神様は私を化け物にした   作:零眠れい(元キルレイ)

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初投稿です。
今まで台本形式で書いてたので、描写など変なところがあるかもしれません。あった場合は指摘お願いします。


1話

「化け物が!」

 

「お前なんか死んじまえ!」

 

そっか…私は生きてはいけないのか。お母さんとお父さんが言ってるから間違いないね。でもね…私は不死身だから死ぬことができないの。

 

不死身だから怪我をしても治るの。

不死身だから食事をしなくても食の欲にまみれるだけなの。

不死身だから寝なくても眠気が襲ってくるだけなの。

不死身だから溺れても、火炙りされても、生き地獄を味わうだけなの。

 

だから私は…謝ることしかできないの。

 

「ごめんなさい」

 

そう言うと、決まってお母さんは、

 

「うるさい!お前なんか産まなければよかったよ!」

 

って言うの。

 

「ごめんなさい」

 

これを毎日繰り返して、毎日ごめんなさいって言うの。

でもね…私はこれでいいと思ってる。生きてはいけないのに、生かしてくれてるから。友達は欲しいけど…そんなわがまま…言っちゃいけないよね。

だって私は…悪い子なんだから。生きてはいけないのだから。

 

だけど、お母さんとお父さんの生命は今日までだった。

 

 

次の日になっても、何も変わらず怒鳴られている。

 

「死ね!」

 

死んであげたい。私が生きても意味が無いのだから。しかし私は死んであげることすらできないの。

 

「お前のせいで私達がどれだけ大変な目にあってるか……!」

 

「な、何だ!この地震は!?」

 

お母さんの言葉を遮って、かなり大きい地震が発生した。今までここまで大きい地震は初めてだった。地震が止まると、お母さんとお父さんは急いで外に出た。私は外に出ない。

だってお母さんに言われたの。

 

外に出るなって。

 

「な、何あれ…」

 

最初に声を出したのはお母さんだった。声だけで分かる…お母さんは怯えている。何かに…怯えている。

 

「巨…人…?」

 

お父さんも怯えている。巨人?巨人と言えば、外の世界にいる化け物らしい。化け物から…巨人から身を守るために人類は壁を築いたと、昔聞いたことがある。

一体お母さんとお父さんには何が見えているのだろうか。気になったから少し外を見ていた。すると、すごく大きな音と共に瓦礫が飛んできて、私は瓦礫に潰された。下半身の原型はもう無くなっている。自動的に、無理やり傷が回復するので、グチャグチャになって回復して、グチャグチャになってまた回復する。その繰り返しだ。

すごく痛い…

 

「巨人が…入ってきた!?」

 

「急いで逃げるぞ!」

 

お父さんがお母さんを引っ張って逃げてしまった。そうか…私はとうとう…捨てられたのか。

私が悪い子だったから…

 

「ごめんなさい」

 

そう呟いていると、入ってきた巨人がお母さんとお父さんの方へ歩いていた。だいたい10mくらいだろうか。姿は人間が裸になって、大きくなったみたいな…そして彼らは笑っている。笑いながらお母さんとお父さんを呆気なく食べてしまった。すると今度は私の方へ歩いてきた。巨人に食べられれば死ねるのかな…

 

だけど巨人は予想外に瓦礫をどかしただけで、あとは何もしなかった。

 

「……え?」

 

巨人は人間を食べる化け物じゃ…

殺戮を好む生き物なんじゃ…

困惑していた私だったが、すぐに理解した。

 

「…あ」

 

私は何を言っているのだろうか。

私は人間じゃない、姿形だけが似ている化け物。

一瞬でも死ねることに喜びを感じていた自分が馬鹿みたいだ。

死ぬことなんてできないのに。

 

 

20秒ほどすると足が回復したので、外を歩いてみることにした。私の記憶の限りだと、初めて外を歩いた。

 

初めて家を外側から見た。

初めて道路を見た。

初めて家族以外の人間を見た。

 

そして…初めて壁を見た。

 

あれが3つの内の1番外側の壁…ウォール・マリアか。思ったよりも大きい。50mくらいだろうか。一体どのような造りになってるのだろう…。そして…どうやって巨人は入ってきたのだろう…

 

「そこの君!早く逃げなさい!」

 

そんなことを考えていると、腰に変な装置を付けていて、見たことない服を着ている人に声をかけられた。えっと…なんて言えばいいかな…。そもそも逃げる理由が分からないよ…

それに…なんで私を助けるの?

