神様は私を化け物にした   作:零眠れい(元キルレイ)

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3話

「立体機動凄かったね!あれどうやったの?」

 

「立体機動装置のコツ教えてくれ…頼む…」

 

「最初から思ってたけど可愛いね!歳はいくつなの?」

 

「出身地はどこ?」

 

「どんな特例できたの!?」

 

「どこからあんな力が出るんだ!?」

 

「ねぇねぇ!さっき傷が回復してたけどどうしてなの?体質?」

 

「体質で片付くわけないじゃん!きっと何か魔法かなにか使ったんだよ!」

 

「……」

 

まさか食堂に入ると10人くらいに囲まれると、誰が予想したであろうか。驚きと緊張を通り越して硬直している。

あーーーーうん。こういう時こそ落ち着こう。落ち着いて落ち着いて落ち着こう。質問の嵐が酷くなってるけど落ち着こう。

えーーっと、まず今日から他の訓練兵と初めて会ったから、こうなってるのは今日原因がある……はず。でも今日はおかしな所はない……はず……

 

ーー

 

まずあの後エルヴィン団長に約束事を言われて…

 

『無事訓練兵になった訳だが、この約束を守ってほしい。まず1つ目、教官に従うこと。そして2つ目、可能な限り早く調査兵団に来ること。次に3つ目、普通の人間として生活すること。最後に休暇では実験に協力するため、調査兵団本部に来ること』

 

それで次の日に朝早く、教官が他の訓練兵に私を紹介してもらって…特例で入ったことを伝えて、怪我や巨人のことは伏せておいたんだよね。

 

『今日貴様らに集まってもらったのは訓練ではない!今日から特例として訓練兵になった者がいる!』

 

次に適性判断っていう、腰にロープを付けてぶら下がったんだよね。

 

『ブレが全くないな…合格だ』

 

その後は立体機動を使って空を飛んだんだよね…楽しかったな…盛大にミスして怪我したけど。

 

『他の者は訓練を続けてろ!貴様は医務室へ行け、誰にも見られぬように』

 

お昼では教官に呼ばれて行ったらすごく怒られて…

 

『あれほど気をつけろと言ったはずだが…』

 

食べなくて大丈夫だけど、昼ごはんを食べずに対人格闘が始まって…普通にやったらたくさんの人に怪我させて…骨折とか…酷すぎて開拓地行きになった人もいるし…

 

『……リヴァイに任せるか…』

 

最後に体力訓練をして、頑張って走ったら1位を独占して…また教官に呼ばれて…怒られると思ったら褒められて…

 

『座学が平均並みであれば、あと2週間で調査兵団に行けるだろう』

 

ーー

 

そして食堂に入って………

 

「別におかしなことは何も」

 

「「「あるよ!!!普通じゃないよ!!!!」」」

 

「!!!」

 

盛大に突っ込まれた。あんな大騒ぎの中あんな小さい声をどうやって聞き分けたの!?人間の耳ってどうなってるの!?というか普通じゃないの!!?普通に真面目に訓練しただけじゃん!!怪我も隠せたと思ったのに!

 

「逆にどうしたらそんな不思議そうな顔出来んだよ…」

 

「普通じゃねぇ…身体能力も…思考回路も…普通じゃねぇ…」

 

「無邪気な顔も可愛いね!」

 

なんか最後の鼻息が荒い人だけ私の本能が危険だと言っている。何故だろうか。

 

「みんな、この子はお昼ご飯を食べ損ねてるんだし、夕飯を食べながら質問しようよ」

 

ご飯は食べなくても栄養にはならないんだけどね。それと皆をまとめるリーダーっぽいメガネくんは、私に対して質問はやめさせないんだね。まぁ、別に人間のことが分かるかもしれないからいいけど…

そして食堂の使い方を教えてもらい、夕食を食べながら、

 

「それで?どうしてそんなに強いの?」

 

「それは……分かりません」

 

吸血鬼だからなんて言えない。

 

「ならなんで怪我が治ったんだ?」

 

「……体質です」

 

これで納得してください…

 

「じゃ、じゃあどんな特例できたの?」

 

「……」

 

………言ってもいいのかな?それとも言わない方がいいのかな?

