白物語   作:ネコ

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木の葉崩し後
75 再会?


 一旦川を越えてから薬品で臭いを消し、進路を南東にとった。

 

 木の葉の里をどんどん離れて行く最中、白はハナビへと問い質す。

 

「ハナビは今日の事をどこまで覚えてる?」

「今日の事……ですか? ……サスケさんと砂隠れの忍びが、闘っている途中から意識が途切れて……その後、誰かに運ばれていたのは覚えているのですが、意識を取り戻したところで、不覚にも雲隠れの忍びに後れをとって、気絶させられてしまいました……」

 

 ハナビは落ち込んだ表情を浮かべると、少し俯いてしまった。

 

 ハナビの言った内容から、里で今何が起きているのか知らないことがわかる。しかし、白は構わずに続けた。

 

「居場所がないって事だったけど、なんでそう思った?」

「……一緒にいたあなたであれば、分かるはずです……姉上は私に負けてから、父上との鍛練を外されました。そこまでは、理解できます。しかし、下忍になった時、父上は姉上のことを出来損ないと言った上に、日向家には要らないと断言されたのです……」

「……それで?」

「今日父上は……ネジ兄上に会いに行かれました。最初は暗い表情でしたが、戻ってこられた時には、一変して晴れやかなものへと変わっていたのです。……理由をお訊きしても、教えていただけませんでした……」

「つまり、ヒナタの代わりにハナビが跡目として教育されてたけど、今度はハナビの代わりにネジが教育を受けることになるってことを言いたいのかな?」

「はい……。白さんが出られた後ですが、父上の……姉上への待遇はいない者と同じような扱いでした……おそらく、それが原因で家を出られたのだと思います。……そして……今度は私の番です……」

 

 今までの事を思い浮かべながら話しているのだろう、ハナビの言葉は震えていた。

 

 2人はしばらく沈黙したまま進んでいき、十分に里から離れたところで一旦立ち止まった。

 

「ここまで来れば取り敢えず大丈夫かな」

「どうかしたのですか?」

「問題を解決しておこうと思ってね」

「問題……ですか?」

「そう、問題。ハナビは自分が白眼持ちであることは当然認識できてるよね?」

「それはもちろんです」

「白眼や写輪眼といった眼っていうのは、他の里から狙われやすいって言うのも分かる?」

「はい……今日の事で実感させられました……」

 

 ハナビはまた過去を振り返り、簡単に攫われてしまった自分の情けなさに溜息を漏らしていた。

 

「と言うわけで、人相を変えさせてもらうよ。どういう風な容貌がいいとか希望ある?」

「えーっと……」

 

 白からのいきなりの宣言にハナビは戸惑っていた。そのことを分かっていても、白は言葉を続ける。

 

「希望がなければこちらで勝手に決めるけどいい? ……ああ! 整形みたいに顔に少し傷が付くことを考えてるのかな? それなら、今回するのは、あくまで面のように張り付けるようなものだから、気にしなくていいよ。あまり違和感も感じないようにするし……。後は服装くらいか……」

「……そのようなことができるのですか?」

「できるよ」

「……暗部と言うのは色々とできるのですね……」

 

 未だに色々と勘違いしたままのハナビに対して、白は催促していく。

 

「それで希望はある?」

「いえ……特にはないです」

「そう……。じゃあこっちで決めるよ」

 

 そう言い終えると、白は巻物から道具を取り出し、ハナビの顔を変えていく。

 

(カブトはこれを一瞬でやってのけるんだよなあ……)

 

 数分掛けてハナビの顔を変え終えて、その出来上がりを確認する。

 

「なかなかの出来栄えかな? 後はこれをつけてね」

「これは……サングラス……ですか?」

 

 ハナビは白からサングラスを受け取り装着した。

 