私は生きてちゃいけないんでしょ?

私は化け物だって、お母さんとお父さんが言ってたよ?

私は何が何だか分からなかったので、あやふやなままこう答えた。

 

「な、何で?」

 

すると相手は切羽詰まってる状態だったので、少し怒りながら、

 

「は!?そんなの巨人に食われるかもしれないからだろうが!お前は生きたくないのか!?」

 

私は巨人に食べられないから大丈夫。

それに私は化け物なの。

生きることはしてはいけないの。

そう説明しようといたのに…

 

「もういい!こっち来い!」

 

私の体を掴んで走り始めてしまった。どこに行こうとしてるか分からないけど、生きるために走っているのは何となく分かった。

なんで私を生かそうとするの?

この人は知らないのかな…。私が化け物だってことを…

そんなことを考えていると、門をくぐって水の上に大きな機械が浮かんでいる場所に来た。私を助けた人は何か話している。

 

しかし私はそんなことより、この機械が不思議でたまらなかった。

 

これはどうやって浮いてるのだろう。乗っているのは見える限りで1000人くらいだろうか。こんなに乗って潰れないのかな…。これに乗って何をするのだろう。

 

「君!早く乗りなさい」

 

似たような服を着た人に言われた。私は頷いた。この機械に興味があったので乗ることにした。

 

それに…もしも許されるのなら…死ぬことについて考えるのは…ほんの少し遅らせようと思った。

 

この機械に乗っている人達の声は、怖い…助けて…もう終わりだ…嫌だ…死にたくないだった。

みんな絶望して…みんな涙を流していた。悲しまない人間はいなかった。

私には分からない感情だった。それもそうだ、私は人間ではないのだから。人間の感情が…わかるわけが無い。

 

吸血鬼如きが人間様になろうだなんて…あってはいけない。

 

そんな話…あってはいけない。

 

そんな願望を…持ってはいけない。

 

「この便は満員だ!!出航する!!」

 

さっき私を助けた人と同じ服を着た人がそう叫んだ。意味はよくわからないけど、この機械に乗れなかった人はこれ以上ないくらいに絶望している。叫んでいる内容を聞いていると…恐らくこの機械が動くのだろうか。と思っていたら、本当に動いた。

勝手に動いている。

この人数を乗せて動いている。

スピードも速かった。

 

すごい…

 

この一言に尽きた。

体が勝手に動いていた。

この機械の縁と呼ばれる部分に向かって足が動いていた。

私の表情は自然と…無邪気な赤ん坊のように笑っていた。

 

目は自然と見開いて…

口も自然と開いていて…

無邪気にはしゃいでいた。

 

他の人が絶望している中…私だけが笑っていた。

 

 

1時間ほどで着いてしまった。もう少し乗りたかったけど…そんなわがまま…駄目だよね…

 

それにしても…ここ…何処?

 

どうしよう…どうすればいいのかな…

 

さっきみたいに歩き回ってれば何か分かるかな?

とりあえず死ぬことはないので、適当に歩くことにした。同じ場所も何度も通り、ウォール・マリアの東にあるカラネス区を何周かしていると、いつの間にか1週間くらい歩き続けていた。流石に疲れてきたのでベンチで休むことにした。

 

「はぁ…疲れた…」

 

ここまで歩き回ったのは初めてだけど…結局何もわからなかった…

 

「でも…生きる意味はないから…分からなくてもいいよね…」

 

あの機械以来、特にこれといって凄いものはなかったし…

 

「はぁ…何しようかな…」

 

歩き回って疲れたせいか、座り込んで寝てしまった。

 

ーーーーー

 

「ギャァハハハハ!ギャァハハハハ!!」

 

お父さん、お父さん、破壊って楽しい?

 

「いいわねぇこっちも開いてぃ?いいでしょ?開いちゃうわねぇ。やっぱりこれも素敵ねぇ」

 

お母さん、お母さん、臓器見るの楽しい?

 

血まみれの少女は不思議そうに聞いています。

すると2人は揃って

 

「楽しい」

 

そして

 

「産まれてくれありがとう」

 

と、幸せそうに答えるのです。

 

ーーーーー

 

「……」

 

何…さっきの夢…さっきのあれは…誰?

