白物語 作:ネコ
基本的には、柱間には扉間が付きサスケをカバーし、自来也にはミナトが付き、ナルトをカバーすることになった。
白については、前回イタチのスサノオで攻撃したことから、イタチのカバーに回ることになる。
「俺と兄者でまずは様子を見る。それを見てから攻撃を仕掛けろ」
二代目火影の言葉に頷くと、ミナトが全員を結界内へと飛雷神の術で移動させる。その後すぐに我愛羅が足場を作り、それを広範囲へと広げていく。下からの根が突き上げてくることを警戒して、その砂の足場は所々に穴が開いていた。
「もう諦めたらどうだ? あの月がこの蕾の真上に来たら全てが終わる」
満月を見上げながら呟くオビトに、誰一人賛同することなく、それどころか先制とばかりに攻撃を開始した。
満月が蕾の真上に来るまでそう時間は無い。よく見れば分かったかもしれないが、蕾も満月の動きに合わせてゆっくりと開き始めていた。
始めに柱間と扉間が影分身を出して、3方向から同時に攻撃をする。しかし、その攻撃は、オビトの首にある勾玉が結界となって防ぎ、連続で攻撃しようとした時には、オビトの手から術が放たれる。オビトの手から放たれた術は、黒い流動体のようなものだった。それは瞬時に細長い棒状へと姿を変えて柱間、扉間コンビへと襲い掛かる。
それを扉間は避けようとするが、避けきれずに扉間の肘から先を消し飛ばしてしまった。一旦距離を離して扉間は自分の腕を見つめる。
「あれはなんぞ?」
「まともに受けない方がいい」
扉間は肘を柱間に向けて塵が集まらない様を見せつける。それを見て柱間も気付いたのか、他の者へと注意を促す。
「あれは恐らく、全ての忍術を無にする陰陽遁をベースにしたものだな……」
「皆の者。敵の出す術は絶対に喰らうな。穢土転生体でも元には戻らぬぞ」
そのひと言で更に緊張がはしったが、誰も諦めることはない。
ただ、回避に専念するような戦いとなってしまっていた。オビトの足元周辺の砂は、操れないため足場に出来ず、近付いて攻撃しても生半可な攻撃では、柱間たちの時と同様に、簡単に防がれてしまう。
それに加えて、オビトの使った陰陽遁の術により、オビトに付けられていたマーキングは消えていた。
飛雷神の術を使って近くから攻撃をしようにも、勾玉による自動防御によって防がれて、マーキングすらままならない状態だった。
それでも、諦めることなく、休むことなく、攻撃を続けていく。時間はもうほとんどない。残り十数分といったところだろう。
ナルトが仙術・螺旋丸を前方から放ち、後方からサスケのスサノオで挟み撃ちを狙うが、勾玉に防がれる。そして、攻撃直後の2人の隙目掛けてオビトが術を放とうとしたところで、イタチと自来也が左右から攻撃を仕掛ける。ナルトとサスケを囮にしたものだったが、オビトは気にせずにナルトたちへと攻撃をした。
自来也とイタチの攻撃は結局勾玉に防がれてしまい、それが分かった瞬間2人はすぐに後退した。ナルトとサスケについては2代目と、ミナトの飛雷神の術により回避済みである。
後退したのを見計らったように、白の雪月花で全方位からの攻撃をオビトへと仕掛ける。
さすがに全方位からの攻撃には、オビトも対処出来ずに攻撃を受けた。
しかし、仙術の威力が弱いのか、当たったものは全て浅手の傷程度で終わってしまう。元々の攻撃の主体が氷の千本なので、この結果は仕方ないと言えるだろう。
「あれで掠り傷が精々ですか……(せめて突き刺さるくらいはすると思ったんだけど……)」
白が暗い声を出すが、2代目とイタチはそうではなかった。
「全方位からの攻撃には対処できないようだな」
「勾玉2つが明らかに、他の勾玉よりも動きが遅い」
2人が冷静に分析している間にも、他の者は攻撃を仕掛けていた。
