白物語   作:ネコ

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95 ペイン?

 木の葉の里は突如として起きた爆発や、巨大な動物による攻撃で建物を破壊されていた。

 

 急に起きた事態にも関わらず、木の葉の忍びたちは多少慌てたものの、自分たちの役割を思い出し、ある者は木の葉の里に住む一般人の避難に当たり、ある者は敵の捜索に当たっていく。以前に大蛇丸からの襲撃を受けたことで、こういった事態に慣れていたのもあり、一般人にしてもほとんどの者が迅速に避難をしていた。

 

 この時に、もう少し詳しく白たちからペインたちの情報を聞いていれば良かったのだろうが、侵入してきた人数は1人であるという情報が木の葉の忍びに伝播していた。それにより、敵の捜索に当たっていた者は、あまりの攻撃範囲の広さに戸惑うことになる。また、実際にペインと対峙した者たちも、他の場所で爆発音が鳴り響いたことで不思議がっていた。

 

 白と再不斬の2人が飛び出して、始めに出会ったペインは、修羅道と餓鬼道のコンビだった。そこでは、木の葉の忍びたちが遠巻きに術を発動しては餓鬼道に吸収され、接近戦に持ち込もうとしては修羅道にミサイルで迎撃されていた。

 

 そのペインたちの周辺には、木の葉の忍びが倒れ伏している。辛うじて生きている者もいたが、倒れ伏している者のほとんどが死亡しているのが、チャクラが無いことからわかる。それでも物量で押そうとしているのだろう。止むことなく術を行使しているが、一向に効果が発揮されることはなく人数だけが、修羅道のミサイルにより徐々に減っていっていた。

 

 白はしばらくペインたちを見つめながらチャクラを溜めていたが、ペイン2体の視線が向いていないのを確認すると、何も言わずに忍術を使用する。

 

(―――水遁・水龍弾―――)

 

 片手で水龍弾の印を組み、もう片方で違う印を組むと、餓鬼道たちに仕掛けた。それに少し遅れて、再不斬も水龍弾の印を組んで発動する。水龍弾が出現したことで、その光景を見た木の葉の忍びたちは、それまで風遁や火遁の忍術を取りやめて、急に現れた水遁に見入ってしまう。

 

 それもそのはずで、木の葉の里に大規模な水遁を使える忍びは少なく、限られていたこともあるが、敵であるペインが忍術を使用してこなかったため、味方の術であるという認識があり、それを邪魔してはいけないと、忍術を中断して見ていたのである。

 

 再不斬の水龍弾の方は上から餓鬼道に向けて、もうひとつの白の方の水龍弾は、修羅道と餓鬼道を取り囲むようにして向かっていく。

 

 案の定、餓鬼道に向かう水龍弾を吸収しようとするが、吸収できるのはチャクラだけのようで、チャクラを失った水龍弾はただの水となり餓鬼道へと降り注いだ。

 

 しかし、ただの水……しかも水龍弾程度の水の量では圧殺するには程遠く、餓鬼道をその場に立ち止まらせて、濡らすだけに留まった。

 

 もうひとつについても、自分たちへ向けて来ると思ったのだろう。修羅道は術を吸収しやすいようにと、濡れた餓鬼道の背中に回ると、そこから白へと腕を向ける。向けられた腕はあっという間に変形していき、数瞬後にはその腕からミサイルの群れが発射された。

 

 発射されたミサイルは、あっという間に白に命中すると爆発を起こし、その周辺の建物を含めて瓦礫へと変えていく。

 

 その時に餓鬼道は、白の方の水龍弾へと手を伸ばそうとしたが、その水龍弾は餓鬼道たちに向かうことなく、白へとミサイルが命中すると共に、その場に散らばりただの水となった。

 

 修羅道と餓鬼道が、ミサイルのぶつかった白から顔を逸らし、再不斬へと視線を向けた瞬間、修羅道と餓鬼道の身体中を痺れが襲う。

 

 餓鬼道と修羅道は痺れながらも周囲へ目を配り確認した。するとそこには、両手に雷刀・牙を持った白が、それを水溜りへと突き刺して片膝をつき、水に向けて雷撃を流していた。先程ミサイルがぶつかったように見えたのは、水龍弾と同時に印を組んだ影分身だったのである。

 