あの女の子もあんなことされてるのに…痛みを感じてないかのように…

 

「……怖い…」

 

もう忘れよう。その方がいい。

それにしてもまだ夜中か…どれぐらい寝てたんだろう………そうだ…そうだよ…私…寝ちゃったんだ…。そんなことを考えながら動こうとすると、クチャという音が鳴った。そして…そこを見てみると…

 

「……」

 

案の定、人間の無残な死体が転がっていた。

忘れてた…どうして寝なかったのか…どうして寝ようとしなかったのか…忘れてた…10年も何も食べなかったから、注意すべきだったのに…間違いない、この人は私が食べた。

私の口の周りと手がベタベタだ…後で川で洗わないと…

 

「きゃぁぁぁぁ!!!」

 

反射的に逃げた。あとから気づいたが、あれは散歩していた女の人の悲鳴だったらしい。それにしても…次からは気を付けないと…

 

 

あれから1ヶ月ぐらい経った。今は少し危険を感じた為、ウォール・マリアの南にあるトロスト区にいる。

しかし…

 

「あの事件、まだ犯人がわかんないんだとよ」

 

「確か、食われた痕跡があったんだろ?」

 

「噂だと人間じゃねぇって話もあるらしいぞ」

 

「いくら何でも、んな馬鹿げた話あるか」

 

また噂が流れてる…ここならまだ容姿まで流れてないけど…ついつい反応してしまう…

 

「…」

 

「君、そんなに険しい顔してどうしたの?」

 

「!!!??」

 

本当はこのビックリマークとクエスチョンマークだけでは足りないけど、とにかく驚いた。今まで話しかけられたことがなかったから。

振り向いてみると、見る限りどこにでもいるような、黒髪のロングヘアで顔はそこそこ整ってる年上のお姉さんという感じだ。

いやそんなことより、

 

「だ、誰!?」

 

「そんなに驚くとは思わなかったよ。吸血鬼ちゃんは面白い反応をするねぇ。そうそう自己紹介が遅れた。私は君のことなら何でも知ってるおねぇさんだよ」

 

……?

 

「私のこと…今なんて言った?」

 

「ん?何かおかしなことを言ったかい?吸血鬼ちゃん」

 

「………なんで…?」

 

「なんで知ってるか?それはさっきも言ったろうに。私は何でも知ってるおねぇさんだって。信じられないかい?それなら…」

 

「なんで…なんで知ってるの…?吸血鬼だってこと…お母さんとお父さん…お姉ちゃんしか知らないはずなのに…なんで!」

 

 

私はおねぇさんの言葉を遮った。おねぇさんのことで頭がいっぱいになって、感情的になっていた。するとおねぇさんは自信たっぷりに、

 

「当たり前だろう?君のことなら何でも知ってるよ?」

 

このあと何があったか覚えていない。覚えてないぐらいに衝動的になっていた、と思う。

何も言わずに無反応だったかもしれないし、息を荒くしてたかもしれない。何も覚えていない、が正解かな。

今は誰もいない路地裏にいた。

理由は

『私には家という家がないんだ。そしてこれから話す会話は誰にも聞かれたくない。だから誰もいない所に行こう。そこでじっくり話してあげるよ』

とのことである。そして現在に至る。

 

「それで…おねぇさんは私に何の用なの?」

 

「最初の質問がそれか。まぁいい、理由は簡単さ。君が吸血鬼だからだよ。それだけさ」

 

「それだけって…なんで吸血鬼なのに会おうとしたの?」

 

「さぁ、なんでだと思う?」

 

「えっと…」

 

吸血鬼と会うのにメリットなんて…デメリットとしか出てこない…

吸血鬼は人間を食べる。だから、会えば普通は食べられると思うだろう。もしも私が人間を沢山食べるような性格だったら、もうおねぇさんはとっくに食べられてる…。でもこのおねぇさんは私のことを知っている。そもそも

 

「なんで私が吸血鬼ちゃんのことを知ってるかって?」

 

「ふぁ!?」

 

「ププッふぁ!?って、可愛いことするねぇ。面白いよ」

 

笑われた…。というかなんで分かったの!?心の中を見られてる気分になって…なんだかおねぇさんが怖いよ…

 

「おねぇさんは怖くないの?」

 

「何が?」

 

「だって…私は…化け物なんだよ?」

 

昔からお母さんとお父さんに言われていた呼び名…化け物。

私の固有名詞が化け物で、

私の印象が化け物だった。

怖いと思われるのが当たり前だった。

 

だけどおねぇさんは、

 

「吸血鬼ちゃんが化け物?私はそう思わないけど」

 

それをバッサリ否定した。

 

「……私の…何処が…化け物じゃ…ないの…?」

 

私の声はとても震えていた。今まで信じていたものが裏切られた感じがした。

 

「逆にどこが化け物なんだい?こんなに可愛い子が化け物のわけないだろう」

 

「で、でも…」

 

「私は人を食べるから、お母さんとお父さんに言われたから、私は化け物だとでも?」

 

おねぇさんに遮られ、私が話そうとしたことを全て言われた。

何気に声真似をしていたけど、私はこんなに幼い声をしてるかな…?