ナルトやサスケの攻撃は威力は大きいが、その範囲も大きいため、他の者まで巻き込んでしまうものだった。ただ、それをサポートするのは柱間と自来也である。オビトに隙を与えぬように、威力を凝縮して小さい範囲に絞りそれぞれが攻撃していった。
ミナトはオビトの攻撃が向かう先の人物を移動させることに神経を集中させる。
「ナルト! お前の得意なことを思い出せ!」
サスケは何を思ったのか、大型の風魔手裏剣を複数口寄せする。そして、風魔手裏剣に雷遁を纏わせてオビトへと投げつけていった。
ナルトもサスケの言葉で何かに気付いたのか、風魔手裏剣を大量にオビトへと投げつけていく。
9つの勾玉によって、ある程度までは防がれたが、全てを防ぐことはできずに攻撃を受けるが、掠り傷すら負わない。勾玉に防がれたり、身体に当たってもダメージを受けることがないと分かったオビトは、両手を自来也と柱間へと向けて、そちらの攻撃を牽制する。
その攻撃は続くかに見えたが、オビトが両手を柱間と自来也に向けた瞬間。動きの遅い勾玉2つを潜り抜けた風魔手裏剣があった。それは風魔手裏剣に変化したナルトである。これにより、ナルトは至近距離でオビトに、螺旋丸をぶつけることに成功する。
「やっとだってばよ……」
ナルトの言葉を無視して、他の者は更に追撃へと入った。しかし、オビトは、螺旋丸の威力により口寄せした樹の根の中へと飛ばされていってしまう。
「ちっ! 厄介な!」
サスケが舌打ちして、苛立ちながら、オビトの後を追うべくスサノオの剣を一振りすると、今まで傷つけることができなかった根を断ち斬ってしまっていた。
それまでオビトを倒すことに思考が傾倒していた。皆はそれを見て二手に分かれる。
イタチとサスケなど、長物を持った2人が根を斬り裂いていき、ナルトと自来也が仙術螺旋丸で斬った場所を拡げていく。
その間、柱間と扉間、白でオビトの足止めに動いた。
ゆっくりと浮き上がってきたオビトの視界を防ぐために、白は霧隠れの術を広範囲に渡って壁のごとく使用する。
しかし、白が仙人モードでいられたのはそこまでだった。白はすかさず、後方へと移動する。
白は、我愛羅の傍まで戻ると、薬を取り出して飲み込むと、再度チャクラの練り直しに入った。
(仙人モードが一番に切れるか……)
白は、悔しそうに顔を歪ませながらも、理性で感情を抑えつけて仙術チャクラを練っていく。
その間にも、樹を斬り倒そうとするが、オビトに気づかれ、今度は逆に防御に徹することになっていた。
今まで受けに徹していたオビトが、攻撃へと転じたのである。その攻撃は首の勾玉だった。それを6つ……イタチやサスケたちに向けて飛ばしていく。イタチ、サスケ、自来也、ナルトそして4人をサポートする形でミナトがついてはいるが、その数に翻弄されていた。
樹を削り取れたのは円全体で見ると5分の1程度。しかし、満月が真上にくるまでに倒しきるには、十分な速度で削り取っていた。
そのままであれば斬り倒せただろう。
邪魔が入らなければ、だが……。
そこで、キラービーが急に倒れたことが伝えられる。意識をオビトへ向かわせている間に、キラービーを狙っていたのである。仙術チャクラを扱えないキラービーに、まともな抵抗などできるはずもなく、八尾を抜かれてしまったのだった。
「これで後は九尾だけだが……。ここまでくれば十分だな」
オビトはそう呟くと、オビトの首に残っていた勾玉の1つが一瞬輝き、また黒へと戻っていく。
「どうやら、勾玉1つに尾獣1体が対応しているようだな」
それが分かってからは、再度仙人モードになった白を交えて攻撃を放つ。しかし、柱間と白だけでは手数が足りなかった。樹を斬り倒すメンバーで4人で勾玉6つ、オビトへ攻撃を加えるメンバー2人で勾玉3つ。オビト側の勾玉の1つが遅くとも他の2つで十分にカバーできてしまう。
