白物語   作:ネコ

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52 班構成?

 ナルト事件の翌日。晴天の中、火影岩を背景に忍者登録用の写真を撮影が行われた。その後、教室に集められて1人1人に各自の事を記載する用紙を配られていく。そこには、先ほど撮影された写真が既に貼り付けられていた。

 

「<ナルト、本当にあの顔で写真撮ったのか……>」

「ナルト君やっぱり合格してたんだ」

 

 白は呆れ顔でボソリと呟き、ヒナタは安堵の溜息を漏らしている。

 

 ナルトの顔には墨と思われる物で偽歌舞伎役者のような模様を描いていた。本人は格好良いと思っているのだろうが、傍から見ると可哀想な人にしか見えない。教室の中で明らかに浮いていた。

 

 担当の先生は特に何も言わずに、記入された用紙を回収すると、教室を出て行ってしまう。もし、担当していた先生がイルカであったならば、叱ったうえで再度撮り直しをさせることだろう。

 

「明日の説明会って班決めだよね?どんな班になるのかな?」

「大体の予想であれば言うけど?」

「予想で十分だよ」

「まずイノとシカマルとチョウジは同じ班になるだろうね」

「どうして?」

「木の葉のイノシカチョウって聞いたことない?」

「あるけど……もしかしてその関係?」

「そう。だから、あの3人は組むことがほぼ確定してる。後は、サスケ君とナルト君が組むことくらいかな」

「後のメンバーは誰になるの?」

「誰だろうね?」

 

 ヒナタはナルトと一緒の班を望んでいるようだが、そうはならない。班構成については、原作知識として白は既に知っているのだが、それを教えるわけにはいかない。

 

 それに、白というイレギュラーの組み込まれ方もあるので絶対とは言い切れないからだ。そのため白は、明日の説明会まで楽しみにしておくことを伝えていた。

 

 その後、別の教室に1人ずつ呼ばれていく。自分で記入したプロフィールを基に面談をするためだ。ここでの面談も明日の班構成に少し影響を与えるということだが、白には関係のない話だった。

 

 ナルトが呼ばれてしばらくすると、何やら騒がしくなってくる。

 

「絶対何かやらかしてくれるよね」

「ナルト君、大丈夫なのかな?」

「たぶん却下されてるだろうね。あの顔写真だと」

「それにしては何か言い合いしてるみたいだけど……」

 

 言い合いはすぐに終わったようで、ナルトは再度写真を取りに屋上へと移動していったようだ。その後を小さい子供が追いかけている。

 

 白の順番となり、教室に入ると、先ほどの担当の先生と火影が座って待っていた。

 

「失礼します」

「そこに座りなさい」

「はい」

 

 火影たちの机から少し離れた位置にある椅子に白は腰かけた。普通であれば、火影の前ということもあり、委縮する生徒もいるのだろうが、白からはそのような態度は窺えない。担当の先生はそれを良い方に捉えたのか、通常であれば、生徒の緊張を解すためにも一般的な会話を挟むのだが、白の場合には、前置きなく本題に入っていった。

 

「登録書の注意事項については読んでもらえたかな?」

「はい。既読済みです」

「記載事項についても問題ないようだし……。火影様から何かありますか?」

「忍びとして、これから色々あるとは思うが頼んだぞ」

「アカデミーを卒業したばかりの私に、出来ることは少ないと思いますが、善処していこうとは思います」

 

 火影と見詰め合うことしばし、担当の先生が割って入った。このままでは進まないと思ったのだろう。

 

「以上で終わりです。明日の説明会には時間までには来るように」

「分かりました。失礼します」

 

 白はヒナタに先に帰る旨を伝えると、木の葉の里の入口まで行き、門を少し出たところで立ち止まった。

 

「おいおい。そこを勝手に出られると困るよ」

 

 後ろから門の係の者が、慌てて外に出ようとする白に声を掛けてきた。

 

「安心してください。これ以上は行きませんよ。アカデミーを卒業したばかりなので、これからの事を思って、外を見てみたかっただけです」

「それならいいんだが、勝手に抜け出すのだけはやめてくれよ」

「数分邪魔にならないように門横に居させてもらいますね」

「数分くらいならいいが、直ぐに戻るんだぞ」

「はい」

 

 門の係の者はそれだけ伝えると、元の位置に戻っていった。それを確認した白は、係の者に言った通り門の横へと移動する。そして、そこで影分身を使用した。

 