 

「……うん…」

 

「でもさ、それだけで化け物扱いになるの?人間だって生きるために豚や牛を殺して食べてるじゃないか。それと同じようなもんだろ?」

 

「でも…動物でしょ?人間とは違う…」

 

「いけないねぇ吸血鬼ちゃんは。それは動物を差別してるよ」

 

「差別…?」

 

「そう。動物も人間も吸血鬼も、全て平等な命で同じ命だ。そしてその命を生きるためとはいえ、奪うんだ。理由はどうであれ、人間が動物を殺すのは吸血鬼が人間を殺すのと同じだと思わないかい?」

 

「そして」と強調し、

 

「人間を殺して食べるのが化け物なら、人間は動物を一体何匹殺してる?無意味に殺してる時だってある。ならさ、人間も化け物になると思わないかい?いや、化け物以上の化け物だ」

 

なんだか長くて頭が混乱してきた…言ってる意味は何となく分かる。

だけど…理屈はわかったけど…納得はしたけど…実感が湧かない。

 

「なら…お母さんとお父さんは何で私を化け物扱いしたの?」

 

「怖いからだよ」

 

「それは…私が化け物だから?」

 

「正確には食べられたり殺されるかもしれなかったからだ。ただの食事をいけないことだと思わせて食べさせなかった。そして、その行為を化け物扱いした。でも、食事をするのはいけないことかな?」

 

「……分からない」

 

「徐々に分かればいいんだよ。今は思いっきりおねぇさんと遊ばない?今まで遊んだこと無かったろ」

 

おねぇさんは微笑みながら言ってくれた。私はこの表情を、どこかで見たことがある気がした。

 

 

あれから数年が経った。主に散歩をしながらお話して、何かめぼしいお店があったら見回る。その繰り返しだった。

初めての感覚だった。

とても楽しかった。

毎日がとても充実していた。

 

だけど…遊べたのは今日で最後だった。

 

「吸血鬼ちゃんはさ、他の人間と友達になりたい?」

 

「おねぇさんが居れば、他の人から化け物扱いされていい」

 

「そうかそうか。だけどね吸血鬼ちゃん。5年前何があったか覚えてるかい?」

 

おねぇさんはしゃがんで私と同じ目線になった。よっぽど大事なことなのかな…?それにしても5年前か…5年前は確か…

 

「巨人が入ってきたっけ?」

 

「そう。そして巨人がもう入ってこないとは限らないだろう?そうなったら吸血鬼ちゃんは生き残れても、私は食べられてしまうのだよ」

 

「……え?何で…嫌だ!死んでほしくない!」

 

「でもね、仕方ないんだよ。それに人間は吸血鬼ちゃんみたいに不死身じゃないからいつまでも生きることができない」

 

「独りになりたくないよ…どうすればいいの…?」

 

「簡単さ。人間の友達をたくさん作ればいいんだよ」

 

人間と…友達に?

 

「……できるかな…」

 

「最初は難しいかもしれないけど、例えば人間のフリをするとか」

 

「人間の?」

 

「それなら誰も怖がんないよ。吸血鬼だと親御さんみたいな態度をとられるかもしれないからね」

 

「……そっか…それなら…本当の友達はできないんだ…」

 

「…」

 

無言でおねぇさんが抱きついてきた。そして背中をさすってくれてる。

 

「よしよし…本当の友達が出来るといいね」

 

「……うん…」

 

そんな時、5年前と同じ地震が再び発生した。

 

「5、5年前と同じ?……!」

 

私は初めて『それ』を見た。

皮膚がなくて…

大きくて…

口が裂けてる…

 

「あれが…おねぇさんが言ってた…超大型巨人…」

 

私が初めて超大型巨人を見た感想は

憎むべき相手ではなく

恐怖を感じる相手でもなく

驚愕する相手でもなく

 

恩人に値するのであった。

 

「あれが超大型巨人かー初めて見たよーでかいねー」

 

おねぇさんも初めて見たんだ。それにしてもおねぇさんは呑気だな。もしかしたら巨人が入ってきて食われるかもしれないのに…

そんなこと考えてる間に壁を開けられてしまっ…!

