白物語   作:ネコ

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77 活動?

 白たちが波の国に来てからやっていたことと言えば、始めに来た頃と変わりは無く、カンパニーの手伝い・鍛錬・情報収集の主に3つ。

 

 ガトーカンパニーに関しては、順調に利益を上げていた。特に水の国と波の国の往来には、船が必ず必要となる。

 

 現在白たちが滞在している島のように、橋を架けることもできないからだ。それに加えて、陸路の方でも人や物に拘らず運んでいた。陸路の方は、海路と比べれば少なかったが、それでも波の国に忍びの里がないためだろう、依頼されることが意外と多かった。金額についても言うほど高くは無く、一般人でも十分に払える額になっている。その分、物量をこなさなければならなかったが、それでも十分だった。

 

 海路の運搬で、海賊などが出た場合の処遇については、通常数人の忍びを乗せているが、その船で本拠地を潰しに行くわけにもいかないため、暇を潰す目的も含めて、再不斬に数人の忍びを率いて出向いてもらっていた。そこで得た物については、完全に接収しているので、良い稼ぎになっており、再不斬のストレス解消にもなっていた。

 

 もちろん運搬だけには留まらずに、農業の方も今は手掛けていっていた。以前は武器などの供給を行っていたが、その運搬を抜け忍などに狙われる確率が非常に高いことが分かったため、完全に切り捨てる形となったのである。……ハイリスク・ハイリターンよりもローリスク・ローリターンを選んだ結果だが、今のところ問題は起きていなかった。始めに武器商人たちとの諍いがあったくらいだろう。

 

 徐々にではあるが、住んでいる人の生活基盤となるものを押さえていくことで、前のガトーとは違った、経済支配を行いつつあった。外聞は、以前のイメージが払拭されて優良企業に見えているため、一般人には分からないだろうが……。

 

 

 

 鍛錬については、元から才能があるためだろう。教えたことの呑み込みが早く、チャクラのコントロールに関しては家系のこともありすぐにできるようになっていた。しかし、残念なことに医療忍術の才能はなかった。

 

 そのこともあり、鍛錬の内容は忍術の方に傾いていくのだが、白自身が雷遁に関しての知識がほとんどないため、チャクラを雷に変えるやり方を教えて、後はハナビ自身で術を編み出すようにしていた。そのため、新しくできた術の相手をしたりしている。

 

「では行きます」

「いつでも」

 

 ハナビはそう宣言すると、印を切りながら白へと向かっていく。途中から瞬身の術で一気に白へと迫ると、右腕を横一線に振るってきた。その手を余裕を持って躱した白だが、ハナビの手に触れていないにも関わらず、服が横一線に斬れていた。

 

「やっぱり先生ですね……簡単に躱されてしまいました……」

 

 ハナビは残念そうな言い方をしつつも、どこかホッとしているような表情を見せる。

 

「それが新しい忍術か……途中で雷遁の発生に気付かなかったら結構やばかったな」

「はい、以前教えていただいたチャクラメスを、自分なりに変えてみたものです」

「確かに普通のチャクラメスよりもリーチが長い」

 

 ハナビの使用した術は、通常のチャクラメスの応用で長さはクナイ2本分程度だが、それでも十分に初見では対応しにくいものだった。瞬身の術で近付いてから、雷遁発生までのタイムラグが無ければ、白でも初見で躱すことは難しかっただろう。

 

「その代わりと言っては何ですが、持続時間が短いです」

「ということは、最初の不意打ちには使えそうかな? 長さを自在にできるのなら話は別だけど」

「……今のところ、先ほどくらいの長さが限界です……」

 

 ハナビは申し訳なさそうに自分の今の限界を言ってきた。しかし、今の状態では接近戦でしか使用できないが、これからの鍛錬次第では、それすらも変わってくることに白は気付いた。

 

「まあ一定の形に留めようとすると、チャクラのコントロールが難しいから仕方ない。取り敢えずできてはいるんだから、伸ばせるようにしていけばいい。それと、発動までの時間を短縮すること」

「はい!」

「……それはそうと、ちょっと開発した術を試してみたいから、昨日の雷遁をこちらがいいと言ったら撃ってきて」

「っ!? 分かりました!」

 

