神様は私を化け物にした   作:零眠れい(元キルレイ)

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4話

少女はお店の前に立ち、ある物に指をさします。

お店の人は少女に気付くと、とても嫌そうな顔をしながら、

 

「………いつもの内臓だな。とっとと持ってけ。そしてとっとと帰れ。化け物がいたら客が近づかねぇんだよ」

 

少女は頷きます。お店の人から三切れのお肉をもらい、自分の家に帰って行きます。

家の中は血でいっぱいに広がっています。そして少女のお母さんとお父さんが寝ています。

少女は家の隅っこで、三切れの内一切れの肉を食べています。

食べている最中。少女は突如、こう呟きます。

 

どうして私はこんなにも理不尽なんだろう。

 

同じ種族なのに、なんで化け物呼ばわりされるのだろう。

 

ーー

 

「……ん? ここは…」

 

ここは…ベッドの上……訓練所の医務室? とは少し違いそうだし…

 

私が起き上がると、兵士の服を着ている人が、扉を開けっ放しにして、走ってどこかに行ってしまった。紋章までは見えなかったので、どの兵団かまでは分からない。

 

「……? そもそもなんでここに…………!!」

 

そうだ…あの巨人に質問をして…頭が痛くなって…それから…

 

『これは、そういう物語』

 

あれは…私の姿…だったよね…

一体…どういう………! そんなことよりはどうでもいい!! そんなことより、気絶した。気絶してしまった。

気絶した時はどうなるか分からないけど、寝るのとそんなに変わらない。

また、人を食べたんじゃ……なんで…こんな時に限って……

? でもそれだとおかしい。牢屋に入っていない。手錠もない。

それに…服は血で汚れてないし…死体はないし…五年前に食べたから、食べずに済んだ……とは考えにくい…

 

一体…あれから何が…

 

「お! 起きてる起きてる」

 

「ハンジ…分隊長」

 

ハンジ分隊長とモブリットさんがこの部屋に入ってきた。さっき走っていったのはモブリットさんだったのかな? 

ハンジ分隊長は、ベッドの隣にある椅子に座った。

警戒されてない……この様子だと…人は食べてないのかな…

 

「無事目を覚ましてくれてよかったよ。このまま寝るんじゃないかって、すごく心配したよ」

 

「え…そんなに寝てたんですか?」

 

「うん。丸三日だよ」

 

ちょ…それ本当ですか? 流石にそんなに寝たことは……いや…正確に何時間寝たのかは私も知らない。五年前とか…それより前の時とか……もしかしたらその時だって、三日間寝てたかもしれないよね。

 

「ハンジ分隊長、あの後一体何が…」

 

「うん。まず君が巨人と意思の疎通をして成功した。そしたらいきなり悲鳴をあげて血を吐いたりした――っていうのは覚えてる?」

 

えっと…確かすごい頭痛がして、いろんなものが見えたり聞こえたりして…

 

「はい」

 

「その後君は、いきなり自分の手を頭の中に突っ込んだり、体のありとあらゆる所を掻きむしったんだよ」

 

「え…そうなんですか…?」

 

「覚えてない?」

 

痛すぎてその原因になってるものを壊そうとしたのかな…私って怪我が回復するから、体とか結構適当に扱うんだよね。

 

「頭をぐちゃぐちゃにしたので、記憶に残ってないのかも知れません」

 

「それって自分の記憶を無理やり消したってことだよね!! それって可能なことなの!?」

 

「ハンジ分隊長! 落ち着いてください!!」

 

ハンジ分隊長は私が乗っているベッドに身を乗り出してきた。モブリットさんがこの前のように止めている。

何故だろう…ハンジ分隊長は危険生物さんと同じ匂いがする…いやそれ以上に危険だと私の本能が言っている…

 

「おっとすまない、少し取り乱しちゃったね。話を戻すけど、その後君を助けようとしてアレクを殺して、ここ…調査兵団の医務室に寝かせたんだよ」

 

ん? となると…

 

「被検体を殺したってことですか?」

 

「うん…もちろんあの巨人も大事だけど、君の身を安全が最優先だったからね。それにものすごく貴重な情報も得られた…」

 

「……」

 

ハンジ分隊長はあの巨人がすごく大切だったんだろうな…例えば私がおねぇさんを殺さざるおえない状況になったみたいな…そんな感じなんだろうな…

 

私なら…そんなことできない…

 

でもこの人は、私情より人類の利益を考えた。自分の生きる意味を殺した…みたいな。

……生きる意味が無くなる…か……もしも私が生きる意味を失ったから、死ねる方法をひたすら考えてるかも…そして死ねる方法がわかったら速攻でやりそうだな…

 

『だから君は死の願望を持ち、死の末路をたどることになる』

 

「……そういえば倒れている間、変なものを見たんです」

 

私は幻聴や幻覚、自分の姿や見ていた夢について話した。

 

「……見たことがない人や景色か…」

 

ハンジ分隊長は手を組みながら必死に頭を働かせているよう。

 

「はい…信じてもらえるか分かりませんが…」

 

「分かった、それについても考えてみるよ。君は何か心当たりとかある?」

 

「……うーん…特に心当たりはありませんね…ただ…なんというか…もう一人の自分が言っていたことを思い出すと…」

 

『誰も君を助けない』

 

「本当になりそうで…心がざわつきます…」

 

誰も私を―――助けない。

 

おねぇさんも、訓練兵のみんなも―――私を助けない。

 

なんでだろう…あのおねぇさんでさえ助けないなんて…そんな話…あるわけないのに…

 

私はギュッと、胸の前に手を握る。

 

本当なわけないじゃん…嘘に決まってる…嘘に…決まってる…

だって…唯一吸血鬼の私を受け入れてくれたんだよ?

