白物語   作:ネコ

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92 爆発?

 空区を出たサスケたち一行は、近くの街で情報を集めることになった。その際に、サスケが白に嫌味を言ってくる。それというのも、多少は白の情報を期待していたためだろう。

 

「これからだが、まずは、イタチの現在地を知る必要がある。そこで、あそこに見える街から情報を探してくるんだ。集合場所は、ここにしよう。……誰かがはっきり知ってればよかったんだがな」

 

 地図で場所を指差しながら、サスケはチラリと白を見る。白は、慌てるようにしていいわけを始めた。

 

「今までずっと一緒だったのにどうやって情報を集めろと!? どう考えても無理じゃない? それに有用な情報あげたじゃないか!」

「木の葉が俺の捜索を始めたとかいうやつか……どうでもいい情報だな」

「(このブラコンめ! イタチ以外の情報要らないんじゃ話にならないよ……)それなら、熔遁使いの四尾が 干柿鬼鮫にやられたって言うのはどう? 場所不明だけど……」

「話にならないな」

「その場所どこさ!」

 

 サスケは、場所が不明と聞いて興味をなくしたが、水月の方は、白の話に飛び付いてきた。白の襟首を掴み揺すりながら聞いてくる。

 

「だから、場所は分からないって言ってるじゃないか」

「役立たず!」

 

 水月の言葉に白は精神的にダメージを受けていた。情報を渡しただけなのに、役立たず扱いである。ここまで、細々と食料や衣類などの準備をしていたのは、白ひとりであった。このメンバーで、食事を作るものが居ないので、当然できる者に回ったわけだった。

 

 実際になにもしてないのは水月の方にも関わらず、この発言である。

 

「あの街に情報あるかな……」

 

 水月はすぐさま意識を切り替えて、近くに見える街へと、白から離れて見つめる。

 

 白はうちひしがれた状態で、座り込むとのの字を地面に書き始めた。

 

「料理頑張った。洗濯頑張った。薬の調合頑張った。資料の解析頑張った……」

「男がウジウジしてるの見るのはウザいな」

「男だったのか……」

「今更!?」

 

 香燐の発言はいつものことだったので無視したが、サスケの呟きに白は振り向いてしまう。既に知っていると思っていたのだ。

 

「この巻物を渡しておく。これを持たないものは敵と見なすからそのつもりでいろ」

 

 サスケは、蛇の絵柄の付いた巻物を手渡しで配っていく。受け取った各人はそれを見てから仕舞いこんだ。

 

「その蛇の絵は俺のチャクラで作ったものだから、複製は不可能だ」

「これなくても、写輪眼や香燐の感知で分かるんじゃ……」

「俺と香燐は分かるかもしれないが、お前たちの間で分かるのか?」

「なるほど」

 

 白はサスケの説明に納得して頷くと、香燐が口を挟んできた。

 

「お前馬鹿だろ」

「香燐も絶対分かってなかったよね!?」

「うちは分かってたし」

 

 香燐は分かって当然といった風情で、白を見下ろすようにあざけ笑った。サスケは、関係なしで話を続ける。

 

「そして、これが本題だが、もしイタチを見つけたらその巻物を使って俺を口寄せしろ。それと集合は3時間後だ」

「分かった」

 

 サスケの言葉に重吾は答えて、他のメンバーも頷く。しかし、それも束の間。白は、先程の香燐の発言を引きずっているのか、水月へと愚痴り始める。

 

「悔しいよ、水月!」

「……ぼくは行くよ」

 

 水月はそう言うと、白の発言を無視して、重吾と共に街へと向かう。水月へと伸ばしていた手をそのままに白が固まっていると、香燐が白にお前も早く行けと促してきた。

 

「変なことしてないでお前も行けよな」

「香燐もね!」

 

 香燐は余計なことを言うなと言わんばかりに、白を睨み付けるが、サスケに街へ行くよう言われ、渋々といった様子で街へと向かう。

 

 その場には、白とサスケのみが残った。

 

「人払いはした。言いたいことがあるなら言え」

「さすがだね。……もうすぐサスケに暁が接触してくる。爆遁使い……になるのかな? 土遁がメインだから雷遁ですぐさま決めてしまうことをお勧めするよ。もうひとりは今の段階では、あまり害にはならないけど一応注意しといた方がいい。それじゃ、また後で」

 

 白はサスケが何かを言う前に、白はその場を後にして街へと向かった。

 

 

 

 白は、サスケから離れると、街に入る前に自身の臭いを入念に消すと、服を購入してから、飲食店に入りやけ食いをしていた。

 

 サスケたちに言われたことにショックを隠せないのもあったが、表通りにいるとナルトたち探索チームに見つかるおそれがあるためだ。

 

 探しているのはサスケだけで、白を探している可能性は非常に低かったが、ゼロではないだけに、まともにうろつくことができない。街に入る前に顔を変えているが油断はできなかった。

 

