白物語   作:ネコ

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13 船旅?

 大部屋から出るなと言われているので、仕方なく窓にへばりつき外の景色を見ているが、港から離れるにつれて、見渡すばかり海、海、海の時点で見るのを止めた。

 

 再不斬の他にも数名いるのだが、どうも話しかけずらい。それと言うのも、この部屋に残ってから話しているところを聞いたことが無いからである。

 

(この人たち仲間内でなにか話したりしないのかな?)

 

 全く会話が無いことに不審を抱きつつも、再不斬の元へと戻り、他からは見えないように、印を組む練習を行う。

 

(他にやることないなあ)

 

 それからは、夕暮れになるまで何事もなかった。

 

 夕暮れになってからは、ガリガリとなにかが削られるような音が響き渡り、何事かと腰を浮かしたところで、部屋に誰かが入って来た。

 

「今日の夕食だ。ここに置いとくから勝手にとって食ってくれ」

 

 男はそう言うと、扉の近くに弁当を置いてさっさと行ってしまった。

 

 その弁当を取るべく、こちらが動き出すよりも早く、今までじっとしていた男たちの一人が、弁当の方へと向かった。それに追随するような形で、自分も弁当を取りに行く。

 

 男は置いてあった弁当から2つ手に取ると、こちらへと渡してきた。

 

「ありがとう」

「…………」

 

 男はなにも言わずに、残った弁当を他のメンバーのもとへと戻っていった。

 

(返事くらいしてくれてもよさそうだけど……)

 

 受け取った弁当を再不斬の元へと持っていき、再不斬へと手渡そうとするが―――

 

「夕食の弁当です」

「そこに置いておけ」

「いま食べないんですか?」

「後で食う」

「では先にいただきますね」

「〈食ったふりして、トイレに捨ててこい〉」

 

 小声で言われた内容に眉をピクリと震わせ、弁当へと目を落とす。見た目は普通の弁当であり、蓋を開けてから漂ってくる臭いにも不自然なものは感じない。

 

 再不斬が小声で話したと言うことは、いま一緒にいる人たちは、敵である可能性が高いのだろう。

 

 食べる前にトイレに行き、タンクから水分身を作り出し、水分身に弁当を食べさせてから、トイレに戻させ術を解く。その後、何事もないような顔をしてトイレから出た。この短時間であれば、全て吐いたとは思われないだろうが、2回もトイレに行った時点で、多少は不審に思われているかもしれない。

 

 しかし、毒の可能性を示唆されれば、これくらいはしないと安心できない。再不斬がいるので、最悪な事態にはいかないだろうが、警戒しておいて損はないだろう。

 

(船に乗ったら安心だと思ったんだけどな……。海賊ならともかく、同船内に敵がいるとか勘弁してほしい)

 

 しばらくすると、船員たちがガヤガヤと喧しく話しながら入ってきた。船員たちは食べ終わったようで、それぞれ談笑したり、寝たりとくつろいでいる。

 

 船員たちからは、特になにも感じないが、昼から一緒にいる人たちからは、時折り視線を感じていた。

 

「〈寝たら動けない振りをしておけ〉」

 

 再不斬へと、目で了解の返事をし、夜を待った。

 

 

 

 夜も更けてみんな寝静まった頃に、例の怪しい人の内の二人が部屋の外へと出ていった。それを薄目で確認し、他のメンバーが動かないのか見ていると、誰かの足音が部屋の方へと近付いてくるのが分かる。

 

「みんな起きろ!!!」

 

 部屋へと入るなり、大声でみんなを起こしにかかる。かなりの声量だったため、ほとんどの船員は起き上がり何事かと戸の方へと視線を向けていた。幾人かはいまだ眠そうにしている。ここで動いてはまずいので、そのまま寝たふりをしていた。

 

「何か大きな船が近付いてきてる! 船を動かすぞ! 持ち場につけ!」

 

 男の声に、みんなは慌てて部屋を出ていき、残ったのは海賊対策に雇われたであろう人たちと、自分達だけだった。その後にまたしても、ガリガリと言う音が響き、船が動き出したのが窓から見える星の位置で分かる。この音はおそらく錨かなにかなのだろう。

 

「行ったな……。まあ、ゆっくりしといてくれ。処理は頼んだぞ」

「もちろんだ」

「弁当を食ったのは確認してる。もう動けないだろう。後は海に捨てるだけだ」

「楽な仕事だな」

 

 大声で叫んだ男はそう言うと、部屋を出ていってしまった。

 

「さて、ゆっくりとは言われたが、さっさと終わらせて寝させてもらおう」

「そうだな」

 

 その言葉に、男たちは立ち上がったが、それと同時に辺りが霧に包まれていく。

 

「この辺り霧がきつかったか?」

「天候にもよるだろう。戸も開けっぱなしだし、上から入ってきたのかもしれん」

「取り敢えず、さっさと終わらせようぜ」

「どんどん濃くなってきてないか?」

「まず戸を締めろ」

 

 そう言って戸を締めている間にも霧は濃くなり、視界が無くなったところで、横にいるはずの再不斬が居ないことに気が付いた。

 

(そう言えば、サイレントキリングって言われてたんだっけ?)

