1941年12月某日。米国への宣戦布告を前に突如として世界各地…満州国や朝鮮半島など1部の日本領を含んだ…との連絡が取れなくなった大日本帝国は来る開戦に備えていた諸艦隊を待機とし、軽空母龍驤と一等巡洋艦愛宕、駆逐艦7隻、補給艦を連れた特設艦隊を編成し、外地捜索任務に当たっていた。
「報告!龍驤1号、陸地発見出来ず!2号からも同様の報告です!」
「との事ですが…どうされますか、司令?」
「ふぅむ…仕方あるまい、捜索範囲を広げよう。艦載機収容の後に方位0-8-5に取れ」
旗艦設備の設けられた愛宕の艦橋では、この世界が異世界であるという状況を受け止めるに値する情報が揃っていた。
まず、前情報のあった朝鮮半島並びに大陸の消失。同地にいた陸軍部隊や民間船も同時に喪失と見て間違いない。
さらに南樺太も消えている。現状確認できるのは本土の他には台湾と委任統治をされている南洋群島のみであり、陸軍のみならず海軍にも僅かな損害が出ている。
司令はもう使い物にならない旧世界海図の代わりに貼られた白紙の紙を見て唸る。
そんな時だった。
「報告!龍驤3号が陸地を発見!」
その報告は、司令部の張り詰めた空気を僅かに和らげた。続く報告が来るまでは。
「龍驤3号、敵航空機と接敵します!」
「っち、まさかこんなことになるなんてなぁ!」
半ば叫ぶように後部機銃手と偵察手の方に叫ぶように操縦手が操縦桿を引いて高度を上昇させる。
「いいかぁ、撃たれるまで撃つんじゃないぞ!」
今回の任務は偵察だ。攻撃隊の本分が果たせないのは些か不服ではあるが、それ以上に無駄な血を流したくはない。
異世界に日本が来るという不測の事態は、すわ日米決戦かという状況で想定されていることではない。国内の備蓄も少なからずあるものの、あくまで解放した大東亜の同胞たちから提供される前提であったために総量は心許ないのだ。
それを知ってか知らずかは分からないが、操縦手は対空砲火を想定して速度を殺さずに高度を上げる。
「ん?追ってこないのか?」
想定こそしていなかったが、許容範囲である高度まで高く、発動機が最適な燃焼を行える速度で飛ばせば、向こうの要撃機はついに追跡をやめる。欧米の飛行機は航続距離が低かったなとぼんやりと考えた操縦手は、偵察手の声で意識を戻す。
「見ていましたか、今の!翼竜ですよ!」
「竜?あのひょろっこくて長い飛ぶ蛇みたいな奴か」
「いえ、欧米で言うところのワイバーンですよ!」
こいつはとうとう気でも狂ったのか、龍だか翼竜だか知らないがそんな奴がいるわけないだろう。
そう思いたかったが、機銃手も否定しない上に自分も視界の端に入れた奴は飛行機ではなく動物だったのではないか?その疑念が抑えられない。
「こちら龍驤3号!報告は帰投後纏める!」
今は帰るのを優先させるべきだ。俺達の情報がないと、艦隊は、大本営は動けない。
そうこうしてる間に慣れ親しんだ母艦の、これまた見慣れた甲板が迫る。
機体のフックがワイヤーを捉え、停止。
「おぅい、帰ってきたぞぉ!」
久里浜燐です。
一話は以前投稿した版から変更がないです。