 食事処で一服していると、外が騒がしくなってきていた。それに反応した白は、支払いを済ませて素早く外に出ると、通りにいる人が向いている方へと顔を向ける。

 

 そこには、巨大な十字架のような爆発が上がっていた。爆発の煙はしばらくそのまま続き、ゆっくりと消えていった。。

 

(諸に集合場所って言うか、先に行ったから狙われるんだよね。離れ離れになってから一時間くらいかな? 意外と早く決着付いたと思っていいのかどうか……。取り敢えず、行きますかね)

 

 白は、通りの人が固まって爆発の煙を見ている中、ゆっくりと街の外へ向けて歩いていき、街を出て周りに人がいないことを確認してから、本格的に移動を開始した。

 

(―――氷遁秘術・魔鏡氷晶―――)

 

 忍術を駆使して高速移動を繰り返す。そして、集合場所に一番乗りした白は、サスケから渡された巻物を広げると、サスケを口寄せした。

 

 口寄せにより現れたのは大蛇丸が契約していた蛇であるマンダだった。マンダの眼は写輪眼の模様をしており、幻術を掛けられていたことが分かる。その眼の模様も次第に消えていき通常の蛇の目に戻った時に、マンダの口の方からサスケがフラフラになりながら現れた。

 

「くっ……」

「こっぴどくやられたみたいだね」

 

 サスケの身体は爆発の余波を受けたのだろう。着ている服が爆発により破けており、酷いところなどは肌が焼け焦げていた。

 

 息が荒いままののサスケに近付き、掌仙術で大きな怪我を治療していく。チャクラが切れかけているのだろう。サスケは満足に立てないほど消耗していた。

 

「この……クソガキが……俺様を……利用するとは……この……」

「マンダ死んじゃったか……」

 

 マンダの眼から生気が失われていき、真っ白に変化していく。

 

 サスケの治療を酷い部分のみ粗方終えたところで、購入しておいた服を手渡す。

 

「はい。これ」

「わかっていたと……、言うことか……」

 

 そこへ水月が現れて、マンダを見た瞬間に一瞬固まるが、動かないと見るやサスケたちの方へと再度駆け寄ってくる。

 

「サスケ……なんでそんなにボロボロなのさ……。それにこのデカいのって大蛇丸の一番のペットじゃなかった? なんでこいつまでボロボロ……っていうか死んでるのさ?」

「暁の奴とやり合ってな……こいつを盾にした」

 

 サスケは水月に説明すると、少し動く程度に回復したのか、サスケは服を着替えて、またその場に座り直した。

 

 そこへ香燐と重吾が駆け寄ってくる。2人はマンダを見ても気にせずにサスケの元へと駆け寄ってきたところから、水月と違い大蛇丸をそれほど恐れてはいないのだろう。

 

 疲れ果てて座り込んでいるサスケと、死んでいるマンダを見て香燐が口を開く。

 

「情けねえ! なんでそんなに疲れ果ててんだよ!」

「暁とやり合ったんだ、仕方ないよ。そんなことより移動しようか。直ここに木の葉の忍びがやってくるから。……重吾はサスケをお願い」

「分かった」

 

 自分で歩こうとするが、立っているのがやっとの状態のサスケを重吾は背負う。それを確認してから白はサスケのボロボロになった服を拾い上げると、消臭剤を辺りに撒き散らした。

 

「さっきの街だと気付かれるおそれがあるから、どこか違うところがいいんだけど、いい場所ある?」

「それなら、ここから更に西へ行ったところに、宿場があったはずだ」

 

 サスケは腰から巻物を取り出すと、白へと投げ渡す。

 

「日光宿場ってところか……。それより急ごう、カカシ上忍の忍犬は優秀だから、長居してると見つかっちゃうよ。一応サスケの匂いを辿って来るだろうから、囮を出すんだけど、たぶんそう時間は稼げない」

「…………」

 

(―――影分身の術―――)

 

 影分身にサスケの服を持たせて違う方向へと走らせた後、白を先導にして、他の4人は西の宿場へと向かい駆けて行った。

 

 白たちが去ってから十数分後にサスケ捜索班が到着するも、そこでサスケの匂いが一旦途切れて北に向かっていることと、マンダの死骸があったことで困惑を隠しきれなかった。それもそのはずで、サスケと一緒に居た者の匂いもそこで消えている上に、サスケの匂いだけが北上していたからである。

 

 

 

 日光宿場へとたどり着いた5人は、民宿お越で休憩していた。

 

 部屋に布団を敷いて、サスケを横にさせてから、再度掌仙術で大雑把にしていた治療を再開しようとするが、サスケに止められる。

 

「必要ない。すぐに治る。それよりもイタチの情報は集まったか?」

「そんななりで偉そうに言ってんじゃねーよ!」

「暁の情報はあったけど、うちはイタチについての情報はなかったよ」

 

 香燐の罵声などは無視し、水月の言葉を聞いても、サスケは特に落胆した様子も無く、今度は重吾へと顔を向けるが、水月が続きを話し始めたことで、顔をまた水月へと戻す。

 