 

「あ、言わないよう言われてるなら別にいいよ」

 

別にどっちでもいいけど…話が長くなりそうだし、そういうことにしておこう。

 

「出身地は?」

 

「シガンシナ区です」

 

すると相手は、というより周りにいる人達は興味津々な目で

 

「なら、5年前に見たんだよね!超大型巨人とか、鎧の巨人…あと普通の巨人を…!」

 

「普通の巨人なら見ましたよ」

 

「「「おおおおおおおお」」」

 

歓声が来た。そんなに珍しいのかな?というか座学でやってるはずでは?

 

「な、なぁ…巨人ってどんな形をしてたんだ?」

 

「巨人は……人間が大きくなった感じですね。あと変な顔してて…皮がうすそうで…座学で習った通りだと思います」

 

「座学でもやったんだけどね…やっぱり実際に見た人の感想を聞いてみたかったんだ…」

 

感想か…

私は試しにパンを食べながら、5年前のことを思い出してみた。

 

聞こえてくるのは人間の悲鳴と泣き声。

落ちているのは建物と血と死体。

それ以外は巨人や人間を食べる姿…

 

「……」

 

改めて思い返すと、巨人は人間のこと美味しそうに食べてたなぁ…。しかもごっくんっていう音がつきそうだし…。中には喉越し良さそうに食べてたりとか…

巨人は人間が美味しいから食べてるのかな?

 

「ごめんね…」

 

「……?」

 

いきなりメガネくんが謝った。周りを見ると、気づけばどんよりした雰囲気になっている。

え?え?なになに!?なんで謝ってるの!?

 

「嫌なこと思い出させたよね…探究心に駆られすぎた…ごめん…」

 

「え?別にそういう」

 

「そろそろ時間だし寮に行こっか」

 

ちょちょちょっと待ってください!気を利かせて話を変えたつもりかもしれませんが、私は別に傷ついてなんか

 

「そうだね、ちょうど時間だし…」

 

「今日は怖いこと思い出したよね?だから私が添い寝してあげるよ。いいよね?ね?」

 

少し興奮気味な女の訓練兵の人(危険生物)がグイグイ来る。

 

「じゃあ任せるよ。そういえば君はなぜか小さい子に好かれるところがあったよね」

 

「!?」

 

何言ってるんですかメガネくん!この人のどこが好かれるんですか!?人間はこんなのに好くんですか!?

 

「だ、大丈夫です!一人で眠れます!」

 

「君は一人で眠れるのかー、偉いねぇ。もしも怖い夢を見たらいつでもお姉さんの所へおいでぇ」

 

そして頭を撫でられた。

なんでだろう…おねぇさんにも撫でられたことがあるのに…初めての感覚のように感じた。なんていえばいいのか分からないけど…なんだろう…

 

なんというか…人間…らしい…?

 

「あ!」

 

頭から手を離されてしまった。

 

「え!もっと頭を撫で撫でしてほしかったの!?」

 

私は全力で首を横に振る。目が怖い。なんか怖い。

 

「そっかー、ちょっと残念。とりあえず寝よっかー」

 

「は、はい」

 

そして聞いてるだけだったけど…雑談をしながら、女子寮まで案内してもらい、1人で布団の中に潜った。

 

はぅ…初めてたくさんの人間と喋った…。エルヴィン団長の時よりも疲れた…。気を抜いたらホントに眠っちゃいそう…

 

「……」

 

これが…人間か…

 

思ったよりも弱くて…

思ったよりも脆くて…

相手のことを考えて…

暴力を振るわない…

暴言を言わない…

個性的な人もいた…

 

私が今まで接してきた人間の中で…おねぇさんの次に優しい…

けれど…おねぇさんより人間らしい…

 

人間…

 

『すごいな!』

 

『よろしくね!』

 

化け物…

 

『死んでしまえ!!』

 

『殺してやる…』

 

この差は…一体何なの?

