白物語   作:ネコ

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111 人柱力?

 オビトから溢れ出た黒いチャクラに似たような何かは集まっていくと、それが変質して錫杖へと変わる。

 

 身体にあった傷は何処にもなく、背には勾玉の模様が九つ浮き出ている。

 

 但し、始めからなのか、身体の半分は木でできた鱗のようになっているのが見てとれる。

 

 オビトが黒い錫杖を振ると、首の周囲に勾玉が、背後に球体がそれぞれ九つずつ現れた。背後の球体はオビトを守るように周回し始める。

 

「あれって十尾の人柱力だってばよ!」

「なぜ分かる?」

「さっきの綱引きで、尾獣たちのチャクラを貰うときに、その事を尾獣たちと話してたってばよ!」

 

 サスケの問いに、ナルトが答えたことで、その場に緊張がはしる。それは、感知タイプの忍びではなくとも、寒気を覚えるほどの威圧感を放っていた。

 

 柱間は明神門の数を更に増やしてオビトを押さえつけようとするが、すぐにその門にひびが入っていき、崩れさる。それは呆気ないほど簡単に破られてしまった。

 

 オビトは錫杖を目の前に浮かせると、両手を広げて掴むような動作をし、それを交差するようにして胸の前に持ってくる。すると、それまで火影たちの張っていた四赤陽陣が歪み、その次の瞬間には紙を破るようにして結界が解けた。

 

(これ以上は!!)

 

 白は呆然とその光景を眺める者たちを、クシナを操り、その鎖でオビトから離すべく、掴んでは投げるを繰り返す。

 

 歴代火影による結界すら簡単に破るような相手に、一般的な強いレベルの忍びなど無意味だと悟ったからだった。

 

 それを見てとったオビトは空へとゆっくり上がっていく。そして、辺り一体が見渡せる高さまでくると、黒い棒状の物を広範囲に渡って飛ばしていった。

 

 意味が分からずいたが、次のオビトの言葉と現象で理解させられる。

 

「これで終焉だ。この中で最後を見ているがいい。―――六赤陽陣―――」

 

 黒い棒を起点にして結界が張られる。先程火影が張っていた結界よりも、更に強度を増したものが、白が飛ばした者たちを含めて、連合軍全てを包む形で張られる。

 

 オビトの手によって……。

 

 オビトはまたゆっくり降りてくると、錫杖を地面に突き刺し、黒い球体をその錫杖とオビトを囲む形で廻りへと移動させていく。

 

「やつを倒せば終わりぞ! 弱気になるな!」

 

 イノを通しての柱間の言葉で、それまで固まっていた忍びたちは動き出した。

 

 しかし、瞬身の術で攻撃を仕掛けた二代目火影とミナトは呆気なく、オビトの周囲を漂っていた黒い球体に阻まれた上に、触れた場所が抉り取られる。

 

 それを見て、他の者も接近を避け忍具や忍術へと切り替える。

 

 忍術に関しては、柱間が木龍を放つが、同じようにして、黒い球体に当たり消え去っていく。

 

 ヒルゼンの放った手裏剣影分身では、当たっても傷すら付かない。

 

 二代目火影は、抉り取られた身体を使い起爆札の連続口寄せを使うが、防ぐまでもなく、手裏剣影分身同様、起爆札では傷を負わせることはできなかった。

 

「やっと身体に馴染んできたな……月読の準備に入るか……」

 

 連続で口寄せされる起爆札を、虫でも払うかのように、手を振るう動作のみで終わらせると、黒い球体を全て地面へ向けて放った。

 

 黒い球体は地面に大きな模様を描いていく。その模様を止められる者はいなかったが、代わりに、オビトの周囲を漂っていた黒い球体が無くなったことで、オビト本体へと攻撃を仕掛ける2人がいた。

 

 ナルトとサスケである。

 

 2人は互いの忍術……風遁・螺旋手裏剣と炎遁・加具土命を合わせると、瞬身の術でオビトに向かうが、明らかに飛雷神の術を使う火影たちの攻撃よりも遅かった。

 