 

「!瓦礫が飛んでくる!」

 

私は急いでおねぇさんを突き飛ばして瓦礫に押し潰された。まさか2度も瓦礫に潰されることになるとは…かなり痛い…

 

「おねぇさん…大丈夫?」

 

「私を庇ってくれたんだね。ありがとう。おかげでおねぇさんはピンピンだよ。しかし悪いが人間ではその瓦礫はどかせそうにないから5年前のように巨人にでも頼んでくれ。私は逃げるから」

 

「分かった…」

 

「じょあ、また会おうね」

 

「うん…」

 

おねぇさんは走って逃げた。おねぇさんは何となく死ななそうだから大丈夫だろう。さっきは本当に危なかった。

ここは壁と壁の丁度真ん中辺りだから…巨人が来るのも時間の問題か。

 

 

あれから1時間ほど経ってから変わったことがある。さっきから兵士達が腰につけてる装置を使って、空を飛び回りながら巨人を殺している。どうやって殺してるかよく分からないけど…

そういえば私を助けてくれた人はいるのかな…会ったらお礼がしたい…

あの時私を助けてくれなかったら、おねぇさんと会えなかったわけだし…

 

流石に暇だったので眠気が襲ってきて寝てしまった。瓦礫に潰されてるので、多分大丈夫だろう。

 

ーーーーー

 

少女はただ歩いているだけです。

 

「あの子って…あの噂の子だろ?」

 

「ああ…何でもあの家族全員が化け物だって話だ」

 

大人達が噂をしています。

 

「ママーあの子は何でボロボロなの?」

 

「……早く帰りましょうか」

 

子供の手を引っ張って少女を見せないようにしています。

少女は公園を通っています。

あ!ボールが頭に当たってしまいました。ボールが足元に転がっています。

 

「おーいボール取ってくれよ!」

 

少女はボールを拾います。ですが他の男の子が、

 

「やめとけよ!あいつに関わんねぇほうがいいって!」

 

「……確かに…よく見ると化け物じゃねぇか…」

 

「逃げろ!!」

 

こっちの男の子も少女が化け物だということを気づきました。男の子達は逃げていきます。1人残された少女は何も無かったかのように歩いています。

機械のように、人形のように。

 

ーーーーー

 

目が覚めた瞬間に眠気が吹っ飛んだ。

状況を説明しよう。

簡潔に言うと囲まれている。

どこで……瓦礫で私が潰された場所で

誰が……巨人を殺してた兵士達が

どのように……殺気を出して私に刃を向けてる

どうして……私が聞きたい

私もさっき起きたばかりなのだ。

というか注目なんて浴びたくないよ…とにかく体を起こさないと…

 

「動くな!」

 

怯えながら1人の兵士が私に向かって怒鳴ってきた。動くなって言われちゃったよ…。まぁ…無視して起こしたけど…

続けて他の兵士が、

 

「化け物が…」

 

すごく久しぶりに言われた一言だった。というか吸血鬼だとバレた!?ど、どうしよう…

と、とにかく…おねぇさんが言ってたことを思い出せ…

『もしもバレそうになったら、まずはバレそうになった原因を探るんだ。そして原因を探るために…』

 

「そ、それは…どういう意味なの?」

 

『白けろ。言ってる意味が分からない、とね』

私は少し小さな声で叫んだ。周りが静かだったおかげか、伝わったようだ。

 

「とぼける気か!?大勢の者が見たんだ!貴様が潰されていた瓦礫を巨人がどかし!巨人から無反応だったところをな!そして!決定的なのは傷が回復しているところだ!」

 

『そして原因を教えてくれたら、次に何に見えるのか気になるねぇ。だから私は人間だ、と主張するより』

 

「つまり私は…人間じゃないと…言ってるの…?」

 

『どう見えるのか聞いてみようか。この時注意すべきことは、私は吸血鬼だと言いたいんですか、と言わないことだ』

 

「当たり前だ!貴様は巨人でなければ一体なんだというんだ!」

 

『相手からどう見えているのか分かったら、それが吸血鬼でなければ…例えば巨人とかなら誤魔化せるはずだ。自分はあくまでも人間だと主張しろ』

 

「わ、私は人間なの!」

 

