球磨川君が武装少女達の学園に視察に行くようです。   作:ゼロん

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今回はかなり短めです。


後編 ー3『嫌われ者でも、憎まれっ子でも……』

 

 

鬼瓦(おにがわら)ちゃんの負った傷を』『無かったことにした』

 

「……え?」

 

「!? 球磨川(くまがわ)……君?」

 

 球磨川は鬼瓦とさとりの頭を握り潰すどころが、サッと優しく撫でた。

 

『輪ちゃん、助けに来てくれてありがとう。本当、僕だけではどうにもならなかったよ』

 

「あ……」

 

『さとり……じゃなくて……紛らわしい、もういいや。眠目(たまば)ちゃん』

 

「な、なに……?」

 

 球磨川は困惑するさとりの方を向いてニッコリと笑う。不思議と今の彼の笑みには全く不快感を感じない。

 

『……お姉さんを大切にね。彼女は君の事を一番に考えて理解してくれる、世界でたった一人の人だから』

 

「……」

 

『君のその傷や骨折は無かったことにはしない。それが君への罰だ』

 

 球磨川は唖然としている鬼瓦達を通り過ぎ、『大嘘憑き(オールフィクション)』で「さとり」に刺さった螺子(ねじ)と傷をなかったことのする。

 

『ついでに僕が拷問した時の記憶も無かったことに……いや、どうしようかな』

 

「……遠慮します。この記憶は……私が背負うべき罪ですから。妹から目を背けて、きちんと話そうともしなかったことの……」

 

『奇遇だね。僕も同じことを思ってた』

 

 球磨川は「さとり」の頭に近づけた手を引き、ふっと笑い階段を登っていく。

 

「球磨川さん」

 

『ん?』

 

 球磨川が振り向くと表情を緩めた「さとり」がいた。

 

「妹を許していただき……一番恐ろしい事を教えてくれてありがとうございました」

 

 ーーやっと彼女自身も気づけたようだ。いくら妹を虐めた罪悪感を負っている……とは言えど、好き放題させちゃあダメだってね。妹を失って後悔してからそれに気づくだなんて遅すぎることに。

 

『……。はは、その重い想いは忘れちゃダメだぜ? ミーちゃん』

 

 ーー時には……勇気を出して叱らなきゃ。それができるのは家族である君だけなんだから。

 

「……はい!」

 

 

 ====================

 

 

 この事件の後、球磨川はしばらくこの学園に通い続けることにした。

 

 本人曰く『まだ輪ちゃんとのデートの約束残ってたよね!』だそうだ。あとは来週号のジャンプを奢るという追加条件つきで、だ。

 

 鬼瓦は呆れながらも頰を赤くし、承諾した。他の五剣も『仕方がない』と学園の男女の『共生』をもう一度見直すことにした。

 

 猛反対していた月夜は……球磨川が知り合いの中で『彼女と気が合いそうな友達を紹介する』と言ったら、案外簡単に丸め込まれた。

 

「わ、わかりました……しばらく様子を見ることにします……」

 

『決まりだね! じゃあ……どんな友達がいい?』

 

「そ、そうですね……優しくて、私と同じ友達経験がない人っていますか?」

 

 球磨川は人の弱点を、隙を突く。たとえ誰であろうとも。

 

 

 それからしばらくして、共生学園で男子達は……一部の人間を除き、化粧をすることはなくなった。

 

 五剣の筆頭が彼らの元に謝罪を述べ、球磨川が「彼らが武装女子に与えられた肉体の損傷」を無かったことにしたのである。

 

 過去に男子生徒達が女子生徒に手を出した際に受けた……報復の記憶自体は無かったことにはしなかった。そのため、以後も女尊男卑(じょそんだんひ)の体制は続くだろうが……鬼瓦の尽力のおかげで以前よりは男子への待遇もはるかにマシになった。

 

 ムチとムチではなく、ムチと飴を与えるようになったという違いではあるが……少しずつ共生学園は問題児の更生施設としてマイナスではなくプラスへ進んでいる。

 

 そして……事件から一週間が過ぎた。

 

 

 ====================

 

 

『えー……善吉(ぜんきち)ちゃん。僕もっとここにいたいんだけど……もう、わかったよ……帰りますぅ〜。帰ればいいんでしょ? …… バス代出してね?』

 

『あっ!こら! 球磨川ぁ!! 待ちやがーー』と球磨川の携帯から怒声が聴こえたが、彼は気にせず電話を切る。

 

『僕は悪くない。』

 

「そろそろ……か」

 

 微笑を浮かべながら、鬼瓦は球磨川の方を向く。つけていた仮面をポケットに入れ、さとりの事件と同様に、素顔で彼女は彼と向かい合う。

 

 ーーまだ流石に全員に素顔を見せるのは抵抗があるな……

 

 仮面は球磨川の前では極力外すことにしたようだ。

 

『ごめん、もういいかげん学園に戻って来いって善吉ちゃんがうるさくって』

 

「あぁ、早く帰ってやれ。きっと箱庭(はこにわ)の生徒会も、お前がいなくて寂しがっているんじゃないのか?」

 

 球磨川は『ちぇー嘘だぁ』と納得できない様子だ。

 

『別にー? 生徒会のためじゃないしぃー。まぁ志布志(しぶし)ちゃんの方からカラオケに誘ってくれたしね。そっちの約束も果たさないと』

 

 ーー志布志ちゃん……ということは女性だろうか? まぁ言い方から聞くに球磨川のクラスメートだろう。それに……彼、慕われそうな性格しているからなぁ……

 

 鬼瓦と同じように……彼が他の女性からモテてても……まぁおかしくないだろう。

 

 ーー少し、ののや亀鶴城のような女子力が羨ましい。自分は……あまりその面で自信がない。

 

 鬼瓦は微笑を浮かべながら球磨川の肩を叩く。

 

「はは、カラオケか。……飲酒は無しだぞ?」

 

『……僕、そんなに信用ない?』

 

 ーーでも、私はお前が好きだから……球磨川禊をその性格ごと信じているから……自分は胸を張って言うぞ。

 

「うーむ……ないな!」

 

『さすが、輪ちゃん。よくわかってるね。そう、過負荷(マイナス)は信じちゃダメなんだぜ? まぁお酒は飲まないよ。最悪退学になっちゃうし。親が怖いし』

 

「さすがの球磨川も親には勝てないんだな」

 

『……まぁね。最近では特に』

 

『じゃあね。』と笑いながら球磨川は教室を後にする。彼の後を鬼瓦が続く。

 

「球磨川……お前、何か私達に話し忘れていないか?」

 

『なにが?』

 

 とぼけた顔で首を傾げて見せる球磨川。

 

 鬼瓦はその表情から球磨川が嘘をついていることを見抜いた。

 

「視察……お前の仕事も……今日で終わりなんだろ?」

 

『……。はは、バレちゃったか。やっぱ敵わないなぁ(りん)ちゃんには』

 

 苦笑しながら球磨川は頭をかく。

 

「球磨川、帰り道でいい。歩きながら……少し話さないか?」

 





『良いニュースと悪いニュースがある。』

『良いニュースはもう一つ僕が主役の小説があるってこと』

『悪いニュースは次回が「最終回」だってことだ』

『次回、グッドルーザー球磨川。「GOOD LOSER GOOD LUCK」!!』

『僕は悪くない。』

「すこしさびしくなるよ。」

次回をお楽しみに~!
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