白物語   作:ネコ

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108 判断?

 全体としては3つに分かれていた。

 

 マダラと五影。面の者とナルトにキラービー。カブト捜索。

 

 マダラについては五影が対応して足止めを行い、その間にカブトを連合で捜索して術を止める。術の止め方は白から伝わっているので、後は術者を見つけるだけだ。捜索は、最後にアンコが消息を絶った場所を中心に探していくことになっており、その場へと連合の感知タイプを中心に向かっていた。

 

 面の者については、キラービーとナルトが戦っており、そこへカブト捜索以外の連合軍が向かっていく。

 

(もうそろそろ、この大戦も終わりなのかな?)

 

 白は、悠長に考えていたが、状況はそのようなことを許さなかった。

 

 すぐ傍を爆風が吹き荒れていく。結界は歪み、爆風が過ぎ去った後に元の形へ戻っていくが、強度がかなり落ちていることが分かった。後2発も同じことが続けば、結界もろとも吹き飛ばされるだろう。

 それを感じ取った白は、一旦現在の場所の状況を把握するために上空へと移動して、安全な場所が近くにないことに気付いてしまう。

 

 白がいた付近には、隕石が落ちてきたのかと思えるほどのクレーターがあり、それが遠く至るところに点々と出来上がっていた。まるで逃げ場など最初から無いと言わんばかりである。

 

(どこに行けばいいんだ……)

 

 白は迷った末に考えを決めた。

 

 それは、ナルトの近辺に居るというものだ。それと言うのも、主人公が死ぬわけがないと言う考えであった。そしてナルトたちが戦っている場所へと向かう。辺りに出来たクレーターの原因がナルトたちだとも知らずに……。

 

 白の考えは間違いだったことに気付いたのは、そのチャクラを感じ取ってからだった。人柱力のチャクラのはずが、完全な尾獣のチャクラへと変わっていたのである。

 

 更に付け加えるならば、戦場となっている場所は更地と化していた。

 

 キラービーは尾獣化して、ナルトと共に戦っている。

 

 八尾と九尾なだけはあり、他の尾獣たちと接戦に持ち込んではいたが、さすがに数の暴力には勝てず、徐々に押されてゆく。

 

(尾獣のチャクラを感じるけど大分サイズが小さいな……尾獣なら封じられるだろ……)

 

 人柱力の形を残したそれらは、赤黒い身体を持ち、それぞれ尾の数が違っていた。

 

 離れた位置からそれを見ていた白は、クシナを口寄せしようと、一旦マダラの方の戦況を見た。

 

 マダラは遊んでいるのか、分身体を大量に出してはいるが、マダラよりも弱いのだろう、大半をクシナにより封じられていた。

 

 それでも、その数体はスサノオを展開してクシナを真っ先に攻撃していく。封印が解けてしまえば、また縛り直すのに時間がかかる上に、今度は逆に各個撃破されかねない。

 

 我愛羅と綱手が基本的にはクシナを守り、他の五影で撃破してはそれをクシナで縛るを繰り返していた。

 

 マダラは、その光景を高みの見物とでもいうように、腕を組んで高所から見下ろしている。

 

(これ、クシナさん口寄せしたら大変なことになるな……完全に戦力に組み込まれてるし……)

 

 白は、尾獣たちの封印を諦める。一体分だけならば、自分の身体に封じることはできるが、後が続かないのである。しかも、封じた場合自分が人柱力になることを意味するため、カブトからだけではなく、面の者からも狙われることは間違いない。

 

 能力がどこでも行けると言うことを知っているだけに、いつまでも逃げ切れないことも分かっていた。それ以前に人柱力になることが嫌なことが大きかったが。

 

 途中で、尾獣たちの元へカカシやガイ、再不斬など、カカシの部隊で戦力になると思わしき忍びたちが到着する。

 

 それでも、一方的な展開とまでは行かずに、互角になるくらいだった。

 

 面の者はその光景が気にくわなかったのだろう。人柱力たちの尾獣の力を解放して尾獣本来の姿へと形を変える。それまで、人柱力サイズだった相手が巨大化したのだ。

 

 ナルトが、やっと一匹を輪廻眼の呪縛から解放した時には、連合の忍びたちのほとんどがボロボロの状態になっていた。

 

 しかし、ナルトが解放した尾獣は、面の者の口寄せした外道魔像の口から伸びた鎖に縛られて吸い込まれていく。

 

 その後、一気に終わらせるつもりなのか、一旦他の尾獣たちを外道魔像の近くまで連れてくると、各尾獣たちが口元に大量のチャクラを蓄積し始めた。尾獣玉である。

 

(尾獣玉って結構でかいんだな……)

 

 ナルトへ向けて放たれた尾獣玉は、九尾の巨大なチャクラを纏ったナルトの、同じく尾獣玉によって上空へと進路を変えられた。避けなかったのは、ナルトの後方にいた連合軍の忍びたちがいるので、それらを守るために上へと弾いたのである。