 

 霧で見えないことをいいことに、しばらくのんびりと待っていると、霧が晴れてきた。

 

 そこに立っていたのはひとりだけ。後は床に倒れていた。一応胸が動いているので死んではいないのだろう。

 

「早かったですね」

「一ヶ所に集めて縛っておけ」

「先に尋問しないんですか?」

「後でもいいだろう。どうせしばらくは目を覚まさん」

 

 再不斬はそう言うと、部屋を出ていってしまった。

 

 ランプに火を灯し部屋を明るくしてから、ロープを探す。壁に掛かっていた物を取るが、長さ的に2人を縛るのが限界だろう。

 

(3人いるから内二人だけ縛って、もうひとりは練習台になってもらおうかな)

 

 2人を縛り上げ、先程この中でリーダー格だった者を練習台にすることにした。

 

 3人は動かしても全く微動だにしないことから、余程の事がないと起きないことが分かる。縛っていない男に猿ぐつわを噛ませ、トイレへと連れていき、氷遁にて手足を凍らせる。

 

(これで準備よしと)

 

 港町にて購入した短刀を取り出して、男に浅く傷を付ける。人に傷を付けることに対して、抵抗感が全くないことに、自分の事ながらどこか他人事のように感じてしまっていた。

 

 傷を付けた場所に対して、治療忍術である掌仙術を行う。

 

(他人に対しては初めてなんだよな……)

 

 チャクラを流し込むイメージで、手のひらに集まったチャクラを傷つけた場所に当てると、傷が浅かったためなのか、すぐに塞がってしまった。

 

(これくらいならすぐに治るのか。もっと深ければどうだろう?)

 

 今度は深く突き刺すと、男は目を覚ましたのか、苦渋の顔をしてこちらを見てきた。手足を凍らせてある上に、凍らせている部分が床と一体化しているので、動くに動けないだろう。男は一瞬こちらを見て驚いた表情をするが、傷の痛みでまた苦渋の顔となる。

 

 そんなことは気にせずに、チャクラを込めた手を傷口へと当てていく。今度も治ってはいるが、なかなか傷口が塞がらない。

 

(もうちょっと込めた方がいいのかな?)

 

 チャクラの量をどんどん増やしていき、血が止まる頃には、男は気を失っていた。

 

(難しいなあ。深手の場合は止血くらいにして、後は自然治癒に任せた方が効率的かも?)

 

 練習をひとまず終えることにして術を解いた。トイレから男を連れ出し、男の服を割いて、血の付いてない部分をロープ替わりに縛っておく。

 

 その後、着替えを行い、血のついたものをトイレに捨てると共に、トイレを綺麗にしておくことも忘れない。

 

 その後は大人しく待っていると、再不斬が帰ってきた。再不斬は部屋に入った瞬間何かを感じたのか問いただしてきた。

 

「……何をしていた?」

「暇だったので、忍術の練習をやってました」

「血の臭いがするぞ。殺してはいないようだが……」

 

 再不斬は、転がっている男たちを見てそう呟く。

 

「殺っていいなら、色々と教えてほしいんですけど」

「教えてもいいが。まずは現状を教えておく。この船自体が副船長に乗っ取られている。いや、いた、と言った方が正しいか。海賊の仲間とは思わなかったが……」

「船長はどうしたんですか?」

「既に死んでたな」

 

 再不斬は心底どうでもよさそうに話をしている。

 

「これからどうするんです?」

「このまま半日ほど進めば小島に着くようだ。そこが根城らしい」

「海賊の根城ですか……」

「やつが言うことが本当ならな」

「えーっと。小島に着いてどうするんでしょう?」

「海賊と言ったら金を持ってるだろう。これから移動をするにも金は必要だからな」

「まあ、そうですね。海賊なら居なくなっても誰も困らないでしょうし……。でも、この船の船員はどうするんですか?」

「この船は海賊に襲われた。それだけだ」

 

 既に再不斬の中では、船員に対する対応は決まっていたようで、即答された。

 

「なるほど」

「着いたらお前が処理しろ」

「移動手段が無くなりますよ?」

「仮にも海賊だ。他にも船を持ってるだろう」

「曖昧ですね(殺る必要性あるのかなあ)」

 

 再不斬の言葉に納得できずにいたが、次の言葉でそんな考えは無くなってしまっていた。

 

「島に着いたら鍛えてやる」

「是非願いします! 最近移動ばかりでまともに鍛練できてないので」

「実施は船が島に着いた直後だ。ひとりも逃すな」

「わかりました。(情報は、どこから漏れるか分からないし仕方ないね)島につく前に、この人たちで教えてほしいことがあるんですが……」

「なんだ?」

「仮死状態のツボの位置とか色々と知りたいんです。死んでしまったら分かりませんから」

「……いいだろう」

「いまからでも大丈夫ですか? 船の進路とか」

「分身を置いてきているから問題ない」

「では、早速お願いします」

 

 そこからは、ツボだけではなく、人体について教わった。どこを刺せばより苦しむか、どこを刺せば痛みを消せるかなど色々と実施していった。

 


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