まさか…それは表面上だけで…本当は……そんなわけない。

そんなはず…ない。

でも…私はおねぇさんを何も知らない…なら…………嫌だ…

 

もう…考えたくない…

 

「落ち着いて」

 

モブリットさんに私の頭を撫でられて、悪夢から一気に現実へ戻してくれた感覚がした。

また…暖かい…なんでだろう…この前よりも…暖かい…

 

「私達は君の味方だから、落ち着いて」

 

言葉も…暖かい…一言一言が…暖かい…

ついつい泣いてしまいそうな……そんな温かさがある。

この人達を…信用してもいいんじゃないかって…そんな風に思わされる。

 

「……ありがとうございます。モブリットさん。落ち着いてきました」

 

モブリットさんは胸を撫で下ろし、

 

「よかった…」

 

………この人達なら…信用…しても……吸血鬼だって言っても…大丈夫なんじゃ……人類の敵だなんて…言わないんじゃ…お母さんとお父さんのように…ならないんじゃ………

 

ううん…ダメ…ダメだ…どうしても…言いたくない…なんだか…嫌な予感がする…

 

……あれ? なんで私は…吸血鬼は受け入れてくれないと決めつけているの…?

お母さんとお父さんが変わっちゃっただけ…おねぇさん以外でも…受け入れてくれるかもしれないのに……そもそも…人を食べなければ、態度は変わらなかったんじゃないの…?

人を食べるのは我慢することは出来る。寝ることさえしなければ、人間を食べないで済む。

なぜおねぇさんだけ…おねぇさんだけしか受け入れてくれないと…思ってるんだろう…

 

なぜ他の人には…教えることにここまでの拒絶反応を…一体なんで…?

 

「……さて」と、ハンジ分隊長は言い、立ち上がりながら、

 

「無事落ち着いたみたいだし、話を聞かせてくれてありがとう。最後に伝達。君は明日から訓練兵に戻る。それと、リヴァイ達が調査兵になっても問題ないか見に行くから」

 

「……は?」

 

リヴァイ兵長が私を試しに…?

 

「今回の実験結果で、早く調査兵にして巨人の実験をした方がいいってことになってね。成績は良好みたいだからリヴァイに判断を任せようってことで。じゃあまた実験よろしくね~」

 

嬉しそうなハンジ分隊長とモブリットさんは帰っていった。

 

……………やったぁぁぁぁ!!!

 

もしもここでOKがでたら調査兵団に入れるってことだよね!! というかリヴァイ兵長に教えてもらえる!

立体機動とか色々と。一時は悲惨な思いをしたけど、結果的には良かった!!

……いや…待てよ…入団試験を早めた理由は…巨人の実験をするため……………ダメじゃんか!! 逆に教えてもらう時間を減らしてるじゃないか!!

 

「……ブー…」

 

せっかく強くなれると思ったのに…それに休暇もなくなっちゃうよね。どうせ巨人の実験をやらされるに決まってる。あんな質問しなければなぁ…

 

「……考えても仕方ないか…」

 

うーん…暇だし体動かそうかな…体がなまってるかもしれないし。

 

「とりあえず、腹筋千回からやりますか」

 

と言いつつも、途中から数が分からなくなったため、腕立て伏せや背筋もやろうと思っていたけれど、腹筋をやり続けていた。

 

 

数時間が経ち、星や月が見え始める七時頃。

ノック二回と共に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「失礼しまーす」

 

げ……こ、この声は……

 

「き、危険人物…さん…?」

 

「ああ! またそんな変なあだ名で呼んで! 私にはちゃんとホナミっていう名前があるの!」

 

そういえばそうだったっけ…フルネームは忘れたけど…

 

「な、何しに来たんですか?」

 

「教官から目が覚めたって聞いたから、そのお見舞いに来たんだよ! メガネくんと一緒に!」

 

病人じゃないからお見舞いとはちょっと違う気がするけど…まぁ様子を見に来たってことか。

………どうにかしてメガネくんだけこの部屋に入れる方法はないものか…

そんなことを考えていると、メガネくんが、

 

「君が好きなお菓子を買」

 

「それを先に言ってくださいよ~」

 

お菓子を持ってきてくれていると、考えが辿り着いた瞬間に、扉を開けた。全開に。

 

「………あ」

 

「チャンス!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

それから十分後ほど。

 

 

「……うぅ…騙された…」

 