 しかし、2人の忍術は、飛雷神の術を使う2人の火影による飛雷神回しによって、オビトに命中させることができた。

 

 二代目火影が起爆札の連続口寄せ時にオビトへとマーキングしていたため、それを用いて、ミナトにナルトとサスケの攻撃を当てさせて、それを二代目火影が、ミナトとオビトの位置を変えることで、オビトに攻撃を当てたのである。

 

 そこへ、オビトの上空に、スサノオを展開したイタチが白に抱えられて現れる。

 

「これで終わりだ」

 

 イタチの持つ十拳剣がオビトへと振るわれた。

 

 それで終わると思われたが、十拳剣はオビトを吸い込むことなく、オビトを地面へと叩きつけるだけに終わった。

 

 奇襲が失敗に終わったことを悟った6人は、すぐさまオビトから離れる。

 

 オビトは、何事もなかったとばかりに立ち上がると、錫杖へと手を伸ばした。錫杖はオビトの元へと飛んでいき、その手に収まる。

 

「十拳剣が効かないなんて……」

「当たる寸前、首の廻りにある勾玉に防がれたな」

 

 白がイタチと話している間に、口寄せの陣は完成し、大きな樹が現れる。それは、幾重にも蔓の様なものが絡み合ってひとつの樹となっており、その上部には大きな蕾が付いていた。

 

 その樹は、結界内にいる者たちへと根を伸ばしていく。触れては不味いと、忍術で切ろうとするが、忍術は吸収され、刀などで直接斬りかかった者は、その根に捕まり、チャクラを吸いとられてしまっていた。

 

 その根は、速くはないが確実に結界内にいる忍びたちへと近付いていく。そして、チャクラを吸い取られた者たちが干からびていく様を見せられ、忍び全体へと動揺がはしった。

 

 触れることも、止めることもできないので当然だろう。

 

 しかも、オビトの張った結界により外へと出ることができない。それは、結界内にいる忍びたちに絶望を植え付けるには十分だった。

 

 しかし、その絶望的状況を覆す者がいた。

 

 ミナトはチャクラを溜め終わると、飛雷神の術を使う。次の瞬間、連合軍の忍びたちは結界の外へと移動していた。

 

 ミナトは、チャクラの綱引きをしていた際に、ミナトから放たれた綱を、握った者全てにマーキングしていたのである。

 

 連合軍の忍びは絶望から困惑へと変わる。未だに自分達に何が起こったのか分からないのだろう。

 

 ただ、結界内に取り残されてしまった者もいた。ガマ吉である。ガマ吉は根を避けながら、腰に刺した短刀で根を防ぎつつ、オビトへと近付いていく。

 

「ガマ吉!!」

「心配せんでええ!!」

 

 ナルトの心配を余所に、ガマ吉は口からオビトに向けて液体を吐き出すが、オビトはそれを錫杖を円盤へと変えてそれを防ぐ。

 

 防がれたガマ吉は、そのまま煙を発して消え去ってしまった。

 

「逆口寄せで帰ったようじゃの」

「ああ!? エロ仙人!! なんでいるんだってばよ!?」

「なんぞ。わしがいると都合が悪いんかのぉ……」

「お前たち、そういうことは後でやらんか」

 

 ナルトは自来也がいることを今知ったのか驚きを隠せなかった。それに対して自来也が少し落ち込む。状況は全く進展していないのにも関わらず、呑気に話をしている2人をヒルゼンが窘めた。

 

 オビトは自ら動くつもりはないのか、その場で月を眺めていた。オビトの方は、無限月読が完成するまでの時間稼ぎができればいいだけなのである。それを連合軍は、自ら無限月読を行うための媒体から離れたのだ。オビトにとっては好都合と言った方がいいだろう。

 

「しかし、忍術や武器では、奴に傷を付けることは叶わん……有効手段がイタチのスサノオだけとなると厳しいの……」

「いや。そうでもない」

「お主も気付いたか……」

「ああ」

 

 ヒルゼンの言葉をイタチは否定した。二代目火影はイタチへと確認するとイノを呼び、連合軍へと呼びかける。

 