一体…何が違うの?

どっちも私のはずなのに…

名前が違うだけで…中身は同じなのに…

 

訓練兵の皆も…私が人間じゃないことを知ったらああなるの?

 

それだけは…絶対にやだ…

 

嫌だ…

 

バレたく…ない…

 

その日はその事について深刻になっていたけれど、特に問題事は起こらず、普通の日々を送っていた。

 

立体機動では誰よりも速く移動して、標的のうなじを深く削ぎ、

対人格闘では私を恐れてるので誰ともやれず、

座学ではなぜか覚えるのが早くて、

体力訓練では相変わらず一位を独占、

馬術もすぐにコツをつかむことができた。

教官が言うには、ここまで習得が早い人間はいないとのこと。

しかし、人との交流は難しかった。おねぇさんとあんなに仲が良かったのが不思議なくらい…。功績を挙げなければ、友達と呼べるものはいなかったかもしれない…

 

 

そして、訓練兵になってから五日目。

…………よし、今は朝の4時。この時間なら人間でも早起きなら問題ない時間だ。今日は休暇の日だから、せめて調査兵団本部に行くまでの時間、おねぇさんを探そう。そう思い、私は布団から出ようとした……が、

 

「……どうしよう…」

 

時間とか探す場所とか気にしすぎて、上から危険生物さんに抱かれていることに気づかなかった。いびきをかいてぐっすり寝ている。

もうこれで3回目だよ…。初っ端から運が悪い…この人が起きたら相手にするのに一時間くらい取られる…なんとかここから出ないと…いつもならこの人が起きるまでじっとしてるけど、今日はそういうわけにはいかない。

私はできるだけ力を抑えて、薄い布団をクッションにして、肘の関節の部分を持ちながら上半身を起こした。

よし!見る限り骨は折れてない。そしてそのまま後ろに倒して、静かに急いで兵服に着替え、女子寮を出る際…

 

「………抱き枕……」

 

謎の寒気を感じつつ、トロスト区へ向かった。

 

 

そして3時間後。

どうしよう…全然見つかんない…

まぁトロスト区にいるかどうかも分からなかったし…広いし…人に聞こうとしても誰もいないし…ぜんっぜん見つかんないよ…

流石に3時間も猛スピードで走ったからベンチで座ってるけど…この方法で見つかるのかな?

 

約束の時間まで…あと30分…

 

私はおねぇさんのこと…何も知らない…。名前は知らないし…行きそうな場所とか…好きな物とかも…知らない…

おねぇさんは知ってるのに…なんで私は知らないの…?

私はベンチの上で体育座りをして、俯く。

 

おねぇさん…会いたいよ…

 

「おやおやーこんな所にかわいいかわいい吸血鬼の子供がいるぞー」

 

「……え?」

 

気づけば隣におねぇさんが座っていた。

 

「久しぶり、吸血鬼ちゃん」

 

そこには正真正銘、おねぇさんの姿があった。

 

「お、おねぇさん…」

 

おねぇさんの声だ…

おねぇさんの顔だ…

おねぇさんの手だ…

おねぇさんの体だ…

そして…おねぇさんだけが呼んでくれる私の呼び名だ…

 

本物の…おねぇさんだ…

 

「おねぇさん…会いたかった…」

 

「私も会いたかったよ」

 

私はおねぇさんに抱きつく。おねぇさんは背中をさする。

まさか…本当に会えるなんて…嬉しい…嬉しいよ…

 

「あ!」

 

私は急いで手を離す。

だ、だめだ!あんなに強く抱いたら、おねぇさんのお腹が怪我するかも…!