 ハナビは白の言った言葉に最初は驚き、嬉しそうに頷くと、期待したような眼差しを白へと向ける。

 

(―――風遁・風鎧―――)

 

 白が印を切ると、周囲に風が巻き起こり、球状に白を包んでいく。

 

「では撃ってみて」

「はい。―――雷遁・地走り―――」

 

 ハナビは印を切ると、切ったその両手を地面に付ける。すると、その両手から白へと向けて地面を電撃がはしっていく。白はその場を一歩も動かずに、その電撃を見つめていた。

 

 電撃が白の周囲にある球状の風に触れた途端、電撃は簡単に進路を変えてあらぬ方向へといってしまい、近くにあった岩にぶつかるとそこで消えてしまった。その結果に満足して白は頷く。

 

「さすがに、雷影並みの速度とチャクラで迫られたら耐えられないだろうけど、普通の忍び相手になら十分使えそうだ」

「……今のは……一体なんでしょうか?」

 

 ハナビは自分の術がいとも容易く無力化されたことで、少しショックを受けていた。何かしらのことは予想していたが、全く効かないどころか当たらなかったからだ。

 

「基本となる術の相関関係は教えただろ? 雷遁は風遁より弱い関係にある。……ただし、絶対的なチャクラ量の差がある場合はこれに限らないけど」

「つまり、今のは風遁ということですか?」

「そういうこと」

 

 ハナビは、先ほどまでショックを受けていたようだが、急に笑顔へと変わっていった。その表情を見て白は不審に思う。

 

「術を防がれたのに嬉しそうな顔をされると不気味なんだが……」

「今まで、私ばかり忍術を使用していたので……先生の忍術をまともに見たのはこれが初めてなんです! 防がれたことは確かにショックでしたけど……属性を教えていただけたということは、先生から信頼されたってことですよね!?」

 

 白が術を使う際に、ハナビが喜んでいたのは、なかなか自分の事を教えてくれなかった白が、ハナビに対して術を使ったことに加えて、開発した術を見せたためだった。

 

「ああ……(あの頃のことまだ引き摺ってたのか……)」

「これからも頑張って精進します!」

「まあ……やる気があることはいいことだね……」

 

 その日から、少しずつではあるが、白もハナビに対して術を使用するようになっていった。

 

 

 

 最後の情報については、影分身の1人を水の国へ。もう1人を火の国方面へと向かわせていた。水の国は以前の殺伐とした感じはなく、少しではあるが発展していた。道沿いに店しかなかったような場所に、新しく街ができていたり、元々あった街が大きくなっていたりと変わっていたのである。

 

(時が経てばやっぱり変わるもんだな……)

 

 白は古い記憶を思い出しながら、以前泊まったことのある場所など行ったことのある場所を巡ったが、そこは既になくなっていたり、違うものへと変わっていたりと様々だった。

 

 そして、一番驚いたことが、霧隠れの里の位置が分かったことだ。話を聞いていると、昔は血霧の里としてそこへ迷い込んだものは、2度と戻っては来れないと伝えられていたようだが、今は霧隠れの里として場所を公表してあり、依頼などをするのに行く者もいるようであった。

 

 街にて白は地図を購入し、霧隠れの里へと向かった。街などの人工物は変わっていたが、風景に変わりは無く、懐かしさを感じさせるものがあった。

 

 数日掛けて霧隠れの里の入口へとたどり着いた。

 

 そこはきちんと道を整備してあり、人の往来もある場所へと変わっていた。入口に至っては、昔は木で出来た柵であったものが、今では石造りの堅牢な壁へと姿を変えている。そして、昔は無かった門を潜ると、中の様子は一変していた。

 

 里の中は木の葉と同様に活気に溢れたものへと変わっており、建築物についてもこれまでに見てきた街と同様に、様変わりを果たしていた。

 

 その光景を見て白は呆然と門の入口で立ち止まってしまっていた。

 

(ここが霧隠れの里なんてウソだろ? 完全に違う場所じゃないか……約10年でこんなに変わるものなのか?)