「では手筈通りに」

 

 白は、影分身に荷物を持たせて送りだし、白は木の葉の里へと戻っていった。係の者に言った通り数分の出来事だった。

 

 忍者登録を終えた翌日。アカデミーの一室を借りての説明会が行われた。総勢28名。みんなそれぞれが好きな席に座っている。ヒナタはナルトの隣に座る勇気が無いのか、斜め後ろの位置に座ってナルトを眺めていた。その隣に、白はいつもの定位置と言わんばかりに座っている。

 

 教室にだいぶ人が増えてきたところで、サクラの怒鳴り声が白の元へと聞こえてきた。

 

「ナルトどけ! 私はあんたの向こう側に座りたいのよ!」

 

 そう言うと、サクラはナルトを抑え込み、まるでそこには誰も居ないかの如く隣の席へと移動していく。

 

(この後って確か……あれ見たらヒナタは幻滅したりするのかな?)

 

 ナルトは、サクラに乗り越えられてから機嫌が悪くなり、唸りながら机に突っ伏している。サクラの対応が気に食わなかったのだろう。

 

 そうしている内にナルトがサスケの目の前へと移動して、机の上から俗にいうヤンキー座りでサスケを睨みつけ始める。一触即発の雰囲気に、それを見ていたヒナタは慌てていた。

 

 ナルトの態度に、周囲に居た女子たちが怒り始めて、ナルトに対して罵詈雑言を吐いていく。いつまで経っても、なんらかしら騒ぎ事を起こすことで有名なナルトなだけに、女子からはかなり嫌われていた。更に、毎回サスケに絡んでいくことも要因の1つだろう。

 

 そして、睨みあいが続いていた時に、ナルトの後ろに居た男子の肘が、ナルトの尻に当たり、それがナルトを押す形となった。睨みあいの距離が短すぎたせいだろう、そのままナルトは姿勢を保持できずに、サスケとキスするはめになっている。

 

(顔が近かったとはいえ、あれを避けれないとなると、サスケの反応速度はまだまだかな)

 

 白は他人事のようにその光景を見ていた。ヒナタはと言うと、呆然としてそれを見つめている。

 

「ヒナタ。正気に戻って」

「!? ……夢を見てたみたい」

「夢じゃないから。現実だから」

「……やっぱりそうなんだ」

 

 やはり、先ほどの光景を認めたくはなかったのか、ヒナタは夢と思い込もうとしていたようだ。白は、ヒナタに現実を認めさせるためにも、事実を伝える。それを聞いて、ヒナタは顔を下に向けて落ち込んでしまった。

 

 周囲の女子たちも驚きで固まっており、ナルトを押した男子も、何が起こったのか聞かされてバツが悪そうにしている。

 

 そんな中、女子の中で一番最初に現実に復帰したサクラが、ナルトをボコボコにしたのは言うまでもない。

 

「決めたよ白!」

「いきなりどうしたの?」

 

 俯いていたヒナタは、何かを決心したような顔を上げて、白に宣言した。

 

「私がナルト君を元の道に戻すよ!」

「まあ、頑張って……」

「これから頑張っていけば、元に戻るよね?」

「かもね……(ポジティブ思考なのはいいけど、こういうポジティブは求めてないよ!)」

 

 ヒナタは、ナルトとサスケがデキていると確実に勘違いしているようだ。白はそれを修正する気にもなれずに肩を落としていた。

 

 時間になり、イルカが教室へと入ってきた。それを見てみんなそれぞれ席へと着いていく。全員が席に着いたのを確認してからイルカは説明を開始された。イルカの説明にあった、スリーマンセルについて反応が上がった。それはそうだろう、この場に居るのは28名。3人で割ると1人余る計算になる。

 

「説明は以上だ。ただ、みんなの言いたいことも分かる。人数の関係上1つの班のみはフォーマンセルである基本小隊になる。やっていくことの内容は変わらないんだ、あまり気にするな。それから、各班に1人ずつ上忍の方が付き、その上忍の方の指導のもと任務をこなしていくことになるので、指示には従うこと」

 

(さて、他の班員にたぶん影響は出ないだろうし、同じ班員と仲良くしましょうかね)

 

 班の1部メンバーと担当上忍については、ヤマトより聞かされているので白は知ってはいるが、それが他の班に影響するのかまでは分かっていなかった。

 