 

「……?」

 

あれ?でもおねぇさんはどこも怪我をしてない…見た目は痛そうにしてないし…苦しそうでもなかった…。そういえば…おねぇさんが怪我してるところって見たことない。

 

「……おねぇさんって…怪我ってしたことあるの…?」

 

「ないよ。おねぇさんは頑丈だからね」

 

まるで最初からその質問を待っていたかのように、迷いがない返事だった。

訓練兵よりも頑丈だったら…そりゃ怪我はしないか…

 

「そうだったんだ。納得したよ!」

 

「それは良かった。ところでそろそろ約束の時間じゃない?」

 

「え…あ、確かに…」

 

せっかくおねぇさんと会えたのに…まだ話したいことを話してないのに…

 

「大丈夫、また会えるよ。早く巨人を全滅させて、おねぇさんと遊ぼうね」

 

もう…そんなところまで知ってるんだ…。そうだよね…だっておねぇさんはなんでも知ってるんだもん。

 

「うん!待っててね!」

 

そして私は調査兵団本部に向かう。振り向くと、おねぇさんが手を振っている。私も手を振って、おねぇさんと別れた。

 

 

そして30分ほどで調査兵団本部に着いた。すると、入口に調査兵団の兵服を着ている女の人が立っていた。女の人は私に気づくと、私に近づき、私の手をガシッと掴んだ。

 

「君が例の子供だね!エルヴィンから話は聞いてるよ。今日はよろしくね!」

 

「は、はい…よろしくお願いします…ハンジ分隊長…」

 

なんか…イメージが全然違う…分隊長ってもっと…堅くて怖そうな人を想像してたけど…

 

「うん!じゃあ、早速だけど実験する場所へ行こうか!!」

 

「へ………わ!!」

 

ハンジ分隊長は私の手を引っ張って、歩き始めた。私は急いで状態を立て直して、なんとか歩いている。

びっくりした…会って一言言っただけで、もう手を繋いで引っ張るんだもん…。しかもよく見ると赤らめてすごく嬉しそうに歩いてる。イメージがすごい変わった…。一体どんな実験をするのだろうか…

そんなこんなであっさりと着いてしまった。そこには調査兵団の兵服を着ている調査兵がチラホラ。

そして釘やワイヤーで拘束している1匹の巨人がいた。それも…あの時…5年前に瓦礫をどかしてくれた巨人だった。

 

「彼はアレク。今回の実験のために急いで捕獲した巨人だよ。ソニーとビーンは…殺されてしまったからね…」

 

あれ?巨人に名前なんてあったっけ??というかソニーとビーンって誰!?ハンジ分隊長は少し落ち込んでいた。仲間だった人の名前なのかな…?

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「うん…ごめんね。とにかく今はこの実験に集中しよう。まず最初にやってもらうのは、巨人に近づいて触ってほしい」

 

「?それだけでいいんですか?」

 

「うん」

 

そんなの誰だってできるんじゃ……あ、人間だと襲われるから、人間じゃないことを改めて確認するためか。

 

「分かりました」

 

そう言って私は巨人に近づいた。巨人は一瞬私の方を向いたが、食べることなく無反応だった。巨人との距離が縮まる度に、調査兵団の人達からの視線が痛い…。なんというか…緊張する…

そして、とっくに食べられてもおかしくない位置まで近づくと、ザワっと周囲がざわめいた。

 

「いいよー!その調子で触ってみてー!」

 

「は、はい….」

 

ハンジ分隊長が叫んでいる。私はそのままお腹の部分を触った。へぇー意外と柔らかいなぁーお腹をつついてみる。すると周囲はさらにザワつく。さらにハンジ分隊長も、

 

「ね、ねぇ!そ、その部分って…一体どんな感じがするの!!?」

 

「分隊長!!あなたは巨人に食われます!!生き急ぎすぎです!!」

 

今にも走り出しそうな雰囲気で引き止められている。私は一体どんなリアクションをすればいいんだろう?