しかも、数に対しては警戒しているようで、錫杖を壁にして勾玉と陰陽遁の両手を常時展開している。
見つけたと思った弱点は、既に弱点になっていなかった。
その時にイノを通してシカマルから提案が上がる。
その提案を了承した結界内にいる皆は、一旦攻撃の手を止めると、それぞれが各人最大威力の仙術チャクラを高めていく。
オビトは樹を斬る行為から離れたイタチたちを不審にがりながらも、チャクラを高めるのを見て、勾玉を戻して、更に錫杖を円盤上にして防御の体勢に入った。
白たちは仙術チャクラを高め終わると、オビトを中心にして5方向に分かれる。そして、同じ速度でオビトへと向かっていった。
5人それぞれの攻撃がオビトの勾玉に防がれる瞬間。我愛羅を除き、オビトを含めて全員がその場から消え去る。
残ったのは、勾玉と錫杖を円盤上にしたものだった。
それらは幻のようにゆっくりと樹の中に消え去っていく。それに合わせるようにして、オビトの張った六赤陽陣も解除された。
結界内にいた者たちが再び現れた場所はカカシの前。倒れている者は1人だけ……オビトだけだった。オビトは身体を斬り裂かれ、潰され、更に眼を潰された状態になっていた。その身体は、人柱力となる前の、不完全な、歪な形へとなっていく。
その次の瞬間。連合軍ほとんど全体から歓声が上がる。無理と思われた相手に勝ったのだから当然だろう。
あの瞬間、カカシはオビトの目を通して、攻撃の当たる瞬間を見ていた。そして、その瞬間に合わせて、神威により別の空間へと、オビトの勾玉と錫杖を残して飛ばしたのである。その代償として、カカシは気絶してしまったが……。
しかし、ある光景がその歓声を徐々に消し去っていく。
「樹が……消えない?」
白の呟きがその場全員の想いを代弁していた。そして、少しずつ元の絶望したような表情へと戻っていく。
ここで、ナルトの仙人モードも切れてしまった。
「みんな! もう1度十尾からチャクラを全て引き出す! 手伝ってくれ!」
その感情を忘れさせるかのように、ミナトが叫ぶと、クシナと柱間も封印術を使い、十尾が暴れないように縛り上げる。ナルトは九尾モードへと変わると、クシナの放った鎖を握りしめた。
「サスケ行くぞ」
「ああ」
「わしも手伝おう」
「わしたちじゃろが」
イタチとサスケはスサノオを展開して樹へ向けて移動する。それにガマ仙人を両肩に乗せた自来也が続いた。
今からでも、樹を斬る時間は残されている。今度は邪魔も入ることはなく、イタチたちは斬る作業へと入っていった。時間はギリギリだ。
そして、ナルトたちは十尾からチャクラを引き出していた。こちらも、オビトのように邪魔するものが無いため、1回目の時よりも早くナルトに向けて、十尾からチャクラが流れ込んでいた。
樹を斬り終わる作業が、あと少しというところまで来た頃に、唐突に樹の根が動き出す。
根はそれが意思を持っているかのように、イタチやサスケたちを襲い始めた。
扉間は影分身を使い、3人一緒に飛雷神の術で樹から引き離す。根は斬られ、削られた場所に根を当てると、その場所を根で塞ぎ始める。それを察して、再度近付いて斬りかかるが、斬った傍から根で塞いでいく。
悪いことはそれだけに留まらなかった。十尾が地面へと、溶けるように消えてしまったのである。
それに合わせて、樹の根の活動が活発になる。まるでそれは、十尾を栄養としているかのようだった。
そしてそれは姿を現す。
「こうなってしまうとはな。身動きがまともに取れなくなるが、もっと早めに動くべきだったか……」
樹にその者の顔が浮かび上がったのである。
「なぜやつが!?」
「やつは封印したはずじゃぜよ……」
「バカな……」
イタチの十拳剣により、封印されたはずのマダラがそこに現れていた。