神様は私を化け物にした   作:零眠れい(元キルレイ)

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2話

5年前のあの日から…隣を見ればおねぇさんがいた。

 

『吸血鬼ちゃん』

 

吸血鬼の私を受け入れてくれた。

 

『吸血鬼ちゃん』

 

いろんなものを見せてくれて、いろんなものを食べさせてくれて、いろんなことを教えてくれた。

 

『吸血鬼ちゃん』

 

面白い話を聞かせてくれた。

 

『吸血鬼ちゃん』

 

お店に入ったり、川で遊んだり、本を読んでもらったり、いろんなことをした。

 

『吸血鬼ちゃん』

 

この世に存在してもいいんだと、生きてもいいんだと、おねぇさんは安心させてくれるように私を呼んだ。

 

あの日常に戻りたい。

 

確かにあの時の私は人間の方が大切だと、幸せは堪能したと思っていた。

だけど…人間は大切だけど…まさかこれほどに幸せが…私にとってかけがえのない…欲深くなっているとは…気づけなかった。気づかなかった。

 

目を開ければ自由とはかけ離れた鉄格子、

横を見れば拘束するための鎖で繋がれている手、

下を見れば少し硬いベッド、

そう…私は牢屋に入っている。

 

もう隣におねぇさんはいない。

 

いない。いない。いない。いない。

 

いつかまたおねぇさんとまた遊べると、心のどこかで思っていた。

しかし時が経つにつれ、それがどんどん遠ざかっていく気が気でならない。

 

ねぇ…おねぇさん…一体どうしたらおねぇさんと会うことができるの?どうしたら遊ぶことができるの?どうしたらお話しすることが出来るの?

 

おねぇさん…他の人間と幸せなんかになれないよ。

だって吸血鬼だと知らなくても、あんなに敵対してきたんだよ?

おねぇさんがいないと…私に生きる理由はなくなっちゃうよ。

 

だから

 

「おねぇさんに会えないなら私に生きる価値なんてないの」

 

「おい、会って一言目がそれか」

 

「…………ふぁ!!?」

 

「そんなにびっくりしなくてもいいだろ…」

 

いやいやびっくりしますよ!誰だってあんな不意打ち食らったらびっくりしますって!リヴァイ兵士長!!

そこには調査兵団のエルヴィン団長と人類最強のリヴァイ兵士長がいた。

しかし私はこの2人が来たことに関してはびっくりしていない。そっちよりもおねぇさんじゃないことに少し落ち込んだ。まぁ逆に…ここにいたらそれこそびっくりするけど………というか、考えてみればなんでこんな偉い人が私に?私なにかしたっけ??やったことと言えば人間じゃないことがバレたけど…

 

「えっと…2人が私に何の用ですか?」

 

「少し提案をしに来てね。この牢屋を出たくないかい?」

 

………………え

 

「で、出られるんですか!!??」

 

ついつい体を前のめりにしたので手首についている鎖がジャラジャラと揺れた。声と音がかなり響いている。すると、エルヴィン団長とリヴァイ兵長は予想通りという顔をしているが、監視している憲兵は睨んできた。

 

「すみません…」

 

とりあえず謝り、体を元に戻す。でも前のめりにもなっちゃうよ。だって不可能だと思っていたのに突然希望が出てきたんだよ!?

蜘蛛の糸をつかむような話だけど、絶対に離してたまるか。

 

「それで…どうやったらここを出られるんですか?」

 

「その前に…調査兵団に興味はないかい?」

 

調査兵団…巨人の秘密を暴くために壁外調査に行っては兵士を無駄死なさせて帰ってくる。最近は期待してる人もいるらしいけど…私は興味が無い…というより、理解できない。なぜそこまでして壁の外に行こうとするか分からない。

なぜ天敵である巨人が沢山いる所へ行く?

なぜ兵士を無駄死にさせるようなことをする?

なぜわざわざ死にに行くような真似をする?