 餓鬼道はすぐさまチャクラの吸収を開始して、身体の痺れを取り除く。それにより、修羅道に流れていた雷撃も途切れて、修羅道も痺れが取れた。

 

 痺れがとれたことにより、それに合わせて修羅道が白に向けて移動する。ミサイルでは、確実に白を葬ることができないと判断したためだった。

 

 修羅道の背中から薄刃で長いのこぎり状の物が生えてくる。それで白をひと突きにするつもりなのだろう。しかし、白へと修羅道が辿り着く前に、再不斬が次の忍術を発動していた。

 

(―――霧隠れの術―――)

 

 辺り一帯を霧が覆い隠していく。その現象に慌てたのは木の葉の忍びの方で、そのような中でも、餓鬼道は迷うことなく周りの霧を吸い取るために手をかざす。

 

 この時、修羅道が白を葬るために餓鬼道から離れたのは間違いだった。餓鬼道の周囲の霧は消え去っていたが、修羅道付近の霧まで吸収できていなかったのである。

 

 もちろん再不斬が全て吸収し終わるのを待つはずも無く、術の吸収をしていた餓鬼道の元へ移動して、首切り包丁で斬りつける。

 

 元々接近戦を得意とする再不斬に、一対一では分が悪く、餓鬼道は追い詰められていった。再不斬は、久し振りに歯応えのある敵を前にして、口許に笑みを浮かべると、非常に楽しそうに餓鬼道へと斬りかかっていく。

 

 近くにいるはずの修羅道が、餓鬼道の元へ助けに行くことはなかった。何故ならその頃、白によって足止めをされていたのである。

 

 雷刀による電撃で痺れることが分かった白は、霧の中修羅道へ近付くと、片手の雷刀・牙で修羅道の胸を一気に突き刺して、雷撃を流していた。そして、もう片方の雷刀・牙を頭へと突き刺して同じように雷撃を流す。

 

 修羅道は霧によって何も見えないまま、身体中を雷撃により痺れさせていた。白は、雷撃を流したまま雷刀を動かして、硬い身体にゆっくりと斬り込みを入れていく。

 

 白が修羅道を解体していると、急に現れた大刀が、いとも容易く修羅道の首を一瞬にして斬り落とした。餓鬼道を倒し終えた再不斬が、今度は修羅道へと斬りかかったのである。

 

 それが分かった白は、すぐさま雷刀を修羅道から抜くと、修羅道から離れて、忍術を使用する。

 

(―――風遁・大突破―――)

 

 霧を吹き飛ばして現れたのは、身体をバラバラに斬り裂かれて倒れ伏す、餓鬼道と修羅道―――ペイン2体の姿だった。

 

 その光景を見た木の葉の忍びから歓声があがり、そこかしこで喜びの声が上がるが、それも束の間、大型の動物が、周囲を破壊しながらその場に来たのである。

 

 それに対して、木の葉の忍びはその場から一旦離れると、忍術を使用して大型の動物に攻撃していく。大型の動物は口寄せされたものであり、この動物に対しては忍術が効いた。しかし、やっと倒したと思った矢先に、次の口寄せ動物が来るという、流れになってしまっていた。

 

 木の葉の忍びが、口寄せ動物の相手をしている中、白は巻物を取り出して、バラバラになっている修羅道と餓鬼道を封印し、収納する。

 

 これにより、巻物を奪取して出さない限り、修羅道と餓鬼道の復活はなくなった。

 

 巻物に収納し終えた白は、口寄せ動物を無視して次のペインを探し始める。1度、霧隠れの里襲撃の依頼をした時に雨隠れの里で感じたチャクラを感知した白は、その場所へと向かう。

 

 再不斬は、その場に残り、斬っても斬っても分裂を繰り返す、大型の犬のような口寄せ動物と派手に戦っていた。何度も斬り裂き増えていくが、それを気にせずに再不斬は斬りまくる。それに伴い周囲の被害も増えていったが、再不斬は全く気にした様子はない。

 

 しかし、人的被害を抑えるためだろう。綱出姫の口寄せ契約相手であるカツユが、倒れた人々を包み込み、戦闘の無い場所に向けて移動させていく。移動させているのは、辛うじてでも生きていた者のみで、死んでいる者は、その場に置き去りの状態になっていた。

 

 

 

