 陸地についてからは、慎重に行動するかと思えばそうではなかった。ある程度場所を知っているのか、途中で何度か数体の白ゼツに遭遇して交戦したり、立ち止まって方角を確認しながら、迷わずに自来也は突き進む。白はあることを思わずにはいられなかった。

 

(また、天然で間違えますように!)

 

 そんな白の願いも虚しく、アジトの近くまでたどり着いた自来也は、アジトを見下ろす位置で不審に思い始めたのか立ち止まる。

 

「変ですのぉ……。ここに来るまでにほとんど妨害が無いとは……」

「ここがほんまにアジトなんかいな?」

「調査したので間違いありません」

「ほんなら後は入るしかないの」

「白は何か感じるか?」

 

 白に向けられた視線と言葉に、白は仙人化して嬉しそうな声と表情で答える。

 

「ばっちり。感じますよ! チャクラが数人分しか感じられないのを! 尾獣チャクラは感じません!」

「ん? 敵のアジトはここじゃろ?」

「そのはずですがの」

 

 自来也は不思議がりながらも、慎重にアジトへ向けて素早く足を進めていく。小南も身体を蝶の形をした紙へと変えてアジト内部へと入っていった。

 

 白もそれに続く形で感知結界を張り、一応安全のために影分身にゆっくりとアジトへ入らせていく。本体は隠遁を使いアジトの入口が見える所で報告待ちをしていた。

 

 白が余裕を持って入っているのには理由があった。白の影分身は現在雲隠れの里の本部に潜り込み、戦況を白へと伝えていたのだった。そのため、現在この場所に外道魔像も無ければ、マダラも居ないことが分かったからである。

 

 それらは現在雷の国で暴れまわっていた。穢土転生体もそちらに大半が向かっている。イタチと長門は、違う場所でナルトとキラービー相手に立ちまわっていた。ただ、それらの情報から安心はしていたが、嫌な感じもしていた。

 

(なんか冷たいような、どこかで感じたことのあるような……?)

 

 アジト内のチャクラの数が減っていくのが分かった白は少し不審に思い始めていた。自来也や小南が相手にしているにしては場所が違うのである。

 

(他にも先に中へ入ってるやつがいるのか?)

 

 この時、よく考えていれば分かったのだが、ここには1人マダラたち以外にも要注意人物が居たのである。

 

 そのチャクラは白がアジトの入口から入っていくと同時に、地面を貫き、更に巨大な骨を砕き、アジトの上の方へと着地すると、白を見つめてきた。

 

 地面を突き破って出てきたのはサスケだったのである。サスケは白に視線をやるが、用はないとばかりに南に向けて歩き出す。

 

 それを見ていた白はかなり焦っていたが、サスケが去るのを見てホッとひと安心した。

 

 それというのも、出会ったのは影分身なので、もしやられても問題はなかったが、最悪時のことを考えると、白本体がやられていたかもしれないからだ。

 

 サスケも影分身であることを見抜いたのだろう。

 

(サスケの存在をすっかり忘れてた……イタチの眼を移植したんだっけ?)

 

 白へのショックはそれだけではなかった。しばらく呆然としていた意識を取り戻し、安全になったはずのアジト内部へと入っていく。外に居ては逆に危険と感じたためだった。

 

 内部では、生き残っていた白ゼツの尋問をしている自来也がいた。白は周囲をよく確認しながら自来也に近付いていく。原始的な罠が無いとは限らないからだ。

 

「無駄だよ……。僕から情報を聞き出そうとしても」

「ふん……。やはりしゃべらんか。……そう言えば、なぜ白は穢土転生について詳しかったんじゃ?」

「まあ、ここまできてるからあれですけど、大蛇丸の孫弟子?になるからですかね」

「大蛇丸だと!?」

 

 予想もしていなかった答えに自来也は驚く。

 

「大蛇丸の部下にカブトって人が居て、その人からまあ色々と教わったんですよね。んで、音信不通になったのを機会に、色々な施設を巡って、穢土転生の術式を調べただけです。不老不死とかもあったんですけど、不老はともかく、不死はちょっと遠慮したいかなと……いつまでも生きてるって、なんか不気味じゃないですか?」

 

 自来也は黙って白を見つめていると、小南が自来也たちの元へ戻ってきた。その後ろには紙で包まれた、大きく細長い塊が浮かんでいる。おそらく中身は長門なのだろう。

 

「大きな部屋の壁に人がくっ付いてるわ」

「ふむ。会いに行ってみるかの」

 

 小南の案内の元その空間へ向かうと、壁に見知らぬ石像らしきものと、その隣にヤマトが壁に埋め込まれていた。ヤマトは意識が無くガックリと項垂れたような状態で、下半身と両手を壁に埋め込まれている。

 

「こやつは、暗部だった者だの……」

「ヤマトさんですね……」

 

 自来也と白がヤマトを見つめている中、小南が2人に声を掛ける。

 

「結局この人どうするの?」

「幻術に掛けられてるみたいですし、取り敢えず解きます?」

「そうじゃの」

 

 幻術を解きヤマトを壁から救出する。しかし、ヤマトの意識が戻ることはなく、以前としてぐったりとしたままだった。それでも、生きていることは分かりそのまま横たえて白は診察する。

 

「薬物投与されてますね……」

 

 毒を抽出する要領と同じようにして、ヤマトの中にある薬物を抽出していく。その作業はすぐに終わり、しばらくするとヤマトの意識が戻った。

 

「うーん……ここは……」

 

 白は素早く自分の髪の毛を操り顔を隠す。ここでヤマトに見つかっては、何を言われるか、たまったものではないからだ。

 

 意識を取り戻して起き上がったヤマトに、自来也は事情を訊ねる。その傍ら、小南は白ゼツを紙で身動きが取れないよう見張りをし、白はその部屋の下部にある蓮を見つめていた。

 


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