 

やっぱり調査兵団は何を考えてるのか分からない。

だけどまぁ…こうしてみると気になってきたな…。そういえば昔おねぇさんが言っていた。

『理解したければ理解している者に聞け。それでも理解出来なければ、そいつらと同じ環境で生きてみろ。こういうのは1人で考えてもしょうがないからね』

 

「調査兵団について聞きたいことがあります。なぜあなた方は壁の外に行くんですか?」

 

「それは…」

 

エルヴィン団長は重々しく答える。その言葉一言一言に責任を持っているように。

 

「巨人の秘密を暴き、巨人を絶滅させるためだ」

 

「……そうですか…」

 

やっぱりこの人達は理解できない…なぜ巨人に勝てる自信があるのだろう。雲をつかむような話じゃないか………よし、決めた。

 

「エルヴィン団長、私…調査兵団に入りたいです」

 

人間について理解してみよう。

人間の考え方、性格、行動、意思、強さ、特徴、人格を分析してみよう。

ついでにもしも調査兵団に本当に入れたらここも出られるし、一石二鳥とはまさにこの事だ。

…………あれ?この言い方だとまるで…まるで今まで人間と関わったことがないみたいな言い方じゃないか…おねぇさんは人間でしょう?…………たんなる言葉のあやだよね…きっと…うん。そうに決まってる。そうに違いないよ。おねぇさんは人間に決まってるじゃないか。

 

「構わないよ。実はここに来た理由は調査兵団の勧誘だったんだ」

 

やったぁぁぁぁ!!!

いや!でも待て!落ち着け私!もしかしたら牢屋にまた入る可能性も残ってるじゃないか!!

私は自然と笑いながらも、ほっとしたような顔になったと思ったら、元の表情に戻った。

 

「調査兵団に私を入れたい理由はなんですか?」

 

「主に巨人の秘密を暴くための実験に協力してもらいたい。それ以外はリヴァイの監視の元なら自由だよ」

 

エルヴィン団長は優しく答えている。

良かった…とりあえずおねぇさんを探すことは出来る…リヴァイ兵長と一緒になるけど………そもそもなんでリヴァイ兵長が監視するんだろう?

………いや、そんなこと分かってる。この人から信用されてないからだ…だからいつでも殺せるようにリヴァイ兵長を…………だけどおねぇさん探せるし…まぁいっか!

 

「分かりました」

 

「それと質問なんだが、君は人と違う体質が傷が回復すること以外にもあるのかい?」

 

あれ?この人知らないのかな?私が巨人に人間だと認識されずに食べられなかったことを…。いやでもあれだけの大騒ぎになってたわけだし…しかも偉い人だから知ってると思ったんだけどなぁ…それともわざと?だとしたら何を確かめるためにその質問を……とりあえず今は素直に答えて、後でじっくり考えよう。

 

「あとは巨人に襲われなかったこと、身体能力が基本的に人間よりも上です」

 

最後に人間を食べることだけど…おねぇさんに言わない方がいいと言われているからやめておこう。

 

「そうか…どれくらい強いのか分かるかい?」

 

「えーと…うーんと…」

 

何か例を出してほしいと言われても…おねぇさんに言われて納得してたし…なにか運動っぽいことやったっけ??

私は頭をポリポリかいていた。

 

「「!」」

 

すると2人が一瞬目が鋭くなった。

え、今度はなんですか??

 

「えっと……私何かしましたか??」

 

するとエルヴィン団長とリヴァイ兵長の2人だけで話し始めた。

 

「おいエルヴィン、さっきのは俺の見間違いか?こいつ鎖の重さを感じなかったかのように頭をかいた上に、無自覚だぞ」

 

これに重みなんてあったんだ…気づかなかった…

 

「私にもそう見えた。あの力は一体…」

 

「俺の感ではあいつは普通の兵士以上の力がある」

 

「10歳であの力だからな…。十分戦力になりうるかもしれん」

 

つまり私は戦力としても使われるってことか……ちょうど立体機動装置使ってみたかったから別にいいや。それに私の体質を知った時点で使おうと思っただろうし…

 

「ところで、実は君がそこに入っている間に巨人になれる人間が現れてね。生かすか殺すかの裁判を行った結果、君と同じリヴァイの監視下に置くことになったんだ」

 

さらっとエルヴィン団長がそんなことを言った。

 

「…………………はい?」

 

ちょっと待ってください!というかほんと待ってください!!理解が全く追いつきません!!

 

巨人化できる人間が現れた????