「ただ、暁の奴らは特別なチャクラを持つ者を狙ってるみたいだ」

「特別なチャクラ?」

「尾獣のことだよ」

 

 白が水月の言った言葉を補完していく。その言葉にサスケは眉をあげて反応した。

 

「尾獣だと?」

「そう。木の葉の里にもいたじゃないか、九尾が……。それに情報収集する前に言ったよね? 干柿鬼鮫に四尾がやられたって」

「…………」

 

 白以外の4人は、情報収集前に言った白の言葉を思い出していた。水月に至っては、自分の情報が既出であったと分かり、渋い顔をする。

 

「そういやそんなこと言ってたな。……うちの方は特にこれといった情報はなかった。重吾の方はどうだったんだ?」

「俺は動物たちに語りかけて、暁のアジトを幾つか把握した。場所については、白に渡された地図に記入してある。これだ。ただ……」

「ただ?」

 

 重吾は巻物をサスケへと投げ渡してから一旦言葉を途切ると、肩に乗っている小鳥を見る。

 

「そこでは嫌な感じのチャクラを感じるらしい」

「へぇ……低能な動「言わせないよ!」っぐ!」

 

 水月が言い終える前に白は水月の傍へと瞬身の術で移動し、水月の顔へ平手打ちを放つ。それは、白が思っていたよりも結構な威力を発揮して、水月は身体ごと壁へと飛んでいく。多少威力を和らげようと、水月が飛んだことも要因のひとつだったが、その光景を見た重吾が興奮しだす。

 

「あっ。やばいやばい」

 

 白はすぐさま懐から巻物を広げて、そこから薬を取り出すと、重吾の口へと無理やり飲ませる。重吾は殺戮衝動を抑えようとしていたようだが、事切れたように、そのまま寝入ってしまった。

 

「あれ? ……鎮静効果のある薬と眠り薬を間違えたかな?」

「おい! どうするんだよこれ!」

 

 香燐は重吾を指差し、白へと詰め寄る。

 

「寝てるだけだから大丈夫だって……」

「いいから、重吾を部屋に連れて行くぞ! うちも運んでやるから白は反対側を持て!」

「はいはい。……ここで寝かせとけばいいのに」

「男がグチグチいうな!」

「はいよっと」

 

 白は重吾の腕を肩に乗せて立ち上がらせると、反対側を香燐が同じようにして支える。2人はそのまま重吾を隣の部屋へと連れて行き、布団を敷いてその中に重吾を寝かせる。

 

 その後に、香燐が白へと相談を持ちかけてきた。

 

「<白。消臭効果じゃなくて興奮する薬か何か持ってないか?>」

「<それってつまり媚薬ってこと?>」

「<お前っ! ちがっ! そう! いい匂いがするやつだよ!>」

「<勘違いしてたよ……。はいこれ。本当は媚薬もあるんだけど、香燐はこっちが欲しかったんだね。やっぱり女性といったら香水だよね>」

「えっ?」

「それじゃあ先に戻ってるから」

 

 白は巻物を軽く広げて香水を取り出すと、それを香燐に手渡す。そして、放心気味の香燐を置き去りにしてサスケのいる部屋へと戻っていった。

 

 部屋の中には水月の姿は無く、サスケのみが布団に入り横になったままだった。

 

「サスケ。重要な話があるんだけどいいかい?」

「……なんだ?」

「その前に確認したい。木の葉の里を守ることについてどう思う?」

「……言いたいことが分からないな」

 

 サスケは白の真意を探るかのように見つめるが、白は気にせずに続ける。

 

「言い方が悪かったね。もし、サスケの大事な人が木の葉の里を守りたいと思っていたら、サスケはどうするのかと思ってね」

「そんな者は存在しない。それに目的については言ったはずだ」

「変わりそうにないね……。それじゃあ本題っと、その前に兵糧丸を渡しとくよ」

 

 白はサスケの考えが変わることが無いことを確認し、巻物を取り出してから薬を幾つか取り出して、それをサスケの枕元へと置いていく。

 

「もうすぐ、君はイタチと再会することになる。その時は一対一の戦いになるだろう。最後に真実を知ることになると思うけど、その後に出会う仮面を被った奴の言うことは、話半分に聞いておいて……。まあ、今言っても無駄かもしれないんだけどね」

 

 白の言葉に考え込んだサスケは、唐突に起き上がり、白へと命令する。

 

「すぐに出発する。他の奴らを集めろ」

「ええーー!? なんですぐに出発するの!?」

「お前がもうすぐといったんだろうが、と言うことは、こちらから行動すればその分早く会うということになる。水月は街へ買い物に行かせたから、先ずはそっちを呼び戻せ」

「そんな結論に至るなんて思いもしなかったよ……。分かった、水月探してくる。香燐はたぶん隣の部屋で固まってるよ」

 

 白はそう言い終えると、街へと水月を探しに駆けて行った。

 


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