白物語   作:ネコ

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93 救出?

 サスケたちは、日光宿場を出ると、重吾の調べた暁のアジトを近場から捜索していた。

 

 そのサスケが率いる小隊は、暁のアジトの前で立ち止まると、香燐に中の様子を探らせている。

 

 その小隊の人数は4人になっており、そこに、白の姿はない。

 

 肝心の白はというと……。

 

 

 

(早く雨止まないかな……たぶん今回の雨の筈なんだけど……)

 

 雨隠れの里の近くに潜伏して、雨が途切れるのを待っていた。水月に集まるよう伝えた後に、そのまま雨隠れの里へと向かったのである。

 

 雨が途切れるのを待っているのは、この雨が、感知結界の一部であると分かっているからだった。そのため白は里の中に入らず、外からの監視をしていたのである。

 

 白が監視を始めて2日目に、それまでずっと降り続けていた雨は、不気味なほど途中でパタリと止まる。

 

 不審に思った白は、しばらく様子を見ていたが、雨が降り返すことはなかった。それに対して確信を得た白は、影分身を雨隠れの里へと放ち、自らは準備を始めていた。

 

 雨隠れの里内の廃墟と化した場所では、頭に人を乗せた巨大な蛙と複数の頭部を持つ巨大な犬とが戦っている。

 

 その戦いは、蛙の方がほとんど守るだけという、一方的な展開が続いていた。次々と巨鳥などが口寄せされるが、急にその口寄せ動物たちが消え去る。

 

 その後、建物の内部に入ったのか、外は静寂に包まれる。それを確認し終えた影分身は、自ら術を解いて本体へと経験を還元した。

 

 白本体はというと、廃墟の外辺にあたる、海と見間違うような広さの湖の水面下に、空気の層を作り、そこで待機していた。

 

(確か……見た目こんな感じのところだったよな……これで違ったら苦労が水の泡だ)

 

 数十分程、壊れた柱に寄り添って待機していると、上の方から、瓦礫が水の中へと降り注いできた。それを見て白は、隠遁に集中する。

 

 水面下は流れもなく静かで、水の透明度もそれなりによかったため、水面上での人の動きを見てとることができた。

 

 1対6。自来也は善戦した方だろう。障害物のほとんどない水面上で戦っていたのだから。

 

 自来也は、1人に的を絞り、玉砕覚悟の特攻の形で掴むと、肩の蛙が印を組み、数瞬後にその場から消え去った。ペインの1人を連れ去って。

 

 実際には、消えたように見えただけで、水面下に瓢箪のような形をした蛙が沈んでいくのが、白には見えていた。

 

(肉眼で見ないと、見つけられないレベルか……それ以前に、あの蛙にはチャクラとかはあるのかな? 口に蓋? 栓? みたいなのしてるけど、忍具扱いなのか、それとも忍蛙扱いなのか……)

 

 その蛙はしばらく沈んだあと、止まりその場を漂い始める。水面上では、しばらく周囲の様子を見ていた、他のペインたちの捜索が一旦終わったようで、建物の方へと戻っていく。

 

 その後、蛙の口の栓が外れ、その口から自来也が出てくる。自来也はゆっくりと、水面へ向けて泳いでいく。そして、壊れた柱に隠れるようにして顔を出し、ペインたちへと攻撃して、ペインたち全員の顔を確認した。

 

 そこで、自来也は驚き、動きを止めてしまう。その短くとも止まった時間の中で、水面下に潜ったペインの攻撃を喉に受け、そのまま壊れた柱の上に叩きつけられ、他のペインたちからも身体中を刺し貫かれる。

 

(そろそろか……)

 

 湖の中へと沈んでいく自来也を回収した白は、水面上の人影が消えるのを待つべく、待機していたところで気付いた。

 

(辛うじて生きてる……)

 

 自来也自身は、動きはしないものの、刺し貫かれた金属は、心臓を避けて刺さっており、その心臓が弱々しく動いているのがわかる。

 

 白は、巻物から薬を取り出して、それを自来也に使う。そして、水面上に誰もいないことを確認してから、自来也へと氷遁を使用した。

 