まさかお菓子を買ってきてなかったとは…釣られた…この二人に釣られた…

もう誰も信用できない…誰も信用するもんか…

 

「えへへー久しぶりだなぁー」

 

ホナミさんが満足気にしている。

だけど私には、そんなことが気にならないほどにお菓子が食べられないことが悲しい…

 

「ロリコンが女の子を抱いて、満足そうにしていて、女の子はこれ以上ないくらいに絶望しているこの絵を、僕はどう受け止めればいいのだろうか」

 

メガネくんは状況説明をしている。

知らないもん…メガネくんだって共犯者だったんだもん…味方が誰もいない…

 

「酷い…酷いよ…この世界は残酷すぎるよ…この世界は残酷だ…」

 

「ごめん。まさかそんなに落ち込むとは…」

 

謝られても…許されないもん…許さないもん…

 

「代わりに今度、クッキーを買うか」

 

「十個入りのクッキーなら許す」

 

一体どんなクッキーがあるのかな? バタークッキーかな。それともチーズクッキーかな。それともそれとも――

 

「………僕のお金が…………自業自得だけど…」

 

あれ? 全然気付かなかったけど、さっきからお腹が閉められてる感覚がするな…それもだんだんキツくなって…それになんだか首筋が少し濡れて…

 

「きけ……ホナミさん! 何やってるんですか!? ヨダレを垂らさないでください!」

 

「いやぁ、三日間補給できなかった栄養分を取っているのだよ」

 

「栄養分!? 栄養分ってなんですか!? それって生きる上で必要な物なんですか!?」

 

というか必要あってもなくてもやめてください!

 

「ふふふ…やめて欲しければ力技で私を剥がしてみるんだな。まぁできないと思うけどね」

 

この人どうやって私の心を読んだの!? とまでは驚かない。嫌がっているのを見れば、流石に誰だって分かるだろう。

しかしまぁ、その言葉通り、私は力技を使うことが出来ない。

私は力加減が出来ないせいで、骨折をさせてしまうことがあったし、開拓地送りになった人もいたのだ。

私はホナミさんのこの行動には慣れつつある。最初は嫌だったけれど、今はそこまでではない。

はぁ…早く明日になって、リヴァイ兵長に習いたいな…力の加減…

 

「あ、私ちょっとトイレ行ってくるね」

 

ホナミさんが私をベッドに下ろし、トイレに行ってしまった。

 

「……二人きりになったね」

 

「そうですね」

 

考えてみれば、メガネくんと二人きりになることはほとんどなかった。

外見が小さい子供だったおかげで、常に周りにたくさんの人かホナミさんがいた。

 

「……」

 

「……」

 

ナニコノクウキ……何話せばいいのか全然わっかんないよ!!

だけど沈黙すればするほど重い空気になるし…

 

「……その…月が綺麗ですね」

 

「うん、そうだね」

 

「……」

 

「……」

 

終わったぁぁ!! 会話が終わっちゃったよ!! さらに重い空気になってどうすんの!!

 

「……それにしても、元気そうでなによりだよ」

 

「う、うん! 元気だよ」

 

よし! いいぞ…そのまま会話を…

 

「ずっと心配してたんだ。他の訓練兵のみんなも。いきなり三日間も居なくなるし…教官に聞いても何も答えてくれなかった……ねぇ…」

 

ゾクッ

 

この擬音が、この場面にふさわしいと感じた。

メガネくんは時々、人が変わったようになる。

いつもの優しくて、リーダーシップのある彼とは違う。

圧迫感が…迫力が…何もかも…違う。

 

「君は…どんな秘密を持っているんだ?」

 

「え……と……」

 

何か…言わないと…

 

「……その…」

 

今は…この場を切り抜けることだけを…考え…

 

「……いや…少し違うな…質問を変える。君はどうしてそんなに変わったんだ?」

 

……?

 

「変わったって…どういう…」

 

「おっ待たせー! ねぇねぇメガネくん、もう帰らないといけない時間だってさ」

 

「分かった。じゃあ帰ろっか」

 

「うん! じゃあばいばい! また明日ねー!」

 

「……ばいばい…です…」

 

そのまま二人は帰って行った。

 

さっきの…メガネくんの質問って…私が訓練兵になった一週間前から、今の今までの変化…じゃないよね。威圧感とかがあったし…

もしかして……一番私が変わった…五年前について聞いてきたのかな。なんとなく…そんな気がする。

ということは…それ以前の私を…知ってるってこと…?

 

でも…会った記憶はない…

 

私が覚えていないだけ…とか…?

……可能性は低くない。あの人を食べた時から…お母さんとお父さんが変わった時から、記憶が上書きされて、その前の出来事をほとんど覚えていない。あの人がどんな人だったかさえも…どんな顔だったかさえも…まるで覚えていない。

でも…もしそうだとしても…なんでメガネくんは何も言わずに…

 

「もう…わけがわからないよ…」

 

もう今日は考えることをやめよう。

本当は寝てスッキリしたいところだけど、そんなこと出来ないし…

明日の朝まで腕立て伏せでもやってよう。

 

そして本当に日が昇るまで、腕立て伏せをやり続けた。




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