『この中で仙術を修めたものは居るか?』

『俺は修めておるぞ!』

『兄者には聞いていない』

『…………』

 

 二代目火影が探しているのは仙術が使える忍びだった。最後のガマ吉の攻撃は仙術を含んだものであり、それをわざわざ錫杖を盾にしてまで防いだのである。それが意味するところは、ガマ吉の攻撃を大なり小なりオビト自身が危険だと判断したことに違いなかった。

 

『わしとナルト……それに白も使えます』

『兄者と合わせて4人か……さっきのスサノオを使う小僧を入れても5人……ほとんど足場のない場所では心許ないな……』

『仙術が使える者を探してどうするのです?』

『最後の蝦蟇が使った術は仙術であった。忍術や忍具といったものは避けなかったあやつが、わざわざあの錫杖を盾に変えてまで防いだのだ。……つまり、仙術は有効手ということになる』

『なるほど……。それならば重吾、サスケ君に力を貸しなさい』

『……分かった』

 

 重吾は大蛇丸の指示に従い、サスケへと歩み寄ると、サスケの肩へと手を置き目を瞑る。サスケへと置かれた手を伝って、重吾からサスケへと力が流れていった。それは白たちが使う仙術チャクラであり、重吾は仙術チャクラを渡し終える前に、ひと言サスケを見て呟くと、その場に倒れてしまう。

 

 その呟きにサスケは頷き、スサノオを展開した。その展開されたスサノオは、今までのサスケのスサノオとは違い、天狗に近い形へと進化しており、イタチのものと酷似していた。

 

『足場が無ければ、わしが浮かせましょう』

『じじい。あれは慣れないと難しいぜ。それにじじいほど速度出せねえし』

 

 土影の提案に黒ツチが難色を示す。土影にとって空を飛ぶことは普通にできることだったが、他の者は違う。失敗の許されない場所で、戦闘以外に集中力を削がれてしまっては、成功するものも失敗してしまう。そのような思いが伝えられた。

 

『では、俺が砂で足場を作ろう』

 

 我愛羅の提案は受け入れられ、足場の問題についても解消される。

 

『ここまで来て何もできんとは!!』

『それは俺も一緒だぜブラザー! ここは皆で応援! やつを倒して公演!』

『お前は黙ってろビー!』

 

 雷影がキラービーにアイアンクローをしている中で、仙術を使える者たちが集まる。

 

『あの者を倒した際に、十尾が解放されるだろう。そうなれば、十尾からチャクラを抜き取れるはずだ。その時のためにも身体を回復させておけ』

 

 二代目火影の言葉に、それまで見ているだけだった者たちは、座り込んだり薬を飲むなどして身体の回復に専念し始める。

 

『あの樹についてはどうするんです?』

『通常口寄せ陣にて口寄せしたものは、術者がいなければ、元の場所へと帰るものぞ』

『元の場所ってどこなんでしょうね……』

『この世界にあるものとは思えんな……。取り敢えず、今やるべきことは奴を倒すこと、それだけぞ』

 

 二代目火影は仙術の使える者たちへとマーキングしていく。その間にも攻撃に関しての注意事項を伝えるが……。

 

『各人いつでも攻撃できる準備をしておけ、俺と4代目で飛雷神を回していく』

『俺は1人でも十分行けるってばよ!』

『俺も1人で十分だ』

 

 ナルトが自信満々に言い放つと、それに対抗してかサスケまで1人で行けると言い始めた。2代目火影は溜め息をつくと、他にいないかを確認する。

 

『危うくなっても、基本は自分で身を守ってもらう……。寧ろ囮になってもらおうか。……他に居ないだろうな?』

『俺も1人でやります』

『お前もか……。最近の若い奴は協調性がないな……。里ではどういう育て方をしているのだ?』

 

 白の言葉に2代目火影は呆れかえり、五影へと聞こえるように嫌味を言うと、作戦を伝えた上で、オビトのいる結界内へと、飛雷神の術で飛んで行った。

 


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