 

 門のところで立ち止まっていたためだろう。里へ入るための手続きをしている者から声を掛けられた。

 

「霧隠れの里は初めてですか? 入るのであれば手続きをしてもらいたいのですが」

「あっ、はい。お願いします」

「では、こちらへどうぞ」

 

 白は案内に従い門の近くに設置してある小屋へと入っていく。小屋といっても、少し細長い形を取っていて、対辺に扉が付いている。小屋のような形をしているのは雪が降ってきた時のためだろう。入口から入って、手続きを済ませた後に、反対側の出口から出るといったものだ。

 

「こちらの方に記入をお願いします」

「分かりました」

 

 受付台の上に置かれた冊子へと記入していく。内容は氏名・年齢・性別と簡単なものだった。ただし、その横に数字がふってあり、係の者はその番号を見ると、自らの持っている冊子へと何かを記入していく。そして、白が記帳をしようとしたところで、係の者が話し掛けてきた。

 

「どういったご用件でこちらに来られたんですか?」

「ただの観光ですよ」

「……観光……ですか? 言っては何ですが、特に見て回るようなところはありませんよ?」

 

 実際に、霧隠れの里に名物と言えるものは無く、依頼を持ってくる者か、知り合いに会いに来るといった者がほとんどの中で、白の言った内容は係の者にとって意外だったのである。

 

「同じ場所に長いこと居るとそう思われるかもしれませんが、他の国から来た者にとっては珍しかったりするものですよ……はい。記帳はこれでいいですか?」

「……はい。大丈夫です。特に見るべきところはないかもしれませんが、一番人が多いのはこの先にある大通りになります」

「ありがとうございます」

 

 白は係りの者へと礼を述べると、係の者に言われた大通りへと向かって歩き出した。

 

(係の人が持ってたやつは、たぶん身体的特徴とかを記入したものなんだろうな……。それにしても、観光っていう言い方はまずかったのか? これだけ変わってて人が増えてるんだから、何かあってもよさそうと思ったんだけど……)

 

 大通りには遠目から見ていたとおり、人が溢れており、色々な店が通りに沿って並んでいる。そして、歩いていくうちに一軒の店の前で白は立ち止まった。

 

 昔よく買いに来ていた酒屋である。外見が多少変わっているものの、看板だけは昔のまま入口の上に飾られていた。

 

 白は気紛れで中へと入っていき、店内を見回した。外見が変わっていたので、白には予想はついていたが、内装の方も変わっていたのである。ただ、人だけは変わっていなかった。老いはあるものの、昔と同じ人物である。

 

 店内に他に人が居ないことを確認し、雑談交じりに昔から今に至るまでの経緯などを聞き出していく。

 

 約10年前にクーデターがあり、そこで主犯格は逃亡。その時に水影に浅くない傷を負わせていたようで、そこから里を囲っていた柵を石造りへと変えて侵入しにくくしていったようだ。ただ、このクーデターはその時だけに留まることがなかった。

 

 今の水影率いる者たちが立ち上がり、恐怖政治を敷いていた4代目水影の抹殺に動き出したのである。その時は、里を巻き込んでの戦いとなったが、元々居た住民たちも不満を持っていたので、これを利用し、4代目水影を単独に追い込み、最後には討ち果たしたということだった。

 

「4代目水影の墓とかはあるんですか?」

「あんなやつの墓なんてあるわけないだろ!」

 

 酒屋の店主は昔を思い出したのか、忌々しげに吐き捨てるようにして言い放った。

 

「そうですよね。(4代目水影は無理か……)歴代の水影様のお墓はあるんですか?」

「それなら確か、里の奥にあったと思うが……今の水影様に変わってからどうなったか知らんなぁ……あの時は結構色んなところが壊れちまったしな」

「そうですか……。では、いつまでも邪魔をしてはいけないので失礼しますね。後これください」

 

 白が台に乗せたのは、昔買わされていた酒だった。今の所持金から考えると安い酒だが、あの当時はこの酒を買うだけでもギリギリな上につまみまで要求されていたのだ。そのことを思い出しながら、白は買った酒を持って今日から世話になる宿を探しに街中の探索に向かった。

 


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