 

 尾獣玉同士が上空で大爆発をし、空全体から光が溢れた瞬間にナルトは動いた。

 

 九尾の尾を使い、今出ている5体の尾獣を捕らえると、同じようにして輪廻眼の呪縛から解放する。

 

 しかし、それも束の間。またしても、外道魔像の口から伸びた鎖でその5体も吸い込まれていく。尾獣たちも、抵抗はしているようだが、あまり意味のあるものではなかった。1度吸い込まれているためだろう。その鎖は5体のチャクラを徐々に吸い取り始め、その力を削いでいく。

 

 その抵抗はある瞬間を境に一気になくなった。ナルトのチャクラが倍増したのである。それはまるで、他の尾獣たちのものが合わさったようであった。

 

 実際にチャクラを受け取ったのだろう。今までにないまでに高まっている。

 

 その時、頭に語りかけてくる声があった。その声は一方通行であり、戦場全てに居る忍びに伝えられる。

 

『本部より通達! 増援場所の状況は優勢! ナルトとビー殿、先に着いた者たちが踏ん張ってくれている! 俺たちが護るべき者たちがだ!! 今はそんなことは言ってられない状況だが、強い想いを持って戦ってくれているのは間違いない! みんなもその想いに続いてくれ! その強い想いが……この戦争の勝利へと繋がる!』

 

 ひと息に言い終えると、その後通信がパタリと止む。

 

 

 

 本部の方では鼻から血を流しているイノイチがいた。かなり限界まで能力を酷使したのだろう。胡坐をかいた体勢で荒い息を上げながら、倒れないように床に手をついていた。しばらくはその能力も制限されるだろう。ただ、イノイチは役目を終えたと言わんばかりに満足そうに口元に笑みを浮かべていた。

 

 影分身である白は呆れながら、イノイチへと近付いていく。それに青が真っ先に気付いた。

 

「白!? なぜここに……? いや、戦場の方に気を取られ過ぎていたか……」

「まだ終わったわけではないですからね。イノイチさんの治療をしますよ」

「待て! 動くな!」

 

 青の制止を聞かずに、イノイチへと近付く白は、後数歩と言うところで歩みを止める。シカクによる影真似の術である。

 

「それ以上動かないでもらおうか。敵である可能性を否定できん以上、後から来た者は拘束させてもらう」

「仕方ないですね」

 

 影分身はしばらく動かずにいたが、その眼の周りに隈取りが出来始める。そして、次の瞬間には影真似を強制的に断ちきっていた。

 

「なに!?」

 

 驚くシカクを余所にイノイチへ近付くと、顔へ手を近付けて疲弊した経絡系を治療していく。その治療はすぐに終わり、手を離したときにはイノイチは元の状態に近いところまで戻っていた。

 

 白は仙人モードを解いて説明を行う。

 

「実力的にはこれで分かってもらえたと思います。やろうと思えば、ここにいる人たちは俺1人でも十分なんですよ。ちなみに俺は影分身なんで、そこのところはよろしくお願いします」

「では……本体はどこにいる?」

「ナルトたちの近くにいますよ。隠遁を使ってるので、余程1人に集中して探さないと見つけるのは困難だと思いますけど」

「…………」

 

 白の説明に、敵ではないと割り切ってシカクは元の状況整理に戻る。今となっては、各戦況の連絡を、円滑に行うために、この本部はあるに過ぎない。今更ここが全滅したとしても、多少の混乱や不安は高まるだろうが、各戦況にそれほど影響が出るとは思えなかったからだ。

 

「白。お前は何ができる?」

「ひと通りは……」

「詳しく教えてもらおう……。しかし、こうも容易く侵入されるとはな……」

 

 シカクはそれから黙り込むと、瞑っていた目を見開き白へと顔を向けて訊ねはじめた。

 

 

 

 五影たちの方は、分身体を全てクシナの鎖で封印したところだった。各五影は疲労はしているもの、特に目立った怪我はない。

 

「意外とやるものだな。もっと苦戦するかと思ったのだが……、上手く連携を取るものだ」

「次はお前だ!」

 

 雷影が叫び、マダラへと接近する。雷影の背には土影が張り付き、雷影の放つ攻撃を一瞬だけだが重くすることで威力を上げていた。

 

 前から行くと見せ掛けて、背後に回り込み突きを放つ。それを分かっていたかのように、反対側から照美が溶遁を使い挟み撃ちにする。

 

 マダラはそれに反応して避けることにより、共倒れを狙ったが、避けたところで、地面の砂に捕まり、スサノオから引き剥がされて元の位置に戻されてしまった。

 

 ボロボロになった状態であれば封印できるだろうと、クシナも封印の準備をしていた。

 