「では次に第7班。春野サクラ、うずまきナルト、それからうちはサスケ」

 

 サクラとナルトはそれぞれ一喜一憂していたが、次の発言に、教室に居た生徒たちは呆れる者もいれば、固まってしまう者までいた。

 

「イルカ先生!なんでよりによって優秀なこの俺が、こいつと同じ班なんだってばよ!」

 

(アカデミーでの成績が、毎回最下位だったのに自分の事を優秀と発言するとはね……)

 

 イルカも呆れたようにナルトを見て説明したが、それを引き金にしてナルトがサスケに喰って掛かる。しかし、間にいるサクラに防がれ、逆にやられている姿を見ると哀れを誘うものだった。

 

「次に第8班。犬塚キバ、油女シノ、日向ヒナタ、それから白」

 

(やっぱりヒナタ以外のメンバーは変わらないか)

 

「俺の班が4人かよ」

「始めから基本小隊で行動出来る。効率的だ」

 

 白の元へキバとシノが話しているのが聞こえてきていた。キバは他の班と違うことが不満なようで、ぶつぶつと文句を言っている。シノはキバとは違い前向きな考えを持っていた。

 

「一緒の班だよ!頑張ろうね」

「そうだね」

「嬉しくないの?」

「先生の説明は終わってないよ」

 

 少し待ってから教室が静かになったのを確認し、イルカは言葉を続けた。

 

「ただし、この班については以前から検討されていたフォーマンセル。スリーマンセルの部隊に1人医療忍者を付けるというものだ。そこで、白にはその1人になってもらう予定だ。任務時には一緒に行動するだろうが、訓練などは別行動することもあるだろう。その辺りは担当の上忍の方に聞いてほしい」

 

 イルカはそう言い終えると最後の班員を言い始める。

 

「そういうわけで班は同じでも、居ないことが多々あると思う」

「でも一緒の班には変わりないよ」

「それはそうだけどね」

 

 イルカは平均を取ったと言っているが、ある程度の圧力が掛かっているのは、班構成を見れば明白だった。明らかに偏りが出ている。偏りのある中で平均的にするのにイルカは苦労したことだろう。

 

「午後からは、担当の上忍の方を紹介するからそれまで解散!」

 

 白はヒナタと共に食堂へと行き食事を済ませて、ヒナタに班のメンバーについて訊ねていた。

 

「ヒナタは同じ班の人の事を知ってる?」

「よくは知らないけど、子犬と一緒に居る人とサングラス掛けてる人だよね?」

「そうだよ。あっ!こっちに来るみたいだ」

 

 噂をすればなんとやらで、キバとシノが白たちの元へと歩いてきていた。真っ直ぐに白たちの元へと向かっていることから、何かしらの用事があるのだろう。

 

「白と……ヒナタで合ってるか?」

「合ってるよ。僕が白でこっちがヒナタ。これから同じ班なんだしよろしくね」

「やっぱり俺たちの事知ってるか、まあいいや。俺はキバだ。それと頭の上に居るのが赤丸。よろしくな!」

「クゥーン」

「シノと言う。よろしく頼む」

「ヒナタです。よろしくお願いします」

 

 班内での挨拶もそこそこに、キバが本題を切り出してきた。

 

「てことで挨拶はこれくらいにして、白に聞きてえんだけど、俺たちの担当上忍って知ってるか?」

「多分でいいかな?」

「毎回多分とか予想とか言ってるみたいだが、外れてねえだろ? だからそれでいいぜ」

「女の人で幻術使いということくらいかな」

「女の担当上忍かあ」

「上忍である以上、男も女も関係ない。要は実力の有無だ」

 

 キバは大丈夫なのかと懐疑的な顔をしている。シノについては、顔を隠しているので表情は不明だが、言葉の内容から、実際に会って判断するということだろう。

 

「それにしても、そんなこと、どこで知ってくるんだ?」

「私も知りたいかも」

「興味があるな」

 

 3人共に知りたかったようだ。白は、この件について事前にヤマトより聞いていたとも、それ以前から知っていたとも言えなかった。

 

「色々と秘密があるんだよ」

「これだから女って奴は……。隠し事が多すぎるだろ」

「やっぱり秘密なんだ」

「残念だ」

 

(紅上忍が新米だから、補佐として付けられたなんて言えないからねえ) 

 

 それから、昼休みも終わりに近付いてきたので、4人揃って教室へと戻っていった。

 


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