球磨川君が武装少女達の学園に視察に行くようです。 作:ゼロん
一時間で3000字書けりゃいいのに……
「……」
ーーもう、疲れてしまった。一体自分はあの男に何を期待していたというのだろう。
鬼瓦は右目につけていた鬼の面を外そうとするが手が震え、動かない。
「な、なんで……?」
ーー怖い。あの男がいつから、いつから嘘をついていたのか。
「くそっ! こんなの! ただの仮面じゃないか! それにここは自分の部屋だ! 外して何が問題なんだ!」
『二度と顔を見せるな。忌子め』
「ーー!!」
幻聴。過去に母親に言われた言葉が鬼瓦の脳裏を支配する。
ーーお、母さん……?
「や、やめて……!」
『あはっ、嘘嘘。冗談だよ。本気にしちゃった? 大丈夫。君がどんなに不細工で、汚らしくても僕は大丈夫だから!』
「
本人が言っていないにもかかわらず、球磨川の声で、最も彼に言われたくなかった言葉が聞こえてくる。言われた事と正反対の内容の言葉が。
「違う! あれは……」
トントントン!
鬼瓦は我に返り、扉の方に顔を向ける。扉の向こうに見えたのは金色の髪。
「……そうとう参っているようですわね」
「亀鶴城……」
「入ってもよろしいかしら?」
鬼瓦が頷くと亀鶴城が扉を開け、部屋にゆっくりと入ってくる。亀鶴城は元気のない鬼瓦の姿を見て、ついため息をついてしまう。
「はぁ……あの男を信用するなんて、死ぬほど無駄な事でしてよ」
亀鶴城はやれやれと両手を広げる。彼女を見る鬼瓦の表情は冴えない。
「……」
「……まぁ、信じていた人に裏切られた気持ちは……わからないでもないですわ」
亀鶴城はゆっくりとベッドに座っている鬼瓦の方に歩き、彼女の横に腰掛ける。
「き、亀鶴城……?」
「……話ぐらいは聞いてあげましてよ。あなたが死ぬほど嫌でないのでしたら……」
亀鶴城は頰を紅潮させモジモジしている。
鬼瓦はそんな亀鶴城の姿に少し戸惑いを覚えながらも、球磨川との会話の内容、今の彼女自身の悩みと気持ちを全て亀鶴城に伝えた。結果、亀鶴城は頬を膨らませて笑った。
「ぷっ……ふふっ」
「なっ!? 笑わないでくれ!」
「ご、ごめんなさい。ぷぷ……あまりにも可笑しくて……」
「こ、こっちは真剣に悩んでいるんだぞ!? 少しは真面目に……」
「そんなに一人で真剣に悩まなくても、良いと思いますわよ? そのための
亀鶴城は微笑み、優しく鬼瓦の背中をさする。
「あなたもあの男にも、面白いところがありますのね……」
「えっ……」
「私が最初にあの男を見たときは、嫌悪感しかありませんでしたわ」
亀鶴城は淡々と語る。鬼瓦は驚きつつも彼女を見つめる。
「誰より弱くても誰かを助けたいだなんて矛盾……案外彼もロマンチストですわね」
そこにはどこか穏やかな顔をした亀鶴城がいた。
「あなたも男女関係となるとかなり純粋ですのね……。あんな男のどこが気に入ったんですの?」
「ち、違う! 誤解だ! 球磨川は確かに酷いところも多いが、あいつはあいつなりに……!」
「ほ~ら、ちょっとからかっただけでもこの反応。彼を好いていることが死ぬほどわかりやすいですわ」
「ぬぅううう……!!」
悔しさと恥ずかしさで赤い頰を膨らます鬼瓦。
彼女の様子を見て、亀鶴城はため息をつき『やっぱり』と苦笑する。
「正直に言いますわ、輪さん。あたくしは最初、球磨川に負けたあなたのことを心底見下していましたわ。『恥さらし』とあの男の前で言いましたの」
「なっ……」
亀鶴城は素直に鬼瓦に頭を下げて謝罪する。
「……ごめんなさい。けど今は違いますわ、あなたのことを心から尊敬していますの。あなたはあの男に最初に立ち向かい学園の生徒達を守ろうとした。手柄目当てで飛び出したあたくしが死ぬほど恥ずかしくってよ……」
「……亀鶴城」
亀鶴城は申し訳なさそうに顔を下に向ける。
「あたくしの醜い部分をあの男は全てお見通しでしたわ。笑ってるように見えても、多分球磨川は内心ではとても怒っていましたわ」
鬼瓦は目を見開く。今亀鶴城が言ったことが信じられないといった様子だ。
ーー球磨川が……自分のために……?