 マダラはスサノオを諦めると、左手を溶遁に。右手を雷影たちへ向ける。そして、当たると思われた溶遁を吸い取り雷影たちを弾き飛ばす。

 

 その後足元の砂のチャクラを吸いとった。

 

「輪廻眼か!?」

 

 悔しそうにして一旦雷影は離れると、他の五影と合流する。

 

「さすがに五影というだけはあるな……。しかし、そろそろ飽きてきた。……よかろう、俺の本気を見せてやる」

 

 マダラはスサノオを展開すると、自分のチャクラを更に高め始める。スサノオは、そのチャクラに呼応するかのように形を変え始めた。

 

 そして、最終的に天狗へとその姿を変える。

 

 そのあまりの大きさに、五影は見上げたまま立ち止まってしまう。それもすぐに意識を戻したが、攻撃をしあぐねていた。

 

 明らかに以前と姿形だけではなく、チャクラの質まで違ったからだ。五影たちは、一度サスケとのやり合った経験から、今までのスサノオよりも遥かに強いことを感じ取ってしまう。

 

 マダラは感触を確かめるように、剣をひと振り造り出すと、それを無造作に振るう。

 

 その剣からは何かが飛んでいき、剣を振った線上にあるものを斬り裂いていった。

 

 その光景を見て五影は絶句する。

 

 斬り裂いたものというのが山だったために。

 

「なぜじゃ……なぜそのような力を持っていながらあの時……」

「赤子相手に本気になるやつはいないだろう?」

 

 土影の言葉の呟きにマダラは答える。やっと、お前たちは赤子から抜け出したと言わんばかりだった。

 

 クシナはその鎖で足を絡め取り動きを制限しようとするが、全く効果はない。

 

 そこからは、マダラによる一方的な攻撃が開始された。

 

 雷影はマダラの攻撃を避けつつも攻撃をするが、効果はない。他の者に至っては、避けることで精一杯の状況だった。

 

 避けきれないと判断したものは、土や砂で作ったゴーレムにて時間を稼ぎ、その間に剣の線上から逃れる。避けきれずに負傷した者はすぐに綱手が回復すると共に、チャクラも供給していった。

 

 マダラは無表情に剣を振り回す。それはただの消耗戦だった。五影たちが力尽きるのを待つだけという……。

 

 しかし、長く続いたその戦闘も破綻を迎える。マダラの崩壊と共に。

 

 それはいきなりだった。スサノオが振り回していた剣が消え、スサノオ自体も幻だったかのように消えていく。まるで何もそこには無かったかのように。

 

 それに驚いたのはマダラだったが、それよりも驚いていたのは五影たちの方だった。

 

 マダラからは、淡い光が漏れ出し上空へと昇っていく。それと共に身体の塵が剥がれていっていた。

 

「穢土転生の術が解除されたようだな」

「どの忍びか分からんがやってくれたようだな」

 

 マダラは自分の両手の塵がゆっくりと舞い上がっていくのを見ながら呟く。その呟きを聞いて、五影たちの表情は歓喜のものへと変わっていった。

 

 誰かが穢土転生の術を解いたのは間違いないだろう。その淡い光の柱はあらゆる戦場から立ち昇っていた。

 

 しかし、ここで油断していたのだろう。この崩壊の時にクシナが封印しておけば良かったのだろうが、それを見送ってしまう。

 

「術者に言っておけ! 禁術を不用意に使うなとな!」

 

 マダラが印を組むと、飛び散っていたはずの塵はまた元に戻っていき、マダラの形を留める。それに気付いたクシナが慌てたように鎖を飛ばすが間に合わずに避けられてしまった。

 

「厄介なのはお前だけのようだが、術者は近くにいないようだな……。俺を穢土転生したやつといい、陰険な奴が多いようだ」

「くっ!」

 

 クシナは鎖が避けられたことを悔しがる。マダラのスサノオが解けたとは言え、五影たちのチャクラは尽きかけていた。この中で今まともに動けるのはクシナだけだろう。そんな自分の油断が招いたことにクシナは悔いる。

 

「さて、どうするべきか……」

 

 マダラが考えている最中、一筋の光が綱手へと降り注ぐ。それにより、綱手は光に包まれていくと、チャクラが見る見るうちに回復していった。そしてチャクラが回復し終わると、すぐに他の者のチャクラの回復にまわる。

 

 マダラはそのようなことなど気にも留めずに、不意打ちだけを喰らわぬようにしながら考えをまとめていた。

 

「そろそろ、九尾を取りに行ってもいいな……」

「ナルトの元へは行かせない!」

 

 かなりの広範囲を包むようにして鎖の封印をクシナが展開する。1度破られているので、時間稼ぎにしかならないことを承知の上だった。それをマダラは冷めた目で見つめてひと言呟く。

 

「無駄だな……」

 


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