とりあえず生き急いでるなぁーと思いながら報告する。

 

「お腹の部分を触ってるんですけど、結構弾力があって固いです………あの…戻ってもいいですか?」

 

巨人とはいえ人間と似てるからな…イメージするとしたら人のお腹を間近で見てる感じだから、居心地がすごく悪い。気持ち悪いとすら言える。

 

「できれば他の所も触ってほしかったけど…時間にも限りがあるし、戻っていいよ」

 

ハンジ分隊長…時間があったらどこを触らせるつもりだったですか?そう思いながら許可が下りたので、ササッとハンジ分隊長の所に戻った。

 

「じゃあ、次は巨人と意思の疎通をしてほしい。内容は自由でいいよ」

 

「分かりました」

 

またしても巨人に近づく。歩いている間に考える素振りをして、会話の内容を考えていた。

自由って言われてもなぁ…何を話せばいいんだろう…。意思の疎通といえばわかりやすく…質問をすればいいのかな?はいかいいえで答えられるような…でも…できれば巨人の秘密が分かるようなものの方がいいよね…

 

どうして人を食べるんですか?

どこから来たんですか?

壁の外はどうなってるんですか?

なぜ人間以外に興味を示さないんですか?

その体の構造はどうなってるんですか?

なぜ私が人間でないことに気がついたんですか?

 

私は巨人の前に立つ。巨人は私に反応しない。

そして…

 

「なぜ私を助けたんですか?」

 

他にもいろいろあるけど、やっぱり1番気になるのはこれかな…

動物は殺しもせずに助けもしない。

人間は殺して食う。

けれど私だけは殺さずに助けた。

そもそも巨人同士で助け合うとは考えにくい…つまり私は巨人としても認識されていない。それに…たまたま瓦礫をどかしたとは思えない…2回もそんな偶然起きるかな?

 

………巨人が私を生かした。なら生かす理由はなんだろう…

 

…………うぎゃー、考えても仕方ない。答えを待とう。まぁこれで答えてくれるとは考えにくいけどね…私と巨人で会話ができるわけ

 

「………カミ……サマ……」

 

私は自分の中にある時の流れが止まった。巨人が…言葉を…発した…?

今…神様って…

 

その瞬間、頭にノイズが走った。

 

「ああああああああぁぁぁ!!!!」

 

悲鳴をあげるほどに頭痛がした。

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

頭だけが痛いのに、全身に痛覚が走るように感じる。

頭がかち割れそうになる。そして本当にヒビが入り始め、頭から血が流れる。口からも血を吐いている。

 

しかしノイズは止まらない。

 

聞いたことがある声が、

聞いたことがない声が、

見たことがある景色が、

見たことがない景色が、

聞いたことがあるセリフが、

聞いたことがないセリフが、

見たことがある人が、

見たことがない人が、

 

全てにモヤがかかり、聞こえてくる、見えてくる。

 

ここはどこ?貴方は誰?

 

分からない、分からない、分からない、分からない、分からない。

 

「――――!!」

 

「――――――!?――――」

 

「―――――――!」

 

他の人が何か言っているけど、知らない声が邪魔をする。

他の人の顔が、知らない何かが邪魔をする。

そして痛みが邪魔をする。

 

口から出た血が、頭から出た血が、ここ一帯を埋め尽くす。出てきても出てきても止まらない。出てきては回復を繰り返す。

 

身動き一つも取ることが出来ない。痛くて痛くて、それ以上の感覚が麻痺している。体が痺れている。

 

誰か…助けて…!!

 

『誰も君を助けない』

 

!!どこかで見たことがある後ろ姿。

どこかで聞いたことがある声。

 

『訓練兵の皆も助けない』

 

この声だけはモヤがかからず、姿もハッキリと映っている。

 

『おねぇさんだって助けない』

 

お母さんでも、お父さんでも、お姉ちゃんでも、おねぇさんでも、訓練兵でも、調査兵でも、駐屯兵でも、教官でも、夢の中の人でもない。

 

『君自身も助けることはできない』

 

身近にいる存在のはずなのに、どの人も違う。

 

『だから君は死の願望を持ち、死の末路をたどることになる』

 

「あ……た…は…だ……なの…?」

 

なんとか声を絞り出し、口にした。

彼女はゆっくりとこちらを向き、そこに映っていたのは…

 

『これは、そういう物語』

 

涙を零している私の姿だった。




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