 次いで白が出会ったペインは、人間道だった。場所は木ノ葉暗号部の建物上。その真下では、悠長にシズネたち数名が話し合っている。

 

 人間道は、話し合っていたシズネたちの中央に降り立つと、すぐさま目の前にいた者の頭を掴み、起爆玉を置いて爆発を起こすと、再び建物上へと戻ってくる。

 

 その手に捕まれていたのは、イノだった。イノは絶望したかのような顔で、下にいるみんなを見つめている。

 

「動くな……。動けばこの女は死ぬぞ」

「ちっ!」

 

 いのいちが舌打ちしているが、動くことができずに見守っていた。人間道は、イノの頭の中を読み込もうとしているのだろう。周囲が凍っていくのに気付くのが少し遅れる。

 

 人間道が、周囲に出来た氷の鏡へと視線を向けた時には、イノを掴んでいたはずの手首から先が無くなっていた。次々とできる氷の鏡に人間道は対応できず、手首を斬り落とされたあとは、反対側の手首、脚と、少しずつ白の秘術により削られていく。

 

 解放されているはずのイノは、振り返り攻撃しようとしたのだろうが、それを止めて間近で呆然と人間道が解体されていく様を見ていた。建物の下にいた者たちも、その光景を呆然と見ている。今までの敵の行動から、こうも容易く倒されてしまうとは思っていなかったのだろう。人間道が、バラバラにされるまで、その場の誰も動くことはなかった。

 

 人間道を解体し終えた白は、巻物を取り出して修羅道たちと同じように封印し収納する。

 

「あ……あんたは誰だ?」

 

 イノの父親であるいのいちが、一番始めに硬直から脱出し白へと問いを投げ掛ける。

 

 この時になって、初めて周りに人が居たことを認識した白は、両腕を組みどうしようかと悩んだ末に答えた。

 

「波の国からの援軍です」

「波の国? ……隣国とはいえ、こんなに早く着けるわけが……」

「戦力にならない人は、里の端に移動した方が身のためですよ」

「待ってくれ!」

 

 そう言って次のペインを探すために集中しようとする白を、いのいちの言葉が遮る。少しでも敵に関する情報が欲しいのだろう。しかし、その遮るという行為そのものが、白を苛立たせていた。

 

「あんた、敵のスパイかなにかか? 俺をこの場に足止めしたいのか?」

「なっ!?」

 

 白のあまりの言葉に、絶句するいのいちを無視して、白はカツユに向けて話し出した。

 

「地上にいる全員に伝えろ。すぐに里の端に移動するようにと。それと、ナルトのやつへもう一度伝令を飛ばせ。妙木山との伝令役のカエルは、ダンゾウに殺られてる」

「何を言って……」

 

 尚も何かを言おうとするいのいちを遮って、カツユが答える。

 

「分かりました。伝えておきます。それと、敵の数は残り3人です。1人はカカシさんとチョウザさん、チョウジさんの3人で戦っておられますが、敵は無傷のようです。もう1人は、口寄せしては姿をくらませています。最後の方については、見付けても紙のように散らばり、すぐにその場から消えてしまうため、こちらについても、場所がわかりません」

 

 カツユは、白に答えると、いのいちに言い聞かせるようにして話し出した。最初の返事を確認した白は、再度集中してペインの場所の把握に努める。

 

 そして、一番近くにいるペインは移動を繰り返し行っていた。

 

(この移動してるのは、多分口寄せするやつの方だよな……)

 

 遠目に、犬と戦っている忍びたちの方を見て、白はそのペインに向かうのを止めた。そして、今度はカツユへと問いただす。

 

「ペインは全部で6体で、それ以外にも女が1人いる。俺が封印したペインは3体。残り2人は動いているとして、木の葉の忍びで倒したもう1体はどこにいる?」

「商店街の方にいますが……それがどうかしたのですか?」

「近くに人はいるか?」

「エビスさんと、木の葉丸くんという2人が近くにいますが、それがどうかしたんですか?」

「……探すの面倒くさい……一匹連れて行く」

 

 白はその場にいたカツユを一匹手に取ると、自分の肩に乗せてカツユに再度問いただした。

 

「場所は何処?」

「あちらになります」

 

 カツユはつのの部分をある方向に向けると、白はそれに従って移動を開始した。

 


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