(予定とは違うけど、やってみますかね)

 

 氷漬けにした自来也を連れてすぐさま移動する。一旦水面上へと浮上し、そこから瞬身の術にて雨隠れの里の外へと出る。

 

 人気のないところまで来た白は、巻物から道具を取りだし、自来也に刺さった金属を抜いていく。

 

 抜いた金属をすぐさま巻物に収納し、札によって結界を張った後、自来也の治療に取り掛かった。

 

 仮死状態にしたまま、身体だけを治そうとするも、ひとりだけではチャクラが足りなかった。そこで、波の国にいる影分身を解除する。

 

 そして、チャクラを十分に溜めてから陰癒傷滅を自来也に使用する。傷は傍から見て分かるほどすぐさま復元していき、白はチャクラの大半を使用して、傷を塞ぎ終えた。そして、自来也を毛布で包み込んだところで、そのまま意識を失う。

 

 

 

 白は、頬に落ちてきた雫で目を覚ました。自分の意識が無かったことを思い出し、焦って周囲への警戒心を高めるが、特に何も起きていなかった。そこで、自分が結界を張っていたことを思い出し、安堵の溜息を漏らすと、改めて周囲の様子を探る。

 

(そう言えば、この人が居たんだった)

 

 毛布で包み込まれた自来也の胸に耳を当てると、変わらずに心臓は動いていた。チャクラが回復しきっていない状態ではあったが、白は残りの小さな傷を消していく。小さな傷と言えど弱った状態の自来也では油断できなかったからだ。

 

 巻物から兵糧丸を取り出し、口に含んでから再度白は仮眠に入った。

 

 数日間、自来也の面倒を見ていた白だが、一向に意識の戻らない自来也を前に考え込んでいた。

 

(全く意識が戻る気配が無いな……。このままここに居ても仕方ないし、連れて行くか……)

 

 影分身を1人波の国へと先行させて、残り3人で自来也を運んでいく。運んでいる間も、自来也は目を覚ますことはなく、更に数日かけて波の国へと到着した。途中で台車で運んだのは言うまでもない。

 

 波の国に入ったところで、先行させていた影分身が、術を解いたことで重大なことが知らされる。

 

「ハナビを帰省させた!?」

 

 その情報は、受付からもたらされたもので、1ケ月ほど、木の葉の里に商売の手を広げるついでに、ナナがハナビの両親に文句を言いに行くというものだった。これを聞いて慌てた白は、すぐさま木の葉の里に行こうとするが、出発した日を考慮しても、そろそろ木の葉の里に着いていてもおかしくはない。そこで、本体ではなく影分身2体を行かせて、自らは拠点としているガトーカンパニーの方へと向かって行った。

 

(非常にまずいことになったな……)

 

 自来也を治療小屋に影分身と共においていき、白はガトーカンパニーへと顔を出す。

 

「すいません。お客さま。お待ちください。先ほど申し上げた通り取締役は居られません」

「はっ?」

 

 受付を素通りして奥の部屋へ向かおうとしたところで、受付に呼び止められた。しかも、毎回顔を合わせているはずにも関わらず、他人扱いされたことに白は唖然としてしまう。

 

「何言ってるの? 白なんだけど」

「えっ?」

 

 逆に唖然としている受付をそのままにして、奥の部屋へと向かう。再不斬に問いただすためだった。

 

「再不斬さん! なぜ止めなかったんですか!」

 

 扉を開けて開口一番で再不斬へと喰って掛かる。それに対して再不斬は落ち着いたもので、焦ることなく逆に聞き返してきた。

 

「何のことだ?」

「ナナとハナビのことですよ! 俺の事情知ってるでしょう!?」

「ああ。そのことか」

「ああ。じゃないですよ!」

 

 どうでもよさそうに言う再不斬に白は怒って詰め寄るも、全く効果が無かった。

 

「あまり心配するな」

「いや。それ無理ですから……」

 

 再不斬の慰めの言葉に気落ちしつつも、白は次の事を考えていた。

 