「普通の眼鏡もあるんだけど、それだと白眼を隠せないから、そのためのサングラス。……連絡用にしか使ってなかったけど、こんなところで役に立つとは思わなかったな」

「連絡用ですか?」

「ああ、こっちの話。後、時間ができた時にでもコンタクトレンズを作ってみるから、今はそれで我慢しておいて」

「コンタクトレンズが何なのか分かりませんが……よろしくお願いします」

 

 顔の変装を終えたところで、白自身は変化の術を使い、再度南東へと向けて走っていく。

 

 夕刻頃になり、ハナビの体力も限界に近付いてきたところで宿をとった。

 

「やっと波の国か……」

「目的地はどこなのでしょう?」

「波の国のある島。先に連絡を入れておいたほうがいいか……。―――影分身の術―――」

 

 白が影分身を先に向かわせて座り直すと、机を挟んで対面に座るハナビが聞いてきた。

 

「その影分身の術についてお聞きしてもいいですか?」

「そう言えば、後で話すって言ったっけ……」

「はい!」

 

 ハナビは声高に返事をすると、先ほどまで疲れていたとは思えない勢いで、白へと詰め寄ってきた。

 

「アカデミーで習う分身には実体がないけど、影分身には実体がある。印の組み方はさっきの通り。後はチャクラの調整に気を使えば行けると思うけど、チャクラを結構消費するから今は使わない方がいいだろうね」

「すいません……印が早くて分かりにくかったので……その、ゆっくりでお願いします……」

 

 ハナビは一旦椅子へと戻ると、申し訳なさそうに言ってきた。

 

「別に後は休むだけだからいいけど。……それ以前に服か……取り敢えず、身体はこのタオルで拭いて、寝る時はぶかぶかだろうけど服を貸すよ。明日は先に服を買おう」

「ご迷惑をお掛けします……」

「まあ、ついてくると言われた時から想定内だから、別に気にしないでいいよ……ちなみに言っておくけど、俺は男だから勘違いしないように」

「はい」

 

 ハナビの率直な返事に対して逆に白の方が戸惑ってしまった。今までの反応から、ハナビも驚くと思ってしまったからだ。そのため、ハナビに問いてしまう。

 

「俺が男だって言われておかしいと思わないの?」

「特に思いませんが……男だと何か問題でもあるのですか?」

「……ないね……」

 

 ハナビには男女の違いでの考え方や、羞恥心といったものがないことをこの時に白は気付かされた。そのことにより、影分身より先に、そちらを教えて理解させることに費やすことになってしまった。

 

 

 

 翌日になり、早朝と共に宿で朝飯を食べてから目的地へ向けて2人は出発する。

 

 結局、昨日の夜の話については、半分理解はしたが、残り半分は理解していないというものになっていた。元々が戦うに当たって、有利になるか不利になるかという考え方を植え付けられて育てられたためだろう。男女の身体の構造の違いは理解できても、羞恥心などの心情については理解できないということだった。

 

 白は近くの街に到着すると、早速ハナビの服を購入しに店へと入っていく。それに続く形でハナビも店へと入っていった。

 

「自分に合いそうな服を持ってきて、それを買うから」

「合いそうな服……ですか」

「そそ。5着くらい選らんできて。誰かさん曰く、俺にセンスは無いらしいし……」

「……分かりました」

 

 白のトーンダウンした言葉を気付くことなく、ハナビは服を選び始める。

 

 しかし、合うという言葉の意味をはき違えていることに、白はハナビが服を持ってきた時に気が付いた。

 

(いや……さすがにこれは無い……それ以前に、秋なのにまだ夏物を置いているとかおかしいだろ)

 

 ハナビが持ってきた物は、ハナビの体型に合うものであり、容姿や季節に合うものではなかった。

 

「残念ながら、ハナビのセンスに関しては俺と同等かそれ以下であることが判明してしまった」

「合う服を持ってきたはずですが……?」

「……ちょっとこれは置いとこうか」

 

 その後、店員を呼びハナビに似合う服を5着ほど選んでもらい、その服を購入して店を出る。

 

「サングラスがセンスの邪魔をしてるのですか?」

「あの店員の話はもう気にしなくていい……それよりも、先を急ごう」

 