 

そんなの聞いたことがない。巨人になれるということは人間を食べるってことか?しかしそれならとっくに殺されているはず…。巨人化って大きくなるってこと??一体どうやって…

私は頭を抱えたのでジャラジャラという音が鳴り憲兵が睨んできたが、今はそんなことより、とにかくごちゃごちゃになっていた。しかしエルヴィン団長は構わず続ける。

 

「その訓練兵の名はエレン・イェーガー、さらに言えばエレンが巨人化して大岩を運び、トロスト区を奪還している」

 

さらに分からなくなってきた…トロスト区を奪還したって?一体どうやって…しかし奪還するには知性は残っていないといけないから人間を食べないってことかな?そして人類に協力的だから一応味方ってことか…。にしても巨人化って……まだ意味がよく分かっていない。

 

「あわわわわ……よく分かんないよ…」

 

言葉が出ているほどに頭がごちゃごちゃになっていた。エルヴィン団長は微笑んでいる。

 

「ではこれで話は終わりだ。最後に改めて…巨人を絶滅させ、脅威がなくなる生活をするためにも…よろしくな。入るのは巨人を絶滅するまでの間だけでいい。その後に牢屋に戻るようなことにはならないようにしよう」

 

「あ、はい。ぜひ宜しくお願い……!」

 

「??どうした?」

 

待てよ……考えてみれば…巨人がいなかったらおねぇさんと遊ぶのは…邪魔されずに済んだよね……それに…私が調査兵団に入る理由もなくなる……それって……

 

巨人を絶滅させればおねぇさんとまたあの時みたいに遊べるってこと?

 

その考えに至ると、私はこれから殺すであろう巨人の項を削ぐイメージを浮かべていた。

 

「エルヴィン団長…私、頑張ります。一緒に巨人をぶっ殺しましょう」

 

「……エルヴィン…こいつに少し興味が出た。いい殺気を放ちやがる…」

 

唐突に褒められてしまった。いい殺気って何ですか?というかこれって褒めてるのだろうか…

 

「班に入ったあとは俺が鍛えてやる」

 

これはラッキーだ。人類最強に教えられるなんて…技を盗みまくって強くなってやる。

素質があるかないかはどうでもいい。

ただ私は強くなることだけを考えていればいい。

 

「では過去に例がないわけではないが、特例として調査兵団に入れるように交渉しよう。しかし調査兵団に入らなければ訓練兵団に入ることとなる」

 

エルヴィン団長は立ち上がりながらそんなことを言った。調査兵団か…きっとこの年で調査兵団に所属するなんて特例中の特例なんだよね…そもそも所属できるかも分からないし…

しかし…もしも私が巨人なら…これを利用して沢山人を食べるんだろうな…でも…それをわかった上でこの人は私を入れようとした…

 

すごい。

すごいとしか言えない。

すごい以外の表現が思いつかないけど…なんかすごいな…おねぇさんと同じくらい…

 

「分かりました。待っています」

 

そしてエルヴィン団長とリヴァイ兵長は帰って行った。私は起こしていた上半身を思いっきり倒した。理由はただ単純に

 

「疲れた…」

 

ただそれだけだ。まさか偉い人と話すことになるとは…きっとこれからはもっと話すんだろうな…。しかもおねぇさん以外会話らしい会話をしていなかったから、久しぶりだったのもあるし…

まさか調査兵団に入ることになるとは…

 

「……はぁ……」

 

もちろんおねぇさんを守るための力を身につけられるし、巨人を全滅させたあとは今まで通りといかなくても遊べる時間は増えるだろう。

 

「おねぇさんと遊びたい…」

 

そう…だから遊ぶために早く巨人を殺そう。

そして巨人を殺すためには強くなろう。

強くなるのに1番手っ取り早いのは恐らくリヴァイ兵長に習うことだ。できるだけその事に時間を注ぎたい。座学とかはとっとと終わらせよう。

 

 

それから数日後。

 

「すまない…特例として調査兵団に入団するのには流石に無理があった。その代わり訓練兵団に入り、調査兵団に入っても問題なくなる程度になれば入ってもいいと言われたので、今日から訓練兵だ。頑張ってくれ」

 

あはは…なんで最初からこうも上手くいかないのだろうか…強くなるのに時間がかかっちゃうよ…




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