(波の国にいるのは危険だし、かと言って水の国は……同盟組んでるからすぐに分かる可能性も……火の国と風の国は論外として、残るは土と雷しか……隠れて生活するしかないのか……)

 

 移動先を考慮していると、再不斬から話しが続いた。

 

「あの女には、木の葉への同盟についても打診するように言ってある。……お前の情報が確かなら、今の火影は人情に甘いのだろう? 以前にも物資の援助を行っているし、それに加えて、水の国と同じ条件を付け加えれば、木の葉からも警護が派遣されるだろう。そいつらがおそらく、お前を監視する任務に割り当てられるはずだ。お前の肩書きは、既にこの波の国では3番目になっているからな。おいそれと手出しできないだろう」

 

 再不斬は白に説明をするが、白には納得できない部分があった。

 

「あのですね。木の葉にはダンゾウっていうのが居まして、そいつは手段を選ばないんですよ。物資の援助や同盟程度で手を出して来ないなんて考えられないんですが?」

 

 火影と対を成す存在のような男、ダンゾウである。ダンゾウの部下は少数ながらも、特殊な技能や秘伝を持った忍びが多く、何をしてくるか分からなかった。抜け忍であると知れただけでも、刺客もしくは抜け忍リストに載せられてもおかしくはない。

 

「既に国力はあちらよりも、こっちが上回っている。それに忘れたのか? こちらには既に水の国と同盟を結んでいるんだぞ? その国に対して下手な小細工などしたとしても、逆にやられるだけだ。刺客については、お前の開発したこの術が便利だな。忍びがどこにいるかがすぐに分かる」

 

 再不斬は机の上に広げられた地図を見ながらそう答えた。

 

 それは以前、イタチの件があってからというもの、チャクラが一定以上ある者に対して反応するように開発したものだった。今では更に分かりやすいように、島の地図を模した物が机の上に置かれて、それを半円の結界が覆っている。そして、その中をチャクラが光となって移動する仕組みになっていた。

 

「うーん。……それで本当に諦めるでしょうか?」

「今のこの時代、軍縮が進んでいるからな。経済的に強い国の方が有利だろう。……後聞きたいんだが、少し前に受付のところに行った時、なぜ変化してたんだ?」

「えっ?」

 

 変化など使用した記憶のない白は、自分の顔を触り、先ほどの受付の言葉を思い出す。

 

(しまった!? 変化するのすっかり忘れてた……)

 

 自分の迂闊さに頭を抱え込みながら、再不斬へと返答する。

 

「顔を知られたくなかったんで、いつもはここの部屋付近以外では変化してるんですよ……。まあ、それも無駄になりそうですが……」

「無駄になるだろうな。まあ、火影がそのダンゾウとやらにならない限り大丈夫だろう」

「あっ……」

「ん?」

 

 口を開いて固まった白を見て、再不斬は怪訝な顔をする。今日の白は、この部屋に来てからというもの様々な表情の変化をしていた。

 

「忘れてました……そう言えば、木の葉の里もうすぐ潰れます」

「……どう言うことだ?」

「どうしましょうか……。しかも火影がたぶんですが、交代してしまいます……」

「詳しく話せ」

 

 白は輪廻眼や暁の情報について再不斬へと説明する。再不斬はそれを聞いてにこやかな笑みを浮かべる。

 

「前にも言わなかったか? 俺の楽しみを奪うなと」

「奪ってません! 何もしてません!」

「ビンゴブックに載った奴らが、波の国に入ったら俺の元へ届くようにしてたんだが、最近はそれすらも無くてな……いくぞ白」

「きっと終わってます! もう終わってます!」

 

 詰め寄っていた白の襟首を掴み、引き摺るようにして部屋を出ていくが、白は反発する。

 

「お前の影分身をここに1体置いていけ」

「もう、2体分木の葉に向かわせてます……」

「先にお前だけ遊びに行ったわけだな?」

 

 自分の代わりに影分身が、木の葉の里に行っているということで、見逃してもらおうと画策したが、逆に再不斬の眼が鋭くなるばかりだった。

 


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