「……わからない、なんで球磨川が……」
「あたくしが
鬼瓦は理解が出来ないと言った風に、目を見開く。
「球磨川が私のために……?」
「仲間想いな彼のことですわ。仲間を軽視したあたくしに怒ったのでしょう……。最低な男でしたが……『仲間を侮辱するなんて最低以下だ』。その言葉は偽りではなく、あたくしには彼の本音に聞こえましたわ」
亀鶴城は立ち上がり、鬼瓦をしっかりと見つめる。
「輪さん、あなたもわかっているはずですわ。あなたを『綺麗』と言った時の球磨川の言葉は純度100%本物でしてよ」
「けど……!」
言い訳をしようとした鬼瓦の両頰を亀鶴城は両手でバシンとはたく。
「自分の自信の無さを、他人のせいにしてはダメですわ」
「……!! じゃあどうすれば良いんだ!!!」
鬼瓦は本心を暴かれ、今まで堪えていたものが全て溢れ出てしまった。
「自分は球磨川にどんな顔で会えばいい!? 本心で言ってくれた優しい言葉を疑った私は! どんな顔をしてあいつに会えばいいんだ!!」
「輪さん……」
「あの場で月夜を止めればよかった! 球磨川に残って欲しいと言うことも、謝って終わらせることもできた、できたのに!! 私は『裏切られた』なんて馬鹿げた思い込みであいつを追い出してしまった!」
「……」
「球磨川の言っていることは何一つ間違っていなかった。彼の言葉を間違っていると頭ごなしにみんなで否定して……悪者にして……私はあいつを追い出してしまったんだ……!!」
鬼瓦は肘を地面につけ、地に這いつくばる形になる。
「私は……! 私はもうわからない……!! 一体自分は何をするべきで、私はあいつに何をしたいのか……もう……わからない……」
しばらくの沈黙が続き、室内には鬼瓦が涙をすする音のみが響く。
「……あなた、死ぬほどお馬鹿ですの?」
鬼瓦は顔を上げると、呆れ顔をしている亀鶴城が目に入った。
「何をするべきか自分でも言っていましたわね、『球磨川に会う』と。もう、あなたの中で答えは出ているのではなくて?」
「そ、それは……」
「じゃあ、それをしたらいかが? 何もしないでここでグズっているよりは、死ぬほどマシでしてよ」
亀鶴城は鬼瓦を置いて、出口の方に歩き扉を開ける。
「ああしろこうしろと強制はしませんわ。それと……
「……!!」
「助言はここまで。あとは……あなた自身が決めなさい」
亀鶴城は扉を閉じ、部屋には鬼瓦のみが残された。
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「全く、あれだけあの男に目をかけてもらって……輪さん、あなたが女としてほんと羨ましいですわ」
球磨川が自分と戦ったのも、花酒と無茶な勝負をしたのもおそらく全部鬼瓦を想っての行動だろう。そう考えれば説明がつく。
「まさか……この学園を出たのも……いえ、それは死ぬほど考えすぎですわね……」
ーーさて、輪さんはどう出るのでしょう……
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「自分が、本当にしたいこと……」
ーー私は球磨川に謝りたい。
鬼瓦は床から立ち上がり、目を閉じる。
ーー私は球磨川を信じたい!
鬼瓦は自分の仮面を取り外して素顔を完全に晒す。自分の刀をベルトにぶら下げ、取った仮面を机の上に置く。もちろん外出のため、刀をバッグに入れ布で包むことを忘れない。
「球磨川に会おう。会って……会ってまた話すんだ」
ーー今度は私が、ありのままで、お互いに本音をぶつけるんだ!