 

 

 白たちは木の葉の里から数日かけて、波の国のガトーが実権を握っていた島への入口へとたどり着いていた。そこには、以前まで繋がっていなかった橋が既に繋がっており、多くの人の往来がある。ただ、橋は完成しておらず、繋がっているだけの状態だ。橋の脇に柵が無いところもあれば、一部鉄板で渡してあるところもある。

 

 そのような中を白たち2人は島へと向けて歩いて行った。向かう先は、島内に建ててあるガトーカンパニーである。

 

 長い橋を渡り終えて街へと入ると、昔の状態が嘘のように活気溢れるものへと変わっていた。未だに建物などは昔のままだが、今いる人たちのほとんどの顔には笑顔があり、店の品物も色々と並んでいる。

 

 物珍しげに周囲を見渡しながら先へと進んでいき、ガトーカンパニーの建物へと到着した。

 

 建物は以前の時とは違い、増設したのか大きくなっていた。白たちは中へと入り受付に顔を出す。

 

「再不斬さんはいますか?」

「……どのようなご用件ですか?」

「白……と言えば分かりますかね」

「それでしたら伺っております。再不斬さまは2階の1番奥の部屋に居られます」

「どうも」

 

 階段を上がったところで変化の術を解き、2階の1番奥の部屋へと入る。

 

「失礼します、再不斬さん」

 

 そこには、だらしなくソファーに身体を預けた再不斬がいた。

 

「……白か……その後ろのガキはなんだ?」

「付き人……でしょうか? まあ素性はハッキリしてるんで心配はしないでください」

 

 再不斬は不審げにハナビへと視線を向けるが、興味を無くしたのか白へと視線を戻した。

 

「それで? 何の用だ?」

「暇そうですね」

「暇だな……」

 

 再不斬は退屈そうに上を向くと、天井へと視線を巡らしていく。

 

「商売の方はどうなんでしょう?」

「金は集まってるな」

「商売の内容までは知らないんですね……」

「そっちについては、あいつに任せてある」

 

 再不斬は心底どうでもよさそうに答えると、白へと先を促してきた。

 

「さっさと本題に入れ」

「水の国への攻撃はいつ行うんですか?」

「……どこまで把握している?」

「クーデターを起こして失敗。今は力を蓄えてる最中というところです」

 

 再不斬は、白の知っていることを更に聞こうとしたが、以前も同じようなことがあったのを思い出し、訊くのを止めて計画について話し始めた。

 

「金はできた。後は忍びを雇うところまできている」

「それに同行したいんですが構いませんか? もちろん邪魔しませんよ。ただちょっと欲しいものがあるだけです」

「欲しいものとはなんだ?」

「忍び刀です」

「……別に俺は構わん。こいつがあるからな」

 

 再不斬は背もたれに立てかけてあった首切り包丁を片手に持ち振り上げる。

 

「それでは、決行までに手伝えることがあれば手伝いますよ」

「あの女のところに顔を出しておけ」

「もしかして、未だに全部あの人任せですか?」

「俺にはこっちの仕事があるからな」

 

 再不斬は首切り包丁を幾度か振るい、背もたれへと戻してから悪びれも無く言い放つ。

 

「でも、今は暇なんですよね?」

「…………」

「いえ、なんでもないです。では行きますね」

 

 機嫌が悪くなり始めた再不斬から離れるべく、話を切り上げハナビを連れて部屋を出た。部屋を出て扉を閉め終えたところで、ハナビが白へと尋ねてきた。

 

「あの方はどなたですか?」

「元霧隠れの里の人で再不斬さん」

「元……ですか」

「そそ。……まあ、その辺は追々話していくよ。それよりも、今から行く人に会うと確実に仕事を任されることになる。そうなった場合、ハナビにも手伝ってもらうからそのつもりで」

「頑張ります!」

 

 ハナビの元気な声を受けて白は、その隣の部屋へとゆっくり近付き入っていった。

 


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