『絶対に曲げてはいけない。折れてしまえば…吸血鬼ちゃんならわかるだろう?』

今までで1番頑張って声を上げた。ここだけは絶対に曲げない。おねぇさんに会うためにも、捕まるわけにはいかない。

 

「人間だと?ふざけるな!一体どこが人間だというのだ!」

 

えっと…人間の特徴は…いや…そもそも

 

「そもそも…人間と違うところは巨人に反応がなかったのと…傷が回復するところだけ…。それ以外は人間…私は他の人とは…少し体質が違うの…」

 

これで上手くいくといいんだけど…おねぇさんならもっといいのが思いつく気がする…

 

「信じられるか!」

 

「巨人に決まってる!」

 

「今すぐ殺した方が…」

 

他の兵士が次々に叫んでいる。まるで自分は間違ってないと言い聞かせているようにも聞こえた。

 

「私は…化け物じゃ…」

 

ない。と言いたいのに、昔の記憶が邪魔をする。

おねぇさんの言葉より、お母さんとお父さんの言葉の方を優先してしまう。

 

言いたくても…言えない。

 

捕まるかもしれないのに…

 

「……リコ…」

 

!あの人は…あの時…助けてくれた…兵士の人!まさかこんな形で会えるなんて!

 

「彼女が人類に貢献してくれるのであれば、人類にとってこの上ない戦力となる。鍛えればリヴァイ兵士長と同価値の戦力となるのではないか?」

 

「イアン、どうしてあれを庇う?」

 

銀髪の女の人のリコという人と話している。私を助けてくれた兵士の人はイアンっていうのか。

それにしても…私をあれ呼ばわりか…人間として見ているのはイアンさんくらいだね…

 

「庇っているつもりはない」

 

「庇っているだろう?あれは人間か疑わしいどころではない。体質が違うだけでは説明がつかないのは、お前もわかっているはずだ」

 

「……しかし、俺の考えも分かってくれるはずだ。人類の前進に繋がるかもしれないんだぞ」

 

「それはあくまで可能性の話だろう。もしもあれが巨人だとしたらあれの思うつぼだ。ここで仕留めるべきだ」

 

2人が口論しあっている。それが原因なのか、周りが少しざわついてきた。

あれ?すごく今更だけど、なぜ巨人が来ないのだろうか。少し辺りを見回そうとしてみる。

 

「動くなと言ってるだろ!」

 

少し動こうとしただけでこれだ…そんなに私が怖いのか…当たり前か。しかし困ったな…後ろは建物だし…前は私より大きい人が多いから、動かない限り何も見えない…

 

「あ、あの…」

 

声を頑張って張り上げた。すると一気に注目を集めてしまった。さっきより何だか恥ずかしい…顔が赤くなりながら、

 

「な、何で巨人がいないの?内地にいるわけじゃないのに…」

 

い、言えた…少し力が抜けそうになる。するとイアンさんが、

 

「訓練兵や残りの駐屯兵がここを中心に巨人を殺している」

 

……ちょっと待って…それは…つまり…

 

「私を生かすか殺すか決めるためだけに…人が死んでるってこと…?」

 

それは…私のために…

 

「……ああ」

 

人が死んでいると言っても…過言ではない…?

 

「何で…私を殺さなかったの…」

 

「……?」

 

「どうして私を殺さなかったのか聞いているの!!」

 

「「「!!?」」」

 

この場にいる全員が驚いていた。

私が急に声を荒げたからだろう。

 

「そ、それは…」

 

「私を巨人の口の中に入れればいい!それか牢屋に入れてしまえば済む話なんじゃないの!?なんでこんな無意味なことに人の命を使うの!?私が生きることができる道なんてない!それはあなた方が1番わかることでしょ!?」

 

私は何を言っているのだろうか…それを言ってしまえば、もうおねぇさんに会えなくなるってことくらい、分かっているはずなのに……違う…そもそもおねぇさんに会えただけでも幸せなんだ…その幸せが…数年も続いたんだ。

 

私の幸せと人間の命なら、人間の方が大切に決まってる。

 

もう幸せは、十分に堪能した。

 

最近恵まれていたから忘れていたけど…本当の私は化け物で生きてちゃいけないんだよね。

 

「壁外追放でも…監禁でも…人類に貢献でも…何でも…するから…これ以上人間を…死なせないで…」

 

私は静かにそう訴えた。

 

兵士達はこの光景に…ただ当惑するしかなかった。




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