「もう……私はお前から逃げない。お前が過去に何をしてきたかなんて関係ない。待っていろ球磨川。お前の過去と自分の過去、両方を受け入れて……私は前に進む!」
鬼瓦は迷いを捨て、女子寮を駆けた。球磨川ともう一度会うためにーー
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『あ〜! やっと仕事終わった〜! ジャンプも読めたし、
球磨川は帰りのバス停近くの商店街を歩いている。辺りは夕日の光でオレンジ色に染まり光と影の対比が最も
『ま、別れの形はちょっと残念だったけど……これでもうあの学校は大丈夫だ』
ーー最も、輪ちゃんを怒らせて悲しませちゃったのは……ちょっと罪悪感が残ったけどね。
『
その熊を飼い主もろとも必要以上に痛めつけ、子供を人質に取った自分を棚に上げて球磨川はヘラヘラと笑う。
ーー『貴様を信じた自分が馬鹿だったんだ……』
鬼瓦の最後の言葉が球磨川の脳裏をかすめる。
『……』
ーー輪ちゃん、君は……僕なんかを信じちゃあダメだ。努力し、強くあろうとする君はジャンプの主人公と同じ。僕にとって眩しい君は……間違っている僕を否定して……いつも正しく美しくなきゃ。
『君は綺麗だけど……僕にはもったいなすぎるよ。綺麗だからこそ輝いてて……眩しすぎて、消えてしまいそうだ』
嫌われ者でもいい。憎まれても不幸でも関係ない。自分を貫き、目的を諦めず必ず成し遂げる。
それが球磨川の揺らがぬ信念。
『やれやれ、本当、僕は昔っから惚れっぽい男だね……ま、いーや! カラオケにでも寄って帰ろーっと! マイナス十三組のみんなも呼んで、今日は打ち上げだ!』
ポケットから携帯を取り出し、電話をしようとベンチに腰掛けた瞬間ーー
『ん……? 誰だい、そこにいるのは』
球磨川が
『ぐっーーがっ……!!』
球磨川は地に伏し、意識を失う直前に見えたのは覆面で顔を覆った少女の集団だった。
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小さな水滴が球磨川の鼻に落ち、少しずつ意識がはっきりとしてきた。
ーーここは……地下かな? なんかすごい血生臭いんだけど……
「はろ〜〜? 目が覚めた〜?」
目を完全に開くと、黄色の瞳の女子高生が球磨川を覗き込んでいた。
--身長は……輪ちゃんと同じ150後半かな?
『……へぇ、今度はいい目覚め……とはいかないみたいだ』
「随分と余裕だね〜〜?」
球磨川は目の前にいる緑髪の少女をぼんやりと眺める。白い学生服に青色のスカート。ぴょろんと出たアホ毛。
目立った特徴がそれらだけだと普通なのだが。球磨川を驚かせたのは……かつての自分と同じく魚のような目。笑っているはずなのに、感情が全く読み取れない。
『えーと……君は?』
「さとりはさとりだよぉ〜。
『なるほど……さとりさん、こんな殺風景な場所に僕を招待してくれたのは嬉しんだけど……』
『これ……良かったら外してくれると嬉しいんだけど……?』
「あはっ。駄目駄目ぇ〜。だって外したら君、すぐに逃げちゃうもん〜」
さとりは微笑みを浮かべながら球磨川に近づく。球磨川は油断しているさとりの不意を突いて、『
『じゃあ、しょうがなーー』
「あ、ストッ〜プ。これなーんだ〜?」
さとりはポケットから一枚の写真を取り出し、ピラピラと球磨川の目の前で振ってみせる。
『……!! それは……』
「これは〜球磨川くんと〜鬼ちゃんの〜いけない場面の写真で〜〜す!」
『!?』
ーーうそっ!? 僕、さすがに輪ちゃんとそんな一線は超えてないよ!? そんなシチュエーション、僕の今までの人生に一度だってないよ!? やばい。少年ジャンプには絶対掲載しちゃいけない内容だこれ!
球磨川は顔に出てしまうぐらい動揺していた。そんな球磨川の様子を面白がり、さとりは笑いだしてしまう。
「はははっ、冗談だよぉ〜。球磨川くんったら~冗談が通じないなぁ〜〜クスクスッ」
『さとりさん、冗談キツイよ……』
ーーここまで動揺したのも久しぶりだ。親に怒られてジャンプを没収された時以来だよ……
球磨川は安堵の一息をついた後、本気モードに切り替える。
『……で? 君は何がお望みだい?』
「ふふふっ……な〜んだ、怒っちゃった〜? さとり、怒らせることしたかなぁ〜?」
「早く言えよ」
さとりは球磨川の全力過負荷に当てられたうえでも、余裕の笑みは全くと言っていいほど崩さない。
「うん、いいよ〜。君の本音を見せてくれたんだもん。さとりも腹を割らないとね〜〜」
さとりは球磨川に微笑みを向けつつ、片手に持っていた写真をスカートについているポケットにしまう。
「球磨川くん、君にはね〜さとり達の~『敵』になってもらいたいんだぁ〜♪」
「……敵?」
わけがわからないと言った風に球磨川は首を傾げる。
「そう~。正義と悪、秩序と混沌。二つは一つ。さとりの学園の秩序には〜
『……うん、よし、わかった! 君の言ってることはさっぱりわかんねーけど、君に僕が必要っていうなら仕方ないなぁ』
「本当〜? さとりの言うことを聞いてくれる〜?」
「断る」
球磨川はニヒルに笑い、さとりの表情を伺うが彼女の顔に変化はない。
「ならいいよ〜。君はここにいて〜? さとりはこの写真をネットに拡散してくるから〜」
さとりは球磨川に背を向け、出口の方へ向かいスキップする。
ーー待って。さすがにそれは色々とマズイな。
彼女が自分に背を向けたのを見て、球磨川は再びさとりが出した写真に向けて『
「……! 『
「無駄だよぉ〜。球磨川くん。この写真には〜『
大量の汗が球磨川の額から地面へ流れ落ちる。
「だって〜『
「……!!」
ーーしまった! 合成写真は……!!
「そう、『
さとりはさとりはくるくると回って球磨川の目の前に立つ。球磨川の頭を右手で掴み、彼の顔を彼女の顔に近づける。
「確かに恐ろしい能力だよぉ〜。けど……さとりの目は誤魔化せない」
さとりはのほほんとした声が鉄球のように重く不気味な声に変わる。声色は変わっても表情筋がピクリとも動かない彼女は、あの球磨川をも戦慄させた。
「……やられたよ。まさか僕の『
「あはは〜。褒めても何も出ないよぉ〜? その顔だと〜まだ手のひらを返す気は無いようだねぇ〜〜」
顔や言動から思考が読めない彼女を球磨川は訝しげに見つめる。
「……わからないね。君は一体何のためにこんな茶番を演出しているんだい?」
「それはね〜? さとりにもよーくわからないんだ〜〜? みんなと仲良くしたいからだっけ〜? それとも血に飢えてるからだっけ〜〜? 俺の右腕がうずくぜ〜みたいな〜〜?」
球磨川はため息を吐き、まるで哀れなものを見るようにさとりに侮蔑の目を向ける。
「はぁ……なるほど。君を最初に
「よく言われるよ〜〜っ。けど、君になら言われてもいいよぉ~? ボクの事をヒトって言ってくれるから~」
さとりはすぐ後ろにいた覆面少女から拷問道具を受け取る。
「じゃあ〜君がさとりの言う事を聞くまで〜さとりも頑張っちゃおうかなぁ〜〜?」
「……。僕は悪くない。」
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鬼瓦は肩で息をしながら、共生学園近くの商店街で立ち尽くしていた。
「いない……どこにも球磨川がいない……!」
箱庭学園や共生学園付近の商店街、バス停、付近の公園。思いつくところは全て探し回った。
「おかしい……思い当たる所は全部探した。球磨川が
ーーどこかに寄るにしても必ず報告には戻るはずだ。もう探し始めてから数時間が経っている。これだけ探していないと流石に不安になるな……
「球磨川……お前は一体どこに……!?」
「おや?
鬼瓦が後ろを振り向くと、そこにはいつものマント姿ではなく、アロハシャツを着こなした
「花酒……? お前、なんだその格好は?」
「ああ、これか? 数週間後にワイハーに行くからのぅ。そのための準備というわけじゃ」
球磨川にあれだけメンタルをボロボロにされたというのに、もうハワイ旅行気分とは……。その回復力と切り替えの速さは大したものである。
「よく見るとお前の取り巻きも同じ服を着ているな……」
「ひょ〜ひょひょひょ! お揃いの方が思い出に残るじゃろうて、
「そ、そうか……」
『現地で買ってもいいんじゃないか?』と鬼瓦の口から出かけたが、状況が状況なのでとりあえず話題に出さない事にした。
「それより、球磨川を見かけなかったか? あれから数時間探しているんだが、一向に見つかる気配が無いんだ……」
「げげぇっ!! あの男を探してどうするというのじゃ!? 妾はもうアイツの顔を見るのもウンザリじゃぁ!」
両手を顔に当て花酒は首を横にブンブンと振る。よくみると、花酒の親衛隊達も同じようにトラウマがフラッシュバックし体を震わせている。
「す、すまない。知らないと言うならいいんだ。ただあいつと話したい事があるだけだ。気にしないでくれ」
「あぁ、ならいいのじゃが……ん?」
花酒は眉を潜め、鬼瓦をじっと見つめる。
「……おぬし、仮面はどうした? あんな欠片になってもつけておったというのに……」
「あ、あぁ。たまには外してみるのも悪くないと思ってな。似合うか?」
「……そなた、何かあったのか? 顔つきがいつもと違うぞよ」
「さぁ……以前、あるバカな男が『外した方が可愛い』ってうるさく言うものだからな。たまには外してもいいかと思ったんだ」
鬼瓦は『どうだ?』と自慢げに胸を張ってみせる。彼女の様子を見て何かを察したのか、花酒はニヤニヤと笑い始める。
「ほう……意外じゃな。それほどまでにあやつを好いておったのか。なかなか厳しい道のりを選んだものじゃのう〜?」
「ご、誤解だ!! 私と球磨川はそんな関係では……!!」
「おや? 妾は
「ぐぐぐぅ……!! お前といい
「ひょひょひょ、まぁよいではないか。幸せなからかわれ方じゃぞ? 青春というやつではないか」
こうなった花酒はとても面倒くさい。鬼瓦は長い付き合いからこういう性格だとわかっていた。本人に恋愛経験があるかはさておき。
「……で。お主、他に当てはあるのか?」
「……いや、正直手詰まりだ。とりあえず、もう一度商店街を廻ってみようと思っている」
鬼瓦は『もし見かけたら電話してくれ』と言い残しその場を去ろうとするがーー
「最近
「
鬼瓦は花酒の一言を受け、彼女は走るのをやめて立ち止まる。
「おかしいと思ったのじゃ。普段は会議の発言に積極的ではないあやつも、今回のワラビンピック開催にヤツは大賛成じゃった」
「会議の内容をいつも興味無さそうに聞いているアイツが……?」
「球磨川の女子寮侵入にしても、普段ならばあやつが女子寮に入る前に『怪しい者がうろついている』と妾達に報告が来るはずじゃ」
「まさか……
鬼瓦の指摘に花酒はうなずいて答える。
「可能性としてあり得る。
花酒は親衛隊に帰宅を命じると、鬼瓦と同じ方向に向かって走り出す。
「
「ひょひょひょ、球磨川にいたぶられたお返しじゃ。あやつをからかわなくては妾の気が済まんぞよ!」
「やめておけ……逆に遊ばれるのが見えるぞ……」
花酒も話術や相手への嫌がらせには長けているが、球磨川の方が一枚も二枚も上手だ。
「それに……お主はドーモーを身を呈して守ってくれた。そのお礼をせねばの」
鬼瓦が苦笑をして花酒の方を見ると、ニィッと明るい笑みを浮かべてくる。花酒の方が年上のはずなのに、どこか可愛げのある笑顔だ。
「ありがとう、花酒」
そして二人は学園の門をくぐり、女子寮の方へ向かった。
「……そのシャツはどうにかならないのか? せっかくの緊張感が台無しだぞ?」
「ひょっ!?」